JP2013177354A - 水中での脱水反応による有機化合物の製造方法 - Google Patents

水中での脱水反応による有機化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶性反応基質の水中での脱水反応による有機化合物の製造において、平衡反応である脱水反応を水中において効率的に進行させる有機化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】 水溶性反応基質の水中での脱水反応による有機化合物の製造において、スルホ基(−S(=O)2OH)、または、水中での酸解離定数pkaが2.0以下であり、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホニルイミド構造(−SO2−NH−)、スルホニルメチド基(−SO2−CH(R1)(R2))(R1及びR2は、水素原子以外の有機基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)のいずれかから選ばれる強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質の存在下で脱水反応を行う有機化合物の製造方法。強酸性官能基の金属塩はスルホ基のアルカリ金属塩が好ましい。特に有用な脱水反応は水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを反応基質とするエステル化反応である。
【選択図】なし

Description

本発明は、水中で有機合成反応を行う有機化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、平衡反応である脱水反応を水中で効率的に行う方法に関する。
近年、環境に配慮したグリーンケミストリーの観点から、水中での有機化学反応が注目されている。水中における有機合成反応の開発は、環境負荷の少ないクリーンな化学プロセスへの道を拓くものである。
水中で効率的に有機化学反応を行うことができれば、有機物を含むプラント廃水や水分を多量に含む未精製有機物を反応原料として利用することができる。例えば、バイオエタノールの製造プロセスでは濃縮・脱水(水分除去)工程のエネルギーコストが大きく、未精製のエタノール(水溶液)を反応原料として利用することができれば、原料コストを大幅に下げることが可能となる。
産業上重要な有機化学反応として脱水反応が挙げられるが、これを水中で行うことは従来困難であるとされてきた。例えば、代表的な脱水反応であるカルボン酸とアルコールのエステル化反応は、通常、生成する水を脱水剤の添加あるいは共沸により除去しながら反応するか、片方の反応基質を大過剰用いることにより平衡を生成物側に偏らせている。反応系内に水が存在すると、反応平衡に不利となるため、一般的にエステル化反応を水媒体存在下で行うことは好ましくない。
水中においてエステル化反応を行う方法として、無機塩と炭化水素系溶媒を加えて二相系で反応させる方法が提案されている(独国特許第2050678号明細書;特許文献1)。水層に無機塩を添加することにより塩析効果により有機層中の基質濃度が向上すると共に水分濃度が低下するため、無機塩を加えない場合に比べて平衡収率が向上する。しかし、当該反応では、一度使用した無機塩を回収して再使用する場合、水層からの分離に多大なエネルギーを要するという問題がある。
このような問題の解決方法として、一般的に分離回収したい物質を溶解性のものから非溶解性の固体に変えることが行われる。例えば、水中でのエステル化触媒の例を挙げれば、従来の均一系触媒に代わって、ブレンステッド酸を高分子担体に固定化した固体酸触媒が提案されている(Adv.Synth.Cat.344,270〜273(2002);非特許文献1)。固体酸触媒は反応系からの分離が容易であり、回収後に再使用可能である。
触媒固定化の例が示すように、均一系から不均一系への転換は、分離・回収・再利用の観点から重要である。しかしながら、これまでに無機塩添加の場合と同様な平衡収率向上効果を、非溶解性の固体で発現できた例は報告されていない。仮に、非溶解性の固体を用いて、無機塩による塩析と同様な効果が得られれば、反応系からの分離が容易で、かつ再利用可能となり、コスト削減や環境負荷低減につながる。
独国特許第2050678号明細書
Adv.Synth.Cat.344,270〜273(2002)
本発明の課題は、平衡反応である脱水反応を水中において効率的に進行させる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水中で行う脱水反応において、特定の強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質の存在下で反応させることにより、反応平衡を生成物側にずらすことができ、収率が向上することを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[9]に関する。
[1]水溶性反応基質の水中での脱水反応による有機化合物の製造において、スルホ基(−S(=O)2OH)、または、水中での酸解離定数pkaが2.0以下であり、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホニルイミド構造(−SO2−NH−)、スルホニルメチド基(−SO2−CH(R1)(R2))(R1及びR2は、水素原子以外の有機基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)のいずれかから選ばれる強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質の存在下で脱水反応を行うことを特徴する有機化合物の製造方法。
[2]前記脱水反応が、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを反応基質とするエステル化反応である前項1に記載の有機化合物の製造方法。
[3]前記強酸性官能基がスルホ基である前項1または2に記載の有機化合物の製造方法。
