JP2013174528A - オーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法及び寿命評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面に析出したσ相の面積率で寿命の前半を評価し、表面に発生したボイドの面積率で寿命の後半を評価することで、オーステナイト系ステンレス鋼の寿命を精度良く評価可能な寿命評価方法及び寿命評価装置を提供する。
【解決手段】まず、検査対象部位の表面に析出したσ相のσ相面積率を算出する。続いて、検査対象部位の表面に発生したボイドのボイド個数密度を算出する。そして、検査対象部位のσ相面積率が、第1閾値σth以下か否かを判定する。検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、σ相面積率を第3関係式のA領域の曲線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。一方、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、ボイド個数密度を第3関係式のB領域の直線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
【選択図】図1
【解決手段】まず、検査対象部位の表面に析出したσ相のσ相面積率を算出する。続いて、検査対象部位の表面に発生したボイドのボイド個数密度を算出する。そして、検査対象部位のσ相面積率が、第1閾値σth以下か否かを判定する。検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、σ相面積率を第3関係式のA領域の曲線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。一方、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、ボイド個数密度を第3関係式のB領域の直線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
【選択図】図1
Description
本発明は、高温下で使用される機械部品に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法及び寿命評価装置に関する。
火力プラントのボイラ等は、高温・高圧環境で運転されるので、ボイラ等を構成するオ−ステナイト系ステンレス鋼には、長期にわたる運転によりクリープ等による損傷が蓄積されることがある。そこで、この種のプラントの運用にあたっては、オ−ステナイト系ステンレス鋼の精度の高い寿命評価を行って信頼性の向上を図ることが、長期にわたる安定的な運用を確保する上で肝要である。
例えば、特許文献1には、オーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法が開示されている。この寿命評価方法は、オーステナイト系ステンレス鋼の表面の一定面積中の結晶粒界に生成したσ相等の金属間化合物の長さ、チタンカーバイト、クロムカーバイト等の炭化物の長さ(以下、金属間化合物及び炭化物をまとめて粒界析出物という)及びボイドの結晶粒界方向の長さを計測する工程と、観察した領域中に観察されたすべての粒界析出物及びボイドの長さを合計し、これを観察面積で除して粒界損傷線密度を算出する工程と、予め実験によって求めた粒界損傷線密度とクリープ寿命消費率との関係線図に該測定値をあてはめることによってオーステナイト系ステンレス鋼の寿命消費率を算出する工程と、を備えている。
この寿命評価方法は、高温下でクリープ等による損傷の蓄積に伴って、まず、結晶粒界に粒界析出物が析出し、その後、寿命の後半になると粒界析出物に隣接してボイドが発生するという知見に基づいて、粒界損傷線密度を用いてクリープ寿命消費率を算出している。
そして、特許文献1では、粒界損傷線密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することが有効であることを確認するために、テストピースによって算出されたクリープ寿命消費率と、実際にボイラに使用された部位を計測して得られたクリープ寿命消費率とを比較している。
テストピースによってクリープ寿命消費率を算出するにあたっては、テストピースの一定面積中の粒界析出物の長さの合計(以下、粒界析出物線密度という)及び一定面積中のボイドの長さの合計(以下、ボイド線密度という)を計測している。そして、図7に示すように、粒界析出物線密度とクリープ寿命消費率との関係線図、ボイド線密度とクリープ寿命消費率との関係線図を作成している。また、比較検討のため、一定面積中の粒界析出物の数(以下、粒界析出物数密度という)及び一定面積中のボイドの数(以下、ボイド数密度という)についても計測し、それぞれ粒界析出物数密度とクリープ寿命消費率との関係線図、ボイド数密度とクリープ寿命消費率との関係線図を作成している。
そして、粒界析出物線密度、ボイド線密度、粒界析出物数密度、ボイド数密度に基づいて算出されたクリープ寿命消費率よりも、上述した粒界損傷線密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することが有効であるとしている。
そして、粒界析出物線密度、ボイド線密度、粒界析出物数密度、ボイド数密度に基づいて算出されたクリープ寿命消費率よりも、上述した粒界損傷線密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することが有効であるとしている。
特許文献1に記載の寿命評価方法では、粒界損傷線密度とクリープ寿命消費率との関係線図に基づいて、寿命の初期から末期までを一様に評価している。寿命の前半部分を評価する際に、寿命の前半領域では、ほとんど発生せず、又発生しても発生数にばらつきが有るボイドの長さを考慮しているので、寿命の前半を精度良く評価できていないおそれがあった。
また、粒界析出物線密度と粒界析出物数密度とを比較すると、本来であれば同様の傾向を示すと考えられる関係線図間に大きなばらつきが生じているため、粒界析出物線密度の結果内容を含む粒界損傷線密度の精度に疑問が生じるという問題点があった。
そして、粒界析出物として、金属間化合物及び複数種の炭化物の長さを計測し、これらの計測値をすべて合算しているため、計測に手間がかかるとともに、計測誤差が積み重なって粒界析出物の長さの合計値の精度が低下するおそれがあるという問題点があった。
また、粒界析出物線密度と粒界析出物数密度とを比較すると、本来であれば同様の傾向を示すと考えられる関係線図間に大きなばらつきが生じているため、粒界析出物線密度の結果内容を含む粒界損傷線密度の精度に疑問が生じるという問題点があった。
