JP2013181559A - 変速機の制御装置および制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機の摩擦係合要素が過度に高温とならないようにする。
【解決手段】パワーオンダウンシフト要求がなされたときには、その要求に対応する要求変速段GSreqを第1変速の第1目標変速段GS1に設定し(S110)、自動変速機の変速段を現在の変速段GSnowから第1変速の第1目標変速段GS1に変更する第1変速を実行したときの対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いときや(S140)、自動変速機の変速段を第1目標変速段GS1からそれより高車速側の第2目標変速段GS2に変更する第2変速を実行したときの対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いときで(S180)、第1目標変速段GS1に値1を加えた値が現在の目標変速段GSnowに等しいときには(S210)、第1変速の実行を禁止する(S220)。
【選択図】図7

Description

本発明は、変速機の制御装置および制御方法に関し、詳しくは、複数の摩擦係合要素の少なくとも一部の状態を係合状態と解放状態との間で変更することによって変速段を変更する変速機の制御装置および制御方法に関する。
従来、この種の変速機の制御装置としては、掛け替えダウンシフト変速の要求時において、所定の高負荷高回転領域でないときや解放側摩擦係合要素のフェーシング温度が所定の高温状態でないときには掛け替えダウンシフト変速を実行し、所定の高負荷高回転領域で且つ解放側摩擦係合要素のフェーシング温度が所定の高温状態のときには要求に対応するダウンシフトラインを低車速側に変更することによってダウンシフト変速を制限するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、こうした処理により、摩擦係合要素の発熱による耐久性の悪化を抑制して信頼性を確保している。
また、変速機の制御装置としては、ダウンシフト変速(DOWN変速)の要求時において、通常のDOWN変速を実行した場合の変速終了時のクラッチ温度(第1クラッチ温度)を予測すると共に予測した第1クラッチ温度がDOWN焼損温度より低いときには通常のDOWN変速を実行し、予測した第1クラッチ温度がDOWN焼損温度以上のときには、通常のDOWN変速より発熱量の少ないPYDOWN変速を実行した場合の変速終了時のクラッチ温度(第2クラッチ温度)を予測し、第2クラッチ温度がDOWN焼損温度より低いときにはPYDOWN変速を実行し、第2クラッチ温度がDOWN焼損温度以上のときには変速自体を禁止するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、こうした処理により、変速許容度を高めることによって運転性の悪化を防止している。
特開2004−230695号公報 特開2010−196903号公報
これらの制御装置では、現在の摩擦係合要素の温度が高温状態か否かや、要求に対応するダウンシフトを実行した場合の変速終了時の摩擦係合要素の温度が焼損温度以上となるか否かによってダウンシフトを実行するか否かを判断しているが、パワーオンダウンシフト要求がなされたときなどには、ダウンシフトを実行した後に車速の上昇によって比較的短時間でアップシフト要求がなされる場合がある。この場合、ダウンシフトを実行したときには特に問題がなくても、その後にアップシフトを実行したときに摩擦係合要素が過度に高温となってしまうおそれがある。
本発明の変速機の制御装置および制御方法は、変速機の摩擦係合要素が過度に高温とならないようにすることを主目的とする。
本発明の変速機の制御装置および制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の変速機の制御装置は、
複数の摩擦係合要素の少なくとも一部の状態を係合状態と解放状態との間で変更することによって変速段を変更する変速機の制御装置であって、
前記変速機のダウンシフト要求がなされたとき、前記ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定する第1目標変速段設定手段と、
前記変速機の変速段を現在の変速段から前記第1目標変速段に変更する第1変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測する第1予測手段と、
前記変速機の変速段を前記第1目標変速段から該第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測する第2予測手段と、
前記第1予測手段により前記第1変速を実行しても前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されると共に前記第2予測手段により前記第2変速を実行しても前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えないと予測されたときには前記第1変速を実行し、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときには前記第1変速を実行しない変速制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の変速機の制御装置では、変速機のダウンシフト要求がなされたとき、ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定し、変速機の変速段を現在の変速段から第1目標変速段に変更する第1変速(ダウンシフト)を実行すると複数の摩擦係合要素のうち第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測し、変速機の変速段を第1目標変速段から第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速(アップシフト)を実行すると複数の摩擦係合要素のうち第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測する。そして、第1変速を実行しても第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えないと予測すると共に第2変速を実行しても第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えないと予測したときには、第1変速を実行する。これにより、第1変速を実行することができる。一方、第1変速を実行すると第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えると予測したとき及び第2変速を実行すると第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えると予測されたときには、第1変速を実行しない。これにより、例えば、パワーオンダウンシフト要求がなされたときなどダウンシフトを実行した後に比較的短時間でアップシフト要求がなされる可能性があるときなどに、摩擦係合要素が過度に高温となるのを回避することができる。ここで、「第1変速用要素」は、複数の摩擦係合要素のうち第1変速を実行する際に発熱が想定される摩擦係合要素であり、「第2変速用要素」は、複数の摩擦係合要素のうち第2変速を実行する際に発熱が想定される摩擦係合要素である、ものとすることもできる。
こうした本発明の変速機の制御装置において、前記第1目標変速段設定手段は、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときに、現在の前記第1目標変速段が前記変速機の現在の変速段より2段以上低車速側の変速段のときには、現在の前記第1目標変速段より1段だけ高車速側の変速段を新たに前記第1目標変速段に設定する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、新たに設定した第1目標変速段を用いて、第1変速を実行すると第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測したり、第2変速を実行すると第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測したりすることにより、要求変速段より高車速側で且つ現在の変速段より低車速側の変速段への第1変速(ダウンシフト)を実行することができる場合がある。
また、本発明の変速機の制御装置において、前記第2予測手段は、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたときには、前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えるか否かを予測しない手段である、ものとすることもできる。こうすれば、処理負荷の低減を図ることができる。