[4]前記強酸性官能基の金属塩がスルホ基のアルカリ金属塩である前項1〜3のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[5]前記強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質が、ビニルスルホン酸とN,N−メチレンビスアクリルアミドとの共重合架橋体の金属塩またはスチレンスルホン酸とジビニルベンゼンとの共重合架橋体の金属塩である前項1〜4のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[6]前記脱水反応の触媒として、固体酸触媒を用いる前項1〜5のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[7]前記固体酸触媒がスルホ基担持ポリマーである前項6に記載の有機化合物の製造方法。
[8]反応開始時は水層のみの一相系で、反応終了時に生成物が水層と層分離して、水層と生成物層の二相系となる前項1〜7のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[9]非水溶性有機溶媒を加えて有機溶媒層と水層の二相系で反応させる前項1〜7のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
本発明の有機化合物の製造方法によれば、水中で効率的に脱水反応が可能となることから、有機物を含むプラント廃水や水分を多量に含む未精製有機物を反応原料として利用することができる。具体的には、未精製カルボン酸や未精製アルコールを反応原料として利用できるほか、工場廃水に含まれる有機物の回収技術に応用できる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その実施の範囲内において様々な応用が可能である。
[脱水反応]
本発明は、水中における脱水反応に適用できる。脱水反応とは、分子内または分子間から水分子が脱離する反応のことであり、反応の結果、不飽和結合、エステル、アミド、エーテルなどの官能基を生じる。脱水反応の例として、アルコールからのオレフィン生成やエーテル生成、アルコールとカルボン酸によるエステル生成、チオールとカルボン酸によるチオエスエル生成、カルボン酸とアミンによる酸アミド生成、カルボン酸による酸無水物生成、糖類によるグリコシド結合生成などが挙げられる。これらの中で本発明を適用した場合の効果の大きさからエステル生成反応、グリコシド結合生成反応が好ましく、産業上の有用性からエステル化反応が最も好ましい。また、本発明の脱水反応では触媒を用いることが好ましい。用いる触媒は、適用する脱水反応の条件、反応基質に応じて適切なものを選択する。酸が触媒として働く脱水反応に対しては、添加する固体高分子電解質に触媒としての機能を併せ持たせることもできる。固体高分子電解質中の強酸性官能基を全て金属塩の形にせずに、一部をブレンステッド酸として残すことにより平衡収率向上効果と触媒機能を兼ね備えた固体高分子電解質となる。水層中における反応基質の濃度は、特に制限されることはなく、目的に合わせて適宜選択される。脱水反応の反応温度には特に制限はなく、目的に応じた反応温度を設定すればよい。
[反応基質]
本発明は、水中における脱水反応に適用されることから、使用する原料は、水溶性の反応基質である。ここで水溶性の反応基質とは、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上のもの言う。本発明を2分子間での脱水反応に適用する場合、2成分の物質量比は、特に制限されることなく、目的に合わせて適宜選択される。
[固体高分子電解質]
本発明で使用する固体高分子電解質は、無機塩と同様なイオン性の物質である。高分子電解質とは、電解質の性質を持つ高分子であり、高分子鎖中に解離基を多数有し、水中でポリイオンと対イオン(ポリイオンと反対符号の電荷を持つ低分子イオン)に解離する。高分子電解質の代表例として、イオン交換膜や燃料電池材料をはじめとして工業的に幅広く利用されているポリスチレンスルホン酸や超吸水性ポリマーであるポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明は、固体高分子電解質の存在下、水中で脱水反応を行うことを特徴とする。固体高分子電解質は水中のイオン濃度を増加させ、反応基質や生成物を水層から排除し、有機層と水層の分離性を向上させる。固体高分子電解質により有機層中の反応基質濃度が向上すると共に、水分濃度が低下するため、平衡収率が向上する。
本発明で使用する高分子電解質は、強酸性官能基の金属塩を構成単位として有する固体高分子電解質である。ここで固体高分子電解質とは、架橋構造の導入などにより、水及び有機溶媒に溶解しない高分子電解質のことを指す。固体高分子電解質の骨格となる高分子構造としてはスチレン−ジビニルベンゼン共重合架橋体、ビニルスルホン酸架橋体などが挙げられる。
また、本発明において強酸性官能基とは、スルホ基のほか、以下の官能基、すなわち、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホニルイミド構造(−SO2−NH−)、スルホニルメチド基(−SO2−CH(R1)(R2))のうち、水中での酸解離定数pkaが2.0以下であるものをいう。さらにpkaは−15.0〜2.0がより好ましい。
本発明において固体高分子電解質が有する強酸性官能基のpkaは、固体高分子電解質の構成単位であるモノマーのpkaで表す。固体高分子電解質の合成方法としては、(1)強酸性官能基を有するモノマーを単独で、あるいは他のモノマーと共重合させることにより直接合成するか、(2)ポリマー主鎖形成後に強酸性官能基を有する化合物をポリマー主鎖に結合させる方法がある。(1)の場合には、合成に用いた強酸性官能基を有するモノマーのpkaを固体高分子電解質の強酸性官能基のpkaとし、(2)の場合には、反応させる強酸性官能基を有する化合物のpkaを採用する。なお、例えば、ホスホノ基のような多価の酸においては、複数のpka値を持ちうるが、そのような場合、本発明では最も低い値のpkaを採用する。
