JP2013171134A - 累進多焦点レンズ、累進多焦点レンズの設計方法、累進多焦点レンズの加工方法 - Google Patents

累進多焦点レンズ、累進多焦点レンズの設計方法、累進多焦点レンズの加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】目に優しい累進多焦点レンズを安価に提供する。
【解決手段】左右一組の累進多焦点レンズ(1L,1R)であって、一方は、累進帯10の長さがLで当該累進帯の下端12での入度数がδであり、累進帯の上端11から下端に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム度数をPとした無調整側レンズで、他方は、累進帯の長さがLで累進帯の下端での加入度数がδであり、任意の距離x=xでのプリズム度数をPとた調整側レンズであり、調整側レンズの累進帯は、δ>δ、かつL>Lを満たすとともに、x=Lの位置での加入度数がδであり、無調整側レンズと調整側レンズは、x≦Lであるとき、x=xでのプリズム度数の差|P−P|が、L=L、かつδ=δであると仮定したときのx=xでのプリズム度数の差以下である。

Description

この発明は、遠近両用眼鏡用の累進多焦点レンズとその設計方法、および加工方法に関する。
眼鏡によって視力を矯正する際、習慣として、その矯正度合いを「度」と呼ぶことがある。この「度」は、周知のごとく、レンズの屈折力を示す指標であり、1m先にある物体の像が10mm(1cm)移動するように屈折する場合の度合いを1プリズムディオプトリー、あるいは1プリズムディオプターなど(以下、ディオプトリー)と呼び、このディオプトリーの数値の大小をもって度の強弱を表現している。なお、以下では、特に断りがない限り、「度数」はディオプトリーを単位としたレンズの屈折力の強弱を表現しているものとする。
そして、遠視や老眼用、あるいは近視用の眼鏡用レンズを処方する場合、そのレンズを表面が球面の一部である球面レンズとして扱う。すなわち、これらのレンズでは、焦点が球面の一部を投影した円の中心軸上にあり、度数は、その球面レンズの焦点距離fの逆数1/fに一致する。また、度数の単位記号は、ディオプトリーを語源として「D」、あるいは「Dptr」などと表記される(以下、「D」)。また、近視用のレンズであれば、その度数にマイナス符号「−」を付加し、遠視や老眼用のレンズであれば、プラス符号「+」を付加する。例えば、1度の遠視や老眼用レンズであれば、+1.00D、近視用の2.25度のレンズであれば、−2.25Dなどと表記される。
ところで、眼鏡には、周知の遠近両用眼鏡がある。最近の遠近両用眼鏡用のレンズは、1枚のレンズに遠くを見る場合の視力に合わせた遠用度数から近くの物を見る場合の視力に合わせた近用度数までを連続的に変化させた領域である累進帯を設けた累進多焦点レンズが主流である。
図1は、累進多焦点レンズの概略を示す図である。図1では、眼鏡をかけた人が正立した状態で上下方向を規定している。図1(A)は、当該レンズの平面図であり、1枚のレンズ上において度数が異なる各領域を示しており、(B)は、(A)におけるa−a断面における位置xと度数Dとの関係を示している。
図1(A)に例示したように、累進多焦点レンズ1を含め、眼鏡用のレンズは、フレームに嵌め込まれる用に加工される前は、円形の平面形状で、眼鏡をかけた人が正面を見たときの瞳の中心位置(瞳孔中心)をその円の中心(以下、アイポイント)2とし、ここをレンズ1の光軸としている。そして、そのアイポイント2の上方に遠方を見るための遠用度数に設定された遠用部3がある。そして、アイポイント2を上端として下方に所定の長さLまでの領域に累進帯10がある。
この累進帯10では、図1(B)に示したように、上端11での遠用度数Sfから徐々に度数が加算されていき、下端12で最大の近用度数Snとなるように設計されている。そして、遠用度数Sfと近用度数Snの差、すなわち累進帯10の上端11と下端12との度数の差が加入度数δとなる。
ここに示した例では、累進帯10の上端11から下方に向かう距離xと加入度数δ(x)との関係が直線的に変化している。すなわち、δ(x)がxの一次関数となっている。もちろん、累進帯10の上端11からの距離xとその位置xでの加入度数δ(x)との関係は、例えば、下方に行くほど加入度数の変化が大きくなるように二次関数にするなど、適宜に設計可能である。また、レンズメーカーによっては、xと加入度数δ(x)との関係を所定の関数、あるいは所定の対応関係で規定している場合もある。
なお、以下の非特許文献1や2には、視力と眼鏡レンズとの関係などについて記載されている。また、遠近両用眼鏡や累進多焦点レンズに関する基本的な技術については、例えば、以下の非特許文献3、4などに記載されている。また、遠近両用眼鏡に関する具体的な処方については、以下の非特許文献5などに記載されている。
HOYA株式会社、"目とメガネの話"、[online]、[平成24年1月17日検索]、インターネット<URL:http://www.vc.hoya.co.jp/learn/eyes2.html> HOYA株式会社、"メガネレンズの種類"、[online]、[平成24年1月17日検索]、インターネット<URL:http://www.vc.hoya.co.jp/learn/kind.html> 東京・杉並区西荻窪の眼鏡店 オプティック・レインボー"遠近両用メガネ"、[online]、[平成24年1月16日検索]、インターネット<URL:http://www.opt-rainbow.com/lens_ruishin.html> 東京・杉並区西荻窪の眼鏡店 オプティック・レインボー"遠近両用累進屈折力レンズ"、[online]、[平成24年1月16日検索]、インターネット<URL:http://www.opt-rainbow.com/lens_ruishin.html> 有限会社アイ・ケアー・システム、"遠近両用メガネの事例1(不同視の方)"、[online]、[平成24年2月13日検索]、インターネット<URL:http://www.eye-care.co.jp/society_folder/case_folder/cases9.html>
累進多焦点レンズでは、加入度数を左右のレンズで同じに設定する。しかしながら、左右のレンズの遠用度数が大きく異なるような場合、遠用度数に加入度数を加えた近用度数も左右のレンズで大きく異なる。そして、累進帯では、度数が徐々に大きくなっていくため、この累進帯では、上下方向に光を屈折させるプリズムが別途配置されているのと同じ効果が発現する。そのため、累進帯の下端では、光軸に対して像の位置が上下に移動するプリズムとしての効果が顕著となる。したがって、遠用度数が左右で大きく異なると、結果的に、累進帯の下端ではレンズを通して見る物体の位置に大きな差が生じ、眼鏡フレームの下端では、左右一方のレンズを通した物体の像の下端が欠落することになる。
例えば、左右のレンズの累進帯下端において1.00Dの差があれば、1mの先にある物の高さ位置が1cm異なることになる。30cm先の横書きの文書を見れば3mm異なることになり、小さな文字であれば、1行分がずれてしまう場合もあり得る。
もちろん、人間は、物体の像が網膜に結像したときにその物体の位置が左右の目で異なっていても、その位置の差を整合させるように脳内で情報処理を行っている。言い換えれば、片方の目からの情報のみを採用している。そのため、人には左右の目で見る物体の位置の差を自覚することはほとんど無い。しかし、実際には、左右の目で異なる像が結像されているにもかかわらず、それら左右の像の形状や位置を「無理矢理」整合させているため、プリズム効果に左右差がある遠近両用眼鏡を常用していると、当然のことながら、視覚に関わる器官に疲労が蓄積される。そして、目の疲れに起因する所謂「眼精疲労」とよばれる種々の全身進症状が現れてくる可能性が高くなり、健康上好ましくない。
