JP2013166040A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】血管等の関心組織の様々な構造を分かり易く示した画像を得る。
【解決手段】シーケンサ10が、傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rは、それぞれ同一の被検体の同一の領域についての画像に関し、関心組織が背景よりも低信号である第1のデータと関心組織が背景よりも低信号である第2のデータとをそれぞれ取得する。演算ユニット11は、第1のデータと第2のデータとに基づいて、関心組織の背景に対するコントラストが第1および第2のデータのそれぞれよりも高い第3のデータを生成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被検体の組織のうちの関心領域を際立たせて表す画像を生成する磁気共鳴イメージング装置に関する。
動脈・静脈の磁気共鳴イメージング法、すなわちMRアンギオグラフィ(MR angiography:MRA)としては、グラジエントエコー(gradient echo:GRE)法を用いたタイム・オブ・フライト(time of fright:TOF)法や、血管を低信号に描出する高速スピンエコー(Fast spin echo:FSE)法を用いたブラックブラッド(black-blood:BB)法がある。最近では、静脈のsusceptibility効果を応用するSWI(susceptibility-weighted imaging)法がある。
非造影のTOF法は、ホワイトブラッド(white-blood:WB)法の代表例である。非造影のTOF法では、インフロー(in-flow)効果を利用するので、スラブの流入部に近い流速の速い動脈は血管が高信号になる。この非造影のTOF法では、乱流部は描出困難であり、また穿通枝などの末梢血管が描出されにくく、動脈主体に描出される。また常磁性造影剤を用いてT1W系のシーケンスで撮像した場合は、血管が高信号に描出されるのでWB法となる。なお、血管が背景組織に比べて高信号になるMRA法を、ここでは広くWB法と称している。
BB法は、血管が周囲組織に対し低信号になり、遅い血流も描出され、血管壁が正しく描出される。BB法では、TOF法では描出することが困難な乱流部も描出することが可能である。BB法のシーケンスは、当初はFSE法を利用して開発されたが、画像処理の問題などのためかあまり普及していない。BB法では、動脈血および静脈血のいずれも低信号になるが、エコー時間(TE)を短かめにすることによって動脈を強調できる。また常磁性造影剤を用いてT2*W系のシーケンスで撮像した場合は、血管が低信号に描出されるのでBB法となる。
BB法では、周囲組織が低信号となるので、血管のみを区別して抽出するのが困難で、例えば最小値投影(minIP)では空気の除外が困難である。WB法での血管抽出は、最大値投影(MIP)などでも比較的容易に行える。
米国特許第6501272号明細書
以上のような従来のMRAでは、WB法およびBB法のいずれでも利点および欠点を有しており、用途に応じて適宜に使い分けられている。しかしながら、WB法およびBB法のいずれでも、血管の様々な構造を分かり易く描出することは困難であった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、血管等の関心組織の様々な構造を分かり易く示した画像を得ることができる磁気共鳴イメージング装置を提供することにある。
本発明の一態様による磁気共鳴イメージング装置は、被検体の関心領域について、血管が背景部に比べて低信号となる第1の画像データを得るためのパルスシーケンスでデータ収集を行う第1のスキャン及び前記血管が背景部よりも低信号となるような第2の画像データを得るための前記第1のスキャンとは異なるパルスシーケンスで収集を行う第2のスキャンを実行するスキャン手段と、前記第1の画像データと前記第2の画像データとに基づいて、前記血管の背景部に対するコントラストが前記第1および第2の画像データのそれぞれよりも高い第3の画像データを生成する生成手段とを備えた。