さらに、本発明の変速機の制御装置において、前記第2予測手段は、前記第1変速手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されたときに、前記第2変速用要素と前記第1変速用要素とが同一でないときには、前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えるか否かを予測しない手段であり、前記変速制御手段は、前記第1変速手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されたときに、前記第2変速用要素と前記第1変速用要素とが同一でないときには、前記第1変速を実行する手段である、ものとすることもできる。
あるいは、本発明の変速機の制御装置において、前記第2予測手段は、前記第1目標変速段より1段だけ高車速側の変速段を前記第2目標変速段とする手段である、ものとすることもできる。
加えて、本発明の変速機の制御装置において、前記第1予測手段は、前記第1変速中の前記第1変速用要素の分担トルクに基づいて該第1変速における該第1変速用要素の発熱量を演算すると共に該演算した第1変速における第1変速用要素の発熱量に基づいて前記第1変速の終了時の該第1変速用要素の温度を演算し、該演算した第1変速の終了時の第1変速用要素の温度を前記第1所定温度と比較する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、第1変速の終了時の第1変速用要素の温度を推定して、第1変速を実行すると第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測することができる。
また、本発明の変速機の制御装置において、前記第2予測手段は、前記第1変速の終了時の前記第2変速用要素の温度に基づいて前記第2変速のイナーシャ相の開始時の該第2変速用要素の温度を演算し、前記第2変速中の前記第2変速用要素の分担トルクに基づいて該第2変速における該第2変速用要素の発熱量を演算し、前記演算した第2変速のイナーシャ相の開始時の第2変速用要素の温度と前記演算した第2変速における第2変速用要素の発熱量とに基づいて前記第2変速の終了時の該第2変速用要素の温度を演算し、該演算した第2変速の終了時の第2変速用要素の温度を前記第2所定温度と比較する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、第2変速の終了時の第2変速用要素の温度を推定して、第2変速を実行すると第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測することができる。
本発明の変速機の制御装置において、前記第1変速用要素は、前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速で係合状態から解放状態とする摩擦係合要素であり、前記第2変速用要素は、前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速で解放状態から係合状態とする摩擦係合要素である、ものとすることもできる。
本発明の変速機の制御方法は、
複数の摩擦係合要素の少なくとも一部の状態を係合状態と解放状態との間で変更することによって変速段を変更する変速機の制御方法であって、
(a)前記変速機のダウンシフト要求がなされたとき、前記ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定し、
(b)前記変速機の変速段を現在の変速段から前記第1目標変速段に変更する第1変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測し、
(c)前記変速機の変速段を前記第1目標変速段から該第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測し、
(d)前記第1予測手段により前記第1変速を実行しても前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されると共に前記第2予測手段により前記第2変速を実行しても前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えないと予測されたときには前記第1変速を実行し、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときには前記第1変速を実行しない、
ことを要旨とする。
この本発明の変速機の制御方法では、変速機のダウンシフト要求がなされたとき、ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定し、変速機の変速段を現在の変速段から第1目標変速段に変更する第1変速(ダウンシフト)を実行すると複数の摩擦係合要素のうち第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測し、変速機の変速段を第1目標変速段から第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速(アップシフト)を実行すると複数の摩擦係合要素のうち第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測する。そして、第1変速を実行しても第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えないと予測すると共に第2変速を実行しても第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えないと予測したときには、第1変速を実行する。これにより、第1変速を実行することができる。一方、第1変速を実行すると第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えると予測したとき及び第2変速を実行すると第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えると予測されたときには、第1変速を実行しない。これにより、例えば、パワーオンダウンシフト要求がなされたときなどダウンシフトを実行した後に比較的短時間でアップシフト要求がなされる可能性があるときなどに、摩擦係合要素が過度に高温となるのを回避することができる。ここで、「第1変速用要素」は、複数の摩擦係合要素のうち第1変速を実行する際に発熱が想定される摩擦係合要素であり、「第2変速用要素」は、複数の摩擦係合要素のうち第2変速を実行する際に発熱が想定される摩擦係合要素である、ものとすることもできる。
本発明の一実施例である変速機の制御装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。 トルクコンバータ22と自動変速機30との構成の概略を示す構成図である。 自動変速機30の各変速段とクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2の作動状態との関係を表わした作動表を示す説明図である。 変速マップの一例を示す説明図である。 アップシフト時やアクセルオフでのダウンシフト時の入力軸回転速度Ninと係合側要素や解放側要素の油圧との時間変化の様子を模式的に示す説明図である。 アクセルオンでのダウンシフト時の入力軸回転速度Ninと係合側要素や解放側要素の油圧との時間変化の様子を模式的に示す説明図である。 実施例の変速機ECU80により実行されるパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの一例を示すフローチャートである。 第1変速温度推定処理の一例を示すフローチャートである。 エンジントルク設定用マップの一例を示す説明図である。 第2変速温度推定処理の一例を示すフローチャートである。 第1変速の実行を許可する場合の一例を示す説明図である。 第1変速の実行を禁止する場合の一例を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例である変速機の制御装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、トルクコンバータ22と自動変速機30との構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1および図2に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼によって動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられた流体伝動装置としてのトルクコンバータ22と、このトルクコンバータ22の出力側に入力軸31が接続されると共にデファレンシャルギヤ18を介して駆動輪19a,19bに出力軸32が接続されて入力軸31に入力された動力を変速して出力軸32に伝達する自動変速機30と、トルクコンバータ22や自動変速機30に作動油を給排する油圧回路60と、油圧回路60を制御することによってトルクコンバータ22や自動変速機30を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。ここで、実施例の変速機の制御装置としては、変速機ECU80が該当する。
エンジンECU16は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU16には、エンジン22のクランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号,アクセルペダル93の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。
