JP2013170177A - 窒化物蛍光体の製造方法 - Google Patents

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憲一 町田
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Abstract

【課題】希土類元素を含む窒化物蛍光体を製造する方法であって、反応の制御が容易で、蛍光体として望ましい粒度分布を得ることが容易な窒化物蛍光体の製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光体原料を焼成する工程を有する窒化物蛍光体の製造方法であって、該蛍光体原料として、希土類金属水素化物を用いることを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。窒化物蛍光体の合成に際して、希土類金属水素化物から水素が脱離した後に窒素原子が容易に置き替り、窒化反応が均質に進行することにより、発光ピーク強度を従来法によるものと比べて同程度以上として、より安価で簡便な窒化物蛍光体の製造が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規な窒化物蛍光体の製造方法に関するものである。詳しくは、蛍光体原料として、希土類金属水素化物を用いた窒化物蛍光体の製造方法に関するものである。
近年、発光ダイオード(light emitting diode。以下、適宜「LED」と略称する。)等の光源と蛍光体とを組み合わせた半導体発光装置が実用化されており、これらに用いられる各色蛍光体の開発も種々行なわれている。特に、青色発光LEDと黄色の蛍光体を組み合わせた白色発光半導体発光装置が広く用いられている。
従来、黄色発光の蛍光体としてはYAG:Ceが知られている。しかし、YAG:Ceは温度特性の改良が必要であった。このため、各種の窒化物蛍光体が広く研究されてきた中で、温度特性がYAG:Ceより改善された希土類元素を主成分とするニトリドシリケート蛍光体が見出された。その一例として、特許文献1〜3に記載のLaSi11:Ceが知られている。
特許第4459941号公報 国際公開WO2008−132954号パンフレット 国際公開WO2010−114061号パンフレット
希土類元素は鉱石中に酸化物の混合物として存在する。この混合物の中から所望の希土類金属酸化物が溶媒抽出などの方法で単離され、通常酸化物として販売されるか、用途によってはこの酸化物を還元して希土類金属として販売されている。
希土類金属酸化物は完全に蛍光体窒化物に変換することは困難であるため、希土類元素を主成分とするニトリドシリケート蛍光体を合成するにあたり、希土類金属の酸化物を出発原料とすることは難しい。このため、ニトリドシリケート蛍光体を製造する場合、希土類金属を原料とし、予め希土類金属を窒化して蛍光体窒化物を合成し、これに窒化珪素を添加後、窒素雰囲気下で加熱して所望の蛍光体を得るか、又は希土類金属に直接窒化珪素を添加後、窒素雰囲気下で加熱して所望の蛍光体を得る製造法が採用されていた。
しかしながら、希土類金属の窒化は大きな発熱を伴う場合が多く、窒化反応中に適切に除熱を行わないと、反応物が融解してしまい、融解物の中心部は反応が進まないなどの弊害があった。さらに金属原料を使用する場合でも、窒化物を原料とする場合でも、蛍光体を得るために十分に反応させるためには、従来の酸化物蛍光体に比べ、かなり高温での焼成が必要であることが多いという問題もある。
また、蛍光体は用途に応じて粉体として使用されるため、その粒度分布が重要な特性の一つとなる。蛍光体の粒度分布を制御する方法としては、原料を粉砕してその粒度分布に応じた蛍光体を得るのが一般的である。しかしながら、希土類金属は硬度が低く、延性に富むものが多く、通常の機械的な力による粉砕では充分な粉砕ができない場合が多く、粒度分布の制御が困難である場合が多かった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、希土類元素を含む窒化物蛍光体を製造するに際して、反応の制御が容易であり、また、比較的低温での焼成が可能であり、未反応物の残留が少なく、蛍光体として望ましい粒度分布を得ることが容易な窒化物蛍光体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、希土類金属水素化物を原料とするか、或いは希土類金属と金属Si等の蛍光体の構成金属とを予め合金とし、得られた合金を水素化し、合金の水素化物を原料とすることにより、希土類元素を主成分とするニトリドシリケート蛍光体を容易に製造することができる方法を見出し、本発明を完成した。
即ち、希土類金属水素化物又は希土類金属と他の金属との合金の水素化物は、水素原子が金属結晶中に侵入型の原子として存在し、加熱処理などで比較的容易に脱離することが知られている。窒化物蛍光体の合成に際しては、このような水素化物から加熱により水素原子が脱離した後に窒素原子が容易に置き替り、窒化反応が均質に進行するものと推定される。
また、希土類金属水素化物又は希土類金属と他の元素の合金の水素化物は、水素吸蔵合金等の用途において工業的に供給されており、必要に応じて市販品を利用することも可能であることから、原料の調達の点においても有利である。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[6]を要旨とするものである。
[1] 蛍光体原料を焼成する工程を有する窒化物蛍光体の製造方法であって、該蛍光体原料として、希土類金属水素化物を用いることを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。
[2] 該窒化物蛍光体がニトリドシリケート蛍光体であることを特徴とする[1]に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
[3] 前記希土類金属水素化物がLa、Gd、Lu、Y及びScの水素化物からなる群より選ばれるものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
