JP2013208637A - 電縫鋼管のシールボックス溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明による電縫鋼管のシールボックス溶接方法は、シールボックス(5)内の溶接点(11)前の予熱部に不活性ガスを供給しつつオープンパイプ(1)を搬送し、前記溶接点(11)では前記オープンパイプ(1)の溶接部のビード温度が1300℃以上で、かつ、前記溶接部の板厚表層部のホワイトバンド幅が100μm以上となる入熱で前記溶接部の溶接を行う方法である。
【選択図】図1
Description
通常、マンドレルには、インピーダの性能が悪化しないよう、インピーダを冷却するための冷却配管が配設されており、インピーダを連続的に冷却することができる。このインピーダの冷却水は、溶接点付近に位置するインピーダケース先端部から噴出され、内面ビード切削装置の切削バイトを冷却する役目も果たしている。
しかし、例えば、Siを含有する高Mn鋼等の酸化しやすい素材を用いて電縫鋼管を製造する場合は、このインピーダの冷却水が溶接点付近で噴出する構造のマンドレルを使用すると、電縫鋼管の溶接部内部に酸化物による溶接欠陥が数多く発生することがある。以下では、この溶接部の内部に認められる酸化物による溶接欠陥をペネトレータと称することがある。
そのため、このペネトレータの発生を極力抑えるために、溶接部を周知の非酸化性ガスでシールドするガスシールド溶接法が採用されている。
すなわち、オープンパイプ1の外径より大径の内径を有する内筒2と、高周波ワークコイル3に内接する外筒4とから主としてなるシールボックス5が用いられ、電縫鋼管6内に挿入する内面ビード切削装置7、インピーダ8を内蔵するインピーダケース9、切削装置7に接続されたマンドレル10、マンドレル10に設けられ溶接点11付近に位置するシールドガスを噴出するためのシールドガス配管12等が配設されている。
また、他の従来例としては、本出願人が先に出願した特許文献2の電縫鋼管のシールボックス溶接装置の構成があり、シールボックス内の酸素濃度を100ppm以下となるように制御する構成である。
すなわち、まず、特許文献1の電縫鋼管のガスシールド溶接装置の場合、溶接部近傍への大気の流入を防止することは可能であるが、シールボックス内の酸素濃度を十分に下げることができず、ペネトレータすなわち、酸化物欠陥を零にすることはできなかった。
また、フォーミングロール冷却水の流入の防止やインピーダ冷却水の逆流防止が困難であり、溶接点付近で冷却水の蒸発によりシール性が極端に悪化する可能性があった。
さらに、インピーダの構造が複雑で特別なインピーダ製作には多大な費用が掛かることになっていた。
また、特許文献2の電縫鋼管のガスシールド溶接装置の場合、シールボックスは酸素濃度100ppm以下となり、製造した電縫鋼管を図2に示されるへん平試験により試験した場合は、ペネトレータ欠陥割れを皆無にすることができた。 しかし、へん平試験に合格した電縫鋼管であっても、その鋼管を熱処理して疲労寿命試験を行うと、鋼管疲労寿命が低下する場合が認められた。発明者らがへん平試験に合格した多数の電縫鋼管を調査したところ、図2のへん平試験ではペネトレータ割れが起こらなくても、疲労寿命試験により鋼管疲労寿命が低下した電縫鋼管には、電縫鋼管の外面または内面の表層から500μm程度までの深さの範囲に残存していたペネトレータが疲労破壊の起点になっていた。一方、疲労寿命の低下が認められなかった電縫鋼管は表層から500μm程度までの範囲には残存ペネトレータがなく、残存ペネトレータが認められたとしても、その残存位置は深さ500μm程度以上の深さの部位であることが明らかになった。すなわち、熱処理後の疲労寿命に優れた電縫鋼管を製造するためには、へん平試験によるペネトレータ欠陥割れを皆無にするだけでなく、電縫鋼管の外面または内面において溶接部の表層から500μm程度までの深さに残存したペネトレータも皆無にする必要がある。
