JP2013163849A - 表面処理アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に酸化皮膜が形成された棒状又は管状のアルミニウム材5であって、前記酸化皮膜2は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層3と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層4とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔31が形成されており、当該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とする表面処理アルミニウム材1、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明に用いるアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。アルミニウム合金の成分には特に制限無く、JISに規定される合金をはじめとする各種合金を使用することができる。本発明に用いられるアルミニウム材の形状は棒状又は管状であり、従来技術に基づく押出加工や引抜加工によって成形することができる。ここで、棒状とは中実棒であって、軸方向に垂直な断面が円形の丸棒、断面が四角形(正方形や長方形)の角棒、断面が楕円形の丸棒、断面が三角形や五角形以上の多角形の角棒などをいう。また、管状とは中空管であって、軸方向に垂直な断面が円形や楕円形の丸管、断面が三角形、四角形(正方形や長方形)、五角形以上の多角形の角管などをいう。なお、棒状や管状のアルミニウム材において長さ方向とこれに直交する方向を径方向として、径方向に沿った断面中心を通り、かつ、長さ方向に沿った線を軸と定義する。すなわち、軸方向に垂直な断面とは、径方向に沿った断面である。
本発明に用いるアルミニウム材の表面には、表面側に形成された多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成されたバリア型アルミニウム酸化皮膜層とが設けられている。すなわち、アルミニウム材表面には、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層の二層によって構成される酸化皮膜が設けられている。多孔性アルミニウム酸化皮膜層が強力な接着性や密着性を発揮する一方で、バリア型アルミニウム酸化皮膜層によって、アルミニウム酸化皮膜層全体とアルミニウム素地を強固に結合する。
多孔性アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、20〜500nmである。20nm未満では厚さが十分でないため、後述する小孔構造の形成が不十分になり易く接着力や密着力が低下する。一方、500nmを超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層自体が凝集破壊し易くなり接着力や密着力が低下する。
バリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さは、3〜30nmである。3nm未満では、介在層として多孔性アルミニウム酸化皮膜層とアルミニウム素地との結合に十分な結合力を付与することができず、特に、高温・多湿等の過酷環境における結合力が不十分となる。一方、30nmを超えると、その緻密性ゆえにバリア型アルミニウム酸化皮膜層が凝集破壊し易くなり、かえって接着力や密着力が低下する。
酸化皮膜全体の厚さ、すなわち、B−1に記載の多孔性アルミニウム酸化皮膜層とB−2に記載のバリア型アルミニウム酸化皮膜層との厚さの合計は、アルミニウム材のいかなる場所で測定しても、その変動幅が±50%以内でなければならない。すなわち、アルミニウム材表面における任意の複数箇所(10箇所以上が望ましく、これら各箇所においても10点以上の測定点とするのが望ましい)で測定した酸化皮膜全体厚さの平均をT(nm)とした場合、これら複数測定箇所の全てにおける酸化皮膜全体厚さが(0.5×T)〜(1.5×T)の範囲にある必要がある。(0.5×T)未満の箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜がその周囲より薄くなる。そうすると、この薄い箇所では、接着すべき接着剤や密着すべき樹脂層などと酸化皮膜との間に隙間が生じ易くなり、十分な接触面積を確保できずに接着力や密着力が低下する。
一方、(1.5×T)を超える箇所が存在すると、その箇所の酸化皮膜が周囲の周囲より厚くなる。そうすると、この厚い箇所では、密着すべき樹脂層などからの応力が集中し、酸化皮膜での凝集破壊を誘発して接着力や密着力が低下する。
なお、上記のような酸化皮膜の全体厚さが薄い箇所や厚い箇所では、周囲と比較して光学的特性が異なるため、茶褐色や白濁色といった色調の変化として目視可能な場合がある。
C−1.第一の方法
以上のような条件を満たした酸化皮膜を表面に備えた表面処理アルミニウム材を製造するための一つの方法として、棒状又は管状のアルミニウム材の電極とこの電極を軸方向に沿って取囲む対電極とを用い、アルミニウム材の電極と対電極との最大離間距離を最小離間距離の150%以下として、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理することにより、アルミニウム材表面に酸化皮膜を形成する方法を挙げることができる。
更に第二の方法として、棒状又は管状のアルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で、アルミニウム材の電極を軸回りに1回以上回転させながら交流電解処理することにより、アルミニウム材表面に酸化皮膜を形成する方法を挙げることができる。