したがって、左右の遠用度数が大きく異なるような累進多焦点レンズであっても、左右のレンズによるプリズム効果を防止し、累進帯を通して見る物の位置を左右で正しく整合させることが必要となる。もちろん、このような特性を備えたレンズが実際に設計可能であっても、そのレンズの表面形状が極めて複雑なものとなれば、製造工程が複雑になる。また、各利用者の視力に合わせ、その都度複雑な形状のレンズを設計すれば、その設計に要する時間やコストも嵩む。
そこで本発明は、製造が容易な極めて目に優しい累進多焦点レンズと、その累進多焦点レンズの設計方法、およびそのレンズの加工方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明は、左右の眼に対応する左右一組の累進多焦点レンズであって、
左右のレンズは、光軸位置を上端として下方に向かって加入度数が漸増する累進帯を備え、当該左右の一方のレンズを無調整側レンズ、他方のレンズを調整側レンズとして、
前記無調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
前記調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での加入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
前記調整側レンズの累進帯は、δ>δ、かつL>Lを満たすとともに、x=Lの位置での加入度数がδであり、
前記無調整側レンズと前記調整側レンズは、x≦Lであるとき、x=xでのプリズム度数の差|P−P|が、L=L、かつδ=δであると仮定したときのx=xでのプリズム度数の差以下である、
ことを特徴とする累進多焦点レンズとしている。
前記無調整側レンズと前記調整側レンズは、前記プリズム度数の差|P−P|が、x=Lとなる位置で最小となっている累進多焦点レンズとすればより好適である。
また本発明の範囲には、上記累進多焦点レンズの設計方法も含まれており、当該設計方法は、
前記累進帯の長さL、プリズムディオプトリーを単位とする度数により表される左右のレンズの遠用球面同値をそれぞれSf、Sfとするとともに、左右のレンズの加入度数をともにδとする初期値を設定する初期値設定ステップを実行するとともに、
前記初期値が、以下の3式
Sf×Sf>0
|Sf−Sf|>0
(Sf+δ)×(Sf+δ)≧0
を全て満たす場合、
同符号となる前記SfとSfの符号と、計算式Sf−Sfの値の符号と、計算式(Sf+δ)と、(Sf+δ)の符号とに基づいて、左右いずれか一方のレンズを調整側レンズとし、他方のレンズを無調整側レンズとして規定する調整側レンズ判定ステップと、
前記調整側レンズの累進帯長を前記LからLに延長させるとともに、前記加入度数を前記δからδに増加させるとともに、前記累進帯における上下方向のプリズム効果に対応する度数をプリズム度数として、前記初期値に基づく左右のレンズの前記プリズム度数に対し、前記調整側レンズと無調整側レンズとの前記プリズム度数を近似させるように前記Lと前記δを調整する累進帯補正ステップと、
前記調整側レンズに対応する前記初期値のうち、前記Lと前記δを、それぞれ前記累進帯補正ステップにより調整した前記Lと前記δに変更する再設定ステップと、
を実行することを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法としている。
そして、前記調整側レンズ判定ステップでは、
Sf+δ>0かつSf+δ>0、あるいはSf<0かつSf<0かつSf+δ>0かつSf+δ>0である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの数値が小さい方に対応するレンズを調整側レンズとするとともに、
Sf<0かつSf<0かつSf+δ<0かつSf+δ><である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの絶対値の小さい方に対応するレンズを調整側レンズとし、
前記累進帯補正ステップでは、前記調整側レンズと前記無調整側レンズのそれぞれの累進帯において、前記上端から下方に向かって距離Lの位置での前記プリズム度数を近似させる累進帯多焦点レンズの設計方法とすることもできる。
また、前記累進帯補正ステップでは、
前記無調整側レンズ、および調整側レンズにおける累進帯の上端から下方に向かう距離xと加入度数δ(x)との関係を、それぞれ、以下の関数
δ(x)=fa(x)、およびδ(x)=fb(x)
で規定するとともに、
前記無調整側レンズ、および調整側レンズにおける前記距離xとプリズム度数P(x)との関係を、以下の関数
P(x)=ga(x)、およびP(x)=gb(x)
で規定し、
(Sf+δ)×(Sf+δ)>0である場合、
δ=fa(L)=fb(L
δ=fb(L)、
ga(L)=gb(L
となる条件を全て満たすように前記Lと前記δとを計算することで、前記調整側レンズと前記無調整側レンズのそれぞれの累進帯において、前記上端から下方に向かって距離Lの位置での前記プリズム度数を一致させる累進多焦点レンズの設計方法とすることもできる。
さらに、前記累進帯補正ステップでは、前記累進帯長がLで、当該累進帯の下端における前記加入度数がδとなる累進帯を備えたレンズについて、前記式δ(x)=fa(x)として、
Sf>0、Sf>0、Sf+δ>0、Sf+δ>0
を全て満たす場合には、累進帯の領域内で、
δ(x)>0
を満たす領域では、
δ(x)={(Sf+δ)x/L}−Sf
で表される関数を規定するとともに、
Sf<0、Sf<0、Sf+δ>0、Sf+δ>0
を全て満たす場合には、前記累進帯の領域内で、
δ(x)>0、x>0
を満たす領域では、
δ(x)={(Sf+δ)L/x}−Sf
で表される関数を規定する累進帯多焦点レンズの設計方法としてもよい。
あるいは、(Sf+δ)×(Sf+δ)=0
である場合、
前記調整側レンズ判定ステップでは、式(Sf+δ)と式(Sf+δ)のうち、値が0となる式に対応するレンズを前記調整側レンズとし、
前記累進帯補正ステップでは、累進帯の上端で、前記調整側レンズと無調整側レンズとの前記プリズム度数が近似するように前記Lと前記δを調整する累進帯多焦点レンズの設計方法とすることもできる。
上記いずれかの累進帯多焦点レンズの設計方法において、前記加入度数と、前記累進帯長の少なくとも一方が飛び値、あるいは数値範囲が規制された規定値でのみ設定可能であるとき、
前記再設定ステップでは、前記累進帯補正ステップにより調整した前記δ1と前記L1のうち、規定値でのみの設定が可能な方については最も近似する規定値を採用することとしてもよい。
本発明は、上記いずれかの方法によって設計された累進多焦点レンズの加工方法にも及んでおり、当該加工法は、
眼鏡フレームに嵌め込まれた際に、左右のレンズで累進帯の状態の上下位置が揃うように、レンズの上方と下方を切削してするともに、前記調整側のレンズについては、累進帯の長さが前記初期値Lであるものとして、累進帯の途上で下端側を切削する、
ことを特徴とする累進多焦点レンズの加工方法としている。
本発明の累進多焦点レンズによれば、累進帯におけるプリズム効果に起因して左右のレンズに発生する像の上下位置の差を軽減させ、極めて目に優しい遠近両用眼鏡を提供することができる。また、製造が容易であることから、その目に優しい遠近両用眼鏡を、コストアップを伴わずに提供することも期待できる。
累進多焦点レンズの概略構造と累進帯の度数についての説明図である。 累進多焦点レンズの累進帯におけるプリズム効果を説明するための概略図である。 本発明の第1の実施例に係る累進多焦点レンズの設計方法を説明するための図である。 本発明の第1の実施例に係る方法で設計された累進多焦点レンズと、眼鏡フレームとの位置関係を示す図である。 本発明の第2の実施例に係る方法で設計された累進多焦点レンズの光学特性を示す図であり、累進帯での位置とプリズム度数との関係を示している。 本発明の第3の実施例に係る方法で設計された累進多焦点レンズの光学特性を示す図であり、累進帯での位置とプリズム度数との関係を示している。
