(難燃性熱伝導性粘着シート)
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートは、基材と、基材の少なくとも片面に設けられた難燃性熱伝導性粘着剤層とを有する難燃性熱伝導性粘着シートであって、難燃性熱伝導性粘着シートの総厚に対する上記基材の厚みの比が0.2未満であり、かつ、熱抵抗が10cm2・K/W以下であることを特徴とする。
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートについて、図面を参照して説明する。
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートは、ポリエステルフィルムを含む基材の少なくとも片面に難燃性熱伝導性粘着剤層を備えている。
このような難燃性熱伝導性粘着シートとしては、両面が接着面(粘着面)となっている形態、片面のみが接着面となっている形態いずれであってもよい。
具体的には、図1(a)で示されるように、基材の一方の面に難燃性熱伝導性粘着剤層が形成された片面のみ接着面の難燃性熱伝導性粘着シート、図1(b)または(c)で示されるように、両面とも接着面であって、少なくとも一方の接着面が難燃性熱伝導性粘着剤層で形成された難燃性熱伝導性粘着シートなどが挙げられる。
なお、本発明において「シート」とは、「テープ」「シート」「フィルム」などの形状を含む概念として用いられる。また、その使用目的に応じた形状に打ち抜き加工や切断加工がなされていてもよい。
図1は、本発明の難燃性熱伝導性粘着シートの例を部分的に示す概略断面図である。
図1において、11、12および13は、それぞれポリエステルフィルムを含む基材の少なくとも片面に難燃性熱伝導性粘着剤層を設けた難燃性熱伝導性粘着シートであり、2は難燃性熱伝導性粘着剤層、3は基材、4は粘着剤層(非難燃性熱伝導性粘着剤層)である。
図1(a)で示される難燃性熱伝導性粘着シート11は、基材3の片面に難燃性熱伝導性粘着剤層2が設けられた構成を有している。
図1(b)で示される難燃性熱伝導性粘着シート12は、基材3の両面に難燃性熱伝導性粘着剤層2が設けられた構成を有している。
図1(c)で示される難燃性熱伝導性粘着シート13は、基材3の一方の面に難燃性熱伝導性粘着剤層2が形成され、かつ、他方の面に粘着剤層(非難燃性熱伝導性粘着剤層)4が形成された構成を有している。
なお、図1(a)で示される、基材3の片面に難燃性熱伝導性粘着剤層2が形成された構成の場合、難燃性熱伝導性粘着剤層2が形成されていない基材3の他面については、汚れや傷防止のための処理層が形成されていてもよい。
汚れ防止用の処理層としては、例えば、汚れを付きにくくするために表面張力の低いシリコーンやフッ素などで基材の表面を処理した層が利用できる。
表面張力は、特に限定されないが、好ましくは、50dyne/cm以下、より好ましくは、40dyne/cm以下、さらに好ましくは、30dyne/cm以下である。
また、傷防止のための処理層としては、例えば、ハードコート層などが挙げられる。ハードコート層の鉛筆硬度は、例えば、H以上、好ましくは、2H以上、より好ましくは、3H以上である。
また、本発明の難燃性熱伝導性粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されてもよく、シートが積層された形態で形成されてもよい。
難燃性熱伝導性粘着シートがロール状に巻回された形態を有している場合や積層されている場合、剥離ライナーにより難燃性熱伝導性粘着剤層同士が直接接することを防止することができる。
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートの厚さ(総厚)は、例えば、100〜1000μm、好ましくは、120〜1000μmである。シートの厚さ(総厚)が上記範囲であれば、優れた引張弾性率を確保することができ、被着体への貼着性の向上を図ることができる。
なお、本発明において難燃性熱伝導性粘着シートの厚さ(総厚)とは、難燃性熱伝導性粘着シートを構成する基材および難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さの総和であり、例えば、剥離ライナー(後述)の厚さは含まない。
また、本発明の難燃性熱伝導性粘着シート(基材および難燃性熱伝導性粘着剤層)は、環境負荷低減の観点から、好ましくは、ハロゲン系難燃成分を実質的に含まないことが望ましい。
なお、本発明においてハロゲン系難燃成分を実質的に含まないとは、ハロゲン系難燃成分をまったく使用しないか、一般に使用される評価方法において検出限界以下であることをいう。
(基材)
本発明において、基材は、ポリエステルフィルムを含んでいる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。
これらの素材は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。
ポリエステルフィルムの基材は、ポリオレフィンフィルムやポリアミドフィルム、ポリイミドフィルムなどの基材と比べ破断強度やヤング率、絶縁破壊電圧が高い利点がある。
本発明において、基材の厚みは、例えば、1μm以上100μm未満であり、好ましくは、5μm以上50μm未満であり、より好ましくは、10μm以上40μm未満である。
基材の厚みが、上記範囲内であれば、UL94 VTM−0の難燃規格を満足する難燃性を得ることができる。さらに、優れた引張弾性率を確保することができ、被着体への貼着性の向上を図ることができる。
一方、ポリエステルフィルムを含む基材の厚みが、上記下限未満または上記上限以上であるとUL94 VTM−0の難燃規格を満足することができない場合がある。
具体的には、基材の厚みが上記下限未満であると、延焼中にテープのドリップ現象が発生し、UL94 VTM−0の難燃規格を満足できない場合がある。また、基材の厚みが上記上限以上であるとポリエステルフィルムを含む基材が燃え、UL94 VTM−0の難燃規格を満足できない場合がある。
また、本発明の難燃性熱伝導性粘着シートにおいて、上記ポリエステルフィルムを含む基材の厚みと、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚み(粘着剤層の厚み(後述))との比は、0.2未満であり、好ましくは、0.15未満であり、より好ましくは、0.1未満であって、通常0.0025以上である。
基材の厚みに対して難燃性熱伝導性粘着剤層の厚みの比が上記上限以上であると、熱伝導性が損なわれる場合がある。
なお、本発明の基材は、ポリエステルフィルム単体であってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の基材と積層された形態であってもよい。
このような基材としては、例えば、紙などの紙系基材、例えば、布、不職布、ネットなどの繊維系基材、例えば、金属箔、金属板などの金属系基材、例えば、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材、例えば、ゴムシートなどのゴム系基材、例えば、発泡シートなどの発泡体やこれらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルムまたはシート同士の積層体など)など、適宜な薄葉体を用いることができる。
このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、例えば、酢酸ビニル系樹脂、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、例えば、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのアミド系樹脂、例えば、ポリイミド系樹脂、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
これらの素材は単独または2種以上組み合わせて使用することができ、その積層形態は特に限定されない。
ポリエステルフィルムを含む基材の表面は、難燃性熱伝導性粘着剤層などとの密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理など、化学的または物理的方法による酸化処理などが施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤などによりコーティング処理などが施されていてもよい。
本発明において、難燃性熱伝導性粘着シートの熱抵抗は、10cm2・K/W以下、好ましくは、6cm2・K/W以下、より好ましくは、4cm2・K/W以下である。難燃性熱伝導性粘着シートの熱抵抗が10cm2・K/Wを超えると、熱伝導性シートとしての機能が十分に発揮できない。
また、本発明の難燃性熱伝導性粘着シートの難燃性は、UL94 VTM−0規格を満足する必要がある。UL94 VTM−0規格を満足すれば、発火した際にも垂直延焼を抑制できるという利点があり、難燃性熱伝導性粘着シートを、例えば、電子機器の熱伝導部材として用いることができる。
(難燃性熱伝導性粘着剤層)
本発明の難燃性熱伝導性シートに用いる難燃性熱伝導性粘着剤層は、特に限定されず、従来周知の難燃性熱伝導性粘着剤層を用いることができる。
本発明で難燃性熱伝導性粘着剤層としては、例えば、UL94 VTM−2、好ましくは、VTM−1、より好ましくは、VTM−0の規格を満足する粘着剤層を指す。
熱伝導性および難燃性が両立しやすく接着力や保持力といった粘着特性にも優れるという点から、好ましくは、アクリル系粘着剤層が挙げられる。
特に、難燃性熱伝導性粘着シートの熱抵抗を10cm2・K/W以下とし、UL94 VTM−0規格を満足するには、好ましくは、(a)アクリル系ポリマーに(b)水和金属化合物を含有させる。
(アクリル系ポリマー)
本発明において、難燃性熱伝導性粘着剤層を構成する(a)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、極性基含有モノマーを含むモノマー成分を共重合してなるアクリル系ポリマーが挙げられる。
アクリル系ポリマーは、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ) アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、などの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステルを挙げることができる。
