本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
背景用インクを吐出して、背景画像を媒体に形成し、所定方向に並ぶ複数の画素からなる画素列が複数並んで構成されたカラー画像を示すカラー画像データに基づいてカラーインクを吐出して、前記画素列における複数の画素データに応じてドット列を前記媒体に形成することによって、複数のドット列から構成された前記カラー画像を前記媒体に形成する印刷装置を制御する印刷制御装置であって、前記画素列ごとに補正値を対応付けた第1補正値テーブルと、前記第1補正値テーブルとは異なる第2補正値テーブルとを備え、補正対象となる前記画素データの位置での前記背景画像の有無を判断し、前記位置に前記背景画像が無い場合には、前記第1補正値テーブルにおける前記画素データの対応する前記補正値を用いて、前記画素データの示す階調値を補正し、前記位置に前記背景画像がある場合には、前記第2補正値テーブルにおける前記画素データの対応する前記補正値を用いて、前記画素データの示す階調値を補正し、前記階調値の補正された前記画素データから構成された前記カラー画像データに基づいて、前記背景画像の形成された前記媒体に、前記カラー画像を前記印刷装置に形成させることを特徴とする印刷制御装置が明らかとなる。
このような印刷制御装置によれば、背景画像の有無に応じてカラー画像の濃度ムラを調整して印刷装置に印刷させることができる。
前記第2補正値テーブルは、前記背景画像の所定階調値に対応しており、前記位置での前記背景画像の階調値が、前記背景画像が無いことを示す階調値と、前記所定階調値との間である場合、前記画素データの示す階調値を、前記第1補正値テーブルの前記補正値を用いて補正した前記階調値と、前記第2補正値テーブルの前記補正値を用いて補正した前記階調値と、を用いて補間した階調値に補正することが望ましい。これにより、背景画像の階調値に応じてカラー画像の濃度ムラを調整して印刷装置に印刷させることができる。
前記背景用インク及びカラーインクは、光を照射すると硬化する光硬化型インクであることが望ましい。光硬化型インクの場合、硬化するとインクを弾く性質があり、背景画像の有無によるドットの濡れ広がり方が大きく異なるため、背景画像の有無によるカラー画像の濃度ムラの変化が大きくなりやすいので、このような場合に特に有効である。
前記階調値の補正された前記画素データから構成された前記カラー画像データは、前記印刷装置が表現可能な階調よりも多階調の第1階調のカラー画像データであり、前記印刷制御装置は、前記階調値の補正された前記画素データから構成された前記カラー画像データを、前記印刷装置が表現可能な階調である第2階調のカラー画像データに変換することが望ましい。これにより、ハーフトーン処理前の画像データに濃度ムラを補正するための処理を行うことができる。
前記印刷制御装置は、前記印刷装置が表現可能な階調よりも多階調の第1階調の前記カラー画像データを、前記印刷装置が表現可能な階調である第2階調の前記カラー画像データに変換し、変換された前記カラー画像データを構成する画素データに対して、前記補正値を用いて前記階調値を補正することが望ましい。これにより、ハーフトーン処理後の画像データに濃度ムラを補正するための処理を行うことができる。
前記背景画像は、ホワイトインク、メタリックインクのいずれかによって、若しくは前記ホワイトインクと前記カラーインクによって、形成されることが望ましい。
背景用インクを吐出して、背景画像を媒体に形成し、所定方向に並ぶ複数の画素からなる画素列が複数並んで構成されたカラー画像を示すカラー画像データに基づいてカラーインクを吐出して、前記画素列における複数の画素データに応じてドット列を前記媒体に形成することによって、複数のドット列から構成された前記カラー画像を前記媒体に形成することを制御する印刷制御装置に実行させるプログラムであって、前記画素列ごとに補正値を対応付けた第1補正値テーブルと、前記第1補正値テーブルとは異なる第2補正値テーブルとを備え、補正対象となる前記画素データの位置での前記背景画像の有無を判断する機能と、前記位置に前記背景画像が無い場合には、前記第1補正値テーブルにおける前記画素データの対応する前記補正値を用いて、前記画素データの示す階調値を補正する機能と、前記位置に前記背景画像がある場合には、前記第2補正値テーブルにおける前記画素データの対応する前記補正値を用いて、前記画素データの示す階調値を補正する機能と、前記階調値の補正された前記画素データから構成された前記カラー画像データに基づいて、前記背景画像の形成された前記媒体に、前記カラー画像を前記印刷装置に形成させる機能とを前記印刷制御装置に実行させるプログラムが明らかとなる。
このようなプログラムによれば、背景画像の有無に応じてカラー画像の濃度ムラを調整して印刷させることができる。
===用語の説明===
図1は、用語の説明図である。まず、本実施形態の説明に用いられる用語の意味について説明する。
「印刷画像」とは、媒体上に印刷された画像である。インクジェット方式の印刷装置による印刷画像は、媒体上に形成された無数のドットから構成されている。
「ラスタライン」とは、ヘッドと媒体とが相対移動する移動方向に並ぶドットの列である。後述の実施形態のようなライン型の印刷装置の場合、ラスタラインは、媒体の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。(なお、キャリッジに搭載されたヘッドによって印刷するシリアル型の印刷装置の場合、ラスタラインは、キャリッジの移動方向に並ぶドットの列を意味する。)移動方向と垂直な方向に多数のラスタラインが並ぶことによって、印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるラスタラインのことを「第nラスタライン」と呼ぶ。
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、RGB色空間の画像データや、CMYK色空間の画像データなどがある。RGB色空間における画像データのことを「RGB画像データ」と呼び、RGB色空間のそれぞれの色の画像データのことを「R画像データ」、「G画像データ」及び「B画像データ」とそれぞれ呼ぶことがある。また、CMYK色空間の画像データのことを「CMYK画像データ」と呼び、CMYK色空間のそれぞれの色の画像データのことを、「C画像データ」、「M画像データ」、「Y画像データ」及び「K画像データ」とそれぞれ呼ぶことがある。また、画像データには、256階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。印刷装置が4階調でドット(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を形成する場合、4階調のCMYK画像データは印刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになるため、4階調のCMYK画像データのことを特に「印刷画像データ」と呼ぶことがある。また、スキャナによって読み取られた画像データのことを「読取画像データ」と呼ぶことがある。
後述する実施形態では、画像データの中に、背景画像を示す背景画像データも含まれている。白色の背景画像データのことを「W画像データ」と呼ぶことがある。印刷装置は、W画像データに従ってホワイトインクを吐出して、白色の背景画像を印刷することになる。
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されることによって画像が構成される。主に、画像データ上の画素を意味する。
