JP2013169579A - 電縫鋼管のシールボックス溶接装置 - Google Patents
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【解決手段】本発明による電縫鋼管のシールボックス溶接装置は、シールボックス(5)内にシールボックス入口ガス供給管(30)、高周波加熱コイル(22)、予熱部ガス供給管(70)、第1酸素濃度計(51)、スクイズロール(23)、溶接点ガス供給管(31)、シールボックス雰囲気調整用ガス供給管(32)を有し、電縫鋼管(6)内にインピーダ(8)を有し、このシールボックス(5)内の溶接点もしくはその近傍の酸素濃度が300ppm以下となるように不活性雰囲気ガス供給の制御を行うようにした構成である。
【選択図】図1
Description
通常、マンドレルには、インピーダの性能が悪化しないよう、インピーダを冷却するための冷却配管が配設されており、インピーダを連続的に冷却することができる。このインピーダの冷却水は、溶接点付近に位置するインピーダケース先端部から噴出され、内面ビード切削装置の切削バイトを冷却する役目も果たしている。
しかし、例えば、Siを含有する高Mn鋼等の酸化しやすい素材を用いて電縫鋼管を製造する場合は、このインピーダの冷却水が溶接点付近で噴出する構造のマンドレルを使用すると、電縫鋼管の溶接部内部に酸化物による溶接欠陥が数多く発生することがある。以下では、この溶接部の内部に認められる酸化物による溶接欠陥をペネトレータと称することがある。
そのため、このペネトレータの発生を極力抑えるために、溶接部を周知の非酸化性ガスでシールドするガスシールド溶接法が採用されている。
すなわち、オープンパイプ1の外径より大径の内径を有する内筒2と、高周波ワークコイル3に内接する外筒4とから主としてなるシールボックス5が用いられ、電縫鋼管6内に挿入する内面ビード切削装置7、インピーダ8を内蔵するインピーダケース9、切削装置7に接続されたマンドレル10、マンドレル10に設けられ溶接点11付近に位置するシールドガスを噴出するためのシールドガス配管12等が配設されている。
また、他の従来例としては、本出願人が先に出願した特許文献2の電縫鋼管のシールボックス溶接装置の構成があり、シールボックス内の酸素濃度を100ppm以下となるように制御する構成である。
すなわち、まず、特許文献1の電縫鋼管のガスシールド溶接装置の場合、溶接部近傍への大気の流入を防止することは可能であるが、シールボックス内の酸素濃度を十分に下げることができず、ペネトレータすなわち、酸化物欠陥を零にすることはできなかった。
また、フォーミングロール冷却水の流入の防止やインピーダ冷却水の逆流防止が困難であり、溶接点付近で冷却水の蒸発によりシール性が極端に悪化する可能性があった。
さらに、インピーダの構造が複雑で特別なインピーダ製作には多大な費用が掛かることになっていた。
また、特許文献2の電縫鋼管のガスシールド溶接装置の場合、シールボックスは酸素濃度100ppm以下となり、製造した電縫鋼管を図2に示されるへん平試験により試験した場合は、ペネトレータ欠陥割れを皆無にすることができた。 しかし、へん平試験に合格した電縫鋼管であっても、発明者らがその鋼管を熱処理して疲労寿命試験を行うと鋼管疲労寿命が低下する場合が認められた。そこで、へん平試験に合格した多数の電縫鋼管を調査したところ、図2のへん平試験では図3に示すようなペネトレータ割れが起こらなくても、疲労寿命試験により鋼管疲労寿命が低下した電縫鋼管には、電縫鋼管の外面または内面の表層から500μm程度までの深さの範囲にペネトレータが残存しており、それが疲労破壊の起点になっていた。一方、疲労寿命の低下が認められなかった電縫鋼管は、表層から500μm程度までの範囲には残存ペネトレータがないだけでなく、残存ペネトレータが認められたとしても、その残存位置は深さ500μm程度以上の深さの部位であることが明らかになった。すなわち、電縫鋼管に熱処理を施した後、その電縫鋼管が疲労寿命に優れたものであるためには、へん平試験によるペネトレータ欠陥割れを皆無にするだけでなく、電縫鋼管の溶接部の外面または内面のいずれにも、溶接部の表層から500μm程度までの深さに残存したペネトレータも皆無にする必要がある。
Siを含有する高Mn鋼等の酸化しやすい素材による帯鋼から電縫鋼管を製造する場合、特許文献1または2のいずれのガスシールド溶接装置を用いたとしても、へん平試験によるペネトレータ欠陥割れを皆無にすることはできても、溶接部の内部に残存しているペネトレータの位置(深さ)や残存量を制御することはできなかった。
