以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態の電子棚札システムは、主として、送電装置と、電子棚札ユニットとを有する。
送電装置は、交流電力伝送デバイスと交流電源とを有する。
交流電力伝送デバイスは、一方向に延在しており、例えば帯状シート、平行二線伝送線路などとすることができる。このような交流電力伝送デバイスの一端側の端部には入力端が設けられ、交流電源の出力が接続される。この入力端から入力された電力は、交流電力伝送デバイスの他端側の端部に向けて伝送される。なお、他端側の端部には、出力端、接地端などが設けられてもよいし、なくてもよい。
なお、上記入力端、出力端、接地端等は、交流電力伝送デバイスの端部に設けられる。端部とは、一方向に延在する交流電力伝送デバイスの両先端であってもよいが、必ずしも先端部分に限定されない。例えば、交流電力伝送デバイスの全長(上記一方向の長さ)をAとすると、両先端各々から0.2A以内の領域、好ましくは0.1A以内の領域を、交流電力伝送デバイスの端部としてもよい。
交流電力伝送デバイスの端部を除く部分は、絶縁被覆されている。なお、交流電力伝送デバイスの上記他端側の端部(入力端子を設けない端部)に端子を設けない場合、この他端側の端部も絶縁被覆してもよい。
次に、電子棚ユニットは、前記交流電力伝送デバイスから漏洩する交流電界または交流磁界を介して、結合器により電力を受電する受電装置を搭載している。
本実施形態の電子棚札システムにおいては、送電装置から受電装置を搭載した電子棚札ユニットに給電する。このため、電子棚札ユニットの主たる電源として電池を使用した場合に発生し得る電力制限の問題を緩和することができる。
ここで主たる電源とは、電子棚札ユニットを動作させるために日常的に使用される電源を指す。すなわち、本実施形態には、例えば電子棚札ユニットの補助電源、あるいはバックアップ電源として電池を使用することも含まれる。
また、本実施形態の電子棚システムにおいては、交流電力伝送デバイスは端部を除いて絶縁被覆される。したがって、直流送電に見られる感電やショートの危険性を排除できる。一方、絶縁被覆を透過して電力伝送するために本実施形態では給電に交流を用いる。すなわち、交流電力伝送デバイスから漏洩する交流電界、または、交流磁界を介して、受電装置を搭載した電子棚札ユニットに給電する。したがって、レール状直流給電システムに見られる感電やショートの危険性を軽減することができる。
以上の通り、本実施形態によれば、電子棚札ユニットの電源として電池を使用した場合に発生し得る電力制限の問題を緩和し、かつ、レール状直流給電システムを使用した場合に発生し得る感電やショートの危険性を軽減した電子棚札システムを提供することができる。
ここで、入力端などは絶縁被覆されないこともあるが、例えば他の端部や接地部分は絶縁被覆されていてもよいし、絶縁被覆されていなくてもよい。すなわち、交流電力伝送デバイスの少なくとも端部と接地部分を除いた、使用上、感電を引き起こす危険性のある部分が絶縁被覆されていればよい。
また、交流電源から出力される交流電力の周波数は単一周波数とは限らず、周波数スペクトルは広がり、すなわち帯域幅を持っていてもよい。その場合には、おおむね周波数帯域の中心周波数を代表させて、交流電力伝送デバイスを伝搬する交流電力の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数を基本としてもよい。
なお、本実施形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスを伝送線路とし、当該伝送線路の入力端(交流電源と接続する入力端)と異なる端部に電磁波吸収媒体を備えない構成とすることができる。
あるいは、本実施形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスを、帯状の電磁波伝達シートとすることができる。当該電磁波伝達シートの平面形状は、互いに平行に延在する平行部分を少なくとも一部に有する2つの長辺(端辺)と、前記長辺よりも短く、互いに平行に延在する平行部分を少なくとも一部に有する2つの短辺(端辺)とで囲まれた略長方形とすることができる。そして、2つの短辺(端辺)の中の一方の短辺(第1の短辺)の近傍に、前記交流電源と接続する入力部を設けることができる。
ここで、略長方形とは、例えば入力部を設けた短辺(第1の短辺)に対向する短辺(第2の短辺)が、凸形状、または凹形状の様に、長辺に垂直な線分状でなく、入力部を設けた短辺から長辺に平行に測った長さがばらつく場合においても、そのばらつきが、長辺の長さより十分短く、且つ長辺が短辺より長く、主として長方形とみなせる形状を指す。ここで、十分短いとは、例えば長辺の1/4以下の長さであることを指す。また、当業者が電磁波伝達シートを実際に作製する場合には、理想的で完全な直角、完全な直線とすることは、作製公差などにより困難である。このような状況を鑑みて、略長方形と表記した。以下、略平行、略垂直と表記した理由も同様である。なお、当該電磁波伝達シートの平面形状は、長方形であってもよい。
当該電磁波伝達シートの4つの端部(端辺)は電磁波吸収媒体を備えない構成とすることができる。
