JP2013185129A - ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法 - Google Patents

ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013185129A
JP2013185129A JP2012053305A JP2012053305A JP2013185129A JP 2013185129 A JP2013185129 A JP 2013185129A JP 2012053305 A JP2012053305 A JP 2012053305A JP 2012053305 A JP2012053305 A JP 2012053305A JP 2013185129 A JP2013185129 A JP 2013185129A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dioxins
dioxin
silt
water
aqueous phase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012053305A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5938956B2 (ja
Inventor
Atsushi Takahashi
惇 高橋
Masaya Nakamura
雅哉 中村
Yuichiro Otsuka
祐一郎 大塚
Yuzo Suzuki
悠造 鈴木
Yoshihiro Katayama
義博 片山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takasago Thermal Engineering Co Ltd
Forestry and Forest Products Research Institute
Nihon University
Kantechs Co Ltd
Original Assignee
Takasago Thermal Engineering Co Ltd
Forestry and Forest Products Research Institute
Nihon University
Kantechs Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takasago Thermal Engineering Co Ltd, Forestry and Forest Products Research Institute, Nihon University, Kantechs Co Ltd filed Critical Takasago Thermal Engineering Co Ltd
Priority to JP2012053305A priority Critical patent/JP5938956B2/ja
Publication of JP2013185129A publication Critical patent/JP2013185129A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5938956B2 publication Critical patent/JP5938956B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Processing Of Solid Wastes (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】産業廃棄物中のダイオキシン類をさらに効率よく分解することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌、前記細菌の破砕物、及び前記破砕物の分画物のいずれか一以上を含有し、前記細菌の破砕物が前記細菌の菌体膜の破砕物を含み、前記分画物が前記菌体膜の分画物を含むものを、ダイオキシン類分解剤として用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ダイオキシン類の分解能に優れる酵素を用いるダイオキシン類分解剤、及び該分解剤を用いるダイオキシン類の分解方法に関する。
産業廃棄物の分解には、細菌による生分解が利用されている。このような産業廃棄物の生分解に利用される微生物としては、例えば、バチルス・ミドウスジ・SH2Bが知られている(特許文献1)。
また産業廃棄物としては、例えば焼却炉の使用、焼却施設の解体や焼却灰の埋め立てによって発生する、ダイオキシン類を含有する汚染物(ダイオキシン類汚染物)が知られている。
このようなダイオキシン類汚染物に含まれるダイオキシン類を生分解する方法としては、嫌気性細菌によってPCDDs(Polychlorinated dibenzo-p-dioxins)を脱ハロゲン
化する方法が知られており、ダイオキシン類のクロル基を水素化して無毒な化合物にする方法が開示されている(非特許文献1)。
また、ダイオキシン類汚染物を生分解によって浄化する方法として、ダイオキシン類汚染土壌又はそれを含有する水スラリーに、バチルス・ミドウスジ又はその菌体破砕物を混合して、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類を分解する方法も知られている(特許文献2、3)。
上記の状況において、これまでに本発明者らは新規微生物である受託番号NITE P−1023として寄託されているバチルス属の菌(Geobacillus sp. UZO3)を発見し、該微生物がバチルス・ミドウスジのダイオキシン類をさらに上回るダイオキシン類分解能を有することを見出した。そして、前記菌、前記菌体破砕物(前記菌の菌体膜の破砕物を含む)、及び前記菌体破砕物の分画物(前記菌体膜の分画物を含む)の何れか一以上を含有するダイオキシン類分解剤に係る発明、並びにこれを用いるダイオキシン類の分解方法に係る発明を完成させた。なお、該微生物は、ダイオキシン類のジアリルエーテル結合を切断することによって、そのダイオキシン類を分解することが本発明者らによって明らかになっている(非特許文献2)。
本発明者らによる上記発明により、従来のダイオキシン類分解性微生物を用いる場合に比べてより高い分解能でダイオキシン類を分解することが可能となった。
特表2002−505073号公報 特開2002−301466号公報 特開2004−298868号公報
Bunge et al., Nature, 421: 357-360, 2003 Y. Suzuki et al., Chemosphere 83: 868-872, 2011
しかしながら、ダイオキシン類分解能を有する微生物である上記Geobacillus sp. UZO3は好熱菌であり、活動温度が高いため、Geobacillus sp. UZO3そのものを用いる分解剤や
分解方法を実施するに当たり、消費エネルギーやコストがかかるなどの問題点がある。また、工業的スケールで汚染物の浄化を行うには、生分解処理のさらなる効率化が望まれる。
本発明は上記の状況に鑑み、Geobacillus sp. UZO3のダイオキシン類分解能を利用し、産業廃棄物中のダイオキシン類をさらに効率よく分解することが可能な技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究の結果、先に本発明者らが見出した新規バチルス属の菌Geobacillus sp. UZO3においてダイオキシン類分解能に寄与する酵素を特定し、その遺伝子をクローニングすることに成功した。そして、該遺伝子を導入した常温性の宿主細胞で該酵素を高発現させることにより、より効率の良いダイオキシン類生分解処理を実現させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌、前記細菌の破砕物、及び前記破砕物の分画物のいずれか一以上を含有するダイオキシン類分解剤であって、前記細菌の破砕物が前記細菌の菌体膜の破砕物を含み、前記分画物が前記菌体膜の分画物を含む、ダイオキシン類分解剤(以降、本発明のダイオキシン類分解剤と記す)。
[2]前記酵素が、Geobacillus 属に属する菌由来である、[1]に記載のダイオキシン類分解剤。
[3]前記酵素が、以下の(A)または(B)のタンパク質である、[1]又は[2]に記載のダイオキシン類分解剤。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質
[4]前記DNAが、以下の(a)または(b)のDNAである、[1]〜[3]のいずれかに記載のダイオキシン類分解剤。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1に記載のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質をコードするDNA
[5]前記細菌が、Escherichia coliである、[1]〜[4]のいずれかに記載のダイオキシン類分解剤。
[6]ダイオキシン類を含有する水相に、[1]〜[5]のいずれかに記載のダイオキシン類分解剤を混合して前記水相中のダイオキシン類を分解する工程を含む、ダイオキシン類の分解方法(以降、本発明のダイオキシン類分解方法と記す)。