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すように、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。画像データの示す画像は、画素列が複数並んで構成されていることになる。
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。画像データは多数の画素データから構成されていることになる。画素データのことを「画素の階調値」と言うこともある。後述する実施形態では、印刷画像データの各画素データは、ある画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
「画素列データ」とは、画素列に含まれる複数の画素の画素データである。なお、印刷画像のラスタラインは、印刷画像データの画素列データに従って多数のドットが媒体上に形成されることによって、形成されることになる。画素列データのことを、「画素列の階調値」と言うこともある。
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した媒体上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/360インチの正方形状の領域になる。
「列領域」とは、画素列に対応した媒体上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、列領域は、1/360インチ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した媒体上の領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した媒体上の領域を意味する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「列領域」は、ラスタラインの形成目標位置でもある。後者の場合の「列領域」は、読取画像データ上の画素列が読み取られた媒体上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する媒体上の位置でもある。図に示すように、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nラスタラインの形成目標位置になる。
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラスタラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの製造誤差の影響によって第2ラスタラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さくなった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度ムラや濃度ムラ補正方法を説明する必要があるため、本実施形態では、「ラスタライン」、「画素列」、「列領域」等の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、通常の技術常識に沿っても適宜解釈される。
===全体構成===
図2は、印刷装置1の概略側面図である。図3は、印刷装置1のブロック図である。
印刷装置1は、搬送ユニット10、ヘッドユニット40、検出器群50、コントローラー60、駆動信号生成回路70、仮硬化ユニット80、本硬化ユニット90を備えている。
搬送ユニット10は、媒体を搬送する機能を有する。以下の説明では、媒体の搬送される方向を搬送方向と呼ぶ。搬送ユニット10は、ドラム11、第1ローラー12、第2ローラー12、第3ローラー13を有する。媒体は、搬送ユニット10の上流側の供給ユニット(不図示)から供給され、搬送ユニット10の下流側の巻き取りローラー(不図示)によって巻き取られる。媒体は第1ローラー12から第3ローラー14までの間において所定の張力にて張られており、ドラム11の表面に密着している。そして、ドラム11が回転することによって、媒体が搬送されることになる。媒体は、紙であることもあるが、透明媒体S(例えば透明フィルム)であることもある。
ヘッドユニット40は、搬送方向上流側から順に、第1ホワイトヘッドユニット41W、マゼンタヘッドユニット41M、シアンヘッドユニット41C、イエローヘッドユニット41Y、ブラックヘッドユニット41K、及び第2ホワイトヘッドユニット42Wを有する。各色のヘッドユニットには、多数のノズルが所定のノズルピッチ(例えば1/360インチ)で媒体の幅方向にわたって並んでいる。各色のヘッドユニットが各色のインクを吐出することによって、媒体に画像が印刷される。各色のヘッドユニットは、ドラム11の表面に沿って設けられている。また、各色のヘッドユニットは、UVインクを吐出する。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。
マゼンタヘッドユニット41Mの吐出するマゼンタインクと、シアンヘッドユニット41Cの吐出するシアンインクと、イエローヘッドユニット41Yの吐出するイエローインクとによって、減色法によるカラー画像が印刷される。カラー画像の印刷には、ブラックヘッドユニット41Kから吐出されるブラックインクも用いられる。以下の説明では、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク及びブラックインクのことをカラーインクと呼ぶことがある。
第1ホワイトヘッドユニット41W及び第2ホワイトヘッドユニット42Wは、白色のホワイトインクを吐出する。ホワイトインクは、カラー画像の背景となる背景画像を形成に用いられる背景色インクである。例えば、透明媒体にカラー画像を単独で形成するとカラー画像の視認性が良くないため、カラー画像と共に背景画像を形成することによって、カラー画像の遮光性(遮蔽性)を向上させて、カラー画像の視認性を高めている。但し、ホワイトインクは、紙などの不透明な媒体に吐出しても良い。
第1ホワイトヘッドユニット41Wは、背景画像をカラー画像より先に(カラー画像の下に)形成する表刷り印刷で用いられる。第2ホワイトヘッドユニット42Wは、背景画像をカラー画像の後に(カラー画像の上に)形成する裏刷り印刷で用いられる。透明な媒体に裏刷り印刷にてカラー画像を形成した場合には、透明な媒体の側から(透明な媒体越しに)カラー画像を見ることになる。
検出器群50は、印刷装置1の各部の情報を検出する各種の検出器をあらわす。例えば、検出器群50の中には、ドラムの回転角度を検出するエンコーダー(不図示)などが含まれている。検出器群50は、コントローラー60に検出信号を送信する。
コントローラー60は、印刷装置1の制御を行うための制御ユニットである。コントローラー60は、CPU61、メモリ62及びインターフェース部63を有する。CPU61は、印刷装置1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ62は、CPU61の作業領域や、プログラムを格納する領域などを確保するための記憶部である。CPU61は、メモリ62に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御することになる。インターフェース部63は、外部装置であるコンピューター110と印刷装置1との間でデータの送受信を行う。
駆動信号生成回路70は、ヘッドユニット40に含まれているピエゾ素子などの駆動素子を駆動するための駆動信号を生成する回路である。駆動信号が駆動素子に印加されることによって、駆動素子が駆動して、インク滴がノズルから吐出されることになる。
