JP2013181793A - 放射線遮蔽材及び放射線の遮蔽方法 - Google Patents

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利樹 小西
Hirokuni Tajima
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Abstract

【課題】種々の形態の放射線発生源から放射される放射線を安価かつ簡易に任意の遮蔽率まで確実に遮蔽する技術を提供する。
【解決手段】本発明は、硫酸バリウム及び/又は鉄含有物からなり、平均粒子径が0.01〜50μmの範囲である粉末状遮蔽材料を、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなるバインダー中に均一に分散させて成形した柔軟なシート状乃至板状を呈し、前記粉末状遮蔽材料の含有率は40〜95wt%であり、1枚当たりの放射線遮蔽率がセシウム137標準線源で測定した場合の空間線量率の低減率にて0.3〜50%である放射線遮蔽材、及びこれを用いて放射線発生源の周囲に、又はこれを覆い隠すように少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成するようにした放射線の遮蔽方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に放射性物質含有物から外部に放射される放射線を有効に遮蔽する放射線遮蔽材及びこれを用いる放射線遮蔽方法に関する。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所の事故に起因する放射性物質の飛散により、国内の広範な各地で建築物や道路などの工作物、土壌、草木、河川などで高い放射線量が検出されるに至っている。現在、そのような高い放射線量が検出された地域では、そこに堆積している放射性物質を含む土壌などを取り除くいわゆる除染作業が始まろうとしている。
除染作業によって大量に取り除かれる土壌(以下、除去土壌という。)などは、1又は2以上の適切な地域に設けられた保管施設に有姿のまま、又はコンテナバッグなどの所定の容器に収容された状態で、短期間一時的に又は長期間保管することになると考えられるが、その際に必要なのは、当該除去土壌などから放射される放射線を遮蔽し作業者や近隣住民への放射線の影響を低減する放射線遮蔽策を十分講じることである。この放射線遮蔽策は、除去土壌などが有姿の場合には、保管施設の床面に遮水シートを敷設しておき、その上に積み上げたその山に対して、また除去土壌などが容器に収容される場合には、保管施設内に段積み又は平積みされた複数の容器群に対して少なくとも講じられる必要がある。
また、除染作業に伴い発生する除去土壌などのほかにも、地域住民の生活空間において、戸建住宅、集合住宅、公共建築物などの建築物の周囲又は近隣における地表面の土壌、道路、側溝、草木、水溜まり、河川などのまだ除去されていない放射線発生源も多く存在している。最終的には、これらの放射線発生源は除去されるべきものであるが、除染作業にはまだある程度の時間が必要であることから、当座これらの放射線発生源からの放射線を遮蔽することの必要性は高い。
一般的な放射線遮蔽策としては、従来より、鉛を含有する放射線遮蔽材やコンクリートなどで上記した山や一群の容器を覆うことが行われてきている。しかし、鉛は、確かに優れた放射線遮蔽能を有するが、その反面、人体や環境に有害であり自然界に溶出しやすく、コストがかかる問題があり、鉛を含有する放射線遮蔽材を上記除染に伴う遮蔽策に用いることは適切でない。また、コンクリートを用いる場合には、これにより建造物を建設することになるが、その建設費などに非常にコストがかかり、また劣化によって長期間、放射線発生源などを保管することが困難であるという問題があり、コンクリートで被覆する方法も同様に上記した除染に伴う遮蔽策には適さない。要するに、これらの従来から行われてきた放射線遮蔽策は、上記の除去土壌などについては安価かつ簡易に実施できないばかりか、放射線を確実に遮蔽する点にも難のある技術といえる。
上記の一般的な放射線遮蔽策に代わるものとして、人体や環境への有害性が低いタングステンや硫酸バリウムを材料としたシート状の放射線遮蔽材を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1の提案は、タングステン粉末を主成分とする非鉛系無機粉末と熱可塑性エラストマーを含有する比重5以上の高比重シートの表裏両面にカバー材を配置したシート状の放射線遮蔽材に関するものであるが、この遮蔽材を用いる場合、これ自体が高比重であることやタングステンは高価であることなどの問題があり、安価かつ簡易に実施可能な遮蔽策とは言えない。
また、特許文献2の提案は、硫酸バリウムと、その硫酸バリウムのバインダーである熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーとを含むものであり、硫酸バリウムを75質量%以上含有し、硬さがショアA硬さで95以下であり、密度が2.5g/cm以上であり、引張破壊伸びが20%以下である放射線遮蔽用シートに関するものである。しかし、特許文献2の提案では、放射線の遮蔽率を調整する手段として、シート成形時に上記バインダーに配合される硫酸バリウムの配合割合を増減させ、又はシートの厚みを増減させることとしており、非常に手間がかかるという問題があり、同様に安価かつ簡易に実施可能な遮蔽策とは言えない。さらに、同文献には、放射線遮蔽用シート自体にフレキシビリティがあり、これにより種々の形態の放射線発生源を被覆できるという具体的な効果の開示もない。
