JP2013176993A - 魚釣用リールの構成部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲げ負荷方向のみならず、せん断方向の負荷、長手方向の負荷、捩じり負荷などが作用しても、比強度、比剛性の向上が図れる魚釣用リールの構成部材を提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールの構成部材は、断面が円形状で平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂によって成形されている。そして、前記長手方向に対して直角方向を断面視した状態で、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が多い第1の層10を形成し、かつ、その内層側に、第1の層10の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維を多く含む第2の層11を形成したことを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の魚釣用リールの構成部材は、断面が円形状で平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂によって成形されている。そして、前記長手方向に対して直角方向を断面視した状態で、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が多い第1の層10を形成し、かつ、その内層側に、第1の層10の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維を多く含む第2の層11を形成したことを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、例えば、スピニングリールのリール本体、ハンドル、レバーブレーキのレバーのような魚釣用リールの構成部材に関する。
上記したような魚釣用リールの構成部材として、軽量化を図るべく繊維強化樹脂を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、マトリクス樹脂に1〜25mmの短繊維を混入した繊維強化樹脂製のリール本体が開示されており、混入されている短繊維の方向を構成部材の長手方向に指向させることが記載されている。また、特許文献2には、特許文献1と同様、マトリクス樹脂に3〜60mmの短繊維を混入した繊維強化樹脂製のリール本体が開示されている。前記リール本体は、部位によって強化繊維(短繊維)の向きを指向させたりランダムに分散させることが記載されている。
さらに、特許文献3には、リール本体を熱可塑性合成樹脂でインジェクション成形すると共に、所定位置(リール取付脚)の周面に熱硬化性樹脂含浸の繊維補強層を形成した構成が開示されている。
上記した特許文献1に開示されている技術によれば、短繊維の方向を部材の長手方向に指向させることで、その部位の補強を図ることが可能となる。しかし、長手方向の曲げ負荷以外の方向に対する負荷への工夫がなされていないため、例えば、せん断方向の負荷、長手方向への圧縮力、捩じり負荷が生じた際の強度面に問題がある。また、上記した特許文献2に開示されている技術においても、特許文献1に開示されている技術と同様な問題があると共に、強化繊維をランダムに分散させただけでは、比強度、比剛性の向上については限界がある。
さらに、上記した特許文献3に開示されている技術では、熱可塑性樹脂の周面に熱硬化性繊維強化樹脂を巻回して補強を図るため2回成型が必要となり、コスト高、生産性が低く、成型時の熱収縮等により、各層の層間の強度も低くなってしまう。
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、曲げ負荷方向のみならず、せん断方向の負荷、長手方向の負荷、捩じり負荷などが作用しても、比強度、比剛性の向上が図れる魚釣用リールの構成部材を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明は、長手方向に延在し繊維強化樹脂によって成形される魚釣用リールの構成部材であって、前記構成部材は、断面が円形状で平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂によって成形されており、前記構成部材を成型する金型の温度よりも温度が高く設定された前記繊維強化樹脂を、前記金型に対して長手方向に沿って所定の射出圧で注入することで、前記長手方向に対して直角方向を断面視した状態で、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が多い第1の層を形成し、前記金型の内面に沿って流れた前記繊維強化樹脂が、両者の温度差によって表面から所定の厚さ分硬化した後に、硬化していない前記繊維強化樹脂に対して前記短繊維がランダムに分散するように分散圧力を付与することで、前記第1の層の内層側に、前記第1の層の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維を多く含む第2の層を形成したことを特徴とする。