===本発明の基本概念===
図2は、累進多焦点レンズにおけるプリズム効果の概略を示す図である。図2(A)は、当該レンズの平面図であり、(B)は(A)におけるa−a断面における累進帯上端11からの距離xと加入度数δに対応する度数Dとの関係21と、距離xとP(x)との関係22の一例を示している。なお、以下では、レンズ1の左右を区別する場合は、左右のレンズの符号を、それぞれ1L、1Rとする。また、ここでは、説明を簡単にするために、累進帯10の上端11からの距離xと、その位置での加入度数δ(x)との関係が、図1(B)に示したように一次関数で表されるものとしている。
そして、上記の距離xと、δ(x)との関係が一次関数である場合、当該図2に示したように、累進帯長をLとし、累進帯10の下端12における加入度数はδであり、この累進帯10の下端12では、距離x=Lである。したがって、xとその位置での加入度数δ(x)との関係は、図2(B)において実線で示した直線21で示される。
また、位置xと当該位置xでの上下方向のプリズム効果によって発生する屈折力(以下、プリズム度数)P(x)との関係は、よく知られているプレンティスの式に基づいて求めることができる。すなわち、レンズ光軸(ここでは、アイポイントとする)2からの距離xでの度数をDとすると、プリズム度数P(x)は、
P(x)=D・x…(式1)
で表される。
つぎに、累進帯10の下端x=Lにおけるプリズム度数P(x)を考える。ここでは、本発明の概念をより平易に説明するために、図2(B)の点線で示したように、距離xとプリズム度数P(x)との関係を直線で近似することとする。上記式中のDを、遠用度数Sfと加入度数δとの和とし、その下端でのプリズム度数P(L)とした計算式を求める。この計算式には、一般的な近似式を用いることができる。例えば、上記非特許文献5では、P(L)=(Sf+δ/2)Lに相当する計算式を採用しているが、以下では、説明の容易性を優先させるとともに、本発明者が眼鏡レンズの処方に際して実際に参考にしている、以下の近似式
P(L)=(Sf+δ)L…(式2)
を採用することとする(但し、Lの単位はcm)。そして、累進帯10の上端11と下端12とにおけるプリズム度数を直線で補間する。
なお、位置xとプリズム度数P(x)との関係が式2と異なっていても、あるいは、その関係が一次関数でない場合であっても、遠用度数Sfと加入度数δとの加算値が大きいほど、および累進帯長Lが長いほど大きくなることが知られており、本発明の概念、および作用、効果などは、式2が他の数式に置換されても変わらない。
ここで、左右のレンズ(1L,1R)における遠用度数が異なる場合を考える。左右のレンズ(1L,1R)の遠用度数をそれぞれSf、Sfとすると、従来では、累進帯長Lと加入度数δを両眼で同じにすることが前提となっていることから、累進帯10の下端12では、式2の中のδが左右のレンズ(1L,1R)で同じδとなる。そして、両眼のプリズム度数の差の絶対値をΔPとすると、当該ΔPは式2より、
ΔP=|(Sf−Sf)L
となる。
したがって、累進帯10が長いほど、また左右のレンズ(1L,1R)の遠用度数(Sf,Sf)の差が大きいほど累進帯下端12での左右のレンズ(1L,1R)におけるプリズム度数の差ΔPが大きくなる。確かに、左右のレンズ(1L,1R)で加入度数を変え、累進帯10の下端12におけるプリズム度数を一致させれば、累進帯10の下端で見る物体の上下位置は左右で同じとなる。しかし、この場合は、当初の加入度数δとなる位置が左右のレンズ(1L,1R)で異なることになる。
具体的に一例を挙げると、左右のレンズ(1L,1R)の当初の加入度数δがともに+1.50D、当初の累進帯長をL=10.00mm(1.00cm)、Sf=+2.00D、Sf=+3.00Dという処方の下で左右のレンズ(1L,1R)を作製すると、左右のレンズ(1L,1R)の近用度数SnとSnは、それぞれ、Sn=+3.50、Sn=+4.50となる。そして、左右のレンズ(1L,1R)における累進帯10の下端12におけるプリズム効果をP(δ),P(δ)とすると、これらP(δ),P(δ)は、式2にδ=1.50D、L=10.00mmを代入して求めることができ、P(δ)=+3.50D、P(δ)=+4.50Dとなる。したがって、上記の処方に基づいて最終的に作製される眼鏡は、右目ではフレームの下端で見えている像が左目では欠落することになる。
そこで、左のレンズ1Lついては、右のレンズ1Rのプリズム度数と揃えるために、左のレンズの加入度数を+2.50にして、左右のレンズ(1L,1R)近用度数をともに+4.50にする。それによって、左のレンズ1Lについても、累進帯12の上端11から下方に累進帯長L=10.00mmの位置の点におけるプリズム度数が、右のレンズ1Rと等しく+4.50Dとなる。しかし、処方では、加入度数δが+2.00Dであるので、左のレンズ1Lでは、当初の加入度数δ=+2.00Dとなる位置x(δ)が、当初の累進帯10の下端12の位置(x=L)よりも上方に移動することになる。そのため、近くの物を見るために左右の眼球を下方に回転させたとき、左のレンズ1Lは、累進帯10の下端12での度数が過大となり、やはり、健康上問題がある。
<技術思想>
上述したように、左右のレンズ(1L,1R)における遠用度数が異なる場合、累進帯下端12でのプリズム度数を左右のレンズ(1L,1R)で等しくしようとして、一方のレンズ(1Lまたは1R)の加入度数を増やすと、その一方のレンズ(1Rまたは1L)において処方通りの加入度数δが得られる位置が当初の累進帯下端12の位置(x=L)よりもずれてしまう。
そこで本発明者は、発想を転換し、左右のレンズ(1L,1R)で累進帯長が同じである、という従来の累進多焦点レンズの構造や、そのレンズの設計思想自体を疑ってみた。また、左右のレンズ(1L,1R)で加入度数が同じである、とうい一般的な常識についても破棄してみた。そして、この発想の転換を出発点として、加入度数を増加させて、かつ累進帯10を長くすれば、当初の処方通りの加入度数となる位置が、その累進帯10の途中に存在することになり、この位置でのプリズム度数を増加させることができる、ということに気がついた。すなわち、左右の一方のレンズ(1Lまたは1R)の累進帯10を延長させれば、当初の処方通りの加入度数の位置を、左右のレンズ(1L,1R)でほぼ一致させつつ、その位置でのプリズム度数の差ΔPが当初の差よりも小さくなる、ということを知見した。
そして、当初の累進帯10の下端12までを眼鏡フレームに嵌め込む部分として設計すれば、眼鏡フレームの下端で見た像の位置の差が少なくなり、目に掛かる負担も少なくなる、という本発明の技術思想に想到した。すなわち、累進帯10を延長した側のレンズについては累進帯10の下端12まで使わず、その途中までを実際に眼鏡フレームに嵌め込む部分として使用するのである。本発明は、このような発想の転換や知見などに基づいて鋭意研究を重ねた結果想到したものである。以下では、本発明の一実施形態に係る累進多焦点レンズの設計方法を本発明の実施例として幾つか挙げ、上記技術思想について、より具体的に説明する。
===第1の実施例===
まず、第1の実施例として、基本的な実施例を挙げる。第1の実施例では、先の図1に示したように、累進帯10の下端12での加入度数をδとして、上端11からの距離xとその距離における加入度数δ(x)とは、累進帯長がLのときに、加入度数δとなるとともに、xとδ(x)との関係が以下の一次関数、
δ(x)=δx/L…(式3)
となるように設定されているものとする。
また、以下では、左右のレンズ(1L,1R)のうち、一方のレンズ(1Lまたは1R)について加入度数を当初の加入度数δからδに増加させるとともに、当初の処方に基づく累進帯長を当初の長さをLとし、その累進帯長LをLに延長するように変更することしている。そして、加入度数や累進帯長を変更する側のレンズを調整側レンズとし、その調整側レンズの遠用度数とSfbとする。また、近用度数をSnbとする。