仮硬化ユニット80は、媒体に着弾したUVインク同士が滲まないようにUVインクの表面を硬化(仮硬化)させる程度の強度の紫外光を照射する。仮硬化ユニット80は、搬送方向上流側から順に、第1ホワイト用光源81W、マゼンタ用光源81M、シアン用光源81C、イエロー用光源81Y、ブラック用光源81K及び第2ホワイト用光源82Wを有する。仮硬化用の各色の光源は、ドラム11の表面に沿って設けられている。また、各色の光源は、対応する色のヘッドユニットの下流側に設けられている。これにより、UVインクが媒体に着弾してドットが形成された直後に、仮硬化用の光源から紫外光が照射されて、UVインクのドット表面が仮硬化する。仮硬化ユニット80の各色の光源として、LED(発光ダイオード)などが採用される。
本硬化ユニット90は、媒体上のUVインクを本硬化(完全に固化)させることが可能な強度の紫外光を照射する。本硬化ユニット90は、仮硬化用の光源よりも強い紫外光を照射するための本硬化用光源91を有する。本硬化用光源91は、ドラム11の下部に設けられている。また、本硬化用光源91は、媒体Sがドラム11から離れてから第3ローラー13に達するまでの間において、媒体に紫外光を照射する。例えば、本硬化用光源91として、メタルハライドランプなどが採用される。なお、本硬化ユニット90は、本硬化用光源91の紫外光を媒体側に反射させる反射鏡や、排熱のためのフィン、ファン及びダクトなども備えている。
コンピューター110には、スキャナー120が接続されている。スキャナー120は、印刷装置1を用いて印刷された画像(テストパターンなど)を読み取る装置である。コンピューター110には、スキャナー120を制御し、スキャナーから読取画像データを取得するためのスキャナドライバもインストールされている。
図4Aは、表刷り印刷により形成される画像(表刷り印刷画像)の説明図である。「表刷り印刷」とは、媒体の印刷面の側(おもて側)から印刷画像を見るための印刷である。このため、「表刷り印刷」で背景画像及びカラー画像を形成する場合には、背景画像を媒体に形成した後に、その背景画像の上にカラー画像を形成することになる。
表刷り印刷を行う場合、印刷装置1は、第1ホワイトヘッドユニット41Wを用いて、媒体に背景画像(白画像)を形成する。すなわち、印刷装置1は、媒体を搬送させながら、第1ホワイトヘッドユニット41Wからホワイトインクを吐出して、ホワイトドットを媒体に形成し、そのホワイトドットに第1ホワイト用光源81Wから紫外光を照射してホワイトドットを仮硬化させて、背景画像を形成する。その後、第1ホワイトヘッドユニット41Wよりも搬送方向下流側のヘッドユニットを用いて、仮硬化後の背景画像の上にカラー画像が形成される。本硬化用光源91は、カラー画像と、そのカラー画像の下の背景画像に紫外光を照射して、カラー画像と背景画像を本硬化させることになる。
図4Bは、裏刷り印刷により形成される画像(裏刷り印刷画像)の説明図である。「裏刷り印刷」とは、透明な媒体越しに(媒体の印刷面の裏側から)印刷画像を見るための印刷である。このため、「裏刷り印刷」で背景画像及びカラー画像を形成する場合には、カラー画像を媒体に形成した後に、そのカラー画像の上に背景画像を形成する。
裏刷り印刷を行う場合、印刷装置1は、第2ホワイトヘッドユニット42Wを用いて、媒体に背景画像(白画像)を形成する。すなわち、印刷装置1は、媒体を搬送させながら、第2ホワイトヘッドユニット42Wよりも搬送方向上流側のヘッドユニットを用いてカラー画像を形成し、仮硬化後のカラー画像の上に第2ホワイトヘッドユニット42Wからホワイトインクを吐出して、カラー画像の上にホワイトドットを形成し、そのホワイトドットに第2ホワイト用光源82Wから紫外光を照射してホワイトドットを仮硬化させて、背景画像を形成する。本硬化用光源91は、カラー画像と、そのカラー画像の上の背景画像に紫外光を照射して、カラー画像と背景画像を本硬化させることになる。
なお、図4A及び図4Bでは、背景画像とカラー画像の層が明確に分離して描かれているが、実際には、各層が明確に分離しているとは限らない。例えば、図4Aの表刷り印刷画像の背景画像を構成するホワイトドットの間に隙間があれば、カラー画像を構成するカラードットの一部が透明媒体Sの上に形成されることもある。
また、図4A及び図4Bの説明図は、印刷工程の順序も示している。例えば、図4Aの場合、透明媒体Sの上に、まず背景画像を形成するためのホワイトインクが塗布され、その後にカラー画像を形成するためのカラーインクが塗布されることが示されていることになる。
<ヘッドユニットの構成>
図5は、シアンヘッドユニット41Cの下面における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すように、シアンヘッドユニット41Cは、複数のヘッド45を有している。複数のヘッドは、幅方向に沿って千鳥列状に並んでいる。各ヘッドには、ノズル列が形成されている。ノズル列は、シアンインクを吐出する複数のノズル(例えば360個のノズル)から構成されている。ノズル列を構成する複数のノズルは、一定のノズルピッチ(例えば1/360インチ)で幅方向に並んでいる。
図6は、シアンヘッドユニット41Cのノズル配置とドット形成の様子の説明図である。説明の簡略化のため、ここではヘッドユニットが2個のヘッド(第1ヘッド45A及び第2ヘッド45B)から構成されているものとする。更に説明の簡略化のため、各ヘッドのノズル列は12個のノズルから構成されているものとする。以下の説明では、搬送方向のことを「x方向」と呼び、幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。
各ヘッド45のノズル列は、幅方向に千鳥列状に並ぶ12個のノズルから構成されている。但し、ノズル列を構成する複数のノズルは、一直線上に並んでいても良い。12個のノズルは、それぞれ幅方向に1/360インチずれて構成されている。各ノズルには、図中の上から順に番号が付されている。
搬送中の媒体に対して各ノズルから断続的にインクが吐出されることによって、媒体に24個のラスタラインが形成される。例えば、第1ヘッド42Aのノズル♯1Aは第1ラスタラインを媒体上に形成し、第2ヘッド42Bのノズル♯1Bは第13ラスタラインを媒体上に形成する。各ラスタラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成される。媒体が1/360インチ搬送される毎にノズルからインクを吐出すると、媒体に360dpi×360dpiの解像度でドットが形成される。
ここではシアンヘッドユニット41Cについて説明したが、他のヘッドユニットも同様である。
===第1参考例:プリンタドライバの通常処理===
コンピューター110(図2参照)にはプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバがインストールされたコンピューター110は、印刷装置1を制御するための印刷制御装置になる。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムからの画像データ(入力画像データ)を受け取り、印刷装置1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データを印刷装置に出力する。入力画像データを印刷データに変換する際に、プリンタドライバは、色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。