そして、粒界析出物として、金属間化合物及び複数種の炭化物の長さを計測し、これらの計測値をすべて合算しているため、計測に手間がかかるとともに、計測誤差が積み重なって粒界析出物の長さの合計値の精度が低下するおそれがあるという問題点があった。
そこで本発明は、上述したような従来技術の状況の下になされた発明であって、表面に析出したσ相の面積率で寿命の前半を評価し、表面に発生したボイドの面積率で寿命の後半を評価することで、オーステナイト系ステンレス鋼の寿命を精度良く評価可能な寿命評価方法及び寿命評価装置を提供することを目的としている。
本発明は、上述したような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法は、所定の温度下で使用される機械部品に用いられたオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法であって、
前記機械部品の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率を算出するσ相面積率算出工程と、
前記機械部品の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度を算出するボイド個数密度算出工程と、
前記機械部品と同一鋼種の試験体のσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するσ面積率取得工程と、
前記σ相析出率取得工程によって取得された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を予め作成する第1マップ作成工程と、
前記試験体のボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するボイド個数密度取得工程と、
前記ボイド個数密度取得工程によって取得された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を予め作成する第2マップ作成工程と、
σ相面積率算出工程にて算出されたσ相面積率を用いて、寿命を算出するためのクリープ寿命消費率の範囲を決定するクリープ寿命消費率閾値設定工程と、
前記第1マップ作成工程により作成された前記第1関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定工程と、
前記第2マップ作成工程により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記第1関係線図の前記第1閾値と前記第2関係線図の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成工程と、
前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記ボイド個数密度取得工程にて取得されたボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出工程と、を備えることを特徴とする。
前記機械部品の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率を算出するσ相面積率算出工程と、
前記機械部品の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度を算出するボイド個数密度算出工程と、
前記機械部品と同一鋼種の試験体のσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するσ面積率取得工程と、
前記σ相析出率取得工程によって取得された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を予め作成する第1マップ作成工程と、
前記試験体のボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するボイド個数密度取得工程と、
前記ボイド個数密度取得工程によって取得された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を予め作成する第2マップ作成工程と、
σ相面積率算出工程にて算出されたσ相面積率を用いて、寿命を算出するためのクリープ寿命消費率の範囲を決定するクリープ寿命消費率閾値設定工程と、
前記第1マップ作成工程により作成された前記第1関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定工程と、
前記第2マップ作成工程により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記第1関係線図の前記第1閾値と前記第2関係線図の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成工程と、
前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記ボイド個数密度取得工程にて取得されたボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出工程と、を備えることを特徴とする。
上記オーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法によれば、機械部品の表面に析出したσ相の面積を計測して得られるσ相面積率を、第3関係線図にあてはめることで、クリープ寿命消費率の前半領域を算出することができる。一般的に、寿命の前半領域では、機械部品の表面にボイドがほとんど発生せず、また発生してもボイドの発生個数にばらつきがあるため、ボイドの個数では寿命の前半領域を精度良く評価することができない。また、σ相は、寿命の前半領域で主に析出増加するものの、後半領域では析出増加が殆どなくなる。即ちσ相面積率は、クリープ寿命の前半領域で増加し、後半領域ではほとんど変化しなくなる。したがって、本発明の寿命評価方法のようにσ相面積率に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、前半領域の寿命を精度良く評価することができる。
また、本発明の寿命評価方法によれば、機械部品の表面に発生したボイドの個数を計測して得られるボイド個数密度を、第3関係線図にあてはめることで、クリープ寿命消費率の後半領域を算出することができる。上述したように、ボイドは、寿命の前半領域ではほとんど発生しないが、後半領域ではクリープボイドが増加発生するため、ボイド個数密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、後半領域の寿命を精度良く評価することができる。
