JP2013177353A - カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体酸触媒を用いた水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを用いた水中でのエステル化反応において、効率的なカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを水中で反応させるエステル化反応において、固体酸触媒の存在下、前記水溶性カルボン酸と前記水溶性アルコールを含む水溶液に無機塩を加えるカルボン酸エステルの製造方法。無機塩としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムが好ましく、固体酸触媒としてはスルホ基担持ポリマーなどが用いられる。無機塩は、エステル化反応が定量的に進行した場合に生成する水の理論量と溶媒の水との合計量に対する飽和溶解量の0.05〜1.0倍量使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、水中で脱水縮合反応を行うカルボン酸エステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールの水中エステル化反応において、無機塩を加えて効率的に反応を行う方法に関する。
カルボン酸とアルコールとの脱水エステル化反応は平衡反応であるため、通常、生成する水を脱水剤の添加あるいは共沸により除去しながら反応するか、片方の反応基質を大過剰用いることで平衡を生成物側に偏らせている。反応系内に水が存在すると、反応平衡に不利となるため、一般的にエステル化反応を水層中で行うことは好ましくない。
近年、環境へ配慮したグリーンケミストリーの観点から、水中での有機化学反応が注目されており、廃棄物削減やエネルギーの効率利用といった環境負荷低減につながる技術として開発されている。水中で効率的に有機化学反応を行うことができれば、有機物を含むプラント廃水や水分を多量に含む未精製有機物を反応原料として利用することができる。例えば、バイオエタノールの製造プロセスでは濃縮・脱水工程のエネルギーコストが大きく、未精製のエタノール(水溶液)を反応原料として利用することができれば、原料コストを大幅に下げることが可能となる。
水中においてエステル化反応を行う方法として、ブレンステッド酸を高分子担体に固定化した固体酸触媒を用いる方法が報告されている(Adv.Synth.Cat.344,270〜273(2002);非特許文献1)。しかし、この反応において適用可能な基質は、親油性のカルボン酸と親油性のアルコールの組み合わせに限られており、水溶性のカルボン酸または水溶性のアルコールを用いたエステル化反応に適用することはできない。
このような固体酸触媒の利用は、反応系からの分離が容易であり、回収後に再利用可能であることから、均一系触媒と比較してコスト削減や環境負荷低減につながる。塩酸やp−トルエンスルホン酸といった均一系触媒を用いると、生成物中に微量に溶存した触媒の分離にエネルギーを要することや、触媒が廃水と一緒に流出するため排水処理コストが問題となる。そのため水中エステル化反応を工業的に実用化するためには、反応系内に触媒を保持できる固体酸触媒の使用が望まれる。
水溶性のカルボン酸と水溶性のアルコールを反応させる水中エステル化反応の例として、無機塩を含む水溶液と炭化水素系溶媒を加えて二相系で反応させる方法が提案されている(DE2050678;特許文献1)。しかし、この反応において用いられている触媒は、塩酸をはじめとする均一系触媒であるため、触媒コスト及び排水処理コストが大きな負担となる。無機塩及び触媒を含んだ水溶液を回収して、再利用する方法も記載されているが、反応により増加した分の水を蒸留により分離する必要がある。エステル化原料としてカルボン酸またはアルコールの低濃度水溶液を用いる場合、多量の水を留去することになるため、エネルギーコスト的に見合わない。また、この反応では、無機塩を含む水溶液に対して4〜20倍程度の炭化水素系溶媒を共存させる必要があるが、多量の有機溶媒の使用は精製コストの観点から好ましくなく、有機溶媒の使用量を最小限あるいは有機溶媒を使用せずとも水中で効率的にエステル化反応が行える技術の開発が望まれる。
その他の水中エステル化反応で無機塩を用いる例として、ヒドロキシカルボン酸水溶液と炭素数4以上のアルコールを無機塩の存在下、水層とアルコール層の二相系で反応させる方法が知られている(特開平7−10805号公報;特許文献2)。この場合も触媒として硫酸などの均一系触媒が用いられており、反応系内から触媒が流出する問題がある。
独国特許第2050678号明細書 特開平7−10805号公報
Adv.Synth.Cat.344,270〜273(2002)
本発明の課題は、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを用いた水中での効率的なエステル化反応において、効率的なカルボン酸エステルの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールの水中エステル化反応において、固体酸触媒の存在下、水溶液に無機塩を加えて反応させることにより、反応平衡を生成物側にずらすことができ、収率が大幅に向上することを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[9]に関する。