本発明の一実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図。 ハイブリッドMRAを行う場合の図1中のMRI装置100の動作手順を示したフローチャート。 TOF法およびFS−BB法でのデータ収集を2エコーで行う場合はのパルスシーケンスの一例を示す図。 リフェーズ/ディフェーズGREシーケンスによる血管内血液および静止部の信号強度のTEに対する変化を示す図。 血管径と信号値S(WB)と信号値S(BB)の関係を示した図。 図5に示した信号値S(WB)と信号値S(BB)から求まる差分値ΔSを示す図。 ハイブリッドMRA MIP画像と従来のTOF法によるMRA画像のMIP画像とを並べて表した図。 スラブ位置に依存してスケーリング値を設定する具体例を示す図。 任意の1つのピクセルについてのスケーリング値を設定するための図1中のホスト計算機16の処理手順を示すフローチャート。 ハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係を示す図。 図1中のホスト計算機16が図9中のステップSb4にて算出するスケーリング値α(k)と値kとの関係を示した図。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図である。
このMRI装置100は、被検体200を載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロールおよび画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。そしてMRI装置100はこれらの各部の構成要素として、磁石1、静磁場電源2、シムコイル3、シムコイル電源4、天板5、傾斜磁場コイルユニット6、傾斜磁場電源7、RFコイルユニット8、送信器9T、受信器9R、シーケンサ(シーケンスコントローラ)10、演算ユニット11、記憶ユニット12、表示器13、入力器14、音声発生器15およびホスト計算機16を有する。またMRI装置100には、被検体200の心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部が接続されている。
静磁場発生部は、磁石1と静磁場電源2とを含む。磁石1としては、例えば超電導磁石や常電導磁石が利用可能である。静磁場電源2は、磁石1に電流を供給する。かくして静磁場発生部は、被検体200が送り込まれる円筒状の空間(診断用空間)の中に静磁場H0を発生させる。この静磁場H0の磁場方向は、診断用空間の軸方向(Z軸方向)にほぼ一致する。静磁場発生部には、さらにシムコイル3が設けられている。このシムコイル3は、ホスト計算機16の制御下でのシムコイル電源4からの電流供給によって静磁場均一化のための補正磁場を発生する。
寝台部は、被検体200を載せた天板5を、診断用空間に送り込んだり、診断用空間から抜き出したりする。
傾斜磁場発生部は、傾斜磁場コイルユニット6および傾斜磁場電源7を含む。傾斜磁場コイルユニット6は、磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット6は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの傾斜磁場を発生させるための3組のコイル6x,6y,6zを備える。傾斜磁場電源7は、シーケンサ10の制御の下で、コイル6x、コイル6yおよびコイル6zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。傾斜磁場発生部は、傾斜磁場電源7からコイル6x,6y,6zに供給するパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向のそれぞれの傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場GS、位相エンコード方向傾斜磁場GE、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場GRから成る論理軸方向のそれぞれの傾斜磁場を任意に設定する。スライス方向、位相エンコード方向および読出し方向の各傾斜磁場GS、GE、GRは、静磁場H0に重畳される。
送受信部は、RFコイルユニット8、送信器9Tおよび受信器9Rを含む。RFコイルユニット8は、診断用空間にて被検体200の近傍に配置される。送信器9Tおよび受信器9Rは、RFコイルユニット8に接続さる。送信器9Tおよび受信器9Rは、シーケンサ10の制御の下で動作する。送信器9Tは、核磁気共鳴(NMR)を生じさせるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイルユニット8に供給する。受信器9Rは、RFコイルユニット8が受信したエコー信号などのMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、あるいはフィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してデジタルデータ(生データ)を生成する。
制御・演算部は、シーケンサ10、演算ユニット11、記憶ユニット12、表示器13、入力器14、音声発生器15およびホスト計算機16を含む。