特開2004−77170号公報 特開2007−212304号公報
本発明は、前記事情に鑑み、種々の形態の放射線発生源から放射される放射線を安価かつ簡易に任意の遮蔽率まで確実に遮蔽する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的に鑑み鋭意検討を重ねた結果、環境や人体に有害でなく、上記した一般的な放射線遮蔽策の場合と比較して軽量かつフレキシブルで取り扱いが良好であり、化学的に安定で、安価なシート状乃至板状の放射線遮蔽材を開発するとともに、当該放射線遮蔽材を放射線発生源の周囲にその放射能濃度に応じて複数層に積層することで、放射線を所望の遮蔽率まで遮蔽することができるとの知見を得、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明の放射線遮蔽材は、前記目的を達成すべく、硫酸バリウム及び/又は鉄含有物からなり、平均粒子径が0.01〜50μmの範囲である粉末状遮蔽材料を、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなるバインダー中に均一に分散させ成形した柔軟なシート状乃至板状を呈し、前記粉末状遮蔽材料の含有率は40〜95wt%であり、1枚当たりの放射線の遮蔽率が空間線量率の低減率にて0.3〜50%であることを特徴とする。
また、本発明の放射線の遮蔽方法は、上記放射線遮蔽材を用い、放射線発生源の周囲に、又はこれを覆い隠すように少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成するようにしたこと特徴とする。前記放射線発生源は、容器に収容された状態とされていてもよい。なお、本明細書においては、用語「放射線発生源」を放射性物質を含有する物質(物体)の意味で使用しており、具体的には、放射性物質を含む土壌、草木、家屋、除染作業に伴い発生する除去土壌や瓦礫、医療機関で扱う放射性物質、医療機器、放射性廃棄物、原子力施設における原子炉、加速器、低レベル放射性廃棄物などを指すものとする。
本発明の放射線の遮蔽方法はまた、上記放射線遮蔽材を用い、これを建築物の構成部位の内面又は外面に沿って少なくとも1層積層配置するようにしたことを特徴とする。ここで、上記語句「内面又は外面に沿って」は、これらの面に密着する状態及びこれらの面から離間する状態の双方を含むものとする。
従来、放射線発生源より飛散する放射線の遮蔽には、鉛、ビスマス、タングステンなどの原子番号60以上の高い遮蔽効率を示す材料が使用されており、原子番号の小さいバリウムは遮蔽効率が低いため、背景技術にあるような提案はなされていてもほとんど実用化されていなかった。しかし、本発明者らは、原発事故に伴い発生した放射線発生源について調査検討を重ねた結果、以下の知見を得、本発明を完成するに至ったものである。
(1)放射性セシウムを含む除去土壌などを土嚢などの容器に収容した場合、その内部のセシウム137(662keV)またはセシウム134(605keV、796keVなど)から直接飛散するγ線は、散乱により一部のエネルギーを失い、相対的に低いエネルギーのγ線(散乱放射線)に変わるため、容器から放散する放射線は相対的に低エネルギーのγ線の比率が高い。
(2)放射線発生源の体積が大きいほど、これに比例して相対的に低いエネルギーのγ線の比率が高くなる傾向がある。
(3)放射性セシウムで汚染された地域(農地、森林の近隣や住宅など)では、放射線発生源中のセシウム137又はセシウム134から直接飛散するγ線が一層多く散乱して相対的に低エネルギーのγ線の比率が一層高くなる傾向がある。
(4)戸建住宅などの建築物の屋内では、屋外からのγ線が外壁などを透過する際に散乱するため、屋内に侵入する放射線は、相対的に低いエネルギーのγ線の比率が高くなる。
(5)バリウムを含有する試作シートを用いた試験の結果、このシートは、上記セシウム137由来の高エネルギーの放射線よりも相対的に低エネルギーの放射線の遮蔽効果が高い。
(6)鉄などの比較的原子番号の小さい元素を含む遮蔽材料も、γ線を散乱させてより低いエネルギーの放射線に変える効果と共に、放射線の遮蔽効果がある。
(7)以上から、バリウム原子や鉄原子を含有する放射線遮蔽材を用いることで、放射線発生源を収容した土嚢などの容器やさらに大型の容器、地面、側溝などから飛散する放射線のみならず、建築物の屋内に侵入する放射線についても効果的に遮蔽できる。
本発明の放射線遮蔽材は、粉末状放射線遮蔽材料をバインダー中に均一に分散させ成形した柔軟なシート状乃至板状を呈しているので、簡易に種々の形態の放射線発生源を被覆でき、当該発生源から放射される放射線を安価かつ簡易に所望の遮蔽率まで遮蔽することができ、放射線の遮蔽が必要とされる場面毎に適用することで、最適な放射線遮蔽効果が得られる。
本発明の放射線の遮蔽方法の一例を説明する図である。 本発明の放射線の遮蔽方法の別の例を説明する図である。 本発明の放射線の遮蔽方法のさらに別の例を説明する図である。 本発明の放射線遮蔽材の製造ラインの一例を示す図である。 セシウム137標準線源近傍におけるγ線のスペクトルデータの一例を示す図である。 放射線発生源を収容した土嚢近傍におけるγ線のスペクトルの一例を示す図である。 建築物屋内の窓ガラス近傍におけるγ線のスペクトルの一例を示す図である。 本発明の放射線の遮蔽方法の別の実施形態における空間線量率の測定方法を示す図である。