図7Aは、第1参考例のプリンタドライバの処理の説明図である。この第1参考例は、濃度ムラを補正しない処理である。
色変換処理前の画像データは、256階調のRGB色空間の画像データ(RGB画像データ)である。プリンタドライバは、必要に応じて、入力画像データの解像度が印刷解像度に適合するように、色変換処理の前に解像度変換処理を施す。例えば、アプリケーションプログラムからベクター形式の画像データを受け取った場合には、プリンタドライバは、そのベクター形式の画像データを、256階調のビットマップ形式のRGB画像データに変換する。
次に、プリンタドライバは、RGB画像データを、インク色と同じ色空間であるCMYK色空間の画像データ(CMYK画像データ)に変換する色変換処理を行う。この色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバが参照することによって、行われる。色変換処理後の画像データは、256階調のCMYK画像データである。
色変換処理後、プリンタドライバは、256階調の画像データを、印刷装置が形成可能な階調である4階調の画像データに変換するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン処理後の画像データは、印刷画像を構成するドットの形成状況(ドットの有無、ドットの大きさ)を示す印刷画像データになる。
ハーフトーン処理後、プリンタドライバは、印刷画像データを印刷装置1に送信する。プリンタドライバは、印刷画像データを印刷装置1に送信する際に、必要に応じて、印刷画像データの画素データの並ぶ順序を変換するラスタライズ処理や、印刷装置1の制御に必要なコマンドデータを印刷画像データに付加するコマンド付加処理などを行う。
なお、印刷画像データを受信した印刷装置は、印刷画像データの各画素データの示す階調値に従って各ノズルからインクを吐出し、媒体上の画素領域にドットを形成する。これにより、印刷装置1は、印刷画像データの示す画像を媒体に印刷できる。
===第2参考例:濃度ムラ補正処理===
第1参考例の通常処理によって印刷した場合、印刷画像に濃度ムラ(バンディングと呼ばれる縞状の濃度ムラ)が生じることがある。この濃度ムラは、印刷画像を構成する多数のドット列がヘッドの製造誤差の影響で理想通りに形成されず、ドットの大小によってドット列ごとに濃淡ができたり、ドット列がズレて形成されたりすることが原因と考えられている。
印刷画像はインク色と同じ色空間の画像を重ね合わせて構成されているので、インク色と同じ色空間の各色の濃度ムラをそれぞれ抑制すれば、印刷画像の濃度ムラも抑制できると考えられる。第2参考例では、インク色ごとに濃度ムラをそれぞれ検出し、その検出結果から各インク色の濃度ムラ補正値を取得している。そして、印刷装置1を購入したユーザが印刷を行うときに、プリンタドライバがCMYK画像データの各色の画像データ(例えばC画像データ)に対して濃度ムラ補正値を用いて濃度ムラ補正処理を行い、濃度ムラの抑制された印刷画像が得られるようにしている。
<濃度ムラ補正値の取得方法>
図8は、第2参考例の濃度ムラ補正値の取得処理のフロー図である。ここでは、シアンの濃度ムラ補正値の取得方法について説明する。但し、他の色の濃度ムラ補正値の取得方法も同様である。
プリンタドライバには、予め濃度ムラ補正値を取得するためのテストパターンの画像データが用意されている。このテストパターンの画像データは、印刷解像度に合わせた解像度(360dpi×360dpi)の256階調のC画像データである。なお、テストパターンの画像は、複数の画素列(ここでは24個の画素列)が並んで構成されている。
図9は、シアンの濃度ムラ補正値を取得するためのテストパターンのC画像データの説明図である。テストパターンは、5個の補正用パターンから構成されている。5個の補正用パターンは、x1方向に沿って並んでいる。画像データ上のx1方向は、その画像データの示す画像が印刷装置1で印刷されたときに搬送方向(x方向)になる方向である。5個の補正用パターンのシアンの階調値は、それぞれ異なっている。第1補正用パターンを構成する画素の階調値Caは179、第2補正用パターンを構成する画素の階調値Cbは153、第3補正用パターンを構成する画素の階調値Ccは128、第4補正用パターンを構成する画素の階調値Cdは102、第5補正用パターンを構成する画素の階調値Ceは76に設定されている。
各補正用パターンは、数10画素(x1方向)×24画素(y1方向)から構成されている。y1方向の画素数は、印刷装置1が幅方向に形成するラスタラインの数に相当する。ここでは、y1方向の画素数は、ヘッドユニット41のノズル数と同じ24個になっている(図6参照)。
プリンタドライバは、図9に示す画像データに対してハーフトーン処理を行う(図8のS101)。これにより、256階調のC画像データは、4階調のC画像データ(シアンの印刷画像データ)に変換される。4階調のC画像データの24個の画素列データは、24個のラスタラインのドット形成状態を示すことになる。
次に、プリンタドライバは、4階調のC画像データ(印刷画像データ)を印刷装置1に送信し、シアンのテストパターンの画像をテストシートに印刷させる(図8のS102)。ここでは、360dpi×360dpiの印刷解像度でテストパターンを印刷する。これにより、24個のラスタラインから構成された5個の補正用パターンからなるテストパターンが印刷される。
テストシートに印刷されたシアンのテストパターンは、図9のC画像データの示す画像とほぼ同じである。但し、ヘッドの製造誤差の影響のため、全ドットが理想通りの大きさ・位置に形成されず、ドット列ごとに濃淡ができたり、ドット列がずれて形成されたりする。このため、C画像データ上の各画素の階調値は一様であるにも関わらず、印刷画像上には濃度ムラが含まれている。
次に、検査者は、テストシートをスキャナー120にセットし、コンピューター110のスキャナドライバを用いてスキャナー120にテストパターンを読み取らせる(図8のS103)。ここでは、1440dpi×1440dpiの読取解像度でスキャナー120がテストパターンを読み取る。つまり、印刷解像度である360dpi×360dpiよりも高い読取解像度で、スキャナー120がテストパターンを読み取る。
なお、プリンタドライバは、スキャナー120から取得した画像データ(読取画像データ)に対して、必要に応じて読取画像データに対して回転処理やトリミング処理などを施しても良い。
図10は、読取画像データの説明図である。読取画像データ上のテストパターンも、5個の補正用パターンから構成されている。読取画像データ上では、5個の補正用パターンの並ぶ方向をx2方向と呼び、x2方向と直交する方向をy2方向と呼ぶ。読取画像データ上のx2方向は、ラスタラインの画像と平行になっている。言い換えると、読取画像データのx2方向がラスタラインの画像と平行になるように、プリンタドライバは必要に応じて読取画像データに対して回転処理を行う。
ここでは、360dpiで並ぶ24個のラスタラインから構成されたテストパターンを1440dpi(印刷解像度の4倍の解像度)で読み取っている。読取画像データのy2方向の画素数は理想的には96個(=24個×4)になるはずであるが、ヘッドの製造誤差やスキャナー150の読取誤差などの影響により、読取画像データのy2方向の画素数は正確に96個になるとは限らない。
次に、プリンタドライバは、スキャナー120から取得した画像データ(読取画像データ)に対して、y2方向の画素数が24個になるように、解像度変換を行う(図8のS104)。解像度変換後の画像データのy2方向の画素数は、印刷装置1が幅方向に形成するラスタラインの数に相当する。ここでは、y2方向の画素数は、ヘッドユニット41のノズル数と同じ24個になっている(図6参照)。