特に接着特性のバランスを取りやすいという点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸C2−12アルキルエステル、より好ましくは、(メタ)アクリル酸C4−9アルキルエステルを用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分において主成分として用いられている。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して60質量%以上(例えば、60〜99質量%)、好ましくは、80質量%以上(例えば、80〜98質量%)である。
本発明における(a)アクリル系ポリマーは、好ましくは、モノマー成分として極性基含有モノマーをモノマー成分中5質量%以上含有する。
極性基含有モノマーをモノマー成分中5質量%以上含有させれば、難燃性熱伝導性粘着剤層の被着体への接着力を向上させたり、難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力を高めることができる。
上記極性基含有モノマーとしては、例えば、窒素含有モノマー、水酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
極性基含有モノマーは、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明においては、高い接着性と保持力を得るという理由から、好ましくは、窒素含有モノマー、水酸基含有モノマーが挙げられる。また、極性基含有モノマーは、詳しくは後述するが、好ましくは、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが挙げられる。
本発明において窒素含有モノマーとしては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド(HEAA)、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジンなどの環状(メタ)アクリルアミド、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)などの非環状(メタ)アクリルアミド、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオンなどのN−ビニル環状アミド、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの、アミノ基を有するモノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの、マレイミド骨格を有するモノマー、例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミドなどの、イタコンイミド系モノマーなどが挙げられる。
これらの窒素含有モノマーとしては、貼り付け初期の接着性が良好であるという点から、好ましくは、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
本発明において水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらの水酸基含有モノマーにおいては、被着体への濡れ性が良好であるという点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルが挙げられる。
本発明においてスルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
本発明においてリン酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
本発明において極性基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して5質量%以上、例えば、5〜30質量%であり、好ましくは、6〜25質量%である。
極性基含有モノマーの使用量が5質量%以上であれば、良好な保持力を得ることができる。
一方、極性基含有モノマーの使用量が5質量%未満であると、難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力が低下し、高い保持力が得られない場合があり、30質量%を超えると難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力が過剰に高くなり、難燃性熱伝導性粘着剤層の接着性が低下する場合がある。
本発明においては、モノマー成分として、必要に応じて多官能モノマーを用いることができる。多官能モノマーを用いることで、アクリル系ポリマーに架橋構造を導入でき、難燃性熱伝導性粘着剤層として必要な凝集力を調整できる。
上記多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジブチル(メタ)アクリレート、ヘキシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能モノマーは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
本発明において、多官能モノマーの割合は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2質量%以下、例えば、0.01〜2質量%、好ましくは、0.02〜1質量%である。
多官能モノマーの使用量がアクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2質量%を超えると、難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力が高くなりすぎて難燃性熱伝導性粘着剤層の接着性が低下する場合がある。
また、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して0.01質量%未満であると、難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力が低下する場合がある。
本発明における(a)アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、必要に応じてその他のモノマーを用いることができる。その他のモノマーを用いることによって、例えば、粘着剤の各種特性やアクリル系ポリマーの構造などをより適切にコントロールできる。
その他のモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどの、エポキシ基を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどの、アルコキシ基を有するモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの、シアノ基を有するモノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのα−オレフィン、例えば、2−イソシアナートエチルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートなどの、イソシアネート基を有するモノマー、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー、例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの、複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば、フッ素(メタ)アクリレートなどの、ハロゲン原子を有するモノマー、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの、アルコキシシリル基を有するモノマー、例えば、シリコーン(メタ)アクリレートなどの、シロキサン結合を有するモノマー、例えば、炭素数21以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコールなどの、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他のモノマーは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのモノマーの中でも、本発明において、好ましくは、アルコキシ基を有するモノマーを用いる。より好ましくは、アクリル酸2−メトキシエチルを用いる。
アルコキシ基を有するモノマーを併用することで、難燃性熱伝導性粘着剤層の濡れ性を向上させることができ、被着体(熱の発生源)からの熱を効率よく伝導させることができる。
本発明において、その他のモノマーの割合は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して30質量%以下、好ましくは、20質量%以下とすることが適当であり、その他のモノマーを実質的に含有しないモノマー成分であってもよい。
上記アルコキシ基を有するモノマーの含有量は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、例えば、5質量%以上20質量%以下、好しくは8質量%以上15質量%以下とすることができる。
なお、本発明において、好ましくは、アクリル系ポリマーは、モノマー成分としてカルボキシル基含有モノマーを実質的に含まない。
ここで、「カルボキシル基含有モノマー」とは、1分子中にカルボキシル基(無水物の形態であり得る。)を1つ以上有するモノマーであって、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
また、アクリル系ポリマーのモノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを「実質的に含まない」とは、モノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを全く含有しないか、あるいはその含有量がモノマー成分の0.1質量%以下であることをいう。
一方、本発明においてアクリル系ポリマー中にカルボキシル基含有モノマーを含むと、接着性の低下を引き起こす傾向がある。
また、水和金属化合物(後述)と配合した際に、粘着剤組成物の流動性が低下して、粘着シートの調製が困難になる場合がある。
これらの原因は十分明らかにはなっていないが、水和金属化合物に含まれる官能基(例えば、水酸基)とカルボキシル基が反応し、アクリル系ポリマーと水和金属化合物が結合した状態になることから、カルボキシル基含有モノマーの極性基としての接着力向上効果が発揮できないと考えられる。