[4] 前記希土類金属水素化物が希土類金属と金属Siの合金を水素化したものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
[5] 下記一般式(I)で表される窒化物蛍光体を製造する方法において、該蛍光体の原料として、希土類金属水素化物を用いることを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。
a−b …(I)
(式(I)中、Mは希土類元素、Rは付活元素、Xは4価の陽イオンとなる元素、Nは窒素元素、Oは酸素元素、Zは1価の陰イオンとなる元素を示し、a、b、d、e、f及びgはそれぞれ下記の数値範囲を満たす値である。
2.5≦a+b≦3.5
0<b<1
5.5≦d≦6.5
0.8×Q≦e≦1.2×Q
(ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g )
0≦f≦3
0≦g≦3
f≦a )
[6] 下記一般式(I)で表される窒化物蛍光体を製造する方法において、該蛍光体の原料として、希土類金属Mと金属R及び/又はXとを含有する合金の水素化物を用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
a−b …(I)
(式(I)中、Mは希土類元素、Rは付活元素、Xは4価の陽イオンとなる元素、Nは窒素元素、Oは酸素元素、Zは1価の陰イオンとなる元素を示し、a、b、d、e、f及びgはそれぞれ下記の数値範囲を満たす値である。
2.5≦a+b≦3.5
0<b<1
5.5≦d≦6.5
0.8×Q≦e≦1.2×Q
(ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g )
0≦f≦3
0≦g≦3
f≦a )
本発明によれば、窒化物蛍光体の製造に当たり、蛍光体原料として希土類金属水素化物又は希土類金属と他の元素の合金の水素化物を用いることにより、従来法で得られる窒化物蛍光体と発光ピーク強度が同程度以上の、優れた窒化物蛍光体をより安価にかつ簡便に製造することができる。
実施例3の水素化反応前の合金の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例3の水素化反応後の合金の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例7の蛍光体の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例8の蛍光体のSEM写真を示す図である。 実施例6及び参考例1の各蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
以下、本発明について実施の形態や例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
また、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110及びZ8701)。
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−xSrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
[1.窒化物蛍光体]
本発明の製造方法で得られる窒化物蛍光体(以下、「本発明の窒化物蛍光体」と称す場合がある。)は、希土類元素とN元素とを母体結晶構造に含有している公知の窒化物蛍光体であれば任意のものが挙げられる。中でも、Si元素をさらに含有する、ニトリドシリケート蛍光体が好ましく挙げられる。
上記窒化物蛍光体のアニオン元素としては、N元素のほかに、O元素及び/又はハロゲン元素を含有していてもよいが、なかでも、本発明の窒化物蛍光体の製造方法は、下記一般式(I)で表されるような希土類元素よりも酸素元素のモル数が小さい蛍光体の製造に適用するのが好ましい。
a−b …(I)
(式(I)中、Mは希土類元素、Rは付活元素、Xは4価の陽イオンとなる元素、Nは窒素元素、Oは酸素元素、Zは1価の陰イオンとなる元素を示し、a、b、d、e、f及びgはそれぞれ下記の数値範囲を満たす値である。
2.5≦a+b≦3.5
0<b<1
5.5≦d≦6.5
0.8×Q≦e≦1.2×Q
(ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g )
0≦f≦3
0≦g≦3
f≦a )
一般式(I)において、Mの具体例としてSc、Y、La、Ce、Gd及びLu並びにそれらの組合せが挙げられる。特に好ましくはLaがM中の80モル%以上であることである。
また、Rの具体例としてEu、Ce、Pr、Yb、Tm及びMn並びにそれらの組合せが挙げられる。特に好ましくはCeを含むことであり、特にCeがR中の80モル%以上であることが好ましい。
Xの具体例としてSi及びGe並びにそれらの組合せが挙げられ、特に好ましくはSiがX中の95モル%以上である。
Zの具体例としてF、Cl、Br及びI並びにそれらの組合せが挙げられる。
上記一般式(I)で表される蛍光体は、基本式としてM11に賦活剤Rが添加されたものになる。よって好ましくはa+b=3である。dは6を中心に1割程度ストイキオ組成からずれた組成が許容される範囲とする。
eについては、0.8×Q≦e≦1.2×Q(ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g)の範囲が好ましい。
OとZは、発光波長の調整などの目的で、少量添加してもよい元素であり、このためそのモル比を表すf、gは0以上3以下となり、特に好ましくは0≦f≦0.5、0≦g≦0.5である。
上記一般式(I)で表される蛍光体は、波長380〜460nmといった近紫外〜青色領域の光によって励起され、黄色発光するものである。具体的には、波長455nmの光で励起した場合の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは515nm以上、更に好ましくは525nm以上であり、通常640nm以下、好ましくは610nm以下、より好ましくは600nm以下のものである。
