JP2013185225A - 無電解めっき方法、及びこの方法によって形成した無電解めっき層を有する構造体 - Google Patents

無電解めっき方法、及びこの方法によって形成した無電解めっき層を有する構造体 Download PDF

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伸 堀内
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幸道 中尾
Hideki Hakukawa
秀樹 伯川
Tetsuo Yumoto
哲男 湯本
Tokuo Yoshizawa
徳夫 吉沢
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Abstract

【課題】 射出成形した液晶性ポリエステル樹脂に対して、無電解めっき層の密着性と平滑性とを向上させる。
【解決手段】 液晶性ポリエステル樹脂に中性重質炭酸カルシウムの粉末を混合した混合物を、金型を高温の240〜300℃に設定して射出成形する。これにより表面のスキン層を剥離し難くすることができ、中性重質炭酸カルシウムの粉末が、スキン層の表面に浮き出すことを回避して、表面の平滑性を損なわないようにできる。また表層に貴金属ゾルを付与した後に、アルカリ性水溶液に浸漬等することによって、この貴金属をスキン層に強く固定することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、合成樹脂に対する無電解めっき方法及び構造体に関し、特に射出成形した液晶性ポリエステル樹脂に対して、密着性と平滑性とを向上させる無電解めっき方法、及びこの方法によって形成した無電解めっき層を有する構造体に関する。
従来から、LEDパケージ、赤外線近接センサーパケージ、あるいはMEMS半導体パッケージ等には、セラミックスが多用されてきた。しかるに現在、成形性を向上させてコストダウン化を図る等のため、セラミックスに替えて合成樹脂製パケージの使用が検討されている。この合成樹脂製パケージとしては、熱可塑性樹脂を射出成形して基板等を成形し、その表面に無電解めっき等からなる導電性回路等を形成し、この導電性回路に半導体チップ等の電子部品や、微小機器等を搭載する。
かかる合成樹脂製パケージについては、耐熱性、高強度、低熱膨張率、難燃性、高弾性率及び耐薬品性等が要求されるため、これらの特性に優れる液晶性ポリエステル樹脂の使用が期待される。
ところで液晶性ポリエステル樹脂は、疎水性のため、射出成形したままの状態では、無電解めっきとの密着性が確保できない。
そこで液晶性ポリエステル樹脂と無電解めっきとの密着性を確保する手段として、無電解めっきを施す部分を粗化する手段が提案されている。この粗化する手段としては、例えばアルカリ等による化学的エッチング、あるいはレーザー照射による粗化が提案されている(例えば特許文献1及び2参照。)。
しかるに上述した手段によって無電解めっきを施す部分を粗化すると、その上に形成した無電解めっきの表面の粗度も大きくなって、超音波ワイヤーボンディングの際の接続不良率が高くなり、またLEDパッケージにおける光反射率が悪くなるという問題が生じ得る。
ところで合成樹脂の表面との密着性を確保する無電解めっき方法として、ポリエステル等からなる基体の表面を、アルカリ水溶液によって親水化した後に、貴金属ゾルに浸漬することによって、基体の表面に貴金属を固定し、この貴金属を固定した基体の表面に、無電解めっき層を形成する方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。この方法を採用すれば、無電解めっきを施す基体の表面は粗化されず、したがって無電解めっきの表面も平滑になるため、超音波ワイヤーボンディングの際の接続不良率や、LEDパッケージにおける光反射率の低下を防止することができると考えられる。
特開平11−145583号公報 特開平07−212008号公報 特開2010−47828号公報
液晶性ポリエステル樹脂は、溶融状態においても棒状の剛直な分子鎖からなり、流動性が高く、僅かなせん断力を受けても一方向に配向する。また結晶性樹脂に較べて、極めて固化する速度が速いという特性を有している。このため液晶性ポリエステル樹脂を射出成形すると、表層には、棒状の剛直な分子鎖が、流動方向に沿って強く配向したスキン層が形成される。液晶性ポリエステル樹脂が、上述したように強度及び弾性率等において優れるのは、このスキン層によるものである。