このような構成とした場合、前記第1の短辺と異なる短辺(第2の短辺)に電磁波吸収媒体を備えないため、交流電源から伝送線路に供給された交流電力のうち、受電装置で消費されなかった未使用電力が前記第2の短辺に到達しても、当該電力がを熱として消費されることがない。また、電磁波伝達シートの4つの端辺に電磁波吸収媒体を備えないため、電磁波伝達シートの長辺に平行に進行する上記交流電力に該当する電磁波のみならず、短辺に平行に進行する電磁波においても、電磁波エネルギーが電磁波吸収媒体により吸収・廃棄されることが抑制される。したがって、電力利用効率のよい電子棚札システムを提供することができる。
なお、特許文献5に記載がある通り、電磁波伝達シートにおいては、表面から、樹脂等からなる保護層、即ち絶縁フィルム、その下にメッシュ状導体部、誘電体、グランド面として配置されたシート状導体部、そして最下層に樹脂等からなる保護層、即ち絶縁フィルムを配置することができる。したがって、該電磁波伝達シートは、端部を除いて絶縁被覆された交流電力伝送デバイスに該当する。但し、最下層の絶縁フィルムが無く、グランド面として配置されたシート状導体部が露出している場合でも、グランドであるため、感電やショートの危険性を回避できるが、デバイスの保護等の観点から絶縁フィルムがあることが望ましい。ここで、グランド面は前述の接地部分に当たり、前述のように絶縁被覆されていてもよいし、絶縁被覆されていなくてもよい。
なお、本実施形態では、一部、交流電力を電磁波と言い換える場合があるが、これらに区別はなく、同義の物として扱うことができる。当該前提は、以下のすべての実施形態において同様である。
また、本実施形態の電子棚札システムは、前記電磁波伝達シートの前記短辺の長さが、電磁波伝達シートを伝搬する電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しくしてもよい。
このように前記電磁波伝達シートの短辺の長さを電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しくした場合、電磁波伝達シートの各長辺において電磁波が反射されることにより横幅方向(2つの長辺を結ぶ方向)で共振状態となり、電磁波伝達シートの電磁界の横幅方向の分布が安定する。したがって、電磁波伝達シートから漏洩する電界、または磁界分布も安定する。なお、略等しくすると表現した理由は、電磁波伝達シートを伝搬する電磁波の周波数スペクトルは広がりを持つ、すなわち帯域幅を持っていてもよく、その場合には電磁波伝達シートを伝搬する電磁波が単一波長では表せないためである。このような場合は、おおむね周波数帯域の中心周波数に該当する波長を代表させて、電磁波伝達シートを伝搬する電磁波の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数に対応する波長を基本としてもよい。なお、電磁波伝達シートの各長辺において電磁波が反射されることにより横幅方向で共振状態とするために、電磁波伝達シートの2つの長辺の終端方法を一方は開放、他方は短絡とことなる反射終端とし、短辺の長さを、電磁波伝達シートを伝搬する電磁波の1/4波長の奇数倍に略等しくしてもよい。この場合、上記と同様の効果が得られる。
また、本実施形態の電子棚札システムにおいては、前記交流電源が主に基本波とその第二高調波を含む電力を出力する回路を具備することができる。そして、交流電力伝送デバイスとして、前記伝送線路を有することができる。前記伝送線路の出力端(交流電源が接続される端部と反対側の端部)は開放または短絡され、前記出力端が開放の場合には前記結合器として電界結合器を有し、前記出力端が短絡の場合には前記結合器として磁界結合器を有する構成とすることができる。
このような構成とした場合、前記交流電源から基本波とその第二高調波を含む電力が伝送線路に供給されている間基本波及び第二高調波は反射終端で反射され、各々、伝送線路に定在波を生じる。
しかしながら、出力端が終端開放の場合、電圧は当該出力端で自由端反射されるため、伝送線路上の電圧の基本波の節の点は、第二高調波では必ず腹となる。従って、出力端が終端開放の場合に、受電装置の結合器を電界結合器とすれば、基本波の節の部分でも第二高調波では腹となっており、電界結合により電力を受電できる。
一方、出力端が終端短絡の場合、電流は当該出力端で自由端反射されるため、伝送線路上の電流の基本波の節の点は、第二高調波では必ず腹となる。従って、出力端が終端短絡の場合に、受電装置の結合器を磁界結合器とすれば、基本波の節の部分でも第二高調波では腹となっており、磁界結合により電力を受電できる。
したがって、送電装置側の伝送線路の終端の状態(開放又は短絡)に合わせて受電装置の結合器を選択(電界結合器又は磁界結合器)することにより、定在波に起因した受電装置の設置位置制限を緩和し、安定した電力供給が可能となる。なお、特に受電装置に何ら新たな構成を付加することがないため、受電装置の単価が上がらず、コスト負担が小さい。なお、前記交流電源の出力電力は少なくとも基本波とその第二高調波含むが、さらに高次の高調波や変調波などその他の周波数成分も含んでいてもよい。
