以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図である。
このMRI装置100は、寝台部、静磁場発生部、傾斜磁場発生部、送受信部および制御・演算部を備えている。寝台部は、載置された被検体200を移動させる。静磁場発生部は、静磁場を発生する。傾斜磁場発生部は、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場を発生する。送受信部は、高周波信号を送受信する。制御・演算部は、システム全体のコントロールおよび画像再構成を担う。そしてMRI装置100はこれらの各部の構成要素として、磁石1、静磁場電源2、シムコイル3、シムコイル電源4、天板5、傾斜磁場コイルユニット6、傾斜磁場電源7、RFコイルユニット8、送信器9T、受信器9R、シーケンサ(シーケンスコントローラ)10、演算ユニット11、記憶ユニット12、表示器13、入力器14、音声発生器15およびホスト計算機16を有する。またMRI装置100には、被検体200の心拍動を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部が接続されている。
静磁場発生部は、磁石1、静磁場電源2、シムコイル3およびシムコイル電源4を含む。磁石1としては、例えば超電導磁石や常電導磁石が利用可能である。静磁場電源2は、磁石1に電流を供給する。なお、磁石1として超電導磁石を採用する場合には、静磁場電源2は省略可能である。かくして静磁場発生部は、被検体200が送り込まれる円筒状の空間(診断用空間)の中に静磁場B0を発生させる。この静磁場B0の磁場方向は、診断用空間の軸方向(Z軸方向)にほぼ一致する。シムコイル3は、ホスト計算機16の制御下でのシムコイル電源4からの電流供給を受けて、静磁場均一化のための補正磁場を発生する。
寝台部は、被検体200を載せた天板5を、診断用空間に送り込んだり、診断用空間から抜き出したりする。
傾斜磁場発生部は、傾斜磁場コイルユニット6および傾斜磁場電源7を含む。傾斜磁場コイルユニット6は、磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット6は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの傾斜磁場を発生させるための3組のコイル6x,6y,6zを備える。傾斜磁場電源7は、シーケンサ10の制御の下で、コイル6x,6y,6zに、傾斜磁場を発生させるためのパルス電流をそれぞれ供給する。傾斜磁場発生部は、傾斜磁場電源7からコイル6x,6y,6zに供給するパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向のそれぞれの傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grから成る論理軸方向のそれぞれの傾斜磁場を任意に設定する。スライス方向、位相エンコード方向および読出し方向の各傾斜磁場Gs、Ge、Grは、静磁場B0に重畳される。
送受信部は、RFコイルユニット8、送信器9Tおよび受信器9Rを含む。RFコイルユニット8は、診断用空間にて被検体200の近傍に配置される。送信器9Tおよび受信器9Rは、RFコイルユニット8に接続さる。送信器9Tおよび受信器9Rは、シーケンサ10の制御の下で動作する。送信器9Tは、核磁気共鳴(NMR)を生じさせるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイルユニット8に供給する。受信器9Rは、RFコイルユニット8が受信したエコー信号などのMR信号(ラジオ周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、あるいはフィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してデジタルデータ(生データ)を生成する。
制御・演算部は、シーケンサ10、演算ユニット11、記憶ユニット12、表示器13、入力器14、音声発生器15およびホスト計算機16を含む。
シーケンサ10は、CPUおよびメモリを備えている。シーケンサ10は、ホスト計算機16から送られてきたパルスシーケンス情報をメモリに記憶する。シーケンサ10のCPUは、メモリに記憶したシーケンス情報にしたがって、傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rの動作を制御する。シーケンサ10のCPUは、受信器9Rが出力した生データを一旦入力し、これを演算ユニット11に転送する。ここで、シーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばコイル6x,6y,6zに印加するパルス電流の強度、印加時間および印加タイミングなどに関する情報を含む。
演算ユニット11は、受信器9Rが出力した生データを、シーケンサ10を通して入力する。演算ユニット11は、入力した生データを、内部メモリに設定したk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)に配置する。演算ユニット11は、このk空間に配置されたデータを対象として2次元または3次元のフーリエ変換を行うことによって実空間の画像データを再構成する。また演算ユニット11は、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も必要に応じて実行可能である。この合成処理には、ピクセル毎にピクセル値を加算する処理や、最大値投影(MIP)処理、最小値投影(minIP)などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとった上で、これら複数フレームの生データを合成して1フレームの生データを得てもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、あるいは重み付け加算処理などが含まれる。
記憶ユニット12は、再構成された画像データや、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを記憶する。
表示器13は、ユーザに提示するべき各種の画像をホスト計算機16の制御の下に表示する。表示器13としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
入力器14は、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報などの各種の情報を入力する。入力器14は、入力した情報をホスト計算機16に送る。入力器14としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に備える。
音声発生器15は、ホスト計算機16から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発する。
ホスト計算機16は、既存のMRI装置で実現されている各種の動作を実現するようにMRI装置100の各部の動作を総括する。ホスト計算機16は他に、後述するように、ハイブリッドMRAの実行時にスケーリング係数を設定する機能を備える。
心電計測部は、ECGセンサ17およびECGユニット18を含む。ECGセンサ17は、被検体200の体表に付着されており、被検体200のECG信号を電気信号(以下、センサ信号と称する)として検出する。ECGユニット18は、センサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施した上で、ホスト計算機16およびシーケンサ10に出力する。この心電計測部としては、例えばベクトル心電計を用いることができる。この心電計測部によるセンサ信号は、被検体200の心時相に同期したスキャンを実行するときにシーケンサ10にて必要に応じて用いられる。
(第1の実施形態)
次に以上のように構成されたMRI装置100の第1の実施形態における動作について説明する。なお、MRI装置100は、既存のMRI装置で実現されている各種の撮像を行うことが可能であるが、これについての説明は省略する。そしてここでは、ハイブリッドMRAを得る場合の動作について説明することとする。
図2はハイブリッドMRAを得る場合のMRI装置100の動作手順を示したフローチャートである。
ステップSa1においてはシーケンサ10が、傾斜磁場電源7、送信器9Tおよび受信器9Rを制御して、WB法およびBB法のそれぞれでのデータ収集を行う。このWB法でのデータ収集とBB法でのデータ収集とを個別のシーケンスにて行っても良いが、ここではマルチエコー法を用いて一連のシーケンス中にWB法およびBB法の双方のデータ収集を行う。このデータ収集は、撮像領域として設定されたスラブ内の複数のスライスについてそれぞれ行われる。
WB法およびBB法として、具体的にどの手法を採用するかは任意である。しかしここではWB法としてTOF法を、またBB法としてFS−BB(flow-sensitive BB)法を採用することとする。なお、FS−BBは、ディフェーズ傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー(GRE)系のパルスシーケンスでデータ収集を行う。ディフェーズ傾斜磁場パルスは、関心領域の動脈および静脈のフローによる信号低下を強調させるための傾斜磁場を生じさせる。
パルスシーケンスをGREとし、静磁場強度を1.5Tとした場合のTEは、TOF法の場合は10未満となり、FS−BB法の場合は20となる。
図3はこのときのパルスシーケンスの一例を示す図である。図3に示される波形は上から順番に、被検体200に印加する高周波のフリップパルス(flip pulse)および被検体200で生じるエコー信号(Echo)、スライス方向の傾斜磁場波形(Gs)、位相エンコード方向の傾斜磁場波形(Ge)、リードアウト方向の傾斜磁場波形(Gr)を示す。
ここで、TOF法はリフェーズ(rephase)であるのに対して、FS−BB法はディフェーズ(dephase)である。
図4はリフェーズ/ディフェーズGREシーケンスによる血管内血液および静止組織の信号強度のTEに対する変化を示す図である。
リフェーズにおいては、血液の信号は低下されることのないまま収集される。これとは逆にディフェーズにおいては、血液の信号は抑制されて収集される。このことから図4に示すように、リフェーズにより血液で生じる信号は、静止している組織で生じる信号よりも高信号となる。またディフェーズにより血液で生じる信号は、静止している組織で生じる信号よりも低信号となる。
ステップSa2においては演算ユニット11が、上記のようにしてTOF法を用いて収集されたデータに基づいて、血管が背景よりも高信号に表される画像すなわちWB画像を再構成する。また演算ユニット11は、上記のようにしてFS−BB法を用いて収集されたデータに基づいて、血管が背景よりも低信号に表される画像、すなわちBB画像を再構成する。
ステップSa3においては演算ユニット11が、WB画像とBB画像とのスケーリング差分を演算する。この演算により得られる画像を、以下ではハイブリッドMRA画像と称する。
具体的には、同一の位置に関するピクセル毎に、そのピクセルについてのWB画像での信号値をS(WB)、BB画像での信号値をS(BB)とするとともに、スケーリング係数をαとおくと、次の(1)式によって差分値ΔSを算出する。