また、上記一般式(I)で表される蛍光体の発光ピークの半値幅は、通常100nm以上、好ましくは110nm以上、より好ましくは115nm以上であり、通常200nm以下、好ましくは190nm以下、より好ましくは185nm以下である。
尚、該蛍光体を波長455nmの光で励起するには、例えば、GaN系LEDを用いることができる。
また、本発明で得られる蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、(株)日立ハイテクノロジーズ製分光蛍光光度計「F−4500」、日本分光社製「FP−4500」といったような蛍光測定装置を用いて行うことができる。
[2.窒化物蛍光体の製造方法]
本発明の窒化物蛍光体は、通常、蛍光体構成元素を含有する蛍光体原料を混合して焼成するといった公知の方法で製造されるが、本発明の製造方法は、原料の少なくとも一部に希土類金属水素化物、或いは、前記一般式(I)における希土類金属Mと金属R及び/又はXとの合金の水素化物を用いることを特徴とする。
以下において、希土類金属水素化物を「M水素化物」と称し、前記一般式(I)における希土類金属Mと金属R及び/又はXとの合金の水素化物を「M(R・X)水素化物」と称す場合がある。
[2−1.M水素化物、M(R・X)水素化物]
<M水素化物>
本発明で用いるM水素化物としては、通常、LaH1〜3、GdH1〜3、LuH1〜3、YH1〜3、ScH1〜3、または希土類金属が任意の割合で固溶されている(La、Gd、Lu、Y、Sc)H1〜3等を任意に用いることができるが、このうち好ましくはLaH2〜3、GdH2〜3、LuH2〜3、YH2〜3、または希土類金属が任意の割合で固溶されている(La、Gd、Lu、Y)H2〜3等であり、より好ましくはLaH2〜3、GdH2〜3、YH2〜3、または希土類金属が任意の割合で固溶されている(La、Gd、Y)H2〜3等であり、特に好ましくはLaH2〜3である。
M水素化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、M水素化物の1種又は2種以上と以下のM(R・X)水素化物の1種又は2種以上とを組み合わせて用いてもよい。
希土類金属Mを水素化してM水素化物を製造するには、希土類金属Mを0.01〜1MPa程度の水素雰囲気中に保持する方法が挙げられる。この水素化反応時の温度は高いと水素が抜けてしまうため、一般的には室温(25℃程度)で行われる。希土類金属を室温で水素雰囲気中に保持すると水素化反応が進み、その結果、圧力減少や温度上昇が見られるが、温度上昇が止まった後に、一旦、0.1MPa程度に圧力を調整し、室温に冷却してから、その後、昇圧する操作を繰り返し行ってもよい。
このような水素化反応でMHやMHで表される希土類金属水素化物が得られる。
水素化がどの程度進んでいるかについては、その重量変化や、X線回折パターンなどから推測できるが、本発明の効果を得るのに十分な水素化が進行したかどうかについては、上述の繰り返しにより、実質的に発熱が観測できなくなった時点で、本発明の目的に十分なレベルに水素化されたと判断することができ、この方法が簡便で好ましい。
水素化に供する希土類金属の粒径には特に制限はないが、水素化する前に表面酸化が進むと水素化反応が進まず好ましくない。また、作業上の安全性を考慮すると、ある程度の大きさ以上であることが好ましく、例えば金属Laでは、通常1mm以上、例えば1〜100mm程度であることが好ましい。
蛍光体原料として用いるM水素化物の粒度は、得られる窒化物蛍光体の粒度に影響するため、適宜粉砕して粒度を調整することが好ましい。好ましい粒径範囲は通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。ここで、M水素化物の粒度とは、重量メジアン径の値である。後述のM(R・X)水素化物の粒度についても同様である。
<M(R・X)水素化物>
M(R・X)水素化物の希土類金属Mと金属R及び/又は金属Xの合金において金属Xの具体例としては、Si及びGe並びにそれらの組み合わせが挙げられる。中でもSiが好ましい。
また、金属Rの具体例としてEu、Ce、Pr、Yb、Tm及びMn並びにそれらの組合せが挙げられる。中でもCeが好ましい。
希土類金属Mと金属R及び/又は金属Xの合金は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。中でも、例えばLaSi、La1−zCeSi(0<z<1)、LaSi、LaSi、LaSi等の安定に存在する合金相を適宜組み合わせることが好ましい。
M(R・X)水素化物を製造するには、まず、希土類金属Mと金属R及び/又は金属Xの合金を製造する。この合金は、通常、構成金属を融解させて製造される。この際、融解方法に制限はないが、例えばアーク融解、高周波融解法などの公知の融解法が使用できる。
また、合金は塊状のままでは水素化反応が進行しにくいため、粉砕工程により所定の粒径とすることが好ましい。好ましい粒径範囲は通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
合金の水素化反応の条件は特に制限はないが、一例として以下の反応条件が挙げられる。 合金M(R・X)を水素化して合金M(R・X)水素化物を製造するには、合金M(R・X)を0.01〜10MPa程度の水素雰囲気中に保持する方法が挙げられる。この水素化反応時の温度は低いと水素化が進まないため、一般的には100℃〜2000℃の間で行われる。合金M(R・X)を室温で水素雰囲気中に保持した後、一旦室温(25℃程度)に冷却し、その後室温に戻す操作を繰り返し行ってもよい。
M水素化物と同様、M(R・X)水素化物の粒度も、得られる窒化物蛍光体の粒度に影響するため、適宜粉砕して粒度を調整することが好ましい。好ましい粒径範囲は通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