なお、解像度変換後の読取画像データ上の各画素列データ(x2方向に並ぶ画素の列)は、テストパターンが印刷された媒体上の1/360インチ幅の列領域の画像片を示している。言い換えると、解像度変換後の読取画像データ上の各画素列は、印刷解像度に相当する幅(1/360インチの幅)の列領域の画像片を示している。
次に、プリンタドライバは、読取画像データ上の補正用パターン毎に、各画素列の輝度を算出する(図8のS105)。各画素列の輝度は、印刷されたテストパターン上の各列領域の濃度を示していると考えられる。
図11は、各画素列の輝度の算出の様子の説明図である。図中の左側には、読取画像データ上の或る補正用パターンを構成する画素が示されている。補正値取得プログラムは、各画素列ごとに、x2方向に並ぶ複数の画素の画素データに基づいて平均輝度を算出し、この平均輝度をその画素列の輝度とする。例えば、第1画素列の輝度は、図中の左側の太線内の画素データに基づいて算出される。図中の右側には、各画素列の輝度のグラフが示されている。印刷画像に濃度ムラがあるため、読取画像データ上の各画素列の輝度にばらつきが生じている。
以下の説明では、階調値Ca(=179)の第1補正用パターンの読取画像データ上の第j画素列の輝度を「Ya_j」と表す。同様に、階調値Cb(=153)の第2補正用パターンの読取画像データ上の第j画素列の輝度を「Yb_j」と表し、階調値Cc(=128)の第3補正用パターンの読取画像データ上の第j画素列の輝度を「Yc_j」と表し、階調値Cd(=102)の第4補正用パターンの読取画像データ上の第j画素列の輝度を「Yd_j」と表し、階調値Ce(=76)の第5補正用パターンの読取画像データ上の第j画素列の輝度を「Ye_j」と表す。
次に、プリンタドライバは、各画素列の輝度と目標輝度との差に基づいて、各画素列の濃度ムラ補正値ΔCを算出する(図8のS106)。ここでは、第j画素列の濃度ムラ補正値について説明する。
図12A及び図12Bは、階調値Cbに対する第j画素列の濃度ムラ補正値Cb_jの説明図である。図中の横軸は画素データの階調値を示し、縦軸は輝度値を示している。図中には、階調値Cbに対する目標輝度Ybtが示されている。この目標輝度Ybtは、第2補正用パターンの読取画像データ上の全画素列の輝度の平均値である。つまり、目標輝度Ybtは、Yb_1〜Yb_24の合計を24で割った値である。
図12Aに示すように、第j画素列の輝度Yb_jが目標輝度Ybtよりも小さい場合、プリンタドライバは、直線ABに基づく直線補間を利用して、目標輝度Ybtに対応する階調値Cbtを算出する。そして、階調値Cbtと階調値Cbとの差を濃度ムラ補正値ΔCb_jとして算出する。
図12Bに示すように、第j画素列の輝度Yb_jが目標輝度Ybtよりも大きい場合、プリンタドライバは、直線BCに基づく直線補間を利用して、目標輝度Ybtに対応する階調値Cbtを算出する。そして、階調値Cbtと階調値Cbとの差を濃度ムラ補正値ΔCb_jとして算出する。
このようにして、プリンタドライバは、5種類の階調値(Ca〜Ce)ごとに、それぞれの画素列ごとの濃度ムラ補正値を算出する。なお、一番淡い階調値Ca(=179)の濃度ムラ補正値ΔCa_jを算出する場合、プリンタドライバは、2点(255,255)、(Ca,Ya_j)の直線に基づいて直線補間を行うと良い。また、一番濃い階調値Ce(=76)の濃度ムラ補正値ΔCe_jを算出する場合、プリンタドライバは、2点(0,0)、(Ce,Ye_j)の直線に基づいて直線補間を行うと良い。
図13は、濃度ムラ補正値テーブルの説明図である。算出された各濃度ムラ補正値ΔCは、階調値及び画素列に対応付けられて、濃度ムラ補正値テーブルに格納される。プリンタドライバは、濃度ムラ補正値テーブルをコンピューター110の記憶手段に記憶する。なお、プリンタドライバは、印刷装置1に濃度ムラ補正値テーブルを送信し、印刷装置1のメモリ62に濃度ムラ補正値テーブルを記憶させても良い(図8のS107)。
なお、上記の説明ではシアンについてのみ説明をしたが、他の色(マゼンタ、イエロー、ブラック)に対しても同様に濃度ムラ補正値テーブルが記憶される。
<濃度ムラ補正処理>
図7Bは、第2参考例のプリンタドライバの処理の説明図である。プリンタドライバは、色変換処理後・ハーフトーン処理前の256階調のCMYK画像データに対して、濃度ムラ補正処理を行う。ここでは、シアンの256階調の画像データ(C画像データ)に対する濃度ムラ補正処理について説明する。
図14は、画素データの階調値に対する濃度ムラ補正処理の説明図である。図中の横軸は、補正前の階調値を示し、図中の縦軸は補正後の階調値を示している。
仮に補正前の画像データの画素データが全て階調値Cb(=153)であれば、プリンタドライバは、階調値Cbに対応する補正値ΔCb_jを用いて、画素データの階調値CbをCb+ΔCb_jに補正する。同様に、補正前の画像データの画素データが全て階調値Cc(=128)であれば、プリンタドライバは、階調値Ccに対応する補正値ΔCc_jを用いて、画素データの階調値CcをCc+ΔCc_jに補正する。
一方、補正前の画素データの階調値C_inが補正用パターンのいずれの階調値(Ca〜Ce)とも異なる場合、例えば図に示すように補正前の階調値C_inがCbとCcの間である場合、プリンタドライバは、補正値ΔCb_j及び補正値ΔCc_jを用いて直線補間を行い、階調値C_outを算出する。
図中のグラフによれば、補正値ΔCa_jは、プラスの値になっている。このため、補正前の階調値C_inが階調値Caに近い値であれば、プリンタドライバは、階調値を高くするように画素データの階調値を補正する。また、図中のグラフによれば、補正値ΔCe_jは、マイナスの値になっている。このため、補正前の階調値C_inが階調値Ceに近い値であれば、プリンタドライバは、階調値を低くするように画素データの階調値を補正する。これにより、プリンタドライバは、濃く印刷される部分の画素を淡く補正し、淡く印刷される部分の画素を濃く補正するように、画像データを補正することができる。
ここでは、第j画素列に属する画素データの階調値の補正について説明したが、他の画素列に属する画素データに対しても、同様に階調値が補正される。但し、他の画素列に属する画素データに対しては、その画素列に対応する補正値が用いられる。
濃度ムラ補正処理後の印刷画像データは、256階調のCMYK画像データである。濃度ムラ補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行い、印刷画像データを印刷装置1に送信する(図7B参照)。ハーフトーン処理や印刷画像データの送信処理は、第1参考例と同様である。
第2参考例では、濃度ムラ補正処理された画像データに対してハーフトーン処理が行われることになる。この結果、例えば淡く視認されやすい列領域に対応する画素列に属する画素データの階調値は予め低く(濃く)補正されているため、ハーフトーン処理後の画像データ上のその画素列のドット生成率は高くなる。また、例えば濃く視認されやすい列領域に対応する画素列に属する画素データの階調値は予め高く(淡く)補正されているため、ハーフトーン処理後の画像データ上のその画素列のドット生成率は低くなる。したがって、淡く視認されやすい列領域には、ドット生成率が高くなるように補正されたラスタラインが形成され、濃く視認されやすい列領域には、ドット生成率が低くなるように補正されたラスタラインが形成されることによって、印刷画像の各列領域の画像片の濃度がそれぞれ補正され、印刷画像の濃度ムラは抑制される。
<第2参考例の問題点>