第二の方法では、アルミニウム材の電極の表面に均一な酸化皮膜層を形成するために、電極間距離の場所毎のバラツキを極力小さくする点では第一の方法と同じである。しかしながら、第一の方法ではアルミニウム材は静止状態にあるのに対して、この第二の方法ではアルミニウム材を軸回りに回転させながら電解処理する点で相違する。アルミニウム材を軸回りに1回以上回転させることで、アルミニウム材の表面全体を均一な電気的環境に晒すことができるため、均一な酸化皮膜層が形成される。ここで、アルミニウム材を軸回りに回転させるとは上記の軸の定義に従って、アルミニウム材の径方向に沿った断面中心を通り、かつ、長さ方向に沿った線である軸を中心としてその回りを回転することを意味する。
実施例1〜17及び比較例1〜12
アルミニウム材として、長方形断面(外側の縦50mm×外側の横20mm)を有する角管状アルミニウム押出材(板厚2.0mm、JIS6063−T4、長さ150mm)を使用した。このアルミニウム材を一方の電極に用い、表1に示す形状と寸法の黒鉛電極を対電極に用いた。表1に示すように、Aでは平板状の黒鉛電極とアルミニウム材とを平行に対面するように配置した。また、B〜Eでは、正方形又は長方形の径方向断面を有する角管状黒鉛電極の4つの内面に対してアルミニウム材の4つの表面がそれぞれ平行に対面するように、アルミニウム材を黒鉛電極内に配置した。AとEの配置ではアルミニウム材を軸回りに回転させることによりアルミニウム材の4つの表面それぞれに、また、B、C及びDの配置ではアルミニウム材の4つの表面それぞれに、表面側の多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側のバリア型アルミニウム酸化皮膜層が形成される。実施例14〜17ではアルミニウム材を軸回りに回転させ、他の実施例と比較例では、アルミニウム材を回転させなかった。
上記供試材に対し、透明感圧付着テープを12mm×30mmに貼り付け、指で十分に圧着した後に、貼り付け面に対して垂直方向に剥がす剥離試験を実施した。この際、デジタル荷重計によって剥離荷重を測定するとともに、供試材表面への糊残り状態を評価した。この評価試験は、供試材における20mm×150mmの2つの面及び50×150mmの2つ面のそれぞれから任意に3箇所ずつを選択して合計12箇所について実施し、下記基準で評価した。
○:最大剥離荷重が10N/cm以上で、かつ、テープの糊が供試材表面に完全に移行した状態
△:最大剥離荷重が7N/cm以上10N/cm未満、又は、テープの糊の一部のみが供試材表面に移行した状態
×:最大剥離荷重が7N/cm未満、又は、テープの糊が供試材表面に全く移行しない状態
結果を表4に示す。同表には、12箇所のうち上記○、△、×の箇所の数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
上記供試材の表面に大日本塗料(株)製「Vフロン#2000」を塗布しこれを乾燥して(160℃,20分)、30μmの厚さの樹脂塗膜を形成した密着性試験片を作製した。JIS−K5600−5−6に準拠した方法で、この密着性試験片の樹脂塗膜にカッターナイフを用いて1mm角の碁盤目カットを入れた。次いで、試験片に125℃で30分のレトルト浸漬処理を施した後に、直ちに処理液から取り出して水分をふき取った。この試験片に対して、透明感圧付着テープによる剥離試験により塗膜残存率を調べた。この評価試験は、供試材における20mm×150mmの2つの面及び50×150mmの2つ面のそれぞれから任意に3箇所ずつを選択して合計12箇所について実施し、下記基準で評価した。
○:塗膜残存率が100%のもの
△:塗膜残存率が75%以上100%未満のもの
×:塗膜残存率が75%未満のもの
結果を表4に示す。同表には、12箇所のうち上記○、△、×の箇所の数をそれぞれ示すが、全てが○の場合を合格、それ以外を不合格と判定した。
2・・・酸化皮膜
3・・・多孔性アルミニウム酸化皮膜層
31・・・小孔
4・・・バリア型アルミニウム酸化皮膜層
5・・・素地
Claims (4)
- 表面に酸化皮膜が形成された棒状又は管状のアルミニウム材であって、前記酸化皮膜は表面側に形成された厚さ20〜500nmの多孔性アルミニウム酸化皮膜層と素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア型アルミニウム酸化皮膜層とから成り、前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層には直径5〜30nmの小孔が形成されており、当該アルミニウム材表面全体における前記多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層との合計厚さの変動幅が、当該合計厚さの算術平均値の±50%以内であることを特徴とする表面処理アルミニウム材。
- 請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、棒状又は管状のアルミニウム材の電極と当該電極を軸方向に沿って取囲む対電極とを用い、前記アルミニウム材の電極と対電極との最大離間距離を最小離間距離の150%以下として、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で交流電解処理を行うことを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
- 請求項1に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法であって、棒状又は管状のアルミニウム材の電極と対電極とを用い、pH9〜13で液温35〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液とし、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm2及び電解時間5〜60秒間の条件で、前記アルミニウム材の電極を軸回りに1回以上回転させながら交流電解処理を行うことを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
- 前記対電極を黒鉛電極とする、請求項2又は3に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
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