トルクコンバータ22は、図2に示すように、エンジン12のクランクシャフト14に接続された入力側のポンプインペラ23と、タービンハブを介して自動変速機30の入力軸31に接続された出力側のタービンランナ24と、ポンプインペラ23およびタービンランナ24の内側に配置されてタービンランナ24からポンプインペラ23への作動油の流れを整流するステータ25と、ダンパ機構を有するロックアップクラッチ28と、を備える。
自動変速機30は、図2に示すように、8段変速の有段変速機として構成されており、ダブルピニオン式の遊星歯車機構40とラビニヨ式の遊星歯車機構50と4つのクラッチC1,C2,C3,C4と2つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。ダブルピニオン式の遊星歯車機構40は、外歯歯車としてのサンギヤ41と、このサンギヤ41と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ42と、サンギヤ41に噛合する複数の第1ピニオンギヤ43aと、この第1ピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数の第2ピニオンギヤ43bと、複数の第1ピニオンギヤ43aおよび複数の第2ピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備える。サンギヤ41はケースに固定されており、リングギヤ42はクラッチC3を介して回転軸46に接続されており、キャリア44は入力軸31に接続されると共にクラッチC4を介して回転軸46に接続されている。回転軸46は、ブレーキB1のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっている。ラビニヨ式の遊星歯車機構50は、外歯歯車の二つのサンギヤ51a,51bと、内歯歯車のリングギヤ52と、サンギヤ51aに噛合する複数のショートピニオンギヤ53aと、サンギヤ51bおよび複数のショートピニオンギヤ53aに噛合すると共にリングギヤ52に噛合する複数のロングピニオンギヤ53bと、複数のショートピニオンギヤ53aおよび複数のロングピニオンギヤ53bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア54とを備える。サンギヤ51aはクラッチC1を介してダブルピニオン式の遊星歯車機構40のリングギヤ42に接続されており、サンギヤ51bは回転軸46に接続されており、リングギヤ52は出力軸32に接続されており、キャリア54はワンウェイクラッチF1によりその回転が一方向に規制され且つブレーキB2の係合状態または開放状態に応じてその回転が固定または自由にされると共にクラッチC2を介して入力軸31に接続されている。図3に自動変速機30の各変速段とクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2の作動状態との関係を表わした作動表を示す。この自動変速機30は、図3の作動表に示すように、クラッチC1〜C4の係合状態または開放状態とブレーキB1,B2の係合状態または開放状態との組み合わせによって前進1速〜8速と後進とニュートラルとを形成することができる。
変速機ECU80は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。変速機ECU80には、クランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号や、入力軸31に取り付けられた回転速度センサ31aからの入力軸回転速度Ninや、出力軸32に取り付けられた回転速度センサ32aからの出力軸回転速度Nout,油圧回路60に取り付けられて作動油の温度を検出する温度センサ62からの油温Tot,シフトレバー91の位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル95の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ96からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されており、変速機ECU80からは、油圧回路60への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
なお、エンジンECU16とブレーキECU17と変速機ECU80とは、相互に通信ポートを介して接続されており、相互に制御に必要な各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例の自動車10では、変速機ECU80は、アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Accと車速センサ98からの車速Vと図4の変速マップとに基づいて要求変速段GSreqを設定し、自動変速機30の変速段が要求変速段GSreqとなるよう、即ち、複数の摩擦係合要素としてのクラッチC1〜C4やブレーキB1,B2のうち要求変速段GSreqに応じた摩擦係合要素が係合状態となると共に他の摩擦係合要素が解放状態となるよう油圧回路60を制御する。具体的には、図4の変速マップに示すように、アクセル開度Accと車速Vとからなる作動ポイントがアップシフトライン(図中、実線の「1−2」,「2−3」ラインなど)を左側の数字以下の変速段(例えば、「3−4」ラインでは1速〜3速)の状態で跨いだときにそのときの変速段から右側の数字の変速段にアップシフトするようクラッチC1〜C4やブレーキB1,B2を係合状態または解放状態とする。また、アクセル開度Accと車速Vとからなる作動ポイントがダウンシフトライン(図中、点線の「2−1」,「3−2」ラインなど)を左側の数字以上の変速段(例えば、「4−3」ラインでは4速〜8速)の状態で跨いだときにそのときの変速段から右側の数字の変速の変速段にダウンシフトするようクラッチC1〜C4やブレーキB1,B2を係合状態または解放状態する。なお、以下の説明では、複数の摩擦係合要素としてのクラッチC1〜C4やブレーキB1,B2のうち自動変速機30の変速段を変更するときに解放状態から係合状態とする摩擦係合要素を係合側要素といい、係合状態から解放状態とする摩擦係合要素を解放側要素という。
図5は、アップシフト時やアクセルオフでのダウンシフト時の入力軸回転速度Ninと係合側要素や解放側要素の油圧との時間変化の様子を模式的に示す説明図である。アップシフト時やアクセルオフでのダウンシフト時には、図示するように、変速処理の開始として(時刻t11)、解放側要素に対する油圧を1段低下させて解放側要素をスリップ係合させると共に、係合側要素に対するファストフィル,低圧待機を実行する。続いて、係合側要素に対するファストフィルから所定時間経過後(時刻t12)から、解放側要素に対する油圧を徐々に低下させると共に係合側要素に対する油圧を徐々に上昇させて、トルクの伝達要素を解放側要素から係合側要素に移行させるトルク相制御を実行する。そして、入力軸回転速度Ninが低下し始めてイナーシャ相が開始すると(時刻t13)、係合側要素に対する油圧を緩やかに上昇させて係合側要素のスリップ係合によって入力軸回転速度Ninを変速後の変速段に応じた回転速度(目標回転速度Nin*)に変更するイナーシャ相制御を実行する。なお、図示していないが、イナーシャ相では、出力軸32のトルク変動を抑制するためにエンジン12のトルクを一時的に低下させるリダクション処理が行なわれる。そして、入力軸回転速度Ninが目標回転速度Nin*近傍に至ると(時刻t14)、係合側要素の油圧を最大油圧にする終期制御を実行する。
図6は、アクセルオンでのダウンシフト(いわゆるパワーオンダウンシフト)時の入力軸回転速度Ninと係合側要素や解放側要素の油圧との時間変化の様子を模式的に示す説明図である。アクセルオンでのダウンシフト時には、図示するように、変速処理の開始として(時刻t21)、係合側要素に対するファストフィル,低圧待機を実行すると共に、解放側要素に対する油圧を1段低下させて解放側要素をスリップ係合させる。そして、解放側要素のスリップ係合によって入力軸回転速度Ninが上昇し始めると(時刻22)、解放側要素に対する油圧を低圧待機させて、入力軸回転速度Ninを変速後の変速段に応じた回転速度(目標回転速度Nin*)まで上昇させる。アクセルオンでのダウンシフト時には、エンジン12からトルクが出力されている状態でダウンシフトを行なうため、解放側要素をスリップ係合させた状態でエンジン12からのトルクによって入力軸回転速度Ninが目標回転速度Nin*まで上昇することになる。入力軸回転速度Ninが目標回転速度Nin*近傍に至ると(時刻23)、係合側要素に対する油圧を徐々に上昇させて、トルクの伝達要素を解放側要素から係合側要素に移行させる。
次に、こうして構成された自動車10に搭載された変速機ECU80の動作、特に、パワーオンダウンシフト要求がなされたときの動作について説明する。図7は、実施例の変速機ECU80により実行されるパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、パワーオンダウンシフト要求がなされたときに実行される。
パワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンが実行されると、実施例の変速機ECU80は、まず、アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Accや車速センサ98からの車速V,現在の変速段GSnowや要求変速段GSreqなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、現在の変速段GSnowは、自動変速機30の変速段を形成したとき(変更したとき)に図示しないRAMに記憶させたものを入力するものとした。また、要求変速段GSreqは、アクセル開度Accと車速Vと図4の変速マップとを用いて設定されたものを入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力した要求変速段GSreqを第1目標変速段GS1に設定し(ステップS110)、自動変速機30の変速段を現在の変速段GSnowから第1目標変速段GS1に変更する第1変速(ダウンシフト)における対象要素i1を設定する(ステップS120)。ここで、対象要素i1は、クラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2のうち第1変速における解放側要素を設定するものとした。例えば、6速から2速や3速に変更する場合にはクラッチC2,C4を対象要素i1に設定し、6速から4速に変更する場合にはクラッチC2を対象要素i1に設定し、6速から5速に変更する場合にはクラッチC4を対象要素i1に設定することになる。なお、第1変速における解放側要素を対象要素i1に設定するのは、一般に、パワーオンダウンシフトを実行する際には解放側要素の発熱が係合側要素の発熱に比して大きくなりやすいためである。
続いて、図8に例示する第1変速温度推定処理により、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を推定する(ステップS130)。なお、実施例では、自動変速機30の変速段の変更が行なわれていないときや第1変速や第2変速(後述)の開始時からそれぞれのイナーシャ相の開始時までは、対象要素i1や対象要素i2(後述)の温度が油温Totより高いときには油温Totに略等しくなるまで放熱による温度低下が生じるものとし、イナーシャ相の開始時から変速終了時までは、対象要素i1や対象要素i2のスリップ係合による発熱が生じるものとした。また、実施例では、対象要素i1が複数のときには、それぞれについて、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を推定するものとした。以下、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの説明を中断し、図8の第1変速温度推定ルーチンについて説明する。
第1変速温度推定処理では、まず、現在(第1変速開始時)の対象要素i1の温度T1s[i1],現在,第1変速終了時のエンジン回転速度Ne1s,Ne1e,現在,第1変速終了時の入力軸回転速度Nin1s,Nin1eなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS300)。
ここで、現在の対象要素i1の温度T1s[i1]は、温度センサ62により検出された油温Totを入力するものとした。これは、パワーオンダウンシフト要求時(第1変速の開始前)には、通常、対象要素i1の温度T1s[i1]と油温Totとが略等しいと考えてよいためである。また、現在のエンジン回転速度Ne1s,入力軸回転速度Nin1sは、それぞれ、回転速度センサ14a,31aにより検出されたものを入力するものとした。さらに、第1変速終了時の入力軸回転速度Nin1eは、第1変速終了時の車速V1eと現在の変速段GSnowと第1目標変速段GS1とに基づいて設定されたものを入力するものとした。第1変速終了時のエンジン回転速度Ne1eは、第1変速終了時の入力軸回転速度Nin1eとロックアップクラッチ28の状態とに基づいて設定されたものを入力するものとした。なお、第1変速終了時の車速V1eは、現在の車速Vの変化率ΔVと第1変速の変速パターンに応じた第1変速の目標時間tchtag1とに基づいて計算されたものを用いることができる。
続いて、入力したアクセル開度Accとエンジン回転速度Ne1sとに基づいて第1変速開始時のエンジントルクTe1sを設定すると共に、アクセル開度Accとエンジン回転速度Ne1eとに基づいて第1変速終了時のエンジントルクTe1eを設定する(ステップS310)。これらの設定は、実施例では、アクセル開度Accとエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を予め定めてエンジントルク設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、アクセル開度Accとエンジン回転速度Ne(回転速度Ne1sまたは回転速度Ne1e)とが与えられると記憶したマップから対応するエンジントルクTeを導出することによって行なうものとした。エンジントルク設定用マップの一例を図9に示す。
そして、第1変速開始時のエンジントルクTe1sとエンジン回転速度Ne1sと入力軸回転速度Nin1sとに基づいてそのときの入力軸31のトルクとしての入力トルクTin1sを設定すると共に、第1変速終了時のエンジントルクTe1eとエンジン回転速度Ne1eと入力軸回転速度Nin1eとに基づいてそのときの入力トルクTin1eを設定する(ステップS320)。ここで、入力トルクTin1s,Tin1eは、実施例では、それぞれ、エンジン回転速度Ne1s,Ne1eと入力軸回転速度Nin1s,Nin1eとの比に応じた係数k1s,k1eをエンジントルクTe1s,Te1eに乗じて計算するものとした。
こうして入力トルクTin1sと入力トルクTin1eとを設定すると、設定した入力トルクTin1sと入力トルクTin1eとの平均値を第1変速中の入力トルクTin1に設定し(ステップS330)、設定した入力トルクTin1と第1変速の変速パターン(例えば、6速から4速や6速から5速など)とに基づいて第1変速中の対象要素i1の分担トルクTdiv1[i1]を設定する(ステップS340)。ここで、対象要素i1の分担トルクTdiv1[i1]は、変速パターンに応じたトルク分担割合Rch[i1]を入力トルクTin1に乗じて計算するものとした。なお、トルク分担割合Rch[i1]は、変速パターン毎に図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。
そして、第1変速中の対象要素i1の分担トルクTdiv1[i1]と第1変速開始時の対象要素i1の入力軸31側と出力軸32側との回転速度差Sslip1と第1変速のイナーシャ相の目標時間tiptag1と第1変速におけるエンジン12や自動変速装置20のイナーシャI1と第1変速のイナーシャ相の目標回転角加速度ω1と第1変速中のエンジントルクTeのコントロール量Tc1(エンジン12のトルクを一時的に低下させるリダクション処理(上述)に用いられる量)とを用いて次式(1)により第1変速を実行したときの対象要素i1の発熱量Q1[i1]を計算する(ステップS350)。ここで、上述したように、実施例では、第1変速のイナーシャ相の開始時から第1変速終了時までに亘って対象要素i1のスリップ係合による発熱が生じるものとしたから、第1変速を実行したときの対象要素i1の発熱量Q1[i1]は、第1変速のイナーシャ相の開始時から第1変速終了時までの対象要素i1の発熱量Q1[i1]として考えることができる。また、回転速度差Sslip1や目標時間tiptag1,イナーシャI1は、それぞれ、変速パターン毎に図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。さらに、目標回転角加速度ω1やコントロール量Tc1は、変速パターンに基づいて計算されたものを用いるものとした。なお、コントロール量Tc1は、変速時間を短縮するために、スロットル開度を小さくしたり点火時期を遅くしたりするなどしてエンジントルクTeを低下させる量である。
Q1[i1]=2π(Sslip1・tiptag1)・(Tdiv1[i1]+I1・ω1-Tc1) (1)
こうして第1変速を実行したときの対象要素i1の発熱量Q1[i1]を計算すると、次式(2)に示すように、発熱量Q1[i1]を対象要素i1の熱容量C[i1]で除して第1変速を実行したときの対象要素i1の上昇温度ΔTg1[i1]を計算すると共に(ステップS360)、式(3)に示すように、計算した上昇温度ΔTg1[i1]を対象要素i1の現在温度T1s[i1]に加えて第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を計算して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。なお、対象要素i1の熱容量C[i1]は、図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。
ΔTg1[i1]=Q1[i1]/C[i1] (2)
T1e[i1]=T1s[i1]+ΔTg1[i1] (3)