[7]前記水相が、
ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する工程と、
分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシルトから除去する工程と、
洗浄されたシルト中のダイオキシン類を非水溶性溶剤に抽出する工程と、
非水溶性溶剤中のダイオキシン類を非水溶性溶剤から水溶性溶剤に抽出する工程と、
ダイオキシン類を抽出した水溶性溶剤と水とを混合する工程と、によって得られることを特徴とする[6]に記載のダイオキシン類の分解方法。
[8]前記水相が、
ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する工程と、
分離されたシルトとフミン質とを含有するアルカリ性の水スラリーを調製して水相にダイオキシン類を抽出する工程と、によって得られることを特徴とする[6]に記載のダイオキシン類の分解方法。
[9]水スラリーの調製前に、分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシ
ルトから除去する工程をさらに含む[8]に記載のダイオキシン類の分解方法。
本発明は、ダイオキシン類分解能を有する微生物由来のダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌を大量培養することにより、ダイオキシン類分解剤の安定的な製造を実現し、産業廃棄物等に含まれるダイオキシン類の生分解処理をさらに効率化、低コスト化する方法を提供する。
本発明のダイオキシン類の分解方法で用いられ得る浄化対象シルトの一調製方法を示す図である。 浄化対象シルトからダイオキシン類を抽出する一方法を示す図である。 浄化対象シルトからダイオキシン類を抽出する他の方法を示す図である。 分解対象となるダイオキシン類を含有する水相中のダイオキシン類を分解する一方法を示す図である。 浄化対象シルトからダイオキシン類の水相への抽出と分解とを行う一方法を示す図である。 ゲノムライブラリーから単離したpCDE1及びpCDE9を示す図である。 2,7−DCDD分解酵素遺伝子のサブクローニングを示す図である。 2,7−DCDD分解酵素遺伝子のサブクローニングを示す図である。 実施例1の2,7−DCDD分解実験におけるGC−MSチャートを示す図である。 実施例2の2,3,7,8−TCDD分解実験におけるGC−MSチャートを示す図である。 参考例におけるシルト2の示差熱分析及び熱重量測定の結果を示す図である。
<1>本発明のダイオキシン類分解剤
本発明のダイオキシン類分解剤は、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌、前記細菌の破砕物、及び前記破砕物の分画物のいずれか一以上を含有する。前記細菌の破砕物は、前記細菌の菌体膜の破砕物を含み、前記分画物は、前記菌体膜の分画物を含む。
本発明においてダイオキシン類分解酵素とは、ダイオキシン類のジアリルエーテル結合を切断する活性を有する酵素である。
本発明におけるダイオキシン類分解酵素は、Geobacillus属に属する菌から取得するこ
とができ、好ましくはGeobacillus sp. UZO3の他、Geobacillus thermodenitrificans NG80-2株、Geobacillus sp. G11MC16株、Geobacillus sp. C56-T3株、Geobacillus sp. Y412MC52株、Geobacillus kaustophilus HTA426株、Geobacillus sp. WCH70株、Geobacillus
sp. Y4.1MC1株などを挙げることができる。なお、Geobacillus sp. UZO3は、特許法施行規則に基づく微生物の寄託機関であり、またブダペスト条約に基づく国際寄託当局である特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)へ、受託番号NITE P−1023として寄託されている。
本発明においてダイオキシン類分解活性とは、特に断らない限り、ダイオキシン類のジアリルエーテル結合を切断する活性をいう。
ダイオキシン類のジアリルエーテル結合の切断反応は、ダイオキシン類のベンゼン環をつなぐ酸素架橋が還元されることにより進行する。2,3,7,8−テトラクロロジベン
ゾジオキシン(TCDD)を例に下記反応式1を参照して説明すると、TCDDの2つのベンゼン環をつなぐジアリルエーテル結合の酸素がそれぞれ還元され、3’,4’,4,5−テトラクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテル(TCDE)を経て、2つの3,4−ジクロロフェノールに分解される。
本発明におけるダイオキシン類分解酵素として、より具体的な例を示すと、下記(A)または(B)のタンパク質が挙げられる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、Geobacillus sp. UZO3から、本発明者らが新規に単離し、ダイオキシン類のジアリルエーテル結合の切断反応を触媒する酵素のアミノ酸配列を特定したものである。
本発明におけるダイオキシン類分解酵素としては、上記(A)に示すタンパク質と実質的に同じタンパク質も用い得る。具体的には、(B)に示すタンパク質が提供される。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造や活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜100個、好ましくは2〜50個、さらに好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。ただし、(B)タンパク質のアミノ酸配列において1または数個の欠失、置換、挿入、及び/又は付加のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列の場合には、(A)に示すタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上のダイオキシン類分解活性を保持していることが望ましい。
また、上記のようなアミノ酸変異を有するタンパク質は、ダイオキシン類分解活性を保持する限りにおいて、配列番号2に記載のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものであってもよい。
上記(B)に示されるようなアミノ酸の変異は、例えば部位特異的変異法によって、本タンパク質をコードする遺伝子の特定の部位のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されるように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変された塩基配列を有するDNAは、周知の突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、例えば、上記(A)に示すタンパク質をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び(A)をコードするDNAを保持する細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
また、上記のような塩基改変に伴うアミノ酸の欠失、置換、挿入、及び/又は付加等の変異には、微生物の種あるいは菌株による差等、天然に生じる変異も含まれる。上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、発現産物のダイオキシン類分解活性を調べることにより、配列番号2に記載のタンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは得られる。
本発明におけるダイオキシン類分解酵素をコードするDNAとしては、好ましくは下記(A)または(B)のタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質
さらに具体的には、下記(a)または(b)のDNAが好ましく挙げられる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1に記載のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質をコードするDNA
ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。このような条件でハイブリダイズするDNAの中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、市販の発現ベクターにつなぎ、適当な宿主で発現させて、発現産物のダイオキシン類分解活性を測定することによって容易に取り除くことができる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAは、Geobacillus sp. UZO3の染色体DNA、またはDNAライブラリーから、PCRまたはハイブリダイゼーションによって取得することができる。PCRに用いるプライマーは、例えばダイオキシン類分解酵素に基づいて決定された内部アミノ酸配列に基づいて設計することができる。PCR用のプライマーとして、5'非翻訳領域及び3'非翻訳領域に対応する配列を有するプライマーを用いると、ダイオキシン類分解酵素のコード領域全長を増幅することができる。