上記した魚釣用リールの構成部材によれば、繊維強化樹脂によって成形されるため軽量化が図れるようになる。また、長手方向に延在する構成部材は、長手方向と直角な方向を断面視すると、表層側では、強化繊維である短繊維が略円形状となった状態、すなわち、短繊維が長手方向に沿った状態となるように配列されていることから、曲げ方向について影響が大きい外層部(第1の層)が効果的に強化され、その内層側(第2の層)には、短繊維がランダムに指向した状態を多数含むため、曲げ方向以外の負荷に対する強度が得られるようになる。
このため、単なる曲げ負荷方向の比強度、比剛性の向上のみならず、せん断方向の負荷や長手方向への圧縮力が生じた際の縦割れに対しても強化され、更に、捩じり負荷についても強化されるようになる。
この場合、上記した繊維強化樹脂を所定の射出圧によって金型に注入する際、強化繊維(短繊維)をその流れに沿って一方向に指向させることが可能となる。金型に注入される繊維強化樹脂は、金型の温度よりも高く設定されているため、金型に沿って流れた際、温度が低くなっている金型表面側から硬化するようになり、表面側に短繊維を長手方向に沿った状態で配列させることが可能となる。また、射出工程に引き続き、注入された状態にある繊維強化樹脂に対して分散圧力を付与することで、硬化前の繊維強化樹脂に分散された短繊維、すなわち、内層側にある短繊維はランダムに変動することとなり、この状態で硬化することで、内層側の短繊維はランダムに指向した状態を多数含むようになり、そのような層構造を有する構成部材を容易に形成することが可能となる。
本発明によれば、曲げ負荷方向のみならず、せん断方向の負荷、長手方向の負荷、捩じり負荷などが作用しても、比強度、比剛性の向上が図れる魚釣用リールの構成部材が得られるようになる。
以下、添付図面を参照して本発明に係る魚釣用リールの構成部材の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、魚釣用リールを、一般的に知られているレバーブレーキタイプのスピニングリールとして例示し、構成部材を、ロータブレーキを作動させるレバーとして説明する。
図1から図4は、第1の実施形態を示しており、図1は魚釣用リールの全体構成を示す図、図2はレバーを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は裏面図、図3は図2(b)のA−A線に沿った断面図、そして、図4は図3の要部拡大図である。
本実施形態の魚釣用リールのリール本体1には、釣糸案内部(図示せず)を具備し回転駆動されるロータ3と、ロータ3の回転駆動と同期して前後動されるスプール4が設けられている。
前記リール本体1内には、ハンドル軸が軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸の端部には、巻き取り操作されるハンドル5が装着されている。また、前記リール本体1には、釣竿に固定されるリール脚1Aが一体形成されると共に、リール脚1Aに対して牽引操作が可能なレバー7が回動可能に装着されており、レバー7を牽引操作することで、前記ロータ3の回転に制動力を付与することが可能となっている。
なお、上記した構成において、リール本体1(リール脚1A)、ロータ3、スプール4、ハンドル5、及びレバー7は、いずれも魚釣用リールの構成部材となる。
上記した構成において、魚釣用リールの構成部材であるレバー7は、長手方向に延在して、牽引操作がされる部分であることから、局所的に大きな曲げ応力が作用する。すなわち、レバー7は、釣竿を握持した手の人差し指で牽引操作される部分であり、実釣時では、脚部1Aに対する回動支持部を支点として大きな曲げ応力が作用するため、剛性が低いと強度的に問題が生じてしまう。この場合、牽引操作すると、レバー7には、上面側7U(図2(a))では圧縮力が作用し、下面側7D(図2(c))では引張力が作用する。
上記した構成部材であるレバー7は、短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂によって成形されており、軽量化が図られている。