以上、図8の第1変速温度推定ルーチンについて説明した。図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの説明に戻る。ステップS130で第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を設定すると、設定した第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を閾値Tref[i1]と比較する(ステップS140)。ここで、閾値Tref[i1]は、第1変速を実行すると対象要素i1が過度に高温となるおそれがあるか否かを判定するために用いられるものであり、例えば、対象要素i1の許容上限温度(対象要素i1の焼損のおそれがある温度範囲の下限より若干低い温度)などを用いることができる。なお、対象要素i1が複数のときには、それぞれについて、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を閾値Tref[i1]と比較すればよい。
第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]以下のときには、第1変速を実行しても対象要素i1が過度に高温となる可能性は低いと判断し、第1目標変速段GS1に値1を加えた値を第2目標変速段GS2に設定する(ステップS150)。なお、対象要素i1が複数の場合には、全ての要素について温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]以下のときに、第1変速を実行しても対象要素i1が過度に高温となる可能性は低いと判断するものとした。
続いて、自動変速機30の変速段を第1目標変速段GS1から第2目標変速段GS2に変更する第2変速(アップシフト)における対象要素i2を設定する(ステップS160)。ここで、対象要素i2は、クラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2のうち第2変速における係合側要素を設定するものとした。例えば、2速から3速に変更する場合にはクラッチC3を対象要素i2に設定し、3速から4速に変更する場合にはクラッチC4を対象要素i2に設定し、4速から5速に変更する場合にはクラッチC2を対象要素i2に設定し、5速から6速に変更する場合にはクラッチC4を対象要素i2に設定することになる。なお、第2変速における係合側要素を対象要素i2に設定するのは、パワーオンダウンシフトを実行した後にパワーオンアップシフトを実行する際には、一般に、係合側要素の発熱が解放側要素の発熱に比して大きくなりやすいためである。
続いて、図10に例示する第2変速温度推定処理により、第2変速終了時の対象要素i2の温度T22[i2]を推定する(ステップS170)。以下、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの説明を中断し、図10の第2変速温度推定ルーチンについて説明する。この第2変速温度推定ルーチンでは、第1変速終了後にアクセル開度Accが100%になった場合を考えるものとした。なお、第1変速終了後のアクセル開度Accは、100%に限られず、所定の高開度(例えば、70%や80%,90%など)を考えるものとしてもよい。
第2変速温度推定処理では、まず、温度センサ62からの油温Tot,第1変速終了時の対象要素i2の温度T1e[i2],第1変速終了時の車速V1e,第1変速終了後にアクセル開度Accが100%になった場合の第2変速開始時,終了時のエンジン回転速度Ne2s,Ne2e,入力軸回転速度Nin2s,Nin2eなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。
ここで、第1変速終了時の対象要素i2の温度T1e[i2]は、対象要素i2が対象要素i1と同一のときには、図8の第1変速温度推定ルーチンにより設定された第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]を入力するものとし、対象要素i2が対象要素i1と同一でないときは、温度センサ62により検出された油圧Totを入力するものとした。また、第1変速終了時の車速V1eについては上述した。さらに、第2変速開始時の入力軸回転速度Nin2sは、図4の変速マップに第1目標変速段GS1とアクセル開度Acc(100%)とを適用して得られる第2変速開始時の車速V2sと第1目標変速段GS1とに基づいて設定されたものを入力するものとした。第2変速終了時の入力軸回転速度Nin2eは、第2変速開始時の車速V2sとアクセル開度Accが100%の場合の車両の加速度αと第2変速の変速パターンに応じた第2変速の目標時間tchtag2とに基づく第2変速終了時の車速V2eと第2目標変速段GS2とに基づいて設定されたものを入力するものとした。第2変速開始時,終了時のエンジン回転速度Ne2s,Ne2eは、第2変速開始時,終了時の入力軸回転速度Nin2s,Nin2eとロックアップクラッチ28の状態とに基づいて設定されたものを入力するものとした。なお、アクセル開度Accが100%の場合の車両の加速度αは、第1変速終了時の車速V1eや第2変速開始時の車速V2s,自動変速機30の変速段が第1目標変速段GS1のときのギヤ比Gr1および効率ηgs1,駆動輪19a,19bや図示しない従動輪のタイヤの半径Rtire,車速Vに応じた走行抵抗Fvなどを用いて設定することができる。
こうしてデータを入力すると、入力した第2変速終了時の車速V2eから第2変速開始時の車速V2sを減じた値をアクセル開度Accが100%の場合の車両の加速度αで除して第1変速終了時から第2変速開始時までの変速間時間tupを計算し(ステップS410)、計算した変速間時間tupと第2変速開始から第2変速のイナーシャ相の開始時までの遅れ時間tlag2との和を対象要素i2の放熱時間td2に設定する(ステップS420)。
続いて、第2変速のイナーシャ相の開始時の対象要素i2の温度T2ips[i2]を計算する(ステップS430)。この計算は、実施例では、今回の対象要素i2の温度T[i2]と単位時間前の対象要素i2の温度(前回T[i2])と油温Totと温度勾配係数Kとの関係を次式(4)の漸化式により表わすことができることを踏まえて、この式(4)の漸化式を用いて、第1変速終了時から放熱時間td2だけ経過後(第2変速のイナーシャ相の開始時)の対象要素i2の温度T2ips[i2]を計算するものとした。具体的には、単位時間前の対象要素i2の温度(前回T[i2])に初期値として第1変速終了時の対象要素i2の温度T1e[i1]を代入して第1変速終了時から単位時間後の対象要素i2の温度T[i2]を計算し、同様の計算を繰り返すことにより、第2変速のイナーシャ相の開始時の対象要素i2の温度T2ips[i2]を計算するものとした。ここで、温度勾配係数Kは、対象要素i2毎に図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。また、油温Totは、簡単のために、略一定とみなして、温度センサ62により検出された値(現在の油温Tot)を用いるものとした。この式(4)から分かるように、第1変速終了時から放熱時間td2が経過する前に対象要素i2の温度T[i2]が油温Tot以下に至ったとき(例えば、対象要素i1と対象要素i2とが同一でないとき)には、第2変速のイナーシャ相の開始時のi2の温度T2ips[i2]には油温Totが設定されることになる。
T[i2]=max(K・前回T[i2]-Tot,Tot) (4)
次に、図8の第1変速温度推定処理のステップS310の処理と同様に、第2変速開始時のエンジン回転速度Ne2eと図9のマップとに基づいてアクセル開度Accが100%の場合の第2変速開始時のエンジントルクTe2sを設定すると共に、第2変速終了時のエンジン回転速度Ne2sと図9のマップとに基づいてアクセル開度Accが100%の場合の第2変速終了時のエンジントルクTe2eを設定する(ステップS440)。続いて、ステップS320の処理と同様に、第2変速開始時のエンジントルクTe2sとエンジン回転速度Ne2sと入力軸回転速度Nin2sとに基づいてそのときの入力トルクTin2sを設定すると共に、第2変速終了時のエンジントルクTe2esとエンジン回転速度Ne2eと入力軸回転速度Nin2eとに基づいてそのときの入力トルクTin2eを設定する(ステップS450)。そして、ステップS330,S330,S340の処理と同様に、設定した入力トルクTin2sと入力トルクTin2eとの平均値を第2変速中の入力トルクTin2に設定し(ステップS460)、設定した入力トルクTin2と第2変速の変速パターン(例えば、3速から4速や4速から5速など)とに基づいて第2変速中の対象要素i2の分担トルクTdiv2[i2]を設定する(ステップS470)。
