JP2013176824A - 皮膜および皮膜を有する研磨パッド - Google Patents

皮膜および皮膜を有する研磨パッド Download PDF

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幸男 前田
Michinori Fujisawa
道憲 藤澤
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和正 井上
Sei Henmi
聖 辺見
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Abstract

【課題】膜厚が厚くても、多数の微細孔が均一に混在しており、膜表面の開口径のバラツキが少なく、且つ表面の凹凸が少なく平坦性が良好で厚さ方向の構造差が少ないため、仕上加工中の表面層の磨耗による開口の変化が無い皮膜を提供すること。
【解決手段】親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体および支持部材から形成された厚さが100〜800μm、密度が0.40〜0.90g/cm3の皮膜であって、該皮膜の厚さ方向の断面において、高分子弾性体の粒子がその粒子状態を維持してゲル化しその一部が接合した後に粒子同士の間隙により形成された微細孔と、平均径10〜50μmの支持部材とが混在し、且つ厚さ方向に平行な断面で、該皮膜を厚さ方向に2等分した上層、下層に存在する微細孔と支持部材が特定の存在状態である皮膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、皮膜およびその皮膜を有する研磨パッドに関する。更に詳しくは、支持部材と多数の微細孔が混在する皮膜とその皮膜を研磨面に用いた研磨パッドに関する。
従来、レンズ、平行平面版、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、高精度に平坦性が要求されるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。このような被研磨物の研磨加工では、平坦性の向上を図るために一度研磨加工(一次研磨)した後に仕上げ加工(二次研磨)が広く行われている。研磨加工時には、被研磨物および研磨パッド間に研磨粒子を含む研磨液が供給される。
一般に、軟質研磨パッドには、湿式成膜法で形成されたポリウレタン樹脂製の樹脂シートが使用されている。湿式成膜法では、樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中で樹脂を凝固再生させる。製造された樹脂シートの表面には緻密な微小気泡が形成された厚さ0.5μm程度の表面層が形成されている。表面層では緻密に形成された微小気泡が形成されているため、表面層の表面はミクロな平坦性を有している。このため、表面層側が被研磨物の仕上げ加工に好適に使用されている。
ところが、湿式成膜法では、樹脂溶液が粘性を有するため、成膜基材への塗布時に厚みバラツキが生じると共に、凝固再生時の有機溶媒と水系凝固液との置換により厚みバラツキが生じやすい。このため、樹脂シート自体の表面のマクロな平坦性が損なわれ大きく波打った表面となる。厚みバラツキが生じた樹脂シートを使用した研磨パッドで被研磨物の樹脂加工を行うと、樹脂シートの厚みの大きな部分で被研磨物にかかる圧力が大きくなるため、当該部分の加工面が大きく研磨されて平坦性を損なうこととなる。更に、ミクロな平坦性を有する表面層は厚さ0.5μm程度の薄膜であるため。研磨加工による短時間で磨耗してしまう問題があった。
特許文献1には、湿式成膜法で作成された樹脂シートの厚さのバラツキを減少させてマクロな平坦性を向上させ、研磨液の保持性を向上させるため、樹脂シートの製造後に表面層に種々の加工が施されている。例えば、樹脂シートの多孔層のセルが開孔しないように表面層のミクロな平坦性を残して微細に表面バフ処理した研磨パッドが開示されている。また、特許文献2には、湿式成膜法により作製され、被研磨物を研磨加工するための研磨面を有する樹脂シートを備えた研磨パッドにおいて、前記樹脂シートは、前記研磨面からの厚さが2.0μm以上にわたり微小気泡が形成された表面層と、前記表面層より厚さ方向の内側に連続して配され、前記表面層に形成された微小気泡より大きな気泡径のセルが前記厚さ方向と交差する方向に連続状に形成された多孔層と、を有することを特徴とする研磨パッドが開示されている。
特開2001−62704号公報 特開2010−228075号公報
しかしながら、特許文献1の研磨パッドでは、表面バフ処理で表面層の厚さが薄くなるため、仕上げ加工中に短時間で表面層が磨耗して開孔が大きくなり、研磨パッドの表面粗さが悪化する。特許文献2の研磨パッドに有する多孔層は、厚さ方向で微小気泡の分布が変化するため、繰り返し使用時に研磨性能が低下する問題がある。
以上のとおり、膜の厚さ方向で微細孔及び微小気泡の分布変化が小さい皮膜を製造しうる技術は開示されていない。
本発明は、上記問題の解決を鑑みたものであり、膜厚が厚くても、多数の微細孔が潰れずに混在しており、膜表面の開口径のバラツキが少なく、且つ表面の凹凸が少なく平坦性が良好で厚さ方向の構造差が少ないため、仕上加工中の表面層の磨耗による開口の変化が小さい皮膜及び皮膜が研磨面に形成された研磨パッドを提供することを課題とする。
即ち、本発明は、親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体および支持部材から形成された厚さが100〜800μm、密度が0.40〜0.90g/cm3の皮膜であって、該皮膜の厚さ方向の断面において、高分子弾性体の粒子がその粒子状態を維持してゲル化しその一部が接合した後に粒子同士の間隙により形成された微細孔と、平均径10〜50μmの支持部材とが混在し、且つ厚さ方向に平行な断面で、該皮膜を厚さ方向に2等分した上層、下層が以下1)〜3)の特徴を有する皮膜である。
1)上層および下層に存在する微細孔の空隙間内接円面積の平均値がそれぞれ該皮膜全層平均値の±25%の範囲内であること
2)上層および下層の微細孔の面積占有率は、該皮膜全層の微細孔の面積占有率の±10%の範囲内であること
3)上層および下層の支持部材の面積占有率は、該皮膜全層の支持部材の面積占有率の±10%の範囲内であること
そして、上記皮膜を研磨面に用いた研磨パッドである。
本発明の皮膜は、厚さが100〜800μmと膜厚が厚いのにもかかわらず、多数の微細孔が潰れずに混在しており、微細孔膜表面の開口径のバラツキが少なく、且つ表面の凹凸が少なく平坦性が良好で厚さ方向の構造差が少ない。そのため、研磨加工中の表面層の磨耗による開口の変化が少なく、研磨安定性に優れる。
[皮膜]
本発明の皮膜は、皮膜自体の構造に着目すると、親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体、および支持部材から形成された厚さが100〜800μm、密度が0.40〜0.90g/cm3の皮膜であって、該皮膜の厚さ方向の断面において、高分子弾性体の粒子がその粒子状態を維持してゲル化しその一部が接合した後に粒子同士の間隙により形成された微細孔と、平均径10〜50μmの支持部材とが混在し、且つ厚さ方向に平行な断面で、該皮膜を厚さ方向に2等分した上層、下層が以下の特徴1)〜3)を有する。