ところが液晶性ポリエステル樹脂を射出成形してスキン層が形成されると、上述した特許文献3に記載した手段では、このスキン層に貴金属を強く固定することができず、この貴金属を核として析出する無電解めっきも、スキン層に強く密着しないことが判明した。またスキン層は、剥離し易いため、例えスキン層に対する無電解めっきの密着性を高めたとしても、無電解めっきがスキン層と一緒に剥がれてしまうという問題がある。
そこで本発明の目的は、射出成形した液晶性ポリエステル樹脂に対して、密着性と平滑性とを向上させる無電解めっき方法、及びこの無電解めっき方法によって形成した無電解めっき層を有する構造体を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、液晶性ポリエステル樹脂に中性重質炭酸カルシウムの粉末を加えることによって、スキン層を剥離し難くすることができ、さらに射出成形時における金型温度を高くすることによって、中性重質炭酸カルシウムの粉末が、スキン層の表面に浮き出すことを回避して、表面の平滑性を損なわないようにできることを見出した。また表層に貴金属を付与した後に、アルカリ性水溶液に浸漬等し、さらにシランカップリング剤の水溶液に浸漬することによって、この貴金属をスキン層に強く固定することができることを見出した。
ここで液晶性ポリエステル樹脂に中性重質炭酸カルシウムの粉末を加えることによって、スキン層が剥離し難なる理由は、次のように考える。すなわち溶融した液晶性ポリエステル樹脂の流動性が、混合した中性重質炭酸カルシウムの粉末によって阻害され、表層の内側部分において、分子鎖が流動方向に沿って強く配向することが抑制される。このため表層の内側において、分子鎖の配向方向が、表面に沿う方向からコア部に向かう方向に、徐々に傾斜するようになる。したがってこのコア部に向かって配向する分子鎖によって、樹脂の引張り強度が内部に向かう方向に強くなり、表層部分が剥がれ難くなると考えられる。
ところが液晶性ポリエステル樹脂に、中性重質炭酸カルシウムの粉末を加え、通常用いられている金型温度(80〜120℃)において射出成形すると、この中性重質炭酸カルシウムの粉末が表面に浮き出て、表面の平滑性が損なわれることが判明した。そこで金型温度を240〜300℃と高温に設定したところ、中性重質炭酸カルシウムの粉末が表面に浮き出でず、平滑な表面が得られることが判明した。
ここで金型温度を高温に設定するすると、中性重質炭酸カルシウムの粉末が表面に浮き出でることを回避できる理由については、おおよそ次のように考えられる。すなわち液晶性ポリエステル樹脂は、融点が比較的低く、溶融状態における流動性が高く、かつ固化する速度が速いという特性を有している。このため液晶性ポリエステル樹脂を射出成形する場合は、通常、金型温度を低め(80〜120℃)に設定している。したがって溶融した液晶性ポリエステル樹脂が、低めの温度の金型内を流動すると、金型内の壁に接触する表層部分が冷やされて粘性が高くなる。表層部分の粘性が高くなると、表層に分散する中性重質炭酸カルシウムの粉末によって、液晶性ポリエステル樹脂の流れが堰き止められて、この粉末の背後に回り込み難くなる。このため粉末の背後から下流側に向かって筋状の溝が生じると共に、粉末の背後面が露呈する。
そこで金型温度を高温に設定するすると、金型の壁に接触する表層部分が冷やされ難くなり、粘性が高くなることを回避できる。したがって表層部分における流動性の低下も少なくなり、中性重質炭酸カルシウムの粉末によって流れが堰き止められても、この粉末の背後に回り込み易くなる。このため粉末の背後から下流側に向かって筋状の溝が生じることはなく、粉末の背後面も樹脂で覆われた状態になると考えられる。
また金型温度を240〜300℃に高くすると、表層における直鎖分子間の相溶性が改善され、さらに表層が剥がれ難くなることを見出した。ここで相溶性とは、ポリマー分子の絡み合いが強まることを意味し、また相溶性が改善される理由は、高温では分子運動性が高いためと考えられる。
本発明による無電解めっき方法は、以上の知見に基づくものであり、その第1の特徴は、液晶性ポリエステル樹脂に中性重質炭酸カルシウムの粉末を混合して混合物を生成する第1工程と、この混合物を射出成形して基体を成形する第2工程と、この基体をアルカリ性水溶液に接触させて表面を改質する第3工程と、この基体を安定剤の存在下で調整された貴金属ゾルに接触させる第4工程と、この基体をアルカリ性水溶液若しくは過酸化水素水に浸漬、またはオゾン処理のいずれかを行う第5工程と、この基体をシランカップリング剤の溶液に浸漬する第6工程と、この基体の表面に無電解めっき層を形成する第7工程とを備え、上記第2工程における射出成形の金型の温度は、240〜300℃に設定することにある。なお、より望ましくは、金型の温度を260〜280℃に設定する。また射出成形のシリンダー温度は、射出成形可能な上限温度とすることが望ましい。