以下、本発明の実施形態について更に詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。
[シート状乃至板状の放射線遮蔽材]
本発明の放射線遮蔽材は、粉末状遮蔽材料を主として熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーからなるバインダー中に均一に分散させて成形された柔軟なシート状ないし板状を呈する。
1.粉末状遮蔽材料
本発明における粉末状遮蔽材料は、硫酸バリウム及び/又は鉄含有物、すなわち硫酸バリウム若しくは鉄含有物、又は硫酸バリウムと鉄含有物との混合物である。本発明において、特に硫酸バリウム及び/又は鉄含有物を用いることとしたのは、前記のとおり、これらが放射線発生源から飛散する相対的に低いエネルギーのγ線などの放射線を効果的に遮蔽できるためである。
硫酸バリウム(BaSO)としては、従来公知の方法による合成品や天然に算出する重晶石を使用できる。硫酸バリウムの合成は、例えば塩化バリウムの水溶液に硫酸又は硫酸銅の溶液を反応させて沈殿させる方法など種々あるが、いずれの合成法によるものであってもよい。こうして得られる硫酸バリウムの合成品は粉末状を呈しており、後述する粒径条件に適合する場合には、それをそのまま使用できる。また、後者の天然の硫酸バリウムのように塊状である場合には、後述の粒径条件に適合する粉末が得られるまで、当該塊状物を粉砕する。
鉄含有物としては全量又は一部の量を問わず鉄原子を含んだ固体であれば特に制限されず、鉄単体のほか、各種鉄化合物が挙げられる。鉄化合物としては、3価以上の鉄化合物や2価以下の鉄化合物などの従来公知の方法による合成品などを使用できる。また、鉄化合物は、酸化鉄及び鉄合金も含む。粉末状の鉄単体(鉄粉)としては、還元鉄粉やアトマイズ鉄粉(パウダーテック社製、いずれも平均粒子径45μm)などの市販品が好適に使用できる。
3価以上の鉄化合物としては、鉄(III)と無機酸或いは有機酸との塩、酸化鉄(III)及び鉄合金などが挙げられる。ここで、無機酸としては、塩酸、ふっ酸、硫酸、硝酸、りん酸、炭酸などが挙げられ、これらのうちでは塩酸及び硫酸が好ましく使用できる。無機酸との塩の具体例として、塩化鉄(III)、ふっ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、りん酸鉄(III)など、或いはそれらの水和物などが挙げられる。また、酸化鉄としては酸化鉄(III)、鉄酸塩としては鉄(IV)酸塩、鉄(V)酸塩などが挙げられる。
また、有機酸としては、有機基を有するカルボン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド、第一級及び第二級ニトロ化合物などが挙げられる。有機酸との塩の具体例として、モノカルボン酸のぎ酸鉄(III)、酢酸鉄(III)、プロピオン酸鉄(III)、アクリル酸鉄(III)、しゅう酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)、グルコン酸鉄(III)、2−エチルヘキサン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(III)、ジカルボン酸のフマル酸鉄(III)、マレイン酸鉄(III)、ポリカルボン酸のポリアクリル酸鉄(III)、エノールのL−アスコルビン酸鉄(III)、エリソルビン酸鉄(III)或いはそれらの水和物が挙げられる。
2価以下の鉄化合物についても、同様に鉄(II)と無機酸或いは有機酸との塩、酸化鉄(II)及び鉄合金などが挙げられる。ここで、無機酸及び有機酸は、前記例示のものを同様に用いることができる。
これら鉄単体や鉄化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、鉄や鉄化合物が粉末状であり、後述する平均粒子径条件に適合する場合には、それをそのまま使用でき、粉末状であっても後述の平均粒子径条件に適合せず、あるいは塊状である場合には、その平均粒子径条件に適合するまで粉砕に供される。
前記粉末状遮蔽材料のレーザー回折散乱法に基づく平均粒子径は、0.01〜50μm、好ましくは0.01〜10μmの範囲とされる。平均粒子径が0.01μm未満の場合、相対的に小さい粒子径の遮蔽材料が2次凝集し、シート成形加工時にブロッキングや金属体への粘着を起こし、成形性が悪くなる。一方、平均粒子径が50μmを超えると、シートの機械特性などの各種特性やシートの外観が悪くなる。
上記の硫酸バリウム及び鉄含有物は、上記平均粒子径の条件に適合する限り、適宜混合して使用できる。両者の混合比率については特に制限されない。また、硫酸バリウムまたは鉄含有物を単独で使用する場合であっても両者を混合する場合であっても、上記平均粒子径の条件に適合する限り、粒径分布が異なる2種以上を混合して使用することもできる。
粉末状遮蔽材料の含有率は、本発明の放射線遮蔽材の総重量に対して40〜95wt%とされる。40wt%未満の場合、十分な放射線遮蔽能が得られず、95wt%を超えると、シートの成形性が悪化する。
2.バインダー
本発明におけるバインダーとしては、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーが挙げられる。バインダーは、これらの成分以外に酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、防黴・防菌剤などの薬剤を含有していてもよい。