ここで、酸解離定数pkaとは、酸の解離度を示すパラメーターであり、酸の電離定数をKaとすると、pka=−log10Kaで定義され、pkaの値が小さいほど酸として強いことを意味する。pkaは、電位滴定法、紫外可視分光法、核磁気共鳴分光法などを用いて通常25℃、水中で測定されるが、塩酸や硫酸などのように非常に強い酸は水中では溶媒による水平化効果のために正確な測定ができない。水平化効果とは、オキソニウムイオン(H3+、pka=−1.7)よりも強い酸を水中で測定しようとしても、酸は水と完全に反応して、オキソニウムイオンとしての酸の強さを反映してしまうため、見かけ上、酸の強弱がなくなる現象のことである。そのような非常に強い酸の強弱を比較するためには、水よりもプロトン供与能の高い酢酸、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの有機溶媒中で測定したpka値を比較するか、ハメットの酸度関数の値を比較する必要がある。塩酸や硫酸などの水中でのpka値が文献等で示されていることがあるが、これらは有機溶媒中で測定した結果に基づいて、水中での値に換算した推算値である。
本発明において強酸性官能基とは、スルホ基のほか、水中での酸解離定数pkaが2.0以下である官能基のことであるが、この場合のpkaが2.0以下の官能基に該当するのは、水中でのpkaの実測値が2.0以下であったもの、酸性が強すぎて水中では測定できないもの、有機溶媒中での測定結果から換算した水中でのpkaが2.0以下であるものである。
強酸性官能基の例として、スルホ基のほか、隣接する電子求引性原子(F,Cl,Br,Iなど)や電子求引性基(トリフルオロメタンスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、トシル基など)の影響を受けたカルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホニルイミド構造(−SO2−NH−)、スルホニルメチド基(−SO2−CH(R1)(R2))(基中のR1、R2は、水素原子以外の有機基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)などが挙げられる。
水中での酸解離定数pkaが2.0以下である、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基、スルホニルイミド構造、スルホニルメチド基として具体的には、以下の構造式で示されるものが挙げられる。
ここで、構造式中のEWG1及びEWG2は、それぞれフッ素原子(−F)、塩素原子(−Cl)、臭素原子(−Br)、ヨウ素原子(−I)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、パーフルオロアルキル基(−Cn2n+1)、パークロロアルキル基(−CnCl2n+1)、パーフルオロアルキルスルホニル基(−SO2−Cn2n+1)、パークロロアルキルスルホニル基(−SO2−CnCl2n+1)、ペンタフルオロフェニル基(−C65)、ペンタクロロフェニル基(−C6Cl5)、ペンタフルオロフェニルスルホニル基(−SO2−C65)、ペンタクロロフェニルスルホニル基(−SO2−C6Cl5)、アルキルスルホニル基(−SO2−Cn2n+1)、フェニルスルホニル基(−SO2−C65)、アルキルフェニルスルホニル基(−SO2−C64−Cn2n+1)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、カルボキシル基(−COOH)のいずれかから選ばれる原子求引性基であって、nは1〜10の整数である。EWG1とEWG2は同じであっても、異なっていてもよい。mは1〜20の整数である。また、X1、X2、X3及びX4は、水素原子を含む、全ての有機基を表すが、その中で少なくとも一つは高分子骨格と結合する。これらの中で合成の容易さからスルホ基が最も好ましい。
また、強酸性官能基と塩を形成する金属カチオンの例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、一価のアルカリ金属が最も好ましい。二価以上の金属カチオンでは、金属を介して高分子電解質の架橋構造が形成されるため、平衡収率の向上効果が薄くなる。これらの固体高分子電解質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
このとき全強酸性官能基に占める金属塩を形成している強酸性官能基の割合は、特に制限されないが、50〜100mol%が好ましい。さらに好ましくは70〜100mol%であり、最も好ましくは80〜100mol%である。また、固体高分子電解質中の強酸性官能基を全て金属塩の形にせずに、一部をブレンステッド酸として残すことにより、平衡収率向上効果と触媒機能を兼ね備えた固体高分子電解質となる。
スルホ基を有する固体高分子電解質の合成方法としては、スルホ基含有モノマーを単独で、あるいは他のモノマーと共重合させることにより直接合成するか、ポリマー主鎖形成後に高分子反応でスルホ基を導入する方法がある。スルホ基含有モノマーの例としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、4−ビニルベンゼン−1,3−ジスルホン酸などが挙げられる。スルホ基含有モノマーを単独で重合させると、多くの場合、水溶性の高分子電解質を生じるが、二官能性以上の架橋剤と共重合させることにより水への溶解を防ぐことができる。この場合の架橋剤の例として、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。架橋剤の使用量は、特に制限されずに目的に応じて適宜選択できるが、高分子電解質中の架橋剤の含有率は、0.1〜30mol%が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜20mol%であり、最も好ましくは0.1〜10mol%である。架橋剤の使用量は、高分子電解質の物性に大きく影響し、架橋剤の含有率が大きいほど水で膨潤しにくくなり、平衡収率向上効果が小さくなる傾向がある。そのため、高分子電解質が水に溶解しない範囲で、可能な限り架橋剤の使用量を減らすことが望ましいが、少なすぎると耐久性が低くなる問題が生じる。
ポリマー主鎖形成後に高分子反応でスルホ基を導入する方法としては、主鎖となるポリマーにスルホ基と炭素炭素二重結合を有する化合物をグラフトする方法が挙げられる。
スルホ基以外にカルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基、スルホニルイミド構造、スルホニルメチド基を有する固体高分子電解質の合成方法についても同様に、(1)強酸性官能基を有するモノマーを単独で、あるいは他のモノマーと共重合させることにより直接合成するか、(2)ポリマー主鎖形成後に強酸性官能基を有する化合物をポリマー主鎖に結合させる方法がある。