ところで上述したように、液晶性ポリエステル樹脂は、融点が比較的低く、溶融状態における流動性が高く、かつ固化する速度が速いという特性を有している。したがって、液晶性ポリエステル樹脂を射出成形する場合は、通常、射出速度を速め(300〜500mm/秒)に設定している。金型温度が低めの場合は、射出速度を遅くすると固化し易くなって流動性が低下し、注入圧力を高くしなければならないからである。
しかるに金型温度を高くすると、液晶性ポリエステル樹脂は、金型内において固化し難くなって流動性も低下しないため、射出速度を遅くすることができる。また射出速度を遅くしても、表層部分における流動性の低下は少なくなる。そこで金型温度を高くすると共に射出速度も遅くすると、表層部分において、中性重質炭酸カルシウムの粉末の背後に、液晶性ポリエステル樹脂が、さらに回り込み易くなり、このため粉末の背後面が、より樹脂で覆われ易くなることが見出された。
本発明による無電解めっき方法の第2の特徴は、上記知見に基づくものであって、上記第1工程における液晶性ポリエステル樹脂は、I型またはII型のいずれかであって、上記第2工程の射出成形において、上記混合物の射出速度を50〜120mm/秒と設定することにある。ここでより望ましくは、上記混合物の射出速度を50〜100mm/秒に設定する。
ここで液晶性ポリエステル樹脂のI型とは、主として次の3成分からなるポリエステル樹脂を意味する。
イ. 芳香族ヒドロキシカルボン酸、およびその誘導体の1種または2種以上
ロ. 芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、およびその誘導体の1種または2種以上
ハ. 芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオールおよびその誘導体の1種または2種以上
また液晶性ポリエステル樹脂のII型とは、主として芳香族ヒドロキシカルボン酸、およびその誘導体の1種または2種以上からなるポリエステル樹脂を意味する。
上記第1工程における中性重質炭酸カルシウムの粉末は、平均粒径を3〜7μmの不定形粒子であって、上記液晶性ポリエステル樹脂100重量%に対して10〜50重量%混合することが望ましい。ここで「中性重質炭酸カルシウム」とは、重質炭酸カルシウムを、酸性水溶液で中性化処理したものを意味する。液晶性ポリエステル樹脂は、アルカリによって溶融するからである。例えば、重質炭酸カルシウム100重量部を、ピロリン酸の5重量%の水溶液に、5分間程度浸漬して乾燥させたものが該当する。
「平均粒径を3〜7μm」としたのは、3μmより小さいと、表層の内側部分において、上述した分子鎖が流動方向に沿って強く配向することを抑制する効果が低下して、表層部分が剥がれ易くなるからである。逆に7μmを超えると、液晶性ポリエステル樹脂の流れが粉末の背後に回り込み難くなり、粉末の背後から下流側に向かって筋状の溝が生じると共に、粉末の背後面が露呈し易くなるからである。また上記中性重質炭酸カルシウムの粉末を「不定形粒子」としたのは、天然原石の石灰石を機械的に粉砕した粉末であるため、形状が不定形となるからである。
上記中性重質炭酸カルシウムの粉末を、「上記液晶性ポリエステル樹脂100重量%に対して10〜50重量%混合する」としたのは、10重量%より少ないと、表層の内側部分において、上述した分子鎖が流動方向に沿って強く配向することを抑制する効果が低下して、表層部分が剥がれ易くなるからである。逆に50重量%を超えると、液晶性ポリエステル樹脂の流れが、粉末の背後に回り込み難くなり、粉末の背後から下流側に向かって筋状の溝が生じると共に、粉末の背後面が露呈し易くなるからである。
上記第3工程における「アルカリ水溶液」は、濃度1.0〜10.0重量%の苛性ソーダまたは苛性カリのいずれかの水溶液であって、上記表面の親水性への改質は、上記水溶液の温度を20〜30℃に設定し、この水溶液に上記基体を1〜24時間浸漬して行なうことが望ましい。濃度が1.0重量%未満では、表面の親水性化が不十分であり、濃度が10重量%を超えると、表面がエッチングされて、めっき膜の品質が悪くなるからである。また水溶液の温度が20℃未満では、表面の親水性化が不十分となり、水溶液の温度が30℃を超えると、表面がエッチングされて、めっき膜の品質が低下するからである。
上記第4工程における「貴金属ゾル」とは、液体中にコロイド粒子と呼ばれる数10ナノメートル又はこれ以下の粒径の貴金属粒子が均一に分散した形態をとるものを意味する。なお「貴金属ゾル」としては、パラジウムのゾルを用いることが好ましい。