2−1.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、その種類について特に限定されない。例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテルなどのポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン、耐熱ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリカーボネートなどがあげられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
好ましくは、加工性及び価格などの観点から、ポリエチレン、ポリエチレン−αオレフィン共重合樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニルなどを用いるのがよい。
2−2.熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーについても特に限定されないが、具体例としてスチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、ポリエチレン系などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのうちでは、加工性、価格などの観点から、ポリウレタン系(熱可塑性ポリウレタン(TPU))又はポリオレフィン系(熱可塑性ポリオレフィン(TPO))を用いるのが好ましい。TPUの具体例としては、以下のハードセグメント及びソフトセグメントから構成されたものが挙げられる。
ハードセグメント:ジイソシアナート及び1,4‐ブタンジオールやジエチレングリコールなどのアルカンジオール又はジアルキレングリコールからなるもの、など。
ソフトセグメント:ジイソシアナート、及びポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン又はポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン−グリコールなどのポリエーテル系、又はアルカンジオール−ポリアジペートなどのポリエステル系からなるもの、など。
ここで、ジイソシアナートとしては、4,4−ジフェニルメタン−ジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートなどが挙げられる。
TPOの具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)ハードセグメントとしてポリプロピレンを、ソフトセグメントとしてポリエチレンを有するエラストマー、
(2)エチレンと少量のジエン成分を有するエラストマー、
(3)エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、
(4)エチレン−プロピレンゴム(EPR)、
(5)ブチルゴムグラフトポリエチレン、
(6)スチレン系エラストマー、
(7)(1)〜(6)の各エラストマー(ゴム)をブレンドしたもの、
(8)有機過酸化物を(1)〜(7)に添加して部分的に架橋したもの、
(9)不飽和ヒドロキシ単量体や不飽和カルボン酸誘導体でグラフト変性されたもの、など。
上記の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせてバインダーとして使用できる。
上記バインダーの配合割合は、放射線遮蔽用シートの加工性及び取り扱い性を優れたものにすると同時に、放射線遮蔽能を阻害し難くする観点から、本発明の放射線遮蔽材の総重量に対して5〜60wt%とされる。
本発明の放射線遮蔽材には、本発明の主題を逸脱しない範囲にて、上記各成分以外に他の成分を含めることができる。その他の成分の具体例としては、改質剤(加工助剤)、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、顔料、滑剤、ブロッキング防止剤などが挙げられ、これらは必要に応じて単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これら他の成分を必要に応じて配合する場合、当該他の成分の配合量合計は上記バインダーの配合割合に含め、その分上記バインダーの配合割合は減少するものとする。
3.本発明の放射線遮蔽材の製法
本発明の放射線遮蔽材は、従来公知の方法で、すなわち押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどに上記粉末状遮蔽材料、バインダー及びその他の成分を投入し溶融混練して混練物(マスターバッチ)を作成し、当該混練物をカレンダー、Tダイなどを通過させることでシート状乃至板状に成形することができる。溶融温度は、樹脂の種類などによって変わるので、一概に特定できないが、例えば樹脂がTPUの場合、180〜200℃、樹脂がTPOの場合、180〜220℃の範囲に通常設定される。
図4に、Tダイによる本発明のシート状乃至板状の放射線遮蔽材の製造ラインの一例を示す。上記混練物(マスターバッチ)をフィーダー33に投入し、押出機34で加熱溶融させ、Tダイ35でシート状乃至板状に押し出し、ダイ直下にて、ラインの一端から繰り出されてライン上を一定方向に引き取られる離型紙38の上に落とすと同時に冷却ロールで冷却固化させて、目的とするシート状乃至板状の放射線遮蔽材が得られる。押出機34での加熱温度もまた樹枝の種類などによって変わるため一概に特定できないが、樹脂がTPUの場合、180〜220℃、樹脂がTPOの場合、180〜280℃の範囲に通常設定される。