[1]水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを水中で反応させるエステル化反応において、固体酸触媒の存在下、前記水溶性カルボン酸と前記水溶性アルコールを含む水溶液に無機塩を加えることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
[2]前記無機塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛のいずれかの金属カチオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオンのいずれかのアニオンとの組み合わせである前項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[3]前記無機塩のカチオンがリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅のいずれかである前項2に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[4]前記無機塩のアニオンが塩素イオンである前項2または3に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[5]前記無機塩が塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムのいずれかである前項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[6]前記無機塩の添加量が、エステル化反応が定量的に進行した場合に生成する水の理論量と溶媒として使用する水との合計量の、反応温度における飽和溶解量の0.05〜1.0倍である前項1〜5のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[7]前記固体酸触媒がスルホ基担持ポリマーである前項1〜6のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[8]エステル化反応により生成するカルボン酸エステルが水に不溶性であり、反応開始時は水層のみの一相系で、反応終了時に生成エステルが水層と層分離して、水層とエステル層の二相系となる前項1〜7のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[9]非水溶性有機溶媒を加えて有機溶媒層と水層の二相系でエステル化反応をさせる前項1〜7のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
本発明のカルボン酸エステルの製造方法によれば、水中でのエステル化反応が可能となることから、水分を多量に含んだ未精製カルボン酸やアルコールを反応原料として利用できるほか、工場廃水等に含まれる有機物(水溶性アルコール及び/または水溶性カルボン酸)の回収技術に応用できる。
各種無機塩を飽和溶解量及びそれより少ない量添加した実施例における酢酸エステルの収率を対比したグラフである。 1〜50質量%酢酸水溶液を用いた実施例32〜36(飽和溶解量の塩化カルシウム添加)と比較例7〜11(無機塩添加なし)の酢酸エステルの収率を対比したグラフである。
以下、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その実施の範囲内において様々な応用が可能である。
[無機塩]
本発明は、無機塩の存在下で水中エステル化反応を行うことを特徴としている。無機塩は水中のイオン濃度を増加させ、カルボン酸やアルコール、生成エステルを水層から排除し、有機層と水層の分離性を向上させる。無機塩添加により有機層中の反応基質濃度が向上するとともに、水分濃度が低下するため、平衡収率及び反応速度が向上する。
本発明で用いる無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛のいずれかの金属カチオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオンのいずれかのアニオンとの組み合わせからなる塩が好ましい。これら無機塩の具体例として、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化スカンジウム、塩化イットリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、塩化ニッケル(II)、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、塩化鉄(III)、硝酸ナトリウムなどが挙げられる。また、カチオンとして、収率向上効果の観点から、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅のいずれかであることが好ましく、無機塩のコストの観点からアニオンは、塩素イオンであることが好ましい。これらの中でも廃水として流した際の環境負荷の観点から塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムがさらに好ましい。収率向上効果の大きさ、無機塩コスト、環境負荷等全てを考慮すると、塩化カルシウムが最も好ましい。これらの無機塩は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[触媒]