なお、従来から結合器には、ダイポールアンテナにみられるような電界結合器、あるいはループアンテナにみられるような磁界結合器が知られている。これらの結合器は、各々主に電界と結合するか、主に磁界と結合するが、決して電界結合器は全く磁界を受けない、あるいは磁界結合器は全く電界を受けないわけではない。したがって、電界結合器が電界結合により受電する、または磁界結合器が磁界結合により受電するとは、受電電力が主として電界、または磁界結合により伝送されることを意味している。
また、本実施形態の電子棚札システムは、前記伝送線路(交流電力伝送デバイス)の出力端に、当該伝送線路とインピーダンス整合した電力回生装置を接続した構成とすることができる。
このような構成とした場合、交流電源から伝送線路に供給された電力のうち、受電装置で消費されなかった未使用電力が出力端まで到達しても、当該電力は電力回生装置で電力として回収されるので、熱として消費されることはない。かかる場合、受電装置に新たな構成を加える必要がないため、受電装置の単価を上げずに、電力利用効率のよい電子棚札システムを提供することができる。さらに、電力回生装置は伝送線路とインピーダンス整合させているため、伝送線路内での定在波の発生は抑制され、電子棚札ユニットの設置位置制限を緩和した電子棚札システムを提供することができる。
さらに本実施形態の電子棚札システムにおいては、前記交流電源は、直流電力から交流電力を発生させる交流電源であってもよい。そして、前記電力回生装置は少なくとも整流装置を含み、前記整流装置の入力は、前記伝送線路の出力端に接続され、前記整流装置の出力は、前記交流電源の入力に接続されていてもよい。
そうすれば、伝送線路を伝送し、出力端に出力される未使用電力は、電力回生装置内部の整流装置に入力され、直流電力に変換される。この整流装置の出力は交流電源の入力に接続され、交流電源を駆動する電力の一部として使用される。すなわち、電力回生装置により回生した電力を、容易に交流電源を駆動する電力に加えて用いることができ、電力利用効率のよい電子棚札システムを提供できる。
また、本実施形態の電子棚札システムは、前記電力回生装置として、前記交流電源と前記伝送線路の間に少なくとも二つの入力端子を有する合成器を配置することができる。そして、前記交流電源の出力を前記合成器の一つの入力端子に接続し、前記伝送線路の出力端を前記合成器の前記入力端子と異なる入力端子に接続し、前記合成器の出力端子を前記伝送線路の入力端に接続してもよい。
そうすれば、伝送線路を伝送し、出力端に出力される未使用電力は合成器に入力され、交流電源の出力と合成器で合成されて、伝送線路の入力端に再び入力される。すなわち、電力回生装置により回生した電力を容易に伝送線路の入力端に加えて用いることができ、電力利用効率のよい電子棚札システムを提供できる。
また、本実施形態の電子棚札システムは、前記交流電源と前記合成器の間か、または前記伝送線路の出力端と前記合成器の間の、少なくとも一方、または両方に移相器を設けてもよい。
そうすれば、伝送線路出力端から出力される未使用電力と、交流電源の出力の位相が一致していない場合でも、移相器を調整することにより、位相を合わせて合成器に入力でき、未使用電力を効率よく回生できる。したがって、電力利用効率のよい電子棚札システムを提供できる。
また、本実施形態の電子棚札システムは、前記伝送線路が、平行、かつ等間隔に保持された二本の導線を絶縁体で被覆した平行二線式伝送線路とすることができる。
本実施形態によれば、同軸ケーブルなどと異なり、伝送線路として特に平行二線式伝送線路を用いることにより、伝送線路から漏洩する電界、または磁界が伝送線路近傍で大きく、それらの漏洩電磁界を介した非接触電力伝送を容易に行うことができる。すなわち、電子棚札ユニットの電力制限を緩和し、かつ、感電やショートの危険性を軽減した、電子棚札システムを提供することができる。
なお、前述の通り、なお、入力端などは絶縁被覆されないこともあるが、例えば他の端部は絶縁被覆されていてもよいし、絶縁被覆されていなくてもよい。入力端においても、誘導結合や容量結合方式を取って、絶縁被覆を通して交流電源で発生した交流電力を平行二線式伝送線路に入力してもよい。すなわち、使用上、感電を引き起こす危険性のある部分が絶縁被覆されていればよい。
また、本実施形態の電子棚札システムにおいては、前記交流電源が、少なくとも基本波とその第二高調波を含む電力を出力する回路を具備することができる。そして、交流電力伝送デバイスとして、電磁波伝達シートを備えることができる。電磁波伝達シートの第2の短辺(交流電源が接続する短辺と異なる短辺)は開放または短絡され、前記第2の短辺が開放の場合には結合器として電界結合器を有し、前記第2の短辺が短絡の場合には前記結合器として磁界結合器を有することができる。
このように構成した場合、前記交流電源から、基本波とその第二高調波を含む電力が電磁波伝達シートに供給されている間、基本波と第二高調波は反射終端で反射され、電磁波伝達シートの長辺に沿って定在波を生じる。