シーケンサ10は、CPUおよびメモリを備えている。シーケンサ10は、ホスト計算機16から送られてきたパルスシーケンス情報をメモリに記憶する。シーケンサ10のCPUは、メモリに記憶したシーケンス情報にしたがって、傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rの動作を制御するとともに、受信器9Rが出力した生データを一旦入力し、これを演算ユニット11に転送する。ここで、シーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばコイル6x,6y,6zに印加するパルス電流の強度、印加時間および印加タイミングなどに関する情報を含む。
演算ユニット11は、受信器9Rが出力した生データを、シーケンサ10を通して入力する。演算ユニット11は、入力した生データを、内部メモリに設定したk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)に配置し、このk空間に配置されたデータを2次元または3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニット11は、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も必要に応じて実行可能である。この合成処理には、ピクセル毎にピクセル値を加算する処理や、最大値投影(MIP)処理、最小値投影(minIP)などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとった上で、これら複数フレームの生データを合成して1フレームの生データを得てもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、あるいは重み付け加算処理などが含まれる。
記憶ユニット12は、再構成された画像データや、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを記憶する。
表示器13は、ユーザに提示するべき各種の画像をホスト計算機16の制御の下に表示する。表示器13としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
入力器14は、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報などの各種の情報を入力する。入力器14は、入力した情報をホスト計算機16に送る。入力器14としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に備える。
音声発生器15は、ホスト計算機16から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発する。
ホスト計算機16は、既存のMRI装置で実現されている各種の動作を実現するようにMRI装置100の各部の動作を総括する。ホスト計算機16は他に、後述するように、ハイブリッドMRAの実行時にスケーリング係数を設定する機能を備える。
心電計測部は、ECGセンサ17およびECGユニット18を含む。ECGセンサ17は、被検体200の体表に付着されており、被検体200のECG信号を電気信号(以下、センサ信号と称する)として検出する。ECGユニット18は、センサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施した上で、ホスト計算機16およびシーケンサ10に出力する。この心電計測部としては、例えばベクトル心電計を用いることができる。この心電計測部によるセンサ信号は、被検体200の心時相に同期したスキャンを実行するときにシーケンサ10にて必要に応じて用いられる。
次に以上のように構成されたMRI装置100の動作について説明する。なお、MRI装置100は、既存のMRI装置で実現されている各種の撮像を行うことが可能であるが、これについての説明は省略する。そしてここでは、ハイブリッドMRAを得る場合の動作について説明することとする。
図2はハイブリッドMRAを得る場合のMRI装置100の動作手順を示したフローチャートである。
ステップSa1においてはシーケンサ10が、傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rを制御して、WB法およびBB法のそれぞれでのデータ収集を行う。このWB法でのデータ収集とBB法でのデータ収集とを個別のシーケンスにて行っても良いが、ここではマルチエコー法を用いて一連のシーケンス中にWB法およびBB法の双方のデータ収集を行う。このデータ収集は、撮像領域として設定されたスラブ内の複数のスライスについてそれぞれ行われる。