本発明では不均一系の触媒である固体酸触媒を用いる。固体酸触媒は、固体表面にブレンステッド酸あるいはルイス酸の酸点を有すものであれば、特に制限されることなく、一般的な固体酸が使用可能である。固体酸触媒の例として、強酸性イオン交換樹脂に代表されるスルホ基担持ポリマー、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、ZrO2やTiO2等の金属酸化物、SiO2−Al23等の複合酸化物、担持ヘテロポリ酸、担持希土類金属塩などが挙げられる。これらの中でも、反応速度や取り扱いの容易さから、強酸性イオン交換樹脂等のスルホ基担持ポリマーが好ましい。これらの固体酸触媒は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、触媒表面の酸点の量及び固体形状については、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択すればよい。
スルホ基担持ポリマーとは、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホ基含有モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーやポリマー主鎖にスルホ基が化学的に結合しているポリマーである。製造方法としては、これらスルホ基含有モノマーを単独で、あるいは他のモノマーと重合させることで直接合成するか、ポリマー主鎖形成後に高分子反応でスルホ基を導入する方法がある。スルホ基担持ポリマーの具体例としては、陽イオン交換樹脂として用いられるジビニルベンゼン架橋のポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
スルホ基担持ポリマー中のスルホ基のローディング量(触媒1gあたりのスルホ基担持量)は、特に制限はないが、触媒活性の観点から0.2〜5.0mmol/gの範囲が好ましい。スルホ基ローディング量が低いほどエステル化の触媒活性が向上することが分かっており、ローディング量が5.0mmol/gを超えると十分な触媒活性が得られないことがある。また、ローディング量が0.2mmol/gよりも低いと反応に必要な触媒体積が大きくなりすぎて工業的には望ましくない。均一系触媒であるメタンスルホン酸よりも高い触媒活性が得られる0.2〜3.5mmol/gがより好ましく、0.2〜1.5mmol/gが最も好ましい。
[反応基質]
本発明で用いるエステル化原料は、水溶性カルボン酸と水溶性アルコールである。水溶性カルボン酸は、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上のカルボン酸であり、具体例として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸(ブタン酸)が挙げられる。
また、水溶性アルコールは、1気圧、温度20℃において水への溶解度が200g/L以上のアルコールであり、具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブタノールが挙げられる。水溶性カルボン酸と水溶性アルコールの組み合わせとしては、工業的使用量の多い酢酸とエタノールが好ましい。
また、エステル化反応の溶媒として用いる水溶液は、水溶性アルコール及び水溶性カルボン酸以外に他の有機成分を含んでいてもよい。これら水溶液の例として、水溶性アルコール及び/または水溶性カルボン酸を含んだ工場廃水が挙げられる。工場廃水はそのまま、あるいは抽出、蒸留等の手法により、有機成分を濃縮した水溶液を用いることもできる。水溶性アルコールまたは水溶性カルボン酸の一方しか含有していない場合は他方を水溶液に追加してエステル化反応に供することになる。
[非水溶性有機溶媒]
本発明においては、反応系に非水溶性有機溶媒を加えて非水溶性有機溶媒層と水層の二相系で反応させてもよい。非水溶性有機溶媒を加えずに反応を行った場合、反応初期では水層のみの一相系で反応するが、反応の進行に伴い生成するカルボン酸エステルが非水溶性である場合、生成したエステルによって次第に有機層が形成される。
反応系に抽出溶剤として非水溶性有機溶媒を加えた場合、カルボン酸とアルコールの有機層側への分配が大きくなるため平衡収率及び反応速度が向上する。また、生成エステルの水層への溶け込みを抑制することができることから、生成エステルを効率よく水層と分離できる。しかし、非水溶性有機溶媒を加えた場合、エステル化の後工程で、非水溶性有機溶媒とエステルを蒸留等により分離する必要があるため、非水溶性有機溶媒の添加による利点と分離に要するコスト等を考慮して反応条件を決定する。