Siを含有する高Mn鋼等の酸化しやすい素材による帯鋼から電縫鋼管を製造する場合、特許文献1または2のいずれのガスシールド溶接装置を用いても、へん平試験によるペネトレータ欠陥割れを皆無にすることはできても、溶接部の内部に残存しているペネトレータの位置(深さ)や残存量を制御することはできなかった。
すなわち、シールボックス内の溶接点の上流に位置する予熱部に不活性ガスを供給しつつオープンパイプを搬送し、前記溶接点では前記オープンパイプの溶接部のビード温度が1300℃以上で、かつ、製造した電縫鋼管の溶接部においての板厚表層部のホワイトバンド幅が100μm以上となる入熱で前記溶接部の溶接を行うことにより、電縫鋼管のペネトレータ割れをゼロとすると共に、電縫鋼管の疲労寿命の低下を抑制し、品質向上を得ることができる。
また、前記溶接点近傍の酸素濃度を300ppm以下の状態とすることにより、板厚方向の残存ペネトレータ量を減少させると共に、実ラインでの抜き取り検査でのへん平試験において、鋼管の表面に発生するペネトレータ起因の割れを零%とすることができる。
また、前記シールボックス内に配設された少なくとも3個のガス供給管からの各不活性ガス供給量を100〜200L/minとすることにより、酸化抑制が十分で、雰囲気ガスの巻き込みが少なく、溶接点の温度が十分高温に保たれ、ペネトレータの発生を抑制することができる。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号5で示されるものは全体形状が箱型のシールボックスである。このシールボックス5内には、その入側である管入側可変部21から下流側にかけて、高周波加熱コイル22、スクイズロール23及び出側である管出側可変部24が設けられている。
このシールボックス5には、シールボックス5の外にあるため具体的には図示しないフォーミングスタンド出側20からのオープンパイプ1を挿入し、このシールボックス5内で電縫溶接して電縫鋼管6が製造される。オープンパイプ1は、鋼帯をフォーミングスタンドに通して略パイプ形状に成形したものであり、その素材は例えばSi:1.0%、Mn:1.0%を含むため溶接時に酸化しやすい高Mnの普通鋼の鋼帯である。そして、製造される電縫鋼管6は、例えば外径30mm、肉厚5.5mmである。
また、シールボックス5の内部には、溶接点11の溶接部のビード温度を測定するための溶接部ビード温度計200が設けられている。この温度計は、周知の、例えば放射温度計や二色高温計でよく、例えば、その機種はチノー製2色温度計IR−FBQ、検出素子Si、測定面積φ5mmの機器を用いることができる。尚、この溶接部ビード温度計200は、検出素子が溶接点11の真上に、電縫鋼管6の上部表面から高さ数十mmの位置になるように配設するとよく、その場合に測定される温度は、測定面積φ5mmの範囲の平均温度となる。
尚、前記第1〜第4ガス供給管30,31,32,70からシールボックス5内へ供給される各不活性雰囲気ガスの供給量は100〜200L/minとしている。また、前述の不活性雰囲気ガスの量が100L/min未満では、酸化抑制が不足であり、200L/min以上では雰囲気ガスの巻き込みが顕著となるばかりか、溶接点11の温度が低下して、ペネトレータの排出性を阻害して溶接部表層部に残存しやすくなるためである。
さらに、シールボックス5内には、ボックス内の雰囲気を排出するための排気口(図示せず)を設けても良い。
従って、前述の構成によれば、フォーミングロール及び内面ビード切削装置7の冷却水、大気、水蒸気等の侵入を防止できるため、ペネトレータ割れ50の発生を零とすることができる。
また、前記インピーダ8の冷却水の戻り配管がないため、その分、インピーダ8の充填率を向上させ、溶接効率の向上を図ることができる。
従って、実ラインでの抜き取り検査でのへん平試験において、電縫鋼管の表面に発生するペネトレータ起因の割れを零(%)とし、さらに、実際には、板厚方向の残存位置と生成量(板厚に対するペネトレータ長さ率:0.3%以下)を制御しているため、この電縫鋼管6を用いた熱処理後の電縫鋼管6においても疲労寿命の低下を抑制することができるように構成されている。