ΔS=S(WB)−α×S(BB) …(1)
図5は血管径と信号値S(WB)と信号値S(BB)の関係を示した図である。
図5に示すように、WB画像での信号値S(WB)は、血管部分については背景部の信号値Sbase(WB)よりも高くなっている。BB画像での信号値S(BB)は、血管部分については背景部の信号値Sbase(BB)よりも低くなっている。なお、MR信号の収集時の条件の違いから、信号値Sbase(WB)と信号値Sbase(BB)とは、図5に示すように異なることが一般的である。また、コントラスト対ノイズ比(CNR)は、主幹動脈のように血管径が大きい血管については、WB画像およびBB画像で同程度に大きいが、抹消血管のように血管径が小さな血管については、WB画像では小さくなる。なお、Sbase(WB)およびSbase(BB)は、WB画像およびBB画像のおのおののローパス画像の信号強度で代用できる。
かくして差分値ΔSは、図6に示すように血管部分における背景部の差分値ΔSbaseに対するコントラストが、信号値S(WB)および信号値S(BB)のいずれよりも大きくなる。
なおスケーリング値αは、α×Sbase(BB)がSbase(WB)を上回ることがないように設定されれば、コントラストを増大する効果が得られる。従って、スケーリング値αは、上記の条件を満たす範囲で任意に設定が可能である。例えばα=0として、重み付けをしなくても良い。ただし、スケーリング値αは、背景部の差分値ΔSbaseができるだけゼロに近くなるように設定することが好ましい。なぜならば、背景部を目立たなくしてハイブリッドMRA画像の画質をより向上できるからである。
そして以上のハイブリッドMRA画像は、スラブ内の全スライスのそれぞれについて生成される。
ステップSa4においては演算ユニット11が、複数のハイブリッドMRA画像を対象としたMIP処理を行う。このMIP処理により得られる画像を以下ではハイブリッドMRA MIP画像と称する。MIP処理の対象とするハイブリッドMRA画像は、ステップSa3で生成された全スライスのハイブリッドMRA画像の全部または一部としても良い。あるいは、MIP処理の対象とするハイブリッドMRA画像には、断面変換により生成した別スライスの少なくとも1つのハイブリッドMRA画像を含んでも良い。
ステップSa5においては演算ユニット11が、WB画像に基づいてマスク画像を生成する。このマスク画像は、例えば脳内の血管を撮像している場合には、脳実質に相当する領域を表す画像とする。BB画像は、脳実質とその周囲との信号差が小さいことなどのために、BB画像から脳実質の領域を抽出することは困難である。しかしながら、WB画像では脳実質および血管が高信号になるので、WB画像からは閾値処理などの簡単な処理により脳実質および血管の領域を抽出できる。
ステップSa4でのMIP処理に際しては、マスク画像を参照して、脳実質に相当する領域のみを対象として行うようにしても良い。なお、ハイブリッドMRA MIP画像とともに、例えばBB画像のminIP画像などのような別の画像を表示する場合、そのminIP処理に対してもマスク画像を参照して行うようにしても良い。
図7は上記のようにして生成されたハイブリッドMRA MIP画像と従来のTOF法によるMRA画像のMIP画像(以下、TOF_MRA画像と称する)とを並べて表した図である。図7の上側がTOF_MRA画像であり、下側がハイブリッドMRA画像である。TOF_MRA画像およびハイブリッドMRA画像ともに、左からアキシャル、コロナルおよびサジタル方向のMIP画像である。
なお、TOF_MRA画像は、TR=50ms、TE=6.8ms、FA=20degとした3 axis 1st order GMNにより撮像されたものである。ハイブリッドMRAは、TE=26msとするとともに、b-factorを2sec/mm2として撮像されたBB画像と上記のTOF_MRA画像とから、α=1として上記のようにして生成されたものである。
この図7から明らかなように、ハイブリッドMRA画像はTOF法によるMRA画像と同じWB画像となるが、ハイブリッドMRA画像ではTOF法によるMRA画像よりも、血管、特に細い抹消血管が高コントラストで詳細に描出される。
さて、一般にTOF法では、スラブへの血液の流入部では血管信号が大きい。しかし、血液は、抹消血管に移行するに従いRFで励起されつづける回数が増加するために、抹消血管の血管信号が小さくなることが知られている。そこで、スラブへの流入部に近いほうのスライスについて適用するスケーリング値αを、遠いほうのスライスについて適用するスケーリング値よりも小さく設定すれば、上記の性質を考慮した高品質のハイブリッドMRA画像を得られるようになる。図8は上記のようにスラブ位置に依存してスケーリング値を設定する具体例を示す図である。
さてスケーリング値αとして最適な値は、WB画像とBB画像との関係に基づいてピクセル毎に異なる。そこで、スケーリング値をピクセル毎に設定し、それをスケーリング差分に適用することが好ましい。
以下に、ピクセル毎のスケーリング値を設定する処理について説明する。
第1の実施形態では、血管の径や、WB画像およびBB画像の各信号強度のそのもの、あるいは周囲組織とのCNRを測定して、その比較から適応的にスケーリング値を設定することとする。血管信号は比較的高周波成分が多いため、同一画像についてローパスフィルタ処理を施した画像とローパスフィルタ処理を施していない画像との同一ピクセル間の差分をとることにより抽出できる。あるいは血管信号は、ハイパスフィルタ処理により低周波な背景信号を低下させることにより抽出することができる。そしてこのようにして求まる差分値がWB画像においては正方向、BB画像においては負方向に大きいほど血管である確率が大きい。ノイズ成分は一定なので、信号強度がそのままCNRになる。
図9は任意の1つのピクセルについてのスケーリング値を設定するためのホスト計算機16の処理手順を示すフローチャートである。
この処理は、図2におけるステップSa3にてスケーリング差分を演算するのに先立って、ステップSa2にて再構成されたWB画像およびBB画像に基づいて実行される。
ステップSb1においてホスト計算機16は、WB画像およびBB画像のそれぞれに対してハイパスフィルタ処理を施すことにより、WB画像およびBB画像のそれぞれから背景信号を低下させ、血管信号を抽出する。なお、WB画像およびBB画像のそれぞれに適用するフィルタ特性は、WB画像よりもBB画像のほうが相対的に高周波成分が大きくなるようにそれぞれ定めておく。
なお、このハイパスフィルタ処理は、WB画像およびBB画像のいずれか一方のみに対して施しても良い。この場合、低周波むらを低減するために、BB画像に対して施すことが好ましい。またハイパスフィルタ処理に代えて、WB画像またはBB画像に対してローパスフィルタ処理を施して得られる画像とWB画像またはBB画像との差分を求める処理を行っても良い。あるいはハイパスフィルタ処理に代えて、WB画像およびBB画像に対してローパスフィルタ処理を施してそれぞれ得られる画像に関する絶対値画像どうしの差分dSをabs[Sorig]−abs[Slow]としてを求める処理を行っても良い。さらには、ハイパスフィルタ処理の後に、位相補正を行ってリアル画像を得ても良い。この位相補正は例えば、k-spaceの中心部のデータから作成した位相を用いて行うことができる。
なお、このようなフィルタ処理により、磁化率などに由来する低周波成分のむらを補正することができる。
ステップSb2においてホスト計算機16は、上記のようにWB画像に対してハイパスフィルタ処理を施して得られた画像における画素値をSd(WB)とするとともに、BB画像に対してハイパスフィルタ処理を施して得られた画像における画素値をSd(BB)とした場合に、次の式(2)によってCNRに相当する値kを算出する。
k=Sd(BB)/Sd(WB) …(2)
次にステップSb3においてホスト計算機16は、信号値Sbase(BB)と信号値Sbase(WB)との比を、Sbase(BB)/Sbase(WB)として求める。
そしてステップSb4においてホスト計算機16は、ステップSb2にて求めた値kに対応するスケーリング値α(k)を算出する。流れのある血管内部は、Sd(WB)>0、Sd(BB)<0なので、k<0となる。これに対して静止組織は、k≧0となる確率が高い。すなわち、上記のように求まる値kは、血管に相当するピクセルにおいては符号が負となり、静止組織に相当するピクセルにおいては符号が正となる。従って、k≧0であるならば、スケーリング値αは、Sbase(WB)−α×Sbase(BB)がゼロになる値、すなわちステップSb3にて求めた値とすれば良い。k<0であるならば、kが負方向に大きくなるに従い、α(k)は正方向に大きくする。
k<0であるときのα(k)は、ハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係を考慮して、以下のように定める。
まず、2種類の原画像S1,S2の血管の周囲組織S1base,S2baseに対するコントラストをC1,C2、ノイズSDをσn1,σn2、CNRをCNR1,CNR2とした場合、重み付き差分画像ΔS=S1−α×S2における血管のCNR,CNR(ΔS)との関係を導出する。問題の定義より、C1=S1−S1base、C2=S2−S2base、ΔS=S1−α×S2である。ΔS画像のコントラストは、原画像のコントラストを用いて次の(3)式のように表せる。
C(ΔS)=ΔS−ΔS
base={S1−αS2}−{S1
base−αS2
base}
={S1−S1
base}−α{S2−S2
base}=C1−α×C2 …(3)
ΔS画像での血管の周囲組織に対するCNR,CNR(ΔS)は、次の(4)式となる。
ここで、ΔS画像のCNRが最大になる条件は、次の式(5)の場合である。
δ{CNR(ΔS)}/δα=(−C1×α×σn2 2−C2×σn1 2)/(σn1 2+α2×σn2 2)3/2=0 …(5)
この式(5)を満たすα=αoptを求めると、分母がゼロでなければ、すなわちノイズのない画像でなければ、次の(6)式のようになる。
α
opt=−(C2/σ
n2 2)/(C1/σ
n1 2) …(6)
特に、σ
n1=σ
n2=σ
nの場合は、式(4)および式(6)は各々、次の式(4')および式(6')となる。
αopt=−C2/C1 …(6')
被検体200を同一のコイルで同一の受信ゲインで撮像した場合や、2エコーで撮像した場合には、ノイズSDは同じとみなせるので、上記の式(4')および式(6')が成り立つ。
以上まとめると、2種類の原画像の重みつき差分画像ΔS=S1−α×S2における血管と周囲組織とのコントラストに関するCNRは、2種類の原画像の各々の血管と背景とのコントラストに関するCNRの比の符号を反転した値に等しいときに最大となる。
例として画像S1をWB画像、画像S2をBB画像とし、かつCNR1=10、CNR2=−10であるとするならば、α=1で良いことになる。すなわち最大のCNRを与えるのは、単純差分S1−S2で良いことになる。その場合の差分画像のCNRは、CNR=10−(10)/√2=14.1となり、差分前の1.41倍に向上することになる。一方、血管がWBに描出されていても、差分する側の画像に血管がまったく描出されていない状態、すなわちCNR1=10、CNR2=0ならば、α=0が良いことになる。すなわち最大のCNRを与えるのは、S2を差分しないでS1をそのまま用いるのが良いことになる。