この場合、前記マトリクス樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂を主成分としたもので構成することが可能であるが、それ以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を含有していても良い。更には、これらの材料に加えて、流動改質剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していても良い。
また、前記マトリクス樹脂に多数本混入される強化繊維は、例えば、PAN系またはピッチ系の炭素繊維、具体的には、断面が円形状(真円以外にも形成時の誤差等によって、多少非円形のものが含まれていても良く、後述する図5(a)に示すように、短長軸比が1:1.00〜1.02程度のものであっても良い)で、図4に示すように、いずれかの領域で単位体積を考慮した場合、平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの範囲となる短繊維が用いられている(これらの短繊維は、上記のようにマトリクス樹脂に対して30〜60質量%の範囲で含有されている)。なお、混入される強化繊維については、弾性率が230〜500GPaのものを用いることが好ましい。
ここで、強化繊維の大きさを上記した範囲に設定したのは、強化繊維の平均繊維径が4μm、平均繊維長さが1.5mmよりも小さくなると、繊維強化樹脂として所定の弾性率を得るためには、多量の繊維を混入する必要があり、成形性(流動性)が悪くなる傾向があり、また、平均繊維径が7μm、平均繊維長さが4.0mmよりも大きくなると、繊維が大きすぎるため、成形性(流動性)が悪くなる傾向があるためである。すなわち、平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの範囲の短繊維を用いることで、後述するように金型に対して射出成形する際、繊維強化樹脂の流動性の低下が抑制され、これにより強化繊維が満遍なく行き渡って良好な形態を成形することが可能になるとともに、レバー7の比強度、比剛性を効果的に高めることが可能となる。
また、強化繊維の含有量をマトリクス樹脂に対して30質量%以上にすることで、充分な曲げ剛性を得ることが可能となり、60質量%以下にすることで、一般的な溶融混練装置によって安定して押し出し成形(射出成形)することが可能となる。
上記したように、レバー7は、長手方向に延在する形状となり、上記した繊維強化樹脂によって一体成形される。この場合、レバー7は、長手方向に対して直角方向を断面視した際、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維15の比率が多い第1の層10が形成され、かつ、その内層側に、第1の層10の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維16を多く含む第2の層11が形成されるように成形されている(具体的な製造方法については後述する)。
本実施形態では、図3に示すように、第1の層10がレバー7の表面から所定の深さ囲繞しており、その内側にコアとなって第2の層11が形成されている。この場合、第1の層10の厚さについては、曲げ剛性を効果的に高める機能が発現されれば良く、牽引操作されるレバー7であれば、0.1〜2.0mmあれば良い。
前記第1の層10は、表層側に位置する層であり、図4に示すように、強化繊維である短繊維15が略円形となった状態、すなわち、多数混入される短繊維が、概ね長手方向に沿った状態(全体として長手方向に沿った状態)となるように配列されていれば良く、具体的には、ある程度の曲げ剛性が確保されるように、多数配列されている短繊維は、長手方向に対して直角な方向で断面視した際、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率がその層内において多い状態となっていれば良い。
なお、短長軸長比が、1:1.155以上になってしまうと、短繊維は、長手方向に対して30°以上傾いた状態となってしまうため、曲げ剛性を向上する上では、十分な配列状態でなくなってしまう。
この状態を、具体的に図5を参照して説明する。
上記したように、混入される個々の短繊維は、断面が円形状で、平均の繊維径が4μm〜7μm、平均の繊維長さが1.5mm〜4.0mmの範囲となる略円柱形状となっている。このような短繊維は、図5(a)に示すように、レバー7の長手方向(長手軸X)に対して直角な方向で断面視した際、断面は真円(短長軸比が1:1.00〜1.02程度のものであっても良い)となっているが、長手軸Xに対して多少傾いた状態(傾き角度をθとする)になると、断面は楕円形状となる。