図15Aは、表刷り印刷の印刷画像の説明図である。表刷り印刷では、図示する通り、背景画像の上にカラー画像が形成される。
背景画像は、例えば白い塗り潰し画像である。また、カラー画像は、ここでは文字Aであり、文字Aの塗り潰し領域は、同じ色の画素から構成されている(文字Aの塗り潰し領域にある画素は、同じRGBの階調値である)。ここでは、文字Aの下側にだけ背景画像が配置されており、文字Aの上側には背景画像は配置されていないものとする。
図15Bは、図15Aの印刷画像の説明図である。この印刷画像は、媒体Sに背景画像が形成された後、更にカラー画像を形成することによって、印刷されている。例えば、媒体Sにホワイトインクを隙間無く塗布して白い塗り潰し画像(背景画像)を形成した後に、カラードットから構成されるカラー画像が形成されることになる。
図15Bの右側には、カラー画像を構成するカラードットの形状が示されている。媒体Sの表面と、ホワイトインクの塗布された背景画像の表面とでは、濡れ性が異なっている。この結果、媒体Sにカラードットを直接形成した場合と、ホワイトインクの塗布された背景画像の上にカラードットを形成した場合とでは、カラードットの形状が異なることになる。図中では、媒体Sの濡れ性が高いため、媒体Sに直接形成されたカラードットの方が、背景画像の上のカラードットよりも、濡れ広がっている。UVインクの場合、紫外光の照射により硬化するとインクを弾く性質があるため、背景画像の有無によるドットの濡れ広がり方の違いは特に著しい。
背景画像の有無によってカラードットの形状が異なる結果、仮に画像データ上での色(RGBの階調値)が同じであっても、背景画像の有無によってカラー画像の濃度ムラが異なって視認されてしまう。例えば、文字Aの上側は適切に濃度ムラが補正されていても、文字Aの下側では濃度ムラを補正できずに濃度ムラが視認されてしまうことがある。
以下の実施形態では、文字Aの上下の濃度ムラをいずれも適切に補正できるように濃度ムラ補正処理を行っている。
===第1実施形態===
<濃度ムラ補正値の取得処理>
図16は、第1実施形態の濃度ムラ補正値の取得処理のフロー図である。第2参考例と同じ処理には、図8と同じ符号を付している。
プリンタドライバは、図9に示す画像データに対してハーフトーン処理を行う(図16のS101)。この処理は、第2参考例と同じである(図8のS101)。
次に、プリンタドライバは、4階調のC画像データ(印刷画像データ)を印刷装置1に送信し、シアンのテストパターンの画像をテストシートに印刷させる(図16のS202)。このとき、プリンタドライバは、背景画像を形成しないテストパターン(背景無しテストパターン)と、背景画像を下に形成したテストパターン(背景付きテストパターン)とを印刷させる。2つのテストパターンのシアンの画像データは同じであり、背景画像の有無だけが異なっている。
背景付きテストパターンの背景画像は、所定範囲の全ての画素領域にそれぞれホワイトインクの大ドットを形成し、所定範囲をホワイトインクで塗り潰した画像である。プリンタドライバは、第1ホワイトヘッドユニット41Wにホワイトインクを吐出させて背景画像を形成させ、第1ホワイト用光源81Wに紫外光を照射させて背景画像を仮硬化させ、その上に、シアンヘッドユニット41Cからシアンインクを吐出させて背景画像上にシアンのテストパターンを形成させ、テストパターンを仮硬化及び本硬化させることによって、背景付きテストパターンを印刷する。
背景無しテストパターンと背景付きテストパターンは、同じC画像データを用いてシアンの画像が形成されている。但し、背景画像の有無に応じて、シアンの印刷画像の濃度ムラが異なっている。
次に、検査者は、コンピューター110のスキャナドライバを用いてスキャナー120にテストパターンを読み取らせる(図16のS103)。この処理は、第2参考例と同じである(図8のS103)。但し、ここでは、2種類のテストパターン(背景無しテストパターンと背景付きテストパターン)を読み取らせることになる。
次に、プリンタドライバは、スキャナー120から取得した画像データ(読取画像データ)に対して、y2方向の画素数が24個になるように、解像度変換を行う(図16のS104)。この処理は、第2参考例と同じである(図8のS104)。但し、ここでは、2種類の読取画像データのそれぞれに解像度変換を行うことになる。また、プリンタドライバは、第2参考例と同様に、読取画像データ上の補正用パターン毎に各画素列の輝度を算出し(図16のS105)、濃度ムラ補正値ΔCを算出する(S106)。
次に、プリンタドライバは、無背景用の補正値テーブルと、背景用の補正値テーブルをコンピューター110の記憶手段に記憶する(S207)。無背景用の補正値テーブルは、背景の無いカラー画像を濃度ムラ補正処理するときに用いられる補正値テーブルである。背景用の補正値テーブルは、背景画像の上に形成されるカラー画像を濃度ムラ補正処理するときに用いられる補正値テーブルである。無背景用の補正値テーブルも背景用補正値テーブルも、第2参考例の濃度ムラ補正値テーブルと同様に、それぞれの画素列ごとに補正値が対応付けられている。2種類の補正値テーブルの用い方については、後述する。
なお、上記の説明ではシアンについてのみ説明をしたが、他の色(マゼンタ、イエロー、ブラック)に対しても同様に濃度ムラ補正値が算出される。
<濃度ムラ補正処理>
図7Cは、第1実施形態のプリンタドライバの処理の説明図である。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから、256階調のRGB画像データと、背景の有無を示す2階調のW画像データを取得している。プリンタドライバは、色変換処理後・ハーフトーン処理前の256階調のCMYK画像データに対して、濃度ムラ補正処理を行う。ここでは、シアンの256階調の画像データ(C画像データ)に対する濃度ムラ補正処理について説明する。
図17は、第1実施形態の濃度ムラ補正処理のフロー図である。図18は、第1実施形態の濃度ムラ補正処理の概要の説明図である。
濃度補正処理されるC画像データは、2次元画像を示すデータである。画像は画素が2次元的に配置されて構成されており、各画素にはシアンの256階調を示す画素データが割り当てられている。濃度補正処理は、画像データを構成する画素データのそれぞれに対して行われる。
まず、プリンタドライバは、濃度補正処理の対象となる画素の位置(対象位置)における背景画像の有無を判断する(S301)。背景画像の有無は、背景画像データ(W画像データ)の対象位置の画素の階調値に基づいて判断される。但し、対象位置の画素ではなく、対象位置を中心とする局所領域(例えば、5画素×5画素の領域)の階調値に基づいて、背景画像の有無が判断されても良い。
プリンタドライバは、対象位置に背景画像が無ければ、無背景用の補正値テーブルを用いて、シアンの階調値(256階調)を補正する(S302)。プリンタドライバは、対象位置に背景画像があれば、背景用の補正値テーブルを用いて、シアンの階調値(256階調)を補正する(S303)。なお、補正値テーブルを用いた画素データの階調値に対する濃度ムラ補正処理は、前述の第2参考例の濃度ムラ補正処理と同様である。無背景用の補正値テーブルと背景用の補正値テーブルが異なるため、同じ列領域の同じ階調値の画素データであっても、背景の有無に応じて、異なる階調値に補正されることになる。
濃度ムラ補正処理後の印刷画像データは、256階調のCMYK画像データである。濃度ムラ補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行い、印刷画像データを印刷装置1に送信する(図7C参照)。濃度ムラ補正処理後の画像データに基づいて印刷装置1が印刷を行うと、文字Aが、全ての領域で濃度ムラを補正された状態で、印刷されることになる。つまり、背景画像の有無に関わらず、カラー画像の全ての領域において濃度ムラが抑制される。