図10はハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係を示す図である。
図10は、WB画像における血管のCNRを10として、BB画像のコントラストC(BB)とWB画像のコントラストC(WB)との比C(BB)/C(WB)が、0、−0.50、−0.75、−1.00、−1.25、−1.50、−1.75、−2.00のそれぞれである場合についてのハイブリッドMRA画像のCNRとスケーリング値αとの関係をそれぞれ示している。
この図10から明らかなように、ハイブリッドMRA画像のCNRを最大にするαoptは、次の式(7)となる。
αopt=−C(BB)/C(WB) …(7)
ただし、図10から明らかなように、C(BB)/C(WB)<−1ならば、α>1にしておけばCNRはあまり変化しない。
図11はホスト計算機16がステップSb4にて算出するスケーリング値α(k)と値kとの関係を示した図である。
前述の論理どおりに実施するならば、ホスト計算機16はスケーリング値α(k)を図11に破線で示すような値として算出すれば良い。しかし、実装的には、k=0の近傍ではノイズを考慮しスケーリング値α(k)を滑らかに変化させる。これとともに、k<0の領域では、自然な画像の形成のために、例えば図11に実線で示すような値としてスケーリング値α(k)を算出すると良い。
なおスケーリング値αはピクセル毎の設定なので、その上限値αmaxは特に設定不要であるが、図11ではエラー処理としての適当な値を設定している。
なおk>0であるピクセルについては、静止組織である確率が大きい。そこで、スケーリング差分を行わずに、ハイブリッドMRA画像におけるノイズを低減すべく、WB画像またはBB画像のローパスフィルタ画像における相当するピクセルの値に置き換えても良いし、ゼロに置き換えても良い。
このようにしてピクセル毎のスケーリング値α(k)を適応的に設定すれば、血管が複雑に向きを変えているために流入部と細い血管とがスラブの両端部に必ずしも位置していなくとも、スケーリング値αを適正に設定して高品質なハイブリッドMRA画像を生成することが可能となる。
ところで、血管と背景とのコントラストに関するCNRは、ハイブリッドMRA画像のほうがWB画像またはBB画像より大きくなければ、ハイブリッドMRA画像を生成することに意味がない。
血管の主幹部はTOFによるCNRが大きいが、抹消血管ではTOFによるCNRがゼロに近づく。このため、BB画像のスケーリングが大きいほうが血管と背景とのコントラストに関するCNRが良くなる。つまり、抹消血管では、差分しないでBB画像を単独で用いたほうが良いことがわかる。その場合、α=1ならば差分画像のCNRは1/√2=0.71になる。このため、もしハイブリッドMRA画像のCNRがWB画像またはBB画像のCNRの√2倍よりも大きければ、血管のCNRはハイブリッドMRA画像のほうがWB画像またはBB画像より大きくなる。差分により背景の信号値がゼロになるようなスケーリングを行うことは、背景がゼロに近づき、血管信号との差が大きくなるのでMIP時に都合がよくなる。
2エコーGREの場合、背景の信号強度は、Sbase(WB)>Sbase(BB)である。背景をゼロにする設定の場合はα>1になり、末消血管に重みをおいたことになる。その場合でも差分画像ではMIPで血管を空気に邪魔されずに十分に描出する必要から、信号強度が背景>空気>0になるように、α≦Sbase(WB)/Sbase (BB)と、上限を与えるのが望ましい。
以上のように第1の実施形態では、血管が背景より高信号にでるWB画像と血管が背景より低信号に描出されるBB画像とを用いて、それぞれの画像に比べ血管をより高CNRで描出することが可能である。背景組織の信号低減は、MIPやminiIPでの細血管の描出においては特に重要である。
また第1の実施形態によれば、TOF法に比べて乱流部、細血管、あるいは側副血行路の描出能が向上する。撮像時間は、TOF法に比べて多少延長する(TRに比例)程度である。そして、TOF法に比べて第1の実施形態では、血管の背景組織に対するCNRが増大するとともに、脂肪や背景組織は低減する。TOF法で必要なMTCパルスは、第1の実施形態では不要である。TOF法に比べて第1の実施形態では、乱流部や穿通枝の描出能も向上する。
また第1の実施形態によればFS−BB法に比べて、血管の背景組織に対するCNRが増大するとともに、背景組織は低減する。
なお、造影剤を使用した場合でもWB,BBになる場合があり、血管など組織のCNRの向上が可能である。例えば、常磁性造影剤なら、T1WでWB、T2*WでBBになる。従って、非造影の場合と同様なGREを利用した2エコーシーケンスで実現できる。
(第2の実施形態)
次にMRI装置100の第2の実施形態における動作について説明する。
(A)理論的準備
具体的な動作について説明する前の理論的準備として、磁化率が不均一で、かつ流れのあるボクセルのMR信号モデルと、リフェーズ(rephase)/ディフェーズ(dephase)の信号モデルとについて定義する。
(A-1)磁化率が不均一で、かつ流れのあるボクセルのMR信号モデル
まず、磁化率が不均一で、かつ流れのあるボクセルのMR信号モデルに関するパラメータを次のように定義する。
M
0:プロトン密度
A
T1:T1に依存した減衰(T1 dependent attenuation)
A
T1=1−exp(−TR/T1)
A
T2:T2に依存した減衰(T2 dependent attenuation)
A
T2=exp(−TE/T2)
A
D:拡散に依存した減衰(Diffusion dependent attenuation)
A
D=exp[−bD]
A
sus:磁化率に依存した減衰(Susceptibility dependent attenuation)
A
sus=exp[−TE(γΔB
0σ)]
*
φ
sus:磁化率に依存した位相(Susceptibility dependent phase)
φ
sus=−TE(γΔB
0m)
但しLorenzian modelの場合。
T2
*:T2と磁化率効果による成分を含む緩和時間
1/T2
*=1/T2+γΔB
0 (T2
*<T2)
なお、T2
*を用いると、A
T2 A
sus=exp(−TE/T2
*)となる。
A
flow:フローに依存した減衰(Flow dependent attenuation)
A
flow=exp[−bD
flow]
b:拡散で定義される傾斜磁場パターンから算出される係数(gradient factor)
D
flow:フローによる位相分散係数(流れのない部分で定義される拡散係数に等価な係数に相当する)
Φflow:フローに依存した位相シフト(Flow dependent phase shift)
V:磁化率が不均一で、かつ流れを含む組織。ΔB0<>0であり、かつF<>0である組織である。例えば静脈などがこれに相当する。
この場合、組織VからのMR信号Sは、次の式(8)のように一般化される。
S=(M0 AT1 AT2 AD Asus Aflow) exp[i(Φ0+Φsus+Φflow)] …(8)
ここで磁化率やフローの効果のうち、コヒーレント(coherent)な成分は位相に、インコヒーレント(incoherent)な成分は振幅減衰に生じる。すなわち、コントラストには、ボクセル内でのΔB0分布が大きいほど、あるいはintravoxel incoherent motion(IVIM)成分が大きいほど、振幅項が位相項より支配的に作用することになる。なおIVIM成分は、静脈→細静脈→毛細血管の順に大きい。
(A-2)リフェーズ/ディフェーズの信号モデル
次に、リフェーズ/ディフェーズの信号モデルについて説明する。
理想的なモデルでは、リフェーズでは振幅、位相ともフローによる成分はキャンセルされ、磁化率による成分のみとなる。ただし、実際はリフェーズでもgradient moment nulling(GMN)オーダーや乱流に依存した変化が生じる。一方、ディフェーズでは、振幅、位相とも磁化率成分にフロー成分が加わるので、リフェーズ/ディフェーズの各々の理想的なモデルでの信号Sre,Sdeは下記の式(9)および式(10)のように表される。
Sre=(M0 AT1 AT2 AD Asus)exp[i(Φ0+Φsus)] …(9)
Sde=(M0 AT1 AT2 AD Asus Aflow)exp[i(Φ0+Φsus+Φflow)] …(10)
ここでもし、リフェーズ/ディフェーズのシーケンス条件のうちの繰り返し時間TRおよびエコー時間TEが同一で、ディフェーズのb値は十分小さいためにADの効果は無視できるとすれば、Sdeは次の式(11)となる。
Sde=Sre Aflow exp[i Φflow] …(11)
すなわち、SdeはSreにフロー効果が加わったものになる。
MR信号(振幅、位相)の変動には次のような性質がある。
・ボクセル内のフロー成分比Mflow/(Mflow+Mst)が多いほど、MR信号の変動が大きい。
・b値が大きいほど、MR信号の変動が大きい。
・IVIM成分が大きければ、dephase grad.による振幅減衰効果によるMR信号の変動が大きい。
・IVCM成分が大きければ、dephase grad.による位相変化効果によるMR信号の変動が大きい。
(B)ディフェーズ/リフェーズのデータ収集および処理法
従来のリフェーズのみやディフェーズのみの場合に対し、ディフェーズとリフェーズとを組み合わせて用いることで新たな応用が可能になる。上述のように、リフェーズはT1緩和、T2緩和および磁化率効果のみによる信号変化である。ディフェーズはリフェーズに加えフローによる効果が加わっている。従って、リフェーズとディフェーズとのデータ間の演算により、静止組織に関する成分および磁化率効果などのフロー効果以外の成分とフロー効果とが分離された画像を得ることができる。さらには上記の演算により、磁化率やフロー効果をより定量的に表した普遍的なパラメータ画像を得ることができる。臨床的には、ディフェーズおよびリフェーズの物理的なフロー効果および磁化率効果の大小を用いた、静脈と動脈の分離などである。ここでは収集の工夫やその臨床応用例をあげる。
(B-1)理論
具体的な処理手順を説明するのに先立って、理論について説明する。
リフェーズおよびディフェーズのMR信号は、振幅および位相を有する複素信号である。MR信号のゲインをK、A0=M0、AT1、AT2として、式(9),(10)を任意のゲインKとシーケンスの可変パラメータであるTR,TE,b値の関数として表すと、以下の式(9')および式(10')のようになる。
Sre(TR,TE)=Are(TR,TE) exp[iΦre(TE)]=K A0(TR,TE) Asus(TE) exp[i{Φ0(TE)+Φsus(TE)}] …(9')
Sde(TE,TE,b)=Ade(TE,TE) exp[iΦde(TE)]=K A0(TE,TE) Asus(TE) Aflow(b) exp[i{Φ0(TE)+Φsus(TE)+Φflow(b)}] …(10')
なお、ここではb値はフローによる信号減衰効果をもたらせば良いため十分小さく、A0に占める分子拡散の効果ADは無視できる。すなわちA0は、リフェーズおよびディフェーズで同一とした。また縦磁化(longitudinal magnetization)Mzは、M0 AT1として求まり、AT1はGREの場合にはインフロー効果も含めTRで決まる。
(B-1-1)生体組織と磁化率およびフロー