しかしながら、前記第2の短辺が終端開放の場合、電圧は自由端反射されるため、電磁波伝達シートの長辺に沿った方向では電圧の基本波の節の点は、短辺の節と重複しない限り第二高調波の腹となる。従って、前記第2の短辺が終端開放の場合、受電装置の結合器を電界結合器とすれば、点状に僅かに存在する基本波の節と第二高調波の節の重複する位置を除いて、電界結合により電力を受電できる。
一方、前記第2の短辺が終端短絡の場合、電流は自由端反射されるため、電磁波伝達シートの長辺に沿った方向では電流の基本波の節の点は、短辺の節と重複しない限り第二高調波の腹となる。従って、前記第2の短辺が終端短絡の場合、受電装置の結合器を磁界結合器とすれば、点状に僅かに存在する基本波の節と第二高調波の節の重複する位置を除いて、磁界結合により電力を受電できる。
したがって、送電装置側の電磁波伝達シートの反射終端の状態(開放又は短絡)に合わせて受電装置の結合器を選択(電界結合器又は磁界結合器)することにより、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和できる。すなわち、電子棚札ユニットのシートの長辺に平行な方向の設置位置制限と動作不安定性を緩和した、電子棚札システムを提供することができる。
また、本実施形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスとして電磁波伝達シートを備え、第2の短辺を、少なくとも2つの部分(第1部分及び第2部分)で構成することができる。そして、第2の短辺には電磁波吸収媒体を備えない構成とすることができる。なお、その他の端辺も電磁波吸収体を備えない構成としてもよい。
かかる場合、電磁波伝達シートの長辺に平行に、第1の短辺から第2の短辺に向かってシート内を進行する電磁波は、前記第2の短辺で反射され、進行波と反射波により、少なくとも電磁波伝達シートの長辺に沿って定在波を生じる。
ここで、第1の短辺の近傍に設けられた入力部から入力され第2の短辺の第1部分に向かう電磁波と、第1部分で反射した反射波とで形成される第1の定在波群とする。同様に、入力部から入力され第2の短辺の第2部分に向かう電磁波と、第2部分で反射した反射波とで形成される第2の定在波群とする。
そして、第1の定在波群の腹の位置と、第2の定在波群の腹の位置と、の電磁波伝達シートの長辺に略平行な方向の間隔が、該シート内を長辺に略平行に伝搬する電磁波の波長の1/4に略等しくなる構成とし、結合器は、第1の定在波群と第2の定在波群の両方から電力を受電する構成とすることができる。
このように、第1の定在波群の腹の位置と、第2の定在波群の腹の位置と、の電磁波伝達シートの長辺に略平行な方向の間隔が、該シート内を長辺に略平行に伝搬する電磁波の波長の1/4に略等しくなる構成とした場合、該シートの長辺に略垂直な線分上の位置では、一方の定在波群が腹の場合、他方は節となる。したがって、この、該シートの長辺に略垂直な線分上で相補的に並ぶ腹と節により、該シートの長辺に略垂直な線分上で平均化して観察する、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一は緩和される。
さらに、前記シートの長辺に沿って配置される電子棚札ユニットに搭載される受電装置内の結合器は、少なくとも前記第1の定在波群と、前記第2の定在波群と、の両方から電力を受電する構成を取るため、例え節の部分に結合器の一部分が掛っていても、該シートの長辺に略垂直な線分上の位置に相補的に並ぶ腹から電力を受電することにより、送電装置から電力を受け取ることができる。
したがって、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和できる。すなわち、電子棚札ユニットのシートの長辺に平行な方向の設置位置制限と、動作不安定性を緩和した、電子棚札システムを提供することができる。
なお、定在波の位置とは、定在波の最大振幅を与える腹の位置や最小振幅を与える節の位置を基準として測定した位置のことを指す。したがって、シートの長辺に垂直な線分上で位置が同一な定在波群とは、シートの長辺を軸とした場合に腹や節の位置座標が一致する一連の定在波を指す。
また、交流電源から出力される電磁波の周波数は単一周波数とは限らず、周波数スペクトルは広がり、すなわち帯域幅を持っていてもよいため、上記の定在波においても、腹や節の位置が幅を持ったり、節では振幅が0にならなかったりする。このような状況を鑑みて、定在波群の位置が略同一と表記した。
なお、上記第1の定在波群の腹の位置と、第2の定在波群の腹の位置と、の電磁波伝達シートの長辺に略平行な方向の間隔が、該シート内を長辺に略平行に伝搬する電磁波の波長の1/4に略等しくなる構成は、例えば、以下のようにして実現してもよい。
第1の定在波群を生じる第1部分は短絡終端とし、かつ、前記第2の定在波群を生じる第2部分は開放終端とし、第2の短辺は、電磁波伝達シートの長辺に略垂直にすることができる。
短絡終端と開放終端では、進行波に対する反射波の位相が180°異なり、さらに第2の短辺は、電磁波伝達シートの長辺に略垂直に構成されるため、第1の定在波群と第2の定在波群とは腹と節の位置を基準とする定在波の位置が、該シートの長辺に略平行に測って1/4波長ずれる。すなわち、第1の定在波群の腹の位置と、第2の定在波群の腹の位置と、の電磁波伝達シートの長辺に略平行な間隔が、該シート内を長辺に略平行に伝搬する電磁波の波長の1/4に略等しくなる構成が実現される。