なお、説明を簡易にするために、画像データ上のカラー画像を同じ色にしているが、画素毎に異なる色(異なる階調値)になっていても良い。カラー画像が文字ではなく自然画の場合、画素毎に異なる色であることが普通である。自然画のようなカラー画像であっても、第1実施形態の濃度ムラ補正処理を行えば、背景画像の有無に関わらず、カラー画像の濃度ムラを抑制できる。
===第2実施形態===
図19は、第2実施形態の表刷り印刷の印刷画像の説明図である。第2実施形態では、背景画像データが256階調である。これにより、背景画像を中間階調値で表現することが可能になり、例えば背景画像にグラデーションを施すことも可能になる。
第1実施形態では、2階調(背景の有無)の階調値ごとに補正値テーブルが用意されていた。一方、第2実施形態のように背景画像が多段階の階調値で表現されるときに、各階調値ごとに補正値テーブルを用意すると、データ量が膨大になってしまう。そこで、第2実施形態では、階調値を補間することにしている。
図20は、第2実施形態の濃度ムラ補正処理のフロー図である。
まず、プリンタドライバは、濃度ムラ補正対象画素の位置(対象位置)における背景画素の階調値を抽出する(S401)。このとき、プリンタドライバは、256階調のW画像データから、対象位置における画素の階調値を抽出する。但し、対象位置を中心とする局所領域(例えば、5画素×5画素の領域)の平均階調値を、対象位置における画素の階調値としても良い。なお、256階調のW画像データは、濃度ムラ補正処理後のハーフトーン処理の際に、4階調の画像データに変換されることになる。4階調の背景画像を示す画像データは、各画素にホワイトドットの形成(ドット無し、小ドット、中ドット、大ドット)を示すドットデータになる。
ところで、背景画素の階調値が255のとき、背景が無い状態(背景が最も淡い状態)になる。無背景用の補正値テーブルは、階調値255に対応している。また、背景画素の階調値が0のとき、背景が最濃の状態になる。背景用の補正値テーブルは、階調値0に対応している。背景画素の階調値が中間階調値の場合、階調値に対応する補正値テーブルは用意されていないことになる。
次に、プリンタドライバは、無背景用の補正値テーブルを用いて、階調値を補正する(S402)。この処理は、第1実施形態のS302(図17参照)と同じである。ここでは、階調値C1がC11に補正されるものとする。
次に、プリンタドライバは、背景用の補正値テーブルを用いて、階調値を補正する(S403)。この処理は、第1実施形態のS303(図17参照)と同じである。ここでは、階調値C1がC12に補正されるものとする。
次に、プリンタドライバは、背景画素の階調値に基づいて、重みαを算出する(S404)。例えば、重みαは、背景画素の階調値を255で割った値である。
次に、プリンタドライバは、S402とS403で算出した2つの階調値C11,C12と、重みαを用いて、次式のように階調値C13を補間する(S405)。
C13 = α×C11 + (1−α)×C12
第2実施形態においても、プリンタドライバは、対象位置に背景画像が無ければ、無背景用の補正値テーブルを用いて、階調値を補正することになる。また、プリンタドライバは、最も濃い背景画像があれば、背景用の補正値テーブルを用いて、階調値を補正することになる。
また、第2実施形態では、対象位置の背景画像が中間階調値であれば、無背景用の補正値テーブルを用いて算出した階調値C11と、背景用の補正値テーブルを用いて算出した階調値C12とを用いて補間することによって、階調値C1を階調値C13に補正している。これにより、背景画像の階調値に関わらず、カラー画像(例えば文字A)の濃度ムラを抑制できる。
なお、第2実施形態では、階調値255に対応する無背景用の補正値テーブルと、階調値0に対応する背景用の補正値テーブルの2つの補正値テーブルが用意されていた。但し、補正値テーブルの数は2以上であっても良い。例えば、階調値127に対応する補正値テーブルが用意されていても良い。この場合、濃度ムラ補正対象画素の位置における背景画素の階調値が例えば64であれば、階調値127に対応する補正値テーブルと階調値0に対応する補正値テーブルを用いて、階調値を補間して補正すると良い。
===第3実施形態===
図21は、第3実施形態のプリンタドライバの処理のフロー図である。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから、256階調のRGB画像データと、256階調のW画像データを取得している。第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、背景画像データは256階調である。
まず、プリンタドライバは、RGB画像データをCMYK画像データに色変換処理する(S501)。
次に、プリンタドライバは、256階調のW画像データをハーフトーン処理して、4階調のW画像データに変換する(S502)。第3実施形態では、濃度ムラ補正処理の前にW画像データをハーフトーン処理する点で第2実施形態と異なっている。この段階では、CMYK画像データに対するハーフトーン処理は行われない。
次に、プリンタドライバは、CMYK画像データに対して、濃度ムラ補正処理を行う(S503)。この濃度ムラ補正処理は、図16に示す第1実施形態と同じである。すなわち、プリンタドライバは、対象位置に背景画像が無ければ、無背景用の補正値テーブルを用いて階調値を補正し、対象位置に背景画像があれば、背景用の補正値テーブルを用いて階調値を補正する。
なお、第3実施形態では、4種類の補正値テーブル(無背景用、小ドット用、中ドット用、大ドット用の補正値テーブル)を用意しても良い。この場合、プリンタドライバは、濃度ムラ補正処理の対象となる画素の位置における背景画像のドット形成状況(ドット無し、小ドット、中ドット、大ドット)に応じて、濃度ムラ補正処理に用いる補正値テーブルを決定すると良い。
次にプリンタドライバは、256階調のCMYK画像データをハーフトーン処理して、4階調のCMYK画像データに変換する(S504)。そして、プリンタドライバは、4階調のCMYK画像データ及びW画像データを含む印刷画像データを印刷装置1に送信する(S505)。
第3実施形態においても、背景画像の階調値に関わらず、カラー画像の濃度ムラを抑制できる。
===第4実施形態===
前述の実施形態では、濃度ムラ補正処理によって256階調のCMYK画像データの各画素の階調値が補正され、濃度ムラ補正処理されたCMYK画像データ(256階調)に対してハーフトーン処理が行われている。前述の実施形態では、淡く視認されやすい列領域に対応する画素列に属する画素データの階調値は予め低く(濃く)補正されているため、ハーフトーン処理後の画像データ上のその画素列のドット生成率が高くなる。また、濃く視認されやすい列領域に対応する画素列に属する画素データの階調値は予め高く(淡く)補正されているため、ハーフトーン処理後の画像データ上のその画素列のドット生成率が低くなる。
これに対し、第4実施形態では、ハーフトーン処理後のCMYK画像データ(4階調)を補正することによって、画素列のドットの生成を直接変更している。例えば、淡く視認されやすい列領域に対応する画素列では、ドットを追加するように、その画素列に属する画素データの階調値を補正する。また、濃く視認されやすい列領域に対応する画素列では、ドットを削除するように、その画素列に属する画素データの階調値を補正する。なお、ドットを追加・削除するのではなく、ドットの大きさを変更するように、4階調の画素データの階調値を補正しても良い。