WB法およびBB法として、具体的にどの手法を採用するかは任意であるが、ここではWB法としてTOF法を、またBB法としてFS−BB(flow-sensitive BB)法を採用することとする。なお、FS−BBは、関心領域の動脈及び静脈のフローによる信号低下を強調させるためのディフェーズ傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行う。
パルスシーケンスをGREとし、静磁場強度を1.5Tとした場合のTEは、TOF法の場合は10未満となり、FS−BB法の場合は20となる。
図3はこのときのパルスシーケンスの一例を示す図である。図3に示される波形は上から順番に、撮像対象に印加する高周波のフリップパルス(flip pulse)およびエコー信号(Echo)、スライス方向の傾斜磁場波形(Gss)、位相エンコード方向の傾斜磁場波形(Gpe)、リードアウト方向の傾斜磁場波形(Gro)を示す。
ここで、TOF法はリフェーズ(rephase)であるのに対して、FS−BB法はディフェーズ(dephase)である。
図4はリフェーズ/ディフェーズGREシーケンスによる血管内血液および静止部の信号強度のTEに対する変化を示す図である。
リフェーズにおいては、血液の信号は低下されることのないまま収集される。これとは逆にディフェーズにおいては、血液の信号は抑制されて収集される。このことから図3に示すように、リフェーズにより血液で生じる信号は、静止している組織で生じる信号よりも高信号となる。またディフェーズにより血液で生じる信号は、静止している組織で生じる信号よりも低信号となる。
ステップSa2においては演算ユニット11が、上記のようにしてTOF法を用いて収集されたデータに基づいて、血管が背景よりも高信号に表される画像(以下、WB画像と称する)を再構成する。また演算ユニット11は、上記のようにしてFS−BB法を用いて収集されたデータに基づいて、血管が背景よりも低信号に表される画像(以下、BB画像と称する)を再構成する。
ステップSa3においては演算ユニット11が、WB画像とBB画像とのスケーリング差分を演算することによって、ハイブリッドMRA画像を生成する。すなわち、同一の位置に関するピクセル毎に、そのピクセルについてのWB画像での信号値をS(WB)、BB画像での信号値をS(BB)とするとともに、スケーリング係数をαとおくと、次の(1)式によって差分値ΔSを算出する。
ΔS=S(WB)−α×S(BB) …(1)
図5は血管径と信号値S(WB)と信号値S(BB)の関係を示した図である。
図5に示すように、WB画像での信号値S(WB)は、血管部分については背景部の信号値Sbase(WB)よりも高信号になっている。BB画像での信号値S(BB)は、血管部分については背景部の信号値Sbase(BB)よりも低信号になっている。なお、MR信号の収集時の条件の違いから、信号値Sbase(WB)と信号値Sbase(BB)とは、図5に示すように異なることが一般的である。また、コントラスト対ノイズ比(CNR)は、主幹動脈のように血管径が大きい血管では、WB画像およびBB画像で同程度に大きいが、末梢血管のように血管径が小さな血管では、WB画像では小さくなる。なお、Sbase(WB)およびSbase(BB)は、WB画像およびBB画像のおのおののローパス画像の信号強度で代用できる。
かくして差分値ΔSは、図6に示すように血管部分における背景部の差分値ΔSbaseに対するコントラストが、信号値S(WB)および信号値S(BB)のいずれよりも大きくなる。
なお、スケーリング値αは、α×Sbase(BB)がSbase(WB)を上回ることがないように設定されれば、コントラストを増大する効果が得られる。従って、スケーリング値αは、上記の条件を満たす範囲で任意に設定が可能であり、例えばα=0として、重み付けをしなくても良い。ただし、スケーリング値αは、背景部の差分値ΔSbaseができるだけゼロに近くなるように設定することが、背景部を目立たなくしてハイブリッドMRA画像の画質をより向上するためには好ましい。
そして以上のハイブリッドMRA画像は、スラブ内の全スライスのそれぞれについて生成される。
ステップSa4においては演算ユニット11が、複数のハイブリッドMRA画像についてのMIP処理を行って、ハイブリッドMRA MIP画像を生成する。MIP処理の対象とするハイブリッドMRA画像は、全スライスのハイブリッドMRA画像の全部または一部としても良いし、断面変換により生成した複数のハイブリッドMRA画像としても良い。
ところで、ステップSa5においては演算ユニット11が、WB画像に基づいてマスク画像を生成する。このマスク画像は、例えば脳内の血管を撮像している場合には、脳実質に相当する領域を表す画像とする。BB画像は脳実質とその周囲との信号差が小さいことなどのために脳実質の領域を抽出することが困難だが、WB画像では脳実質および血管が高信号になるので、閾値処理などの簡単な処理により脳実質および血管の領域を抽出できる。