したがって、本発明の寿命評価方法によれば、寿命の初期から末期にわたって精度良く寿命を評価することができる。これにより、機械部品の残寿命を精度良く算出できるため、残寿命内に点検時期等を設定することで、プラント等の稼働中に機械部品が破損することを防止できる。
また、上記発明において、σ相面積率算出工程及びボイド個数密度算出工程の前に、前記機械部品の表面を研磨する研磨工程及び当該研磨工程にて研磨された前記機械部品の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチング工程を実施することとしてもよい。
このように、機械部品の表面を研磨する研磨工程及び機械部品の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチング工程を実施するため、σ相のみを着色することができる。これにより、σ相の面積を正確に精度良く計測することができる。
また、σ相の面積を計測する際に、ボイドの個数も計測することができる。これにより、σ相面積率及びボイド個数密度を効率良く算出することができる。
また、σ相の面積を計測する際に、ボイドの個数も計測することができる。これにより、σ相面積率及びボイド個数密度を効率良く算出することができる。
また、上記発明において、前記所定の温度は、σ相析出温度領域であることとしてもよい。
このように、機械部品はσ相が析出可能な温度領域内で使用されているため、σ相が機械部品の表面等に析出することができる。これにより、σ相の面積率を算出することができる。
また、上記発明において、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値は、前記第2マップ作成工程にて作成された第2関係図の前記ボイド個数密度の値0に対応するクリープ寿命消費率以上であることとしてもよい。
このように、クリープ寿命消費率の範囲の上限値は、第2関係図のボイド個数密度が値0に対応するクリープ寿命消費率以上なので、第1関係線図と第2関係線図とは必ず交差することとなる。これにより、寿命の初期から末期までを第3関係線図にて評価することができる。
また、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ寿命消費率評価装置は、所定の温度下で使用される機械部品に用いられたオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ寿命消費率評価装置であって、
前記機械部品と同一鋼種の試験体の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するσ相面積率データベースと、
前記σ相面積率データベースに格納された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を作成する第1マップ作成手段と、
前記試験体の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するボイド個数密度データベースと、
前記ボイド個数密度データベースに格納された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を作成する第2マップ作成手段と、
前記第1マップ作成手段により作成された前記第1関係線図に基づいて、予め設定された所定のクリープ寿命消費率に対応するσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定手段と、
前記第2マップ作成手段により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記所定のクリープ寿命消費率に対応するボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記σ相面積率の前記第1閾値と前記ボイド個数密度の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成手段と、
前記機械部品の表面のσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記機械部品の表面の前記σ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機械部品の表面の前記ボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出手段と、を備えることを特徴とする。
前記機械部品と同一鋼種の試験体の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するσ相面積率データベースと、
前記σ相面積率データベースに格納された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を作成する第1マップ作成手段と、
前記試験体の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するボイド個数密度データベースと、
前記ボイド個数密度データベースに格納された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を作成する第2マップ作成手段と、
前記第1マップ作成手段により作成された前記第1関係線図に基づいて、予め設定された所定のクリープ寿命消費率に対応するσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定手段と、
前記第2マップ作成手段により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記所定のクリープ寿命消費率に対応するボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記σ相面積率の前記第1閾値と前記ボイド個数密度の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成手段と、
前記機械部品の表面のσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記機械部品の表面の前記σ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機械部品の表面の前記ボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出手段と、を備えることを特徴とする。