カレンダーの通過間隙、Tダイにおけるリップ間隙及び吐出量及び引取速度を調整することで、所定の厚さ範囲のシート状乃至板状とすることができる。
尚、溶融混練には、強力な混練が可能なバンバリーミキサーを用いることが好ましい。
こうして得られる放射線遮蔽材は、裁断、溶着などの二次的な加工方法により任意の形状に加工できる。放射線遮蔽材の厚さに特に制限はないが、0.3〜5mmが好ましい。0.3mm未満の場合、放射線遮蔽能やシートの成形性が悪くなり、5mmを超えると、シートの成形性が悪くなり、シートのフレキシビリティが失われる。
また、本発明の放射線遮蔽材には、紙、不織布、繊維、プラスチック、金属などを適宜積層することができる。両者の積層には、例えば、ホットメルト接着剤、粘着剤、硬化樹脂接着剤などを用いた接着、熱融着又は縫合などの従来公知の方法を用いることができる。
4.本発明の放射線遮蔽材の性能・性状
4−1.フレキシビリティ
本発明の放射線遮蔽材は、フレキシビリティ(柔軟性)に富み、容易に曲げ、丸め、巻くことができる。一旦折曲げたとしても、遮蔽に悪影響を及ぼすような折れ、割れは生じない。そのため、本発明の放射線遮蔽材を運搬する際には、ロール状に巻いてコンパクトにすることができ、また不定形な物質又は物体であっても、本発明の放射線遮蔽材を用いることで、その表面又は周囲を容易に被覆し、該表面又は周囲に少なくとも1層の放射線遮蔽層を容易に形成できる。
4−2.放射線遮蔽率
本発明の放射線遮蔽材の1枚当たりの放射線遮蔽率は、具体的には、セシウム137標準線源について、エネルギー補償型のNaIシンチレーションサーベイメーター(BNC社製、SAM940 スペクトルサーベイメーター(商品名))を用いた空間線量率[μSv/h]の低減率にて0.3〜50%である。そして、本発明の放射線遮蔽材を複数積層して放射線発生源の周囲に配置することで、その層数に応じて放射線遮蔽率を高めることができる。
前述したように、本発明の放射線遮蔽材は、セシウム137(662keV)またはセシウム134(605keV、796keVなど)から直接飛散するγ線に対して遮蔽効果が有ると共に、散乱によって生じる、よりエネルギーの低いγ線に対してはより一層遮蔽効果があることを見出した。さらに実際に様々な大きさ、形態の汚染された物体に対して調べた結果から、放射線発生源の大きさが大きいほどエネルギーの低いγ線の比率が高い傾向を見出した。したがって、本発明の放射線遮蔽材は、放射線発生源の大きさが比較的大きい場合に特に遮蔽効果が有ることを見出した。例えば、一辺が30cm程度の土のう(放射線発生源)等よりも、一辺が100cm程度のコンテナバッグ(放射線発生源)の方が低いエネルギーのγ線の比率が高く、本発明の放射線遮蔽材による遮蔽効果が高い。また、一辺が100cm程度のコンテナバッグ(放射線発生源)等よりも、一辺が10m以上の地面(放射線発生源)からの放射線の方が低いエネルギーのγ線の比率が高く、本発明の放射線遮蔽材による遮蔽効果が高い。従来は、セシウム137 (662keV)等の比較的エネルギーの高いγ線についての評価しか想定されておらず、したがって、上述のような知見が無い状態で、662keVのγ線の場合のような低い遮蔽効果よりも、高い遮蔽効果がコンテナバッグ近傍や室内の空間放射線のような放射線源が大きい場合(したがってγ線のエネルギーが低い場合)に期待されることは容易に想定されなかったと考えられる。即ち、本発明の放射線遮蔽材の、上述のような用途については既存の知見では容易に想定できなかったものであって、本発明によって初めて実際に遮蔽効果が見られる用途として認められたと考えられる。
なお、放射性セシウムを含有する放射線発生源が一辺100cm程度(例えばコンテナバッグ等)以上の場合に期待される、本発明の放射線遮蔽材による遮蔽率と、セシウム137(662keV)標準線源の場合の遮蔽率との比の値は、1.1以上が良く、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。また、放射性セシウムによって汚染された土地における住宅室内で期待される、本発明のバリウムを含有する放射線遮蔽材による遮蔽率と、セシウム137(662keV)標準線源の場合の遮蔽率との比の値は、1.2以上が良く、1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。
本発明の放射線遮蔽材が遮蔽材料の成分としてバリウムを含有するシート状である場合、γ線の平均のエネルギーと放射線遮蔽率との関係は、以下のようになる。
γ線の平均のエネルギーが100〜200keVの場合の放射線遮蔽率は、シート1枚当たりで、0.5〜80%が良く、1〜80%が好ましく、2〜80%がより好ましい。
γ線の平均のエネルギーが200〜300keVの場合の放射線遮蔽率は、シート1枚当たりで、0.5〜70%が良く、1〜70%が好ましく、2〜70%がより好ましい。
γ線の平均のエネルギーが300〜400keVの場合の放射線遮蔽率は、シート1枚当たりで、0.5〜60%が良く、1〜60%が好ましく、2〜60%がより好ましい。
4−3.防水性、遮水性
本発明の放射線遮蔽材は、防水性、遮水性を備えているので、遮水シートとしても好適に使用できる。
[本発明の放射線の遮蔽方法]