また「貴金属ゾル」は、貴金属含有化合物を原料として公知の方法により調製できる。例えば、水中で貴金属塩を還元剤で還元し、共存する保護物質により貴金属ゾルを保持させて製造する。通常、原料貴金属塩に含まれるハロゲンイオンが、還元後の貴金属ナノ粒子の表面に吸着されて、負電荷を持つ貴金属ナノ粒子を含む貴金属ゾルが調製される。
ここで貴金属含有化合物を原料として貴金属ゾルを調製するときには、安定剤を存在させる。安定剤は、コロイドの沈殿を防止し、かつ、基材への吸着を促進する効果があるからである。コロイドの沈殿を防ぐ安定化効果と、基材への吸着効果とを両立させる「安定剤」としては、蔗糖を使用することが望ましい。蔗糖安定化コロイドの調整方法としては、特許第1995983に記載の方法を使用することが望ましい。
また上記第5工程において、「上記基体をアルカリ性水溶液若しくは過酸化水素水に浸漬、またはオゾン処理のいずれかを行う」理由は、基材に吸着された貴金属コロイド表面に存在する安定剤を部分的に除去し、触媒活性を高めるためである。
ここで「アルカリ性水溶液」としては、濃度1.0〜10.0重量%の水酸化ナトリウムの水溶液を使用し、「過酸化水素水」としては、濃度5.0〜20.0重量%の水溶液を使用して、温度20〜30℃にて、基体を1〜30分浸漬する。
また「オゾン処理」とは、空気中の酸素に紫外線を照射等することによりオゾンを発生させ、このオゾンによって有機物を分解等することを意味する。アルカリ性水溶液や過酸化水素水と同様の作用により、貴金属コロイドの安定剤を分解する。オゾン処理時間は1〜10分が望ましい。1分未満では、貴金属コロイドの安定剤の分解が不十分となり、10分を越える長時間の処理では、貴金属コロイドが酸化されて、触媒活性が低下するからである。
第6工程として、貴金属コロイドが吸着された基材を、シランカップリング剤の溶液に浸漬するのは、次の理由による。すなわちアルカリ性水溶液若しくは過酸化水素水に浸漬、またはオゾン処理のいずれかの処理を行った貴金属コロイドの表面には、水酸基やカルボン酸などの親水基が存在している。この様な基材をシランカップリング剤の溶液に浸漬すると、シランカップリング剤の有機成分と貴金属コロイドの安定化剤との間で化学結合を形成し、また、シランカップリング剤の無機成分であるシラノール基は、銅めっき膜と結合を形成する。
ここでシランカップリング剤の有機成分としては、アミノ基、イソシアネート基、チオール基、およびエポキシ基などが有効であり、無機成分としては、メトキシ基およびエトキシ基などが有効である。有効なシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「無電解めっき層」とは、例えば、無電解銅めっき層、無電解ニッケルめっき層、無電解パラジウムめっき層、及び無電解金めっき層が該当し、これらは公知の無電解めっき方法によって形成することができる。
液晶性ポリエステル樹脂を、中性重炭酸カルシウムの粉末を混合して射出成形することにより、基体の表層を剥がれ難くすることができる。また射出成形時の金型温度を、高温にすることによって、混合した中性重炭酸カルシウムの粉末が、液晶性ポリエステル樹脂の表面に浮き出ることを防止すると共に、基体の表層をより剥がれ難くすることができる。
アルカリ性水溶液によりスキン層の表面を親水性にして、安定剤の存在下で調整された貴金属ゾルを付与後に、アルカリ性水溶液若しくは過酸化水素水に浸漬、またはオゾン処理のいずれかを行って、シランカップリング剤の溶液に浸漬することによって、微小な貴金属をスキン層の表面に強く固定することが可能となり、この貴金属を触媒核とする無電解めっき層とスキン層との間の密着性を強くすることができる。
射出成形時に金型温度を高温にすることによって、射出速度を遅くすることができ、これにより混合した中性重炭酸カルシウムの粉末が、液晶性ポリエステル樹脂の表面に浮き出ることを、より効果的に防止できる。
本発明による無電解めっきの前処理方法について、1例を挙げて説明する。さて本発明による無電解めっき方法は、まず液晶性ポリエステル樹脂のI型(例えば住友化学株式会社の製品「#E4000」)100重量%に、充填物として中性重質炭酸カルシウム(例えば白石工業株式会社の製品「#RK・75−fa5」)30重量%を混合して練りこみ、これらの混合物であるペレットを作成する。
次にシリンダー温度を385℃、金型温度を260℃、及び射出速度を50mm/秒に設定して、上記ペレットを射出成形して基体を成形する。この基体を、温度23℃の苛性ソーダの水溶液に12時間浸漬して、表面を親水性に改質する。なおこの水溶液は、苛性ソーダ40gを1リットルの水に溶解させたものを使用する。次いで基体を、25℃の酸性水溶液に3〜5分間浸漬して中和処理を行う。なおこの酸性水溶液は、濃度35重量%の塩酸を使用する。