1)上層および下層に存在する微細孔の空隙間内接円面積の平均値がそれぞれ該皮膜全層平均値の±25%の範囲内であること
2)上層および下層の微細孔の面積占有率は、該皮膜全層の微細孔の面積占有率の±10%の範囲内であること
3)上層および下層の支持部材の面積占有率は、該皮膜全層の支持部材の面積占有率の±10%の範囲内であること
本発明の微細孔に関して、1)上層および下層に存在する微細孔の空隙間内接円面積の平均値がそれぞれ該皮膜全層平均値の±25%の範囲内であることが、微細孔が皮膜全層の厚さ方向に均一な形状を保っている点で重要であり、好ましくは±20%、より好ましくは±14%の範囲内である。ここで言う微細孔の空隙間内接円面積とは皮膜の厚さ方向の各層の任意の断面を30倍の倍率により走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を画像解析ソフトPopImaging(Digital being kids.Co製)を用い、動的閾値法で画像を二値化し、微細孔の空隙部に内接円を描き、その内接円面積を空隙間内接円面積として計測した。描いた内接円面積の中で10μm以上のものを除去し、残りの描いた全ての内接円面積を数平均したものを空隙間内接円面積の平均とした。
また、2)上層および下層の微細孔の面積占有率は、該皮膜全層の微細孔の面積占有率の±10%の範囲内であることが、微細孔がほぼ均一に分散した状態となる点で重要であり、好ましくは±5%、より好ましくは±3%の範囲内である。
さらに、3)上層および下層の支持部材の面積占有率は、該皮膜全層の支持部材の面積占有率の±10%の範囲内であることが、微細孔を均一に存在させる点で重要であり、好ましくは±5%、より好ましくは±3%の範囲内である。
上記1)〜3)を兼ね備えることで、得られる皮膜の微細孔は厚さ方向に均質な形状と厚さ方向に均一な存在状態となり皮膜構造の品質を安定にすることが可能となり、皮膜を銀付調人工皮革の被覆層に用いることで、加熱加圧エンボス処理を行う際に、均一な凹凸形状を付与することが可能となり、また、得られる皮膜を研磨パッドの研磨面に用いることで、研磨処理の経時的な変化を制限することが可能となり、研磨安定性をもたらすことが可能となる。
また、本発明の皮膜は、皮膜の形成過程に着目すると、親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体粒子、および支持部材を少なくとも含有するエマルジョン中で、高分子弾性体粒子をその粒子状態を維持したまま感熱ゲル化及び乾燥固化させることにより得られうる皮膜であって、前記高分子弾性体粒子同士の間隙により形成された微細孔と、支持部材とが混在する。
なお、本願では、上記のように皮膜自体の構造、および皮膜の形成過程に着目して、本発明の皮膜を規定している。
また、本発明において、微細孔の内接円以外の平均径及び孔径は、直径を指すものであり、直径が特定できない対象物については、対象物の面積又は表面積を求め、当該面積又は表面積を有する円相当径又は球相当径とする。
一般的に、高分子弾性体の粒子は、ゲル化の進行と共に、互いに引き寄せられて凝集する。この凝集の進行と共に、粒子同士の間隙が狭められ、微細孔が潰れてフィルム化された皮膜となる。また、皮膜の膜厚が厚くなると、一時的に微細孔が形成されても、未だゲル化していない固化前の塗膜の重さ等の負荷により、形成された微細孔が潰れてしまい、結果としてフィルム化の度合いが強くなる。フィルム化された皮膜は、クッション性、表面平滑性、磨耗による表面開口率安定性の点で劣る。
ところが、本発明の皮膜は、ゲル化前のエマルジョン中に高分子弾性体と共に支持部材を含有しているため、ゲル化及び乾燥固化し皮膜を形成する過程を通じて、高分子弾性体の粒子状態を保ったままゲル化及び皮膜化されるため、当該粒子同士の間隙が狭められ潰れることなく、微細孔を形成することができる。仮に膜厚を厚くしても、粒子同士の間隙を維持され、皮膜中に安定して微細孔を形成することができる。その理由は定かではないが、ゲル化前の塗膜にかかる負荷を支持部材が吸収して、高分子弾性体の粒子や形成過程の微細孔にかかる負荷を軽減しているものと思われる。
したがって、本発明の皮膜は、支持部材を含むことで、膜厚が厚いのにもかかわらず、多数の微細孔が厚さ方向に均一に混在した皮膜となり、また膜表面の開口径のバラツキが少なく、且つ表面の凹凸が少なく平坦性が良好で厚さ方向の構造差が少ないため、仕上加工中の表面層の磨耗による開口率安定性を有する。
支持部材としては、熱可塑性樹脂よりなるもので、中空カプセル状の中空構造を有するもの、中実ビーズ状の中実構造を有するものを用いることができ、クッション性、柔軟性の観点から、中空構造を有するものが好ましい。支持部材の形状は、特に限定はなく、例えば、球形、偏長楕円体等の粒子形状のものが挙げられる。
また、支持部材としては、皮膜に安定した微細孔を形成させる観点から、熱により膨張する熱膨張支持部材が好ましい。熱膨張支持部材としては、配合時に既に膨張が完了しているもの(既膨張支持部材)でもよく、エマルジョンが感熱ゲル化する温度に到達する前に膨張が完了するものでもよい。
更に、支持部材としては、熱により膨張し、中空構造を有する熱膨張カプセルがより好ましい。熱膨張カプセルとしては、配合時に既に膨張が完了している既膨張カプセルでもよく、エマルジョンが感熱ゲル化する温度まで加熱する過程で膨張が完了するものでもよい。
熱膨張カプセルの構造としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリルコポリマー等の熱可塑性樹脂を殻とし、膨張剤として、特定の沸点を有する有機化合物を内包、カプセル化した微小中空球体が挙げられる。膨張剤の役割を担う有機化合物は、エマルジョンの感熱ゲル化する温度より低い温度で膨張が完了する化合物が選択される。また、熱膨張カプセルは、ポリマー種、殻の厚み、バルーンの直径等により、また微粉状又は含水ケーキ状の各種グレードがあり、選択することができ、市販品としては、マツモトマイクロスフェアー(登録商標)(松本油脂株式会社製)等が挙げられる。
支持部材の大きさ(熱膨張支持部材の場合は、最大膨張時における大きさ、既膨張支持部材の場合は、配合時における大きさ)としては、好ましくは10〜50μm以下、より好ましくは10〜40μm、更に好ましくは10〜30μmである。10μm以上であれば、高分子弾性体の粒子状態を維持し、粒子同士の間隙が潰れず、皮膜化後に微細孔を形成させることができる。50μm以下であれば、感熱ゲル化により形成された微細孔が、まだゲル化していない固化前の塗膜の重さ等の付加により潰れることを防止しやすくなる。
エマルジョンが感熱ゲル化及び乾燥固化された後、支持部材は、本発明の皮膜の一部として取り込まれる。特に、中空構造を有する支持部材を用いた場合、皮膜には、皮膜の厚さ方向の断面において、微細孔同士がつながって派生する孔径75μmを超える巨大孔の形成が抑制される。皮膜の厚さ方向の均一性の点で、好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下でああり、最も好ましくは5%以下である。