一方、累進帯長や加入度数の当初の処方のままで変更を加えないレンズ(1Rまたは1L)を無調整側レンズと称することとし、この無調整側レンズの遠用度数と近用度数を、それぞれSfaとSnaとする。なお、当然のことながら、無調整側レンズの累進帯長と加入度数は、それぞれLとδとなる。そして、累進帯10の上端11からの距離xが当初の累進帯長Lとなるときに、調整側、無調整側の双方のレンズで、加入度数が当初のδとなり、プリズム度数も同じとなるように、L、δを求める。
まず、Lを求めるために、調整側レンズと無調整側レンズとが、当初の加入度数δとなる位置で同じプリズム度数になっている、という条件を上記の式2に当てはめる。それによって、
P(δ)=(Sfa+δ)L=(Sfb+δ)L…(式4)
となり、
=(Sfa+δ)L/(Sfb+δ)…(式5)
となる。つぎに、調整側レンズでは、累進帯における加入度数δとその位置xとの関係が、上記式3において、δがδに、LがLになるので、
δ(x)=L=δx/L
となり、上記式5で求めたLをこの式に代入すれば、
δ=δ/L・・・(式6)
となる。
もちろん、式5と式6とから、
δ=δ/L=δ(Sfa+δ)L/L(Sfb+δ
=δ(Sfa+δ)/L(Sfb+δ)・・・(式7)
=δ/δ・・・(式8)
として、δを求めた上でLを求めることもできる。
ここで、調整側、および無調整側のレンズについて、その遠用度数(Sfa,Sfb)と近用度数(Sna,Snb)の符号の組み合わせに応じて幾つかの例を考える。なお、本発明では、その符号の組み合わせは、調整側レンズと無調整側レンズとで同じであることを前提としている。そして、符号の組み合わせ条件としては、調整側、無調整側のレンズを問わず、遠用度数をSf、近用度数をSnとすると、以下の(1)〜(3)が考えられる。
(1)Sf>0、Sn=Sf+δ>0
(2)Sf<0、Sn=Sf+δ<0
(3)Sf<0、Sn=Sf+δ>0
上記の技術思想では、L>L、δ>δであることが条件となる。したがって、式5から求められるL1、あるいは式7で求められるδ1が、これらの条件を満たすためには、式5あるいは式7から、
(Sfa+δ)/(Sfb+δ)>1
であることが条件となる。そして、条件(1)の場合では、
Sfa+δ>0、Sfb+δ>0
であることから、左右のレンズのうち、遠用度数の数値が小さい方が調整側レンズとなる。また、条件(2)の場合では、
Sfa+δ0<0、Sfb+δ0<0
であることから、左右のレンズのうち、遠用度数の絶対値が小さい方が調整側レンズとなる。そして、条件(3)の場合では、
Sfa+δ>0、Sfb+δ0>0
であることから、条件(1)と同様に、遠用度数の数値が小さい方が調整側レンズとなる。
なお、以下では、当該条件(1)〜(3)の場合に対応する具体的な処方例を挙げ、上記式5〜8の正当性を実証する。
<条件(1)の具体例>
表1に条件(1)に対応する具体的な当初の処方例を示した。
Figure 2013171134
表1に示したように、ここでは、遠用度数Sf、近用度数Snを左右のレンズ(1L,1R)に対応させて、それぞれ、Sf、Sf、Sn、Sn、としている。当初の加入度数と累進帯長は、左右で同じであり、それぞれδとLとしている。なお、表1や以下の各表では、累進帯長や位置の単位をmmとしている。また、第1の実施例を含め、以下の各実施例では、乱視を矯正しない場合の狭義の遠用度数に、周知の「遠用乱視度数」や「乱視軸度」を反映させて、最終的に球面レンズとみなしたときの屈折率の指標となる「遠用球面度数」(あるいは「遠用球面同値」)と呼ばれる値を「遠用度数」と称することにしている。したがって、以下では、「遠用度数」は、この「遠用球面度数」と同義であるものとする。また、近用度数も「遠用球面度数」に加入度数δを加算した値である「近用球面度数」と同義であるものとする。
表2に、表1に基づいて設計されるレンズの特性を示した。
Figure 2013171134
当該表2では、累進帯10の上端11から下端12までの領域において漸増する加入度数をδとして、ある加入度数δとなるときのプリズム度数を、左右のレンズ(1L,1R)について、それぞれ、P(δ)、P(δ)としている。また、累進帯10の上端11からの距離を、x(δ)、x(δ)としている。
上記表2に示したように、表1に示した当初の処方に基づいてレンズ(1L,1R)を設計すると、左右のレンズ(1L,1R)は、ともに、累進帯の下端x(δ)=x(δ)=10mmで加入度数δ=+2.0となるように設計される。しかし、左右の遠用度数Sf、Sfに差があるため、結果的に左右の近用度数Sn、Snに差がでる。それによって、当初の加入度数δ=+2.0となる累進帯の下端x(δ)=x(δ)=10mmでは、右のレンズのプリズム度数P(δ)=+4.00Dに対し、左のレンズではP(δ)=+5.00Dとなり、プリズム度数の差ΔPが左右で1.00D異なってしまう。そして、累進帯10では始終プラスの度数であるので、この累進帯10では、上方を基底とするプリズム効果が発現する。したがって、累進帯10の下端12では、近用度数が小さな右目の像が欠落することになる。そこで、上記式5、式6を用いて累進帯10の下端12でのプリズム度数を左右のレンズで一致させる。ここでは、遠用度数が小さい右のレンズが調整側レンズとなる。
表3に最終的な処方例を示した。
Figure 2013171134
また、表4に、最終的な処方に基づく累進帯における特性を示した。
Figure 2013171134
表4に示したように、左右のレンズ(1L,1R)がともに、当初の累進帯10の下端12であるx(δ)=10.00mmの位置で加入度数δ=+2.00となり、その位置でのプリズム度数もP(δ)=P(δ)=+5.00で同じになる。すなわち、左右のレンズ(1L,1R)は、累進帯10の下端12で同じ加入度数で同じプリズム度数となる。なお、表3に示した各設定値や表4に示した数値は、例えば、汎用のパーソナルコンピューターにインストールされた一般的な表計算ソフトウエアを利用することで求めることができる。すなわち、起動中にある表計算ソフトウエアに、表1に示した各種設定値を初期値として入力するとともに、その初期値を式5〜式8などに代入させて計算させればよい。
図3に、第1の実施例に基づいて設計されたレンズ(1L,1R)における累進帯10の光学特性を示した。図3(A)は、表2に示した光学特性をグラフにしたものであり、累進帯10の上端11からの距離xと、左右のレンズ(1L,1R)のそれぞれにおける度数Dとの関係(21a,21b)と、xとプリズム度数P(x)との関係(22a,22b)が示されている。当初の処方に従って作製されたレンズでは、左右のレンズ(1L,1R)の累進帯長がともにLで、加入度数もδで左右のレンズ(1L,1R)で一致している。そして、累進帯10の下端12における左右のレンズ(1L,1R)プリズム度数(P(δ),P(δ))は、それぞれのレンズ(1L,1R)の遠用度数(Sf,Sf)の差に従って差ΔPが生じる。
図3(B)は、表4に示した光学特性をグラフにしたものであり、ここでは、右のレンズ1Rが第1の実施例に基づいて設計し直されていることになる。そして、(A)に示したグラフに対し、右のレンズ1RにおけるxとDとの関係23とxとP(x)との関係24が示されている。図示したように、右のレンズ1Rの累進帯をL1に延長し、加入度数をδ1に増加させている。それによって、当初のxとP(x)との関係を示す直線22bの傾きが変化し、当初の累進帯10の下端12であるx=Lにおいて、左右のレンズのプリズム度数P(x)が一致し、そのときの加算度数も当初のδに一致する。
なお、表3に示した処方に基づいて製造されたレンズ(1L,1R)を用いて眼鏡を作製する際には、左右のレンズ(1L,1R)を当初の累進帯10の下端12位置まで使用するものとして加工すればよい。すなわち、当初の累進帯10の下端12が眼鏡フレームの下端位置であるものとして設計すればよい。図4に第1の実施例に基づいて設計されたレンズ(1L,1R)の加工方法を例示した。この図では、眼鏡のフレーム30を前方から見たときの左右のレンズ(1L,1R)と当該フレーム30との位置関係が示されている。