上記オーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価装置によれば、機械部品の表面に析出したσ相の面積を計測して得られるσ相面積率を、第3関係線図にあてはめることで、クリープ寿命消費率の前半領域を算出することができる。一般的に、寿命の前半領域では、機械部品の表面にボイドがほとんど発生せず、また発生してもボイドの発生個数にばらつきがあるため、ボイドの個数では寿命の前半領域を精度良く評価することができない。また、σ相は、寿命の前半領域で主に析出するものの、後半領域では増加が殆どなくなる。即ちσ相面積率は、クリープ寿命の前半領域で増加し、後半領域ではほとんど変化しなくなる。したがって、本発明の寿命評価装置のようにσ相面積率に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、前半領域の寿命を精度良く評価することができる。
また、本発明の寿命評価装置によれば、機械部品の表面に発生したボイドの個数を計測して得られるボイド個数密度を、第3関係線図にあてはめることで、クリープ寿命消費率の後半領域を算出することができる。上述したように、ボイドは、寿命の前半領域ではほとんど発生しないが、後半領域では頻繁に発生するため、ボイド個数密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、後半領域の寿命を精度良く評価することができる。
したがって、本発明の寿命評価装置によれば、初期から末期にわたって寿命を精度良く評価することができる。これにより、機械部品の残寿命を精度良く算出できるため、残寿命内に点検時期等を設定することで、プラント等の稼働中に機械部品が破損することを防止できる。
本発明によれば、表面に析出したσ相の面積率で寿命の前半を評価し、表面に発生したボイドの面積率で寿命の後半を評価することで、オーステナイト系ステンレス鋼の寿命を精度良く評価可能な寿命評価方法及び寿命評価装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、以下の実施形態では、本発明をボイラ等で使用される伝熱管に適用した例について説明するが、伝熱管に限定されるものではなく、高温下で使用され、オーステナイト系ステンレス鋼からなる機械部品について適用可能である。なお、高温とは、後述するσ相が析出可能な約600〜800℃の温度領域とする。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、以下の実施形態では、本発明をボイラ等で使用される伝熱管に適用した例について説明するが、伝熱管に限定されるものではなく、高温下で使用され、オーステナイト系ステンレス鋼からなる機械部品について適用可能である。なお、高温とは、後述するσ相が析出可能な約600〜800℃の温度領域とする。
図1は、本発明の実施形態に係るクリープ寿命消費率評価装置のブロック構成図である。
図1に示すように、伝熱管の検査対象部位の寿命を算出するクリープ寿命消費率評価装置1は、主に、記憶手段2と、入力手段4と、演算手段6と、表示手段8とを備えている。
図1に示すように、伝熱管の検査対象部位の寿命を算出するクリープ寿命消費率評価装置1は、主に、記憶手段2と、入力手段4と、演算手段6と、表示手段8とを備えている。
記憶手段2は、σ相面積率データベース10と、ボイド個数密度データベース12と、を有している。σ相面積率データベース10及びボイド個数密度データベース12には、それぞれ伝熱管の材料と同一のオーステナイト系ステンレス鋼からなる試験体(以下、テストピースという)にて計測されたσ相面積率、ボイド個数密度が格納されている。
σ相面積率とは、テストピース表面の一定面積中に析出したσ相の面積を、当該一定面積値で除したものであり、単位面積当たりのσ相の面積である。
また、ボイド個数密度とは、テストピース表面の一定面積中に発生したボイド数を、当該一定面積値で除したものであり、単位面積当たりのボイド数である。
σ相面積率とは、テストピース表面の一定面積中に析出したσ相の面積を、当該一定面積値で除したものであり、単位面積当たりのσ相の面積である。
また、ボイド個数密度とは、テストピース表面の一定面積中に発生したボイド数を、当該一定面積値で除したものであり、単位面積当たりのボイド数である。
σ相面積率及びボイド個数密度は、共にクリープ寿命消費率に紐付けられて格納されている。クリープ寿命消費率とは、クリープ試験によってテストピースが破断した時点に至るまでの運転時間を1.0としてこの運転時間に対する割合を数値化したものである。これにより、σ相面積率、ボイド個数密度が計測された伝熱管が、破断に至る迄にどの程度の余裕があるか、すなわち破断に至るまでにどの程度の時間、運転し得るか(余寿命)を数値化したものである。テストピースを用いてクリープ寿命消費率、σ相面積率及びボイド個数密度を取得する方法について以下で説明する。
まず、例えばSUS321HTB鋼からなるテストピースについて、試験温度700℃、試験応力6.0kgf/mm2におけるクリ−プ試験を実施する。このとき、クリープ試験を種々の時間で中断させて、SUS321HTB鋼の表面のσ相面積率及びボイド個数密度を測定する。
σ相面積率及びボイド個数密度を測定する際は、まず、テストピース表面をグラインダ−、研磨紙、ダイヤモンド粒子等を用いて鏡面になるまで順次研磨し、その後、酸化カリウム水溶液(例えば、水酸化カリウム10g、蒸留水100cc)で電解エッチングしてσ相を着色する。その後、着色されたσ相のσ相面積率を算出する。また、同時に、同一テストピースの表面の結晶粒界上でのボイド個数密度も算出する。
上述した方法で計測されたクリープ寿命消費率及びσ相面積率が、σ面積率データベースに格納されている。また、上述した方法で計測されたクリープ寿命消費率及びボイド個数密度が、ボイド個数密度データベース12に格納されている。
σ相面積率データベース10及びボイド個数密度データベース12の内容は、必要に応じて表示手段8に画面表示させることができる。
σ相面積率データベース10及びボイド個数密度データベース12の内容は、必要に応じて表示手段8に画面表示させることができる。
σ相面積率データベース10及びボイド個数密度データベース12に格納されているσ相面積率、ボイド個数密度、クリープ寿命消費率は、条件入力手段4により入力される。条件入力手段4としては、キーボードやマウス等が挙げられる。
表示手段8は、例えばモニタで構成され、記憶手段2に格納されたσ相面積率データベース10及びボイド個数密度データベース12等を画面表示する。
クリープ寿命消費率評価装置1の演算手段6は、第1マップ作成手段26と、第1閾値設定手段28と、第2マップ作成手段30と、第2閾値設定手段32と、第3マップ作成手段34と、クリープ寿命消費率算出手段36と、を有している。
これらの手段を実現するソフトウエアのプログラムが記憶手段2又はRAM14(Random Access Memory)に格納されており、記憶手段2やRAM14に格納されたプログラムを読み出し実行することによって以下に示す各手段が実現される。
これらの手段を実現するソフトウエアのプログラムが記憶手段2又はRAM14(Random Access Memory)に格納されており、記憶手段2やRAM14に格納されたプログラムを読み出し実行することによって以下に示す各手段が実現される。