図22は、第4実施形態のプリンタドライバの処理のフロー図である。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから、256階調のRGB画像データと、256階調のW画像データを取得している。第4実施形態においても、第2、第3実施形態と同様に、背景画像データは256階調である。
まず、プリンタドライバは、RGB画像データをCMYK画像データに色変換処理する(S601)。次に、プリンタドライバは、256階調の画像データをハーフトーン処理して、4階調の画像データに変換する(S602)。第4実施形態では、W画像データだけでなく、CMYK画像データに対してもハーフトーン処理が行われる。ハーフトーン処理後の4階調の画像データは、各画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示している。
次に、プリンタドライバは、CMYK画像データに対して、ドット補正処理を行う(S603)。図23Aは、ドット補正処理前のC画像データの説明図である。図中の黒く塗り潰された画素の画素データは、シアンドットを形成することを示している。
プリンタドライバは、それぞれの画素列ごとに補正値を対応付けた補正値テーブルを2種類(無背景用及び背景用の補正値テーブル)備えている。そして、背景画像の有無に応じて2つの補正値テーブルのうちの一方を選択し、補正値テーブルに基づいて各画素列の画素データの階調値を補正する。例えば、補正値テーブルの第2画素列の補正値が、所定の割合だけ淡く補正することを示している場合、プリンタドライバは、第2画素列に属する画素データのうち、ドットを形成することを示す画素データを、補正値の示す割合に応じた数だけ、ドットを形成しないことを示す画素データに補正する。また、補正値テーブルの第4画素列の補正値が、所定の割合だけ濃く補正することを示している場合、プリンタドライバは、第4画素列に属する画素データのうち、ドットを形成しないことを示す画素データを、補正値の示す割合に応じた数だけ、ドットを形成することを示す画素データに補正する。
本実施形態のドット補正処理によれば、ドット補正処理前のドット形成状態を基準にしてドットを追加・削除している。これにより、ハーフトーン処理によるドットの分散性をドット補正処理後もほぼ維持できる。
図23Bは、ドット補正処理後のC画像データの説明図である。図中の矢印で示す画素の画素データの階調値が、ドット補正処理によって補正されている。
プリンタドライバは、ドット補正処理の後、印刷画像データを印刷装置1に送信する(S604)。印刷装置1が図23Bに示すC画像データに従ってドットを形成すると、第2画素列ではドットが削減され、第4画素列ではドットが追加されて、シアンの画像が印刷されることになる。
図23A及び図23Bでは、ドットの追加・削除によるドット補正処理を説明したが、ドットの大きさを変更するように、画素データの階調値を補正しても良い。例えば、ある画素列を濃く補正する場合には、小ドットから中ドットになるように、若しくは中ドットから大ドットになるように、画素データを補正しても良い。また、ある画素列を淡く補正する場合、中ドットから小ドットになるように、若しくは大ドットから中ドットになるように、画素データを補正しても良い。
第4実施形態においても、背景画像の有無に関わらず、カラー画像の全ての領域において濃度ムラが抑制される。
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<印刷装置について>
前述の実施形態では、印刷装置はUVインクを用いて画像を形成していた。但し、透明な媒体に画像を形成できるのであれば、UVインクでなくても良い。この場合、前述の実施形態の仮硬化ユニット80や本硬化ユニット90は不要になる。しかし、フィルムなどの透明な媒体はインクを吸収しにくいため、印刷面でドットを硬化させて画像を形成することができるUVインクを用いるのが望ましい。
また、前述の実施形態の印刷装置は、いわゆるライン型印刷装置(媒体を搬送させながら、固定されたヘッドからインクを吐出して画像を形成する印刷装置)であった。但し、ライン型印刷装置ではなく、いわゆるシリアル型印刷装置(媒体を搬送する動作と、移動するヘッドからインクを吐出してドットを形成する動作とを交互に繰り返す印刷装置)であっても良い。
<ホワイトインクについて>
前述のホワイトインクは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)に、duty100%以上で吐出された白色インクの明度(L*)と色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名:GretagMacbeth社製)を、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN_NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをRefrectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5の範囲を示すインクのことをいう。
前述のホワイトインクは、白色顔料を含有する。白色顔料としては、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンが好ましい。
<背景画像について>
前述の背景画像は、ホワイトインクを塗布することによって形成されていた。但し、背景画像は、ホワイトインクによって形成される画像に限られるものではない。例えば、ホワイトインクの代わりに、光輝性インク(メタリックインク)を塗布しても良い。
光輝性インクは、光輝性インクは、金属粒子として銀粒子やアルミニウム(薄片状アルミニウム、鱗片状アルミニウム)等を含有する。銀粒子は、銀を主成分とする粒子である。銀粒子は、例えば、副成分として、他の金属、酸素、炭素等を含んでもよい。銀粒子は、銀と他の金属との合金であってもよい。また、インク組成物中の銀粒子は、コロイド(粒子コロイド)の状態で存在していてもよい。銀粒子がコロイド状態で分散している場合は、さらに分散性が良好となり、例えばインク組成物の保存安定性の向上に寄与することができる。金属粒子としてアルミニウムを用いた場合、アルミニウムは媒体にほぼ平行に並ぶがそれぞれのリーフの重なり合いにより、実際には平行ではない。そのため、アルミニウムを用いた場合の光沢は光沢度の高い鏡面光沢ではなく、マット調の光沢になる場合が多い。それに対して銀粒子を含む光輝性インクは、アルミニウムを含む光輝性インクよりも、光沢度の高い光輝性画像を形成することが可能である。
光輝性インクの溶媒としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水が用いられる。金属粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にイオン等が存在していてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂類等を含有していてもよい。
また、背景画像は、ホワイトインクとカラーインクを用いて調色した塗り潰し画像でも良い。この場合、媒体の色に応じて調色した背景画像を形成すれば、媒体の色の影響を受けずにカラー画像を形成することができる。例えば、媒体が若干黄色みを帯びている場合に、ホワイトインクとカラーインクを用いて若干青みを帯びるように調色すれば、白く視認されるように調色された背景画像を形成できる。