これらのM水素化物、M(R・X)水素化物は後述の希土類元素源となる原料の一部を置き換えて用いてもよいし、希土類元素源となる原料の全てとしてM水素化物及び/又はM(R・X)水素化物を用いてもよいが、希土類元素原料の全てをM水素化物及び/又はM(R・X)水素化物とすることが好ましい。
[2−2.蛍光体原料]
本発明の窒化物蛍光体の製造に使用される上記M水素化物、M(R・X)水素化物以外の蛍光体原料としては、蛍光体構成元素を含有する単体及び化合物などが挙げられ、中でも好適な例としては、金属、合金、イミド化合物、アミド化合物、酸窒化物、窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。蛍光体原料は、これらの中から、各蛍光体の種類に応じて、反応性や、焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して、公知の原料から適宜選択すればよい。
蛍光体原料中に含まれる不純物としては、蛍光体の性能に影響を与えない限りにおいて、特に限定されない。ただし、Fe、Co、Cr及びNiに関しては、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは1ppm以下であるものが用いられる。
また、各蛍光体原料の重量メジアン径D50としては、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下のものが用いられる。このために、蛍光体原料の種類によっては予めジェットミル等の乾式粉砕機で粉砕を行ってもよい。これにより、各蛍光体原料の原料混合物中での均一分散化を図り、かつ、蛍光体原料の表面積増大による原料混合物の固相反応性を高めることができ、不純物相の生成を抑えることが可能となる。特に、窒化物原料の場合には、反応性の観点から他の蛍光体原料より小粒径のものを用いることが好ましい。
これらの蛍光体原料のうち、前記一般式(I)で表される窒化物蛍光体の原料として、好ましくは以下のようなものが挙げられる。
<Mで表される元素の原料>
本発明は、希土類元素原料の少なくとも一部としてM水素化物及び/又はM(R・X)水素化物を用いることを特徴とするものであるが、希土類金属水素化物以外の希土類元素原料を併用する場合、例えば、La、Gd、Lu、Y及びScの原料としては、これらの希土類元素の金属又はそれらの合金が挙げられる。
La、Gd、Lu、Y及びSc以外の希土類元素原料を併用する場合、これらの希土類元素の酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物又は窒化物を使用することができるが、このうち好ましくはハロゲン化物又は窒化物が挙げられる。中でも原料の入手のしやすさ及び価格の面からハロゲン化物が好ましい。
<Rで表される元素の原料>
Rは付活元素である。該付活元素の原料としては、これらの元素の水素化物、酸化物、ハロゲン化物又は窒化物が挙げられ、このうち原料の入手のしやすさ及び価格の面から、好ましくは水素化物、酸化物又はハロゲン化物が挙げられる。
原料中の酸素原子の量を制御する必要がある場合には、金属RをLa及び/又はSiとの合金としてR成分を添加するか、又はハロゲン化物を用いることが好ましい。
<Xで表される元素の原料>
XとしてはSi及び/又はGe、好ましくはSiが挙げられ、このうち、Siの原料(Si源)としては、Si金属を希土類金属との合金として用いるのが好ましく、一部をSi化合物としてもよい。
Si化合物としてはSiC、SiO又はSiが挙げられ、このうち好ましくはSiである。また、Siとしては、反応性の点から粒径が小さいものが好ましく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。
[2−3.製造手順]
以下に本発明の窒化物蛍光体の製造方法を工程毎に説明する。
<混合工程>
本発明により窒化物蛍光体を製造するには、まず目的組成が得られるように、M水素化物及び/又はM(R・X)水素化物を含む蛍光体原料を秤量し、これらを混合してから焼成することが好ましく、この際、蛍光体原料の混合はボールミル等を用いて十分に行うことが好ましい。
上記混合手法としては、特に限定はされないが、原料としてM水素化物及び/又はM(R・X)水素化物を用いることから、水分による水素化物の劣化を防止するために、湿式混合ではなく、例えば、下記(A)に記載されたような公知の乾式混合手法を任意に用いることができる。また、これらの各種条件については、例えば、ボールミルにおいて2種の粒径の異なるボールを混合して用いる等、公知の条件が適宜選択可能である。
(A)ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
また、上記混合・粉砕時には、必要に応じて、蛍光体原料を篩いにかけてもよい。この場合、各種市販の篩いを用いることが可能であるが、金属メッシュ等の金属製のものよりもナイロンメッシュ等の樹脂製のものを用いる方が、不純物混入防止の点で好ましい。
また、原料として用いたM水素化物及び/又はM(R・X)水素化物が水分により劣化しないように、例えばアルゴンガス、窒素ガス等の不活性気体を充填し、水分管理されたグローブボックスでミキサー混合することが好ましい。
さらに、混合を行う際、その雰囲気中の水分は、10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、10ppm以下が更に好ましく、1ppm以下が特に好ましい。また、雰囲気中の酸素濃度は、1%以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。
<焼成工程>
得られた混合物を焼成することにより、窒化物蛍光体を得る。この焼成は、蛍光体原料をルツボ等の容器に充填し、所定の温度で、所定の雰囲気下に行うことが好ましい。
焼成に用いる容器としては、各蛍光体原料との反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器を用いることが好ましい。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス;白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金;カーボン(グラファイト)などが挙げられる。