また、配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAまたは同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ダイオキシン類分解活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによって、(b)配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと実質的に同一のDNAは得られる。
本発明のダイオキシン類分解剤は、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌、前記細菌の破砕物、及び前記破砕物の分画物のいずれか一以上を含有する。すなわち、本発明のダイオキシン類分解剤は、前記形質転換された細菌が発現したダイオキシン類分解酵素を、粗酵素の状態で含む。
本発明において、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌は、宿主となる細菌にダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを含む組換えベクターを導入すること、または宿主となる細菌のゲノムDNA上にダイオキシン類分解酵素をコードするDNAのコピー存在させることによって得ることができる。
宿主となる細菌にダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを含む組換えベクターを導入することは、周知の方法により行うことができる。例えば、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを、宿主となる細菌で機能するベクターと連結して組換えDNAを作製し、汎用されている形質転換法に従って該組換えDNAを宿主細菌に導入する。
マルチコピー型のベクターを用いれば、本発明のダイオキシン類分解酵素の発現を増強させることができるため好ましい。また、宿主細菌の細胞内において自律複製可能なベク
ターが好ましく、そのようなベクターとしては、宿主細胞がエシェリヒア コリである場
合はpBluescript II KS(+)、pBluescript II SK(+)、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pACYC184、RSF1010、pBR322、pMW219、pSTV29等が挙げられる。また、宿主細胞がバチルス ズブチリスである場合はpBE-S DNA、pAL10、pAL12等が挙げられる。
宿主となる細菌としては、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア
属細菌、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)などの原核細胞が好ましく例示でき、Escherichia coliがより好ましく、E. coli EPI300株、E. coli JM109株、E. coli BL21株、E. coli DH5α株、及びE. coli XL-1 Blue株がさらに好ましい。
ダイオキシン類分解酵素をこれらの細菌で発現させることにより、Geobacillus sp. UZO3より低温度で生育させ効率良く該酵素を製造できるため、後述するダイオキシン類分解方法において処理コストを低減させることができる。また、安全で安定かつ確実なダイオキシン類汚染物の浄化処理を実現することができる。
宿主となる細菌のゲノムDNA上にダイオキシン類分解酵素をコードするDNAのコピー存在させることも、周知の方法により行うことができる。例えば、ゲノムDNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。ゲノムDNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAをトランスポゾンに搭載してこれを転移させてゲノムDNA上に多コピー導入することも可能である。ゲノム上に遺伝子が転移したことの確認は、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAの一部をプローブとして、サザンハイブリダイゼーションを行うことによって確認できる。
ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌においては、本発明のダイオキシン類分解剤の性能を向上させる観点から、ダイオキシン類分解酵素の発現を増強することが好ましい。
ダイオキシン類分解酵素の発現を増強する方法としては、前述したマルチコピーの他、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを強力なプロモーターの制御下に置く方法や、宿主細菌で大量発現することが知られているタンパク質との融合タンパク質として発現させる方法があり、適宜利用することができる。
本発明のダイオキシン類分解剤に含まれる、ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌は、特に断らない限り、生菌及び/又は死菌を指す。
本発明においては、特に断らない限り、前記形質転換された細菌の破砕物とは、前記細菌の菌体全体(菌体膜を含む)の破砕物を言う。前記形質転換された細菌の菌体膜を含む菌体破砕物は、微生物の菌体破砕物を得るために通常用いられる方法によって得ることができる。このような方法としては、例えば、超音波、圧搾、細胞膜分解酵素の添加等によって菌体を破砕する工程と、必要に応じて破砕物からの菌体膜分画と細胞質分画とを分離する工程とを含む方法が挙げられる。
また、前記菌体破砕物の分画物は、ダイオキシン類分解酵素を少なくとも含有する。このような分画物は、前記菌体破砕物全体もしくは菌体膜の破砕物から、ダイオキシン類分解酵素を抽出することによって、または前記菌体破砕物全体もしくは菌体膜の破砕物から、ダイオキシン類分解酵素以外のタンパク質を分離することによって得られる。このような抽出や分離は、例えば、硫安沈殿法などの沈殿法による分離、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどのク
ロマトグラフィーによる分離、電気泳動法による分離、及びこれらの方法の任意の組み合わせによって実施することができる。
本発明のダイオキシン類分解剤は、ダイオキシン類の分解に用いることができる。
なお、本発明においてダイオキシン類とは、ポリ塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフラン等、塩素で置換された2つのベンゼン環及びジアリルエーテル結合(酸素架橋)を有する物質を指す。本明細書において、ダイオキシン類と記す場合、これらの化合物の一部又は全部を表す。
ダイオキシン類分解剤がダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌の生菌を含む場合は、該細菌が増殖し該酵素を発現する条件のダイオキシン類を含有する水相に、ダイオキシン類分解剤を混合することによって、水相中のダイオキシン類の分解に用いることができる。
具体的な使用条件としては、例えばダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを含むpBluescript II KS(+)で形質転換したE.coliを用いて、lacプロモーターを利用した誘導条件により発現させて、ダイオキシン類分解剤として用いる場合、水相中の細菌が水相に対する重量比で1/1000〜1/10000であり、水相中のダイオキシン類の濃度が100〜600pg−TEQ/総量であり、温度が28〜65℃である条件が挙げられる。ダイオキシン類の分解の促進の観点から、温度が28〜65℃であることが好ましい。また、前記の観点から、ダイオキシン類以外の基質の濃度が1〜3質量%であり、水相のpHが7.0〜8.0であることがより好ましい。ダイオキシン類以外の基質としては、例えば、コンスティープリカー、トリプチソイブロス、及びイーストエキストラクトが挙げられる。
ダイオキシン類分解剤が前記細菌の死菌、前記細菌の破砕物及び前記分画物のいずれか一以上を含む場合は、ダイオキシン類を含有する水相に、ダイオキシン類分解剤を混合することによって、水相中のダイオキシン類の分解に用いることができる。
具体的な使用条件としては、例えば、水相中のダイオキシン類分解剤の含有量が水相に対する重量比で1/1000〜1/10000であり、水相中のダイオキシン類の濃度が100〜1,000pg−TEQ/総量であり、温度が28〜65℃である条件が挙げられる。ダイオキシン類の分解の促進の観点から、温度が65℃であることが好ましい。また、前記の観点から、水相のpHが7.0〜8.0であることがより好ましい。