ステップSa4でのMIP処理に際しては、マスク画像を参照して、脳実質に相当する領域のみを対象として行うようにしても良い。なお、ハイブリッドMRA MIP画像とともに、例えばBB画像のminIP画像などのような別の画像を表示する場合、そのminIP処理に対してもマスク画像を参照して行うようにしても良い。
図7は上記のようにして生成されたハイブリッドMRA MIP画像と従来のTOF法によるMRA画像のMIP画像(以下、TOF_MRA画像と称する)とを並べて表した図である。図7の上側がTOF_MRA画像であり、下側がハイブリッドMRA画像である。TOF_MRA画像およびハイブリッドMRA画像ともに、左からアキシャル、コロナルおよびサジタル方向のMIP画像である。
なお、TOF_MRA画像は、TR=50ms、TE=6.8ms、FA=20degとした3 axis 1st order GMNにより撮像されたものである。ハイブリッドMRAは、TE=26ms、b値(b-factor)=2sec/mm2として撮像されたBB画像と上記のTOF_MRA画像とから、α=1として上記のようにして生成されたものである。
この図7から明らかなように、ハイブリッドMRA画像はTOF法によるMRA画像と同じWB画像となるが、ハイブリッドMRA画像ではTOF法によるMRA画像よりも、血管、特に細い末梢血管が高コントラストで詳細に描出される。
さて、一般にTOF法では、血液の流入部では血管信号が大きいが、血液が末梢血管に移行するに従いRFで励起されつづける回数が増加するために信号が小さくなることが知られている。そこで、スラブの流入部に近いほうのスライスについて適用するスケーリング値αを、遠いほうのスライスについて適用するスケーリング値よりも小さく設定すれば、上記の性質を考慮した高品質のハイブリッドMRA画像を得られるようになる。
図8は上記のようにスラブ位置に依存してスケーリング値を設定する具体例を示す図である。
さてスケーリング値αとして最適な値は、WB画像とBB画像との関係に基づいてピクセル毎に異なる。そこで、スケーリング値をピクセル毎に設定し、それをスケーリング差分に適用することが好ましい。
以下に、ピクセル毎のスケーリング値を設定する処理について説明する。
本実施形態では、血管の径やWB画像とBB画像の各信号強度のそのもの、あるいは周囲組織とのCNRを測定して、その比較から適応的にスケーリング値を設定することとする。血管信号は比較的高周波成分が多いため、同一画像についてローパスフィルタ処理を施した画像とローパスフィルタ処理を施していない画像との同一ピクセル間の差分をとることにより抽出できる。あるいは血管信号は、ハイパスフィルタ処理により低周波な背景信号を低下させることにより抽出することができる。そしてこのようにして求まる差分値がWB画像においては正方向、BB画像においては負方向に大きいほど血管である確率が大きい。ノイズ成分は一定なので、信号強度がそのままCNRになる。
図9は任意の1つのピクセルについてのスケーリング値を設定するためのホスト計算機16の処理手順を示すフローチャートである。
この処理は、図2におけるステップSa3にてスケーリング差分を演算するのに先立って、ステップSa2にて再構成されたWB画像およびBB画像に基づいて実行される。
ステップSb1においてホスト計算機16は、WB画像およびBB画像のそれぞれに対してハイパスフィルタ処理を施すことにより、WB画像およびBB画像のそれぞれから背景信号を低下させ、血管信号を抽出する。
ステップSb2においてホスト計算機16は、上記のようにWB画像に対してハイパスフィルタ処理を施して得られた画像における画素値をSd(WB)とするとともに、BB画像に対してハイパスフィルタ処理を施して得られた画像における画素値をSd(BB)とした場合に、次の式(2)によってCNRに相当する値kを算出する。
k=Sd(BB)/Sd(WB) …(2)
次にステップSb3においてホスト計算機16は、信号値Sbase(BB)と信号値Sbase(WB)との比を、「Sbase(BB)/Sbase(WB)」として求める。
そしてステップSb4においてホスト計算機16は、ステップSb2にて求めた値kに対応するスケーリング値α(k)を算出する。流れのある血管内部は、Sd(WB)>0、Sd(BB)<0なので、k<0となる。これに対して静止組織は、k≧0となる確率が高い。すなわち、上記のように求まる値kは、血管に相当するピクセルにおいては符号が負となり、静止組織に相当するピクセルにおいては符号が正となる。従って、k≧0であるならば、スケーリング値αは、Sbase(WB)−α×Sbase(BB)がゼロになる値、すなわちステップSb3にて求めた値とすれば良い。k<0であるならば、kが負方向に大きくなるに従い、α (k)は正方向に大きくする。