上記したように、混入される個々の短繊維は、断面が円形状で、平均の繊維径が4μm〜7μm、平均の繊維長さが1.5mm〜4.0mmの範囲となる略円柱形状となっている。このような短繊維は、図5(a)に示すように、レバー7の長手方向(長手軸X)に対して直角な方向で断面視した際、断面は真円(短長軸比が1:1.00〜1.02程度のものであっても良い)となっているが、長手軸Xに対して多少傾いた状態(傾き角度をθとする)になると、断面は楕円形状となる。
この傾き角θは大きくなればなるほど、楕円の長軸が長くなり、短繊維の直径をLとすると、その長軸L1は、L1=L/cosθで定義される。仮にLを1とした場合、θが0°ではL1=1(図5(b)参照)、θが15°ではL1=1.035(図5(c)参照)、θが30°ではL1=1.155(図5(d)参照)、θが45°ではL1=1.414(図5(e)参照)、θが60°ではL1=2(図5(f)参照)、θが75°ではL1=3.862(図5(g)参照)、そして、θが90°になると、横向きの状態が視認されるようになる(図5(h)参照)。
この短繊維の方向については、長手方向に延在すること、すなわち、個々の繊維のすべてが図5(b)に示す状態に配列されることで、曲げ方向に対する強度が最も向上することとなるが、現実的には、短長軸長比1:1〜1:1.155(長手軸Xに対する傾きが30°以下)となる略円形状の短繊維の比率が、その層内において多い状態となっていることで、効果的に曲げ強度の向上が図れるようになる。
また、前記第2の層11については、図4に示すように、第1の層10の短繊維の配列状態と比較して、ランダムに指向した短繊維16を多く含む状態となっていれば良い。
上記したレバー7により、曲げ方向について影響が大きい(断面2次モーメントへの影響が大きい)外層部(第1の層10)が効果的に強化され、その内層側(第2の層11)には、短繊維がランダムに指向した状態を多数含むため、曲げ方向以外の負荷に対する強度が得られるようになる。
すなわち、レバー(構成部材)7として軽量化を図りながら、単なる曲げ負荷方向の比強度、比剛性の向上のみならず、せん断方向の負荷や長手方向への圧縮力が生じた際の縦割れに対しても強化され、更に、捩じり負荷についても強化を図ることが可能となる。
なお、前記第1の層10は、上記した短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維15の比率が、その層の断面に現れる繊維数の50%以上を占めるようにすることで、より比強度、比剛性に優れた構成部材とすることが可能である。
また、前記第1の層10と第2の層11との間(境界R)は、長手方向に対して直角方向、かつ、最も近い外表面Pに対して平行な方向に指向する短繊維(図4において、そのような繊維を符号16aで示す)が多数存在するように形成しておくことが好ましい。
このように、第1の層10と第2の層11との境界Rに、そのような方向性のある短繊維を多数存在させておくことで、レバー7の縦割れを効果的に抑制することができ、かつ、捩じり剛性の向上が図れ、より捩じり負荷に強い構造とすることが可能である。
次に、上記したレバー7を形成する製造方法の一例について、図6から図9を参照して具体的に説明する。
レバー7は、金型30に、上述した繊維強化樹脂を射出することで一体成形される。本実施形態の金型30は、上下に型割りされる上型31と下型32、材料注入用のゲートを有する型33によって構成されており、上型31と下型32との間には、レバー7の外形となる空洞部30aが形成されている。なお、空洞部30aの表面領域には、離型剤がコーティングされている。
前記上型31には、所定の位置に、繊維強化樹脂を注入するゲート31aが形成されており、空洞部30aに連通されている。また、前記上型31には、ゲート31aに繊維強化樹脂を案内するためのゲート33aが形成された材料注入用の型33が設置されるようになっている。
上記した金型30によってレバー7を成形するに際しては、上述したような、断面が円形状で平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂7Aを、所定の射出圧P1でゲート33a,31aを介して空洞部30aに注入する。