本発明の皮膜を形成する高分子弾性体は、加熱によりゲル化される親水性官能基含有樹脂からなる。親水性官能基含有樹脂は、親水性官能基を有し、アニオン系やノニオン系の界面活性剤を用いることなく乳化できる自己乳化タイプの水系エマルジョン性樹脂である。アニオン系、ノニオン系の界面活性剤を用いる必要がある強制乳化タイプの水系エマルジョン性樹脂では、加熱によるゲル化が鈍感であり、また、ゲル化後の成膜が不十分となる傾向がある。そのため、低温で長時間かけて感熱ゲル化処理及び乾燥固化を行う必要があり、生産効率が極めて悪い。また、界面活性剤を使用することにより、形成された皮膜の基材に対する剥離強度等の物性が低下すると共に、経時的に界面活性剤が皮膜表面にブリードする欠点がある。一方、自己乳化タイプの水系エマルジョン性樹脂は、上記の問題がなく、高温での感熱ゲル化処理及び乾燥固化を行うことができるため、強制乳化タイプの水系エマルション性樹脂を用いた場合に比べて、格段に生産効率が向上する。更に、自己乳化タイプの水系エマルジョン性樹脂からなる皮膜は、熱水に対する膨潤率が低く優れた耐熱水性を有しているため、皮膜の破損を防止することができる。
親水性官能基としては、カルボキシル基、スルホニル基、第4級アンモニウム基等が挙げられる。これらの親水性官能基を、単独で又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
親水性官能基含有樹脂としては、親水性官能基含有の水系エマルジョン性のポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂とポリアクリル樹脂との混合物等が挙げられる。これらの中でも、屈曲性の観点から、親水性官能基含有の水系エマルジョン性ポリウレタン樹脂が好ましい。
上記の親水性官能基含有樹脂に溶媒として水を加えるとエマルジョンとなり、このエマルジョンに一定の熱を加えるとゲル化する。
加熱前の親水性官能基含有樹脂は、粒径0.05〜0.5μm程度の高分子弾性体粒子として、エマルジョン中に存在している。
本発明の皮膜の厚さは、微細孔の形成時に微細孔が潰れやすい通常以上の厚さとすることができる。皮膜の厚さは、100〜800μmであるが、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上、更に好ましくは400μm以上である。
また、本発明の皮膜の密度は、0.40〜0.90g/cm3であるが、好ましくは42〜0.80g/cm3、より好ましくは0.45〜0.75g/cm3である。
また、該皮膜は均一性が必要であり、皮膜の厚さ方向に平行な断面で2等分した上層、下層の各層に占める微細孔における空隙間内接円面積の平均値は、該皮膜全層平均値の±25%以内、好ましくは±20%以内、より好ましくは±14%以内である。上層および下層の微細孔面積占有率は、該皮膜全層での微細孔面積占有率の±10%以内、好ましくは±5%、より好ましくは±3%以内である。
本発明の皮膜において、皮膜表面に形成された微細孔の開口部の孔径は表面の平滑性に優れる点で20μm以下である。20μmより大きいと、皮膜表面の表面粗さが低下する。当該観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
本発明の皮膜の表面粗さ(最大高さRz)は、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm、更に好ましくは20μmである。表面粗さ(Rz)が30μm以下であれば、優れた表面平滑性を有する皮膜を得ることができる。なお、表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601(2001年)規格に基いて求めた値である。
表面粗さ(Rz)が30μm以下の皮膜を得るために、支持部材の大きさ(熱膨張支持部材の場合は、最大膨張時における大きさ、既膨張カプセルの場合は、配合時における大きさ)は、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
また、本発明の皮膜の厚み方向の断面の総面積に対する直径75μmを超える巨大孔が占める割合が、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下である。10%以下であれば、皮膜の表面粗さ(Rz)を30μm以下にすることができ、優れた表面平滑性を有する皮膜を得ることができる。なお、上記割合の測定方法は、特に限定されないが、例えば実施例で記載の方法が挙げられる。
[皮膜形成方法]
本発明の皮膜の形成方法として、下記の工程(1)〜(4)を含む、皮膜形成方法が挙げられる。
工程(1):(A)親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体、(B)アンモニウム塩、(C)増粘剤、(D)支持部材、を含む水系分散液を調製する工程
工程(2):当該水系分散液を基材の少なくとも一方の面に塗布して塗膜を形成する工程
工程(3):当該塗膜を感熱ゲル化処理してゲル化膜を形成する工程
工程(4):当該ゲル化膜を乾燥固化させて皮膜を形成する工程
〔工程(1):水系分散液の調製〕
本発明の水系分散液は、親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体((A)成分)、アンモニウム塩((B)成分)、増粘剤((C)成分)、支持部材((D)成分)を含む。また、必要に応じて、架橋剤((E)成分)や、その他の添加剤を含むことが好ましい。
以下、本発明の水系分散液に含まれる成分について説明する。
<(A)成分:親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体>
本発明で用いられる高分子弾性体は、親水性官能基を有する自己乳化タイプの水系エマルジョン性樹脂である親水性官能基含有樹脂よりなる。親水性官能基含有樹脂としては、上述のものが挙げられる。
親水性官能基含有樹脂の合成法としては、例えば、(a)有機ジイソシアネート、(b)ポリオール、(c)親水性官能基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られる親水性官能基含有イソシアネート基末端プレオリマーを中和し、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて鎖伸長反応をさせて得ることができる。
(a)有機ジイソシアネート(以下、(a)成分ともいう)としては、2個のイソシアネート基を有する脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートを使用することができる。
このような(a)成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等を挙げられる。
また、これらのアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化又はトリマー化反応生成物等も使用することもでき、更に上記化合物以外の有機ジイソシアネートを使用することもできる。これらの(a)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、得られる高分子弾性体及び形成される皮膜の耐黄変性、熱安定性、光安定性の点から、脂肪族ジイソシアネート化合物及び脂環式ジイソシアネート化合物が好ましく、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