このような耐熱容器の例として、好ましくは窒化ホウ素製、グラファイト製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられ、より好ましくは窒化ホウ素製、グラファイト製、及びモリブデン製のものが挙げられる。中でも蛍光体中に混入する炭素量を低減させる必要がある場合には、窒化ホウ素製又はモリブデン製のものが好ましい。
焼成時の昇温過程においては、昇温速度は1℃/分〜50℃/分であることが好ましい。
このとき、必要に応じて、目的とする温度で1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上保持してもよい。保持時間は通常48時間以下、好ましくは26時間以下、より好ましくは24時間以下である。
焼成温度としては、目的とする窒化物蛍光体の種類によって、適宜、公知の製造方法と同様の温度を採用することができる。従って、通常1300℃以上、より好ましくは1400℃以上の温度であり、また、通常2000℃以下、好ましくは1900℃以下、特に好ましくは1600℃以下の温度である。
特に本発明においては、水素化物を用いることにより、従来の製法より、低温での焼成により、十分な特性の蛍光体が得られる。例えば特許文献1の焼成温度は1950℃であるが、本発明においては、その実施例にもあるように、1500℃以下での焼成でも、市販のYAG蛍光体レベルの発光が得られており、水素化物を原料の少なくとも一部に使用する本発明の効果は、この点にも現れている。
焼成雰囲気としては特に制限されないが、通常、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気下で行われる。ここで、付活元素の価数としては、例えばEuとしては2価、Ceとしては3価のものが多い方が好ましいため、還元雰囲気であるのが好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
不活性ガス及び還元性ガスとしては、例えば、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン、メタン、アンモニア等が挙げられる。このうち、窒素ガス雰囲気下であることが好ましく、より好ましくは水素ガス含有窒素ガス雰囲気下である。上記窒素(N)ガスとしては、
純度99.9%以上を使用することが好ましい。水素ガス含有窒素ガス雰囲気を用いる場合、電気炉内の酸素ガス濃度を20ppm以下に下げることが好ましい。さらに、雰囲気中の水素ガス含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、10体積%以下が好ましく、5体積%以下がより好ましい。雰囲気中の水素ガスの含有量は、高すぎると安全性が低下する可能性があり、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できない可能性がある。
また、上記不活性ガス及び還元性ガスは昇温開始前に導入してもよいし、昇温途中に導入してもよいし、焼成温度到達時に導入を行ってもよいが、昇温開始前又は昇温途中に導入するのが好ましい。
また、これらの不活性ガス及び還元性ガス流通下で焼成を行う場合には、通常0.1〜10リットル/分の流量の下、焼成が行われる。
また、焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。また、焼成時間は長い方が好ましいが、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるため特に限定されないが、通常1×10−5Pa以上、好ましくは1×10−3Pa以上、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、また、上限としては、通常5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。このうち、工業的には大気圧〜1MPa程度がコスト及び手間の点で簡便であり好ましい。
なお、焼成工程においては、例えば蛍光体原料の一部又は全部を混合焼成して得られる焼成物など、原料混合物以外の蛍光体前駆体を原料混合物に合わせて、又はそれらを原料混合物に代えて、焼成するようにしてもよい。
(フラックス)
本発明の窒化物蛍光体の製造方法では、その焼成工程において、反応系にフラックスを共存させてもよい。フラックスの種類は特に制限されないが、例としては、NHCl、NHF・HF等のハロゲン化アンモニウム;NaCO、LiCO等のアルカリ金属炭酸塩;LiCl、NaCl、KCl、CsCl、LiF、NaF、KF、CsF等のアルカリ金属ハロゲン化物;CaCl、BaCl、SrCl、CaF、BaF、SrF等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;EuCl、LaCl、CeCl、EuF3、LaF、CeF等の希土類金属ハロゲン化物;CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物;B、HBO、Na、K等のホウ素酸化物、ホウ酸及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩化合物;LiPO、NHPO、BaHPO、Zn(PO等のリン酸塩化合物;AlF等のハロゲン化アルミニウム;ZnCl、ZnBr、ZnFといったハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛化合物;Bi等の周期表第15族元素化合物;LiN、Ca、Sr、Ba、SrN、BaN、BN等のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は周期表第13族元素の窒化物などが挙げられる。