すなわち、シールボックスの内部に、シールボックス入口ガス供給管及び第1噴出口と、高周波加熱コイルと、スクイズロールと、溶接点ガス供給管及びその第3噴出口と、前記高周波加熱コイルと前記スクイズロールの溶接点の間に設けられた1本以上の予熱部ガス供給管及びその第2噴出口と、前記予熱部ガス供給管と前記溶接点ガス供給管との間に設けられた第1酸素濃度計と、シールボックス雰囲気調整用ガス供給管及びその第4噴出口とを備え、前記第1〜第4噴出口から前記シールボックス内への不活性雰囲気ガスの供給を制御するためのガス供給量制御部を有し、前記シールボックス内を貫通する電縫鋼管内面に内面ビード切削装置が挿入され、前記内面ビード切削装置にマンドレルを介してインピーダが接続され、前記インピーダと内面ビード切削装置を連続して冷却するための冷却水供給管とその冷却水を前記内面ビード切削装置の手前の位置で噴出する第5噴出口が配設され、前記溶接点もしくはその近傍の酸素濃度が300ppm以下となるように前記第1〜第4噴出口からの不活性雰囲気ガス供給量を前記ガス供給量制御部を介して制御するように構成したことにより、板厚方向の残存ペネトレータ量を減少させると共に、実ラインでの抜き取り検査でのBへん平試験において、鋼管の表面に発生するペネトレータ起因の割れを零(%)とし、さらに、板厚方向の残存位置と生成量を制御しているため、この鋼管を用いた熱処理後の鋼管においても疲労寿命の低下を抑制することができる。
また、前記スクイズロールは、内部冷却部を有する内部冷却式スクイズロールからなることにより、スクイズロールの冷却効率を大幅に向上させると共に、水蒸気の発生を抑え、ペネトレータの発生を抑制できる。
前記内面ビード切削装置は、前記溶接点から400mm〜900mm離間していることにより、溶接時の輻射熱で発生する水蒸気による酸化を防止し、ペネトレータの発生を抑えることができる。また、溶接点より離れるほど水蒸気の逆流量は少なく、ペネトレータの生成は減少方向であるが、900mm未満とすることにより、内面ビードの切削精度を保ち、疲労寿命に及ぼす欠陥を防止することができる。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号5で示されるものは全体形状が箱型のシールボックスである。このシールボックス5内には、その入側である管入側可変部21から下流側にかけて、高周波加熱コイル22、スクイズロール23及び出側である管出側可変部24が設けられている。
このシールボックス5には、シールボックス5の外にあるため図示しないフォーミングスタンド出側20からのオープンパイプ1を挿入し、このシールボックス5内で電縫溶接して電縫鋼管6が製造される。オープンパイプ1は、鋼帯をフォーミングスタンドに通して略パイプ形状に成形したものであり、その素材は例えばSi:1.0%、Mn:1.0%を含むため溶接時に酸化しやすい高Mnの普通鋼の鋼帯である。そして、製造される電縫鋼管6は、例えば外径30mm、肉厚5.5mmである。
また、シールボックス5の内部には、溶接点11近傍の表面温度を測定するための温度測定装置を設けてもよい。例えば、放射温度計や二色高温計などを用いることができる。
さらに、シールボックス5内には、ボックス内の雰囲気を排出するための排気口(図示せず)を設けても良い。
従って、前述の構成によれば、フォーミングロール及び内面ビード切削装置7の冷却水、大気、水蒸気等の侵入を防止できるため、ペネトレータ割れ50の発生を零とすることができる。
また、前記インピーダ8の冷却水の戻り配管がないため、その分、インピーダ8の充填率を向上させ、溶接効率の向上を図ることができる。
従って、実ラインでの抜き取り検査でのへん平試験において、電縫鋼管の表面に発生するペネトレータ起因の割れを零(%)とし、さらに、実際には、板厚方向の残存位置と生成量(板厚に対するペネトレータ長さ率:0.3%以下)を制御しているため、この電縫鋼管6を用いた熱処理後の電縫鋼管6においても疲労寿命の低下を抑制することができるように構成されている。
このため、内面ビード切削装置の溶接点11からの位置を400mm以上とした。また、前記内面ビード切削装置7は、溶接点11より離れるほど水蒸気の逆流量は少なく、ペネトレータの生成は減少方向であるが、内面ビードの切削精度が悪化し、次工程の引抜きで疲労寿命に及ぼす欠陥を形成しやすくなるため、その限界値として900mm未満とした。
実施例
実験結果を表1に示す。第1〜第4の各噴出口の不活性ガス噴出量を変化させることにより、第1酸素濃度計51の指示値を制御しつつ造管と電縫溶接を行った。そして、得られた電縫鋼管についてへん平試験によるペネトレータ割れ率と、溶接部断面を観察して鋼管内外面から表層500μm以内のペネトレータの有無を評価した。表1には、ペネトレータが認められたものは×を、認められなかったものは○を付した。さらに、熱処理後の電縫鋼管について曲げによる疲労試験を行った。曲げ部の最大応力が550MPaとなる繰返し荷重を掛け、繰返し回数1×106回までに破断に至ったものは×、破断しなかったものは○と付した。