磁化率とフローの性質の違いを生体内の組織別にみると、動脈はオキシヘモグロビン(oxyHb)を多く含むため磁化率効果が無視できるので、リフェーズでは動脈は描出されない。一方、静脈は動脈よりはフロー効果は小さく、さらにデオキシヘモグロビン(deoxyHb)による磁化率効果が加わる。従って、血管については、リフェーズではフローによる位相変化が完全にリフォーカスされれば、静脈信号(磁化率効果成分)が支配的に描出される。この結果、ディフェーズでは動脈および静脈(磁化率効果+フロー成分)のいずれもが描出される。静止組織については、リフェーズおよびディフェーズのいずれでも同等に描出される。
静脈はフローが遅いため、その選択的描出には磁化率効果以外に良い方法がない。また、リフェーズのみでは、動脈と静止組織とのコントラスト差が十分でないために動脈と静止組織との分離は困難である。
(B-1-2)最適シーケンスパラメータ:TE
TEについては、振幅、位相ともにCNRを最大にするTEの最適な条件は、TE=T2*である。すなわち、TEが対象とする組織のT2*に等しい場合に、その近傍のT2*を有する組織との間で最大のCNRを与える。収集条件や人体組織の種類に依存してT2*には分布があるが、血管描出に重要な血液も磁化率の範囲があるし、白質や灰白質はほぼ一定とみなせるので、ボクセルサイズを一定にする場合には上記の条件でTEを決めることはほぼ可能である。
(B-1-3)フロー効果と磁化率効果との分離
受信ゲイン、TR、TEおよびb値などの撮像パラメータを固定すれば、そのままでもリフェーズとディフェーズとの間の相互の比較が可能である。しかし、より定量的な指標にするには、フロー成分はDflow、磁化率成分はT2*やΔχなどから計算して表示したほうが良い。その場合は、b=0はリフェーズで代用し、TEは2つ以上と最低3画像が必要となる。
(B-1-3-1)フロー効果の定量化
ディフェーズ/リフェーズ間の振幅比と位相差とをとると、(11)式に基づいて次の式(12)および式(13)に示すようにフロー効果を分離できる。
ディフェーズ/リフェーズ振幅比:A(de)/A(re)=Aflow …(12)
ディフェーズ/リフェーズ位相差:Φ(de)−Φ(re)=Φflow …(13)
ここで、位相差Φflowはphase contrast MR angiography(PS−MRA)法のように速度エンコードパルスVENCの3方向を用いて測定し求めても良い。しかし、ここではあまり現実的ではないので省略し、次の式(14)のように表される関係にあり、多様な流速や多様な方向への流れによるランダムな位相分散の程度を表すDflowを求める。
Aflow=exp[−b* Dflow] …(14)
ここで、ディフェーズのb値をb(de)、ディフェーズおよびリフェーズの信号強度(振幅)をそれぞれA(de)、A(re)とすると、b=0をリフェーズで代用できるので、Dflowは次の式(15)により算出される。
Dflow[mm2/sec]=−ln[A(de)/A(re)]/b(de) …(15)
(B-1-3-2)磁化率効果の定量化
まず磁化率効果の定量化指標を振幅を用いて算出する場合について述べる。
磁化率効果による減衰項Asusは、TE依存であり、単一TEではT1緩和およびT2緩和などの寄与が入ったA0が消去できない。そこで、γΔB0σまたはT2を含んだT2*を求めたほうがより普遍化できる。
リフェーズでの2つのTE(以下、それぞれをTE1,TE2と称し、TE2>TE1であることとする)を用いる場合、TE1およびTE2のそれぞれでの信号強度(振幅)A1,A2は、次の式(16)および式(17)により定まる。
A1=K A0 exp[−TE1/T2*] …(16)
A2=K A0 exp[−TE2/T2*] …(17)
これら式(16)および式(17)より、磁化率効果による振幅減衰効果の指標は次の式(18)で表される。
T2*=(TE2−TE1)/ln[A1(TE1)/A2(TE2)] …(18)
またT2*の算出には、3エコー以上のマルチエコーを取得して最小二乗近似を用いても良い。
一方、位相を用いる場合について述べる。
磁化率効果の別の表現として、リフェーズの単一TEから、あるいは2エコーの位相差から低周波の位相成分を減じた位相からΦsusを求める。単一エコーの場合および2エコーの場合のΦsusは、それぞれ次の式(19)および式(19')により表される。
Φsus=−2πγΔχB0(cos2θ−1/3)TE …(19)
Φsus=−2πγΔχB0(cos2θ−1/3)(TE2−TE1) …(19')
このΦsusに基づいて、単一エコーの場合および2エコーの場合のΔχは、それぞれ次の式(20)および式(20')により表される。
Δχ[ppm]=−Φsus/{2πγ B0(cos2θ−1/3)TE} …(20)
Δχ[ppm]=−Φsus/{2πγ B0(cos2θ−1/3)(TE2−TE1)} …(20')
このΔχはボクセル内の平均の磁化率を表すとみなせる。
ここで、γは磁気回転比(gyromagnetic ratio)、B0は静磁場強度を表し、いずれも装置により一意に決まる。しかし、θはB0方向と血管の走行角度であるので、ボクセル間の相関を調べるなどの方法で測定する必要があり、振幅から求めるよりは困難になる。
なお、磁化率分布のみならば、リフェーズのみでTEが2段階以上あれば実現可能であり、この技術に関しては公知である。
次に、具体的な処理手順について図12に従って説明する。
(B-2)ディフェーズデータおよびリフェーズデータの収集
ステップSc1においてはシーケンサ10が、ディフェーズデータおよびリフェーズデータを収集する。
同一TEのディフェーズおよびリフェーズのシーケンスを独立させて連続的に撮像しても良い。あるいは動きの影響を最小にするために、1データセットを複数のセグメントに分割して交互に収集して合成しても良い。分割するセグメントは、k−spaceで1ライン(TR)単位としたり、2次元面単位とするなど任意である。
b値の段階は複数でも良い。TEも複数取得すればT2*の正確な算出にも役立つ。複数のTEは、Gradient Echo法ならTR内でマルチエコーを収集すれば一回で取得できる。また複数のb値もLook−Locker法を用いれば一回で取得できる。なおLook−Locker法は、「"Measurement of Gd-DTPA dialysis clearance rates by using a look-locker imaging technique.",Magn Reson,Med. 1996 Oct;36(4):571-8.」により知られている。
(B-2-1)ディフェーズ・リフェーズ交互分割収集(ディフェーズ,リフェーズの一組は同一TE)
フロー効果Dflowのみの算出のためには、シーケンサ10はリフェーズおよびディフェーズを同一TEで2画像収集する。Dflowに加えてT2*を算出する場合には、シーケンサ10はリフェーズ側を2エコーでTE1、TE2とし、ディフェーズはTE1,TE2のいずれかにする。その場合、ディフェーズおよびリフェーズのシーケンスを分割させて別々に撮像しても良い。あるいは、画像間の動きの影響を最小にするために、1データセットを複数のセグメントに分割して交互に収集して合成しても良い。分割するセグメントは、k−spaceで1ライン(TR)単位としたり、2次元面単位とするなど任意である。
(B-2-2)GREマルチエコーによるリフェーズ,ディフェーズ混合連続収集の場合(TEがすべて違う)
GREでリフェーズおよびディフェーズ組み合わせた2点以上のマルチエコーで処理する実施例を示す。
上記の(B-2-1)の場合に比べ、マルチエコーで収集すれば、リフェーズおよびディフェーズのTEは同一にできないが、複数のTEで収集し計算により同一にでき、定量的なパラメータが得られる。マルチエコーは1回のRF励起で、すなわち同一のTR内で取得できる。このため、スキャン時間が1エコーの収集時間と同程度であるという最大のメリットがある。これに加え、独立に時間をおいて収集する場合に比べてデータ間の体動も無視できるため、異種データ間の演算時の誤差が軽減できるメリットもある。もちろん別々のデータとして取得しても、後述する解析パラメータ画像の算出処理は共通にできる。
(B-2-2-1)2点法
(B-2-2-1-1)リフェーズTEとディフェーズTEとを1点ずつ収集する場合
図13に示すように、TE=TE1のAde(TE1)と、TE=TE2のAre(TE2)とをそれぞれ収集する。
この場合は、同一モードのデータが2点以上ないため、2つの画像をそのまま観察するのが主体となり、定量パラメータのうちT2*,Dflowなどは算出できない。しかし、条件をTE2=2*TE1に設定すれば、流れの位相項Φflowのみは定量化可能である。
TE(de)<TE(re)とすることで、ディフェーズは磁化率効果を抑制したフロー強調になり、リフェーズはフロー効果を抑制した磁化率強調になる。TE(re)<TE(de)といった具合にTE(re)を短く(<10ms)設定すれば、リフェーズは動脈描出用として通常ルーチンで収集しているtime of flight-magnetic resonance angiography(TOF−MRA)の代用となり、通常のTOF−MRAが不要になる可能性がある。さらに、ディフェーズは、フローおよび磁化率効果も強調した動静脈描出用にできるし、TEの設定しだいで静脈の描出は制御できる。また位相情報も用いれば、背景組織に対する静脈のCNRを強調できる。さらに、後述するようにディフェーズとリフェーズとの間で相互に演算処理を施すことにより、動脈と静脈の分離表示も可能である。なお、2エコーの場合でもリフェーズおよびディフェーズのTEは厳密に合わせる必要はなく、両TEが十分近く、T2*の差が大きくなければ半定量的な表示は可能である。
(B-2-2-1-2)ディフェーズTEを2点収集する場合
図14に示すように、TE=TE1に関するAde(TE1)およびTE=TE2に関するAde(TE2)をそれぞれ収集する。
De TE=TE1,TE2 (TE1<TE2)の2つのエコーのb値を同じにすれば、Aflow=exp[−bDflow]となる。またgradient momentも同じにすれば、位相のフロー効果分Φflowもほぼ同じである。従って、次の式(21)からフロー効果がキャンセルされることが明らかである。
Sde(TE2,b)/Sde(TE1,b)=exp[−(TE2−TE1)/T2*] exp[−i(TE2−TE1)γΔB0m] …(21)
そしてTE1,TE2は既知なので、式(20)の振幅からT2*、さらには位相項からΔB0をそれぞれ算出可能であり、Δχが算出可能である。
(B-2-2-1-3)リフェーズTEを2点収集する場合
図15に示すように、TE=TE1に関するAre(TE1)およびTE=TE2に関するAre(TE2)をそれぞれ収集する。
A2でb=0とみなせるので、Aflow=1 Φflow=0となる以外は(B-2-2-1-2)における添え字deをreに置き換えたものになる。
(B-2-2-2)3点法
リフェーズおよびディフェーズをまぜて3点収集すれば、T2*またはΔB0に加えて、すなわちΔχに加えて、フロー効果分も算出可能である。またGREのマルチエコーを用いるにもかかわらずに、同一TEのリフェーズ画像およびディフェーズ画像が作成可能である。3点のTEは、どう組み合わせても良い。