(b)ポリオール(以下、(b)成分ともいう)としては、2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限は無く、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等の他、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)アジペート、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。
これらの(b)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、より十分な耐久性を付与できるという観点から、ポリカーボネートポリオール又はポリエーテルポリオールが好ましい。
(b)成分の平均分子量としては、好ましくは500〜5000、より好ましくは1000〜3000である。
(c)親水性官能基と2個以上の活性水素とを有する化合物(以下、(c)成分ともいう)としては、例えば、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
また、(c)成分として、親水性官能基を有するジオールと、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジスルホン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ジスルホン酸等とを反応させて得られるペンダント型の親水性官能基を有するポリエステルポリオール等も挙げられる。上記親水性官能基を有するジオールに代えて、ジオール成分として親水性官能基を有さないジオールを混合して反応させてもよい。
なお、これらの(c)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(c)成分の配合量により、(A)成分の酸価が調製される。(A)成分の酸価が、好ましくは5〜50KOHmg/g、より好ましくは10〜40KOHmg/gとなるように、(c)成分を配合することが好ましい。(A)成分の酸価が5KOHmg/g以上であれば、樹脂の機械的安定性、他成分との混和安定性に優れ、(A)成分の酸価が50KOHmg/g以下であれば、適当な粘度を有する水系分散液を調製することができ、また得られる皮膜の耐水性の点でも好ましい。ここで、酸価の測定方法は、例えば日本工業規格JIS K5400等に開示されている方法による。
上記(a)〜(c)成分を反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成する際、必要に応じて、2個以上の活性水素原子を有する低分子量鎖伸長剤を使用することができる。低分子量鎖伸長剤の分子量としては、好ましくは400以下、より好ましくは300以下である。
具体的な低分子量鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミン等を挙げられる。
これらの低分子量鎖伸長剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性官能基含有イソシアネート基末端プレポリマーを得る際の合成法としては、特に制限は無く、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により得られる。この際の反応温度は、好ましくは40〜150℃である。
また、反応の際には、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫−2−エチルヘキサノエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の反応触媒を添加してもよい。
また、親水性官能基含有イソシアネート基末端プレポリマーの中和方法としては、調製前又は調製後において、適宜公知の方法を用いることができる。その際、用いる中和剤としては、特に制限は無く、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等を挙げられる。これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン等のヒドロキシル基を有さない第3級アミン類が好ましい。
次に、中和後に水中で自己乳化させる際に用いる乳化機器としては、特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等を挙げることができる。また、当該自己乳化は、乳化剤を用いずに、室温〜40℃の温度範囲で水中に自己乳化させて、イソシアネート基と水との反応を極力抑えることが好ましい。更に、このように自己乳化させる際には、必要に応じて、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加してもよい。
そして、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて鎖伸長反応させ、(A)親水性官能基含有樹脂の水系分散液を得ることができる。
(d)鎖伸長剤としては、アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物が好ましく、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、ヒドラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン;ジ第一級アミン及びモノカルボン酸から誘導されるアミドアミン;ジ第一級アミンのモノケチミン等の水溶性アミン誘導体;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、琥珀酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1’−エチレンヒドラジン、1,1’−トリメチレンヒドラジン、1,1’−(1,4−ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体を挙げられる。これらのポリアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、鎖伸長反応は、反応温度20〜40℃、反応時間30〜120分であることが好ましい。
(A)成分の100%モジュラスの値としては、好ましくは1〜9MPa、より好ましくは2〜6MPaである。100%モジュラスの値が1MPa以上であれば、優れた耐摩耗性を有する皮膜を形成することができ、9MPa以下であれば、柔軟な風合いの皮膜を得ることができる。なお、100%モジュラスの値とは、ダンベル状3号形の試験片を用いて、標線間距離が100%伸びたとき(2倍に伸びたとき)における所定伸び引張応力(MPa)の値であり、JIS K 6251(1993)に準じて測定される。
また、(A)成分の親水性官能基含有量は、好ましくは0.5〜4.0質量%、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。親水性官能基含有量が0.5質量%以上であれば、(A)成分の貯蔵安定性が良く、また、4.0質量%以下であれば、感熱ゲル化温度が適切な温度範囲に収まり、短時間でのゲル化処理が可能となる。
更に、(A)成分は、自己乳化した状態で保有することが好ましく、その状態のpH値は、好ましくは7.0〜9.0、より好ましくは7.5〜8.5である。pH値が7.0以上であれば、(A)成分の貯蔵安定性が良好であり、pHが9.0以下であれば、十分なマイグレーション防止の効果が得られる。
