JP2013173998A - 現地溶接性に優れるラインパイプ用高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の成分を含有し、且つN−14/48×Ti≧0%、を満足し、残部がFe及び不可避的不純物元素からなる鋼板であって、板厚中心における{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が4以下でかつ{332}<113>の結晶方位のX線ランダム強度比が4.8以下で、さらに初析フェライト分率が3%以上20%以下で他が低温変態生成物であり、前記ミクロ組織全体の個数平均結晶粒径が5μm以下かつエリア平均粒径が12μm以下であり、前記エリア平均粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板。
【選択図】なし
Description
これらの環境条件の変化に対応してラインパイプに要求される特性はますます高度化かつ多様化しており、大きく分けると、(a)厚肉/高強度化、(b)高靭性化、(c)現地溶接性の向上、(d)耐食性の厳格化、(e)凍土、地震・断層地帯での高変形性能の要求、である。また、これらの特性は使用環境に従い、複合して要求されるのが普通である。
このように、輸送流体による内圧負荷下で良好な耐座屈特性を得るためには、パイプ長手方向の加工硬化指数が大きく、且つ、パイプ円周方向の降伏強度がパイプ長手方向の降伏強度よりも大きいことが重要である。
さらに、これら溶接鋼管は、素材に連続した熱延鋼板(以下、「ホットコイル」ともいう。)を用いるかプレートを用いるかにより分類でき、前者は電縫鋼管およびスパイラル鋼管、後者はUOE鋼管である。高強度、大径、厚肉な用途には後者のUOE鋼管を用いるのが一般的であるが、コスト、納期の面で前者のホットコイルを素材とする電縫鋼管およびスパイラル鋼管が有利であり、その高強度化、大径化、厚肉化の要求が増している。
そのため、低温靭性の指標として、DWTT(Drop Weight Tear Test)試験の延性破面率(SA)が−20℃の試験温度において85%以上で、吸収エネルギーが240J以上であり、さらに高強度化の観点から板厚12.7mm以上でスパイラル鋼管の円周方向であるホットコイルのR方向の強度もAPI5L−X65規格を満たし、且つスパイラルパイプ用として耐座屈性と低温靭性を担保すために等方性指標(=1/|Δr|)が3.5以上である、高強度なスパイラルパイプ用の熱延鋼板(ホットコイル)およびその熱延鋼板を安価に安定して製造できる方法を提供することを目的とするものである。
板厚中心における{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が4以下でかつ{332}<113>の結晶方位のX線ランダム強度比が4.8以下で、さらに板厚中心におけるミクロ組織について初析フェライト分率が3%以上20%以下で他が低温変態生成物であり、前記ミクロ組織全体の個数平均結晶粒径が5μm以下かつエリア平均粒径が12μm以下であり、前記エリア平均粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板。
T1(℃)=850+10×(C+N)×Mn+350×Nb+250×Ti+
40×B+10×Cr+100×Mo+100×V ・・・(1)
t1=0.001×((Tf−T1)×P1/100)2−0.109×((Tf−
T1)×P1/100)+3.1 ・・・(2)
ここで、式(1)の各元素記号はその元素の含有量(質量%)であり、式(2)のTfは30%以上の最終圧下後の温度(℃)、P1は30%以上の最終圧下の圧下率である。
εeff=Σεi(t2,T2) ・・・(3)
ここで、
εi(t2,T2)=εi0/exp{(t2/τR)2/3}、
τR=τ0・exp(Q/RT2)、
τ0=8.46×10-6、
Q=183200J、
R=8.314J/K・molであり、
iは粗熱間圧延のパスを、t2は当該パスでの仕上げ圧延直前までの累積時間(秒)を、T2は当該パスでの圧延温度(℃)を、εi0は当該パスで加えられたひずみを示す。
SRT(℃)=6670/(2.26−log〔Nb×C〕)−273
・・・(4)
なお、上記式(1)及び(4)において、各元素記号はその元素の質量%で表される含有量である。