3点法では各エコーがリフェーズおよびディフェーズのいずれであるかの組み合わせで2×2×2=8通り、順番を問題にしなければ4通りがある。このうちリフェーズ,リフェーズ,ディフェーズと、ディフェーズ,ディフェーズ,リフェーズとの2通りを取り上げる。
(B-2-2-2-1)リフェーズTEを2点とディフェーズTEを1点収集する場合
最初のリフェーズの2点よりT2*を算出し、これを3点目のディフェーズに代入してDflowを算出する。またリフェーズよりT2*が分かれば、リフェーズの任意のTEの信号を生成可能なので、ディフェーズと同一TEのリフェーズが求まる。すなわち同一のT2緩和効果および磁化率効果でフロー効果のみ異なる画像が得られる。
このときのGREマルチエコーシーケンスの一例を図16に示す。
(B-2-2-2-2)ディフェーズTEを2点とリフェーズTEを1点収集する場合
上記の(B-2-2-1-2)と同様にして、最初のb値が同じでTEが異なるディフェーズの2点よりT2*を算出する。そしてこのT2*と3点目のリフェーズとからDflowを算出する。またディフェーズよりT2*が分かればディフェーズの任意のTEの信号を生成可能なので、リフェーズと同一TEのディフェーズが求まる。すなわち同一のT2緩和(T2 relaxation)効果および磁化率効果でフロー効果のみ異なる画像が得られる。
(B-2-2-3)4点以上法
ディフェーズ、リフェーズとも各々2点以上ずつ収集し、これに基づいてT2*と同一TEの画像とを求める。未知数2個で4点以上では最小二乗近似となる。もちろん必要ならば未知パラメータのM0、T2あるいはDなども算出可能である。
図17は4点法におけるデータ収集の一例を示す図であり、TE=TE1に関するAre(TE1)、TE=TE2に関するAde(TE2)、TE=TE3に関するAre(TE3)、TE=TE4に関するAde(TE4)をそれぞれ収集する。
なお、以上に説明した各種のシーケンスモードのいずれにおいても、マルチエコーのTEを、T2*算出に用いる最適TE(=T2*)を含むように設定する。対象のT2*が長すぎたり(時間延長、SNR低下)、短かすぎたり(RFが入らない、傾斜磁場が出ない、十分なb値が出ないなど)で最適TEの設定困難な場合は、計算して作る任意のTEの画像からTE=T2*の画像を作成すれば良い。
また、位相算出においては、すべての場合で折り返しがないか、折り返しを補正することが好ましい。GREのマルチエコーでもリフェーズおよびディフェーズのTEは厳密にあわせる必要はなく、両TEが十分近くT2*の差が大きくなければ半定量的な表示は可能である。シーケンスもGREのみならず、1回のRF励起後に実効TEを数段階変えたmulti−shot echo planar imaging(multi−shot EPI)でk−spaceをセグメント分割するなどして短時間化と高分解能化とを適当にコントロールしても良い。
またTEに関しては、水と脂肪とが混在する組織では、水と脂肪とに関して同位相になるように設定することが重要である。静磁場強度のもとでの水(プロトン)とケミカルシフトδppmの物質との位相差は、ΔΦ=2πγδB0TEと表される。それが同位相となる条件はnを整数としてδΦ=n2πなので、TE=n/(γδB0)の倍数に設定すれば良い。脳実質では脂肪があまりないためにあまり問題とはならないが、ボクセル内で水と脂肪とが混在する骨髄や腹部臓器では問題となる場合があるのでその条件が必要になる。水についてはγ=42.6MHz/T、脂肪についてはγ=3.6ppm、かつB0=1.5Tとすると、TE=n 4.3 msとなる。さらに脂肪以外でも磁化率の異なる物質がボクセル内に混在すると位相差が生じるが、酸素濃度によるケミカルシフトはδ=0.1ppm程度とされ、TEを適当に選んでも定量化パラメータが振幅のT2*ではあまり問題とならない。位相では厳密に定量化する場合は問題となり得るので、必要ならδを既知としてその寄与による位相を求め補正すれば良い。
(B-3)画像再構成
ステップSc2においては演算ユニット11が、以上のような各種の手法を適宜に採用して収集されたデータのそれぞれを使用して周知の再構成処理を行うことによって、m枚のディフェーズ画像とn枚のリフェーズ画像とを再構成する。なお、mおよびnの値は、いずれも0を含む整数で、採用するデータ収集の手法により定まる。
(B-4)解析パラメータ画像の算出
ステップSc3においては演算ユニット11が、再構成された1乃至m枚のディフェーズ画像および1乃至n枚のリフェーズ画像を使用して解析パラメータ画像を算出する。
図18は解析パラメータ画像の算出処理の概念を示す図である。
演算ユニット11は、リフェーズ画像およびディフェーズ画像を使用してフローパラメータ算出処理P1を行うことによってよってDflow画像を算出する。演算ユニット11は、リフェーズ画像およびディフェーズ画像を使用して磁化率パラメータ算出処理P2を行うことによってT2*画像およびΔχ画像を算出する。演算ユニット11は、リフェーズ画像、ディフェーズ画像およびT2*画像を使用して任意TE画像作成処理P3を行うことによって、任意TEに関するリフェーズ画像およびディフェーズ画像を算出する。
以下に、上記した各種のデータ収集手法のそれぞれに応じた解析パラメータ画像の算出処理の具体例をそれぞれ説明する。
(B-4-1)2点法
(B-4-1-1)ディフェーズ2点の場合
(a) 演算ユニット11は、同一b値のディフェーズに関するTE=TE1の振幅画像A1(TE1)およびTE=TE2の振幅画像A2(TE2)より、次の式(22)および式(23)によりT2*およびKdeをそれぞれ算出する。
T2*=(TE2−TE1)/ln[Ade(TE1)/Ade(TE2)] …(22)
Kde=Ade(TE1)/exp[−TE1/T2*] …(23)
(b) 演算ユニット11は、任意TEに関して、次の式(24)および式(25)によりディフェーズ振幅および位相をそれぞれ算出する。
Ade(TE)=Kde exp[−TE/T2*] …(24)
Φde(TE)=(TE/TE1)Φde(TE1) …(25)
(B-4-1-2)リフェーズ2点の場合
(a) 演算ユニット11は、同一b値のディフェーズに関するTE=TE1の振幅画像A1(TE1)およびTE=TE2の振幅画像A2(TE2)より、次の式(26)および式(27)によりT2*およびKreをそれぞれ算出する。
T2*=(TE2−TE1)/ln[Are(TE1)/Are(TE2)] …(26)
Kre=Are(TE1)/exp[−TE1/T2*] …(27)
(b) 演算ユニット11は、任意TEに関して、次の式(28)および式(29)によりディフェーズ振幅および位相をそれぞれ算出する。
Are(TE)=Kre exp[−TE/T2*] …(28)
Φre(TE)=(TE/TE1)Φre(TE1) …(29)
すなわち、(B-4-1)における添え字deをreに置き換えた式を適用する。
(B-4-2)3点法
(B-4-2-1)リフェーズTEを2点とディフェーズTEを1点収集する場合
この場合の処理の流れを図19に示す。
(a) ステップSd1において演算ユニット11は、リフェーズに関するTE=TE1の振幅画像Are(TE1)およびTE=TE2の振幅画像Are(TE2)より、次の式(30)および式(31)によりT2*およびKreをそれぞれ算出する。
T2*=(TE2−TE1)/ln[Are(TE1)/Are(TE2)] …(30)
Kre=Are(TE1)/exp[−TE1/T2*] …(31)
ここで求めたT2*により、T2*画像が得られる。
(b) ステップSd2において演算ユニット11は、次の式(32)により、例えば図20に示すようなリフェーズに関するTE=TE3の振幅画像Are(TE3)を作成する。また、ステップSd3において演算ユニット11は、TEに依存しないバックグラウンド位相がない場合には式(33)により、TEに依存しないバックグラウンド位相がある場合には式(34)により、位相画像Φre(TE3)を作成する。
Are(TE3)=Kre exp[−TE3/T2*] …(32)
Φre(TE3)=(TE3/TE1)Φre(TE1) …(33)
Φre(TE3)={TE3/(TE2−TE1)} {Φre(TE2)−Φre(TE1)} …(34)
なお、ステップSd2およびステップSd3において演算ユニット11は、TEがTE1,TE2,TE3のいずれでもない任意の値であるリフェーズの振幅画像および位相画像を作成することもできる。これは、上記の式(25)乃至(27)におけるTE3に任意の欲しいTEを代入することにより計算することにより実現できる。
(c) ステップSd4において演算ユニット11は、TE=TE3の振幅画像Are(TE3),Ade(TE3)より、次の式(35)および式(36)によりフロー分散係数Dflow画像を算出する。
Aflow=Ade(TE3)/Are(TE3) …(35)
Dflow[mm2/sec]=−ln[Aflow]/bde …(36)
(d) ステップSd5において演算ユニット11は、血管とB0との方向角度θを算出する。
(e) さらにステップSd5において演算ユニット11は、θとTE=TE3のリフェーズの位相画像より、次の式(37)によりΔχ[ppm]を算出する。
Δχ[ppm]=−Φre(TE3)/{2πγB0(cos2θ−1/3)TE3} …(37)
ここで求めたΔχにより、Δχ画像が得られる。
(f) ステップSd6において演算ユニット11は、任意TEのディフェーズの振幅画像を作成する。
ディフェーズの任意TEの振幅画像は式(35)により求めたAflowを用いて、次の式(38)により計算する。
Ade(TE)=Are(TE)Aflow …(38)
ステップSd7において演算ユニット11は、Φde(TE3)を用いて、次の式(39)によりディフェーズの任意TEの位相画像を算出する。これは、TEに依存しないバックグラウンド位相がない場合のみ算出可能である。
Φde(TE)=(TE/TE3)Φde(TE3) …(39)
なお、上記の(c)〜(f)で求める各種パラメータは、必要な場合にのみ算出すれば良い。
(B-4-2-2)ディフェーズTEを2点とリフェーズTEを1点収集する場合
この場合の処理の流れを図21に示す。
(a) ステップSe1において演算ユニット11は、ディフェーズに関するTE=TE1の振幅画像Ade(TE1)およびTE=TE2の振幅画像Ade(TE2)より、次の式(40)および式(41)によりT2*およびKdeを算出する。
T2*=(TE2−TE1)/ln[Ade(TE1)/Ade(TE2)] …(40)
Kde=Ade(TE1)/exp[−TE1/T2*] …(41)
ここで求めたT2*により、T2*画像が得られる。
(b) ステップSe2において演算ユニット11は、次の式(42)により、図22に示すようにディフェーズに関するTE=TE3の振幅画像Ade(TE3)を作成する。また、ステップSe3において演算ユニット11は、次の式(43)により、位相画像Φde(TE3)を作成する。
Ade(TE3)=Kdeexp[−TE3/T2*] …(42)
Φde(TE3)=(TE3/TE1)Φde(TE1) …(43)
なお、ステップSe2およびステップSe3において演算ユニット11は、TEがTE1,TE2,TE3のいずれでもない任意の値であるディフェーズの振幅画像および位相画像を作成することもできる。これは、上記の式(42)および(43)におけるTE3に任意の欲しいTEを代入することにより計算することにより実現できる。