本発明のダイオキシン類分解剤は、そのまま前記水相と混合して用いることができる。また、タンパク質やダイオキシン類等の有機化合物に対して吸着能力を有するゼオライトや活性炭、またはハイドロキシアパタイト等の無機担体や、又はアクリルアミドポリマー、アルギン酸やカラギーナン等の有機高分子系担体等の担体に、通常用いられている方法に従って本発明のダイオキシン類分解剤を担持させて用いることもできる。
<3>本発明のダイオキシン類分解方法
本発明のダイオキシン類の分解方法は、ダイオキシン類を含有する水相に、本発明のダイオキシン類分解剤を混合して前記水相中のダイオキシン類を分解する工程を含む。
前記水相としては、例えば、ダイオキシン類を含有するダイオキシン類汚染物と水との混合物、及び、水溶性成分によって水相中に抽出されたダイオキシン類と水との混合物、が挙げられる。ダイオキシン類汚染物としては、例えば、飛灰(フライ・アッシュ)、ダイオキシン類を含有する土壌、及びダイオキシン類の溶液が挙げられる。
前記水相は、ダイオキシン類汚染物と水とを混合することによって得ることができる。前記水相は、ダイオキシン類汚染物からのダイオキシン類の抽出処理によって得られる水
相であることが、ダイオキシン類の分解の効率や汚染物の浄化作業の効率の向上の観点から好ましい。
このようなダイオキシン類汚染物からのダイオキシン類の抽出処理は、ダイオキシン類汚染物の種類に応じて行うことができる。例えばダイオキシン類汚染物がダイオキシン類を含有するダイオキシン類汚染土壌である場合では、土壌は通常にはシルトを含有し、このシルトにダイオキシン類が蓄積しやすいことから、ダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離し、シルトからダイオキシン類を抽出することによって、ダイオキシン類の抽出処理による前記水相を得ることができる。
例えば、前記水相は、ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する第一の工程と、分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシルトから除去する第二の工程と、洗浄されたシルト中のダイオキシン類を非水溶性溶剤に抽出する第三の工程と、非水溶性溶剤中のダイオキシン類を非水溶性溶剤から水溶性溶剤に抽出する第四の工程と、ダイオキシン類を抽出した水溶性溶剤の水溶液を非水溶性溶剤から分液する第五の工程と、によって得ることができる。
また例えば、前記水相は、ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する第一の工程と、分離されたシルトとフミン質とを含有するアルカリ性の水スラリーを調製して水相にダイオキシン類を抽出する第六の工程と、によって得ることができる。この水相の調整方法では、シルトからのダイオキシン類の抽出効率をより高める観点から、第一の工程と第六の工程との間に前記第二の工程をさらに含めることができる。
前記第一の工程は、ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する。シルトは、珪藻の堆積物から生成された成分と言われており、土壌中の成分のうち、砂と粘土の中間の粒径である、5μm以上75μm未満の粒径を有する粒子の成分である。前記第一の工程では、ダイオキシン類汚染土壌からシルトのみが分離されてもよいし、主成分としてシルトがそれ以外の成分を副成分として伴って分離されてもよい。シルトのみの分離は、ダイオキシン類汚染土壌からのダイオキシン類の抽出率を高める観点から好ましく、シルトを主成分とし泥等の副成分を含むシルトの分離は、シルトの分離作業の簡易化の観点から好ましい。
第一の工程は、土壌の分級における常法によって行うことができる。第一の工程に用いられる方法としては、例えば、所定量の水を土壌に加えた試料を振動する篩にかけて、篩の目開きに応じた所望の粒径の成分を分離する、電動ふるい装置を用いる加水ふるい法が挙げられる。
前記第二の工程は、分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシルトから除去する。第二の工程におけるシルトからのガラス成分の除去は、シルトへの酸の添加と、シルト及び酸の十分な混合と、酸によってゲル化したガラス成分のシルトからの分離とによって行うことができる。シルトと酸との混合はスラリーを撹拌可能な通常の撹拌装置を用いて行うことができ、シルトからのゲル化したガラス成分の除去は、例えば、回転式水洗浄機と、スクリュー型湿式分別機又はフィルタプレス型脱水機とを用いた一連の加水洗浄・分別装置を用いて行うことができる。
第二の工程に用いられる酸は一種でも二種以上でもよい。このような酸としては、例えば塩酸、硫酸、及び硝酸等の無機酸や、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。第二の工程に用いられる酸の濃度は、シルトのガラス成分を除去する観点から、1規定以上であることが好ましく、2規定以上であることがより好ましい。また、第二の工程における酸の使用量は、シルトと酸との混合性の観点から、シルトに対して体積比で1以上であることが
好ましく、2以上であることがより好ましい。
前記第三の工程は、洗浄されたシルト中のダイオキシン類を非水溶性溶剤に抽出する。前記非水溶性溶剤には、静置によって水と分液することができ、かつ、シルト中の有機物を吸収してシルトから分離することができる成分を用いることができる。非水溶性溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような非水溶性溶剤としては、例えば、アルカン等の飽和脂肪族炭化水素、アルケン等の不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素、及びこれらの非水溶性の誘導体が挙げられる。非水溶性溶剤としてより具体的には、炭素数16以上のアルカンが挙げられ、さらにはn−ヘキサデカンが挙げられる。
第三の工程は、20〜65℃で行われることが好ましく、20〜40℃で行われることがより好ましい。シルトからダイオキシン類を抽出した非水溶性溶剤は、静置及び分液によって回収することができる。
前記第四の工程は、非水溶性溶剤中のダイオキシン類を非水溶性溶剤から水溶性溶剤に抽出する。前記水溶性溶剤は、非水溶性溶剤よりも高いダイオキシン類の溶解性を有し、かつ水溶性を有する溶剤である。水溶性溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような水溶性溶剤としては、例えばジメチルスルホキシド及びアセトンが挙げられる。第四の工程は、10〜30℃で行われることが好ましく、常温で行われることがより好ましい。第四の工程は、例えば、ダイオキシン類を抽出した非水溶性溶剤と水溶性溶剤とを混合することによって行うことができる。
前記第五の工程は、ダイオキシン類を抽出した水溶性溶剤の水溶液を非水溶性溶剤から分液する。第五の工程は、第四の工程における非水溶性溶剤と水溶性溶剤との混合溶剤にさらに水を加えて混合し、水溶性溶剤と水溶性溶剤に溶解したダイオキシン類とを水相に移し、この水相を非水溶性溶剤と分液することによって行うことができる。前記混合溶剤に添加される水の量は、水溶性溶剤の水溶液が非水溶性溶剤と静置によって分液可能な量であればよい。
前記第六の工程は、分離されたシルトとフミン質とを含有するアルカリ性の水スラリーを調製して水相にダイオキシン類を抽出する。フミン質とは、植物等が微生物によって分解されるときの最終分解生成物で、直鎖炭化水素と多環芳香族化合物(分子量数千から1万程度)の難分解性高分子化合物であり、腐植質ともいう。フミン質はフミン酸やフルボ酸を含む。フミン質には、石炭化度の低い泥炭や褐炭から分離された成分を用いることができ、また、パルプの製造において排出されるパルプ廃液を用いることができる。
フミン酸とは、フミン質のうち、アルカリに溶けて、酸で沈殿する有機高分子化合物をいう。このような溶解特性を有することから、フミン質はフミン酸であることが、ダイオキシン類の抽出効率の向上、及び抽出、分離作業のさらなる効率化の観点から好ましい。
第六の工程における水スラリーは、ダイオキシン類汚染土壌から分離されたシルトにフミン質を添加し、必要に応じて水を添加することによって調製することができる。水スラリーにおける水の含有量は、流動性の担保、本発明のダイオキシン類分解剤とダイオキシン類との反応、及び処理量の減容の観点から、シルト100質量部に対して80〜300質量部であることが好ましく、100〜250質量部であることがより好ましく、100〜150質量部であることがさらに好ましい。
また、水スラリーにおけるフミン質の含有量は、シルトからのダイオキシン類の抽出性能を高める観点から、シルト100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましく、80〜100質量部であることが
さらに好ましい。
水スラリーのアルカリ性への調整は、水スラリーのpHをアルカリ側の所望のpHに調整可能な薬剤の水スラリーへの添加によって行うことができる。このような薬剤としては、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリや、アルカリ性を維持するpH緩衝液が挙げられる。水スラリーのpHは、フミン質、例えばフミン酸の水への可溶性を維持する観点から、7より大きく9以下であることが好ましく、8〜9であることがより好ましく、9であることがさらに好ましい。