また、以下のようにして実現してもよい。第2の短辺の第1部分及び第2部分は、同一の種類の反射終端(短絡終端又は開放終端)とし、かつ、電磁波伝達シートの長辺方向の位置であって、入力部が設けられた位置を入力位置とすると、入力位置から第1部分までの距離と、入力位置から第2部分までの距離を異ならせてもよい。具体的には、これらの距離の差が、電磁波伝達シートの長辺に略平行に該シート内を進行する電磁波の波長の1/4に略等しくすることができる。
なお、同一の種類の反射終端とは、定在波を生じさせる当該端部に入射する進行波の位相に対して前記端部において生じる反射波の位相が十分な精度で同一である、寄生抵抗などの入射波の減衰が十分小さい反射終端を意味する。
また、電磁波の波長の1/4に略等しいとは、本実施形態の効果を得るのに十分な精度である、位相換算で前後20°以内、即ち前後1/18波長以内に収まることを指す。
なお、以上の通り、値に幅を持たせる理由は、短絡終端や開放終端を作成した場合に寄生容量や寄生インダクタンス、寄生抵抗などの寄生回路素子成分により、理想的な短絡終端や開放終端を実際には作製できないためである。また、電磁波伝達シートの作製公差などにより、完全に長さを規定できない場合や、高周波電源から、例えば実施の形態に詳述する変調波を入力した場合に搬送波成分で波長を規定せざるをえないような場合があるためである。
定在波の腹と節は1/4波長ごとに交互に現れるため、上述のように構成した場合、第1の定在波群の位置と、第2の定在波群の位置と、の電磁波伝達シートの長辺に略平行な方向の間隔が、該シート内を長辺に略平行に伝搬する電磁波の波長の1/4に略等しくなる構成を実現できる。
なお、前記2つの部分の、前記入力部を設けた端部から長辺に平行に測った長さの差異は、該シートの長辺に平行に該シート内を進行する電磁波の波長の半分の、負ではない整数倍に、該波長の1/4を加えた長さに略等しい場合において、同様の効果を得ることができるが、前記の負ではない整数を特に0とすること、即ち、波長の1/4に略等しくすることにより、電磁波伝達シートの端部の幅を短くできるため、電磁波伝達シートの製造コストを低減でき、その結果電磁波伝送装置の製造コストを低減できる。
また、本実施形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスとして電磁波伝達シートを備え、前記電磁波伝達シートの4つの端辺が短絡終端で構成されてもよい。
そうすれば、電磁波伝達シートの4つの端辺が短絡終端で構成することにより、短絡された4つの端辺からは電磁波が漏洩しない。したがって、周辺環境への電磁波漏洩による影響を少なくできる。また、周辺環境の変化による電磁波伝達シート内の電磁波伝搬の変化も抑制できる。さらに容易に作製しやすいため、低コストで、電磁波強度の不均一を緩和することにより電子棚札ユニットの設置位置制限と動作不安定性を緩和した、電子棚札システムを提供することができる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図1は本実施の形態を説明する模式図である。本実施の形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスとして伝送線路を用い、その入力端と異なる端部は電磁波吸収媒体を備えず、開放終端となっている。
図中左端に交流電源101が配置され、その出力は伝送線路102の入力端103に接続されている。伝送線路102の右端(入力端103と反対側の端部)は出力端104となっており、接地端子105と接続されることなく、開放されている。そして、伝送線路102に沿って2つの電子棚札ユニット120a、120bが配置されている。なお、配置される電子棚札ユニットの数は、単数でもよいし、3つ以上であってもよい。
各電子棚札ユニット120a、120bには受電装置106a、106b各々が搭載される。各受電装置106a、106bには、結合器107a、107b各々が搭載される。
伝送線路102を伝搬する交流電力は、伝送線路102の絶縁被覆(不図示)を通し、各結合器107a、107bを介して、各受電装置106a、106bに受電される。そして、各受電装置106a、106bから、各電子棚札ユニット120a、120bに給電される。したがって、レール状直流給電システムに見られる感電やショートの危険性が排除される。また、各電子棚札ユニット120a、120bの電源として電池等を使用する場合に比べて、電力制限を緩和することができる。また、電池使用に伴う危険物廃棄処理からも解放される。
本実施形態の電子棚札ユニット120a、120bは、この給電電力を電源として動作し、棚札情報の表示、データの送受信、あるいはポップ広告の表示、人感センサ等のセンサの動作とデータ取得といった動作を行うことができる。このように電子棚札ユニットの機能拡張により、極めて有用なマーケティングリサーチやプロモーションの機会を得ることができる。