また、アクリル系ポリマーが疑似架橋したようになる(硬くなる)ため、流動性が低下すること、および、濡れ性が低下することにより接着特性が低下することが考えられる。
したがって、カルボキシル基含有モノマーを極少量含むことは問題ないものの、実質的に含まれるような場合は、水和金属化合物を多量に含有させることができず、本発明の目的である、熱伝導性と難燃性に優れ、かつ、被着体への貼り付けやすさに優れる難燃性熱伝導性粘着シートを提供することができない場合がある。
本発明では、アクリル系ポリマーを、上記モノマー成分を共重合することにより得ることができる。共重合の方法は特に限定されず、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用い、熱や紫外線により硬化させることができる。
このような重合開始剤としては、重合時間を短くすることができる利点などから、好ましくは、光重合開始剤が挙げられ、紫外線を用いた重合を利用して、モノマー成分を共重合し、アクリル系ポリマーを得る。
なお、重合開始剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
上記重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、デシルチオキサントンなどが含まれる。
光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、モノマー成分100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは、0.05〜3質量部の範囲から選択できる。
光重合開始剤の活性化に際しては、紫外線を上記モノマー成分と光重合開始剤の混合物に照射することが重要である。紫外線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に限定されず、光重合開始剤を活性させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
なお、上記熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどのアゾ系重合開始剤、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせなどのレドックス系重合開始剤などが挙げられる。
熱重合開始剤の使用量は、特に限定されず、重合開始剤として従来利用可能な範囲であればよい。
モノマー成分を熱重合法により重合させる場合は、モノマー成分および熱重合開始剤を適宜な溶剤(例えば、トルエンや酢酸エチル)に溶解し、例えば、20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の重合温度で加熱することで行うことができる。
本発明において、(a)アクリル系ポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)がおよそ−10℃以下(典型的にはおよそ−10℃〜−70℃)であり、好ましくは、−20℃以下(典型的にはおよそ−20℃〜−70℃)であり、モノマー成分は、好ましくは、上記モノマー成分を重合させて得られるアクリル系ポリマーのTgが上記範囲となるようにモノマー成分の組成および配合量を調整する。
ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、モノマー成分を構成する各モノマーのホモポリマーのTgおよび上記モノマーの重量分率(共重合組成)に基づいてFoxの式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgの値は、各種の公知資料(日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」など)から得ることができる。
(水和金属化合物)
難燃性熱伝導性粘着剤層に含まれる(b)水和金属化合物は、分解開始温度が150〜500℃の範囲にあって、一般式MmOn・XH2O(ここにMは金属、m,nは金属の原子価によって定まる1以上の整数、Xは含有結晶水を示す数)で表される化合物または上記化合物を含む複塩である。
本発明における(b)水和金属化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム[Al2O3・3H2O;またはAl(OH)3]、ベーマイト[Al2O3・H2O;またはAlOOH]、水酸化マグネシウム[MgO・H2O;またはMg(OH)2]、水酸化カルシウム[CaO・H2O;またはCa(OH)2]、水酸化亜鉛[Zn(OH)2]、珪酸[H4SiO4;またはH2SiO3;またはH2Si2O5]、水酸化鉄[Fe2O3・H2Oまたは2FeO(OH)]、水酸化銅[Cu(OH)2]、水酸化バリウム[BaO・H2O;またはBaO・9H2O]、酸化ジルコニウム水和物[ZrO・nH2O]、酸化スズ水和物[SnO・H2O]、塩基性炭酸マグネシウム[3MgCO3・Mg(OH)2・3H2O]、ハイドロタルサイト[6MgO・Al2O3・H2O]、ドウソナイト[Na2CO3・Al2O3・nH2O]、硼砂[Na2O・B2O5・5H2O]、ホウ酸亜鉛[2ZnO・3B2O5・3.5H2O]などを挙げることができる。また、水和金属化合物として、例えば、ハイドロタルサイト、硼砂なども挙げられる。
これらの水和金属化合物は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの水和金属化合物の中でも、熱伝導性が高く、高い難燃性を発揮するという理由から、好ましくは、水酸化アルミニウムが挙げられる。
本発明において用いる(b)水和金属化合物の形状は特に限定されず、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
本発明において(b)水和金属化合物の粒子径は、バルク形状(球状)の水和金属化合物の場合には、1次平均粒子径として0.1〜1000μm、好ましくは、1〜100μm、より好ましくは、5〜80μmである。1次平均粒子径が1000μmを超えると水和金属化合物が難燃性熱伝導性粘着剤層の厚みを超えて厚みバラツキの原因となるという不具合がある。
なお、1次平均粒子径は、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる体積基準の値である。具体的には、レーザー散乱式粒度分布系により、D50値を測定することによって求められるものである。
(b)水和金属化合が針形状または板形状の熱伝導粒子の場合、最大長さは、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜100μm、より好ましくは、5〜45μmである。
最大長さが1000μmを超えると熱伝導粒子同士が凝集しやすくなり、取り扱いが難しくなるという不具合がある。
これらのアスペクト比は、例えば、1〜10000、好ましくは、1〜1000である。なお、上記アスペクト比は、針状結晶の場合には、長軸長さ/短軸長さ、または、長軸長さ/厚みで表現される。また板状結晶の場合には、対角長さ/厚み、または、長辺長さ/厚みで表現される。
本発明において、好ましくは、(b)水和金属化合物は粒子径の異なる2種以上の水和金属化合物を併用する。
2種以上の粒子径の異なる水和金属化合物を併用する場合、好ましくは、水和金属化合物の粒子径が5μm以上の大きな粒子と、5μm未満の小さな粒子とを組み合わせる。
なお、ここで粒子径とは、1次平均粒子径または最大長さをいう。
このように粒子径の大きさの異なる水和金属化合物を併用することで、熱伝導性粒子が難燃性熱伝導性粘着剤層内により最密に充填されるようになり、水和金属化合物による熱伝導パスが構築されやすくなり、熱伝導性が向上するという効果がある。
上記効果を得る場合、その配合比(重量比)は、例えば、1:10〜10:1、好ましくは、1:5〜5:1、より好ましくは、1:2〜2:1である。
本発明において、このような(b)水和金属化合物は、一般の市販品を用いることができ、水酸化アルミニウムとしては、例えば、商品名「ハイジライトH−100−ME」(1次平均粒子径75μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH−10」(1次平均粒子径55μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH−32」(1次平均粒子径8μm)(昭和電工社製)、商品名「ハイジライトH−42」(1次平均粒子径1μm)(昭和電工社製)など、商品名「B103ST」(1次平均粒子径8μm)(日本軽金属社製)などを、水酸化マグネシウムとしては、例えば、商品名「KISUMA 5A」(1次平均粒子径1μm)(協和化学工業社製)などを用いることができる。
本発明の難燃性熱伝導性粘着剤層を構成する(b)水和金属化合物の含有量は、特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、100〜500質量部、好ましくは、200〜450質量部、より好ましくは、300〜400質量部である。
水和金属化合物の含有量が、アクリル系ポリマー100質量部に対して、100〜500質量部であれば、高い熱伝導率と難燃性を得ることができる。
一方、水和金属化合物の含有量が100質量部未満であると、十分な熱伝導性や難燃性を付与することができない場合があり、また、500質量部を超えると可撓性が低くなり、粘着力や保持力が低下する場合がある。
本発明においては、熱伝導性を向上させるために、その他の熱伝導性粒子を含有させてもよい。
本発明において用いることのできる熱伝導性粒子としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、アンチモン酸ドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金、カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンドなどを挙げることができる。
なお、熱伝導性粒子の大きさ(粒子径)については、上記水和金属化合物と同様に扱うことができる。