<(B)成分:アンモニウム塩>
(B)成分のアンモニウム塩を添加することで、(A)成分の感熱ゲル化温度が90℃程度あるものでも、60℃程度の温度でゲル化させることができる。
(B)成分の含有量は、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは0.25〜10.0質量部、より好ましくは0.5〜9.0質量部、更に好ましくは1.0〜7.0質量部である。含有量が0.25以上であれば、感熱ゲル化処理によるゲル化を十分に行うことができ、皮膜表面のクラックの発生を抑制することができる。また、含有量が10.0以下であれば、基材に対する十分な剥離強力等の物性を向上させることができ、皮膜表面の微細なクラックの発生を抑制することができる。
(B)成分としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸やカルボン酸等のアンモニウム塩が挙げられる。カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;リンゴ酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;乳酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等が挙げられる。
これらの中でも、混合液のゲル化、乾燥工程中における(A)成分の皮膜形成性、及び乾燥中の揮発又は乾燥後の水洗によって容易に除去可能で、皮膜に残留する
ことが少ないという観点から、硫酸アンモニウム塩、又は炭素数1〜10のカルボン酸のアンモニウム塩が好ましく、硫酸アンモニウム塩、又は炭素数1〜4のカルボン酸のアンモニウム塩がより好ましい。なお、これらの(B)成分は、市販されているものを用いてもよい。
本発明の皮膜形成方法において、(B)成分を(A)成分と混合する際には、(B)成分を固体(粉体)の状態で混合することもできるが、(A)成分の乳化液の安定性保持の観点から、(B)成分を水に溶かして水溶液の状態で(A)成分と混合することがより好ましい。この際の(B)成分を含む水溶液のpH値は、好ましくは7.0〜9.0、より好ましくは7.5〜8.5である。pH値が7.0以上であれば、(A)成分と混合する際に、析出物の発生を抑えることができ、pH値が9.0以下であれば、(A)成分の十分なマイグレーション防止の効果が得られる。
<(C)成分:増粘剤>
増粘剤を含むことで、水系分散液の粘度が高くなり、均一で厚い皮膜を形成することができ、また、工程(4)の際、皮膜表面のクラックの発生を抑えることもできる。
増粘剤としては、ノニオン性増粘剤が好ましい。ノニオン性増粘剤を用いることで、感熱ゲル化処理により昇温しても、水系分散液から形成された膜の粘度は、塗布直後の粘度で維持されるか、もしくは上昇するため、密度の低い基材への水系分散液の沈み込みを防止することができる。そのため、基材の種類によらず、厚い皮膜を形成することができる。
ノニオン性増粘剤としては、(B)成分の添加や感熱ゲル化処理により、皮膜のゲル化が完了するまでの過程で生じる水系分散液の温度やpHの変化による増粘効果の変化が少ないものが好ましく用いられ、会合型増粘剤、水溶性高分子増粘剤の中から選択される。
会合型増粘剤としては、例えば、特開昭54−80349号公報、特開昭58−213074号公報、特開昭60−49022号公報、特公昭52−25840号公報、特開平9−67563号公報、特開平9−71766号公報等に記載されたウレタン系の会合型増粘剤;特開昭62−292879号公報、特開平10−121030号公報等に記載されたノニオン性ウレタンモノマーを会合性モノマーとして他のアクリルモノマーと共重合して得られる会合型増粘剤;WO9640815等に記載のアミノプラスト骨格を有する会合型増粘剤等が挙げられ、これらのうちノニオン性の性質の強いものが好ましい。
これらの中でも、多孔性構造の孔の緻密さ及び強度保持力の観点から、分子鎖中にポリエチレングリコール鎖とウレタン結合とを有する会合型増粘剤がより好ましい。市販品としては、ネオステッカーS(日華化学社製)等が挙げられる。
水溶性高分子系増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系誘導体;可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、メチル澱粉等の澱粉系誘導体;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系;グアガム、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ローカストビンガム、クインスシード、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、澱粉、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸及びその塩等の天然多糖類系;カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の天然たん白類系;ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレングリコールジステアリン酸エステル、ミリストイルポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ラウレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ミリステート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)パルミテート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)イソステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)オレート等のポリオキシアルキレン系非イオン型ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ等のビニル系ポリマー等、及びこれらの混合物が挙げられ、これらのうちノニオン性の性質の強いものが選択される。市販品としてはHEC AX−15(住友精化株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、アロンA−50P(東亞合成株式会社製、スルホン酸モノマー共重合型アクリル系増粘剤)、ケルザン(三晶株式会社製、高分子多糖類(キサンカンダム))等が挙げられる。
なお、水溶性高分子系増粘剤を使用して皮膜を形成した場合は、皮膜中の増粘剤の経時的なブリードや、吸湿によるベタツキの発生を抑制するため、皮膜形成後に洗浄工程を経ることが好ましい。
これらのノニオン性増粘剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(C)成分の含有量は、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、更に好ましくは1.5〜10質量部である。0.5質量部以上であれば、工程(3)の感熱ゲル化処理が完了するまでの間、水系分散液の粘度を十分に高い状態で維持できるため、均一で厚い皮膜を形成することができる。また、乾燥処理の際の皮膜表面のクラック等の発生を抑制することもできる。一方、20質量部以下であれば、取り扱いに最適な範囲の粘度を有する水系分散液を得ることができる。