なお、入力端103などは絶縁被覆されないこともあるが、入力端103においても、誘導結合や容量結合方式を取って、絶縁被覆を通して交流電源101で発生した交流電力を入力してもよい。また、出力端104は絶縁被覆されていてもよいし、絶縁被覆されていなくてもよい。すなわち、使用上、感電を引き起こす危険性のある部分が絶縁被覆されていればよい。
なお、交流電源101は、少なくとも基本波とその第二高調波を含む電力を出力する回路108を搭載することができる。そして、少なくとも基本波とその第二高調波を含む交流電力は、入力端103を通して伝送線路102に入力される。ここで、出力電力は少なくとも基本波とその第二高調波含むが、さらに高次の高調波や変調波などその他の周波数成分も含んでいてもよい。
伝送線路102に沿って配置される電子棚札ユニット120a、120bの順序(入力端103から出力端104に向かって現れる順序)によらず、受電電力を適切な範囲に収めるため、受電装置106a、106bに同じ種類の装置を使用するならば、その受電電力は伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、出力端104に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を単に終端抵抗器で熱として消費してしまうと、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、伝送線路102の出力端104を開放終端としている。
ここで、伝送線路102上に生じている電圧の基本波成分と第二高調波成分の節と腹の位置関係を明示するため、電圧の最大値と最小値のグラフを図2に示した。横軸は伝送線路102上の位置を示し、左端が伝送線路102の入力端103の位置に相当し、右端が伝送線路102の出力端104の位置に相当する。縦軸は電圧を任意単位で示している。
なお、電子棚札ユニット120a、120bを配置した場合、伝送線路102上の電力、電圧、電流分布に影響を与えるが、本実施の形態の説明では無視している。この理由は、電子棚札ユニットの受電電力は伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくしていると仮定しているためである。例えば、電子棚札ユニット1個の受電電力が100mW、一本の伝送線路102上に20個の電子棚札ユニットが配置されている場合、20個の電子棚札ユニットで受電される電力は2Wとなる。一方で、伝送線路の入力端103から入力する交流電力を10Wとすれば、上記の条件を満足することは言うまでもない。
ここで、電圧は開放終端で自由端反射されるため、図2に示すように、伝送線路102の出力端104から入力端103に向かって、まず1/4波長戻った点に節が現れ、その後、その点から1/2波長ごとに節が現れる。一方、腹はまず出力端104に現れ、その後、その点から1/2波長単位ごとに現れる。
基本波とその第二高調波を含む電力が伝送線路102に供給されている場合、電圧の基本波は上記の通り振る舞う。第二高調波の波長は基本波波長に対して1/2となる。したがって、電圧の第二高調波の腹は、伝送線路102の出力端104から入力端102に向かって、まず出力端104に現れ、その後、基本波の波長に換算して1/4波長ごとに現れる。すなわち、伝送線路102上の電圧の基本波の節の点は、第二高調波では必ず腹となる。従って、受電装置106a、106bに電界結合器を備えさせておけば、基本波の節の部分でも第二高調波では腹となっており、電界結合により電力を受電できる。
進行波の場合と異なり、基本波の定在波の振幅と第二高調波の定在波の振幅の和は伝送線路102上の位置に依存して変化する。さらに基本波の定在波の振幅に対する第二高調波の定在波の振幅の比により、その位置依存性もさらに変化する。したがって、受電装置106a、106bの受電電力の位置依存性を抑制するためには、基本波の定在波の振幅に対する第二高調波の定在波の振幅の比を調整することが望まれる。
図3に、基本波の定在波の振幅に対する第二高調波の定在波の振幅の比を横軸に、伝送線路102上の位置によって変化する基本波の定在波の振幅と第二高調波の定在波の振幅の和の最大値と最小値の差を示した。なお縦軸は伝送線路102上の位置で平均化した合成振幅の値で規格化している。
図示した通り、基本波の定在波の振幅に対して、第二高調波の定在波の振幅を0.43倍から1.36倍にすることが望ましい。これにより、基本波と第二高調波の定在波の合成振幅の最大値と最小値の差は平均値の1.1倍以内に抑えられる。さらに望ましくは、基本波の定在波の振幅に対して、第二高調波の定在波の振幅を0.57倍から0.95倍にするとよい。これにより、基本波と第二高調波の定在波の合成振幅の最大値と最小値の差は平均値の1倍以内に抑えられる。以上の構成により、効果的に電子棚札ユニットの受電電力の位置依存性を抑制することができる。
以上の通り、本実施の形態によれば、電力制限を緩和し、かつ、感電やショートの危険性を軽減した電子棚札システムを提供することができる。
なお、本実施形態おいては、出力端104で反射され、入力端103に戻ってきた反射電力は、交流電源101に戻すことができる。さらに、上記反射電力を、サーキュレータなどのデバイスを使用して進行波電力と分離、回収することも可能である。このような構成にすると、さらに電力利用効率を高めることができる。