本発明において、非水溶性有機溶媒とは20℃における水への溶解度が10g/L以下であるものをいう。非水溶性有機溶媒は、水と混和せずに2層に分離することに加えて、アルコール及びカルボン酸と反応しないことが必要である。そのような有機溶媒の例としては、飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素、飽和及び不飽和の脂環族炭化水素、芳香族化合物、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、エステル類などが挙げられる。これらの中でも、20℃における水への溶解度が10g/L以下であるものが好ましい。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ドデセン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン、ドデシンなどの飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、デカリンなどの飽和及び不飽和の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、アニソールなどの芳香族化合物、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。さらに好ましくは、20℃における水への溶解度が5g/L以下のものであり、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ドデセン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン、ドデシン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、アニソール、四塩化炭素、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、収率向上の観点から非水溶性有機溶媒として、生成エステルの溶解性が高いものを選択するのが好ましい。
ここで、一般的に2成分系溶液の溶解度の目安として、ヒルデブラントの溶解パラメーター(δ)が用いられる。ヒルデブラントの溶解パラメーター(δ)とは、式(1)に示すように単位体積あたりの液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根で定義される値であり、ある2成分において、溶解パラメーターの値の差が小さいほど溶解度が大きくなることが経験的に知られている。
δ :溶解パラメーター(MPa1/2
ΔH:モル蒸発熱(J/mol)
R :気体定数8.3145(J/K・mol)
Vm:モル体積(m3/mol)
T :絶対温度(K)
したがって、本発明では、生成エステルと非水溶性有機溶媒の溶解パラメーターの差が3以内であることが好ましい。例えば、酢酸エチルの場合、25℃における溶解パラメーター(18.6)に対して、差が3以内である非水溶性有機溶媒としては、シクロペンタン(17.8)、シクロヘキサン(16.8)、デカリン(18.0)、ベンゼン(18.7)、トルエン(18.2)、キシレン(18.0)、メシチレン(18.0)、ニトロベンゼン(20.5)、テトラリン(19.4)、クロロベンゼン(19.4)、ジクロロベンゼン(20.5)、アニソール(19.5)、四塩化炭素(17.6)、ジブチルエーテル(16.0)、ジベンジルエーテル(19.2)などが挙げられる。
これら溶解パラメーターの差が3以内である非水溶性有機溶媒の中でも生成物のエステルの分配が有機層に著しく偏るトルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、アニソールがさらに好ましく、トルエンが最も好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、非水溶性有機溶媒として、前記アルコールとカルボン酸からなるエステルを用いれば、エステル化反応の生成物と溶媒が同じとなり、分離の工程を省略することができる。
[反応様式]
本発明で用いるアルコールとカルボン酸の物質量比は、アルコール/カルボン酸のモル比で、0.1〜10の範囲が好ましく、目的に合わせて適宜選択される。反応後に残存する未反応のアルコール及びカルボン酸を減らす観点から、アルコール/カルボン酸のモル比は0.5〜2の範囲がさらに好ましく、1が最も好ましい。
水溶性アルコール及び水溶性カルボン酸の水溶液中の濃度は、水溶性アルコールと水溶性カルボン酸の濃度の合計が1〜90質量%が好ましく、10〜90質量%がさらに好ましい。濃度が90質量%より大きくなると、無機塩を加えて反応平衡をずらす本発明の利点が薄くなる。また、1質量%より低いと、反応速度が遅くなり、現実的ではない。
無機塩の添加量は、エステル化反応が100%進行した場合に系内に存在する水の理論量(反応開始時に存在した水+定量的に反応が進行した場合に生成する水)に対して、反応温度における飽和溶解量の0.05〜1.0倍となる量が好ましい。添加量が0.05倍よりも少ないと、収率向上効果が小さく、添加量を1.0倍よりも大きくしてもエステル化収率はあまり変化しない。反応中に反応温度を変える場合には反応開始時の温度における飽和溶解量とする。
本発明で用いる固体酸触媒の使用量(固体酸触媒の酸点の総量)は、反応させようとするアルコールとカルボン酸のいずれか少ない方の基質に対して、0.1〜20モル%であることが好ましく、1〜20モル%がさらに好ましい。1モル%より少ない量で行うと好ましい反応速度が得られず、20モル%より多い量では触媒にかかるコストが増大し経済的に好ましくない。