本発明において、このような熱伝導性粒子は、一般の市販品を用いることができ、例えば、窒化ホウ素としては商品名「HP−40」(水島合金鉄社製)、商品名「PT620」(モメンティブ社製)などを、酸化アルミニウムとしては、例えば、商品名「AS−50」(昭和電工社製)などを、アンチモン酸ドープスズとしては、例えば、商品名「SN−100S」(石原産業社製)、商品名「SN−100P」(石原産業社製)、商品名「SN−100D(水分散品)」(石原産業社製)などを、酸化チタンとしては、例えば、商品名「TTOシリーズ」(石原産業社製)などを、酸化亜鉛としては、例えば、商品名「SnO−310」(住友大阪セメント社製)、商品名「SnO−350」(住友大阪セメント社製)、商品名「SnO−410」(住友大阪セメント社製)などが挙げられる。
本発明において熱伝導性粒子を併用する場合、その含有量は、特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、250質量部以下、好ましくは、1〜270質量部、より好ましくは、5〜280質量部である。
熱伝導性粒子の含有量が280質量部を超えると、難燃性熱伝導性粘着剤層の可撓性が低下する場合や、難燃性が低下する場合がある。
また、本発明の難燃性熱伝導性粘着剤層には、水和金属化合物と熱伝導性粒子とを凝集させることなく安定して分散させるために、好ましくは、分散剤を用いる。分散剤としては、特に限定されないが、好ましくは、リン酸エステルが挙げられる。リン酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルを含むリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルを含むリン酸ジエステル、または、リン酸トリエステルなどが挙げられ、これらの誘導体も挙げられる。
これらのリン酸エステル系分散剤は、単独または2種以上混合して使用してもよい。
その中でも熱伝導性粒子の経時安定性を考慮して、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、リン酸ジエステルを用いる。
このような分散剤は、例えば、商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)、商品名「プライサーフA210G」(第一工業製薬社製)、商品名「プライサーフA212C」(第一工業製薬社製)、商品名「プライサーフA215C」(第一工業製薬社製)、商品名「フォスファノールRE610」(東邦化学社製)、商品名「フォスファノールRS710」(東邦化学社製)、商品名「フォスファノールRS610」(東邦化学社製)などがある。
また、分散剤の配合量は特に限定されないが、アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、0.01〜10質量部、好ましくは、0.05質量部〜5質量部、より好ましくは、0.1質量部〜3質量部である。
本発明においては、難燃性を向上させるために、接着性や熱伝導性に悪影響を与えない範囲で、その他の難燃剤を含有させてもよい。
本発明において用いることのできる難燃剤としては、例えば、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ドロマイトなどの金属炭酸塩、例えば、メタホウ酸バリウム、酸化マグネシウム、ポリ燐酸アンモン、ほう酸亜鉛、錫化合物、有機リン系、赤リン系、カーボンブラック、シリコーン系難燃剤などを挙げることができる。
本発明において難燃剤を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、250質量部以下である。
難燃剤の含有量が250質量部を超えると、モノマーのブリードアウトにより、難燃性熱伝導性粘着剤層の接着性が著しく低下する場合や、熱伝導性が低下する場合がある。
なお、難燃剤の含有量が、アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは、1〜270質量部、より好ましくは、5〜280質量部である。
本発明において、(b)水和金属化合物の他に、上記熱伝導性粒子および/または難燃剤を併用する場合、その合計量は、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、100〜500質量部、好ましくは、200〜450質量部、より好ましくは、300〜400質量部である。
水和金属化合物、熱伝導性粒子および/または難燃剤の含有量が、アクリル系ポリマー100質量部に対して、100〜500質量部であれば、難燃性熱伝導性粘着シートは、高い熱伝導率と難燃性を得ることができる。
一方、水和金属化合物、熱伝導性粒子および/または難燃剤の含有量が100質量部未満であると、十分な熱伝導性や難燃性を付与することができない場合があり、また、500質量部を超えると可撓性が低くなり、難燃性熱伝導性粘着剤層の粘着力や保持力が低下する場合がある。
また本発明において(b)水和金属化合物の他に上記熱伝導性粒子および/または難燃剤を併用する場合、水和金属化合物の含有割合は、水和金属化合物、熱伝導性粒子および/または難燃剤の合計量に対し、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上である。
水和金属化合物の含有割合が50質量%以上であれば、難燃性熱伝導性粘着シートは、高い熱伝導率と難燃性を得ることができる。
一方、水和金属化合物の含有割合が50質量%未満であると、難燃性熱伝導性粘着シートは、十分な熱伝導性や難燃性を付与することができない場合がある。
(気泡)
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートにおいて、難燃性熱伝導性粘着剤層は、気泡を含有することもできる。
難燃性熱伝導性粘着剤層に気泡を含有させることにより、難燃性熱伝導性粘着シートに厚みとクッション性を付与することができ、被着体の凹凸面に対する追従性が向上する。
気泡の含有量は、難燃性熱伝導性粘着シートの熱伝導特性などを損なわない範囲で適宜選択できるが、難燃性熱伝導性粘着剤層の全体積に対して、通常は、5〜50体積%、好ましくは、10〜40体積%、より好ましくは、12〜35体積%である。
気泡量が5体積%未満であると、被着体への密着性や凹凸追従性に劣る場合が多い。
一方、50体積%を超えると気泡による断熱効果が大きくなりすぎて、難燃性熱伝導性粘着シートの熱伝導性が低下するおそれ、シートを貫通する気泡が形成し難燃性熱伝導性粘着シートの接着性が劣化するおそれ、および、難燃性熱伝導性粘着剤層が柔らかくなりすぎてせん断力が低下するおそれなどの不具合が発生する。
難燃性熱伝導性粘着剤層に混合される気泡は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
また、このような気泡としては、通常、球状の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。
上記気泡において、その平均気泡径(直径)としては、特に限定されず、例えば、1〜1000μm、好ましくは、10〜500μm、より好ましくは、30〜300μmの範囲から選択することができる。
なお、気泡に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分、「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に限定されず、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分を用いることができる。
しかし、気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを混合した後に、重合反応などの反応を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが必要になる。
気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことまたはコスト的観点などから、好ましくは、窒素が挙げられる。
気泡を混合する方法としては、特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、極性基含有モノマーをモノマー成分中5質量%以上含有するモノマー成分の混合物またはその部分重合物と、水和金属化合物とを含有する難燃性熱伝導性粘着剤層の前駆体組成物(以下、「前駆体組成物」と称する場合がある)に、(c)気泡を混合することで、気泡を含有する前駆体組成物を調製し、これに紫外線を照射して難燃性熱伝導性粘着剤層を形成する。
気泡を混合する方法としては、公知の気泡混合方法を利用することができる。
例えば、装置としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータとを対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターとを備えた装置などが挙げられる。
この装置におけるステータ上の歯とローター上の歯との間に前駆体組成物を導入し、ローターを高速回転させながら、貫通孔を通して気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を前駆体組成物中に導入させることにより、気泡形成ガスが前駆体組成物中に細かく分散され混合された、気泡を含有する前駆体組成物を得られる。
なお、気泡の合一を抑制または防止するために、好ましくは、気泡の混合から、難燃性熱伝導性粘着剤層の形成まで、一連の工程として連続的に行う。
すなわち、前述のようにして気泡を混合させて気泡を含有する前駆体組成物を調製した後、続いて、上記気泡を含有する前駆体組成物を用いて、適宜な形成方法を利用して難燃性熱伝導性粘着剤層を形成する。
(フッ素系界面活性剤)
本発明において、気泡を含有する前駆体組成物には、フッ素系界面活性剤を配合することができる。
フッ素系界面活性剤を用いると、水和金属化合物と難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマーとの密着度や摩擦抵抗が低減され、水和金属化合物とアクリル系ポリマーとの応力が分散し、難燃性熱伝導性粘着剤層は、高い接着力を得る。
フッ素化炭化水素基を有する場合、さらに、難燃性熱伝導性粘着剤層中の気泡混合性および気泡安定性を高める効果も得られる。
フッ素系界面活性剤としては、分子中にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が用いられる。
上記オキシC2−3アルキレン基は式:−R−O−(Rは炭素数2または3の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基)で表される。