その手段としては、γ→α変態点温度以上で出来る限り低温で圧延すること、言いかえるとオーステナイトを未再結晶とし、未再結晶率が高い状態でγ→α変態をさせることが必要となる。なぜならば、再結晶後のオーステナイト粒は、再結晶温度直下であっても粒成長が早く、非常に短時間で粗大化してγ→α変態後のα相でも粗大粒となり、著しい靭性劣化が起こるためである。
すなわち、等方性を得るために、最終段の圧延後のごく短時間の間にオーステナイトの再結晶を進行させ、次に靭性を劣化させないために、再結晶がほぼ完了した後のオーステナイト粒の粒成長が進行する前に粒成長が抑制される温度域までごく短時間で冷却する方法である。
そこで、この考えに基づき検討した結果、本発明者らは、等方性と集合組織の関係について以下の知見を得た。
これら各方位のX線ランダム強度比はX線回折やEBSD(Electron Back Scattering Diffraction)などの装置を用いて測定する。{110}極点図に基づきベクトル法により計算した3次元集合組織や{110}、{100}、{211}、{310}極点図のうち複数の極点図(好ましくは3つ以上)を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
なお、{hkl}<uvw>で表される結晶方位とは、板面の法線方向が<hkl>に平行で、圧延方向が<uvw>と平行であることを示している。X線による結晶方位の測定は、例えば新版カリティX線回折要論(1986年発行、松村源太郎訳、株式会社アグネ)274〜296頁に記載の方法に従う。
切出したミクロサンプルよりまず、結晶粒径とミクロ組織を測定するためにEBSP−OIM(Electron Back Scatter Diffraction Pattern-Orientation Image Microscopy・商標)を用いた。サンプルはコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨し、倍率400倍、160μm×256μmエリア、測定ステップ0.5μmの測定条件でEBSP測定を実施した。
EBSP法では、バルク試料表面の微細構造並びに結晶方位の定量的解析ができ、分析エリアはSEMで観察できる領域で、SEMの分解能にもよるが、最小20nmの分解能で分析できる。解析は数時間かけて、分析したい領域を等間隔のグリッド状に数万点マッピングして行う。多結晶材料では試料内の結晶方位分布や結晶粒の大きさを見ることができる。
後で詳細に説明するが、結晶粒の粒径ごとの個数分布をとったときの平均粒径(粒径の総和/結晶粒個数)を「個数平均粒径」とし、また、結晶粒径ごとの個数分布にその粒径の平均面積を乗じたものの分布をとったときの平均粒径(平均面積に該当する粒径)を「エリア平均粒径」とする。「個数平均粒径」、「エリア平均粒径」、およびエリア平均粒径の「標準偏差」とはEBSP−OIMにて得られる値である。
KAM法では、測定データのうちのある正六角形のピクセルの隣り合う6個(第一近似)もしくはさらにその外側12個(第二近似)、さらには、さらにその外側の18個(第三近似)のピクセル間の方位差を平均し、その値をその中心のピクセルの値とする計算を各ピクセルに対して行う。そして、粒界を越えないようにこの計算を実施することで粒内の方位変化を表現するマップを作成できる。すなわち、このマップは粒内の局所的な方位変化に基づくひずみの分布を表している。
なお、本発明において解析条件はEBSP−OIMにおいて隣接するピクセル間の方位差を計算する条件は第三近似として、この方位差が5°以下となるものを表示させた。
これは、高温で変態したポリゴナルな初析フェライトは拡散変態で生成するので、転位密度が小さく、粒内の歪みが少ないため、結晶方位の粒内差が小さく、これまで発明者らが実施してきた様々な調査結果より、光学顕微鏡観察で得られるポリゴナルなフェライト体積分率とKAM法にて測定した方位差第三近似1°で得られるエリアの面積分率がほぼよい一致をみたためである。
エリア平均粒径の「標準偏差」が2μm以下であればΔSA(−20℃)が20%以下となり、靭性のバラツキがこの範囲で抑制されることが明らかとなった。ΔSA(−20℃)が20%以下であれば、平均値としてのSA(−20℃)≧85%を確保するにあたり、SA(−20℃)の最小値が75%程度で抑えられる、実用上許容される範囲となる。