第1マップ作成手段26は、図2に示すように、テストピースのクリープ試験によって取得されたクリープ寿命消費率とσ相面積率との関係を示す第1マップ16を作成するとともに、これらの相関関係を示す第1関係式を作成する。具体的には、各クリープ寿命消費率間の不連続部分に対するσ相面積率を補完して第1関係式を算出する(図中の右上がり曲線部分に相当)。当該補完の方法としては、例えば、回帰分析方法を用いることができる。なお、回帰分析方法に限定されるものではなく、他の一般的な方法を用いることができる。以下、第1マップ作成手段26により作成された第1マップ16及び第1関係式をまとめて第1マップ16という。作成された第1マップ16は、RAM14に記憶される。
続いて、第1閾値設定手段28は、RAM14に記憶された第1マップ16を読み出して、予め設定された所定のクリープ寿命消費率を第1関係式にあてはめて、当該クリープ寿命消費率に対応するσ相面積率の値を第1閾値σthとして設定する。設定された第1閾値σthは、RAM14に記憶される。
所定のクリープ寿命消費率は、クリープ寿命消費率の判定をσ相面積率で判定するか、ボイド個数密度で判定するか(詳細は後述する)の境目を示す値であり、設計等により決定される。本実施形態では、所定のクリープ寿命消費率を例えば、50%としたが、この値に限定されるものではない。以下、予め設定された所定のクリープ寿命消費率をクリープ寿命消費率閾値という。
所定のクリープ寿命消費率は、クリープ寿命消費率の判定をσ相面積率で判定するか、ボイド個数密度で判定するか(詳細は後述する)の境目を示す値であり、設計等により決定される。本実施形態では、所定のクリープ寿命消費率を例えば、50%としたが、この値に限定されるものではない。以下、予め設定された所定のクリープ寿命消費率をクリープ寿命消費率閾値という。
また、第2マップ作成手段30は、図3に示すように、テストピースのクリープ試験によって取得されたクリープ寿命消費率とボイド個数密度との関係を示す第2マップ20を作成するとともに、これらの相関関係を示す第2関係式を作成する。具体的には、各クリープ寿命消費率間の不連続部分に対するボイド個数密度を補完して第2関係式を算出する(図中の右上がり直線部分に相当)。当該補完の方法としては、例えば、回帰分析方法を用いることができる。なお、回帰分析方法に限定されるものではなく、他の一般的な方法を用いることができる。以下、第2マップ作成手段30により作成された第2マップ20及び第2関係式をまとめて第2マップ20という。作成された第2マップ20は、RAM14に記憶される。
続いて、第2閾値設定手段32は、RAM14に記憶された第2マップ20を読み出して、クリープ寿命消費率閾値を第2関係式にあてはめて、当該クリープ寿命消費率閾値に対応するボイド個数密度の値を第2閾値Vthとして設定する。設定された第2閾値Vthは、RAM14に記憶される。
また、第3マップ作成手段34は、RAM14に記憶された第1マップ16、第2マップ20、第1閾値σth及び第2閾値Vthを読み出して、第1関係式及び第2関係式に基づいて、図4に示すように、クリープ寿命消費率と、σ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3マップ24及び第3関係式を作成する。
具体的には、第1関係式と第2関係式とを、第1関係式の第1閾値σthと第2関係式の第2閾値Vthとで(即ち、上述したクリープ寿命消費率閾値の位置で)交差させて、クリープ寿命消費率と、σ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3マップ24及び第3関係式(図4中の実線部分に相当)を作成する。
以下、第3マップ作成手段34により作成された第3マップ24及び第3関係式をまとめて第3マップ24という。作成された第3マップ24は、RAM14に記憶される。
具体的には、第1関係式と第2関係式とを、第1関係式の第1閾値σthと第2関係式の第2閾値Vthとで(即ち、上述したクリープ寿命消費率閾値の位置で)交差させて、クリープ寿命消費率と、σ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3マップ24及び第3関係式(図4中の実線部分に相当)を作成する。
以下、第3マップ作成手段34により作成された第3マップ24及び第3関係式をまとめて第3マップ24という。作成された第3マップ24は、RAM14に記憶される。
クリープ寿命消費率算出手段36は、ボイラを構成する伝熱管の検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出する。
このクリープ寿命消費率算出手段36は、計測された検査対象部位表面のσ相面積率及びボイド個数密度のうち、当該σ相面積率が第1閾値σth以下の場合に、当該σ相面積率を第3関係式にあてはめてクリープ寿命消費率を算出する。
検査対象部位のσ相面積率は、テストピースと同様に、表面を鏡面仕上げした後、水酸化カリウム腐食液で電解エッチングしてσ相を着色して算出される。また、同時に、ボイド個数密度も計測される。
σ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、図4中の第3関係式のA領域(クリープ寿命消費率0〜50%)にσ相面積率をあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
一方、検査対象部位の表面のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、当該σ相面積率を用いずに、図4中の第3関係式のB領域(クリープ寿命消費率50〜100%)にボイド個数密度をあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
算出されたクリープ寿命消費率は、表示手段8に出力され、表示手段8にて表示される。
このクリープ寿命消費率算出手段36は、計測された検査対象部位表面のσ相面積率及びボイド個数密度のうち、当該σ相面積率が第1閾値σth以下の場合に、当該σ相面積率を第3関係式にあてはめてクリープ寿命消費率を算出する。
検査対象部位のσ相面積率は、テストピースと同様に、表面を鏡面仕上げした後、水酸化カリウム腐食液で電解エッチングしてσ相を着色して算出される。また、同時に、ボイド個数密度も計測される。
σ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、図4中の第3関係式のA領域(クリープ寿命消費率0〜50%)にσ相面積率をあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