上記フッ素系界面活性剤はオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有していれば特に限定されないが、アクリル系ポリマーに対する分散性の観点から、好ましくは、非イオン型界面活性剤がよい。
また、上記フッ素系界面活性剤の分子中のオキシC2−3アルキレン基は、オキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基[−CH2CH(CH3)O−]などのいずれか1種であっても、2種以上であってもよい。
なお、フッ素系界面活性剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
フッ素化炭化水素基としては、特に制限されないが、好ましくは、パーフルオロ基が挙げられる。
上記パーフルオロ基は、1価であってもよく、2価以上の多価であってもよい。また、フッ素化炭化水素基は二重結合や三重結合を有していてもよく、直鎖でも枝分かれ構造や環式構造を有していてもよい。
フッ素化炭化水素基の炭素数としては特に限定されず、例えば、1または2以上、好ましくは、3〜30、より好ましくは、4〜20である。これらのフッ素化炭化水素基が、界面活性剤分子中に1種または2種以上導入されている。
オキシC2−3アルキレン基としては、末端の酸素原子に水素原子が結合したアルコール、他の炭化水素基と結合したエーテル、カルボニル基を介して他の炭化水素基と結合したエステルなど、いずれの形態であってもよい。
また、環式エーテル類やラクトン類など、環状構造の一部に上記オキシC2−3アルキレン基構造を有する形態でもよい。
フッ素系界面活性剤の構造としては、特に制限されないが、例えば、オキシC2−3アルキレン基を有する単量体と、フッ素化炭化水素基を有する単量体とをモノマー成分として含む共重合体が挙げられる。
このような共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、様々な構造が考えられるが、いずれであってもよい。
ブロック共重合体(主鎖にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、例えば、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキレート、ポリオキシプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシイソプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレングリコールパーフルオロアルキレートなどがある。
グラフト共重合体(側鎖にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物と、フッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物との共重合体、アクリル系共重合体などが挙げられ、好ましくは、アクリル系共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。
フッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物としては、例えば、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレートと、フッ素化炭化水素を含有する(メタ)アクリル酸エステルとが挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、分子中に上記構造の他に脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの構造を有していてもよく、アクリル系ポリマーへの分散性を阻害しない範囲内でカルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基など様々な官能基を有していてもよい。
例えば、フッ素系界面活性剤がビニル系共重合体である場合は、モノマー成分として、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物およびフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物と共重合可能なモノマー成分を用いてもよい。
このようなモノマーは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
上記共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレートなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。その他、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、例えば、エチレン、ブタジエンなどのオレフィンまたはジエン類、例えば、ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類、例えば、アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体、例えば、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。また、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性共重合性単量体(多官能モノマー)を用いてもよい。
フッ素系界面活性剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が20000未満(例えば、500以上、20000未満)の場合、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマーと、熱伝導性粒子との間の密着性および摩擦抵抗を低減する効果が高い。
さらに、重量平均分子量20000以上(例えば、20000〜100000、好ましくは、22000〜80000、より好ましくは、24000〜60000)のフッ素系界面活性剤を併用すると、気泡の混合性や、混合された気泡の安定性が高まる。
オキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有し、かつ重量平均分子量20000未満のフッ素系界面活性剤は、具体例として、商品名「フタージェント251」(ネオス社製)、商品名「FTX−218」(ネオス社製)、商品名「メガファックF−477」(大日本インキ化学工業社製)、商品名「メガファックF−470」(大日本インキ化学工業社製)、商品名「サーフロンS−381」(セイケミカル社製)、商品名「サーフロンS−383」(セイケミカル社製)、商品名「サーフロンS−393」(セイケミカル社製)、商品名「サーフロンKH−20」(セイケミカル社製)、商品名「サーフロンKH−40」(セイケミカル社製)などが挙げられる。
オキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有し、かつ重量平均分子量20000以上であるフッ素系界面活性剤は、具体例として、商品名「エフトップEF−352」(ジェムコ社製)、商品名「エフトップEF−801」(ジェムコ社製)、商品名「ユニダインTG−656」(ダイキン工業社製)などが挙げられる。
いずれのフッ素系界面活性剤も本発明に好適に用いることができる。
フッ素系界面活性剤の使用量(固形分)としては、特に制限されないが、例えば、難燃性熱伝導性粘着剤層のアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは、0.02〜3質量部、より好ましくは、0.03質量部〜2質量部の範囲で選択することができる。
0.01質量部未満であると気泡の安定性が得にくく、5質量部を超えると、接着性能が低下する場合がある。
本発明においては、上記した水和金属化合物を安定して分散させる分散剤と、水和金属化合物と難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマーとの密着度や摩擦抵抗を低減し応力分散性を発現させるフッ素系界面活性剤を併用して用いることができる。
これら分散剤とフッ素系界面活性剤とを併用して用いる場合、単独で用いる場合よりも少ないフッ素系界面活性剤の量で、水和金属化合物が難燃性熱伝導性粘着剤層中で凝集することなく安定し、熱伝導性が向上する。
さらに、難燃性熱伝導性粘着剤層の応力分散性も向上し、より高い接着力が期待できる。
これら2種の添加剤を併用して用いる場合、その配合量は特に限定されないが、分散剤とフッ素系界面活性剤の比(重量比)が、1:20〜20:0.01、好ましくは、1:10〜10:0.01、より好ましくは、1:5〜5:0.01である。
上記難燃性熱伝導性粘着剤層中に気泡が混合した状態を安定させるために、難燃性熱伝導性粘着剤層の前駆体組成物と気泡とを混合する工程は、好ましくは、一連の難燃性熱伝導性粘着剤層形成工程の最後の工程とする。上記工程で、より好ましくは、気泡混合前の上記前駆体組成物の粘度を高くする。
前駆体組成物の粘度としては、混合された気泡を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に限定されないが、例えば、5〜50Pa・s、好ましくは、10〜40Pa・sである(測定条件は、BH粘度計で、ローターがNo.5ローター、回転数が10rpm、温度が30℃)。
前駆体組成物の粘度が、5Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると、難燃性熱伝導性粘着剤層を形成する際に、粘度が高すぎて塗工が困難となる。
なお、前駆体組成物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分(例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など)を一部重合させ部分重合物とする方法などにより、調整することができる。
具体的には、例えば、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分(例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など)と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤など)とを混合して、モノマー混合物を調製し、上記モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した部分重合物を含む組成物(シロップ)を調製する。上記シロップに水和金属化合物と、必要に応じてモノマー、分散剤やフッ素系界面活性剤および各種添加剤(後述)とを配合して、気泡を安定的に含有するのに適した粘度の前駆体組成物を調製できる。