なお、少なくとも基本波とその第二高調波を含む電力を出力する回路108は、周波数逓倍回路を使用すれば容易に構成できるため、ここでは特にその実現方法を詳述することはしない。
また、電界結合器と磁界結合器についても、従来例などに詳述されているため、ここでは特にその実現方法を詳述することはしない。
伝送線路102に絶縁被覆されたフィーダー線など既存規格の平行二線式伝送線路を用いれば、伝送線路102近傍の漏洩電磁界を容易に結合器107a、107bでピックアップできる。同じく広く普及している同軸ケーブルと比較した場合、同軸ケーブルは信号線がシールドに覆われており、基本的に電磁界が漏えいしない構造となっているが、平行二線式伝送線路の場合、導体からなる平行2線を伝搬する電磁界がシールドされることなく線路近傍に漏洩しているからである。さらに交流電力を伝搬する伝送線路のうち、平行二線式伝送線路は、同軸ケーブルと比較して線路による電力の減衰が小さい。この広く普及している平行二線式伝送線路を使用すれば、線路そのものが低コストのため、システムも低コストで構築できる。
また、このように伝送線路から漏洩する電磁界を介して給電することにより、例えば平行二線式伝送線路の絶縁被覆を透過して受電装置に給電できる。このため、給電時の感電やショートといった危険性の少ない電力伝送装置を提供できる。さらに非接触で給電できるため、受電装置と伝送線路が摩擦すること接触することによる摩耗や損傷などの劣化を防止することもできる。
なお、以上記載した実施の形態において図示していないが、インピーダンス整合回路やアイソレータ、保護回路、制御回路などは必要に応じて適宜挿入される。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図4は本実施の形態を説明する模式図である。本実施の形態の電子棚札システムは、交流電力伝送デバイスとして伝送線路を用い、その入力端と異なる端部は電磁波吸収媒体を備えず、第2の実施の形態と異なり、短絡終端となっている。
図中左端に交流電源101が配置され、その出力は伝送線路102の入力端103に接続されている。伝送線路102の右端(入力端103と反対側の端部)は出力端104となっており、例えば図示の通り接地するなどの方法で短絡されている。伝送線路102が平行二線式伝送線路の場合は、その二線を短絡すればよい。
ここで、伝送線路102上に生じている電流の基本波成分と第二高調波成分の節と腹の位置関係を明示するため、電流の最大値と最小値をグラフとして図5に示した。横軸は伝送線路102上の位置を示し、左端が伝送線路102の入力端103の位置に相当し、右端が伝送線路102の出力端104の位置に相当する。縦軸は電流を任意単位で示している。なお、電子棚札ユニット120a、120bを配置した場合、伝送線路102上の電力、電圧、電流分布に影響を与えるが、本実施の形態の説明では無視している。この理由は、受電装置106a、106bの受電電力は、伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくしていると仮定しているためである。
電流は短絡終端で自由端反射されるため、伝送線路102の出力端104から入力端103に向かって、まず1/4波長戻った点に節が現れ、その後、その点から1/2波長ごとに節が現れる。一方、腹はまず出力端104に現れ、その後、その点から1/2波長単位ごとに現れる。
基本波とその第二高調波を含む電力が供給されている場合、電流の基本波は上記の通り振る舞う。第二高調波の波長は基本波波長に対して1/2となる。したがって、電流の第二高調波の腹は、伝送線路102の出力端104から入力端103に向かって、まず出力端104に現れ、その後、基本波の波長に換算して1/4波長ごとに現れる。すなわち、伝送線路102上の電流の基本波の節の点は、第二高調波では必ず腹となる。従って、受電装置106a、106bに磁界結合器を備えさせておけば、基本波の節の部分でも第二高調波では腹となっており、磁界結合により電力を受電できる。
本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図6は本実施の形態を説明する模式図である。本実施の形態の電力伝送装置では、交流電源101は少なくとも2つの直流入力端子306a、306bを有し、直流電力により駆動されて交流電力を出力する。出力された交流電力は、伝送線路102の入力端103に入力され、伝送線路102を伝搬する。伝送線路102に沿って1つまたは複数の電子棚ユニットが配置される。図示する例の場合、3つの電子棚札ユニット120a、120b、120cが配置されているが、これに限定されない。各電子棚札ユニット120a、120b、120cには、受電装置106a、106b、106c各々が搭載される。そして、各受電装置106a、106b、106cには、結合器107a、107b、107c各々が搭載される。
伝送線路102を伝搬する電力は伝送線路102の近傍に配置された結合器107a、107b、107c各々を介して、受電装置106a、106b、106c各々に受電される。その後、受電装置106a、106b、106c各々から、電子棚札ユニット120a、120b、120c各々に給電される。