調製直後の本発明の水系分散液の粘度は、単一円筒型回転粘度計を用いて6回転/分で測定した場合、好ましくは10〜100Pa・s、より好ましくは20〜80Pa・s、更に好ましくは30〜75Pa・sである。粘度が10Pa・s以上であれば、多孔質層を形成する際に気泡がつぶれにくく、100Pa・s以下であれば、分散液が流れずに基材上への塗布することができる。なお、上述のとおり、当該水系分散液の粘度は、工程(3)の感熱ゲル化処理が完了するまで、上記調製直後の粘度で維持されるか、もしくは上昇するため、加熱中の粘度の低下は起こらず、密度の低い基材への水系分散液の沈み込みを防止することができる。
<(D)成分:支持部材>
上述のとおり、水系分散液に対して、支持部材を含有させることで、(A)成分の粒子状態を維持したまま凝集させて皮膜化することができ、粒子同士の間隙が、皮膜化後には微細孔として形成させることができる。
支持部材としては、上述したものが挙げられるが、既膨張カプセルが好ましく、市販品として、マツモトマイクロスフェアー(登録商標)(松本油脂製)等の既膨張カプセルが
挙げられる。
支持部材の添加量は、皮膜の厚さ方向の微細孔の構造ばらつきが小さい点と表面平滑性および皮膜強度のバランスの観点から、(A)成分の固形分の体積比に対して、好ましくは0.2〜3.0、より好ましくは0.5〜2.5、更に好ましくは1.0〜2.0である。なお、支持部材として既膨張カプセルを用いる場合、上記添加量の範囲は、(A)成分の固形分の体積比に対し、既膨張カプセルの膨張時における体積比を表す。
<(E)成分:架橋剤>
本発明の水系分散液において、架橋構造を形成し、皮膜の耐久性を向上させる観点、及び硬化を促進し生産効率を向上させる観点から、(A)成分の親水性官能基と反応する(E)架橋剤を併用することが好ましい。
(E)成分の含有量は、上記の観点から、(A)成分の固形分100質量部に対して、好ましくは1.0〜5.0質量部、より好ましくは1.2〜4.5質量部、更に好ましくは1.5〜4.0質量部である。
(E)成分としては、特には制限がないが、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が好ましい。
オキサゾリン系架橋剤としては、オキサゾリニル基を2個以上有する化合物を用いることができ、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとの共重合物、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとの共重合物、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとスチレンとの共重合物、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとスチレンとアクリロニトリルとの共重合物、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとスチレンとアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンとの共重合物等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルポリメチルポリイソシアネート等の液状MDI、粗MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート環である三量体、トリメチロールプロパンアダクト体等を、ブロック化剤によりイソシアネート基を保護した化合物が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基、アミノ基等のイソシアネート基と反応し得る官能基を1個有する化合物とを、カルボジイミド化触媒の存在下で反応させて得られるポリカルボジイミド系樹脂等を使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート基と反応し得る官能基を1個有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのランダム又はブロック共重合物のモノアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<その他の添加剤>
水系分散液に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の添加剤を併用することができる。添加剤としては、例えば、顔料、染料、補助バインダー、レベリング剤、チクソトロピー付与剤、消泡剤、充填剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、減粘剤、湿潤剤、着色防止剤等を挙げられる。このような添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の水系分散液は、界面活性剤を含まないことが好ましい。
本発明の水系分散液における水の添加量は、固形分と粘度の調製のため、分散液が所望の粘度を有するように適宜調製される。具体的には、水系分散液の固形分100質量部に対して、好ましくは20〜250質量部、より好ましくは30〜200質量部である。
〔脱泡処理〕
本発明の皮膜形成方法における発泡処理の手段としては、発泡の均一性と、皮膜表面の表面粗さの低減の観点から、(D)成分を含有させること以外に特段行わないことが好ましい。(D)成分の支持部材を含有させることで、上述のとおり、微細孔を形成することが可能である。
ただし、工程(1)の水系分散液の調製過程において、気泡が水系分散液中に噛み込んで発泡する場合があり、皮膜表面に直径5μmを超えるピンホールの発生や、表面粗さ(Rz)が30μmを超えてしまうことや、皮膜中に支持部材によるもの以外の巨大な発泡孔がランダムに形成され、陥没欠点が生じて平滑性が悪化する等の問題の発生する場合がある。このような問題の発生を防ぐために、水系分散液を調製後、更に脱泡処理を施すことが好ましい。脱泡処理の方法としては、特に限定されないが、生産性の観点から、減圧脱泡する方法が好ましい。
[工程(2):塗膜の形成]
本発明の水系分散液を基材に塗布して塗膜を形成する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば浸せき塗工、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ハイドロバーコーター、トランスファロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ロールコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等が挙げられ、一部、もしくは全面に塗布することができる。
塗布する基材は、研磨パッドに求められる厚み、密度の均一性を考慮すると、人工皮革用基体、合成ゴム、天然ゴム、フィルム、シート等が好適である。