左右のレンズ(1L,1R)のそれぞれに対応する左右のフレーム枠(30L,30R)の下端31と当初の累進帯10aの下端位置とがほぼ一致するように、フレーム30と左右のレンズ(1L,1R)とが配置されており、右のレンズ1Rについては、累進帯10bの長さがLに延長して、その累進帯10bの下端が当初の位置よりも下方に延長していても、左のレンズ1aの累進帯10aの下端位置、すなわち当初の累進帯と同じ下端位置で切削する。それによって、左右のレンズ(1L,1R)が左右のフレーム枠(30L,30R)に嵌め込まれると、その左右のフレーム枠(30L,30R)の下端位置31での加入度数とプリズム度数が一致し、プリズム度数の差に起因する像の欠落が無くなる。また、累進帯(10a,10b)の途中では、同じ加入度数δとなるときの左右のプリズム度数(P(δ),P(δ))が下端31に向けて徐々に近似していき、より目に優しい遠近両用眼鏡となる。
<条件(2)の具体例>
次に、上記条件(2)に対応する具体例な処方例を以下の表5に示した。
Figure 2013171134
以下の表6に、表5に基づいて設計されるレンズの特性を示した。
Figure 2013171134
以下の表7に、条件(2)における最終的な処方例を示した。
Figure 2013171134
表8に、最終的な処方に基づいて設計されるレンズの特性を示した。
Figure 2013171134
表8に示したように、左右のレンズ(1L,1R)がともに、当初の累進帯10の下端12であるx(δ)=10.00mmの位置で、表5に示した当初の加入度数δ=+2.00となり、その位置でのプリズム度数もP(δ)=P(δ)=+5.00で同じになる。
<条件(3)の具体例>
上記条件(3)についても具体例を示す。以下の表9にその処方内容を例示した。
Figure 2013171134
以下の表10に、表5に基づいて設計されるレンズの特性を示した。
Figure 2013171134
以下の表11に、条件(3)における最終的な処方例を示した。
Figure 2013171134
表12に、最終的な処方に基づいて設計されるレンズの特性を示した。
Figure 2013171134
表12に示したように、左右のレンズ(1L,1R)がともに、当初の累進帯10の下端12であるx(δ)=10.00mmの位置で、表9に示した当初の加入度数δ=+3.00となり、その位置でのプリズム度数もP(δ)=P(δ)=+2.50で同じになる。
<Sf+δ=0の場合>
ところで、上記条件(1)〜(3)では、近用度数が0となる場合、すなわち、
Sf+δ=0
となる場合については、上記式5、あるいは式7に当該条件を当てはめると、Lやδが0あるいは∞となってしまう。このような場合は当初の処方通りに設計するのが現実的である。また、実際の累進多焦点レンズにおける累進帯長は10mm〜18mm程度であり、上記式5において、Sfb+δの値が小さくなると累進帯長が極めて長くなり、設計が可能であっても、その設計に基づくレンズを実際に製造することが事実上できない。したがって、上記式5により、累進帯長L1が製造不可能な長さになってしまう場合は、製造可能な最長の累進帯長を指定することになる。いずれにしても、左右のレンズの遠用度数に差があるとき、一方のレンズの加入度数と累進帯長を当初の処方にて指定された数値よりも増加させることで、累進帯の下端におけるプリズム度数の左右差を近似させて、累進帯の下端で見る像の上下位置が大きく狂うことがなくなり、目に優しい遠近両用眼鏡を提供することが可能となる。
===第1の実施例の応用例===
上記第1の実施例の設計法方法では、式5や式7より矛盾が生じるため、Sf+δ=Sn=0、すなわち、累進帯10の下端12における度数が0となる場合を想定していなかった。しかし、これは、当初の累進帯10の下端12において、左右のレンズの加入度数とプリズム度数を一致させようとしていたからであり、厳密に一致させなくても、左右のレンズのプリズム度数を近似させるだけでもかなり見やすくなることは明白であることから、Sf+δ=0となる場合では、加入度数を加減させる場合も考えられる。
また、当初の処方において、左右のレンズの一方がSf+δ=Sn=0である場合で、他方のレンズがSf<0、Sn=Sf+δ<0である場合では、累進帯下端12でのプリズム度数を近似させることを諦める代わりに、累進帯10の全域に亘ってプリズム度数の左右差を減少させることも考えられる。以下に具体例を挙げる。
表13に、当該応用例における当初の処方内容を示した。
Figure 2013171134
また、表13に基づいて設計されるレンズの特性を表14に示した。
Figure 2013171134
表13に示したように、左のレンズがSn=Sf+δ=0となっており、右のレンズについては、Sf=−3.00D、Sf+δ=−1.00Dである。累進帯の上端から下端に亘り、左右のレンズのプリズム度数の差が一律に1.00Dとなっている。
次に、左のレンズの累進帯長Lを当初の10.00mmから15.00mmに延長し、加入度数δを2.00Dから3.00Dに増加させるように補正する。
表15に、補正後の処方内容を示した。
Figure 2013171134
また、表15に基づいて設計されるレンズの特性を表16に示した。
Figure 2013171134
表16に示したように、累進帯10の下端12では、左右のレンズのプリズム度数の差が当初と同じ1.00Dであるが、上端11では、プリズム度数が一致し、下端12に向けて徐々にその差が当初の1.00Dに向かっている。すなわち、累進帯10の全域に亘って左右のレンズ(1L,1R)のプリズム度数の差が当初よりも近似することになり、一方のレンズにおいて累進帯下端12で像が欠けるのを許容するかわりに、累進帯10の上端11から下端12に向けて徐々にプリズム度数の差が開いていき、累進帯10の全域で一定の差があるより、遙かに見やすくなる。
===累進帯における位置とプリズム度数との関係について===
上記第1の実施例では、アイポイント2から距離xに応じて左右のレンズ(1L,1R)の加入度数δ(x)が一致し、プリズム度数P(x)については、当初の累進帯10の下端12で左右のレンズ(1L,1R)で一致していた。しかし累進帯10の途上では、左右のレンズ(1L,1R)のプリズム度数P(x)の差が漸減するものの、上下の位置が異なっていた。これは、累進帯10における位置xとδとの関係が単純な一次関数であることに起因している。そこで、以下では、当該δと位置xとの関係に応じ、左右のレンズ(1L,1R)の累進帯10で位置xとプリズム度数P(x)との関係が第1の実施例よりも近似させることができる、という事例を、上記条件(1)(2)のそれぞれに対応して、第2、第3の実施例として挙げる。
===第2の実施例===
<累進帯における位置とプリズム度数との関係>
表1に示した処方例に基づいて第2の実施例に係る設計方法を説明する。第2の実施例では、累進帯10における長さをL、下端での加入度数をδとしたときに、累進帯10の途中における加入度数δと、その加入度数δとなる位置x(δ)との関係を
x(δ)=(Sf+δ)L/(Sf+δ)…(式9)
としている。すなわち、δをxの関数δ(x)として式9を変換すると、
δ(x)={(Sf+δ)x/L}−Sf…(式10)
としている。なお、式9や式10に示した累進帯10における加入度数δと位置xとの関係では、累進帯10の上端11側で、加入度数(δ,δ(x))がマイナス値となる、しかし、実際には、加入度数(δ,δ(x))をマイナス値にすることはないので、累進帯10の上端11から加入度数がδ=0となる位置x(δ)となる位置までは、上記の式4を採用するなどして、δ≧0となるように設定すればよい。
<レンズ設計>