フラックスの使用量は、蛍光体原料の種類やフラックスの種類等によっても異なるが、各フラックス毎に蛍光体原料に対して通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、また、通常18重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下の範囲である。
なお、フラックスは1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合、フラックスの使用量は全体で蛍光体原料に対して通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、また通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上である。
(多段焼成)
焼成工程において、固相反応をより進行させ、結晶性を向上させるために、焼成工程を一段ではなく多段に分割して行なってもよい。例えば、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後(第一の焼成工程又は一段目焼成)、必要に応じてボールミル等で再度粉砕してから、再度焼成する(第二の焼成工程又は二段目焼成)という操作を1回以上行う方法が挙げられる。再度の焼成(第二の焼成工程)は、二次焼成(二段目焼成)、三次焼成(三段目焼成)というように何回行うようにしてもよい。この際、一次焼成した焼成物は、その焼成物だけで後段の焼成に送給してもよいし、前述の蛍光体原料の一部を混合焼成したものを粉砕し、そこに残りの原料を混合して焼成するという態様をとることもできる。
多段焼成における温度、時間等の条件は、基本的に上述の焼成工程の欄に記載した条件と同様であり、前述に記載される範囲で蛍光体の種類に応じて適宜選択して行われる。
なお、前述のフラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成以降の焼成前に混合してもよい。
また、焼成温度、焼成時間、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成以降とで変更してもよい。
ただし、連続した2つの焼成工程における焼成温度のうち、後段の焼成温度の方を高い温度とする工程を少なくとも1回以上有している方が、蛍光体の結晶成長が促進され、結晶性を高めることが可能になり好ましい。
<後処理>
上述の焼成工程における加熱処理後は、必要に応じて、粉砕、洗浄、乾燥、分級処理等を行うことにより、重量メジアン径D50が、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲の窒化物蛍光体を得ることができる。
尚、上記重量メジアン径D50とは、頻度基準粒度分布曲線により得られる値である。前記頻度基準粒度分布曲線は、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるものである。具体的には、分散剤を含む水溶液中に蛍光体を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−300」)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定し、得られたものである。この頻度基準粒度分布曲線において、積算値が50%のときの粒径値を重量メジアン径D50とする。
(粉砕処理)
粉砕処理は、例えば得られた蛍光体が所望の粒径になっていない場合に、焼成物に対して行う。粉砕処理方法としては、特に限定されない。例えば、蛍光体原料の混合工程の説明の項に記載した乾式粉砕方法の他、湿式粉砕方法も使用できるが、生成した蛍光体結晶の破壊を抑え、二次粒子の解砕等の目的とする処理を進めるためには、例えば、アルミナ、窒化珪素、ZrO、ガラス等の容器中にこれらと同様の材質又は鉄芯入りウレタン等のボールを入れてボールミル処理を10分〜24時間程度の間で行うのが好ましい。この場合、有機酸やヘキサメタリン酸などのアルカリリン酸塩等の分散剤を蛍光体に対して0.05〜2重量%程度用いてもよい。
(洗浄処理)
洗浄処理は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などを用いて行うことができる。また、使用されたフラックス等の蛍光体の表面に付着した不純物相を除去して発光特性を改善するなどの目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸などの無機酸、又は酢酸などの有機酸を含む酸性水溶液を使用することもできる。この場合、酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
この洗浄の程度としては、洗浄後の蛍光体を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液のpHが中性(pH7〜9程度)であることが好ましい。このpHが塩基性、又は酸性に偏っていると、蛍光体を発光装置等に使用する際、蛍光体含有部を形成するための液体媒体等と混合する際に液体媒体等に影響を与えてしまう可能性がある。
また、上記洗浄の程度は、洗浄後の蛍光体を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液の電気伝導度でも表すことができる。前記電気伝導度は、発光特性の観点からは低いほど好ましいが、生産性も考慮すると通常10mS/m以下、好ましくは5mS/m以下、より好ましくは4mS/m以下となるまで洗浄処理を繰り返し行うことが好ましい。
電気伝導度の測定方法としては、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して蛍光体を分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させ、このときの上澄み液の電気伝導度を、電気伝導度計を用いて測定すればよい。このような電気伝導度計としては、例えば東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」等を用いて測定すればよい。