本発明の放射線の遮蔽方法の一例は、前記した本発明の放射線遮蔽材を用いて放射線発生源の周囲に、又はこれを覆い隠すように少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成するものである。ここで、放射線発生源に含まれる放射性物質(核種)や飛散する放射線の種類については特に限定されず、例えば放射性物質については放射性セシウム134や放射性セシウム137などが挙げられ、放射線についてはこれらに由来するγ線及びX線などが挙げられる。また、放射性物質に由来しない放射線発生源、例えばX線発生装置によって発生するX線などの放射線の遮蔽についても本発明の範囲に含まれる。
放射線発生源から飛散する放射線は、放射線遮蔽材により当該放射線発生源を完全に外部から隔離遮蔽することが好ましいが、それが困難であっても、少なくとも放射線発生源の近隣住民への影響(被爆)については極力防止するだけの遮蔽策を講じる必要がある。
ところで、放射線発生源から外気中に放射状に飛散した放射線は、通常、空気中を直進する性質を有する。そして、放射線発生源を運搬又は保管する際には、その輸送ルートや保管施設を近隣住民の生活空間からある程度の距離に離して設定又は設置することとされているので、放射線発生源から放射状に飛散する放射線のうち、近隣住民の人体に影響を与え得るのは、おおよそ放射線発生源から略水平方向に飛散し、近隣住民の生活空間に直進する放射線であると考えられる。よって、このような生活空間に直進し、当該空間に住民がいればさらに追加的に被爆することになるような放射線を遮断することができれば、これらの者の人体への放射線の影響を著しく下げることができる。したがって、本発明の放射線の遮蔽方法においては、本発明の放射線遮蔽材を用いて放射線発生源の周囲に適宜の高さの放射線遮蔽層を設けることで、少なくとも上記生活空間などに直進する放射線を一定程度遮蔽しようとするものである。
本発明の放射線遮蔽材は、これを複数層積層する場合、以下の組み合わせのいずれの形態であってもよい。
(1)粉末状遮蔽材料として硫酸バリウムを含有する放射線遮蔽材を積層する。
(2)粉末状遮蔽材料として鉄含有物を含有する放射線遮蔽材を積層する。
(3)粉末状遮蔽材料として硫酸バリウム及び鉄含有物の双方を含有する放射線遮蔽材を積層する。
(4)上記(1)ないし(3)を適宜組み合わせて積層する。
上記(4)の例として硫酸バリウムを含有する放射線遮蔽材と鉄含有物を含む放射線遮蔽材とを組み合わせて積層する場合、後者を特に前者の放射線発生源側に配置することで、本発明の放射線の遮蔽方法は当該放射線発生源からのγ線などの放射線をさらに一層効果的に遮蔽できる。
例えば、放射線発生源が除染作業に伴い発生する除去土壌などの場合、これを、従来公知のプラスチック容器、コンテナバッグ、金属容器、紙容器、木材容器などの容器に収容することができる。この場合、容器の種類やサイズ(大きさ)については特に制限されない。このような放射線発生源を収容した容器の場合、本発明の放射線遮蔽材を当該容器の内外周面に、又は当該容器をすべて覆い隠すように、少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成することができる。この放射線遮蔽層の高さは、容器の大きさなどを考慮して適宜設定できる。
図1は、容器に収容された放射線発生源からの放射線の遮蔽方法を説明する図である。この図において、放射線発生源Xは、吊りベルト11を備えるコンテナバッグ(容器)10内に収容されている。そして、このコンテナバッグ10の側面に本発明の放射線遮蔽材1が巻回され、該コンテナバッグ10の周面に密接する放射線遮蔽層を形成している。このようにコンテナバッグ10の外周に放射線遮蔽層を設けることで、コンテナバッグ10の全面から放射状に飛散する放射線のうち略水平方向に飛散する放射線を所望の放射線遮蔽率にて遮蔽できる。これにより、この容器から水平方向に飛散する放射線を遮蔽することができ、結果として近隣住民の放射線への追加の被爆を防止できる。
また、放射線発生源が多量の除去土壌などの場合、これを複数の容器群(このような容器として、前記コンテナバッグを好適に使用できる。)に収容した上で、当該容器群を適宜の広さの保管施設内で保管することが必要になる。この場合、上記放射線遮蔽材を当該複数の容器群の周囲にこれを取り囲むように配置し、少なくとも1層の前記放射線遮蔽層を形成する。また、上記放射線遮蔽材は、遮水性、防水性を備えるので、遮水シートとしても使用できる。
図2は、このような除去土壌などを収容した複数の容器群を保管する場合の、本発明の放射線の遮蔽方法を説明する図である。この図に示すように、平積みされたコンテナバッグ群10、10、・・・の周囲を本発明の放射線遮蔽材1により取り囲むように放射線遮蔽層を設けることで、コンテナバッグ群10、10、・・・の周囲から略水平方向に飛散する放射線を遮蔽でき、結果として近隣住民から放射線発生源を隔離し、放射線による追加の被爆を防止できる。この場合も、コンテナバッグ群全体の放射能濃度に応じて放射線遮蔽層の層数を調整することができる。
図3は、地表面に盛り土した除去土壌からの放射線を遮蔽する本発明の放射線の遮蔽方法の別の例を示している。この図の例では、地表面20の上に盛り土された除去土壌Xの山を本発明の放射線遮蔽材1からなる放射線遮蔽層で被覆している。除去土壌の放射能濃度に応じて、所望の放射線遮蔽率が得られるように盛り土を被覆する放射線遮蔽層の層数を調整できる。なお、この例でも、上記放射線遮蔽材は、遮水性、防水性を備えるので、遮水シートとして使用できる。