一方、検査対象部位の表面のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、当該σ相面積率を用いずに、図4中の第3関係式のB領域(クリープ寿命消費率50〜100%)にボイド個数密度をあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出する。
算出されたクリープ寿命消費率は、表示手段8に出力され、表示手段8にて表示される。
上述した構成からなるオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ寿命消費率評価装置1を用いてクリープ寿命消費率を算出する算出方法についてフロー図を用いて、以下に説明する。
まず、テストピースを用いて第1〜3マップを作成するフローについて説明し、次に、伝熱管の検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出するフローについて説明する。
まず、テストピースを用いて第1〜3マップを作成するフローについて説明し、次に、伝熱管の検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出するフローについて説明する。
<第1〜3マップ作成までのフロー>
図5は、テストピースを用いて第1〜3マップを作成するフローを示す図である。
図5に示すように、まず、検査対象部位と同一鋼からなるテストピースのσ相面積率と、クリープ寿命消費率との関係を含むデータを取得するσ面積率取得ステップS1を実施する。
σ相面積率を取得する際は、テストピースの表面をグラインダ等を用いて鏡面になるまで研磨し、その後、水酸化カリウム腐食液で電解エッチングしてσ相を着色する。そして、着色されたσ相の面積を計測するとともに、σ相面積率を算出する。
図5は、テストピースを用いて第1〜3マップを作成するフローを示す図である。
図5に示すように、まず、検査対象部位と同一鋼からなるテストピースのσ相面積率と、クリープ寿命消費率との関係を含むデータを取得するσ面積率取得ステップS1を実施する。
σ相面積率を取得する際は、テストピースの表面をグラインダ等を用いて鏡面になるまで研磨し、その後、水酸化カリウム腐食液で電解エッチングしてσ相を着色する。そして、着色されたσ相の面積を計測するとともに、σ相面積率を算出する。
続いて、σ相析出率取得ステップS1によって取得されたσ相面積率と、クリープ寿命消費率との関係を示す第1マップ16(第1関係式を含む)を作成する第1マップ作成ステップS3を実施する。作成された第1マップ16は、RAM14に保存される(ステップS5)。
また、テストピースのボイド個数密度と、クリープ寿命消費率との関係を含むデータを取得するボイド個数密度取得ステップS7を実施する。ボイド個数密度を取得する作業は、σ相の面積を計測する作業と並行して実施してもよい。
続いて、ボイド個数密度取得ステップS7によって取得されたボイド個数密度と、クリープ寿命消費率との関係を示す第2マップ20(第2関係式を含む)を作成する第2マップ作成ステップS9を実施する。作成された第2マップ20は、RAM14に保存される(ステップS11)。
続いて、ボイド個数密度取得ステップS7によって取得されたボイド個数密度と、クリープ寿命消費率との関係を示す第2マップ20(第2関係式を含む)を作成する第2マップ作成ステップS9を実施する。作成された第2マップ20は、RAM14に保存される(ステップS11)。
次に、クリープ寿命消費率閾値設定ステップS13を実施する。クリープ寿命消費率閾値設定ステップS13では、検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出する際に、σ相面積率にて寿命を算出するクリープ寿命消費率の範囲(図4中のA領域の範囲)を決定する。本実施形態では、上述したようにクリープ寿命消費率閾値を50%とした。この値は、設計等により適宜、決定される。
次に、第1マップ作成ステップS3により作成された第1関係式に、クリープ寿命消費率閾値設定ステップS13にて決定されたクリープ寿命消費率閾値をあてはめて、対応するテストピースのσ相面積率を算出し、当該σ相面積率を第1閾値σthとする第1閾値設定ステップS15を実施する。
続いて、第2マップ作成ステップS9により作成された第2関係式に、クリープ寿命消費率閾値設定ステップS13にて決定されたクリープ寿命消費率閾値をあてはめて、対応するテストピースのボイド個数密度を算出し、当該ボイド個数密度を第2閾値Vthとする第2閾値設定ステップS15を実施する。設定された第1閾値σth及び第2閾値Vthは、RAM14に保存される(ステップS17)。
続いて、第2マップ作成ステップS9により作成された第2関係式に、クリープ寿命消費率閾値設定ステップS13にて決定されたクリープ寿命消費率閾値をあてはめて、対応するテストピースのボイド個数密度を算出し、当該ボイド個数密度を第2閾値Vthとする第2閾値設定ステップS15を実施する。設定された第1閾値σth及び第2閾値Vthは、RAM14に保存される(ステップS17)。
次に、第1マップ16の第1関係式と第2マップ20の第2関係式とを、第1関係式の第1閾値σthと第2関係式の第2閾値Vthとで交差させて、クリープ寿命消費率と、σ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3マップ24を作成する第3マップ作成ステップS19を実施する。作成された第3マップ24は、RAM14に保存される(ステップS20)。
次に、伝熱管の検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出するフローについて説明する。
<検査対象部位のクリープ寿命消費率算出フロー>
図6は、検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出するフローを示す図である。
図6に示すように、まず、伝熱管の検査対象部位の表面を研磨する研磨ステップS21を実施する。伝熱管の検査対象部位の表面をテストピースと同様に、グラインダ等を用いて鏡面になるまで研磨する。
続いて、研磨された検査対象部位の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチングステップS23を実施し、σ相を着色する。
図6は、検査対象部位のクリープ寿命消費率を算出するフローを示す図である。
図6に示すように、まず、伝熱管の検査対象部位の表面を研磨する研磨ステップS21を実施する。伝熱管の検査対象部位の表面をテストピースと同様に、グラインダ等を用いて鏡面になるまで研磨する。
続いて、研磨された検査対象部位の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチングステップS23を実施し、σ相を着色する。