上述したように、本発明の基本概念は、調整側レンズの累進帯長を当初の処方よりも延長させるとともに、加入度数を増加させることで、当初の累進帯10の下端12における加入度数を左右のレンズ(10L,10R)で一致させつつ、左右のレンズ(10L,10R)のプリズム度数を近似させる、というものである。そこで、第2の実施例では、当初の処方を表1に示した内容と同様とするとともに、処方累進帯10における位置とプリズム度数との関係として上記の式2を採用し、当該式2と上記式10とに基づいて調整側レンズの累進帯長Lと加入度数δとを求める、という事例を挙げる。
まず、第2の実施例における補正前のレンズの光学特性を表17に示した。
Figure 2013171134
表17に示したように、δとxとの関係は、上記式9に従っている。次に、上記第1の実施例と同様にして、上記式2から導出される上記式5をそのまま適用して調整レンズの累進帯長Lを求めると、
=(Sfa+δ)L/(Sfb+δ)…(式5)
となる。そして、調整側レンズでは、式10は、
δ(x)={(Sfb+δ)x/L}−Sfb…(式11)
となり、式5のLを式11に代入する。また、式11は、x=Lのときδ(x)=δとなることから、調整側レンズの加入度数δは、
δ=(Sfa−Sfb)+δ…(式12)
となる。なお、ここでは、Sfa>0、Sfb>0で、δ>δであることから、左右のレンズのうち、遠用度数が小さい方が調整側レンズとなり、調整側レンズの加入度数δは、左右のレンズの遠用度数の差に当初の加入度数δを加算した値となる。言い換えれば、左右のレンズの近用度数を一致させるようにδを設定する。
したがって、第1の実施例では、上記表1に記載の処方内容は、上記式5と式11とにより、最終的に以下の表18のようになる。
Figure 2013171134
そして、表19は、表18の処方に基づいて設計されたレンズの光学特性である。
Figure 2013171134
ここで、表19に基づいて、左右のレンズ(1L,1R)における、位置xとプリズム度数P(x)との関係を検証してみる。すなわち、表19は、累進帯10の途中における加入度数δに対する位置x(δ)やプリズム度数P(δ)の関係であり、これを位置x(δ)とプリズム度数P(δ)との関係に直してみる。図5は、位置xとその位置でのプリズム度数P(x)との関係をグラフにしたものであり、図5(A)は右のレンズ1RにおけるxとP(x)との関係であり、(B)は、(A)に示したグラフに、左のレンズ1LにおけるxとP(x)との関係を追加したグラフである。(A)に示したように、xとP(x)との関係が黒丸「●」で示されており、この黒丸の軌跡は、一つの直線となる。
(B)では、左のレンズ1LにおけるxとP(x)との関係を白丸「○」で示している。そして、この白丸は、(A)に示した黒丸の軌跡と一致する。すなわち、左右のレンズ(1L,1R)は、同じ位置xで、同じプリズム度数P(x)となっていることが確認された。
以上より、第1の実施例では、左右のレンズ(1L,1R)が、累進帯10の同じ位置xで同じ加入度数δ(x)となっていたのに対し、第2の実施例では、左右のレンズ(1L,1R)で同じプリズム度数P(x)となる位置xが一致している。そのため、累進帯に亘って左右のレンズで上下方向の像の高さが揃い、この第2の実施例に基づいて設計されたレンズを用れば、さらに目に優しい遠近両用眼鏡とすることができる。
===第3の実施例===
<累進帯における位置とプリズム度数との関係>
第3の実施例は、第2の実施例と同様に、累進帯10に亘って左右のレンズ(1L,1R)で上下方向の像の高さを近似させるための設計方法である。そして、左右の遠用度数と近用度数がともにマイナス値である点が第1の実施例と異なっている。ここでは、先に表5に示した処方を例に挙げて第3の実施例に係る設計方法を説明する。
第3の実施例では、累進帯10における長さをL、下端での加入度数をδとしたときに、累進帯10の途中における加入度数δと、その加入度数δとなる位置x(δ)との関係を
x(δ)=(Sf+δ)/(Sf+δ)L…(式13)
としている。すなわち、δをxの関数δ(x)として式13を変換すると、
δ(x)=(Sf+δ)/xL−Sf…(式14)
としている。なお、第3の実施例でも、式12や式13に示したように、累進帯10の上端11に近い位置、すなわち位置xの値が小さい場合にδ(x)がマイナス値になる、またx=0では、δが無限大となる。したがって、第3の実施例の場合も、累進帯10の上端11から加入度数がδ(x)=0となる位置xまでは、上記の式4を採用するなど、xとδ(x)の関係を適宜に設定すればよい。
<レンズ設計>
第3の実施例として、具体的に、先に示した式2と上記式13とに基づいて調整側レンズの累進帯長Lと加入度数δとを求める、という事例を挙げる。
まず、第3の実施例における補正前のレンズの光学特性を表20に示した。
Figure 2013171134
表20に示したように、δとxとの関係は上記式12に従っている。次に、上記第2の実施例と同様にして、上記式2から導出される上記式5をそのまま適用して調整レンズの累進帯長Lを求めると、
=(Sfa+δ)L/(Sfb+δ)…(式5)
となる。そして、調整側レンズでは、式14は、
δ(x)=(Sfb+δ)/xL−Sfb…(式15)
となり、式5のLを式15に代入する。また、式15は、x=Lのときδ(x)=δとなることから、調整側レンズの加入度数δは、
δ={(Sfa+δ/(Sfa+δ)}−Sfb…(式16)
となる。なお、ここでは、Sfa<0、Sfa+δ<0、Sfb<0、Sfb+δ<0、δ>δであることから、式5より、左右のレンズ(1L,1R)のうち、遠用度数の絶対値が小さい方が調整側レンズとなる。
以上より、第3の実施例では、上記表5に記載の処方内容は、上記式5と式16とにより、最終的に以下の表21のようになる。
Figure 2013171134
そして、表22は、表21の処方に基づいて設計されたレンズの光学特性である。
Figure 2013171134
つぎに、表22に基づいて、累進帯10での同じ位置xにおけるプリズム度数P(x)が左右のレンズ(1L,1R)で一致しているかどうかを検証してみる。図6に、左右のレンズ(1L,1R)について、xとP(x)との関係を示した。当該図6では、表22に示した左右のレンズ(1L,1R)におけるx(δ)とP(δ)の全関係を散布図にしたものであり、全ての点が一つの曲線上に正確に乗っており、累進帯10における同じ位置xでは、同じプリズム度数P(x)となることが確認できた。したがって、当該第2の実施例の方法に基づいて設計されたレンズを用いれば、近視者用の遠近両用眼鏡であっても、より目に優しい遠近両用眼鏡とすることができる。
===その他の実施例===
<計算式について>
上記各実施例では、累進帯10における上端11からの距離xと、その距離xの位置でのプリズム度数P(x)との関係を式2によって規定していた。また、累進帯10の途中で、ある加入度数δとなるときの位置x(δ)については、式3、式9、式13などによって規定していた。そして、これらの各式は本発明の概念を平易に説明するために採用された式である。例えば、δとx(δ)の関係については、レンズメーカーによって異なると考えられ、δとP(δ)、あるいはxとP(x)の関係も各種近似式や理論式が存在する。
しかし、本発明の本質は、これらの式にあるのではない。本発明は、左右のレンズ(1L,1R)の遠用度数に差があるときに、一方のレンズを調整側レンズとして、累進帯の長さを他方の無調整側レンズよりも長くするとともに、その累進帯の下端での加入度数を無調整側レンズの値よりも大きくすることにある。そして、その累進帯の長さと加入度数とを増加させることで、無調整側レンズにおける累進帯下端での加入度数と調整側レンズにおいて累進帯の途中にあるその無調整側レンズの累進帯下端位置での加入度数とを一致させるとともに、当該位置での左右のレンズのプリズム度数を近似させることに大きな特徴を有するものである。