次に基体を水洗洗浄して乾燥させた上で、貴金属ゾルの室温の水溶液に10秒間程度浸漬する。この貴金属ゾルは、塩化パラジウム(II)を、安定剤である蔗糖の存在の下に、水中において水素化ホウ素ナトリウムによって還元して調製する。
安定剤である蔗糖の存在の下に貴金属ゾルを調製す方法は、特許第1995983に記載した方法による。例えば貴金属ゾルが、パラジウムコロイド粒子を含む溶液の場合、イオン交換水92.5ccに蔗糖1gを溶解し、攪拌しつつ、20mMの塩化パラジウム(PdC1/5NaCl)水溶液2.5cc、および40mMのNaBHの水溶液5ccを順次加えて、Pd−Suc100ccを調製した。調製したパラジウムゾルを25℃の雰囲気化に1週間静置し、熟成させる。このように調整した蔗糖安定化パラジウムゾルに、基体を25℃で30分間浸漬する。
次に貴金属ゾルを表面に付与した基体を、温度20℃、濃度4重量%の苛性ソーダのアルカリ性水溶液に10分間浸漬して、貴金属の表面に形成された安定剤である蔗糖の被覆を適度に除去する。貴金属は、蔗糖の被覆を適度に除去されて数10nm以下となり、基体のスキン層の内部に侵入し易くなるため、無電解めっきとの密着性が向上する。なお基体を、アルカリ性水溶液に浸漬する手段に替えて、5分間、オゾン処理してもよい。
次にシランカップリング剤の溶液として、1%の3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン溶液(水とアセトンとの混合割合が1:4)を使用し、この溶液に基体を5分間浸漬する。
最後に表面に貴金属が固定化された基体の表面に、無電解銅めっきを施して厚さ0.6μmの無電解銅めっき層を形成する。なお無電解銅めっきは、公知のめっき手段を使用できる。例えば液温を50℃に設定した無電解銅めっき液(例えば荏原ユージライト株式会社の製品「AISL−520」)に、基体を15分間程度浸漬する。
上述した無電解めっき方法によって、0.6μmの無電解めっき層を形成した。また無電解銅めっき層の密着力を測定するために、この無電解銅めっき層に電解銅めっき層を10μm積層した。無電解銅めっき後の表面の表面反射濃度を測定するために、無電解銅めっきを0.6μm施した。なお蔗糖の存在の下に貴金属ゾルを調製した後は、アルカリ性水溶液に浸漬する手段に替えて、5分間、オゾン処理した。
〔比較例1〕
実施例において、金型温度を下げ、かつ射出速度を速めて基体を射出成形した。すなわち金型温度を130℃に設定し、射出速度を150mm/秒に設定した。なおシリンダー温度は、実施例と同じにした。
〔比較例2〕
また従来の無電解めっき方法によって、液晶性ポリエステル樹脂の表面に無電解めっき層を形成した。すなわちめっきグレードの液晶性ポリエステル樹脂(住友化学株式会社の製品「SCC232-57)を、金型温度130℃、シリンダー温度385℃、及び射出速度150mm/秒に設定して射出成形し、化学エッチングによって表面を粗化し、これに無電解めっき層を形成した。
〔比較例3〕
実施例において、オゾン処理およびシランカップリング剤の溶液に浸漬する工程を省いた状態にて無電解銅めっき層を形成した。
〔比較例4〕
実施例において、蔗糖による安定化パラジウムコロイドの替わりに、クエン酸によって還元したパラジウムコロイドを使用して、無電解銅めっき層を形成した。
上述した「実施例」と「比較例1〜4」とについて、スキン層の内側部分の組織、並びに無電解銅めっき層の表面粗さ、密着力及び表面反射濃度を比較した。
基体のスキン層の内側部分の断面を電子顕微鏡で観察した結果、「比較例1」では、スキン層の内側部分は、中心のコア層と明確に区別できたが、「実施例」では、スキン層の内側部分は、中心のコア層と明確に区別できなかった。これによりスキン層の内側部分では、分子鎖の配向方向が、表面に沿う方向から徐々にコア部に向かう方向に変化することが確認できた。また基体のスキン層の表面を電子顕微鏡で観察した結果、「比較例1」においては、スキン層の表面に、中性重質炭酸カルシウムの粉末が浮き出て、背後側に溝が形成されたが、「実施例」においては、このような中性重質炭酸カルシウムの粉末の浮き出し、及び背後側の溝は認められなかった。
JIS H8504に基づく無電解銅めっき層のピール強度を測定した結果、「実施例」では0.6N/mmであった。このピール強度は、「比較例2」における0.8N/mmに対して低いが、実用的な密着強度としては十分であることが確認できた。