次に、検査対象部位の表面に析出したσ相の面積率を算出するσ相面積率算出ステップS25を実施する。テストピースと同様に、エッチングステップS23にて着色されたσ相の面積を計測してσ相面積率を算出する。
続いて、検査対象部位の表面に発生したボイドの単位面積当たりの数であるボイド個数密度を算出するボイド個数密度算出ステップS27を実施する。テストピースと同様に、ボイド数を計測してボイド個数密度を算出する
次に、RAM14に記憶されている第3マップ24、第1閾値σth及び第2閾値Vthを読み出す第3マップ等読出しステップS29を実施する。
続いて、σ相面積率算出ステップS25にて取得された検査対象部位のσ相面積率が、第1閾値σth以下か否かを判定する判定ステップS31を実施する。
判定ステップS31において、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、σ相面積率を第3関係式のA領域の曲線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出ステップS33を実施する。
一方、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、ボイド個数密度取得ステップS27にて取得されたボイド個数密度を第3関係式のB領域の直線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出ステップS35を実施する。
続いて、σ相面積率算出ステップS25にて取得された検査対象部位のσ相面積率が、第1閾値σth以下か否かを判定する判定ステップS31を実施する。
判定ステップS31において、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σth以下の場合には、σ相面積率を第3関係式のA領域の曲線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出ステップS33を実施する。
一方、検査対象部位のσ相面積率が第1閾値σthよりも大きい場合には、ボイド個数密度取得ステップS27にて取得されたボイド個数密度を第3関係式のB領域の直線部にあてはめて、対応するクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出ステップS35を実施する。
そして、クリープ寿命消費率算出ステップS33、S35にてクリープ寿命消費率を算出したら作業を終了する(ステップS37)。
上述した本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法及び寿命評価装置によれば、伝熱管の検査対象部位の表面に析出したσ相の面積を計測して得られるσ相面積率を、第3関係式にあてはめることで、クリープ寿命消費率のA領域を算出することができる。一般的に、寿命のA領域では、検査対象部位の表面にボイドがほとんど発生せず、また発生してもボイドの発生個数にばらつきがあるため、ボイドの個数では寿命のA領域を精度良く評価することができない。また、σ相は、寿命のA領域で主に析出するものの、B領域では殆ど析出しなくなる。即ちσ相面積率は、クリープ寿命のA領域で増加し、B領域ではほとんど変化しなくなる。したがって、本発明の寿命評価方法のようにσ相面積率に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、A領域における寿命を精度良く評価することができる。
また、検査対象部位の表面に発生したボイドの個数を計測して得られるボイド個数密度を、第3関係式にあてはめることで、クリープ寿命消費率のB領域を算出することができる。上述したように、ボイドは、寿命のA領域ではほとんど発生しないが、B領域では増加発生するため、ボイド個数密度に基づいてクリープ寿命消費率を算出することで、B領域における寿命を精度良く評価することができる。
したがって、寿命の初期から末期にわたって正確に精度良く寿命を評価することができる。これにより、検査対象部位の残寿命を精度良く算出できるため、残寿命内に点検時期等を設定することで、プラント等の稼働中に検査対象部位が破損することを防止できる。
そして、検査対象部位の表面を研磨する研磨工程及び検査対象部位の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチング工程を実施するため、σ相のみを着色することができる。これにより、σ相の面積を精度良く計測することができる。
また、σ相の面積を計測する際に、ボイドの個数も計測することができる。これにより、σ相面積率及びボイド個数密度を効率良く算出することができる。
また、σ相の面積を計測する際に、ボイドの個数も計測することができる。これにより、σ相面積率及びボイド個数密度を効率良く算出することができる。
さらに、検査対象部位はσ相が析出可能な温度領域内で使用されているため、σ相が検査対象部位の表面等に析出することができる。これにより、σ相の面積率を算出することができる。
1 クリープ寿命消費率評価装置
2 記憶手段
4 入力手段
6 演算手段
8 表示手段
10 σ相面積率データベース
12 ボイド個数密度データベース
14 RAM
16 第1マップ
18 第1閾値
20 第2マップ
22 第2閾値
24 第3マップ
26 第1マップ作成手段
28 第1閾値設定手段
30 第2マップ作成手段
32 第2閾値設定手段
34 第3マップ作成手段
36 クリープ寿命消費率算出手段
2 記憶手段
4 入力手段
6 演算手段
8 表示手段
10 σ相面積率データベース
12 ボイド個数密度データベース
14 RAM
16 第1マップ
18 第1閾値
20 第2マップ
22 第2閾値
24 第3マップ
26 第1マップ作成手段
28 第1閾値設定手段
30 第2マップ作成手段
32 第2閾値設定手段
34 第3マップ作成手段
36 クリープ寿命消費率算出手段
Claims (5)
- 所定の温度下で使用される機械部品に用いられたオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法であって、
前記機械部品の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率を算出するσ相面積率算出工程と、
前記機械部品の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度を算出するボイド個数密度算出工程と、
前記機械部品と同一鋼種の試験体のσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するσ面積率取得工程と、
前記σ相析出率取得工程によって取得された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を予め作成する第1マップ作成工程と、