<左右のレンズ設計について>
上記各実施例では、左右一組のレンズが同じ規則に基づく累進帯を備えていた。すなわち、位置xと加入度数δとの関係は、左右のレンズで同じであった。もちろん、第1の実施例の応用例のように、当初の処方で一方のレンズの近用度数が0となる場合などでは、そのレンズについては、累進帯におけるxと加入度数との関係として、第1の実施例と同様に式3を採用し、他方のレンズについては第2あるいは第3の実施例における式10あるいは式14基づいて設計することも原理的には可能である。
<設計と処方について>
上記各実施例では、各実施例の方法に基づいて設計したレンズを用いて眼鏡を作る際、設計値をそのまま採用して処方していた。しかし、一般的な眼鏡用レンズは既製品であり、遠用度数、加入度数、累進帯長などの設定値は飛び値である。また、設定可能な数値範囲も限定されている。
例えば、累進帯長が1mm刻みであったり、加入度数が0.25D刻みであったりする。また、累進帯長では上限値(18mm程度)が存在し、遠用度数、近用度数、加入度数などにも、その設定値自体に下限や上限が規定されているのが普通である。すなわち、実際の眼鏡レンズの処方は、多種多様な既製品のレンズから最適なレンズを指定するための「指示書」である、とも言える。したがって、上述した各実施例に係る設計方法によって求められた最終的な処方(表3,表7,表11,表15,表18,表21)に記載されている変更後の加入度数や累進帯長は、あくまでも設計値である。換言すれば理想値であり、実際の処方では、理想値に最も近似した設定値を有するレンズを選択するように処方することになる。
いずれにしても、遠用度数、加入度数、累進帯長などが飛び値であるか否かに拘わらず、本発明の設計方法によって求められた各種設定値は、複雑な表面形状の特殊なレンズを特別に作製するための値ではなく、従来のレンズを特定する際の値である。そして、累進帯における加入度数δとその位置x(δ)との関係があらかじめ分かっているのであれば、その関係に基づいて最適なレンズ設計を行えばよい。すなわち、レンズメーカーには、処方を指定するだけで従来よりも目に優しい遠近両用眼鏡を利用者に提供することができる。しかも、特別な数値などを指定することがなく、既製品のレンズをそのまま利用することができる。したがって、利用者は、従来よりも見やすい目に優しい遠近両用眼鏡を従来通の価格で得ることができる。
この発明は、遠近両用眼鏡のレンズに適用することができる。
1,1L,1R レンズ、2 光軸(アイポイント)、3 遠用部、4 近用部、
10,10a,10b 累進帯、11 累進帯の上端、12 累進帯の下端、
30 眼鏡フレーム、31L,31R 眼鏡フレームのレンズ枠、
31 レンズ枠の下端、L,L,L 累進帯長
上記目的を達成するための本発明は、左右の眼に対応する左右一組の累進多焦点レンズであって、
左右のレンズは、光軸位置を上端として下方に向かって加入度数が漸増する累進帯を備え、当該左右の一方のレンズを無調整側レンズ、他方のレンズを調整側レンズとして、
前記無調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
前記調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での加入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
前記調整側レンズの累進帯は、δ>δ、かつL>Lを満たすとともに、x=Lの位置での加入度数がδであり、
前記無調整側レンズと前記調整側レンズは、x≦Lであるとき、x=xでのプリズム度数の差|P−P|が、L=L、かつδ=δであると仮定したときのx=xでのプリズム度数の差以下である、
ことを特徴とする累進多焦点レンズとしている。
そして、前記調整側レンズ判定ステップでは、
Sf >0かつSf >0かつSf+δ>0かつSf+δ>0、あるいはSf<0かつSf<0かつSf+δ>0かつSf+δ>0である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの数値が小さい方に対応するレンズを調整側レンズとするとともに、
Sf<0かつSf<0かつSf+δ<0かつSf+δ <0である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの絶対値の小さい方に対応するレンズを調整側レンズとし、
前記累進帯補正ステップでは、前記調整側レンズと前記無調整側レンズのそれぞれの累進帯において、前記上端から下方に向かって距離Lの位置での前記プリズム度数を近似させる累進帯多焦点レンズの設計方法とすることもできる。
上記いずれかの累進帯多焦点レンズの設計方法において、前記加入度数と、前記累進帯長の少なくとも一方が飛び値、あるいは数値範囲が規制された規定値でのみ設定可能であるとき、
前記再設定ステップでは、前記累進帯補正ステップにより調整した前記δ と前記 のうち、規定値でのみの設定が可能な方については最も近似する規定値を採用することとしてもよい。
本発明は、上記いずれかの方法によって設計された累進多焦点レンズの加工方法にも及んでおり、当該加工法は、
眼鏡フレームに嵌め込まれた際に、左右のレンズで累進帯の上端の上下位置が揃うように、レンズの上方と下方を切削するとともに、前記調整側のレンズについては、累進帯の長さが前記初期値Lであるものとして、累進帯の途上で下端側を切削する、
ことを特徴とする累進多焦点レンズの加工方法としている。
ここで、調整側、および無調整側のレンズについて、その遠用度数(Sfa,Sfb)と近用度数(Sna,Snb)の符号の組み合わせに応じて幾つかの例を考える。なお、本発明では、その符号の組み合わせは、調整側レンズと無調整側レンズとで同じであることを前提としている。そして、符号の組み合わせ条件としては、調整側、無調整側のレンズを問わず、遠用度数をSf、近用度数をSnとすると、以下の(1)〜(3)が考えられる。
(1)Sf>0、Sn=Sf+δ>0
(2)Sf<0、Sn=Sf+δ<0
(3)Sf<0、Sn=Sf+δ>0
上記の技術思想では、L>L、δ>δであることが条件となる。したがって、式5から求められるL1、あるいは式7で求められるδ が、これらの条件を満たすためには、式5あるいは式7から、
(Sfa+δ)/(Sfb+δ)>1
であることが条件となる。そして、条件(1)の場合では、
Sfa+δ>0、Sfb+δ>0
であることから、左右のレンズのうち、遠用度数の数値が小さい方が調整側レンズとなる。また、条件(2)の場合では、
Sfa+δ <0、Sfb+δ <0
であることから、左右のレンズのうち、遠用度数の絶対値が小さい方が調整側レンズとなる。そして、条件(3)の場合では、
Sfa+δ >0、Sfb+δ >0
であることから、条件(1)と同様に、遠用度数の数値が小さい方が調整側レンズとなる。
図3(B)は、表4に示した光学特性をグラフにしたものであり、ここでは、右のレンズ1Rが第1の実施例に基づいて設計し直されていることになる。そして、(A)に示したグラフに対し、右のレンズ1RにおけるxとDとの関係23とxとP(x)との関係24が示されている。図示したように、右のレンズ1Rの累進帯を に延長し、加入度数をδ に増加させている。それによって、当初のxとP(x)との関係を示す直線22bの傾きが変化し、当初の累進帯10の下端12であるx=Lにおいて、左右のレンズのプリズム度数P(x)が一致し、そのときの加算度数も当初のδに一致する。
<Sf+δ=0の場合>
ところで、上記条件(1)〜(3)では、近用度数が0となる場合、すなわち、
Sf+δ=0