(c) ステップSe4において演算ユニット11は、TE=TE3の振幅画像Are(TE3),Ade(TE3)より、次の式(44)および式(45)によりフロー分散係数Dflow画像を算出する。
Aflow=Ade(TE3)/Are(TE3) …(44)
Dflow[mm2/sec]=−ln[Aflow]/bde …(45)
(d) ステップSe5において演算ユニット11は、血管とB0との方向角度θを算出する。
(e) さらにステップSe5において演算ユニット11は、θとTE=TE3の位相画像より、次の式(46)によりΔχ[ppm]を算出する。
Δχ[ppm]=Φre(TE3)/{2πγB0(cos2θ−1/3)TE3} …(46)
ここで求めたΔχにより、Δχ画像が得られる。
(f) ステップSe6において演算ユニット11は、任意TEのリフェーズの振幅画像を作成する。
リフェーズの任意TEの振幅画像は式(44)により求めたAflowを用いて、次の式(47)により計算する。
Are(TE)=Ade(TE)/Aflow …(47)
ステップSe7において演算ユニット11は、Φre(TE3)を用いて、次の式(48)によりリフェーズの任意TEの位相画像を算出する。これは、TEに依存しないバックグラウンド位相がない場合のみ算出可能である。
Φre(TE)=(TE/TE3)Φre(TE3) …(48)
なお、(c)〜(f)で求めるパラメータは、必要な場合にのみ算出すれば良い。
さらに、リフェーズおよびディフェーズの各々が3点以上の場合は、未知パラメータをモデルに即して最小二乗法で算出する。Kre,Kde,T2*は1次の指数減衰関数のモデルを用い、Δχは一次関数のモデルを用いれば良い。
以上のようにして、少なくとも1つずつのリフェーズ画像およびディフェーズ画像(それぞれ振幅画像および位相画像を含む)、T2*画像、Δχ画像およびDflow画像などがそれぞれ算出される。なお以下においては、これらの画像を解析パラメータ画像と総称する。
なお、マルチエコーではなく、1エコーずつ別々に収集して画像化したものを使用しても良い。あるいは、2Dマルチスライス収集や、3DFT法などによるボリューム収集でも良い。さらに、パルスシーケンスとしては、GREに代えて非対称スピンエコー(ASE)法を利用しても良い。
(B-5)解析パラメータ画像の合成処理および表示
各種の解析パラメータ画像を算出した後、これらの解析パラメータ画像をそのまま表示して観察に供することができる。また、Aflow、Φflow、Δflowなどのパラメータ自体を表示しても良い。
さらに診断の補助とするためにステップSc4において演算ユニット11は、各種の解析パラメータ画像のカラーで分離した2Dの合成画像を作成して、2D画像のまま表示することができる。このステップSc4の合成処理は、必要時だけに行うようにしても良い。
あるいは、特に血管画像を目的とする場合にはステップSc5において演算ユニット11は、血管を連続した管として表現するために3D処理を行う。その代表的なものは、最大値投影(MIP)または最小値投影(minIP)である。演算ユニット11は、ステップSc5にて複数の3D画像を生成した上で、ステップSc6にてこれら複数の3D画像を用いてフュージョン処理を行うこともできる。
(B-5-1)位相合成処理および表示
任意TEのリフェーズ画像およびディフェーズ画像より位相合成画像を作成する機能について説明する。
(a) 通常のMR画像:So=Ao exp[iΦo]と、ローパスフィルタをかけたMR画像:S1=A1 exp[iΦ1]とをリフェーズおよびディフェーズのおのおのについて作成する。
(b) 位相アーチファクト補正
次の式(49)によりリフェーズのMR画像の位相マップよりローパスフィルタをかけた画像の位相マップを減算する。
Φ=Φo−Φl=arg[So]−arg[S1] …(49)
この式(49)の計算後、位相飛び補正により−π<Φ<=πに収める処理を行う。すなわち、Φが−π以下であるならばΦ+πに、またΦがπよりも大きい場合にはΦ−πにΦを置き換える。
なお、Φは、式(49)に代えて次の式(50)により算出しても良い。
Φ=arg[S/S1] …(50)
(c) 位相マスク(phase masking)
図23に示す非対称型(asymmetric type)または図24に示す対称型(symmetric type)のどちらかのマスクMを作成し、振幅画像とマスクMとのn重の積Iを次の式(51)により求める。
I=A×Mn …(51)
なお、Aはディフェーズの位相から、Mはリフェーズの位相から作成したものを用いる。
これにより位相飛びやフローと磁化率由来の位相キャンセルのない位相マスクが可能になる。
(B-5-2)カラー合成処理および表示
上記のように得られた解析パラメータ画像をカラーで色分けしてフュージョン表示する。例えば、フロー成分のAflow、ΦflowおよびDflowは動脈および静脈に支配的に大きくなる。磁化率成分のT2*およびΔχは静脈や、静止組織なら出血などの部分で大きくなる。そこで図25に示す画像21のようなフロー成分の画像を赤、画像22のような磁化率成分の画像を青とするなどの色分けをしてカラー合成処理を行うことにより、例えば画像23としてフュージョン表示する。このときに表示されるのは、物理的にはフロー成分(赤)と磁化率成分(青)との合成画像である。血管のみを表す画像の場合には、動脈は赤により、静脈は紫により表される。磁化率成分部は、出血や静止組織の磁化率がゼロでない部分のアーチファクトも含まれるので、必要なら閾値処理などによる静脈抽出を行った後にフュージョン表示すれば良い。
また、画像21および画像22から次の式(52)または式(53)によって動脈および静脈を抽出した画像24を作成して、この画像24を画像22とカラー合成することによって画像23を得ることもできる。
Aflow=Ade/Are …(52)
Φflow=Φde−Φre …(53)
色の混じり具合は、フロー成分と磁化率成分との比で決まる。上記の色の割り当て例では、赤→紫→青の変化を示すが、赤に近いほどフロー成分が多く、青に近いほど磁化率成分が多いことを意味する。脳梗塞などの疾患時は必ずしも各々動脈および静脈に対応せず、酸素代謝状態を反映する指標となる。色の割り当てはこれに限らず、対比できる組み合わせならなんでも良い。TOF−MRAで動脈を描出する方法もあるが、原理的に遅い動脈は描出されない。本法ではディフェーズによる信号減衰または位相変化を用いるため、動脈も細いのや、上方から回り込んでくる側副血行路も描出することができ、脳梗塞の診断などに向けた臨床的に重要な情報を提供できる。またある程度の長いTEに設定すれば、磁化率効果により血栓や出血などの情報も同時に得られるので、治療計画を立てる上でも重要な情報を提供できる。
なお、画像21としては、ディフェーズ振幅画像、ディフェーズ位相画像、ディフェーズの振幅位相合成画像およびDflow画像などが利用できる。画像22としては、リフェーズ振幅画像、リフェーズ位相画像、リフェーズの振幅位相合成画像およびT2*画像などが利用できる。
(B-5-3)3D処理および表示
ディフェーズの振幅画像では、動脈および静脈のいずれも周囲組織に対して低い画像値になるのでminIPが妥当である。リフェーズの振幅画像では、静脈は低信号なのでminIPが妥当だが、動脈はTOF効果で高信号になるためにMIPを併用しても良い。表面を抽出するなどしてボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングも用いることができる。また原画像信号を見たい場合は、単純に断面変換(MPR)も用途により使用することが有効である。フュージョン表示は、前記のように2Dのままでも良いが、3D画像を作成してから行っても良い。
なお、各種画像の表示は、表示器13により行うことが可能であるが、外部のビューワ装置などにおいて表示させても良い。
以上のように第2の実施形態によれば、血流などのフローの効果を分離して定量化することができる。そしてこの定量化結果に基づいて、医用診断に有用な情報や画像を提供することが可能である。
第2の実施形態によれば、磁化率やフローに関して、機種やシーケンスに依存しないパラメータが作成可能である。このため、共通のデータベースになり、重要な知見がエビデンスとして蓄積され易くなる。
第2の実施形態によれば、リフェーズとディフェーズとを組み合わせることで動脈と静脈との分離が可能である。
第2の実施形態によれば、リフェーズおよびディフェーズを別々に収集する方法に比べ、マルチエコーを用いることにより1回の収集で双方の画像が取得可能であるので、収集時間が短くなり、かつ複数画像間の時間差が無視できるのでより動きの影響が生じにくい。
第2の実施形態によれば、2画像を用いるため、速い流速の血液のTOF効果が抑制可能である。血液は、磁化率またはフローのみに依存したコントラストが得られる。
第2の実施形態によれば、側副血行路の描出が可能である。
第2の実施形態によれば、磁化率とフローとが分離可能である。
第2の実施形態によれば、ディフェーズで得られた振幅画像では、血管内孔が選択的に描出されるという手術などでは際めて重要な特長を有する。
(第3の実施形態)
次にMRI装置100の第3の実施形態における動作について説明する。
第1の実施形態においてスケーリング値の設定に関して述べたように、WB画像およびBB画像のそれぞれに対してフィルタ処理を施すことにより、WB画像およびBB画像のそれぞれから背景信号を低下させ、血管信号を抽出できる。そして、WB画像に対してフィルタ処理を施して得られた画像における画素値Sd(WB)と、BB画像に対してハイパスフィルタ処理を施して得られた画像における画素値Sd(BB)との比としてCNRに相当する値を算出できる。そしてこの場合に、WB画像およびBB画像のそれぞれに適用するフィルタ特性は、WB画像よりもBB画像のほうが相対的に高周波成分が大きくなるようにそれぞれ定めておくべきことも第1の実施形態において既に述べた。
このことは、WB画像およびBB画像に対して、それぞれに適切なフィルタ特性を適用してフィルタリングした上で、このフィルタリング後のWB画像およびBB画像の差分としてハイブリッドMRA画像を得ることによって、当該ハイブリッドMRA画像での血管のCNRを向上できることを示唆する。
そこで第3の実施形態では、WB画像およびBB画像に周波数成分毎の重み付けを行ったのち、このように重み付けられたWB画像およびBB画像の差分画像としてハイブリッドMRA画像を得る。すなわち、第1の実施形態において実施するSWS(simple-weighted subtraction)に加えて、第3の実施形態ではFWS(frequency-weighted subtraction)を実施する。
図27はMRI装置100の第3の実施形態における動作手順を示したフローチャートである。なお、図2と同一のステップには同一の符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。
図27に示すように第3の実施形態においては、第1の実施形態に対してステップSf1,Sf2が追加されている。