k<0であるときのα(k)は、ハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係を考慮して、以下のように定める。
まず、2種類の原画像S1,S2の血管の周囲組織(base)S1base,S2baseに対するコントラストをC1,C2、ノイズSDをσn1,σn2、CNRをCNR1,CNR2とした場合、重み付き差分画像ΔS=S1−α×S2における血管のCNR,CNR(ΔS)との関係を導出する。
問題の定義より、C1=S1−S1base、C2=S2−S2base、ΔS=S1−α×S2である。
ΔS画像のコントラストは、原画像のコントラストを用いて次の(3)式のように表せる。
C(ΔS)=ΔS−ΔSbase={S1−αS2}−{S1base−αS2base}
={S1−S1base}−α{S2−S2base}=C1−α×C2 … (3)
ΔS画像での血管の周囲組織に対するCNR,CNR(ΔS)は、次の(4)式となる。
Figure 2013166040
ここで、ΔS画像のCNRが最大になる条件は、次の式(5)の場合である。
δ{CNR(ΔS)}/δα=(−C1×α×σn2 2−C2×σn1 2)/(σn1 2+α2×σn2 2)3/2=0 …(5)
この式(5)をみたす、α=αoptを求めると、分母がゼロでない、すなわちノイズのない画像でなければ、次の(6)式のようになる。
αopt=−(C2/σn2 2)/(C1/σn1 2) …(6)
特に、σn1=σn2=σnの場合は、式(4)および式(6)は各々、次の式(4')および式(6')となる。
Figure 2013166040
αopt=−C2/C1 …(6')
被検体を同一のコイルで同一の受信ゲインで撮像した場合や、2エコーで撮像した場合には、ノイズSDは同じとみなせるので、上記の式(4')および式(6')が成り立つ。
以上まとめると、2種類の原画像の重みつき差分画像ΔS=S1−α×S2における血管と周囲組織とのコントラストに関するCNRは、2種類の原画像の各々の血管と背景とのコントラストに関するCNRの比の符号を反転した値に等しいときに最大となる。
例として画像S1をWB画像、画像S2をBB画像とし、かつCNR1=10、CNR2=−10であるとするならば、α=1、すなわち最大のCNRを与えるのは単純差分S1−S2でよいことになり、その場合の差分画像のCNRは、CNR=10−(10)/√2=14.1となり、差分前の1.41倍に向上することになる。一方、血管がWBに描出されていても、差分する側の画像に血管がまったく描出されていない状態、すなわちCNR1=10、CNR2=0ならば、α=0、すなわち最大のCNRを与えるのはS2を差分しないでS1をそのまま用いるのがよいことになる。
図10はハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係を示す図である。
図10は、WB画像における血管のCNRを10として、BB画像のコントラストC(BB)とWB画像のコントラストC(WB)との比C(BB)/C(WB)が、0、−0.50、−0.75、−1.00、−1.25、−1.50、−1.75、−2.00のそれぞれである場合についてのハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係をそれぞれ示している。
この図10からも、ハイブリッドMRA画像のCNRを最大にするαoptは、次の式(7)となる。
αopt=−C(BB)/C(WB) …(7)
ただし、図10から明らかなように、C(BB)/C(WB)<−1ならば、α>1にしておけばCNRはあまり変化しない。
図11はホスト計算機16がステップSb4にて算出するスケーリング値α(k)と値kとの関係を示した図である。
前述の論理どおりに実施するならば、ホスト計算機16はスケーリング値α(k)を図11に破線で示すような値として算出すれば良い。
しかし、実装的には、k=0近傍はノイズを考慮し滑らかに変化させるとともに、k<0の領域では自然な画像の形成のために、例えば図11に実線で示すような値としてスケーリング値α(k)を算出すると良い。
なおαはピクセル毎の設定なので、スケーリング値の上限αmaxは特に設定不要であるが、ここではエラー処理としての適当な値を設定している。
なおk>0であるピクセルについては、静止組織である確率が大きいので、スケーリング差分を行わずに、ハイブリッドMRA画像におけるノイズを低減すべくWB画像またはBB画像のローパスフィルタ画像におきかえても良いし、ゼロを埋めてもよい。
このようにしてピクセル毎のスケーリング値α(k)を適応的に設定すれば、血管が複雑に向きを変えているために流入部と細い血管とがスラブの両端部に必ずしも位置していなくとも、スケーリング値αを適正に設定して高品質なハイブリッドMRA画像を生成することが可能となる。