上記の基材の中でも、例えば銀付調人工皮革を製造するために用いる人工皮革用基体の場合には、特に、熱水抽出タイプの海島繊維不織布を用いることが好ましい。熱水抽出タイプの海島繊維不織布は、熱水抽出処理により、海島繊維を極細化すると同時に、皮膜形成に用いたノニオン性増粘剤の洗浄も可能となる。また、本発明の皮膜は、(A)親水性官能基含有樹脂からなるために、熱水処理による膨潤率が低く、耐熱水性に優れており、熱水による皮膜の破損を抑えることができる。
このような海島繊維(極際繊維発生型繊維)の極細繊維を構成するポリマー(島成分)としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロンをはじめとする溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、イソフタル酸変性ポリエステル、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレートをはじめとする溶融紡糸可能なポリエステル類、ポリプロピレンで代表されるポリオレフィン類等から選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。
また、抽出除去される成分(海成分)としては、水溶性高分子成分から構成され、かつ紡糸可能な成分であることが重要である。例えば、水溶性高分子成分としては、水又は水系溶剤で抽出処理できる高分子であれば、公知の高分子が使用できるが、水系溶剤で溶解可能なポリビニルアルコール共重合体類を用いることが好ましい。この極細繊維発生型繊維の海成分と島成分の容量比は1:2〜2:1であって、海成分を抽出した後の極細繊維の繊度としては、風合いや充実感の点で0.01〜0.0001dtexの範囲がよい。
上記の海島繊維不織布は、20〜75mm長の短繊維をカード法により短繊維ウェッブとした後にニードルパンチや高速流体により絡合処理して製造してもよく、また、スパンボンド法のような直接法により紡糸と同時に長繊維ウェッブとした後、ニードルパンチや高速流体により絡合処理して製造してもよい。
[工程(3):ゲル化膜の形成]
前工程で基材上に形成した塗膜は、感熱ゲル化処理してゲル化膜にする。感熱ゲル化処理を行い、ゲル化膜を形成することで、ゲル化なしに乾燥処理により水分を蒸発させる場合に比べ、クラック等の発生を抑えることができる。塗膜がゲル化する感熱凝固温度は、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。ここで感熱凝固温度とは、水系分散液又は塗膜がゲル化するときの温度であり、前記水系分散液50gを100mLのガラス製ビーカーに取り、内容物を攪拌しつつ、そのビーカーを95℃の熱水浴中で徐々に加熱し、内容物が流動性を失い凝固する時の温度である。感熱凝固温度が30℃以上であれば、夏場に気温雰囲気下において、分散液がゲル化してしまう事態を防ぐことができ、また、80℃以下であれば、感熱ゲル化がシャープに発現されるため、次の乾燥工程においてマイグレーション防止性を十分に発揮することができる。
感熱ゲル化処理としては、湿熱処理や、赤外線による加熱処理等が挙げられるが、特に、良好なゲル化状態を得る観点から、スチームによる湿熱処理が好ましい。スチームによる湿熱処理は、スチームの温度を水系分散液の感熱凝固温度以上とすれば加工可能であるが、より安定的に生産を行うために、スチームの温度を「感熱凝固温度+10℃」以上の温度とすることが好ましい。具体的なスチームの温度としては、好ましくは40〜140℃、より好ましくは60〜120℃である。
また、スチームによる湿熱処理を行う際の湿度は、100%に近づくほど表面からの乾燥が抑えられるため好ましい。スチームの処理時間は、充分にゲル化膜を形成させる観点から、好ましくは5秒〜30分、より好ましくは10秒〜20分である。
なお、スチームによる湿熱処理と他の方法との併用も可能である。他の方法としては、例えば、赤外線、電磁波、高周波等の凝固方法が挙げられる。
[工程(4):皮膜の形成]
前工程の感熱ゲル化処理して得られたゲル化膜は、乾燥固化されて皮膜を形成する。乾燥固化の方法としては、熱風加熱、赤外線加熱、電磁波加熱、高周波加熱、シリンダー加熱等の乾燥方法が挙げられる。これらの方法の中でも、ランニングコストの面や連続生産性の観点から、熱風乾燥が好ましい。なお、これらの乾燥方法は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
乾燥温度は、形成した皮膜が熱により変質劣化しない程度で、かつ充分に乾燥させることができること、及び乾燥効率向上の観点から、好ましくは60〜190℃、より好ましくは80〜150℃である。また、処理時間は、充分に乾燥させること、及び生産性の観点から、好ましくは1〜20分、より好ましくは2〜5分である。
[シート状物]
上記のように基材上に本発明の皮膜を形成してなる研磨パッドは、厚さ方向に均一な多数の微細孔が混在した厚い皮膜を有しており、膜表面の開口径のバラツキが少なく、且つ表面の凹凸が少なく平坦性が良好で厚さ方向の構造差が少ないため、仕上研磨加工中における研磨パッドの表面層の磨耗による開口率安定性が良好で、研磨パッドの用途に好適である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
[実施例1]
<皮膜の製造>
(A)カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の自己乳化型水系エマルジョン(ポリカーボネート系、90℃までは単独では感熱ゲル化しないが、硫酸アンモニウムを添加すれば60℃でゲル化する。)250質量部(そのうち固形分が100質量部)、(B)硫酸アンモニウム5.0質量部、(C)増粘剤(商品名:ケルザン、三晶株式会社製)1.5質量部、(D)支持部材として粒径30μmの既膨張カプセル(商品名:マツモトマイクロスフェアーF−80SDE 松本油脂製)2.0質量部(発泡倍率約1.75)、及び(E)架橋剤(商品名:NKアシストCI、日華化学株式会社製)3.75質量部を配合し、減圧脱泡処理を行ない、配合過程で噛み込んだ気泡を除去して、水系分散液を得た。そして、当該水系分散液を、不織布にダイレクトコートにより塗布し、厚さ800μm(wet)の塗膜を形成した。
次に、この塗膜を、相対湿度60%で90℃のスチームによる感熱ゲル化処理を10分間行い、ゲル化膜を得た。その後、150℃で10分間、熱風乾燥し、ゲル化膜を乾燥固化させて発泡皮膜を形成した。なお、発泡皮膜の表面は、クラック、ピンホール共に存在せず、均一な面であった。
<得られた皮膜の評価項目>
(1)皮膜厚さの測定
得られた皮膜の厚み方向の断面を電子顕微鏡で100倍程度に拡大して幅1mm程度の視野で5箇所撮影した。それぞれで測定した厚みの平均値を皮膜厚さとした。
上記方法により測定した実施例1の皮膜の厚さは580μmであった。
(2)皮膜断面における微細発泡の有無
得られた皮膜の厚み方向の任意の断面を電子顕微鏡で1000倍〜2000程度に拡大して微細孔の有無を確認した。巨大孔の平均孔径は、長径の大きさ上位50個の平均値を平均孔径とした。上記方法により観察の結果、巨大孔の周辺に多数の微細孔が確認され、上記方法により測定した実施例1の巨大孔の平均孔径は32μmであった。
皮膜断面における微細孔及び支持部材の面積占有率測定
<微細孔の空隙間内接円面積>