製造した電縫鋼管の溶接部において板厚表層部のホワイトバンド幅を鋼管外面側で100μm以上とできる入熱条件は、オープンパイプの材質や板厚、オープンパイプの搬送速度、高周波加熱コイルの運転条件、インピーダの効率等により影響を受けるので、製造者が予備的な試験製造を行って決定することができる。
前記電縫鋼管6は、例えば帯鋼をフォーミングロールによって円筒状に連続成形したのち、その両端を突合せ、そのエッジ部を高周波電流によって加熱し、スクイズロールで横方向から加圧・接合して製造するが、このとき、突き合せたエッジ部が加熱されていったん溶融して接合され、続いて凝固していくとき、凝固前の液相と既に凝固した固相の間で元素の分配現象が生じるので、凝固済みの固相部の炭素量は帯鋼の炭素量よりも低下することになる。そのため、電縫鋼管の溶接部(突合せ部)には、鋼帯母材よりも炭素含有量が低い領域がある幅で残存することになる。
このように製造した電縫鋼管6の断面をエッチングして観察すると、その溶接部の中央に存在している炭素含有量が低い領域が、鋼帯母材よりも白色で、鋼管外面から鋼管内面にわたって帯状に見えることから、この領域をホワイトバンドと称する。
本発明の要件である、溶接部の板厚表層部のホワイトバンド幅を説明する。図3は、溶接部の断面写真を示しており、上方が鋼管外面側、下方が鋼管内面側である。そして、鋼管外面側から鋼管内面側にわたって白く見える帯状の部分がホワイトバンドである。図4は、図3中の鋼管外面側に四角で囲った領域の拡大である。溶接部の板厚表層部のホワイトバンド幅は、図4の上に寸法線で示したとおり、鋼管外面の表面に沿ったホワイトバンドの幅である。
測定箇所では、溶接後のビードはまだ溶融状態にあり、突合せ部からビードが溶融状態を保ったまま鋼管外面や内面に排出される。しかし、ペネトレータは酸化物であることから鋼管よりも融点がはるかに高く、そのため溶融状態の突合せ部においてペネトレータは固体として存在している。そのため、溶融状態のビードが排出されるときに合わせてペネトレータも排出される。
前記ビード温度が高いほど、排出されるビードが多くなるのでペネトレータの排出性も高まる。また、ビード温度が高ければ、アプセットによる台座の盛り上がりも増加し、溶出ビードを合わせた高さが高くなるので、排出と同じ効果を果たす。
従って、ビード温度やホワイトバンド幅が規定に達しないと、排出効果が小さくペネトレータが残留してしまう。内外表面から500μm以内にペネトレータが残留しないためには、溶接点の上流部にあたる予熱部に不活性ガスを供給しつつオープンパイプを搬送することと、前述の溶接部ビード温度が1300℃以上かつ、前記溶接部の板厚表層部のホワイトバンド幅が100μm以上となる入熱で溶接する必要があることは、発明者らが実験の結果、見出した知見である。
このため、内面ビード切削装置の溶接点11からの位置を400mm以上とした。また、前記内面ビード切削装置7は、溶接点11より離れるほど水蒸気の逆流量は少なく、ペネトレータの生成は減少方向であるが、内面ビードの切削精度が悪化し、次工程の引抜きで疲労寿命に及ぼす欠陥を形成しやすくなるため、その限界値として900mm未満とした。
また、シールボックス内に配設された4個のガス噴出口(30a,31a,70a,32a)からの各不活性ガス供給量を100〜200L/minとすることで、より確実に疲労寿命が優れた電縫鋼管を製造できるのである。
実験結果を表1に示す。第1〜第4の各噴出口の噴出量を変化させることにより、第1酸素濃度計51の指示値を制御しつつ造管と溶接を行い、電縫鋼管を製造した。製造した電縫鋼管から試験片を切り出し、まず、へん平試験を行ってペネトレータ割れ率を求めた。次に、別の試験片について溶接部断面を観察し、鋼管内外面から表層500μm以内のペネトレータの有無を評価した。表1には、鋼管内面から深さ500μm以内または鋼管外面から深さ500μm以内の少なくともどちらかにペネトレータが認められたものは×を、どちらにもペネトレータが認められなかったものは○を付した。