No.1、2、6、10、14は、第1〜第4の各噴出口のうち、どれか1つの噴出口でも不活性ガスを流さない場合は、溶接点近傍の酸素濃度を300ppm以下にできないか、300ppm未満であってもペネトレータ割れ率がゼロ、かつ鋼管の外面と内面の表層から500μm以内にペネトレータ無しにはできなかった。
第1〜第4の各噴出口の全てから不活性ガスを流し、かつ溶接点近傍の酸素濃度を300ppm未満とした場合(No.3〜5、No.7〜9、No.11〜13、No.15〜17)は、ペネトレータ割れ率がゼロ、かつ鋼管の外面と内面の表層から500μm以内にはペネトレータ無しとなり、疲労試験の結果も良好であった。また、各試験No.1〜17の第1〜第4噴出口30a、70a、31a及び32aのガスの噴出状況は次の通りである。
No.1 第1と第2噴出口が流れていない 300ppm越え
No.2 第2噴出口が流れていない かつ、先願(特許文献2)の実施例
No.3 第2噴出口流量 可変
No.4 〃
No.5 〃
No.6 第3噴出口が流れていない
No.7 第3噴出口流量 可変
No.8 〃
No.9 〃
No.10 第4噴出口が流れていない
No.11 第4噴出口流量 可変
No.12 〃
No.13 〃
No.14 第1噴出口が流れていない
No.15 第1噴出口流量 可変
No.16 〃
No.17 〃
この試験片は、各製造条件において20本を採取し、各々1mの試験片を採取してペネトレータ割れ率を測定した。
前述のペネトレータ割れ率は、1mの試験片に占めるペネトレータ割れ長さを示し、図3にへん平試験により観察された代表的なペネトレータ割れ50の例を示している。
図6は、電縫鋼管の溶接部に観察された残留ペネトレータの例であり、図7は残留ペネトレータのEDXによる分析結果である。SiやMnとO(酸素)が観察されることから、ペネトレータはSiやMnを含有する酸化物であると考えられる。
図7は、図3のペネトレータ割れ50の割れ部(断面)を拡大したものである。
5 シールボックス
6 電縫鋼管
7 内面ビード切削装置
8 インピーダ
9 インピーダケース
11 溶接点
20 フォーミングスタンド出側
21 管入側可変部
22 高周波加熱コイル
23 スクイズロール
24 管出側可変部
30 シールボックス入口ガス供給管
30a 第1噴出口
31 溶接点ガス供給管
31a 第3噴出口
32 シールボックス雰囲気調整用ガス供給管
32a 第4噴出口
33 第2酸素濃度計
34 冷却水供給管
34a 第5噴出口
36 マンドレル
40 シールボックス溶接装置
50 ペネトレータ割れ
51 第1酸素濃度計
60 ガス供給量制御部
70 予熱部ガス供給管
70a 第2噴出口
100 弁
101 不活性雰囲気ガス供給管
Claims (3)
- シールボックス(5)の内部に、シールボックス入口ガスを噴出するための第1噴出口(30a)と、高周波加熱コイル(22)と、スクイズロール(23)と、溶接点(11)にガスを供給するための第3噴出口(31a)と、前記高周波加熱コイル(22)と前記溶接点(11)の間に設けられた1本以上の予熱部ガスを噴出するための第2噴出口(70a)と、前記溶接点(11)の近傍に設けられた第1酸素濃度計(51)と、シールボックス雰囲気調整用ガスを噴出するための第4噴出口(32a)とを備え、前記第1〜第4噴出口(30a,70a,31a,32a)から前記シールボックス(5)内への不活性雰囲気ガスの供給を制御するためのガス供給量制御部(60)を有し、前記シールボックス(5)内を貫通する電縫鋼管(6)内面に内面ビード切削装置(7)が挿入され、前記内面ビード切削装置(7)にマンドレル(36)を介してインピーダ(8)が接続され、前記電縫鋼管(6)内には、前記インピーダ(8)と内面ビード切削装置(7)を連続して冷却するための冷却水供給管(34)とその冷却水を前記内面ビード切削装置(7)の手前の位置で噴出する第5噴出口(34a)が配設され、第1酸素濃度計(51)による酸素濃度が300ppm以下となるように前記第1〜第4噴出口(30a,70a,31a,32a)からの不活性雰囲気ガス供給量を前記ガス供給量制御部(60)を介して制御するように構成したことを特徴とする電縫鋼管のシールボックス溶接装置。
- 前記スクイズロール(23)は、内部冷却部を有する内部冷却式スクイズロールからなることを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管のシールボックス溶接装置。
- 前記内面ビード切削装置(7)は、前記溶接点(11)から400mm〜900mm離間していることを特徴とする請求項1又は2記載の電縫鋼管のシールボックス溶接装置。
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