となる場合については、上記式5、あるいは式7に当該条件を当てはめると、Lやδが0あるいは∞となってしまう。このような場合は当初の処方通りに設計するのが現実的である。また、実際の累進多焦点レンズにおける累進帯長は10mm〜18mm程度であり、上記式5において、Sfb+δの値が小さくなると累進帯長が極めて長くなり、設計が可能であっても、その設計に基づくレンズを実際に製造することが事実上できない。したがって、上記式5により、累進帯長 が製造不可能な長さになってしまう場合は、製造可能な最長の累進帯長を指定することになる。いずれにしても、左右のレンズの遠用度数に差があるとき、一方のレンズの加入度数と累進帯長を当初の処方にて指定された数値よりも増加させることで、累進帯の下端におけるプリズム度数の左右差を近似させて、累進帯の下端で見る像の上下位置が大きく狂うことがなくなり、目に優しい遠近両用眼鏡を提供することが可能となる。

Claims (9)

  1. 左右の眼に対応する左右一組の累進多焦点レンズであって、
    左右のレンズは、光軸位置を上端として下方に向かって加入度数が漸増する累進帯を備え、当該左右の一方のレンズを無調整側レンズ、他方のレンズを調整側レンズとして、
    前記無調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
    前記調整側レンズは、累進帯の長さがLで、当該累進帯の下端での加入度数がδであるとともに、当該下端を下限として、前記累進帯の上端から下方に向かう距離をxとして、任意の距離x=xでのプリズム効果に起因するプリズム度数をPとし、
    前記調整側レンズの累進帯は、δ>δ、かつL>Lを満たすとともに、x=Lの位置での加入度数がδであり、
    前記無調整側レンズと前記調整側レンズは、x≦Lであるとき、x=xでのプリズム度数の差|P−P|が、L=L、かつδ=δであると仮定したときのx=xでのプリズム度数の差以下である、
    ことを特徴とする累進多焦点レンズ。
  2. 請求項1において、前記無調整側レンズと前記調整側レンズは、前記プリズム度数の差|P−P|が、x=Lとなる位置で最小となっていることを特徴とする累進多焦点レンズ。
  3. 累進多焦点レンズの設計方法であって、
    前記累進帯の長さL、プリズムディオプトリーを単位とする度数により表される左右のレンズの遠用球面同値をそれぞれSf、Sfとするとともに、左右のレンズの加入度数をともにδとする初期値を設定する初期値設定ステップを実行するとともに、
    前記初期値が、以下の3式
    Sf×Sf>0
    |Sf−Sf|>0
    (Sf+δ)×(Sf+δ)≧0
    を全て満たす場合、
    同符号となる前記SfとSfの符号と、計算式Sf−Sfの値の符号と、計算式(Sf+δ)と、(Sf+δ)の符号とに基づいて、左右いずれか一方のレンズを調整側レンズとし、他方のレンズを無調整側レンズとして規定する調整側レンズ判定ステップと、
    前記調整側レンズの累進帯長を前記LからLに延長させるとともに、前記加入度数を前記δからδに増加させるとともに、前記累進帯における上下方向のプリズム効果に対応する度数をプリズム度数として、前記初期値に基づく左右のレンズの前記プリズム度数に対し、前記調整側レンズと無調整側レンズとの前記プリズム度数を近似させるように前記Lと前記δを調整する累進帯補正ステップと、
    前記調整側レンズに対応する前記初期値のうち、前記Lと前記δを、それぞれ前記累進帯補正ステップにより調整した前記Lと前記δに変更する再設定ステップと、
    を実行することを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法。
  4. 請求項3において、
    前記調整側レンズ判定ステップでは、
    Sf+δ>0かつSf+δ>0、あるいはSf<0かつSf<0かつSf+δ>0かつSf+δ>0である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの数値が小さい方に対応するレンズを調整側レンズとするとともに、
    Sf<0かつSf<0かつSf+δ<0かつSf+δ><である場合は、前記左右のレンズのうち、それぞれの遠用度数SfとSfの絶対値の小さい方に対応するレンズを調整側レンズとし、
    前記累進帯補正ステップでは、前記調整側レンズと前記無調整側レンズのそれぞれの累進帯において、前記上端から下方に向かって距離Lの位置での前記プリズム度数を近似させる、
    ことを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法。
  5. 請求項4において、
    前記累進帯補正ステップでは、
    前記無調整側レンズ、および調整側レンズにおける累進帯の上端から下方に向かう距離xと加入度数δ(x)との関係を、それぞれ、以下の関数
    δ(x)=fa(x)、およびδ(x)=fb(x)
    で規定するとともに、
    前記無調整側レンズ、および調整側レンズにおける前記距離xとプリズム度数P(x)との関係を、以下の関数
    P(x)=ga(x)、およびP(x)=gb(x)
    で規定し、
    (Sf+δ)×(Sf+δ)>0である場合、
    δ=fa(L)=fb(L
    δ=fb(L)、
    ga(L)=gb(L
    となる条件を全て満たすように前記Lと前記δとを計算することで、前記調整側レンズと前記無調整側レンズのそれぞれの累進帯において、前記上端から下方に向かって距離Lの位置での前記プリズム度数を一致させる、
    ことを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法。
  6. 請求項5において、
    前記累進帯補正ステップでは、前記累進帯長がLで、当該累進帯の下端における前記加入度数がδとなる累進帯を備えたレンズについて、前記式δ(x)=fa(x)として、
    Sf>0、Sf>0、Sf+δ>0、Sf+δ>0
    を全て満たす場合には、累進帯の領域内で、
    δ(x)>0
    を満たす領域では、
    δ(x)={(Sf+δ)x/L}−Sf
    で表される関数を規定するとともに、
    Sf<0、Sf<0、Sf+δ>0、Sf+δ>0
    を全て満たす場合には、前記累進帯の領域内で、
    δ(x)>0、x>0
    を満たす領域では、
    δ(x)={(Sf+δ)L/x}−Sf
    で表される関数を規定する、
    ことを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法。
  7. 請求項3において、
    (Sf+δ)×(Sf+δ)=0
    である場合、
    前記調整側レンズ判定ステップでは、式(Sf+δ)と式(Sf+δ)のうち、値が0となる式に対応するレンズを前記調整側レンズとし、
    前記累進帯補正ステップでは、累進帯の上端で、前記調整側レンズと無調整側レンズとの前記プリズム度数が近似するように前記Lと前記δを調整する、
    ことを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法。
  8. 請求項3〜7のいずれかにおいて、前記加入度数と、前記累進帯長の少なくとも一方が飛び値、あるいは数値範囲が規制された規定値でのみ設定可能であるとき、
    前記再設定ステップでは、前記累進帯補正ステップにより調整した前記δ1と前記L1のうち、規定値でのみの設定が可能な方については最も近似する規定値を採用する、
    ことを特徴とする累進帯多焦点レンズの設計方法。
  9. 前記請求項3〜請求項8のいずれかの方法によって設計された累進多焦点レンズの加工方法であって、
    眼鏡フレームに嵌め込まれた際に、左右のレンズで累進帯の状態の上下位置が揃うように、レンズの上方と下方を切削してするともに、前記調整側のレンズについては、累進帯の長さが前記初期値Lであるものとして、累進帯の途上で下端側を切削する、
    ことを特徴とする累進多焦点レンズの加工方法。
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