強酸性官能基を金属塩にする方法としては、特に制限されない。固体高分子電解質の合成の際に、最初から金属塩の状態に変換済みのモノマーを用いる方法や、重合または高分子反応により先に強酸性官能基を導入済みの固体高分子電解質に対して、後から金属塩に変換する方法がある。いずれの場合も強酸性官能基のカチオン交換により、金属塩が形成されることになる。具体的には、強酸性官能基を有するモノマーまたは固体高分子電解質に対して、変換したい金属カチオンを含む塩を溶解させた溶液を接触させることによりカチオン交換することができる。例えば、Na塩にする場合には、水酸化ナトリウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液を用いるのが一般的である。また、固体高分子電解質のカチオン交換を行う場合、バッチ法で過剰量の塩の溶液と接触させても良いが、固体高分子電解質を充填したカラムに塩の溶液を流してカチオン交換を行う連続法も採用できる。
[非水溶性有機溶媒]
本発明においては、反応系に非水溶性有機溶媒を加えて非水溶性有機溶媒層と水層の二相系で反応させてもよい。非水溶性有機溶媒を加えずに反応を行った場合、反応初期では水層のみの一相系で反応するが、反応の進行に伴い生成物によって次第に有機層が形成される。
反応系に抽出溶剤として非水溶性有機溶媒を加えた場合、反応基質の有機層側への分配が大きくなるため平衡収率が向上する。また、生成物の水層への溶け込みを抑制することができることから、生成物を効率よく水層と分離できる。しかし、非水溶性有機溶媒を加えた場合、脱水反応の後工程で、非水溶性有機溶媒と生成物を蒸留等により分離する必要があるため、非水溶性有機溶媒の添加による利点と分離に要するコスト等を考慮して反応条件を決定する。
本発明において、非水溶性有機溶媒とは20℃における水への溶解度が10g/L以下であるものを言う。非水溶性有機溶媒は、水と混和せずに2層に分離することに加えて、反応基質と反応しないことが必要である。そのような有機溶媒の例としては、飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素、飽和及び不飽和の脂環族炭化水素、芳香族化合物、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類などが挙げられる。これらの中でも、20℃における水への溶解度が10g/L以下であるものが好ましい。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ドデセン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン、ドデシンなどの飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、デカリンなどの飽和及び不飽和の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、アニソールなどの芳香族化合物、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。さらに好ましくは、20℃における水への溶解度が5g/L以下のものであり、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ドデセン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン、ドデシン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、アニソール、四塩化炭素、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、収率向上の観点から非水溶性有機溶媒として、生成物の溶解性が高いものを選択するのが好ましい。
ここで、一般的に2成分系溶液の溶解度の目安として、ヒルデブラントの溶解パラメーター(δ)が用いられる。ヒルデブラントの溶解パラメーター(δ)とは、式(1)に示すように単位体積あたりの液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根で定義される値であり、ある2成分において、溶解パラメーターの値の差が小さいほど溶解度が大きくなることが経験的に知られている。
式中、δは溶解パラメーター(MPa1/2)、ΔHはモル蒸発熱(J/mol)、Rは気体定数(8.3145J/K・mol)、Vmはモル体積(m3/mol)、Tは絶対温度(K)を表す。
したがって、本発明では、生成物と非水溶性有機溶媒の溶解パラメーターの差が3以内である非水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。例えば、生成物が酢酸エチルの場合、25℃における溶解パラメーター(18.6)に対して、差が3以内である非水溶性有機溶媒としては、シクロペンタン(17.8)、シクロヘキサン(16.8)、デカリン(18.0)、ベンゼン(18.7)、トルエン(18.2)、キシレン(18.0)、メシチレン(18.0)、ニトロベンゼン(20.5)、テトラリン(19.4)、クロロベンゼン(19.4)、ジクロロベンゼン(20.5)、アニソール(19.5)、四塩化炭素(17.6)、ジブチルエーテル(16.0)、ジベンジルエーテル(19.2)などが挙げられる。
これら溶解パラメーターの差が3以内である非水溶性有機溶媒の中でも酢酸エチルの分配が有機層に著しく偏るトルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、アニソールがさらに好ましく、トルエンが最も好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
[エステル化反応]
触媒:
本発明のエステル化反応では触媒を用いることが好ましい。触媒としては、適用する脱水反応の条件、反応基質に応じて適切なものを選択する。エステル化反応の場合、均一系触媒の例としては、硫酸、塩酸、燐酸のような無機酸やメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸が挙げられる。また、触媒の反応系からの分離の容易さ及び回収再使用を考慮すると、不均一系触媒である固体酸触媒を使用することがより好ましい。固体酸触媒は、固体表面にブレンステッド酸あるいはルイス酸の酸点を有すものであれば、特に制限されることなく、一般的な固体酸が使用可能である。固体酸触媒の例として、強酸性イオン交換樹脂に代表されるスルホ基担持ポリマー、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、ZrO2やTiO2等の金属酸化物、SiO2−Al23等の複合酸化物、担持ヘテロポリ酸、担持希土類金属塩などが挙げられる。これらの中でも、反応速度や取扱いの容易さから、強酸性イオン交換樹脂等のスルホ基担持ポリマーが好ましい。これらの固体酸触媒は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、触媒表面の酸点の量及び固体形状については、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択すればよい。
スルホ基担持ポリマーとは、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホ基含有モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーやポリマー主鎖にスルホ基が化学的に結合しているポリマーである。製造方法としては、これらスルホ基含有モノマーを単独で、あるいは他のモノマーと重合させることにより直接合成するか、ポリマー主鎖形成後に高分子反応でスルホ基を導入する方法がある。スルホ基担持ポリマーの具体例としては、陽イオン交換樹脂として用いられるジビニルベンゼン架橋のポリスチレンスルホン酸が挙げられる。スルホ基担持ポリマー中のスルホ基のローディング量(触媒1gあたりのスルホ基担持量)は、特に制限はないが、触媒活性の観点から0.2〜5.0mmol/gの範囲が好ましい。スルホ基ローディング量が低いほどエステル化の触媒活性が向上することが分かっており、ローディング量が5.0mmol/gを超えると十分な触媒活性が得られないことがある。また、ローディング量が0.2mmol/gよりも低いと反応に必要な触媒体積が大きくなりすぎて工業的には望ましくない。均一系触媒であるメタンスルホン酸よりも高い触媒活性が得られる0.2〜3.5mmol/gがより好ましく、最も好ましくは0.2〜1.5mmol/gである。
反応基質:
エステル化反応の場合、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを反応基質として用いる。
水溶性カルボン酸は、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上のカルボン酸であり、具体例として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸(ブタン酸)が挙げられる。
また、水溶性アルコールは、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上のアルコールであり、具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブタノールが挙げられる。
水溶性カルボン酸と水溶性アルコールの組合せとしては、工業的使用量の多い酢酸とエタノールが好ましい。
エステル化原料として用いる水溶液は、これら水溶性アルコール及び/または水溶性カルボン酸を含むものであれば、他の有機成分を含んでいてもよい。これら水溶液の例として、水溶性アルコール及び/または水溶性カルボン酸を含んだ工場廃水が挙げられる。工場廃水はそのまま、あるいは抽出、蒸留等の手法により、有機成分を濃縮した水溶液を用いることもできる。水溶性アルコールまたは水溶性カルボン酸の一方しか含有していない場合は他方を水溶液に追加してエステル化反応に供することになる。
反応様式:
アルコールとカルボン酸のエステル化反応では、アルコールとカルボン酸の物質量比は、アルコール/カルボン酸のモル比で、0.1〜10の範囲が好ましい。反応後に残存する未反応のアルコール及びカルボン酸を減らす観点から、アルコール/カルボン酸のモル比は0.5〜2の範囲がさらに好ましく、1が最も好ましい。
エステル化反応の場合、原料として用いる水溶性アルコール及び/または水溶性カルボン酸を含む水溶液の濃度は、水溶性アルコールと水溶性カルボン酸の濃度の合計が1〜90質量%が好ましく、10〜90質量%がさらに好ましい。濃度が90質量%より大きくなると、固体高分子電解質を加えて反応平衡をずらす本発明の利点が薄くなる。また、1質量%より低いと、反応速度が遅くなり、現実的ではない。
固体高分子電解質の添加量は、反応開始時に系内に存在する水100質量部に対して、10〜200質量部が好ましい。さらに好ましくは、30〜100質量部である。添加量が10質量部より少ないと、収率向上効果が小さく、添加量を200質量部より大きくしてもエステル化収率はあまり変化しない。固体高分子電解質の添加量は、使用する固体高分子電解質の物性及び目的の収率に応じて適宜選択される。
エステル化反応で用いる酸触媒の使用量(固体酸触媒の場合は、酸点の総量)は、反応させようとする反応基質のいずれか少ない方に対して、0.1〜200モル%であることが好ましく、1〜20モル%がさらに好ましい。1モル%より少ない量で行うと好ましい反応速度が得られず、200モル%より多い量では触媒にかかるコストが増大し経済的に好ましくない。
エステル化反応の反応温度は、20〜120℃の範囲が好ましく、25〜90℃の範囲がさらに好ましい。温度が低すぎると反応速度が遅く、120℃を超えるとエネルギーコストが掛かり好ましくない。
また、反応時間にも特に制限なく、目的に応じた反応時間を選択することができる。反応時間は、基質濃度、温度、触媒量、触媒活性により異なるが、好ましくは10分〜100時間の範囲、さらに好ましくは10分〜24時間の範囲、さらに好ましくは10分〜10時間の範囲である。
非水溶性有機溶媒を加える場合の添加量は、有機溶媒/水層の質量比で0.1〜2の範囲が好ましく、0.1〜1の範囲が最も好ましい。0.1より小さいと非水溶性有機溶媒の添加効果が薄く、2より増やしてもあまり収率は向上しない。また、多量の有機溶媒の使用は、分離コストの観点からも好ましくない。
反応系からの固体高分子電解質の分離方法は、特に制限されることなく、一般的な固液分離方法が適用できる。例えば、ろ過分離、遠心分離、沈降分離などがあり、分離効率、所要時間、高分子電解質の形状などを考慮して適切な方法を選択できる。固液分離により回収した固体高分子電解質は、そのまま、あるいは再生処理を施した上で再び反応系に戻して再利用することができる。