ステップSf1,Sf2においては演算ユニット11が、ステップSa2にて得られたWB画像およびBB画像をそれぞれフィルタリングする。このフィルタリングに使用するフィルタは、LSI(linear space invariant)フィルタおよびアダプティブフィルタ(adaptive filter)のいずれでもよい。また、アダプティブフィルタは、ストラクチャーアダプティブ(structure adaptive)タイプおよびSNRアダプティブ(SNR adaptive)タイプのいずれであっても良い。ただし、LSIフィルタは、通常の線形フィルタである。アダプティブフィルタは、ぼけないスムージングやノイズの増加しないエッジ強調が可能なフィルタである。なお、フィルタリングは、k空間(k-space)およびr空間(r-space)のいずれで行っても良い。ただし、低域通過のフィルタリングをr-spaceで行うとカーネルサイズが大きくなるので、LSIフィルタを用いてk空間で行うことによって高速化が可能となる。
ところで、ステップSf1におけるフィルタリングに使用するフィルタとステップSf2におけるフィルタリングに使用するフィルタとは、そのフィルタ特性が以下のように互いに異なる。
第1の実施形態において説明したように、ステップSa1においてはWB法としてTOF法を、またBB法としてFS−BB法(MPGによるディフェーズ)をそれぞれ採用している。この場合、WB画像では比較的太い血管(動脈)が支配的になり、BB画像では細血管が支配的になる。そして比較的太い血管は中間周波成分に対応し、細血管は高周波成分に対応する。そこでステップSf1では、中間周波成分をより多く通過させる特性のフィルタを使用する。またステップSf2では、高周波成分をより多く通過させる特性のフィルタを使用する。
以下に、さらなる具体例を2つ示す。
(第1の具体例:サチュレーションなしの通常のHOP(hybrid of opposite contrast)法の場合)
図28はステップSf1,Sf2で適用するフィルタ特性の第1の具体例を示す図である。
図28は、k空間での横軸をカットオフ周波数Kcで正規化(normalize)した周波数とした1次元方向でのフィルタゲイン特性を示す。実線がステップSf1で適用するフィルタ特性であり、破線がステップSf2で適用するフィルタ特性である。ただし、両フィルタ特性のプロファイル変化の違いが分かり易いように、ステップSf1で適用するフィルタ特性は正で、ステップSf2で適用するフィルタ特性はゲインの符号を反転して示している。
このようにそれぞれ異なるフィルタ特性によりフィルタリングされたWB画像とBB画像とのスケーリング差分が、ステップSa3において第1の実施形態にて説明したように演算される。この際のステップSf1,Sf2およびステップSa3における処理は、次のような式(54)により表すことができる。ただしここで、SHはハイブリッドMRA画像での信号値、SWはWB画像での信号値、SBはBB画像での信号値、HW,HBはWB画像用およびBB画像用のフィルタ演算子(filter operator)である。
SH=HW[SW]−α×HB[SB] …(54)
なお、第3の実施形態においては、スケーリング値αに相当する値を含むようにHBを定めることも可能である。この場合には、ステップSa3においては、単純な差分を求めることとする。すなわち、式(54)におけるαを1とする。また、第1の実施形態にて説明したスケーリング差分は、第3の実施形態においては行わないことも可能である。すなわち、スケーリング値αに相当する値をHBには含めずに、式(54)におけるαを1とする。
これにより、比較的太い血管が強調されたWB画像と細血管が強調されたBB画像とが、それぞれにおける血管と背景とのコントラストを増大させるように合成されたハイブリッドMRA画像が得られる。つまり当該ハイブリッドMRA画像では、太い血管から細い血管まで強調される。
図29は第1の具体例における周波数成分毎のプロファイル変化の概念を示す図である。
図29では、WB画像、BB画像およびハイブリッドMRA画像のそれぞれの信号値SW,SB,SHOPを、フィルタリングを行わない場合を破線により、フィルタリングを行った場合を実線により示している。
なお、WB法およびBB法により収集されるのがいずれもディールエコー(deal echo)のデータであり、かつWB法でのデータ収集におけるTEがBB法でのデータ収集におけるTEよりも小さい場合には、DC成分(k/Kc=0)のゲインをBBよりもWBで大きくする。異なるTEに起因する組織毎のT2*の差に応じた背景信号の差(T2*が短い組織ほどWBとBBとの間の信号差が大きい)が抑制され、血管のみが強調される。例えば、頭部では、血管が多く含まれる脳実質はT2*の短い頭皮組織(頭蓋骨、脂肪、筋肉)に囲まれている。このため、第1の実施形態における単純重み付差分(SWS)によってBBの重みをWBより大きくすると、脳実質が相対的に低信号になってしまう。これは、MIP画像における低コントラストの血管の表示に対して頭皮組織による障害を引き起こす可能性が高くなる。
そこで第3の実施形態におけるFWSにおいて、DC成分のゲインを上記のように設定しつつ高周波成分を強調することより、実質信号よりも頭皮信号を抑制できる。そしてこの結果、頭皮に障害されずに、かつBB側で多く含まれる磁化率に由来するアーチファクト成分を抑制しつつ、低コントラストの血管が表示可能となる。なおこの場合、LSIタイプのハイパスフィルタでは、細い血管のコントラストを増大できるものの、ノイズも強調されてしまうために、平坦な部分でのCNRは劣化してしまう。この結果、MIP画像では背景の信号レベルが増大してしまい、低コントラストな血管はノイズに埋もれてしまう場合がある。それに対しアダプティブフィルタを使用すれば、細い血管のコントラストを増大しつつノイズの増加が抑制できるので、合成後における血管のCNRを向上することが可能である。
図30は第1の具体例による手法と他の手法によりそれぞれ得られるハイブリッドMRA MIP画像を並べて示した画像の一例を示す図である。
図30において縦に並んだ3つの画像がいずれも同一の手法により得られたハイブリッドMRA MIP画像である。そして、これらの画像群は図30における左側から順に、MTC(magnetization transfer contrast)−TOF法、第1の実施形態によるSWS法(スケーリング係数α=0.5)、第1の実施形態によるSWS法(スケーリング係数α=1.5)、第1の具体例によるFWS法によりそれぞれ得られたものである。
図30からも、第1の具体例の手法によりそれぞれ得られた画像は、他のどの手法により得られた画像よりも血管を精細に表すことが分かる。なお、DC成分のBB/WB比は、0.5程度が頭皮もほぼ同程度の信号強度となり適当であった。
(第2の具体例:サチュレーション付のHOP法の場合)
この第2の具体例においては、TOF法においても血管が背景に比べて低信号になる場合で、血管と背景とのコントラストはTOF法のようがBB法よりも小さい場合について考える。例えばTOF法のシーケンスにおいて、血管流の上流部に90度パルスを与えるサチュレーションを加えれば、このような状態となる。
この場合、撮像される2つの画像がいずれもBB画像となるが、血管と背景とのコントラストに差が有れば、当該コントラストが小さいほうのBB画像をWB画像の変わりとして用いることによって第3の実施形態が実現可能である。
なお以下においては、TOF法により得られる画像をweakBB画像、BB法により得られる画像をstrongBB画像と称する。
この場合は、差分後のデータにより大きなコントラストを与えるために、weakBB画像には強いローパスフィルタを適用し、またstrongBB画像は第1の具体例と同様に高周波強調とする。
図31はステップSf1,Sf2で適用するフィルタ特性の第2の具体例を示す図である。
図31は、図28と同様な形態でフィルタゲイン特性を示している。
weakBB画像に適用するローパスフィルタは、ボケを伴うLSIタイプとすれば、血管部分が周囲組織の影響を受け高信号となる。一方、strongBB画像における血管は負のコントラストになっている。従って、フィルタリング後のweakBB画像とstrongBB画像との差分画像は正の高コントラストとなり、それはフィルタリングしない場合に比べTOF分の寄与で大きくなる。さらにこの場合、weakBB画像のノイズSD(standard deviation)も低減するので、血管のCNRは、差分後ではコントラスト増大との相乗効果で大きくなる。
なおこの場合、weakBB画像にのみローパスフィルタによるフィルタリングを行い、strongBB画像は通常のフィルタによるフィルタリングのままでも同様の効果は期待できる。この場合でも、weakBB画像に適用するフィルタは、アダプティブフィルタでもノイス抑制によるCNR向上は期待できるので、どちらでもよい。またアダプティブフィルタでコントラストはあまり変えないで、ノイズ抑制効果のみを目的とすれば、第1および第2の具体例のデータに依存しないで適用可能である。
図32は第2の具体例における周波数成分毎のプロファイル変化の概念を示す図である。
図32では、weakBB画像、strongBB画像およびハイブリッドMRA画像のそれぞれの信号値SWBB,SSBB,SHOPを、フィルタリングを行わない場合を破線により、フィルタリングを行った場合を実線により示している。
図33は第2の具体例による手法と他の手法によりそれぞれ得られるハイブリッドMRA MIP画像を並べて示した画像の一例を示す図である。
図33において左上、右上、左下、右下の順に、TOF法、BB法、第1の実施形態によるSWS法(スケーリング係数α=1)、第3の実施形態の第2の具体例によるFWS法(スケーリング係数α=1)によりそれぞれ得られたものである。
TOF法による画像では、血管は信号値がサチュレーションにより背景よりも低くなっているためにほとんど描出されていない。BB法による画像では、血管が黒く描出されているが、細血管は十分に描出されていない。SWS法およびFWS法の画像は互いに類似するが、スケーリング係数αがともに1であるにも拘わらず、FWS法ではSWS法に比べて細血管が良好に描出されていることが分かる。
なお、第2の具体例によるFWS法は、2つの画像が背景に対し両者とも正のコントラストを持つ場合でも同様に適用可能である。
以上のように第3の実施形態によれば、背景コントラストの異なるデータ間の合成処理においても、背景を抑制しつつ血管コントラストを向上可能である。
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
(a) 第1の実施形態においては、ハイブリッドMRA画像を生成するのに使用したWB画像およびBB画像とは別種の画像を撮影し、この画像をハイブリッドMRA画像に合成した画像を生成しても良い。上記別種の画像としては、例えばSWI法により撮像された画像が有用である。すなわち、上記のように生成されたハイブリッドMRA画像は、WB画像となり、かつ主として動脈が描出されることになるので、静脈を表すBB画像であるSWI画像をハイブリッドMRA画像に合成(フュージョン)することで、動脈と静脈とを色分けして表した画像が得られる。ハイブリッドMRA画像とSWI画像とにそれぞれ別々の色を割り当てて、カラー画像を生成することもできる。なお、SWI法は、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間を設定した上で、フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むGRE系のパルスシーケンスでデータ収集を行う。