蛍光体の洗浄処理、及びpH又は電気伝導度の測定に用いる水としては、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。中でも特に電気伝導度が低いものが好ましく、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下のものを用いる。なお、電気伝導度の測定は、通常室温(25℃程度)にて行なう。
(分級処理)
分級処理としては、例えば水篩や水簸処理を行う。或いは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うこともできる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級と、水簸処理とを組み合わせて用いると、重量メジアン径D50が20μm程度の分散性のよい蛍光体を得ることができる。
また、ここで、水篩や水簸処理では、通常、水媒体中に0.1〜10重量%程度の濃度で蛍光体粒子を分散させ、また、蛍光体の変質を抑えるために、水媒体のpHを、通常4以上、好ましくは5以上、また、通常9以下、好ましくは8以下とする。また、上記のような重量メジアン径の蛍光体粒子を得るに際して、水篩及び水簸処理では、例えば50μm以下の粒子を得てから、30μm以下の粒子を得るといった、2段階での篩い分け処理を行う方が作業効率と収率のバランスの点から好ましい。また、下限としては、通常1μm以上、好ましくは5μm以上のものを篩い分けるといった処理を行うのが好ましい。
(表面処理)
得られた蛍光体を用いて、発光装置を製造する際には、蛍光体の耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために、必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等、公知の表面処理を行ってもよい。
[3.本発明の窒化物蛍光体の用途]
本発明の製造方法で得られる窒化物蛍光体は、蛍光体としての公知の用途に任意に用いることができるが、波長380〜460nmといった近紫外〜青色領域の光によって励起することができるため、中でも例えば、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子のような、これらの励起光を発光する光源と組合せることにより、照明装置、液晶ディスプレイ用光源等の白色発光装置に使用した場合に優れた発光装置として用いることができ、好ましい。
この場合、上記半導体発光素子としては公知のものを任意に用いることができるが、中でもGaN系のものが好ましい。
また、発光装置の発光色に応じて、本発明の窒化物蛍光体は、必要に応じて本発明の窒化物蛍光体以外の蛍光体と組み合わせて用いてもよい。その場合には、蛍光体は半導体発光装置に用いられる公知のバインダー樹脂に混合し、発光素子上に設置すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[各種物性値の測定方法]
<発光スペクトル測定>
(株)日立ハイテクノロジーズ製分光蛍光光度計「F−4500」により、室温において、452nm励起の発光スペクトルを測定した。
<XRD測定>
Cu−Kα管球を備えた理学電機製粉末X線回折測定装置「RINT2200型」により、粉末X線回折測定(XRD)を行った。
[実施例1:LaH使用]
原料として金属La(株式会社三徳社製、3N)を水素ガス雰囲気下で昇圧しながら、室温で2時間保持することによって、LaHを得た。水素化反応おいては、水素雰囲気下で昇圧した際に温度上昇が見られたが、反応後、室温まで自然冷却し、再度昇圧したが、温度上昇及び圧力変化はなく水素化反応は見られなかった。得られたLaHにSi(株式会社宇部興産製、純度:O<1.26重量%、β−Si<5重量%)、をLa/Si=0.62のモル比になるように秤量し、更にLaF(株式会社高純度化学研究所製、3N)を5重量%添加して十分に混合した。これを窒化ホウ素ルツボに入れ、加熱焼結炉(富士電波工業(株)製「FVPHP−R−5,FRET−20型」最大出力20kW)を用いて窒素ガス雰囲気で一段目焼成を580℃で2時間、次いで850℃で2時間行った。
取り出した仮焼成物に、LaF4重量%と、CeF(株式会社高純度化学研究所製、3N)2重量%を添加し、十分に混合した。次いで、二段目焼成として、窒素ガス雰囲気中、850℃で2時間、次いで1500℃で5時間加熱した。
得られた粉末を1Nの塩酸に入れて洗浄することで、未反応原料や酸化生成物を除去した。これを水洗浄、脱水、乾燥することで窒化物蛍光体(LaSi11:Ce)を得た。
[実施例2:LaH使用]
一段目焼成後のCeFの添加量を1重量%とした以外は実施例1と同様にして窒化物蛍光体を得た。
[実施例3:LaSi合金の水素化物使用]
金属La(株式会社三徳社製、3N)、金属Si(株式会社高純度化学研究所製、5N)をLa/Si=1となるよう秤量した。これらの金属を混合し、アークメルターを使用して融解して合金を製造した。得られた合金を粉砕後、粉末X線回折測定を行い、そのパターンを図1に示す。前記粉砕した合金を水素ガス雰囲気下で、昇圧しながら450℃に2時間保持した。その後、自然冷却で室温に冷却し、再び昇温したが、再度の昇温では、水素化反応による温度上昇および圧力変化は見られず、水素化反応は認められなかった。水素化反応を行った粉体の粉末X線回折測定を行い、そのパターンを図2に示す。図1及び図2からX線回折パターンは変化しており、水素化が進んだと思われる。得られたLaSi合金の水素化物に、Si(株式会社宇部興産製、純度:O<1.26重量%、β−Si<5重量%)を調合比率La/Si=0.62になるよう添加し、更にLaFを6重量%添加し、ガス循環式真空グローブボックス(雰囲気:窒素ガス、酸素ガス及び水蒸気含有量が各数ppm以下)中で、十分混合した。
これを窒化ホウ素製ルツボ内に入れ、加熱焼結炉(富士電波工業(株)製「FVPHP−R−5,FRET−20型」最大出力20kW)を用いて、窒素ガス雰囲気中、580℃で2時間、次いで850℃で2時間加熱して一段目焼成を行った。得られた仮焼成物にLaF5重量%とCeF1重量%を加え、十分に混合した。これを窒化ホウ素製ルツボに充填し、電気炉にて、圧力0.14MPaの窒素ガス雰囲気下、900℃で3時間保持し、更に1500℃で5時間保持して、二段目焼成を行った。得られた焼成物はメノウ乳鉢で解砕後、1Nの塩酸で洗浄し、その後、水洗浄して窒化物蛍光体を得た。