無電解銅めっき層の表面粗さを、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製の「#VK−9710」)によって計測した。JISB0601:2001に基づく表面粗さは、「比較例2」ではRa2.26μmであったが、「実施例」ではRa0.726μm以下であり、表面の平滑性が大幅に向上することを確認できた。
光反射濃度計(日本電色工業株式会社製の「#Color
Mate」)によって、無電解銅めっき層を0.6μm施した後のめっき層の表面反射濃度を測定した結果、「比較例2」では、YLW MOOEで0.574であった。これに対して「実施例」では、0.818であり、表面反射濃度が大幅に向上することが確認できた。
オゾン処理およびシランカップリング剤の溶液に浸漬する工程を省いた「比較例3」では、電解銅めっき後の密着性は低く、剥離接着強度を測定できなかった。
蔗糖による安定化パラジウムコロイドの替わりに、クエン酸によって還元したパラジウムコロイドを使用した「比較例4」では、無電解銅めっきの層のピール強度は、0.2N/mmに低下した。
射出成形した液晶性ポリエステル樹脂に対して、無電解めっき層の密着性と平滑性とが向上するため、電子機器等に関する産業に広く利用可能である。

Claims (8)

  1. 液晶性ポリエステル樹脂に中性重質炭酸カルシウムの粉末を混合して混合物を生成する第1工程と、
    上記混合物を射出成形して基体を成形する第2工程と、
    上記基体をアルカリ性水溶液に接触させて表面を親水性に改質する第3工程と、
    上記基体を安定剤の存在下で調整された貴金属ゾルに接触させる第4工程と、
    上記基体をアルカリ性水溶液若しくは過酸化水素水に浸漬、またはオゾン処理のいずれかを行う第5工程と、
    上記基体をシランカップリング剤の溶液に浸漬する第6工程と、
    上記基体の表面に無電解めっき層を形成する第7工程とを備え、
    上記第2工程における射出成形では、金型の温度を240〜300℃に設定する
    ことを特徴とする無電解めっき方法。
  2. 上記液晶性ポリエステル樹脂は、I型またはII型のいずれかであって、
    上記混合物の射出速度を50〜120mm/秒に設定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき方法。
  3. 上記中性重質炭酸カルシウムの粉末は、平均粒径が3〜7μmの不定形粒子であって、上記液晶性ポリエステル樹脂に対して10〜50重量%混合する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の無電解めっき方法。
  4. 上記基体の表面の親水性への改質工程におけるアルカリ性水溶液は、濃度1.0〜10.0重量%の苛性ソーダ及び苛性カリのいずれかの水溶液であって、
    上記基体の表面の親水性への改質は、上記水溶液の温度を20〜30℃に設定し、この水溶液に上記基体を1〜24時間浸漬して行なう
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無電解めっき方法。
  5. 上記安定剤は、蔗糖である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無電解めっき方法。
  6. 上記貴金属ゾルは、パラジウムのゾルである
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無電解めっき方法。
  7. 上記シランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランのいずれかである
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の無電解めっき方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の無電解めっき方法によって形成した無電解めっき層を有する
    ことを特徴とする構造体。
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CN106186427A (zh) * 2016-08-16 2016-12-07 深圳市福田区环境技术研究所有限公司 一种化学镀镍废液的处理工艺及装置
JP6315152B1 (ja) * 2016-09-26 2018-04-25 東レ株式会社 液晶性ポリエステル樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法

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