前記試験体のボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを予め取得するボイド個数密度取得工程と、
前記ボイド個数密度取得工程によって取得された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を予め作成する第2マップ作成工程と、
σ相面積率算出工程にて算出されたσ相面積率を用いて、寿命を算出するためのクリープ寿命消費率の範囲を決定するクリープ寿命消費率閾値設定工程と、
前記第1マップ作成工程により作成された前記第1関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定工程と、
前記第2マップ作成工程により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値に対応する前記試験体のボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記第1関係線図の前記第1閾値と前記第2関係線図の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成工程と、
前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記σ相面積率算出工程にて取得されたσ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記ボイド個数密度取得工程にて取得されたボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出工程と、を備えることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法。 - σ相面積率算出工程及びボイド個数密度算出工程の前に、前記機械部品の表面を研磨する研磨工程及び当該研磨工程にて研磨された前記機械部品の表面を水酸化カリウム腐食液で電解エッチングするエッチング工程を実施することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法。
- 前記所定の温度は、σ相析出温度領域であることを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法。
- 前記クリープ寿命消費率閾値決定工程にて決定された前記クリープ寿命消費率の範囲の上限値は、前記第2マップ作成工程にて作成された第2関係図の前記ボイド個数密度の値0に対応するクリープ寿命消費率以上であることを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法。
- 所定の温度下で使用される機械部品に用いられたオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ寿命消費率評価装置であって、
前記機械部品と同一鋼種の試験体の表面に析出したσ相の単位面積当たりの広さであるσ相面積率と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するσ相面積率データベースと、
前記σ相面積率データベースに格納された前記σ相面積率と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第1関係線図を作成する第1マップ作成手段と、
前記試験体の表面に発生したボイドの単位面積当たりの個数であるボイド個数密度と、前記試験体のクリープ寿命消費率との関係を含むデータを格納するボイド個数密度データベースと、
前記ボイド個数密度データベースに格納された前記ボイド個数密度と前記クリープ寿命消費率との関係を示す第2関係線図を作成する第2マップ作成手段と、
前記第1マップ作成手段により作成された前記第1関係線図に基づいて、所定のクリープ寿命消費率に対応するσ相面積率を算出して、当該σ相面積率を第1閾値とするσ相面積率閾値設定手段と、
前記第2マップ作成手段により作成された前記第2関係線図に基づいて、前記所定のクリープ寿命消費率に対応するボイド個数密度を算出して、当該ボイド個数密度を第2閾値とするボイド個数密度閾値設定工程と、
前記第1関係線図と前記第2関係線図とが、前記σ相面積率の前記第1閾値と前記ボイド個数密度の前記第2閾値とで交差して、クリープ寿命消費率とσ相面積率及びボイド個数密度との関係を示す第3関係線図を作成する第3マップ作成手段と、
前記機械部品の表面のσ相面積率が前記第1閾値以下の場合に、前記σ相面積率を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出し、前記機械部品の表面の前記σ相面積率が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機械部品の表面の前記ボイド個数密度を前記第3関係線図にあてはめてクリープ寿命消費率を算出するクリープ寿命消費率算出手段と、を備えることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ寿命消費率評価装置。
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JP2012039838A JP2013174528A (ja) | 2012-02-27 | 2012-02-27 | オーステナイト系ステンレス鋼の寿命評価方法及び寿命評価装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015148504A (ja) * | 2014-02-06 | 2015-08-20 | 中国電力株式会社 | ステンレス鋼からなる部材の余寿命を推定する方法 |
JP6448724B1 (ja) * | 2017-08-10 | 2019-01-09 | 九州電力株式会社 | 余寿命評価方法 |
-
2012
- 2012-02-27 JP JP2012039838A patent/JP2013174528A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015148504A (ja) * | 2014-02-06 | 2015-08-20 | 中国電力株式会社 | ステンレス鋼からなる部材の余寿命を推定する方法 |
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JP2019035597A (ja) * | 2017-08-10 | 2019-03-07 | 九州電力株式会社 | 余寿命評価方法 |
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