さらに、電縫鋼管に熱処理を施し、その後、曲げ部の最大応力が550MPaとなる繰返し荷重を掛ける疲労試験を行い、繰返し回数1×106回までに破断に至ったものは×、破断しなかったものは○と付した。なお、熱処理条件は、1000℃×30秒保持したのち水中へ急冷する焼入れ処理と、引き続いて、340℃×45分保持したのち空冷する焼戻し処理とした。
試験No.1〜5は、第1〜第4のすべての噴出口から不活性ガスを流し、溶接点近傍の酸素濃度を300ppm以下に保ちつつ、溶接の入熱条件を種々変化させた例である。入熱量の増減は、主に高周波加熱コイルの通電電流で制御した。試験No.1または2のように、溶接部ビード温度が1300℃未満か、ホワイトバンド幅が100μm未満の場合は、鋼管内外面のいずれかの板厚深さ方向500μmまでの範囲にペネトレータの残留が認められた。
試験No.3〜5は、溶接部ビード温度が1300℃以上、かつホワイトバンド幅が100μm以上である本発明例である。ペネトレータの残留は認められなかった。
試験No.9は、入口ガスと予熱部ガスの不活性ガスを止めた例である。入口ガスを止めたため、シールボックスの外部から搬送されてくるオープンパイプとともにシールボックス内に持ち込まれる大気を遮断できなくなったため、溶接点近傍の酸素濃度が500ppmとなり、また予熱部ガスを止めたため、オープンコイルの突合せ端面の酸化が避けられなくなったため、入熱条件は適正であっても、製造した電縫鋼管にはペネトレータの残留が認められた。
試験No.11〜16、試験No.17〜22、試験No.23〜28、試験No.29〜34は、それぞれ順に、予熱部ガス流量、溶接点ガス流量、雰囲気ガス流量、入口ガス流量を可変とし、それ以外のガス流量は150L/minに固定とした例である。いずれの場合も、流量可変としたガスの流量が100〜200L/minの範囲であれば、製造した電縫鋼管にペネトレータの残留が認められなかった。
この試験は、各製造条件の電縫鋼管から、各々長さ1mの試験片を20本採取してへん平試験を行って、全部のペネトレータ割れの長さを合計し、ペネトレータ割れ率は、ペネトレータ割れ長さの合計を全測定長さ20mに対する割合として求めたものである。図5にへん平試験により観察された代表的なペネトレータ割れ50の例を示している。
5 シールボックス
6 電縫鋼管
7 内面ビード切削装置
8 インピーダ
9 インピーダケース
11 溶接点
20 フォーミングスタンド出側
21 管入側可変部
22 高周波加熱コイル
23 スクイズロール
24 管出側可変部
30 シールボックス入口ガス供給管
30a 第1噴出口
31 溶接点ガス供給管
31a 第3噴出口
32 シールボックス雰囲気調整用ガス供給管
32a 第4噴出口
33 第2酸素濃度計
34 冷却水供給管
34a 第5噴出口
36 マンドレル
40 シールボックス溶接装置
50 ペネトレータ割れ
51 第1酸素濃度計
60 ガス供給量制御部
70 予熱部ガス供給管
70a 第2噴出口
100 弁
101 不活性雰囲気ガス供給
200 溶接部ビード温度計
Claims (3)
- シールボックス(5)内の溶接点(11)の上流に位置する予熱部に不活性ガスを供給しつつオープンパイプ(1)を搬送し、前記溶接点(11)では前記オープンパイプ(1)の溶接部のビード温度が1300℃以上で、かつ、前記溶接部の板厚表層部のホワイトバンド幅が100μm以上となる入熱で前記溶接部の溶接を行うことを特徴とするシールボックス溶接方法。
- 前記溶接点(11)近傍の酸素濃度を300ppm以下の状態とすることを特徴とする請求項1記載のシールボックス溶接方法。
- 前記シールボックス(5)内に配設された4個のガス噴出口(30a,31a,,70a,32a)からの各不活性ガス供給量を100〜200L/minとすることを特徴とする請求項1又は2記載のシールボックス溶接方法。
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