さらに、上記前駆体組成物に気泡を導入して混合させることで、安定した気泡を含有する前駆体組成物を得られる。
なお、上記シロップの調製に際しては、モノマー混合中に、あらかじめ、フッ素系界面活性剤や水和金属化合物を適宜配合してもよい。
本発明において、難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力を調整するには、上記多官能モノマーを配合しアクリル系ポリマーに架橋構造を導入する方法の他に、架橋剤を用いることも可能である。
架橋剤は、通常用いる架橋剤を使用することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられ、特に好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。
具体的には、イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、および、これらとトリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体が挙げられる。
また、1分子中に少なくとも1つ以上のイソシアネート基と、1つ以上の不飽和結合を有する化合物、具体的には、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどもイソシアネート系架橋剤として使用することができる。
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンおよび1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
本発明において架橋剤を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは、0.01〜3質量部、より好ましくは、0.01〜2質量部である。
架橋剤の含有量が5質量部を超えると可撓性が得られない場合があり、0.01質量部未満であると凝集性が得られない場合がある。
本発明の難燃性熱伝導性粘着剤層には、接着性を向上させるために、粘着付与樹脂を含有させることができる。
粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、好ましくは、水素添加型の粘着付与樹脂が挙げられる。このような樹脂は、上記アクリル系ポリマーと併用した際でも、アクリル系ポリマーの紫外線共重合を阻害することが少ない。
このような水素添加型の粘着付与樹脂としては、例えば、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与樹脂に水素添加した誘導体から選ぶことができる。水素添加型石油系樹脂は、例えば、芳香族系、ジシクロペンタジエン系、脂肪族系、芳香族−ジシクロペンタジエン共重合系などから選ぶことができる。水素添加型テルペン系樹脂は、例えば、テルペンフェノール樹脂、芳香族テルペン樹脂などから選ぶことができる。これらの中でも、好ましくは、石油系樹脂またはテルペン系樹脂が挙げられる。
粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは、80〜200℃、より好ましくは、100〜200℃である。
粘着付与樹脂の軟化点が上記範囲である場合、高い凝集力が得られる。
本発明において、粘着付与樹脂を用いる場合、その含有量は特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは、1〜50質量部であり、より好ましくは、2〜40質量部であり、特に好ましくは、3〜30質量部である。
粘着付与樹脂の添加量が50質量部を超えると、凝集力が低下する場合があり、1質量部未満であると、難燃性熱伝導性粘着剤層の接着力の向上効果が得られない場合がある。
本発明においては、接着性を向上させるために、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。
アクリル系オリゴマーは、(a)アクリル系ポリマーよりもガラス転移温度(Tg)が高く、重量平均分子量が小さい重合体であり、粘着付与樹脂として機能し、かつ、紫外線を用いた重合の際に重合阻害を起こしにくいという利点を有する。
本発明において、アクリル系オリゴマーは、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、約0℃以上300℃以下、好ましくは、約20℃以上300℃以下、より好ましくは、約40℃以上300℃以下である。
ガラス転移温度(Tg)が約0℃未満であると、難燃性熱伝導性粘着剤層の室温以上での凝集力が低下し、上記難燃性熱伝導性粘着剤層の保持特性および高温域での接着力が低下する場合がある。
なお、アクリル系オリゴマーのTgは、上記(a)アクリル系ポリマーのTgと同じく、Foxの式に基づいて計算できる。
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、1000以上30000未満、好ましくは、1500以上20000未満、より好ましくは、2000以上10000未満である。
重量平均分子量が30000以上であると、難燃性熱伝導性粘着シートの接着力の向上効果が充分には得られない場合がある。
また、1000未満であると、難燃性熱伝導性粘着シートの接着力や保持特性の低下を引き起こす場合がある。
本発明において、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量の測定は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。
具体的には、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定する。
本発明において、アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸イソブチルや(メタ)アクリル酸t−ブチルのようなアルキル基が分岐構造を持った(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルや(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環式アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニルや(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの環状構造を持った(メタ)アクリレートに代表されるように、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含むことが挙げられる。
このような嵩高い構造をアクリル系オリゴマーに持たせることで、難燃性熱伝導性粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる。
特に、嵩高さという点で環状構造をもったものは効果が高く、環を複数含有したものはさらに効果が高い。
また、アクリル系オリゴマーの合成の際や難燃性熱伝導性粘着剤層の作製の際に紫外線(紫外線)を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有したモノマーが好ましく、このようなモノマーとしては、好ましくは、アルキル基が分岐構造を持った(メタ)アクリレートまたは脂環式アルコールが挙げられる。
このような点から、本発明においては、アクリル系オリゴマーとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)およびメタクリル酸イソブチル(IBMA)の共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)およびメタクリル酸イソボルニル(IBXMA)の共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)およびアクリロイルモルホリン(ACMO)の共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)およびジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体、アクリル酸1−アダマンチル(ADA)およびメタクリル酸メチル(MMA)の共重合体、または、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)およびメタクリル酸イソボルニル(IBXMA)の共重合体、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)、アクリル酸イソボルニル(IBXA)、アクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタアクリル酸1−アダマンチル(ADMA)、アクリル酸1−アダマンチル(ADA)の各単独重合体などを挙げることができる。
本発明において、アクリル系オリゴマーを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、難燃性熱伝導性粘着剤層中のアクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば、1〜70質量部、好ましくは、2〜50質量部、より好ましくは、3〜40質量部である。アクリル系オリゴマーの添加量が70質量部を超えると、上記難燃性熱伝導性粘着剤層の凝集力が低下する場合がある。
また、上記難燃性熱伝導性粘着剤層の弾性率が高くなりすぎて、低温域の接着力低下および室温域の粘着力消失の不具合が発生する場合がある。
一方、アクリル系オリゴマーの添加量が1質量部未満であると、接着力の向上効果が得られない場合がある。
本発明の難燃性熱伝導性粘着剤層には、接着力、耐久力および水和金属化合物とアクリル系ポリマーとの親和性向上を目的として、シランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
これらシランカップリング剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記シランカップリング剤の含有量は、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは、シランカップリング剤0.01〜10質量部、より好ましくは、0.02〜5質量部、より好ましくは、0.05〜2質量部である。