前記水相の調整方法には、前述した第一から第六の工程以外の他の工程をさらに含めることができる。このような他の工程としては、例えば、摩砕処理工程、及びアルコール処理工程が挙げられる。
前記摩砕処理工程は、前記第一の工程に先立って、ダイオキシン類汚染土壌の一部又は全部を揉み擦り合わせる。摩砕処理工程によって、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類はシルトにより一層偏在することから、摩砕処理工程は、シルトのダイオキシン類の含有量を高める観点から好ましい。摩砕処理工程は、ダイオキシン類汚染土壌を混練可能な装置、例えば新六精機株式会社製、骨材研磨機「ハリケーン」(登録商標)を用いて行うことができる。
前記アルコール処理は、前記第二の工程に続いて、酸処理されたシルトとアルコールとを混合する。アルコールは、タンパク質に対して脱水作用を呈し、タンパク質を変性させて収縮させる。アルコール処理は、シルトの細孔中に収容されている、ダイオキシン類を含みやすい有機物を収縮させて、シルトからのダイオキシン類の抽出効率を高める観点から好ましい。
アルコール処理工程で用いられるアルコールには、前述したタンパク質の変性を生じさせるアルコールを用いることができる。アルコールは一種でも二種以上でもよい。このようなアルコールとしては、例えば、エタノール及びプロパノールが挙げられる。アルコール処理におけるアルコールの濃度は、シルトからの有機物の抽出率をさらに高める観点から、80体積%以上であることが好ましい。またアルコール処理は、常温で行うことができ、アルコール処理時間は12〜24時間であることが好ましい。
前述した水相の調製方法では、シルト中のダイオキシン類の含有量が所望の値を下回るまで、第三の工程でダイオキシン類が抽出されたシルトを第三の工程やアルコール処理工程で処理されるシルトとして繰り返し使用することができ、又は第六の工程でダイオキシン類が抽出されたシルトを第六の工程で処理されるシルトとして繰り返し使用することができる。
本発明のダイオキシン類の分解方法は前述の水相の調製方法と、ダイオキシン類汚染土壌におけるシルト以外の土壌成分やダイオキシン類が除去されたシルトを回収する工程をさらに含むことによって、ダイオキシン類汚染土壌の浄化を行うことができる。このような本発明のダイオキシン類の分解方法では、ダイオキシン類汚染土壌の採取場所で分解処理が行われること、及び水スラリーとしてダイオキシン類汚染土壌が搬入されること、がダイオキシン類の拡散を防止する観点から好ましい。
本発明のダイオキシン類の分解方法によれば、高いダイオキシン類の分解活性と、高い再現性とが得られる。
本発明のダイオキシン類の分解方法において、水相中のダイオキシン類の分解の終点は
、水相中のダイオキシン類の濃度によって決めることができる。水相中のダイオキシン類の濃度は、水相からの適当な有機溶媒(例えば酢酸エチル等)への抽出やさらなる適当な誘導体化を利用することによって、GC−MSによってダイオキシン類、その誘導体化物、又はその分解物を検出し、求めることができる。
また、本発明のダイオキシン類の分解方法において、ダイオキシン類汚染土壌の浄化の終点は、水相中のシルトにおけるダイオキシン類の濃度によって決めることができる。水相中のシルトにおけるダイオキシン類の濃度は、例えば、従来のように、シルトを水相から採取し、シルト中のダイオキシン類を水相に抽出し、抽出されたダイオキシン類に対して、ダイオキシン類と選択的に結合する抗体を用いるELISA法を適用することによって求めることができる。
本発明のダイオキシン類の分解方法において、ダイオキシン類を含有する浄化対象シルトは、例えば図1に示すように、摩砕処理機を用いてダイオキシン汚染土壌を摩砕処理し、次いで電動ふるい装置を用いて砂礫、シルト、及び水に分離することによって、分離されたシルトとして得ることができる。また前記浄化対象シルトは、図1に示すように、分離されたシルトを、摩砕処理機を用いて酸とさらに摩砕処理することによって、酸処理シルトとして得ることができる。摩砕処理機には、例えば新六精機株式会社製、骨材研磨機「ハリケーン」(登録商標)を用いることができ、電動ふるい装置には、例えば筒井理化学器械株式会社製、ふるい振とう機を用いることができる。分離された砂礫は、ダイオキシン類の濃度が規制値未満であれば土壌として埋め立て等に再利用することができる。分離された水は、シルトの分離に再利用することができる。
浄化対象シルトの浄化は、例えば図2に示すように、撹拌装置を用いてアルカン系溶媒等の非水溶性溶剤と浄化対象シルトとを撹拌し、シルトを含む第一の水相、及び第一の油相に分離し、撹拌装置を用いて、分離した第一の油相をジメチルスルホキシド(DMSO)等の水溶性溶剤と撹拌し、この撹拌後に水を混合し、第二の水相及び第二の油相に分離することによって行うことができる。浄化対象シルト中のダイオキシン類は、非水溶性溶剤及び水溶性溶剤を経て第二の水相に抽出される。撹拌装置には、水相及び油相を収容する槽と、これらの二相を十分に撹拌、混合可能な撹拌機とを有する装置を用いることができる。
浄化対象シルトと非水溶性溶剤との撹拌前にエタノール等のアルコールとの撹拌や浸漬によって浄化対象シルトをアルコール処理すると、浄化対象シルトからのダイオキシン類のアルカン系溶媒への抽出効率を高める観点から好ましい。また、第一の水相は、浄化対象シルトとして、非水溶性溶剤による抽出操作に繰り返し用いてもよい。また、第二の油相は、非水溶性溶剤として再利用することができる。
また浄化対象シルトの浄化は、例えば図3に示すように、撹拌装置を用いて浄化対象シルト、水、フミン酸、及びアルカリを撹拌し、シルトと上澄み(水相)との分離することによっても行うことができる。浄化対象シルト中のダイオキシン類は、フミン酸によって水相に抽出される。シルトと上澄みとの分離は、例えば沈殿槽や遠心分離機による固液分離のような、スラリーからの土壌の通常の分離方法によって行うことができる。分離したシルトは、そのダイオキシン類の濃度に応じて、浄化対象シルトとして繰り返し使用してもよい。また分離したシルトは、そのダイオキシン類の濃度に応じて、摩砕処理機による酸処理を行って酸処理シルトとした後に浄化対象シルトとして繰り返し使用してもよい。分離したシルトは、ダイオキシン類の濃度が規制値未満であれば土壌として再利用することができる。
図2に示す方法における第二の水相や図3に示す方法における上澄み等の、分解の対象となるダイオキシン類が含まれている分解対象水相中のダイオキシン類の分解は、図4に
示すように撹拌装置又は撹拌培養装置を用いて分解対象水相とダイオキシン類分解剤と撹拌することによって行うことができる。それにより分解対象水相中のダイオキシン類は分解され、浄化水となる。
本発明のダイオキシン類分解酵素を発現する生菌をダイオキシン類分解剤として用いる場合は、撹拌培養装置を用いる。本発明のダイオキシン類分解酵素を発現する菌体破砕物又はその分画物をダイオキシン類分解剤として用いる場合は、撹拌培養装置及び撹拌装置のいずれを用いてもよい。
水相中のダイオキシン類濃度が規制値以上である場合には、ダイオキシン類分解剤やフミン酸の追加投入や、水相の温度の調整を必要に応じて行う。
ここでの撹拌装置は、水相を収容する槽を有し、必要に応じて水相を十分に撹拌可能な撹拌機を有する装置である。撹拌培養装置は、前述の撹拌装置の構成に加えて、本発明のダイオキシン類分解酵素を発現する生菌が生育可能な温度に水相の温度を調整する装置をさらに有する装置を用いることができる。
浄化水は、必要に応じて活性汚泥処理等のさらなる処理を施して放流することができる。また浄化水は、例えば本発明のダイオキシン類分解酵素を発現する生菌をダイオキシン類分解剤として用いる場合では、浄化水中のダイオキシン類分解剤を回収し、ダイオキシン類分解剤として再利用することができ、また図示の方法における水として再利用することができる。
本発明のダイオキシン類の分解方法では、浄化対象シルトからのダイオキシン類の水相への抽出と、水相におけるダイオキシン類の分解とを一つの操作で行うことも可能である。浄化対象シルトからのダイオキシン類の分解は、例えば図5に示すように、図4に示す分解方法と同様にダイオキシン類分解剤の種類に応じて撹拌装置又は撹拌培養装置を用いて、浄化対象シルト、水、フミン酸、アルカリ、及びダイオキシン類分解剤を撹拌し、シルトと上澄み(水相)との分離することによっても行うことができる。
浄化対象シルト中のダイオキシン類は、フミン酸によって水相に抽出され、水相中でダイオキシン類分解剤によって分解される。分離したシルトは、図3に示す浄化対象シルトの浄化と同様に、シルト中のダイオキシン類の濃度に応じて、浄化対象シルトとして繰り返し使用してもよいし、摩砕処理機による酸処理を行って酸処理シルトとした後に浄化対象シルトとして繰り返し使用してもよい。
分離したシルトは、ダイオキシン類の濃度が規制値未満であれば土壌として再利用することができる。浄化水は、図4に示す方法と同様に放流してもよいし、ダイオキシン類分解剤を含む部分を採取してダイオキシン類分解剤として再利用してもよいし、図示の方法における水として再利用してもよい。