皮膜の厚さ方向の各層の任意の断面を30倍の倍率により走査型電子顕微鏡で観察した。幅1mm、厚さ0.5mm程度の視野で4箇所撮影した写真を画像解析ソフトPopImaging(Digital being kids.Co製)を用い、動的閾値法で画像を二値化し、微細孔の空隙部に内接円を描き、その内接円面積を空隙間内接円面積として計測した。描いた内接円面積の中で10μm以上のものを除去し、残りの描いた全ての内接円面積を数平均したものを空隙間内接円面積の平均とし、それぞれ皮膜全層、および該皮膜全層を厚さ方向に2分割して上層、下層に分けてそれらの平均を求めた。
<微細孔の面積占有率>
上記方法で測定した微細孔の総面積を上層、下層、皮膜全層とそれぞれ求め微細孔総面積を測定した皮膜断面積で除した値で比較した。
<支持部材の面積占有率>
上記方法で測定した支持部材の総面積を上層、下層、皮膜全層とそれぞれ求め微細孔総面積を測定した皮膜断面積で除した値で比較した。
上記方法により測定した実施例1の皮膜の1)〜3)はそれぞれ1)上層9.9%、下層−10.1%、2)上層2.6%、下層−2.6%、3)上層−2.1%、下層2.0%であった。
(4)皮膜表面における開口径の測定
得られた皮膜の表面を電子顕微鏡で1000〜2000倍程度に拡大して50個の開口の長径を測定し、その平均値を開口径とした。
上記方法により測定した実施例1の皮膜表面の開口径は3μmであった。
(5)皮膜の密度の測定
水系分散液を不織布上に塗布、乾燥後の固形分付着量を、(2)で測定した皮膜厚さを基に皮膜の体積を算出し、当該体積で除して皮膜の密度とした。
上記方法により測定した実施例1の皮膜の密度は0.55(g/cm3)であった。
(6)皮膜の表面粗さの測定
JIS B 0601(2001年)規格に準拠して、Zygo社製白色干渉顕微鏡(New View 6000)を用いて、対物レンズ:2.5倍、測定範囲2.82mm×2.13mmで、表面粗さ(最大高さRz)を測定した。
上記方法により測定した実施例1の皮膜の表面粗さは20μmであった。
(7)皮膜断面の総面積に対する直径75μmを超える巨大孔の占める割合の測定
得られた皮膜の厚み方向の断面を電子顕微鏡で100倍程度に拡大して幅1mm程度の視野で5箇所撮影し、画像を写真用紙に印刷した。それぞれの画像が印刷された写真用紙について皮膜部分をカットして重量を測定した後、長径75μmを超える部分をカットして重量を測定して、直径75μmを超える巨大孔の占める割合とした。
上記方法により測定した実施例1の皮膜断面の総面積に対する直径75μmを超える巨大孔の占める割合は4%であった。
得られた皮膜つき不織布を用いて、研磨砥粒を用いて1分間ガラスを研磨した後の皮膜の研磨面と10分間研磨した後の皮膜研磨面を電子顕微鏡で倍率100倍で確認したところ、ほとんど差が見られなかった。
[比較例1]
(D)支持部材を配合しない以外は、実施例1と同様の方法にて発泡皮膜を作製した。得られた皮膜は、微細孔が潰れて消滅した状態であったため、研磨処理に適するものではなかった。そして、実施例1と同様の方法により、上記(1)〜(7)の項目について測定、評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
(D)支持部材を配合する代わりに、ステアリン酸アンモニウム水分散液(商品名:ノプコDC−100−A、サンノプコ株式会社製)5質量部と、アニオン性界面活性剤(商品名:サンレックスNTB−27N、日華化学株式会社製)7.5質量部を添加し、増粘剤の添加量を2.5部にして、機械発泡で1.5倍に発泡した以外は、実施例1と同様の方法にて発泡皮膜を有する不織布を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、上記(1)〜(7)の項目について測定、評価した。結果を表1に示す。得られた皮膜つき不織布を用いて、研磨砥粒を用いて1分間ガラスを研磨した後の皮膜の研磨面と10分間研磨した後の皮膜研磨面を電子顕微鏡で倍率100倍で確認したところ、両研磨面とも表面のばらつきが大きいものであった。
[比較例3]
調製した水分散液を不織布上に塗布する前に脱泡処理を実施せず、塗布前の発泡倍率が1.75倍である状態で攪拌直後の水系分散液を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて発泡皮膜を有する不織布を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、上記(1)〜(7)の項目について測定、評価した。結果を表1に示す。得られた皮膜つき不織布を用いて、研磨砥粒を用いて1分間ガラスを研磨した後の皮膜の研磨面と10分間研磨した後の皮膜研磨面を電子顕微鏡で倍率100倍で確認したところ、両研磨面とも表面のばらつきが大きいものであった
Figure 2013176824
実施例においては、既発泡カプセルを添加して、脱泡処理後に基材上に塗布してゲル化することで、皮膜断面に多数の微細孔が発現した。また、皮膜表面における開口部の大きさ、分布が均一であり、粒径30μmの既発泡カプセルを使用したため、表面粗さも良好であった。
一方、比較例1においては、支持部材を配合していないため、皮膜断面は微細発泡が無くフィルム化しており、密度が高く、皮膜断面に微細孔も有さない皮膜であった。
比較例2においては、支持部材を配合する代わりに機械発泡にて皮膜の低比重化を実施した。しかしながら、皮膜断面で機械発泡による巨大孔の周囲は微細発泡は無く、フィルム化した状態となった。また、皮膜表面における開口径のばらつきも大きく、平坦性に劣る皮膜であった。
比較例3においては、脱泡処理をしていない水系分散液を用いたため、皮膜断面におけ
る微細発泡が減少すると共に、皮膜表面における開口径のばらつきが大きくなり、平坦性が不良であった。
本発明の皮膜または皮膜つき基材は、レンズ、平行平面版、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)の研磨材用途に好適である。

Claims (2)

  1. 親水性官能基含有樹脂からなる高分子弾性体および支持部材から形成された厚さが100〜800μm、密度が0.40〜0.90g/cm3の皮膜であって、該皮膜の厚さ方向の断面において、高分子弾性体の粒子がその粒子状態を維持してゲル化しその一部が接合した後に粒子同士の間隙により形成された微細孔と、平均径10〜50μmの支持部材とが混在し、且つ厚さ方向に平行な断面で、該皮膜を厚さ方向に2等分した上層、下層が以下1)〜3)の特徴を有する皮膜。
    1)上層および下層に存在する微細孔の空隙間内接円面積の平均値がそれぞれ該皮膜全層平均値の±25%の範囲内であること
    2)上層および下層の微細孔の面積占有率は、該皮膜全層の微細孔の面積占有率の±10%の範囲内であること
    3)上層および下層の支持部材の面積占有率は、該皮膜全層の支持部材の面積占有率の±10%の範囲内であること
  2. 請求項1に記載の皮膜を研磨面に用いた研磨パッド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016007701A (ja) * 2014-06-25 2016-01-18 ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド 化学機械研磨法
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