固体酸触媒を用いた場合、上記の固体高分子電解質の分離の際に、固体酸触媒も同時に反応系から分離されることになる。固液分離により回収した固体酸触媒と固体高分子電解質は、そのまま、あるいは再生処理を施した上で再び反応系に戻して再利用することができる。この場合、新たに触媒を追加することなく反応を行うことができる。
脱水反応により得られた生成物の回収方法は、特に制限されることなく種々の方法が選択できる。生成物は、有機層に主に分配することから、有機層と水層を公知の方法(例えば静置分離法)で分離し、有機層から蒸留などの方法により生成物を回収することができる。特に、非水溶性有機溶媒を加えずに反応を行った場合には、有機層は生成物の高濃度溶液であるから、精製コストを下げることができる。
[他の脱水反応]
エステル化反応以外に本発明が適用可能な脱水反応として、糖類によるグリコシド結合生成、アルコールからのオレフィン生成やエーテル生成、チオールとカルボン酸によるチオエスエル生成、カルボン酸とアミンによる酸アミド生成、及びカルボン酸による酸無水物生成が挙げられる。これらの中でも糖類によるグリコシド結合生成が好適である。
[糖類によるグリコシド結合生成反応]
触媒:
糖類によるグリコシド結合生成反応では触媒を用いることが好ましい。触媒としては、エステル化反応の項で記したものと同一の触媒が使用できる。
反応基質:
グリコシド結合生成反応における反応基質となる糖は、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上の水溶性糖であり、ヘミアセタール水酸基あるいはメチル化されたヘミアセタール水酸基を有する単糖もしくはオリゴ糖であればよく、構成炭素数やヘミアセタール水酸基以外の水酸基の数、修飾基の数や種類などによって特別の制限は受けない。具体例としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、タロース、フルクトース、ソルボース、タガロース、アラビノース、キシロース、リボース、リブロース、リキソースなどの単糖、マルトース、ラクトース、マルトトリオース、セロビオースなどのオリゴ糖、シアル酸、またはこれらの誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、ヘミアセタール水酸基以外の水酸基がベンジル基やアセチル基で保護されている糖などが挙げられる。これらの中でもグルコース、ガラクトース、フルクトースなどが好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
反応様式:
グリコシド結合生成反応では、糖の物質量比は、モル比で、0.1〜10の範囲が好ましい。0.5〜2の範囲がさらに好ましく、1が最も好ましい。
原料として用いる糖水溶液の濃度は、1〜90質量%が好ましく、10〜90質量%がさらに好ましい。濃度が90質量%より大きくなると、固体高分子電解質を加えて反応平衡をずらす本発明の利点が薄くなる。また、1質量%より低いと、反応速度が遅くなり、現実的ではない。
グリコシド結合生成反応の固体高分子電解質の添加量は、反応開始時に系内に存在する水の100質量部に対して、10〜200質量部が好ましい。さらに好ましくは、30〜100質量部である。添加量が10質量部より少ないと、収率向上効果が小さく、添加量を200質量部より大きくしてもエステル化収率はあまり変化しない。固体高分子電解質の添加量は、使用する固体高分子電解質の物性及び目的の収率に応じて適宜選択される。
グリコシド結合生成反応の酸触媒の使用量(固体酸触媒の場合は、酸点の総量)は、反応させようとする反応基質のいずれか少ない方に対して、0.1〜200モル%であることが好ましく、1〜20モル%がさらに好ましい。1モル%より少ない量で行うと好ましい反応速度が得られず、200モル%より多い量では触媒にかかるコストが増大し経済的に好ましくない。
グリコシド結合生成反応の反応温度は、20〜120℃の範囲が好ましく、25〜90℃の範囲がさらに好ましい。温度が低すぎると反応速度が遅く、120℃を超えるとエネルギーコストが掛かり好ましくない。
また、反応時間にも特に制限なく、目的に応じた反応時間を選択することができる。反応時間は、基質濃度、温度、触媒量、触媒活性により異なるが、好ましくは10分〜100時間の範囲、さらに好ましくは10分〜24時間の範囲、さらに好ましくは10分〜10時間の範囲である。
非水溶性有機溶媒を加える場合の添加量は、有機溶媒/水層の質量比で0.1〜2の範囲が好ましく、0.1〜1の範囲が最も好ましい。0.1より小さいと非水溶性有機溶媒の添加効果が薄く、2より増やしてもあまり収率は向上しない。また、多量の有機溶媒の使用は、分離コストの観点からも好ましくない。
反応系からの固体高分子電解質や固体酸触媒の分離方法はエステル化反応と同様である。
以下、固体高分子電解質の合成例、固体酸触媒の合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
合成例1:固体高分子電解質(PVNa−4%MBAm−1)の合成
100mLフラスコにビニルスルホン酸(280mmol、30.27g、旭化成ファインケム社製)、架橋剤であるN,N−メチレンビスアクリルアミド(11.2mmol、1.73g、ビニルスルホン酸に対して4mol%相当)、開始剤として過酸化ベンゾイル(0.15mmol、0.047g)を加えた後、フラスコを氷冷しながらN,N−ジメチルホルムアミド(14mL)を加えて溶解させた。フラスコ内を窒素雰囲気に置換した後、60℃で撹拌して重合反応を行った。2時間程で反応混合液は固形化したが、そのまま60℃で24時間維持した。得られた架橋ポリビニルスルホン酸を水及びテトラヒドロフランで洗浄後、ろ過で回収した。
スルホ基をH型からNa型へ変換するために、水で膨潤した架橋ポリビニルスルホン酸に対して、3N水酸化ナトリウム水溶液(200mL)を加えて1時間撹拌後、ポリマーをろ別するという一連の操作を3回繰り返した。ポリマーをろ液が中性になるまで水洗した後、60℃で1週間、減圧乾燥した。得られた架橋ポリビニルスルホン酸ナトリウムの収量は、17.52gであり、収率46%であった。燃焼−イオンクロマトグラフィー法により、ポリマー中の含有硫黄原子を定量してスルホ基のローディング量(ポリマー1gあたりのスルホ基含有量)を求めたところ、6.7mmol/gであった。この値からポリマー鎖中のビニルスルホン酸ナトリウムユニットの含有率を算出すると、89mol%であった。この合成した架橋ポリビニルスルホン酸ナトリウムをPVNa−4%MBAm−1とする。