この場合、金型30の温度よりも、注入される繊維強化樹脂7Aの温度が高く設定されており、この温度差によって、注入される繊維強化樹脂7Aが、金型と接触する表層側から冷却されて硬化することが可能となる。具体的に、両者の温度差は、100〜250℃であれば良く、これにより、ゲート33a,31aを介して空洞部30aに注入された繊維強化樹脂7Aは、レバー7の形状となる長手方向に沿って所定の射出圧で移動(図6参照)すると共に、そこに混入されている多数の短繊維は、マトリクス樹脂の流れる方向(レバーの形状となる長手方向)に沿って配列されるようになる。
そして、金型30の空洞部30aの長手方向に沿って流れた繊維強化樹脂7Aは、両者の温度差によって、金型内面と接触する表面側から所定の厚さ分硬化するようになる。すなわち、表面側から硬化することで、表層側には、図3及び図4に示したような、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が多い第1の層10が形成されるようになる。
そして、所定の射出圧で繊維強化樹脂7Aを注入した後、未だ硬化していない繊維強化樹脂(内層側は硬化する前となっている)に対して、図7に示すように、短繊維がランダムに分散するような圧力(分散圧力)P2を付与する。この分散圧力P2を付与することで、硬化前のマトリクス樹脂に含まれている多数の短繊維は遊動するようになり、結果として、内層側には、図3及び図4に示したような、第1の層10の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維を多く含む第2の層11が形成されるようになる。
その後、繊維強化樹脂7Aの温度が徐々に金型30の温度に近付くと(冷却しても良い)、繊維強化樹脂7Aは全体が硬化し、前記第1の層10及び第2の層11が形成されるようになる(図8参照)。そして、金型30を離間すると、上記したレバー7が成形される(図9参照)。
上記した製造工程において、第1の層10、及び第2の層11の層厚や、内部に分散する短繊維の方向については、金型と繊維強化樹脂7Aの温度差、射出圧P1や分散圧力P2の大きさ、分散圧力P2を付与するタイミング及び時間、繊維強化樹脂7Aの注入方向などによって適宜、調整することが可能である。
また、第1の層10と第2の層11との間の境界R(図4参照)は、硬化した第1の層10に対して分散圧力P2を付与し、これが硬化したことで生じる部分である。この境界Rに、長手方向に対して直角方向、かつ、最も近い外表面Pに平行な方向に指向する短繊維16aを多数存在させるには、部品形状により条件は異なるため、例えば、分散圧力P2の大きさと付与するタイミング及び時間の各水準を変化させた試作を行なうことで最適な条件を見つけることが可能となる。
なお、上記した金型30については、一例を示したに過ぎず、部品の形状や補強を重視する部位に応じて型割りの方向、繊維強化樹脂の注入方向(ゲートが形成される位置)及びゲートの数については、任意の形態にすることが可能であり、特に、ゲート数は1本が好ましい場合もある。
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図10及び図11は、本発明の第2の実施形態(図1に示すレバーの別の構成例)を示す図であり、図10(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は裏面図、そして、図11は図10(b)のB−B線に沿った断面図、及び各主要部の拡大図である。
図10及び図11は、本発明の第2の実施形態(図1に示すレバーの別の構成例)を示す図であり、図10(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は裏面図、そして、図11は図10(b)のB−B線に沿った断面図、及び各主要部の拡大図である。
本実施形態では、長手方向に沿うレバー7の表面に、長手方向に沿うようにしてリブ7a、及び溝7bを形成している。
このように、長手方向に沿うようにして、リブ7aや溝7bを形成することで、繊維強化樹脂を金型に対して射出する際、短繊維を長手方向に指向させ易くすることが可能となる。この場合、構成部材(レバー)には、リブのみを形成したものであっても良いし、溝のみを形成したものであっても良い。
また、前記リブ7aを形成することで、断面2次モーメントを効果的に大きくして曲げ負荷方向の比強度、比剛性を高めることが可能となる。特に、レバー7の圧縮側となる上面側にリブ7aを形成したことで、その比強度、比剛性を高めることが可能となる。
この場合、リブ7aを形成した領域における第1の層10は、その周辺領域の第1の層と比較して層厚を厚く(リブ7aの部分における第1の層10の肉厚Tは、それ以外の部分の第1の層10の肉厚T1より厚い)しておくことが好ましい。
これにより、リブ部分における比剛性、比強度を向上させてリブによる効果を大きくすることが可能となる。