ところで、血管と背景とのコントラストに関するCNRは、ハイブリッドMRA画像のほうがWB画像またはBB画像より大きくなければ、ハイブリッドMRA画像を生成することに意味がない。
血管の主幹部はTOFによるCNRが大きいが、末梢血管ではTOFによるCNRがゼロに近づくので、BB画像のスケーリングが大きいほうが良くなるので、末梢血管では、差分しないでBB画像を単独で用いたほうが良いことがわかる。その場合、α=1なら差分画像のCNRは、1/√2=0.71になるので、もしハイブリッドMRA画像のCNRがWB画像またはBB画像のCNRの√2倍よりも大きければ、血管のCNRはハイブリッドMRA画像のほうがWB画像またはBB画像より大きくなる。差分により背景の信号値がゼロになるようなスケーリングを行うことは、背景がゼロに近づき、血管信号との差が大きくなるのでMIP時に都合がよくなる。
2エコーGREの場合、背景の信号強度は、Sbase(WB)>Sbase(BB)なので、背景をゼロにする設定の場合はα>1になり、末梢血管に重みをおいたことになる。その場合でも差分画像ではMIPで血管を空気に邪魔されずに十分に出す必要から、信号強度が背景>空気>0になるように、α≦Sbase(WB)/Sbase (BB)と、上限を与えるのが望ましい。
以上のように本実施形態では、血管が背景より高信号にでるWB画像と血管が背景より低信号に描出されるBB画像とを用いて、それぞれの画像に比べ血管をより高CNRで描出することが可能である。背景組織の信号低減は、MIPやminiIPでの細血管の描出においては特に重要である。
また本実施形態によれば、TOF法に比べて乱流部、細血管、あるいは側副血行路の描出能が向上する。撮像時間は、TOF法に比べて多少延長する(TRに比例)程度である。そして、TOF法に比べて本実施形態では、血管の背景組織に対するCNRが増大するとともに、脂肪や背景組織は低減する。TOF法で必要なMTCパルスは、本実施形態では不要である。TOF法に比べて本実施形態では、乱流部や穿通枝の描出能も向上する。
また本実施形態によればFS−BB法に比べて、血管の背景組織に対するCNRが増大するとともに、背景組織は低減する。
なお、造影剤を使用した場合でもWB,BBになる場合があり、血管など組織のCNRの向上が可能である。例えば、常磁性造影剤なら、T1WでWB、T2*WでBBになる。従って、非造影の場合と同様なGRE2エコーシーケンスで実現できる。
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
(a) ハイブリッドMRA画像を生成するのに使用したWB画像およびBB画像とは別種の画像を撮影し、この画像をハイブリッドMRA画像に合成して表示した画像を生成しても良い。上記別種の画像としては、例えばSWI法により撮像された画像が有用である。すなわち、上記のように生成されたハイブリッドMRA画像は、ホワイトブラッド画像となり、かつ主として動脈が描出されることになるので、静脈を表すブラックブラッド画像であるSWI画像をハイブリッドMRA画像に合成(フュージョン)することで、動脈と静脈とを色分けして表した画像が得られる。なお、ハイブリッドMRA画像とSWI画像とにそれぞれ別々の色を割り当てて、カラー画像を生成することもできる。なお、SWI法は、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間が設定され、フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行う。
また、この場合に、マルチエコー法により3エコーの収集を行うようにすれば、撮影時間の延長を小さく抑えることができる。例えば静磁場強度を1.5Tとした場合のTEは、TOF法が10未満、FS−BB法が20、SWI法が40とすれば良い。またSWIに関しては、動脈を抑制するためにGMNはリフェーズタイプとすることが望ましい。なお、前述した2エコーの例でFS−BB法のTEを40ms程度とすれば動脈静脈も混在するが、2エコー間の演算による血管強調が可能である。
(b) WB画像とBB画像とにそれぞれ別の色を割り当てた上で、フュージョンすることによってハイブリッドMRA画像を生成することも可能である。すなわち、例えばRGB24(8×3)ビットを用い、WB画像およびBB画像に、8ビットずつ赤および緑を割り当てて表示すれば、色を保存した状態で重なって表示される。こうすれば各々フローのスピードや酸素濃度の情報を反映した表示となり有効である。例えばWB画像およびBB画像の2画像でも、左右の片側に側副血行があれば流速の速い側の血管は赤が多くなり、遅れた側の血管は緑が多くなる。なお、さらに前述のようにSWI画像を含めるのであれば、これに例えば青を割り当てれば良い。これにより、静脈が青で表示される。