そして、第2変速中の対象要素i2の分担トルクTdiv2[i2]と第2変速開始時の対象要素i2の入力軸31側と出力軸32側との回転速度差Sslip2と第2変速のイナーシャ相の目標時間tiptag2と第2変速におけるエンジン12や自動変速装置20のイナーシャI2と第2変速のイナーシャ相の目標回転角加速度ω2と第2変速中のエンジントルクTeのコントロール量Tc2とを用いて次式(5)により第2変速を実行したときの対象要素i2の発熱量Q2[i2]を計算する(ステップS480)。ここで、回転速度差Sslip2や目標時間tiptag2,イナーシャI2は、上述の回転速度差Sslip1や目標時間tiptag1,イナーシャI1と同様に、変速パターン毎に図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。また、目標回転角加速度ω2やコントロール量Tc2は、上述の目標回転角加速度ω1やコントロール量Tc1と同様に、変速パターンに基づいて計算されたものを用いるものとした。なお、上述したように、実施例では、イナーシャ相の開始時から変速終了時まで対象要素i2のスリップ係合による発熱が生じるものとして考えているから、この発熱量Q2[i2]は、第2変速のイナーシャ相の開始時から変速終了時までの発熱量となる。
Q2[i2]=2π(Sslip2・tiptag2)・(Tdiv2[i2]+I2・ω2-Tc2) (5)
こうして第2変速を実行したときの対象要素i2の発熱量Q2[i2]を計算すると、次式(6)に示すように、発熱量Q2[i2]を対象要素i2の熱容量C[i2]で除して第2変速を実行したときの対象要素i2の上昇温度ΔTg2[i2]を計算すると共に(ステップS490)、式(7)に示すように、計算した上昇温度ΔTg2[i2]を第2変速のイナーシャ相の開始時の対象要素i2の温度T2ips[i2]に加えて第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を計算して(ステップS500)、本ルーチンを終了する。なお、対象要素i2の熱容量C[i2]は、図示しないROMに記憶されているものを用いるものとした。
ΔTg2[i2]=Q2[i2]/C[i2] (6)
T2e[i2]=T2ips[i2]+ΔTg2[i2] (7)
以上、図10の第2変速温度推定ルーチンについて説明した。図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンの説明に戻る。ステップS170で第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i1]を設定すると、設定した第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を閾値Tref[i2]と比較する(ステップS140)。ここで、閾値Tref[i2]は、第1変速終了後にアクセル開度Accが100%となって比較的短時間で第2変速を実行すると対象要素i2が過度に高温となるおそれがあるか否かを判定するために用いられるものであり、例えば、対象要素i2の許容上限温度(対象要素i2の焼損のおそれがある温度範囲の下限より若干低い温度)などを用いることができる。なお、対象要素i2が複数のときには、それぞれについて、第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を閾値Tref[i2]と比較すればよい。
第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]以下のときには、第1変速終了後に比較的短時間で第2変速を実行しても対象要素i2が過度に高温となる可能性は低いと判断し、第1変速の実行を許可して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。こうして第1変速の実行が許可されると、第1変速(ダウンシフト)を実行する。即ち、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]以下で且つ第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]以下のときには、第1変速を実行するのである。なお、ステップS180で、対象要素i2が複数の場合には、全ての要素について温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]以下のときに、第1変速終了後に比較的短時間で第2変速を実行しても対象要素i2が過度に高温となる可能性は低いと判断するものとした。
図11は、このように第1変速の実行を許可する場合の一例を示す説明図である。図11は、現在の変速段GSnowが4速で第1目標変速段GS1が2速,第2目標変速段GS2が3速の場合(対象要素i1がクラッチC4,対象要素i2がクラッチC3の場合)を示す。図中、「tnow」は、パワーオンダウンシフト要求がなされた時刻(現在)であり、「Tref」は、上述の閾値Tref[i1],Tref[i2]を簡単のために同一値としてまとめて表わしたものである。また、図中、実線は実際の値を示し、白丸印は計算値(推定値)を示す。なお、実施例では計算していないが、参考のために、クラッチC3,C4の温度の時間変化の様子を模式的に一点鎖線で示した。図11の例では、第1変速終了時のクラッチC4の温度,第2変速終了時のクラッチC3の温度が共に閾値Tref以下であることから、第1変速の実行を許可し、第1変速として自動変速機30の変速段を4速から2速に変更する。
ステップS140で第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いときや、ステップS180で第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いときには、第1変速を実行すると対象要素i1が過度に高温となるおそれがあったりその後に比較的短時間で第2変速を実行すると対象要素i2が過度に高温となるおそれがあったりすると判断し、現在の第1目標変速段GS1に値1を加えて第1目標変速段GS1を更新する(ステップS200)。ここで、ステップS140で第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いときには、ステップS150〜S180の処理を実行しないから、変速機ECU80の処理負荷の低減を図ることができる。
そして、更新後の第1目標変速段GS1を現在の変速段GSnowと比較し(ステップS210)、更新後の第1目標変速段GS1が現在の変速段GSnowと同一のときには、第1変速の実行を禁止して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。なお、ステップS140で、対象要素i1が複数の場合には、少なくとも1つの要素について温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いときに、第1変速を実行すると対象要素i1が過度に高温となるおそれがあると判断するものとした。同様に、ステップS180で、対象要素i2が複数の場合には、少なくとも1つの要素について温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いときに、第1変速終了後に比較的短時間で第2変速を実行すると対象要素i2が過度に高温となるおそれがあると判断するものとした。
図12は、このように第1変速の実行を禁止する場合の一例を示す説明図である。図12は、現在の変速段GSnowが4速で第1目標変速段GS1が3速,第2目標変速段GS2が4速の場合(対象要素i1,i2が共にクラッチC4の場合)を示す。図12の例では、第1変速終了時のクラッチC4の温度は閾値Tref以下であるが、第2変速終了時のクラッチC4の温度が閾値Trefより高くなることから、第1変速の実行を禁止する。パワーオンダウンシフト要求がなされたときには、ダウンシフトを実行した後にアクセルオンによる車速Vの上昇によって比較的短時間でアップシフト要求がなされる場合があるが、実施例では、第1変速(ダウンシフト)の実行を禁止することにより、ダウンシフトを実行したときやその後にアップシフトを実行したときに摩擦係合要素(図12の例ではクラッチC4)が過度に高温になってしまう、という不都合を回避することができる。
ステップS210で更新後の第1目標変速段GS1が現在の変速段GSnowと同一でない(低車速側の変速段)のときには、ステップS120に戻り、ステップS120以降の処理を実行する。これにより、例えば、現在の変速段GSnowが6速で第1目標変速段GS1が3速,第2目標変速段GS2が4速の場合には、第1目標変速段GS1を4速に更新してステップS120以降の処理を実行する。したがって、6速から3速(対象要素i1はクラッチC2,C4)に変更したりその後に3速から4速(対象要素i2はクラッチC4)に変更したりすると摩擦係合要素が過度に高温となるおそれがあるときでも、6速から4速(対象要素i1はクラッチC2),4速から5速(対象要素i2はクラッチC2)に変更すると摩擦係合要素が過度に高温となるおそれがないときには、6速から4速に変更することができる。