その結果、初析フェライト分率とvE(−20℃)にはよい相関があり、初析フェライト分率が3%以上でvE(−20℃)が240Jの目標値が得られることが明らかとなった。
耐座屈性の評価は、耐座屈性能を評価するため軸力圧縮による座屈試験を行った。座屈試験は、長さ1800mmの鋼管の両端に鋼板を溶接した後、大型プレス試験装置により圧縮試験を行い、座屈発生により荷重低下が開始する歪(圧下量/全長)を座屈歪として評価した。
Cは、目的とするAPI5L−X65規格以上の強度、ミクロ組織を得るために必要な元素である。ただし、0.02%未満では必要な強度を得ることが出来ず、0.1%超添加すると破壊の起点となる炭化物が多く形成されるようになり靭性、特に吸収エネルギーを低下されるばかりでなく、現地溶接性が著しく劣化する。従って、Cの添加量は0.02%以上0.1%以下とする。また、圧延後の冷却において冷却速度によらず均質な強度を得るためには0.07%以下が望ましい。
一方、0.05%超添加するとその効果が飽和するだけでなく、本発明が提案する熱間圧延方法を用いたとしても、仕上げ圧延終了後に再結晶が完了せずに等方性が劣化する。従って、Nbの含有量は0.005%以上0.05%未満と限定する。
ただし、ホットコイル製造工程の特徴である巻取り工程において微細な炭化物を生成し、その析出強化により強度の向上に寄与するためには0.01%以上の添加が望ましい。一方、Nbは、粗大な炭窒化物を形成して破壊の起点となり、低温靭性や耐サワー性を劣化させる恐れがあるため、0.03%以下の添加が望ましい。
Ca及、REMおよびMgの含有量は、いずれも0.0005%未満では上記効果を発揮しない。また、Mgの含有量を0.01%超、Caの含有量を0.01%超、REMの含有量を0.1%超としても上記効果が飽和して経済性が低下する。
したがって、添加する場合のMg含有量は0.0005%以上0.01%以下、Ca含有量は0.0005%以上0.01%以下、REM含有量は、0.0005以上0.1%以下とする。
鋼板のミクロ組織は、目的の強度および低温靭性等を達成するためには、鋼板中心におけるミクロ組織で初析フェライト分率が3%以上20%以下で他が低温変態生成物であり、ミクロ組織全体の個数平均結晶粒径が5μm以下、かつエリア平均粒径が12μm以下、その標準偏差が2μm以下であることが必要である。
特に16mm以上の板厚の場合に板の表裏面と板厚中心には大きな温度偏差が生じ、圧延開始から終了までの各板厚位置での温度履歴が直接的にミクロ組織等の形成に影響する。また、板厚中心部はその3軸応力度が最も高く、破壊の起点は板厚中心部である。さらに、そのミクロ組織等とDWTT試験での延性破面率(SA)等の材質が最もよい相関があった事実から、鋼板中心(1/2厚)でのミクロ組織等を全板厚の代表とした。
このことは造管後の鋼管の降伏比を低減するのに有効であり、特に最近ではStrain Based Designで設計されることが主流になりつつあり、造管後の降伏強度を下げることが望まれている。造管後の降伏比を求められている0.93以下とするためには、初析フェライトを少なくとも体積分率で3%以上含むことが望ましいさらに、20%以下に制御することで吸収エネルギーの増加とセパレーションの抑制に顕著な効果がある。これは、初析フェライトと低温変態生成物との境界を伝播する擬似へき開破壊が抑制されるためと推定される。
EBSP−OIM法による一定測定ステップごとの方位測定で、隣りあう測定点の方位差が、一般的に結晶粒界として認識されている大傾角粒界の閾値である15°を超えた位置を粒界とし、その粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径を求める。
この測定された粒のサイズ分布をヒストグラムで描き、その平均値が本発明で定義する「個数平均結晶粒径」である。一方、このヒストグラムのサイズステップごとの数値にその平均面積を重み付け(積を求める)をしたヒストグラムを描き、その平均値が本発明で定義する「エリア平均粒径」である。この値は、光学顕微鏡観察等を肉眼で見えるミクロ組織の印象やJISに定義されている比較法、切断法により近い値となる。