上記シランカップリング剤を上記範囲で用いることにより、より確実に凝集力や耐久性の向上させることができる。0.01質量部未満では、難燃性熱伝導性粘着剤層に含有される熱伝導性粒子の表面を被覆できず、親和性が向上しない場合があり、一方、10質量部を超えると、熱伝導性を低下させる場合がある。
(他の成分)
本発明において、難燃性熱伝導性粘着剤層には、(a)アクリル系ポリマー、(b)水和金属化合物および上記した気泡や各種成分の他に、難燃性熱伝導性粘着剤層の用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤(顔料および染料など)などの適宜な添加剤を含んでもよい。
(難燃性熱伝導性粘着剤層の作製)
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートにおいて、少なくとも、(a)アクリル系ポリマーと(b)水和金属化合物とを含む難燃性熱伝導性粘着剤組成物を用いて難燃性熱伝導性粘着剤層を形成する場合、公知の形成方法を利用して形成することができる。例えば、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤など)と、適当な溶剤(トルエンや酢酸エチルなど)とを混合して、モノマー溶液を調製する。
上記モノマー溶液に、重合開始剤の種類に応じた重合反応を行い、モノマー成分が共重合したアクリル系ポリマーを含むポリマー溶液を調製した後、水和金属化合物と、必要に応じて各種添加剤とを配合して、塗工に適した粘度を有する難燃性熱伝導性粘着剤組成物を調製する。
難燃性熱伝導性粘着剤組成物を、所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化などを行うことにより、難燃性熱伝導性粘着剤層を形成することができる。
また本発明において、紫外線を用いた硬化を用いる場合、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分と、光重合開始剤とを混合してモノマー混合物を調製し、上記モノマー混合物に対して紫外線の照射を行って、一部のモノマー成分のみが重合した部分重合物を含む組成物(シロップ)を調製する。
上記シロップに水和金属化合物と、必要に応じてモノマー、分散剤やフッ素系界面活性剤および各種添加剤とを配合して、塗工に適した粘度を有する前駆体組成物を調製する。
上記前駆体組成物を、所定の面上に塗布した後、紫外線の照射を行って、硬化させることにより、難燃性熱伝導性粘着剤層を形成できる。
また本発明において、気泡を有する難燃性熱伝導性粘着剤層を得る場合、上記前駆体組成物に、気泡を混合させた前駆体組成物を得る。この気泡を含有する前駆体組成物を、所定の面上に塗布した後、紫外線の照射を行って、硬化させることにより、気泡を有する難燃性熱伝導性粘着剤層を形成することができる。
なお、上記難燃性熱伝導性粘着剤組成物や前駆体組成物を所定の面上に塗布する際のコーティングする方法としては、従来広く用いられているコーティング方法を採用することができる。例えば、ポリエステルフィルムを含む基材や剥離ライナー上にコーティング液をコーティングし、乾燥した後に別の剥離ライナーを貼り合せして難燃性熱伝導性粘着剤層を作製することができる。
本発明における難燃性熱伝導性粘着剤層の形成方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
本発明において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、1〜950μm、好ましくは、20〜200μm、より好ましくは、30〜100μmの範囲から選択できる。
難燃性熱伝導性粘着剤層の厚みが10μmよりも小さいと、十分な接着力と保持力を得ることが出来ない場合があり、一方、950μmよりも大きいと、十分な熱伝導性を得ることが出来ない場合がある。
本発明において、難燃性熱伝導性粘着シートは、引張弾性率が、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、10MPa以上、より好ましくは、20MPa以上であり、通常1000MPa未満である。
難燃性熱伝導性粘着シートの引張弾性率が上記下限未満であると、難燃性熱伝導性粘着シートを貼り付ける際に伸びてしまい、貼り付け不良がおこる場合がある。引張弾性率は実施例(後述)の評価の記載に従って測定される。
(粘着剤層(非難燃性熱伝導性粘着剤層))
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートにおいて、本発明の効果を損なわない限り、粘着剤層として上記した難燃性熱伝導性粘着剤層以外の粘着剤層(非難燃性熱伝導性粘着剤層)を設けることができる。
基材の一方の面に難燃性熱伝導性粘着剤層が設け、他方の面に非難燃性熱伝導性粘着剤層が設ける場合(図1(c))、上記非難燃性熱伝導性粘着剤層は、公知の粘着剤(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)を用いて、公知の粘着剤層の形成方法を利用して形成できる。
また、非難燃性熱伝導性粘着剤層の厚みは、特に限定されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択できる。
(剥離ライナー)
本発明では、難燃性熱伝導性粘着剤層や非難燃性熱伝導性粘着剤層などの粘着剤層の接着面(粘着面)を保護するために、剥離ライナーを用いてもよい。
なお、剥離ライナーは必ずしも設けられていなくてもよい。本発明では、剥離ライナーは、粘着剤層を被着体に貼着する際に剥がして使用する。
このような剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを利用できる。
剥離ライナーとして、具体的には、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体など)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などがあり、例えば、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されている剥離ライナーなどが挙げられる。このような剥離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)などが挙げられる。
一方、剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、剥離ライナーの厚さや、形成方法などは、特に制限されない。
本発明の難燃性熱伝導性粘着シートによれば、熱伝導性と難燃性とに優れるため、その特性を活かし、ハードディスク、LED照明、リチウムイオンバッテリーなどの用途に好適である。
以下に、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル82質量部およびアクリル酸2−メトキシエチル12質量部が、極性基含有モノマーとして、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)5質量部およびヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)1質量部とが混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として商品名「イルガキュアー651」(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・ジャパン社製)0.05質量部および商品名「イルガキュアー184」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・ジャパン社製)0.05質量部を配合した。
上記したモノマー混合物と光重合開始剤との混合物に、紫外線を照射して、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで一部が重合させた組成物(シロップ)を作製した。
このシロップ100質量部に、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA−40H」、日本化薬社製)0.05質量部と、分散剤として商品名「プライサーフA212E」(第一工業製薬社製)1質量部とを添加した。
さらに、水和金属化合物として、水酸化アルミニウム粉末である商品名「ハイジライトH−32」(形状:破砕状、粒径:8μm、昭和電工社製)175質量部および水酸化アルミニウム粉末である商品名「ハイジライトH−10」(形状:破砕状、粒径:55μm)(昭和電工社製)175質量部を添加し、前駆体組成物を作製した。
前駆体組成物を、片面に剥離処理が施されているポリエチレンテレフタレート製の2枚の剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF38」(三菱化学ポリエステルフィルム社製)の剥離処理面の間に、乾燥および硬化後の厚さが54μmとなるように塗布した。
つまり、ポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーの間に前駆体組成物を挟み込んでいる。
次いで、照度約5mW/cm2の紫外線を両面から3分間照射し、モノマー成分を重合させてアクリル系ポリマーとし、難燃性熱伝導性粘着剤層を作製した。なお、アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、−62.8℃であった。
上記難燃性熱伝導性粘着剤層の片面の剥離ライナーを剥離し、難燃性熱伝導性粘着剤層を、厚みが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)の両面に貼り合わせた。
これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、その両面に設けられた難燃性熱伝導性粘着剤層とを備える、総厚(剥離ライナーの厚みを除く。つまり、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚み12μmおよび各難燃性熱伝導性粘着剤層の厚み54μm。以下同様。)が120μmの難燃性熱伝導性粘着シートを作製した。