図1に示すシルトの酸処理では、例えば20%の濃度の塩酸を用いた摩砕処理を1時間以上行うことによってシルトの乾燥重量の6%に相当するガラス成分をシルトから分離することができる。酸処理シルトは、ガラス成分の除去やその後のアルカリの使用量を抑制する観点から、その後の工程に用いる前に水洗されることが好ましい。酸処理シルトの水洗には例えばシルトと同じ重量の水が用いられ、水洗の回数は特に限定されないが二回以上であることが好ましい。
図2に示す方法における非水溶性溶剤であるアルカン系溶媒には、例えばn−ヘキサデカンを用いることができる。アルカン系溶媒の使用量は、例えば浄化対象シルトを含有する水相と同体積の量であり、非水溶性溶剤へのダイオキシン類の抽出は、例えば50〜65℃で行うことができる。
また図2に示す方法における水溶性溶剤の使用量は、例えば油相に対して8〜10体積%である。非水溶性溶剤から水溶性溶剤へのダイオキシン類の抽出は、例えば常温で12時間の攪拌により行われる。またこれらの溶剤の混合物と水との混合によるダイオキシン類の水相への抽出は、例えば常温で12時間の攪拌により行われる。このときの水の使用量は例えば油相と同体積の量である。
図2に示す方法においてアルコール処理を行う場合では、アルコールの使用量は例えば浄化対象シルトを含有する水相に対して80体積%以上となる量である。アルコール処理は、例えば98%エタノールを用いて常温で4時間攪拌することによって行うことができる。
図3や図5に示す方法における浄化対象シルトに対するフミン酸の使用量は、浄化対象シルトの乾燥重量に対して例えば15〜30質量%である。またアルカリには例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いることができ、水相のpHは例えば9に調整される。またダイオキシン類分解剤として本発明のダイオキシン類分解酵素を発現する生菌を用いる場合の使用量は、例えば水相において0.1〜0.01質量%である。生菌を用いる場合では、前記水相へ培地をさらに加えることが好ましい。このような培地としては、例えば、水相に対して3%のコンスティープリカー又はトリプチソイブロス等の培地と0.3%濃度のイーストエキストラクトとの溶液が挙げられる。図3に示す浄化対象シルトからのフミン酸による水相へのダイオキシン類の抽出は、例えば25℃において160rpmで24時間撹拌することによって行うことができる。
図4や図5に示す方法において、ダイオキシン類分解剤によるダイオキシン類の分解における水相の温度は、生菌を使用する場合では例えば65℃以上、前記菌体破砕物又はその分画物を使用する場合では例えば28℃以上である。ダイオキシン類分解剤と水相との撹拌時間は、例えば1〜24時間である。
前記の浄化対象シルトの浄化では、採用する方法によって多少は異なるが、一回の抽出でシルト中のダイオキシン類を約50%まで水相に抽出することができ、水相に抽出したダイオキシン類の約90%かそれ以上を分解することができる。ダイオキシン類汚染土壌中の実際のダイオキシン類の濃度は、環境基準を若干超える程度であることが多いことから、通常はダイオキシン類の水相への一回の抽出によってダイオキシン類汚染土壌が浄化されることが期待される。
また、抽出を繰り返すことによってダイオキシン類汚染土壌をさらに一層浄化することができる。さらに、水スラリーの調製前にシルトを酸処理することによって、ダイオキシン類の抽出効率をより高めることができ、酸処理されたシルトをさらに水洗することによって、ダイオキシン類の抽出効率をより一層高めることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<Geobacillus sp. UZO3株からのダイオキシン類分解酵素をコードする遺伝子のクローニング>
ダイオキシン類汚染土壌から分離したシルト成分から得た受託番号NITE P−1023として寄託されているバチルス属の菌Geobacillus sp. UZO 3株において、ダイオキ
シン類分解活性を示す酵素をコードする遺伝子を以下の手順でクローニングした。
(1)大腸菌を宿主としたGeobacillus sp. UZO3株のゲノムライブラリーの作成
まず、ダイオキシン類分解活性を持つUZO3株の細胞からゲノムDNAを精製した。続いて、超音波による物理的切断によりUZO3株のゲノムDNAを部分消化し、パルスフィールドゲル電気泳動で33〜48kbp付近のサイズのDNAをゲルから分画した。切り出したゲル断片からアガラーゼ処理によりDNAを精製し末端の平滑化を行った。これをインサートDNAとした。調製したインサートDNA断片はpCC1FOSベクター(EPICENTRE)と、T4 DNA ligase(タカラバイオ株式会社)を用いて4℃で16時間
ライゲーション反応を行った。ベクターライゲーション後、MaxPlax Lambda packaging Extract (EPICENTRE)を用いて、in vitro packagingを行った。ライブラリーの一部を用いて宿主E. coli EPI300株に導入した。
(2)2,7−DCDD分解活性を持つ大腸菌クローンのスクリーニング
2,7−DCDDを基質として用い、UZO3株のゲノムライブラリーから2,7−DCDD分解活性を有する大腸菌クローンをスクリーニングした。その結果、2,7−DCDD分解活性を有する2種類のクローン(プラスミドpCDE1及びpCDE9)を単離した。pCDE1及びpCDE9のシークエンス解析を行ったところ、それらは重複したDNA領域を有しており、この領域に2,7−DCDD分解酵素遺伝子がコードされている事が示唆された(図6)。
(3)2,7−DCDD分解酵素遺伝子のサブクローニング
2,7−DCDD分解活性を持つDNAの機能領域を特定するため、pCDE1及びpCDE9から、前記重複したDNA領域のサブクローニングを行った。該領域内の8.4、6.3及び6.5kbpのBamHI断片をpCC1FOSベクターに導入し、これで形質転換したE. coli EPI300株を用いて2,7−DCDD分解活性を解析した。その結果、8.4kbpのBamHI断片で2,7−DCDD分解活性が検出された。シークエンス解析を行ったところ、この8.4kbpのBamHI断片内には19個のORFがコードされている事が予測された(図7)。
続いて、前記8.4kbpのDNA断片から2,7−DCDD分解活性を持つDNA領域をさらに狭めるため、適当な制限酵素でDNAを切断し、pBluescript II KS(+)ベクターに導入後、これで形質転換したE. coli JM109株を用いて各々の2,7−DCDD分解
活性を解析した(図8)。その結果、ORF6をコードするEcoRV−NheI断片(プラスミドpBKSEN6)を導入したE. coli JM109株で2,7−DCDD分解活性が
検出された。さらに、同様の組換え大腸菌で2,3,7,8−TCDD分解活性が検出された。
(4)ダイオキシン類分解酵素をコードする遺伝子のシークエンス解析
上記の如く得られた8.4kbpのBamHI断片に含まれるORF6のシークエンス解析を行ったところ、ダイオキシン類分解酵素をコードする遺伝子の塩基配列(配列番号1)を得た。さらに、かかる遺伝子から、ダイオキシン類分解酵素のアミノ酸配列(配列番号2)を特定した。
なお、Geobacillus sp. UZO3から取得した配列番号2に記載のアミノ酸配列と高い相同性(80%以上)を有するタンパク質は、他のGeobacillus属に属する菌にも存在するこ
とが確認された。
また、上記の如く得られた8.4kbpのBamHI断片のシークエンス解析を行ったところ、19個のORFのうちORF1〜6にコードされる遺伝子は、Riboflavin生合成経路に関与する酵素遺伝子群である事が推測された(図8)。特にORF6は、5−アミノ−6−リボシルアミノ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン−5’−フォスフェイトの酸素架橋を切断して5−アミノ−6−リボチルアミノ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン−5’−フォスフェイトに還元する反応を触媒すると推測され
ている酵素をコードする遺伝子と高い相同性を示した。
一般に酵素タンパク質の基質特異性は必ずしも厳密ではなく、基質認識に一定の「あいまいさ」が存在する場合がある。ORF6にコードされる酵素は基質特異性にある程度の広がりを有し、ダイオキシン類のジアリルエーテル結合を還元的に開裂できることが示唆された。
<実施例1:pBKSEN6を導入したE. coli JM109株による2,7−DCDD分解実
験>
pBKSEN6を導入したE. coli JM109株をLB培地200mLにて37℃で培養し
、OD600=0.5付近となったところでIPTGを添加して(終濃度1mM)、3時間誘導を行った。その後、遠心分離(6000g、10分間)で回収した菌体を、pH 7.0の100mMリン酸バッファーで洗浄し、再度遠心分離後、同バッファー10mLに再懸濁した。得られた菌体懸濁液をフレンチプレス(1500kg/cm2:有限会社大
岳製作所)で破砕し、超遠心(25000g、30分間)で分離後、得られた上清を粗酵素溶液とした。