[実施例4:LaSi合金の水素化物使用]
一段目焼成時に、LaF6重量%と共に、CeFを1重量%添加したことした以外は実施例3と同様にして窒化物蛍光体を得た。
[実施例5:LaSi合金の水素化物使用]
一段目焼成時に、LaF6重量%と共に、CeFを6重量%添加したことした以外は実施例3と同様にして窒化物蛍光体を得た。
[実施例6:LaSi合金の水素化物使用]
二段目焼成時にLaFを添加せずCeFだけを1重量%添加し、二段目焼成を850℃で2時間保持し、更に1500℃で5時間保持する条件とした以外は実施例5と同様にして窒化物蛍光体を得た。
[実施例7:LaCeSi合金の水素化物使用]
金属La(株式会社三徳社製、3N)、金属Ce(株式会社三徳社製、3N)及び金属Si(株式会社高純度化学研究所製、5N)をモル比が0.94:0.06:1となるよう秤量した。これらの金属を混合し、アークメルターを使用して融解し、合金を製造した。この合金を実施例3と同様にして水素化した。得られた合金の水素化物にSiを(La+Ce):Si=1:1.613(La/Si=0.62)となるように添加した。更にこの混合物の全重量に対しLaFを6重量%、CeFを6重量%添加し、均一になるよう十分混合した。
得られた混合物を窒化ホウ素製ルツボに入れ、電気炉中に挿入し、圧力0.14MPaの窒素ガス雰囲気下、毎分100℃の速度で昇温し、580℃で2時間保持し、更に同じ昇温速度で昇温して850℃で2時間保持し、一段目焼成を行った。得られた仮焼成物に、LaF5重量%とCeF5重量%を加え、十分混合した。得られた混合物を窒化ホウ素製ルツボに入れ、再度、電気炉中に挿入し、圧力0.14MPaの窒素ガス雰囲気下、毎分5℃の速度で昇温し、900℃で3時間保持し、更に同じ昇温速度で昇温して1500℃で5時間保持して二段目焼成を行った。
得られた焼成物を1Nの塩酸で洗浄し、その後水洗浄して窒化物蛍光体を得た。
[実施例8:LaCeSi合金の水素化物使用]
二段目焼成の昇温速度を毎分3℃とした以外は実施例7と同様にして窒化物蛍光体を得た。
実施例1〜8で得られた蛍光体の発光ピーク波長を表1に示す。また、各蛍光体を波長452nmの光で励起したときの発光ピーク強度を、参考例1の蛍光体(YAG:Ce、P46−Y3)の発光ピーク強度を100とした場合の相対ピーク強度比として求め、結果を表1に示した。
また、実施例7で得られた窒化物蛍光体の粉末X線回折パターンを図3に、実施例8で得られた窒化物蛍光体のSEM写真を図4に示す。また、波長452nmの光で励起したときの、実施例6で得られた窒化物蛍光体と参考例1の蛍光体(YAG:Ce、P46−Y3)の発光スペクトルを図5に示す。
Figure 2013170177
以上の結果から、M水素化物及び/又はM(R・X)水素化物を蛍光体原料として用いる本発明の窒化物蛍光体の製造方法によれば、発光強度の点で従来のYAG:Ce蛍光体と比較して遜色ない窒化物蛍光体が得られることが分かる。
本発明は、窒化物蛍光体を工業的に安価に製造する際に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 蛍光体原料を焼成する工程を有する窒化物蛍光体の製造方法であって、該蛍光体原料として、希土類金属水素化物を用いることを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。
  2. 該窒化物蛍光体がニトリドシリケート蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
  3. 前記希土類金属水素化物がLa、Gd、Lu、Y及びScの水素化物からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
  4. 前記希土類金属水素化物が希土類金属と金属Siの合金を水素化したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
  5. 下記一般式(I)で表される窒化物蛍光体を製造する方法において、該蛍光体の原料として、希土類金属水素化物を用いることを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。
    a−b …(I)
    (式(I)中、Mは希土類元素、Rは付活元素、Xは4価の陽イオンとなる元素、Nは窒素元素、Oは酸素元素、Zは1価の陰イオンとなる元素を示し、a、b、d、e、f及びgはそれぞれ下記の数値範囲を満たす値である。
    2.5≦a+b≦3.5
    0<b<1
    5.5≦d≦6.5
    0.8×Q≦e≦1.2×Q
    (ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g )
    0≦f≦3
    0≦g≦3
    f≦a )
  6. 下記一般式(I)で表される窒化物蛍光体を製造する方法において、該蛍光体の原料として、希土類金属Mと金属R及び/又はXとを含有する合金の水素化物を用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
    a−b …(I)
    (式(I)中、Mは希土類元素、Rは付活元素、Xは4価の陽イオンとなる元素、Nは窒素元素、Oは酸素元素、Zは1価の陰イオンとなる元素を示し、a、b、d、e、f及びgはそれぞれ下記の数値範囲を満たす値である。
    2.5≦a+b≦3.5
    0<b<1
    5.5≦d≦6.5
    0.8×Q≦e≦1.2×Q
    (ただし、Q=[{(a+b)×3+d×4}/3]−2f−g )
    0≦f≦3
    0≦g≦3
    f≦a )
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