以上説明した実施例の変速機の制御装置によれば、パワーオンダウンシフト要求がなされたときには、パワーオンダウンシフト要求に対応する(アクセル開度Accと車速Vと変速マップとに応じた)要求変速段GSreqを第1変速の第1目標変速段GS1に設定し、自動変速機30の変速段を現在の変速段GSnowから第1変速の第1目標変速段GS1に変更する第1変速を実行したときの対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1](推定値)を閾値Tref[i1]と比較する。続いて、自動変速機30の変速段を第1変速の第1目標変速段GS1からそれより1段だけ高車速側の第2目標変速段GS2に変更する第2変速を実行したときの対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2](推定値)を閾値Tref[i2]と比較する。そして、対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]以下で且つ対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]以下のときには、第1変速を実行し、対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いときや、対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いときには、第1変速の実行を禁止する。これにより、ダウンシフトを実行したときやその後にアップシフトを実行したときに摩擦係合要素が過度に高温になってしまう、という不都合を回避することができる。
実施例の変速機の制御装置では、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1](推定値)が閾値Tref[i1]より高いときや、第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2](推定値)が閾値Tref2[i2]より高いときにおいて、そのときの第1変速の第1目標変速段GS1が現在の変速段GSnowより2段以上低車速側の変速段のときには、第1変速の第1目標変速段GS1を1段だけ高車速側の変速段に更新するものとしたが、第1変速の第1目標変速段GS1を更新せずに、第1変速の実行を禁止するものとしてもよい。即ち、実施例では、6速から3速に変更したりその後に3速から4速に変更したりすると摩擦係合要素が過度に高温となるおそれがあるときには、6速から4速,4速から5速に変更すると摩擦係合要素が過度に高温となるおそれがあるか否かを判定するが、6速から3速に変更したりその後に3速から4速に変更したりすると摩擦係合要素が過度に高温となるおそれがあるときには、その時点で第1変速の実行を禁止するものとしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1](推定値)が閾値Tref[i1]以下のときには第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定し、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1](推定値)が閾値Tref[i1]より高いときには第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定しないものとしたが、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1](推定値)が閾値Tref[i1]以下か否かに拘わらず、第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定するものとしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、第2変速における対象要素i2が第1変速における対象要素i1と同一であるか否かに拘わらず第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定するものとしたが、第2変速における対象要素i2が第1変速における対象要素i1と同一のときには、第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定しないものとしてもよい。この場合、第2変速終了時の対象要素i2の温度T2e[i2]を推定せずに、第1変速を実行するものとしてもよい。これは、第2変速における対象要素i2が第1変速における対象要素i1と同一でないときには、第1変速を実行した後に第2変速を実行するときに対象要素i2が過度に高温となる可能性が低いと考えられる、という理由に基づく。
実施例の変速機の制御装置では、第1変速終了時から第2変速のイナーシャ相の開始時までを放熱時間td2とするものとしたが、第1変速終了時から第2変速開始時までを放熱時間td2とするものとしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、第1変速終了時の対象要素i1の温度T1e[i1](推定値)が閾値Tref[i1]以下のときに、第1目標変速段GS1より1段だけ高車速側の変速段を第2目標変速段GS2に設定するものとしたが、2段以上高車速側の変速段を第2目標変速段GS2に設定するものとしたり、現在の変速段GSnowを第2目標変速段GS2に設定するものとしたりしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、第1変速(ダウンシフト)における開放側要素を対象要素i1に設定すると共に第2変速(アップシフト)における係合側要素を対象要素i2に設定するものとしたが、第1変速における開放側要素および係合側要素を対象要素i1に設定すると共に第2変速における係合側要素を対象要素i2に設定するものとしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、パワーオンダウンシフト要求がなされたとき(アクセルオンでダウンシフト要求がなされたとき)に、対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いか否かや、対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いか否かを判定する(予測する)ものとしたが、パワーオンダウンシフト要求がなされたときに限られず、アクセルオフでダウンシフト要求がなされたときでも、同様に判定するものとしてもよい。
実施例の変速機の制御装置では、パワーオンダウンシフト要求がなされたときには、温度センサ62からの油温Totを第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いるものとしたが、パワーオンダウンシフト要求がなされる前(現在より前)の変速における温度変化などを考慮して得られる第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]を用いるものとしてもよい。
この場合、パワーオンダウンシフト要求がなされたとき(現在)が直前に開始した変速の終了前のときには、複数の摩擦係合要素のうちその変速の対象要素(アップシフト時やアクセルオフでのダウンシフト時には係合側要素、パワーオンダウンシフト時には開放側要素)i0については、以下のように計算して第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いればよい。即ち、まず、変速開始時から現在までの各時刻tchの対象要素i0の入力軸31側と出力軸32側との回転速度差Sslip[i0,tch]およびトルク容量Tcap[i0,tch]を用いて次式(8)により変速開始時から現在までの発熱量Qnow[i0]を計算する。続いて、式(9)に示すように、発熱量Qnow[i0]を対象要素i0の熱容量C[i0]で除して対象要素i0の上昇温度ΔTgnow[i0]を計算する。そして、式(10)に示すように、変速開始時の対象要素i0の温度T0s[i0]に上昇温度ΔTnowを加えて現在の対象要素i0の温度Tnow[i0]を計算して第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いればよい。また、変速の対象要素i0以外の要素については温度センサ62からの油温Totを第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いればよい。
Qnow[i0]=2π∫|Sslip[i0,tch]・Tcap[i0,tch]|dt (8)
ΔTgnow[i0]=Qnow[i0]/C[i0] (9)
Tnow[i0]=T0s[i0]+ΔTgnow[i0] (10)
パワーオンダウンシフト要求がなされたとき(現在)が直前の変速の終了後のときには、その変速の対象要素i0については変速終了時から現在までの経過時間tfを考慮して、上述の式(4)の漸化式と同様の漸化式を用いて現在の対象要素i0の温度Tnow[i0]を計算して第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いればよい。また、変速の対象要素i0以外の要素については温度センサ62からの油温Totを第1変速の対象要素i1の現在の温度T1s[i1]として用いればよい。なお、対象要素i0の温度は、通常、変速終了時から数十秒程度で油温Totに略等しくなることが分かっている。こうした処理により、例えば、5速から6速にアップシフトした後に比較的短時間(例えば、数秒など)で6速から5速以下へのパワーオンダウンシフト要求がなされたときに、対象要素i1の第1変速終了時の温度T1e[i1]が閾値Tref[i1]より高いか否かや、対象要素i2の第2変速終了時の温度T2e[i2]が閾値Tref[i2]より高いか否かをより適正に判定する(予測する)ことができる。