(実施例2)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを119μmとした他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例3)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを244μmとした他は、実施例1と同様の処方で、総厚が500μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例4)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを112.5μmとし、基材として厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例5)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを237.5μmとし、基材として厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が500μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例6)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを106μmとし、基材として厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例7)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを59μmとし、基材として厚みが2μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラー2DC−61」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が120μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例8)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを122.5μmとし、基材として厚みが5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(実施例9)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを102.5μmとし、基材として厚みが45μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(比較例1)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを231μmとし、基材として厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が500μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(比較例2)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを100μmとし、基材として厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が250μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(比較例3)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを41μmとし、基材として厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が120μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(比較例4)
実施例1において、難燃性熱伝導性粘着剤層の厚さを47.5μmとし、基材として厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名「ルミラーS−10」(東レ社製)を用いた他は、実施例1と同様の処方で、総厚が120μmの難燃性熱伝導性粘着剤シートを作製した。
(試験評価)
各実施例および各比較例で得た難燃性熱伝導性粘着シートについて以下の試験を行った。試験結果を表1に示す。
(熱抵抗)
熱抵抗の測定は、図2に示す熱特性評価装置を用いて行った。
具体的には、1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のブロック(ロッドと称する場合もある。)L間に、各実施例および各比較例の難燃性熱伝導性粘着シートS(20mm×20mm)を挟み込み、一対のブロックLを接着シートで貼り合わせた。
そして、一対のブロックLが上下となるように発熱体(ヒーターブロック)Hと放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)Cとの間に配置した。具体的には、上側のブロックLの上に発熱体Hを配置し、下側にブロックLの下に放熱体Cを配置した。
この際、難燃性熱伝導性粘着シートSで貼りあわされた一対のブロックLは、発熱体Hおよび放熱体Cを貫通する一対の圧力調整用ネジTの間に位置している。なお、圧力調整用ネジTと発熱体Hとの間にはロードセルRが配置されており、圧力調整用ネジTを締めこんだ際の圧力が測定されるように構成されており、斯かる圧力を難燃性熱伝導性粘着シートSに加わる圧力として用いた。
また、下側のブロックLおよび難燃性熱伝導性粘着シートSを放熱体C側から貫通するように接触式変位計の3本のプローブP(直径1mm)を設置した。この際、プローブPの上端部は、上側のブロックLの下面に接触した状態になっており、上下のブロックL間の間隔(接着シートSの厚み)を測定可能に構成されている。
発熱体Hおよび上下のブロックLには温度センサーDを取り付けた。具体的には、発熱体Hの1箇所に温度センサーDを取り付け、各ブロックLの5箇所に上下方向に5mm間隔で温度センサーDをそれぞれ取り付けた。
測定はまず初めに、圧力調整用ネジTを締めこんで、難燃性熱伝導性粘着シートSに圧力を加え、発熱体Hの温度を80℃に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。
そして、発熱体Hおよび上下のブロックLの温度が安定した後、上下のブロックLの温度を各温度センサーDで測定し、上下のブロックLの熱伝導率(W/m・K)と温度勾配から難燃性熱伝導性粘着シートSを通過する熱流束を算出するとともに、上下のブロックLと難燃性熱伝導性粘着シートSとの界面の温度を算出した。そして、これらを用いて上記圧力における熱伝導率(W/m・K)および熱抵抗(cm2・K/W)を、下記の熱伝導率方程式(フーリエの法則)を用いて算出した。
Q=−λgradT
R=L/λ
Q:単位面積あたりの熱流速
gradT:温度勾配
L:シートの厚み
λ:熱伝導率
R:熱抵抗
今回、難燃性熱伝導性粘着シートSに加える圧力25N/cm2(250kPa)における熱伝導率(後述)と熱抵抗とを採用した。
(熱伝導性)
熱伝導性の測定は、上記で説明した図2に示す熱特性評価装置を用いて行った。
各実施例および各比較例の難燃性熱伝導性粘着シートS(20mm×20mm)を熱抵抗の測定の場合と同様にして評価装置に装填した。
測定はまず初めに、圧力調整用ネジTを締めこんで、上下のブロックの間に挟み込み難燃性熱伝導性粘着シートSに25N/cm2(250kPa)の圧力を加え、発熱体Hの発熱量30W一定に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。その際、熱電対の温度変化が30秒間で0.02℃以下の場合を安定状態とみなし、シートから最も近いヒーター側の熱電対の温度をモジュール温度として読み取った。
(引張弾性率)
各実施例および各比較例の難燃性熱伝導性粘着シートを評価サンプルとして、初期の長手方向長さ20mm、初期の幅10mm、断面積(厚み方向および長手方向に沿う断面積)が1.2〜5.0mm2となるよう(つまり、実施例1、7および比較例3、4では、0.12mm×10mm=1.2mm2、実施例2、4、6、8、9および比較例2では、0.25mm×10mm=2.5mm2、実施例3、5および比較例1では、0.0.50mm×10mm=5.0mm2)切断した。次いで、測定温度23℃、チャック間距離20mm、引張速度300mm/minで引張試験を行い、評価サンプルの伸びの変化量(mm)を測定した。その結果、得られたS−S曲線の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線が100%伸びに相当するときの引張強度を評価サンプルの断面積で割り、引張弾性率とした。
(難燃性)
各実施例および各比較例で作製した難燃性熱伝導性粘着シートを200mm×50mmの大きさにカットし、両面の剥離フィルムを剥がして円筒状に巻き、各々5つの試験片を得た。試験片の一端を垂直に保持し吊り下げた。バーナーの炎を自由端に最初に3秒間あて、炎から離した後、さらに3秒間炎をあてた。得られた各シートを以下の評価基準に従って、UL94VTM−0の合否を評価した。
なお、実施例5および比較例2は、試験片の厚みが500μmであるが、この場合も他の実施例と同様の手順で評価した。
(1)各試験片の合計有炎燃焼時間(最初の炎をあてた後の燃焼時間と、2回目の炎をあてた後の燃焼時間の合計)が10秒以内である。
(2)各試験片5つの合計有炎燃焼時間の総計が50秒以内である。
(3)2回目に炎をあてた後の各試験片の有炎燃焼時間および無炎燃焼時間が30秒以内である。
(4)いずれかの試験片から燃焼滴下物が落下して下に配置された綿に着火しない。
(5)試験片はいずれもその吊り下げ部分まで燃え尽きない。
○:上記した(1)〜(5)を満たす評価項目数が5個以上である。
×:上記した(1)〜(5)を満たす評価項目数が5個未満である。
表1から明らかなように、実施例1〜9の難燃性熱伝導性粘着シートは、難燃性熱伝導性粘着シートの総厚に対する上記基材の厚みの比が0.2未満のポリエステルフィルムを用いており、高い難燃性(UL94VTM−0)を有することが分かる。また熱抵抗も10cm2・K/W以上であり、熱伝導性も高いことが分かる。
一方、比較例2〜4は、難燃性熱伝導性粘着シートの総厚に対する上記基材の厚みの比が0.2以上のポリエステルフィルムを用いており、UL94 VTM−0の難燃性規格を満足しない。また比較例1は熱抵抗が10cm2・K/W超であるため、熱伝導性に劣り熱伝導性シートとして十分機能しない。