本発明者らの詳細な研究の成果によると、これまで考えられてきた「結晶粒」と「靭性」の関係において細粒化するほど靭性が向上するという解釈は汎用的な法則ではなく、ミクロ組織がフェライトもしくはベイナイト等のほぼ単一相と見なせる場合にのみ成り立つ関係である。本発明で対象としているようにAPI−X65グレード以上の高強度鋼の場合は必然的にミクロ組織が「初析フェライト」と「低温変態生成物」の混合したミクロ組織となるため、一般的な平均結晶粒径は「エリア平均粒径」すなわち「低温変態生成物」の粒径を代表しているに過ぎず適当ではない。
本発明において連続鋳造工程に先行する製造方法は特に限定するものではない。すなわち、高炉から出銑後に溶銑脱燐および溶銑脱硫等の溶銑予備処理を経て転炉による精錬を行うかもしくは、スクラップ等の冷鉄源を電炉等で溶解する工程に引き続き、各種の2次精練で目的の成分含有量になるように成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造、インゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造すればよい。
ただし、スラブ鋳造に際し、中心偏析を低減するために連続鋳造セグメントにおいて未凝固圧下等の偏析対策を施すことが望ましい。もしくはスラブ鋳造厚を薄くし、中心偏析の板厚方向の幅を抑えることが望ましい。
SRT(℃)=6670/(2.26−log〔Nb×C〕)−273
・・・(4)
にて算出される温度以上とするのがよい。
この式はNbCの溶解度積でNbCの溶体化温度をしめすもので、この温度未満であるとスラブ製造時に生成したNbの粗大な炭窒化物が十分に溶解せず後の粗圧延工程においてNbによるオーステナイトの粒成長の抑制効果が得られないばかりか、その析出強化により強度を向上させる効果が得られない。ただし、1000℃未満の加熱ではスケールオフ量が少なくスラブ表層の介在物をスケールと共に後のデスケーリングによって除去できなくなる可能性があるので、スラブ再加熱温度は1000℃以上が望ましい。
一方、仕上げ圧延工程はタンデム式であるためにパス数は圧延機の数と同数となるが各パス間時間が短く、制御圧延効果を得やすい特徴を持つ。従って、優れた低温靭性を実現するためには鋼成分に加えて、これら圧延工程の特徴を十分に生かした工程設計が必要となる。
εeff=Σεi(t2,T2) ・・・(3)
ここで、
εi(t2,T2)=εi0/exp{(t/τR)2/3}
τR=τ0・exp(Q/RT2)
τ0=8.46×10-6
Q=183200J
R=8.314J/K・molであり、
iは粗圧延のパスを示し、t2は当該パスでの仕上げ圧延直前までの累積時間、すなわち、被圧延材が当該パスを通過した後仕上げ圧延機に到達するまでの時間(秒)を、T2は当該パスでの圧延温度(℃)を、εi0は当該パスで加えられたひずみをそれぞれ示す。
T1(℃)=850+10×(C+N)×Mn+350×Nb+250×Ti
+40×B+10×Cr+100×Mo+100×V ・・・(1)
Ar3=910−310×C+25×Si−80×[Mneq]・・・(5)
ただし、[Mneq]は、Bが添加されていない場合は下記式(6)によって示され、Bが添加されている場合は下記式(7)によって示される。
[Mneq]=Mn+Cr+Cu+Mo+Ni/2+10(Nb−0.02) ・・・(6)
[Mneq]=Mn+Cr+Cu+Mo+Ni/2+10(Nb−0.02)+1 ・・(7)
冷却までの時間がt1秒以下であると再結晶が進行せず、未再結晶ままとなり等方性が劣化する。一方、冷却までの時間がt1×2.5秒超であると再結晶粒の粒成長が顕著となり低温靭性が劣化する。
また、この冷却停止温度がT1−30℃超であると再結晶粒の粒成長が顕著となり低温靭性が劣化する。さらに、この冷却での冷却速度が25℃/sec未満であると再結晶粒の粒成長が顕著となり低温靭性が劣化する。この冷却速度の上限は特に定めないが板形状の観点から200℃/sec以下が妥当と思われる。
T1)×P1/100)+3.1 ・・・(2)
ここで、Tfは30%以上の最終圧下後の温度(℃)、P1は30%以上の最終圧下の圧下率である。
表1に示す化学成分を有するA〜Mの鋼は、転炉にて溶製して、CASまたはRHで二次精練を実施した。脱酸処理は二次精練工程にて実施した。これらの鋼は、連続鋳造後、直送もしくは再加熱し、粗圧延に続く仕上げ圧延で18.4mmの板厚に圧下し、ランナウトテーブルで冷却後に巻き取った。ただし、表中の化学組成についての表示は質量%である。