(c) WB画像およびBB画像は、造影剤を用いて得ることもできる。GREでTEの異なるT1W、T2*Wの2エコーとすれば、1エコー目は造影剤のT1短縮効果によりWBとなり、2エコー目は磁化率効果によりBBとなる。
(d) WB画像およびBB画像,さらにはSWI画像を得るシーケンスタイプは、GREに限らずFSE系やEPI(echo planar imaging)系、またはそれらの組み合わせを用いて交互に収集してもよい。
(e) 上述した実施例では、WB画像とBB画像とに基づいてハイブリッドMRA画像(血流像)を生成することを説明したが、種類の異なる複数のWB画像、或いは、種類の異なる複数のBB画像に基づいてハイブリッドMRA画像(血流像)を生成しても良い。例えば、関心領域とは異なる位置にプリサチュレーションパルスを印加するTOF法のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成された非造影MRA画像と、造影剤を用いて得られたT1強調画像とに基づいて、種類の異なる複数のWB画像のハイブリッドMRA画像を生成しても良い。また関心領域の動脈及び静脈のフローによる信号低下を強調させるためのディフェーズ傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成されたMRA画像と、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間が設定され、フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成されたMRA画像とに基づいて、種類の異なる複数のBB画像のハイブリッドMRA画像を生成しても良い。
WB画像どうしの場合、2つのWB画像のコントラストC1,C2は、C1>0、C2>0となるから、式(6)および式(6')はそのまま適用できる。またBB画像どうしの場合、2つのBB画像のコントラストC1,C2は、C1<0、C2<0となるから、式(6)および式(6')はそのまま適用できる。
(f) ハイブリッドMRA MIP画像に代えて、ボリュームレンダリングにより生成されたハイブリッドMRA3次元画像を生成しても良い。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
100…磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、1…磁石、2…静磁場電源、3…シムコイル、4…シムコイル電源、5…天板、6x,6y,6z…コイル、6…傾斜磁場コイルユニット、7…傾斜磁場電源、8…RFコイルユニット、9R…受信器、9T…送信器、10…シーケンサ、11…演算ユニット、12…記憶ユニット、13…表示器、14…入力器、15…音声発生器、16…ホスト計算機。

Claims (3)

  1. 被検体の関心領域について、血管が背景部に比べて低信号となる第1の画像データを得るためのパルスシーケンスでデータ収集を行う第1のスキャン及び前記血管が背景部よりも低信号となるような第2の画像データを得るための前記第1のスキャンとは異なるパルスシーケンスで収集を行う第2のスキャンを実行するスキャン手段と、
    前記第1の画像データと前記第2の画像データとに基づいて、前記血管の背景部に対するコントラストが前記第1および第2の画像データのそれぞれよりも高い第3の画像データを生成する生成手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 前記第1のスキャンは、前記関心領域の動脈及び静脈のフローによる信号低下を強調させるためのディフェーズ傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行うものであって、
    前記第2のスキャンは、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間が設定され、前記フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行うものであることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記スキャン手段は、第1のエコー時間によりエコー信号を取得して前記第1の画像データを得、前記第1のエコー時間とは異なる第2のエコー時間によりエコー信号を取得して前記第2の画像データを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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