エステル化の反応温度には特に制限はなく、目的に応じた反応温度を設定することができるが、20〜120℃の範囲が好ましく、25〜90℃の範囲がさらに好ましい。温度が低すぎると反応速度が遅く、120℃を超えるとエネルギーコストがかかり好ましくない。
また、反応時間にも特に制限なく、目的に応じた反応時間を選択することができる。反応時間は、基質濃度、温度、触媒量、触媒活性により異なるが、好ましくは10分〜100時間の範囲、さらに好ましくは10分〜24時間の範囲、さらに好ましくは10分〜10時間の範囲である。
非水溶性有機溶媒を加える場合の添加量は、有機溶媒/水層の質量比で0.1〜2の範囲が好ましく、0.1〜1の範囲が最も好ましい。0.1より小さいと非水溶性有機溶媒の添加効果が薄く、2より増やしてもあまり収率は向上しない。また、多量の有機溶媒の使用は、分離コストの観点からも好ましくない。
反応系からの固体酸触媒の分離方法は、特に制限されることなく、一般的な固液分離方法が適用できる。例えば、ろ過分離、遠心分離、沈降分離などがあり、分離効率、所要時間、触媒形状などを考慮して適切な方法を選択できる。固液分離により回収した触媒は、そのまま、あるいは再生処理を施した上で再び反応系に戻して再利用することができる。
生成したエステルの回収方法は、特に制限されることなく種々の方法が選択できる。生成エステルは、有機層に主に分配することから、有機層と水層を公知の方法(例えば静置分離法)で分離し、有機層から蒸留などの方法によりエステルを回収することができる。特に、非水溶性有機溶媒を加えずに反応を行った場合には、有機層は高濃度エステル溶液であり、均一系触媒を用いた場合のような触媒の混入もないため、エステルの精製コストを下げることができる。
以下、固体酸触媒の合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
合成例1:固体酸触媒(PS−SO3H触媒)の合成
ポリスチレンビーズ(10.0g,Advanced ChemTech社製ポリスチレン,200〜400メッシュ,1%ジビニルベンゼン(DVB))のジクロロメタン(100mL)分散液に、0℃でクロロスルホン酸(5.83g,50.0mmol)をゆっくりと加え、6時間撹拌した。その後、酢酸(50mL)を加え、室温でさらに1時間撹拌した。得られた樹脂をろ過で回収し、水、水/テトラヒドロフラン(THF)、THF、及びジクロロメタンで洗浄した後、真空乾燥して目的のPS−SO3H触媒(12.0g)を得た。燃焼−イオンクロマトグラフ法により、含有硫黄原子を定量することで、スルホ基のローディング量(触媒1gあたりのスルホ基担持量)を求めたところ、2.77mmol/gであった。この触媒をPS−SO3H−1とする。
実施例1〜2:
50質量%酢酸水溶液3.0g(酢酸25mmol、1.5g含有、水1.5g)、エタノール(25mmol、1.15g)、PS−SO3H−1(0.45g、スルホ基換算で1.25mmol相当、スルホ基ローディング量2.78mmol/g)、塩化カルシウム(2.5g、22.5mmol)をガラス製フラスコに加えた。塩化カルシウムの添加量は、原料中の水及びエステル化反応が定量的に進行した場合に副生する水を足し合わせた全水量に対しての40℃での飽和量である。オイルバスで40℃に加熱し、72時間(実施例1)または4時間(実施例2)撹拌してエステル化反応を行った。反応初期は水層のみの一相系反応であったが、反応終了時には酢酸エチル層と水層に二層分離していた。触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めた。反応結果を表1に示す。塩化カルシウムを加えていない比較例1及び2に比べて、大幅に収率が向上した。
比較例1〜2:
塩化カルシウムを加えなかったこと以外は実施例1及び2と同様に行った。反応終了時、生成した酢酸エチルは水層に溶解して二層分離していなかった。そこで、水層をガスクロマトグラフィーで分析することで酢酸エチル収率を求めた。反応結果を表1に示す。
実施例3〜4:
非水溶性有機溶媒としてトルエン(6.0g)を加えたこと以外は実施例1及び2と同様に行ない、有機溶媒層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めた。反応結果を表1に示す。塩化カルシウムを加えていない比較例3及び4に比べて、大幅に収率が向上した。
比較例3〜4:
塩化カルシウムを加えなかったこと以外は実施例3及び4と同様に行った。反応結果を表1に示す。
比較例5:
触媒として均一系触媒であるメタンスルホン酸(0.12g、1.25mmol)を用いた以外は実施例1と同様に行った。反応初期は水層のみの一相系反応であったが、反応終了時には酢酸エチル層と水層に二層分離していた。分液漏斗で有機層と水層に分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めたところ、83%であった。ただし、分離した酢酸エチル層を燃焼−イオンクロマトグラフ法で分析したところ、スルホン酸の存在が確認され、触媒が混入していることが分かった。このため、生成した酢酸エチルから蒸留や抽出により触媒成分を除去する操作が必要になる。
実施例5〜15:
50質量%酢酸水溶液12.0g(酢酸100mmol、6.0g含有)、エタノール(100mmol、4.6g)、PS−SO3H−1(1.81g、スルホ基換算で5.0mmol相当スルホ基ローディング量2.76mmol/g)、トルエン(12.0g)、飽和量の表2に示す各種無機塩をガラス製フラスコに加えた。無機塩の添加量は、原料中の水及びエステル化反応が定量的に進行した場合に副生する水を足し合わせた全水量に対しての飽和量である。オイルバスで40℃に加熱し、72時間撹拌して有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、触媒をろ過で分離した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めた。反応結果を表2及び図1に示す。無機塩を加えていない比較例6に比べて、大幅に収率が向上した。
比較例6:
無機塩を加えなかったこと以外は実施例5〜15と同様に行った。反応結果を表2及び図1に示す。
実施例16〜31:
無機塩の添加量を33.3mmol(50質量%酢酸水溶液中の水に対して10mol%)にした以外は実施例5〜15と同様に行った。添加した無機塩の飽和溶解量に対する比率、及び反応結果を表3及び図1に示す。無機塩の添加量を減らしても、大幅な収率向上効果が確認された。
実施例32〜36:
表4に示すとおり、1質量%(実施例32)、5質量%(実施例33)、10質量%(実施例34)、25質量%(実施例35)、50質量%(実施例36)の酢酸水溶液6.0gに、それぞれ1当量(酢酸水溶液中の酢酸と同物質量)のエタノール、PS−SO3H−1(スルホ基換算で酢酸に対して10mol%相当)、トルエン(6.0g)、飽和溶解量の塩化カルシウムを加えた。塩化カルシウムの添加量は、原料中の水及びエステル化反応が定量的に進行した場合に副生する水を足し合わせた全水量に対しての40℃での飽和量である。オイルバスで40℃に加熱し、72時間撹拌して有機層と水層の二相系で反応させた。反応終了後、触媒をろ別した後、ろ液を分液漏斗で有機層と水層に分離した。各層の液をそれぞれガスクロマトグラフィーで分析することにより酢酸エチル収率を求めた。反応結果を表4及び図2に示す。
比較例7〜11:
塩化カルシウムを加えなかったこと以外は実施例32〜36と同様に行った。反応結果を表4及び図2に示す。
無機塩を加えていない比較例7〜11に比べて、実施例32〜36では収率が大幅に向上した。特に低濃度の酢酸水溶液を用いた場合に、塩化カルシウム添加による収率向上効果が大きかった。

Claims (9)

  1. 水溶性カルボン酸と水溶性アルコールを水中で反応させるエステル化反応において、固体酸触媒の存在下、前記水溶性カルボン酸と前記水溶性アルコールを含む水溶液に無機塩を加えることを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
  2. 前記無機塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛のいずれかの金属カチオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオンのいずれかのアニオンとの組み合わせである請求項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  3. 前記無機塩のカチオンがリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅のいずれかである請求項2に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  4. 前記無機塩のアニオンが塩素イオンである請求項2または3に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  5. 前記無機塩が塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムのいずれかである請求項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  6. 前記無機塩の添加量が、エステル化反応が定量的に進行した場合に生成する水の理論量と溶媒として使用する水との合計量の、反応温度における飽和溶解量の0.05〜1.0倍である請求項1〜5のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  7. 前記固体酸触媒がスルホ基担持ポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  8. エステル化反応により生成するカルボン酸エステルが水に不溶性であり、反応開始時は水層のみの一相系で、反応終了時に生成エステルが水層と層分離して、水層とエステル層の二相系となる請求項1〜7のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  9. 非水溶性有機溶媒を加えて有機溶媒層と水層の二相系でエステル化反応をさせる請求項1〜7のいずれかに記載のカルボン酸エステルの製造方法。
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