合成例2:固体高分子電解質(PS−2%DVB−SO3Na−1)の合成
窒素雰囲気下、塩化チオニル(1.81mol、132mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)に溶解させた混合液に、氷冷しながらスチレンスルホン酸ナトリウム(454mmol、93.5g、使用前に80℃で24時間、減圧乾燥済み)を少しずつ加えた後、0℃で2時間撹拌した。反応後、氷水に反応液を少しずつ加えた後、トルエンで抽出した。抽出した有機層を水、ブライン(塩化ナトリウム飽和水溶液)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮することにより、p−スチレンスルホニルクロリドを85.5g、収率93%で得た。生成したp−スチレンスルホニルクロリドの構造は、1H NMR(CDCl3)で確認した。
p−スチレンスルホニルクロリド(123mmol、25.0g)、p−ジビニルベンゼン(2.47mmol、0.321g、p−スチレンスルホニルクロリドに対して2mol%相当)及び2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(4.92mmol、0.810g)をN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解させた後、窒素雰囲気下、70℃で64時間撹拌した。反応後、得られたポリマーをろ別し、メタノール及び水で洗浄した。
洗浄したポリマーに5%水酸化ナトリウム水溶液(250mL)、エタノール(50mL)を加えて、40℃で48時間撹拌した。ポリマーをろ液が中性になるまでろ過で水洗した後、60℃で減圧乾燥した。得られた架橋ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの収量は、7.98gであり、重合反応とその後のアルカリ加水分解反応の通し収率31%であった。燃焼−イオンクロマトグラフィー法により、ポリマー中の含有硫黄原子を定量してスルホ基のローディング量(ポリマー1gあたりのスルホ基含有量)を求めたところ、4.6mmol/gであった。この値からポリマー鎖中のスチレンスルホン酸ナトリウムユニットの含有率を算出すると、92mol%であった。この合成した架橋ポリスチレンスルホン酸ナトリウムをPS−2%DVB−SO3Na−1とする。
合成例3:固体酸触媒(PS−SO3H−1)の合成
ポリスチレンビーズ(20.0g,Advanced ChemTech社製ポリスチレン,200〜400メッシュ,1%ジビニルベンゼン(DVB))のジクロロメタン(200mL)分散液に、0℃でクロロスルホン酸(18.6g,160mmol)をゆっくりと加え、6時間撹拌した。その後、酢酸(100mL)を加え、室温でさらに1時間撹拌した。得られた樹脂をろ過で回収し、水、水/テトラヒドロフラン(THF)、THF、及びジクロロメタンで洗浄した後、真空乾燥して目的のPS−SO3H触媒(36.0g)を得た。燃焼−イオンクロマトグラフ法により、含有硫黄原子を定量してスルホ基のローディング量(触媒1gあたりのスルホ基担持量)を求めたところ、4.09mmol/gであった。この触媒をPS−SO3H−1とする。
実施例1:
50質量%酢酸水溶液3.0g(酢酸25mmol、1.5g含有)、エタノール(25mmol、1.15g)、PS−SO3H−1(0.31g、スルホ基換算で1.25mmol相当)、PVNa−4%MBAm−1(0.75g、水の質量に対して50質量%相当)をガラス製フラスコに加えた。オイルバスで40℃に加熱し、48時間撹拌してエステル化反応を行った。反応初期は水層のみの一相系反応であったが、反応終了時には有機層と水層に二層分離しており、上澄みを抜き出すことにより容易に酢酸エチルを含んだ有機層を回収できた。ガスクロマトグラフィーで分析することで酢酸エチル収率を求めたところ、51%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例1(収率42%)に比べて、大幅に平衡収率が向上した。反応後、使用済みのPVNa−4%MBAm−1とPS−SO3H−1との混合物は、ろ過により容易に回収できた。回収したPVNa−4%MBAm−1とPS−SO3H−1の混合物を乾燥後、同一反応条件で再びエステル化反応に用いたところ、酢酸エチル収率は、50%であった。このように固体高分子電解質と固体酸触媒を組み合わせることによりろ過により容易に触媒と高分子電解質を回収可能となり、特別な再生処理をせずにそのまま再利用することができた。
比較例1:
固体高分子電解質PVNa−4%MBAm−1を加えなかったこと以外は実施例1と同様の反応条件で行った。反応終了時、生成した酢酸エチルは水層に溶解して二層分離していなかった。そこで触媒をろ過で分離後、水層をガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めた。酢酸エチル収率は、42%であった。
実施例2:
固体高分子電解質として、PVNa−4%MBAm−1の代わりにPS−2%DVB−SO3Na−1を(0.75g、水の質量に対して50質量%相当)用いた以外は実施例1と同様の反応条件で行った。反応初期は水層のみの一相系反応であったが、反応終了時には酢酸エチル層と水層に二層分離しており、上澄みを抜き出すことにより容易に酢酸エチルを含んだ有機層を回収できた。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、49%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例1(収率42%)に比べて、大幅に平衡収率が向上した。反応後、使用済みのPS−2%DVB−SO3Na−1とPS−SO3H−1との混合物は、ろ過により容易に回収できた。
実施例3:
非水溶性有機溶媒としてトルエン(6.0g)を加えたこと以外は実施例1と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、固体高分子電解質と触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、75%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例2(収率71%)に比べて、平衡収率が向上した。このように固体高分子電解質と固体酸触媒を組み合わせることによりろ過により容易に回収可能となった。
比較例2:
固体高分子電解質PVNa−4%MBAm−1を加えなかったこと以外は実施例3と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、71%であった。
実施例4:
非水溶性有機溶媒としてトルエン(6.0g)を加えたこと以外は実施例2と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、固体高分子電解質と触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、75%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例2(収率71%)に比べて、平衡収率が向上した。また、固体高分子電解質と固体酸触媒を組み合わせることによりろ過により容易に回収可能となった。
実施例5:
触媒としてPS−SO3H−1の代わりにメタンスルホン酸(0.12g、1.25mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、固体高分子電解質をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、78%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例3(収率72%)に比べて、大幅に平衡収率が向上した。また、固体高分子電解質は、ろ過により容易に回収可能であった。
比較例3:
固体高分子電解質PVNa−4%MBAm−1を加えなかったこと以外は実施例5と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、分液漏斗で有機層と水層に分離した後、ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、酢酸エチル収率は、72%であった。
実施例6:
触媒としてPS−SO3H−1の代わりにメタンスルホン酸(0.12g、1.25mmol)を用いたこと以外は、実施例4と同様の反応条件で行い、有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、固体高分子電解質をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、78%であった。固体高分子電解質を加えていない比較例3(収率72%)に比べて、大幅に平衡収率が向上した。また、固体高分子電解質は、ろ過により容易に回収可能であった。
比較例4:
50質量%酢酸水溶液3.0g(酢酸25mmol、1.5g含有)、エタノール(25mmol、1.15g)、メタンスルホン酸(0.12g、1.25mmol)、トルエン(6.0g)、塩化ナトリウム(0.6g、水の質量に対して40質量%相当)をガラス製フラスコに加えた。オイルバスで40℃に加熱し、48時間撹拌して有機層と水層の二相系でエステル化反応を行った。反応終了後、分液漏斗で有機層と水層に分離した後、ガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、80%であった。反応後、使用済みの塩化ナトリウムは、水層に溶解して析出も見られなかったため、ろ過による回収はできなかった。
実施例1〜6、及び1〜4の結果を表1に示す。

Claims (9)

  1. 水溶性反応基質の水中での脱水反応による有機化合物の製造において、スルホ基(−S(=O)2OH)、または、水中での酸解離定数pkaが2.0以下であり、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホニルイミド構造(−SO2−NH−)、スルホニルメチド基(−SO2−CH(R1)(R2))(R1及びR2は、水素原子以外の有機基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)のいずれかから選ばれる強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質の存在下で脱水反応を行うことを特徴する有機化合物の製造方法。
  2. 前記脱水反応が、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを反応基質とするエステル化反応である請求項1に記載の有機化合物の製造方法。
  3. 前記強酸性官能基がスルホ基である請求項1または2に記載の有機化合物の製造方法。
  4. 前記強酸性官能基の金属塩がスルホ基のアルカリ金属塩である請求項1〜3のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
  5. 前記強酸性官能基の金属塩を有する固体高分子電解質が、ビニルスルホン酸とN,N−メチレンビスアクリルアミドとの共重合架橋体の金属塩またはスチレンスルホン酸とジビニルベンゼンとの共重合架橋体の金属塩である請求項1〜4のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
  6. 前記脱水反応の触媒として、固体酸触媒を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
  7. 前記固体酸触媒がスルホ基担持ポリマーである請求項6に記載の有機化合物の製造方法。
  8. 反応開始時は水層のみの一相系で、反応終了時に生成物が水層と層分離して、水層と生成物層の二相系となる請求項1〜7のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
  9. 非水溶性有機溶媒を加えて有機溶媒層と水層の二相系で反応させる請求項1〜7のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
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