またこの場合に、マルチエコー法により3エコーの収集を行うようにすれば、撮影時間の延長を小さく抑えることができる。例えば静磁場強度を1.5Tとした場合のTEは、TOF法が10未満、FS−BB法が20、SWI法が40とすれば良い。またSWIに関しては、動脈を抑制するためにGMNはリフェーズタイプとすることが望ましい。なお、前述した2エコーの例でFS−BB法のTEを40ms程度とすれば動脈および静脈が混在するが、2エコー間の演算による血管強調が可能である。
(b) 第1の実施形態においては、WB画像とBB画像とにそれぞれ別の色を割り当てた上で、フュージョンすることによってハイブリッドMRA画像を生成することも可能である。すなわち、例えばRGB24(8×3)ビットを用い、WB画像およびBB画像に、8ビットずつ赤および緑を割り当てて表示すれば、色を保存した状態で重なって表示される。こうすれば各々フローのスピードや酸素濃度の情報を反映した画像となり有益である。例えばWB画像およびBB画像の2画像でも、左右の片側に側副血行があれば流速の速い側の血管は赤が多くなり、遅れた側の血管は緑が多くなる。なお、さらに前述のようにSWI画像を含めるのであれば、これに例えば青を割り当てれば良い。これにより、静脈が青で表示される。
(c) 第1の実施形態においては、WB画像およびBB画像は、造影剤を用いて得ることもできる。GREでTEの異なるT1W、T2*Wの2エコーとすれば、1エコー目は造影剤のT1短縮効果によりWBとなり、2エコー目は磁化率効果によりBBとなる。
(d) 第1の実施形態においては、WB画像およびBB画像、さらにはSWI画像を得るシーケンスタイプは、GREに限らずFSE系やEPI(echo planar imaging)系、またはそれらの組み合わせを用いて交互に収集してもよい。
(e) 第1の実施形態においては、WB画像とBB画像とに基づいてハイブリッドMRA画像(血流像)を生成することを説明した。しかし、種類の異なる複数のWB画像、或いは、種類の異なる複数のBB画像に基づいてハイブリッドMRA画像(血流像)を生成しても良い。例えば、関心領域とは異なる位置にプリサチュレーションパルスを印加するTOF法のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成された非造影MRA画像と、造影剤を用いて得られたT1強調画像とに基づいて、種類の異なる複数のWB画像のハイブリッドMRA画像を生成しても良い。また関心領域の動脈及び静脈のフローによる信号低下を強調させるためのディフェーズ傾斜磁場パルスを含むGRE系のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成されたMRA画像と、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間を設定した上で、フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むGRE系のパルスシーケンスで収集されたデータに基づいて生成されたMRA画像とに基づいて、種類の異なる複数のBB画像のハイブリッドMRA画像を生成しても良い。
WB画像どうしの場合、2つのWB画像のコントラストC1,C2は、C1>0、C2>0となるから、式(13)および式(13')はそのまま適用できる。またBB画像どうしの場合、2つのBB画像のコントラストC1,C2は、C1<0、C2<0となるから、式(13)および式(13')はそのまま適用できる。
(f) 第1の実施形態においては、ハイブリッドMRA MIP画像に代えて、ボリュームレンダリングにより生成されたハイブリッドMRA3次元画像を生成しても良い。
(g) 第2の実施形態においては、位相マスク画像を作成する場合には、ディフェーズの振幅とリフェーズの位相とを、あるいはディフェーズの位相とリフェーズの振幅とを組み合わせてもよい。このようにすることで、位相の磁化率とフローとの相殺が生じないため、振幅の位相マスク画像における静脈信号がより低下し、動脈と静脈の分離能が向上する。
(h) 第2の実施形態においては、撮像時間とSNR向上を目的としてk-spaceにおける周波数毎にTRまたはTEを可変しても良い。例えば、シーケンスによる収集時、低周波は短いTEで、中間から高周波は長いTEで収集する。その間は、TEを滑らかに変える。これにより、低周波成分が支配的な静磁場不均一による位相は小さくなるのでアーチファクトが低減する。位相の場合には縦磁化は無関係なので、TRも最短にして良い。なおシーケンス種はGRE(FE)タイプで、マルチエコーおよび1エコーのいずれでも適用可能で、k-space trajectoryは、spin warp、spiral、あるいはEPIなどのいずれでも良い。図26にkに対するTR,TEの変化の例を示す。
(i) 前記各実施形態においては、神経、膵管、胆管、リンパ管などの血管以外の脈管の撮像を行うことも可能である。
なお、本発明の各態様による磁気共鳴イメージング装置は、以下に示すような各種の態様の磁気共鳴イメージング装置を内包している。
(a) 第1の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第3のデータが表す画像を表示する表示ユニットをさらに備える。
(b) 第1の態様による磁気共鳴イメージング装置における取得ユニットは、複数のスライスのそれぞれについて第1のデータおよび第2のデータをそれぞれ収集し、生成ユニットは、複数のスライスのそれぞれについて第3のデータを生成することとし、当該磁気共鳴イメージング装置はさらに、複数のスライスのうちの少なくとも一部のスライスについての第3のデータに基づいて3次元画像を生成するユニットを備える。
(c) 第1の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第1および第2のデータのいずれかに基づいて関心組織の観察対象となる領域に応じたマスクデータを作成するユニットと、マスクデータに基づいて観察対象となる領域に限って第3のデータを処理するユニットとをさらに備える。
(d) 第1の態様による磁気共鳴イメージング装置における取得ユニットは、FSE法およびEPI法のいずれか、またはそれらを組み合わせて用いて第1および第2のデータをそれぞれ取得する。
(e) 第4の態様による磁気共鳴イメージング装置における第1のスキャンは、関心領域の動脈及び静脈のフローによる信号低下を強調させるためのディフェーズ傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行うものであって、第2のスキャンは、T2*強調画像を得るために必要なエコー時間が設定され、フローの位相分散をキャンセルするためのフローコンペンセイション傾斜磁場パルスを含むグラジエントエコー系のパルスシーケンスでデータ収集を行うものである。
(f) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、同一のエコー時間でディフェーズおよびディフェーズの磁気共鳴信号を、3D k-spaceにおける1ライン単位または面単位で交互に収集する。
(g) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、1回のRF励起後にエコープラナーイメージング(EPI)法で連続収集するLook-Locker法によりディフェーズの磁気共鳴信号を収集する。
(h) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、複数のエコー時間のうちの1つをT2*に設定する。
(i) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における再構成ユニットは、複数のエコー時間でそれぞれ収集された磁気共鳴信号にそれぞれ基づいて再構成した複数のディフェーズ画像または複数のリフェーズ画像に基づいて、複数のエコー時間とは異なるエコー時間に関するディフェーズ画像またはリフェーズ画像を再構成する。
(j) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置は、定量化された特性を表す定量化画像を生成する生成ユニットと、再構成されたディフェーズ画像およびリフェーズ画像の少なくともいずれか一方に基づいて被検体に関する特性を定量化する第2の定量化ユニットとをさらに備え、生成ユニットは、定量化ユニットによる定量化の結果を表す画像と第2の定量化ユニットによる定量化の結果を表す画像とを合成して定量化画像を生成する。
(k) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、2次元または3次元で磁気共鳴信号を収集する。
(l) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、グラディエントエコー法を用いて、リフェーズおよびディフェーズのそれぞれに関して同一のエコー時間の磁気共鳴信号を収集する。
(m) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置における収集ユニットは、非対称スピンエコー法を用いて、リフェーズおよびディフェーズのそれぞれに関して同一のエコー時間の磁気共鳴信号を収集する。
(n) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置は、定量化された特性を表す定量化画像を生成する生成ユニットをさらに備え、この生成ユニットは、振幅単独、位相単独、あるいは振幅位相合成したスライス画像を複数生成するとともに、この複数のスライス画像に基づく3D処理によって3Dの定量化画像を生成する。
(o) 上記の(n)の態様による磁気共鳴イメージング装置における生成ユニットは、振幅と位相とを別シーケンス種とする。
(p) 上記の(o)の態様による磁気共鳴イメージング装置における生成ユニットは、振幅はディフェーズのものを使用し、位相はリフェーズのものを使用する。
(q) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置は、定量化された特性を表す定量化画像を生成する生成ユニットをさらに備え、この生成ユニットは、リフェーズ画像とディフェーズ画像との位相合成画像を生成する。
(r) 第5の態様による磁気共鳴イメージング装置は、定量化された特性を表す定量化画像を生成する生成ユニットをさらに備え、この生成ユニットは、それぞれが定量化された特性を表す複数の定量化画像どうし、あるいはリフェーズ画像またはディフェーズ画像に基づく画像と定量化画像とをカラー合成した画像を生成する。
(s) 上記の(p)の態様による磁気共鳴イメージング装置における生成ユニットは、定量化されたフロー成分を表す定量化画像と、リフェーズ画像またはディフェーズ画像に基づく磁化率成分の画像とをカラー合成した画像を生成する。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1…磁石、2…静磁場電源、3…シムコイル、4…シムコイル電源、5…天板、6…傾斜磁場コイルユニット、7…傾斜磁場電源、8…RFコイルユニット、9R…受信器、9T…送信器、10…シーケンサ、11…演算ユニット、12…記憶ユニット、13…表示器、14…入力器、15…音声発生器、16…ホスト計算機、100…磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、200…被検体。