粗酵素溶液1mLに、2,7-DCDD(AccuStandard)のトルエン溶液(25mM)を0.5μL加え、これを蓋付き試験管内で、65℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、酵素反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、ドラフト内で溶媒を濃縮した。濃縮した酵素反応物に、BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)90μ
L、及びピリジン10μLを加え、65℃で30分間のインキュベートでTMS化を行い、GC−MS分析に供した。
また、コントロールとして、上記素酵素溶液に代えて、pBluescript II
KS(+)を導入したE. coli JM109株を同様に培養、処理して得た菌体破砕液の上清
を用いて、同様の操作を行った。
GC−MS分析条件を以下に示す。
機器名:JMS−Q1000GC K9(JEOL)
カラム:Chrompack capillary column CP-SIL 5CB(Varian)
長さ25m 内径0.32mm 外径0.45mm
注入口温度:280℃
初期温度・保持時間:50℃・10min
昇温条件:5℃/min
最終温度・保持時間:300℃・10min
注入量:1μL
図9に示されるように、本発明のダイオキシン類分解酵素を発現したpBKSEN6/E. coli JM109株の菌体破砕物により、ダイオキシン類(2,7−DCDD)のジアリルエーテル
結合が順次還元的に開裂され、分解中間体4',5-dichloro-2-hydroxydiphenyl ether(D
CDE)を経由して、4-chorophenol(4CP)にまで分解された。なお、検出された分
解中間体DCDEは、化学合成した標品と比較することにより構造を同定した。
<実施例2:pBKSEN6を導入したE. coli JM109株による2,3,7,8−TCD
D分解実験>
分解対象を2,3,7,8−TCDDのトルエン溶液(3mM)に変更した他は実施例1と同様の操作を行い、酵素液のジエチルエーテル抽出物をGC−MS分析に供した。
図10に示されるように、本発明のダイオキシン類分解酵素を発現したpBKSEN6/E. coli JM109の菌体破砕物により、ダイオキシン類(2,3,7,8−TCDD)のジアリル
エーテル結合が順次還元的に開裂され、分解中間体3',4',4,5-tetrachloro-2-hydroxydiphenyl ether(TCDE)を経由して、3,4-dichlorophenol(DCP)にまで分解された
。なお、検出された分解中間体TCDEは、化学合成した標品と比較することにより構造を同定した。
<参考例:ダイオキシン類汚染土壌のDTA解析>
ダイオキシン類汚染土壌を振とうふるい機(300−MM、筒井理化学機器株式会社)を用いて加水ふるい処理法にて分級し、150メッシュを通過した、シルトと粘土成分とからなる土壌成分(シルト1)を得た。分級条件は、振動数1000rpm、片振幅1.0mm、処理試料質量200g、加水量1L/回×3回とした。
また、ダイオキシン類汚染土壌に、質量比が土壌:水=4:1となるように水を加え、骨材研磨機(「ハリケーン」(登録商標)、新六精機株式会社)を用いて、回転数300rpm、常温、常圧の条件で摩砕処理した。得られた摩砕処理土壌を、シルト1と同様に加水ふるい処理法にて分級し、シルト2を得た。
さらに、シルト2を13.4Nの硝酸で常温にて24時間酸処理し、硝酸処理が施されてなるシルト3を得た。
さらには、シルト2を1Nの塩酸で常温にて24時間酸処理し、乾燥後に95%のエタノールを供給し、常温にてさらに24時間のアルコール処理が施されてなる、塩酸−アルコール処理シルトであるシルト4を得た。
得られたシルト1〜4のそれぞれを示差熱分析(DTA)で分析した。この分析は、島津製作所社製のDTG−60を用い、露点が−80℃の清浄乾燥空気を供給し、10℃/minの昇温速度で行った。分析結果を以下の表1に示す。またシルト2のDTA及び熱重量測定(TGA)の結果を図11に示す。
表1及び図11から明らかなように、酸処理が施されていないシルト1及びシルト2には、512℃付近にガラス転移点が見られる。しかしながら表1及び図11から明らかなように、酸処理が施されているシルト3及びシルト4ではこのガラス転移点が見られない。この結果から、シルトの酸による処理によってシルト中のケイ素成分が除去されていることがわかる。
ダイオキシン類分解能を有する微生物由来のダイオキシン類分解酵素をコードするDN
Aを導入することにより形質転換された細菌を大量培養してダイオキシン類分解剤とする本発明により、ダイオキシン類分解剤の安定的な製造が実現され、産業廃棄物等に含まれるダイオキシン類の生分解処理がさらに効率化、低コスト化される。そのため、ダイオキシン類汚染物の浄化の作業性のさらなる向上が期待されるものとして、本発明は産業上非常に有用である。

Claims (9)

  1. ダイオキシン類分解酵素をコードするDNAを導入することにより形質転換された細菌、前記細菌の破砕物、及び前記破砕物の分画物のいずれか一以上を含有するダイオキシン類分解剤であって、前記細菌の破砕物が前記細菌の菌体膜の破砕物を含み、前記分画物が前記菌体膜の分画物を含む、ダイオキシン類分解剤。
  2. 前記酵素が、Geobacillus属に属する菌由来である、請求項1に記載のダイオキシン類
    分解剤。
  3. 前記酵素が、以下の(A)または(B)のタンパク質である、請求項1又は2に記載のダイオキシン類分解剤。
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
    (B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質
  4. 前記DNAが、以下の(a)または(b)のDNAである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイオキシン類分解剤。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
    (b)配列番号1に記載のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつダイオキシン類分解活性を有するタンパク質をコードするDNA
  5. 前記細菌が、Escherichia coliである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイオキシン類分解剤。
  6. ダイオキシン類を含有する水相に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイオキシン類分解剤を混合して前記水相中のダイオキシン類を分解する工程を含む、ダイオキシン類の分解方法。
  7. 前記水相が、
    ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する工程と、
    分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシルトから除去する工程と、
    洗浄されたシルト中のダイオキシン類を非水溶性溶剤に抽出する工程と、
    非水溶性溶剤中のダイオキシン類を非水溶性溶剤から水溶性溶剤に抽出する工程と、
    ダイオキシン類を抽出した水溶性溶剤と水とを混合する工程と、によって得られることを特徴とする請求項6に記載のダイオキシン類の分解方法。
  8. 前記水相が、
    ダイオキシン類を含有する汚染土壌からシルトを分離する工程と、
    分離されたシルトとフミン質とを含有するアルカリ性の水スラリーを調製して水相にダイオキシン類を抽出する工程と、によって得られることを特徴とする請求項6に記載のダイオキシン類の分解方法。
  9. 水スラリーの調製前に、分離されたシルトを酸で洗浄してシルトのガラス成分をシルトから除去する工程をさらに含む請求項8に記載のダイオキシン類の分解方法。
JP2012053305A 2012-03-09 2012-03-09 ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法 Active JP5938956B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012053305A JP5938956B2 (ja) 2012-03-09 2012-03-09 ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012053305A JP5938956B2 (ja) 2012-03-09 2012-03-09 ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013185129A true JP2013185129A (ja) 2013-09-19
JP5938956B2 JP5938956B2 (ja) 2016-06-22

Family

ID=49386848