さらに、「t1」とは上記式(2)にて算出される仕上げ圧延終了後に一次冷却を開始するまでの望ましい下限時間を、「t1×2.5」とは式(1)にて算出される仕上げ圧延終了後に一次冷却を開始するまでの望ましい上限時間を、「冷却開始までの時間」とは、仕上げ圧延終了後に一次冷却を開始するまでの時間を、「一次冷却速度」とは、仕上げ圧延終了後から一次冷却温度変化分の冷却を完了するまでの平均冷却速度を、「一次冷却停止温度」とは一次冷却終了温度後の温度を、「二次冷却速度」とは、二次冷却開始から巻き取りまでの平均冷却速度を、「CT」とは、巻き取り工程においてコイラーにて巻取る温度を示している。
引張試験はR方向よりJIS Z 2201に記載の5号試験片を切出し、JIS Z2241の方法に従って実施した。シャルピー衝撃試験は板厚中心のR方向よりJIS Z 2202に記載の試験片を切出し、JIS Z 2242の方法に従って実施した。DWTT試験はR方向より、300mmL×75mmW×板厚(t)mmの短冊状の試験片を切り出し、これに5mmのプレスノッチを施したテストピースを作製して実施した。
また、ミクロ組織については、EBSP−OIMに装備されているKAM法にて初析フェライト体積分率を求めた。
このうち「初析フェライト体積分率」とは、上述の、EBSP−OIMのKAM法にて測定した値であり、「個数平均粒径」、「エリア平均粒径」、「標準偏差」とは同じくEBSP−OIMでの測定結果である。
「圧延方向とパイプ円周方向の角度」とはスパイラルパイプ造管時の圧延方向とパイプ円周方向の角度を示している。
鋼番2は、「T1以上T1+100℃以下の合計圧下率」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、座屈ひずみが低い。
鋼番3は、「P1」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、座屈ひずみが低い。
鋼番4は、「Tf」と「冷却までの時間」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、SA(−20℃)が低い。
鋼番5は、「冷却までの時間」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、SA(−20℃)が低い。
鋼番6は、「一次冷却速度」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、SA(−20℃)が低い。
鋼番7は、「一次冷却停止温度」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、SA(−20℃)が低い。
鋼番8は、「二次冷却速度」および「CT」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、強度が低い。
鋼番9は、「CT」が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、SA(−20℃)が低い。
鋼番13は、C含有量が本発明の範囲外であるので、目的とするミクロ組織が得られず、座屈ひずみが低い。
鋼番14は、Ti含有量およびN*が本発明の範囲外であるので、SA(−20℃)が低い。
鋼番15は、N含有量が本発明の範囲外であるので、SA(−20℃)が低い。
鋼番16は、Cが本発明の範囲外であるので、強度が低く、API5L−X65グレードに達していない。
鋼番25は、Nb含有量が本発明の範囲外であるので、SA(−20℃)が低い。
鋼番26は、Nb含有量が本発明の範囲外であるので、SA(−20℃)が低い。
Claims (7)
- 質量%にて、
C :0.02〜0.1%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:1〜2%、
P :0.03%以下、
S :0.005%以下、
O :0.003%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N :0.0015〜0.006%、
Nb:0.005〜0.05%、
Ti:0.005〜0.02%、
を含有し、且つ、NとTiの含有量が、
N−14/48×Ti≧0%、
を満足し、残部がFe及び不可避的不純物元素からなる鋼板であって、