なお、図3の例では、盛り土した除去土壌の遮蔽策について説明したが、これに限定されず、例えば遮水シートなどの上に図2に示すように複数の容器群を平積み又は段積みし、これらの容器群が隠れるように放射性物質で汚染されていない土壌を盛り土して得られる山の周囲又は表面に本発明の放射線遮蔽材を用いて少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成するようにしてもよい。さらに、このような除去土壌の保管施設は、地表面からさらに掘り下げ、地下に敷設した遮水シートの上に上記と同様に容器群を平積み又は段積みし、さらにその上に盛り土及び本発明の放射線遮蔽材による放射線遮蔽層を順次形成してもよい。この場合も、本発明の放射線遮蔽材は、遮水シートとして使用できる。
また、本発明の放射線の遮蔽方法の別の実施形態として、本発明の放射線遮蔽材を建築物の構成部位の内面又は外面に沿って少なくとも1層積層配置する。この場合、建築物の種類については特に制限されず、戸建、集合住宅、公共施設などを問わない。また、構成部位についても特に制限はなく、例えば壁、窓、扉、床、天井、屋根などが挙げられる。本発明の放射線遮蔽材の具体的な配置例としては、これを壁、窓、扉、雨戸、障子、ふすまなどの内面又は外面に貼付し、又は窓のカーテン、ブラインド、床の敷物、ついたてなどとして用いることができる。本実施形態によれば、建築物屋内などの生活空間に侵入してくる放射線を効果的に遮蔽することができる。
また、本発明の放射線の遮蔽方法は、さらに例えば地表面の土壌、道路、側溝、草木、水溜まり、河川などに存在しまだ除去などされていない放射線発生源を遮蔽、隔離する場合にも適用可能である。この場合、放射線発生源となる地表面や側溝、水溜まりなどの表面を本発明の放射線遮蔽材で覆い隠すようにして少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成すればよい。仮に、これらの場所で放射線発生源の存在状態を特定できるような場合には、これらの場所における放射線発生源となる部分のみその表面に放射線遮蔽層を設けてもよい。
その他、原子炉、加速器、医療機器、放射線源等から出る放射線からの人体防御、計器類の保護、放射線測定機器のバックグランド放射線の低減にも有効であり、X線治療に関与する人、放射性物質取扱者の被ばく防護、例えば歯科用エプロン、X線防護衣、更に壁、床、扉に組み込むことも可能である。
また、包装資材として使用してもよく、例えば、当該シート内袋又は外袋と段ボール箱との組み合わせ、原紙と当該シートのラミネート、当該樹脂を使用したプラスチック段ボールなどが挙げられる。
以上説明したように、本発明の放射線遮蔽材及び放射線の遮蔽方法によれば、安価かつ簡単に放射線発生源から外部に飛散する放射線を遮蔽でき、しかも当該放射線発生源からの放射線を所望の放射線遮蔽率まで遮蔽することができる。
放射線遮蔽材の製造
表1に示す粉末状遮蔽材料とバインダーとを表1に示す4水準の配合比でそれぞれバンバリーミキサーに投入し200℃の温度にて溶融混練して粉末状遮蔽材料がバインダー中に均一に分散したマスターバッチを作製し、これを220℃の温度下、Tダイを通過させて、試料No.1〜4のシート状放射線遮蔽材(いずれも1mm厚、1m角)をそれぞれ20枚製造した。
試料No.1〜4の放射線遮蔽材についてそれぞれ曲げ易さ、丸め易さ及びロールへの巻き取り易さを確認したところ、いずれの試料も曲げ易さ、丸め易さ及びロールへの巻き取り易さともに良好であった。
Figure 2013181793
なお、表1に示した原材料の詳細は、以下の通りである。
・硫酸バリウム: 竹原化学工業社製、「W−1(品番)」、平均粒子径5μm
・TPU: 大日精化工業社製、「レザミンP1275(商品名)」、密度1.22g/cc
・鉄粉: パウダーテック社製、「還元鉄粉RDL−300A(商品名)」、平均粒子径45μm
放射線遮蔽率の算出
以下の試験では、以下の空間線量率測定器を用い、放射線発生源とこの測定器との間に本発明の放射線遮蔽材を配置して放射線を遮蔽した場合と、配置しない場合とでそれぞれ空間線量率を測定し、前者の空間線量率の測定値(C1とする)及び後者の測定値(C0とする)から次式によって放射線遮蔽率を求めた。
放射線遮蔽率(%)=(C1−C0)/C1x100
空間線量率測定器:エネルギー補償型NaIシンチレーションサーベイメーター(米国BNC社製、SAM940
スペクトルサーベイメーター(商品名))
実施例1〜4
以下の仕様の放射能標準ガンマ線源を台上7cmの高さに設置し、この標準線源と高さを合わせて上記空間線量率測定器のプローブをセットした。このとき、プローブ先端と標準線源との内内の間隔を5cm(一定)に設定した。そうして、この状態における空間線量率を求めたところ、0.07μSv/hであった。その後、プローブ先端と標準線源との間で当該標準線源寄りに、No.1〜4の各試料をそれぞれ表1に示すシート厚となるように差し込み、それぞれの状態で空間線量率を測定し、上式によって放射線遮蔽率を求めた。結果を表2に示す。
放射能標準ガンマ線源:
社団法人日本アイソトープ協会校正、核種:セシウム137、線源コード:Cs402,放射能:8.70x10Bq、線源番号:884。
この標準線源から1cmの距離におけるγ線スぺクトルデータを図5に示す。なお、図5から後述する図7までのグラフにおいて、縦軸は計数率(cps)を、横軸はエネルギー(keV)を、それぞれ表す。
Figure 2013181793
実施例5