また、上記した長手方向に沿う溝7bは、専ら軽量化や滑り止め等の機能を果たすことが可能であるが、長手方向に沿って溝を形成することで、溝の底部に沿って(縦)割れが発生しやすくなる。
このため、溝7bを形成した領域における第1の層10については、その周辺領域の第1の層10(この実施形態では、リブ7aの部分となる)と比較して層厚を薄くしておく(T1<T)ことが好ましい。このように、溝が形成されている部分の層厚を薄くしておくことで、内層側にあるランダムな方向の繊維層(第2の層11)による割れ防止効果を大きくすることが可能となる。
図12から図14は、本発明の第3の実施形態(ハンドル)を示す図であり、図12(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は裏面図、図13は図12(b)のC−C線に沿った断面図、そして、図14は図13の要部拡大図である。
図1に示すように、ハンドル5は、その端部に装着されるノブ5aを握持して回転操作される部分となっており、長手方向に延在する形状(レバー形状)となっている。このようなハンドル5においても、上記したレバー7と同様、上記した繊維強化樹脂によって、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維15の比率が多い第1の層10を形成し、かつ、その内層側に、第1の層10の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維16を多く含む第2の層11を形成した構成とすることが可能である。
このように、ハンドル5についても、実釣時において、曲げ負荷、せん断方向の負荷などが作用するが、上記したような第1の層10、及び第2の層11を形成しておくことによって、軽量化を図りつつ、曲げ負荷方向のみならず、せん断方向の負荷、長手方向の負荷、捩じり負荷などが作用しても、比強度、比剛性の向上を図ることが可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成部材以外にも適用することが可能である。例えば、リール本体1、リール脚1Aや、ロータ3等、リールの外形を構成する各種の構成部材や、それ以外のリール(両軸受型リール等)の構成部材にも適用することが可能である。
また、本発明は、上述した第1の層と第2の層を含んだ構成であれば良く、それ以外の層、例えば、表面保護層や装飾層などを含んだ構成であっても良い。
1 リール本体
1A 脚部
3 ロータ
4 スプール
5 ハンドル
7 レバー
10 第1の層
11 第2の層
15,16,16a 短繊維
1A 脚部
3 ロータ
4 スプール
5 ハンドル
7 レバー
10 第1の層
11 第2の層
15,16,16a 短繊維
Claims (3)
- 長手方向に延在し繊維強化樹脂によって成形される魚釣用リールの構成部材であって、
前記構成部材は、断面が円形状で平均繊維径が4μm〜7μm、平均繊維長さが1.5mm〜4.0mmの短繊維を30〜60質量%の範囲でマトリクス樹脂に含浸した繊維強化樹脂によって成形されており、
前記構成部材を成型する金型の温度よりも温度が高く設定された前記繊維強化樹脂を、前記金型に対して長手方向に沿って所定の射出圧で注入することで、前記長手方向に対して直角方向を断面視した状態で、表層側に、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が多い第1の層を形成し、
前記金型の内面に沿って流れた前記繊維強化樹脂が、両者の温度差によって表面から所定の厚さ分硬化した後に、硬化していない前記繊維強化樹脂に対して前記短繊維がランダムに分散するように分散圧力を付与することで、前記第1の層の内層側に、前記第1の層の短繊維と比較してランダムに指向した短繊維を多く含む第2の層を形成したことを特徴とする魚釣用リールの構成部材。 - 前記第1の層と第2の層との間は、前記長手方向に対して直角方向、かつ、最も近い外表面に平行な方向に指向する短繊維が多数存在することで、前記第1の層と第2の層の境界が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リールの構成部材。
- 前記第1の層は、短長軸長比1:1〜1:1.155となる略円形状となる短繊維の比率が、その層の断面に現れる繊維数の50%以上を占めることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用リールの構成部材。
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