板厚中心における{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が4以下でかつ{332}<113>の結晶方位のX線ランダム強度比が4.8以下で、さらに板厚中心におけるミクロ組織について初析フェライト分率が3%以上20%以下で他が低温変態生成物であり、前記ミクロ組織全体の個数平均結晶粒径が5μm以下かつエリア平均粒径が12μm以下であり、前記エリア平均粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板。 - 前記鋼板が、さらに質量%にて、
V :0.15%以下、
Mo:0.3%以下、
Cr:0.05〜0.3%、
Cu:0.05〜0.3%、
Ni:0.05〜0.3%、
B :0.0002〜0.003%、
のうち一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板。 - 前記鋼板が、さらに質量%で、
Mg:0.0005〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.1%、
のいずれか一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分を有する熱延鋼板を得るために溶製され、鋳造された鋳片を熱間圧延することにより熱延鋼板を製造するに際し、仕上げ圧延において、鋼板成分により下記式(1)で決定される温度をT1とすると、T1以上T1+100℃以下の温度範囲における最終パスでの圧下率P1が少なくとも30%以上で、且つ、該温度範囲での圧下率の合計を50%以上とし、圧延温度および圧下率により下記式(2)で決定される時間をt1秒とすると、圧延後t1秒超t1×2.5秒以内に冷却を開始し、25℃/sec以上の冷却速度でT1−30℃以下の温度域まで冷却を行い、さらに3秒超10秒以内に10℃/sec以上の冷却速度で450℃以上620℃以下の温度域まで冷却し、巻き取ることを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板の製造方法。
T1(℃)=850+10×(C+N)×Mn+350×Nb+250×Ti+
40×B+10×Cr+100×Mo+100×V ・・・(1)
t1=0.001×((Tf−T1)×P1/100)2−0.109×((Tf−
T1)×P1/100)+3.1 ・・・(2)
ここで、Tfは30%以上の最終圧下後の温度(℃)、P1は30%以上の最終圧下の圧下率である。 - 請求項4に記載の熱延鋼板の製造方法において、圧延温度と仕上げ圧延直前までの累積時間により下記式(3)で決定される粗有効累積ひずみ(εeff)が0.4以上となる粗熱間圧延を行うことを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板の製造方法。
εeff=Σεi(t2,T2) ・・・(3)
ここで、
εi(t2,T2)=εi0/exp{(t2/τR)2/3}、
τR=τ0・exp(Q/RT2)、
τ0=8.46×10-6、
Q=183200J、
R=8.314J/K・molであり、
iは粗熱間圧延のパスを、t2は当該パスでの仕上げ圧延直前までの累積時間(秒)を、T2は当該パスでの圧延温度(℃)を、εi0は当該パスで加えられたひずみを示す。 - 請求項4または5に記載の熱延鋼板の製造方法において、前記鋳片を、鋼板成分により決定される下記式(4)により求められるSRT温度以上、1260℃以下に加熱した後、当該温度域で20分以上保持することを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプ用高強度熱延鋼板の製造方法。
SRT(℃)=6670/(2.26−log〔Nb×C〕)−273
・・・(4) - 請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた熱延鋼板をスパイラルパイプに造管する際に、スパイラルパイプの円周方向が熱延鋼板の圧延方向に対して30°以上90°未満となるようにして造管することを特徴とする耐座屈性に優れるスパイラルパイプの製造方法。
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