実施例では、8段変速の自動変速機30を用いるものとしたが、8段変速以外の自動変速機,例えば、4速や5速などや9速や10速などの自動変速機を用いるものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、自動変速機30が「変速機」に相当し、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンのステップS110の処理を実行する変速機ECU80が「第1目標変速段設定手段」に相当し、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンのステップS120〜S140の処理を実行する変速機ECU80が「第1予測手段」に相当し、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンのステップS150〜S180の処理を実行する変速機ECU80が「第2予測手段」に相当し、図7のパワーオンダウンシフト要求時変速判断ルーチンのステップS190,S220の処理を実行すると共にステップS190で第1変速の実行を許可したときに第1変速を実行する変速機ECU80が「変速制御手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、変速機の制御装置の製造産業などに利用可能である。
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、14a 回転速度センサ、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、17 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、18 デファレンシャルギヤ、19a,19b 駆動輪、20 自動変速装置、22 エンジン、23 ポンプインペラ、24 タービンランナ、25 ステータ、28 ロックアップクラッチ、30 自動変速機、31 入力軸、31a 回転速度センサ、32 出力軸、32a 回転速度センサ、40 遊星歯車機構、41 サンギヤ、42 リングギヤ、43a 第1ピニオンギヤ、43b 第2ピニオンギヤ、44 キャリア、46 回転軸、50 遊星歯車機構、51a,51b サンギヤ、52 リングギヤ、53a ショートピニオンギヤ、53b ロングピニオンギヤ、54 キャリア、60 油圧回路、62 温度センサ、80 変速機用電子制御ユニット(変速機ECU)、91 シフトレバー、92 シフトポジションセンサ、93 アクセルペダル、94 アクセルペダルポジションセンサ、95 ブレーキペダル、96 ブレーキペダルポジションセンサ、98 車速センサ、B1,B2 ブレーキ、C1,C2,C3,C4 クラッチ、F1 ワンウェイクラッチ。

Claims (8)

  1. 複数の摩擦係合要素の少なくとも一部の状態を係合状態と解放状態との間で変更することによって変速段を変更する変速機の制御装置であって、
    前記変速機のダウンシフト要求がなされたとき、前記ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定する第1目標変速段設定手段と、
    前記変速機の変速段を現在の変速段から前記第1目標変速段に変更する第1変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測する第1予測手段と、
    前記変速機の変速段を前記第1目標変速段から該第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測する第2予測手段と、
    前記第1予測手段により前記第1変速を実行しても前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されると共に前記第2予測手段により前記第2変速を実行しても前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えないと予測されたときには前記第1変速を実行し、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときには前記第1変速を実行しない変速制御手段と、
    を備える変速機の制御装置。
  2. 請求項1記載の変速機の制御装置であって、
    前記第1目標変速段設定手段は、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときに、現在の前記第1目標変速段が前記変速機の現在の変速段より2段以上低車速側の変速段のときには、現在の前記第1目標変速段より1段だけ高車速側の変速段を新たに前記第1目標変速段に設定する手段である、
    変速機の制御装置。
  3. 請求項1または2記載の変速機の制御装置であって、
    前記第2予測手段は、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたときには、前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えるか否かを予測しない手段である、
    変速機の制御装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の変速機の制御装置であって、
    前記第2予測手段は、前記第1目標変速段より1段だけ高車速側の変速段を前記第2目標変速段とする手段である、
    変速機の制御装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の変速機の制御装置であって、
    前記第1予測手段は、前記第1変速中の前記第1変速用要素の分担トルクに基づいて該第1変速における該第1変速用要素の発熱量を演算すると共に該演算した第1変速における第1変速用要素の発熱量に基づいて前記第1変速の終了時の該第1変速用要素の温度を演算し、該演算した第1変速の終了時の第1変速用要素の温度を前記第1所定温度と比較する手段である、
    変速機の制御装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の変速機の制御装置であって、
    前記第2予測手段は、前記第1変速の終了時の前記第2変速用要素の温度に基づいて前記第2変速のイナーシャ相の開始時の該第2変速用要素の温度を演算し、前記第2変速中の前記第2変速用要素の分担トルクに基づいて該第2変速における該第2変速用要素の発熱量を演算し、前記演算した第2変速のイナーシャ相の開始時の第2変速用要素の温度と前記演算した第2変速における第2変速用要素の発熱量とに基づいて前記第2変速の終了時の該第2変速用要素の温度を演算し、該演算した第2変速の終了時の第2変速用要素の温度を前記第2所定温度と比較する手段である、
    変速機の制御装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の変速機の制御装置であって、
    前記第1変速用要素は、前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速で係合状態から解放状態とする摩擦係合要素であり、
    前記第2変速用要素は、前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速で解放状態から係合状態とする摩擦係合要素である、
    変速機の制御装置。
  8. 複数の摩擦係合要素の少なくとも一部の状態を係合状態と解放状態との間で変更することによって変速段を変更する変速機の制御方法であって、
    (a)前記変速機のダウンシフト要求がなされたとき、前記ダウンシフト要求に対応する要求変速段を第1目標変速段に設定し、
    (b)前記変速機の変速段を現在の変速段から前記第1目標変速段に変更する第1変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第1変速に対応する摩擦係合要素である第1変速用要素の温度が第1所定温度を超えるか否かを予測し、
    (c)前記変速機の変速段を前記第1目標変速段から該第1目標変速段より高車速側の第2目標変速段に変更する第2変速を実行すると前記複数の摩擦係合要素のうち前記第2変速に対応する摩擦係合要素である第2変速用要素の温度が第2所定温度を超えるか否かを予測し、
    (d)前記第1予測手段により前記第1変速を実行しても前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えないと予測されると共に前記第2予測手段により前記第2変速を実行しても前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えないと予測されたときには前記第1変速を実行し、前記第1予測手段により前記第1変速を実行すると前記第1変速用要素の温度が前記第1所定温度を超えると予測されたとき及び前記第2予測手段により前記第2変速を実行すると前記第2変速用要素の温度が前記第2所定温度を超えると予測されたときには前記第1変速を実行しない、
    変速機の制御方法。
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