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012053305A Active JP5938956B2 (ja) 2012-03-09 2012-03-09 ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5938956B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10257895A (ja) * 1997-03-18 1998-09-29 Asahi Chem Ind Co Ltd 微生物由来の酸化酵素遺伝子及びそれを用いるダイオキシン除去方法
JP2002065268A (ja) * 2000-08-30 2002-03-05 Ohbayashi Corp 微生物由来の酸化酵素遺伝子及びそれがコードする酵素を用いたダイオキシン分解処理方法
JP2007215404A (ja) * 2005-11-25 2007-08-30 Institute Of Physical & Chemical Research ダイオキシン類の分解能を有する新規微生物
JP2011098332A (ja) * 2009-10-06 2011-05-19 Takasago Thermal Eng Co Ltd ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び前記土壌中のダイオキシン類の分解方法
JP2011200805A (ja) * 2010-03-25 2011-10-13 Takasago Thermal Eng Co Ltd ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10257895A (ja) * 1997-03-18 1998-09-29 Asahi Chem Ind Co Ltd 微生物由来の酸化酵素遺伝子及びそれを用いるダイオキシン除去方法
JP2002065268A (ja) * 2000-08-30 2002-03-05 Ohbayashi Corp 微生物由来の酸化酵素遺伝子及びそれがコードする酵素を用いたダイオキシン分解処理方法
JP2007215404A (ja) * 2005-11-25 2007-08-30 Institute Of Physical & Chemical Research ダイオキシン類の分解能を有する新規微生物
JP2011098332A (ja) * 2009-10-06 2011-05-19 Takasago Thermal Eng Co Ltd ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び前記土壌中のダイオキシン類の分解方法
JP2011200805A (ja) * 2010-03-25 2011-10-13 Takasago Thermal Eng Co Ltd ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5938956B2 (ja) 2016-06-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Tuo et al. Biodegradation characteristics and bioaugmentation potential of a novel quinoline-degrading strain of Bacillus sp. isolated from petroleum-contaminated soil
Sima et al. Bio-based remediation of petroleum-contaminated saline soils: Challenges, the current state-of-the-art and future prospects
Huang et al. Biodegradation of di-butyl phthalate (DBP) by a novel endophytic bacterium Bacillus subtilis and its bioaugmentation for removing DBP from vegetation slurry
Miri et al. Sustainable production and co-immobilization of cold-active enzymes from Pseudomonas sp. for BTEX biodegradation
JP2009060799A (ja) (−)−アンブロキサンの製造方法
Khan et al. Cloning, expression and biochemical characterization of lignin-degrading DyP-type peroxidase from Bacillus sp. Strain BL5
JPWO2007043657A1 (ja) 重金属存在下で有機物質を分解する方法
Yu et al. Bioaugmentation treatment of mature landfill leachate by new isolated ammonia nitrogen and humic acid resistant microorganism
JP2007252972A (ja) 石油汚染土壌の浄化方法
JP5938956B2 (ja) ダイオキシン類分解剤及びダイオキシン類の分解方法
Brazkova et al. Biodegradation of Bisphenol A during submerged cultivation of Trametes versicolor.
JP5761920B2 (ja) ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び前記土壌中のダイオキシン類の分解方法
JP2004202449A (ja) 焼却灰中の重金属除去方法
Ahmad et al. Characterization and identification of phenol degrading bacteria isolated from industrial waste.
KR101471508B1 (ko) 다환방향족 탄화수소 분해 활성을 가지는 알테로모나스 속 sn2
JP5737852B2 (ja) ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法
US8614078B2 (en) Contaminant reducing amide functionalized ordered mesoporous carbon composition
Andler et al. Biodegradation of rubber in cultures of Rhodococcus rhodochrous and by its enzyme latex clearing protein
JP5752951B2 (ja) 新規微生物、ダイオキシン類分解剤、及びダイオキシン類の分解方法
Pourbabaee et al. Decolorization of methyl orange (As a model azo dye) by the newly discovered Bacillus sp.
JP2020054302A (ja) 重金属イオン不溶化方法および重金属イオンを不溶化する微生物群
Kim et al. Isolation and characterization of ethylbenzene degrading Pseudomonas putida E41
JP4793947B2 (ja) ハロアルカンデハロゲナーゼを使用するイペリットの解毒方法
Vaidyanathan et al. Removal of pentachlorophenol and phenanthrene from lignocellulosic biorefinery wastewater by a biocatalytic/biosurfactant system comprising cross-linked laccase aggregates and rhamnolipid
JP2005034057A (ja) リグニン分解酵素の製造方法及びダイオキシン類の分解方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150317

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150313

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160311

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160405

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160502

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5938956

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350