放射線発生源として1.72tの除去土壌(放射能濃度5〜9万ベクレル)が大型土嚢に充填されたものを対象にした。この大型土嚢に近接した位置において土嚢外周面と空間線量率測定器との間の距離を変えた場合の空間線量率の変化(減衰)を表3に示す。また、大型土嚢から距離50cmの位置におけるγ線スぺクトルデータを図6に示す。大型土嚢の周囲に、試料No.1の放射線遮蔽材20枚を重ねて(シート厚20mm)巻きつけ、当該放射線遮蔽層の鉛直方向の略中間に測定プローブを設置し、上記放射線遮蔽層の最外周面と上記測定プローブ先端との間を表3で設定した距離に設定した上で、それぞれ放射線遮蔽率を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2013181793
Figure 2013181793
実施例6〜14
表5に示す放射線量測定値を示す地表面及び側溝各3か所(いずれも福島県内某所)について、これらの上に試料No.1の放射線遮蔽材20枚を重ねて敷いた場合と敷かない場合とでそれぞれ空間線量率を測定し、放射線遮蔽率を求めた。空間線量率は、上記空間線量率測定器の測定プローブを垂直にし、その先端を地表面又は側溝の上面から約30mm程度離して測定した。放射線遮蔽材を敷いた場合には、その上面から約10mmの距離に測定プローブの先端を固定したことになる。その結果を表5に示す。
また、上記3か所の地表面について試料No.4の放射線遮蔽材20枚を重ねて敷いた場合と敷かない場合とについても同様に空間線量率を測定し、放射線遮蔽率を求めた。その結果を表6に示す。
Figure 2013181793
Figure 2013181793
実施例15〜17
福島県内某所の3軒の住宅のそれぞれについて、窓ガラス近傍での空間線量率を測定したところ、表7に示す結果が得られた。うち1件の住宅における窓ガラス近傍でのγ線スペクトル測定結果を図7に示す。このような住宅において、図8に示すように、当該窓ガラスに試料No.1の放射線遮蔽材を20枚重ねたもの(シート厚20mm)をカーテン状に加工したもの2を、当該窓25を塞ぐように配置した場合と配置しない場合とで空間線量率を測定し、放射線遮蔽率を求めた。空間線量率の測定には、上記空間線量率測定器(図8中、符号M参照)を用い、カーテン状の放射線遮蔽材2を設置した場合、設置しない場合とも、当該測定器Mを略同等の位置(カーテン状の遮蔽材を設置した場合にその内面から約1cmの位置)にセットした。その結果を表7に示す。
Figure 2013181793
以上より、本発明の放射線遮蔽材は、柔軟なシート状乃至板状を呈しているので、種々の形態の放射線発生源の周囲に対して又はこれを覆い隠すように放射線遮蔽層を設けることができ、その放射能濃度に応じて外放射線遮蔽層の層数(厚さ)を調整することで、当該放射線発生源からの放射線を所望の放射線遮蔽率に遮蔽できることは明らかである。
1、2 本発明の放射線遮蔽材
10 コンテナバッグ(容器)
11 吊りベルト
15 重石
20 地表面
25 窓
M 空間線量率測定器
X 放射線発生源

Claims (10)

  1. 硫酸バリウム及び/又は鉄含有物からなり、レーザー回折散乱法に基づく平均粒子径が0.01〜50μmの範囲である粉末状遮蔽材料を、熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーからなるバインダー中に均一に分散させて成形した柔軟なシート状乃至板状を呈し、前記粉末状遮蔽材料の含有率は40〜95wt%であり、1枚当たりの放射線遮蔽率がセシウム137標準線源について測定した場合の空間線量率の低減率にて0.3〜50%であることを特徴とする放射線遮蔽材。
  2. 前記放射線遮蔽材は、その厚さが0.3〜5mmであり、曲げることができ、巻くことができるものである請求項1に記載の放射線遮蔽材。
  3. 前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリオレフィン又は熱可塑性ポリウレタンである請求項1又は2に記載の放射線遮蔽材。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線遮蔽材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線遮蔽材を用い、放射線発生源の周囲に、又はこれを覆い隠すように少なくとも1層の放射線遮蔽層を形成して所望の放射線遮蔽率に遮蔽するようにしたことを特徴とする放射線の遮蔽方法。
  6. 前記放射線発生源は、容器に収容された状態とされ、前記放射線遮蔽層は当該容器の内面若しくは外面に積層形成されたものである請求項5に記載の放射線の遮蔽方法。
  7. 前記放射線発生源は、複数の容器群に収容された状態で保管されており、前記放射線遮蔽層は当該複数の容器群の周囲にこれを取り囲むように配置されたものである請求項5に記載の放射線の遮蔽方法。
  8. 前記放射線遮蔽材は、防水性を有するものである請求項5〜7のいずれか1項に記載の放射線の遮蔽方法。
  9. 前記容器はコンテナバッグである請求項6又は7に記載の放射線の遮蔽方法。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線遮蔽材を用い、これを建築物の構成部位の内面又は外面に沿って少なくとも1層積層配置して所望の放射線遮蔽率に遮蔽するようにしたことを特徴とする放射線の遮蔽方法。

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