一方、未使用のまま(どの受電装置にも受電されないまま)伝送線路102の出力端104まで伝搬した電力は、出力端104に接続した電力回生装置301の整流装置302に入力され、整流される。そして、整流装置302は、整流した直流電力を端子303から出力する。端子303は配線304を介して交流電源101の直流入力端子306bに接続されている。なお、伝送線路102と電力回生装置301はインピーダンス整合させている。
図示しない直流電源から配線305及び直流入力端子306aを介して交流電源101に供給される直流電力と、配線304及び直流入力端子306bを介して電力回生装置301から供給される直流電力とにより、交流電源101は駆動される。ここで、伝送線路102と電力回生装置301(整流装置302)はインピーダンス整合させているので、出力端104における反射電力は抑制される。したがって、定在波を抑制でき、結果、受電装置の設置位置制限を緩和した電力伝送装置を提供することができる。
伝送線路102に沿って配置される受電装置106a、106b、106cの順序(入力端103から出力端104に向かって現れる順序)によらず、受電電力を適切な範囲に収めるため、受電装置106a、106b、106cに同じ種類の装置を使用するならば、その受電電力は伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、出力端104に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を単に終端抵抗器で熱として消費してしまうと、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電力回生装置301の整流装置302で回収して、交流電源の駆動電源に加えることで電力利用効率の低下を抑制することができる。
この際、図6の通り、伝送線路102の入力端103と出力端104を近接させることにより、交流電源101と電力回生装置301を近接配置することが可能となり、交流電源101と電力回生装置301間の配線が容易になる。さらには交流電源101と電力回生装置301を一筺体に収め、システムの小型化と、筺体個数の減少によるシステムの低価格化を図ることができる。ここで、近接とは80cm以内のことを意味する。
また、本実施形態も同様に、複数存在し得る受電装置に特段特別な構成を追加することなく、送電装置のみの工夫で所望の効果を実現しているため、受電装置の単価を上げずに、また、受電装置の波長依存性を緩和した電力伝送装置を提供することができる。
伝送線路102は2本線を図示しているように、フィーダー線など既存規格の平行二線式伝送線路を用いることができる。このような伝送線路を用いれば、伝送線路近傍の漏洩電磁界を容易に結合器でピックアップできる。同じく広く普及している同軸ケーブルと比較した場合、同軸ケーブルは信号線がシールドに覆われており、基本的に電磁界が漏えいしない構造となっているが、平行二線式伝送線路の場合、導体からなる平行2線を伝搬する電磁界がシールドされることなく線路近傍に漏洩しているからである。さらに交流電力を伝搬する伝送線路のうち、平行二線式伝送線路は、同軸ケーブルと比較して線路による電力の減衰が小さい。この広く普及している平行二線式伝送線路を使用すれば、線路そのものが低コストのため、システムも低コストで構築できる。
また、このように伝送線路から漏洩する電磁界を介して給電することにより、例えば平行二線式伝送線路の絶縁被覆を透過して受電装置に給電できる。このため、給電時の感電やショートといった危険性の少ない電力伝送装置を提供できる。さらに非接触で給電できるため、受電装置と伝送線路が摩擦すること接触することによる摩耗や損傷などの劣化を防止することもできる。
なお、図示していないが、インピーダンス整合回路やアイソレータ、保護回路、制御回路などは必要に応じて適宜挿入される。また、交流電源101、電力回生装置301、配線305を介して交流電源101に直流電力を供給する直流電源を含め、必要に応じて装置は一つの筺体に収められる。
(第5の実施の形態)
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図7は本実施の形態を説明する模式図である。本実施の形態の電力伝送装置では、交流電源101の出力は電力回生装置301の入力端子403に接続される。電力回生装置301は少なくとも移相器402a、402bと、合成器401とを含む。入力端子403から入力された電力は、移相器402aを通した後、合成器401から出力される。合成器401から出力された交流電力は、伝送線路102の入力端103に入力され、伝送線路102を伝搬する。伝送線路102に沿って1つまたは複数の電子棚ユニットが配置される。図示する例の場合、4つの電子棚札ユニット120a、120b、120c、120dが配置されているが、これに限定されない。各電子棚札ユニット120a、120b、120c、120dには、受電装置106a、106b、106c、106d各々が搭載される。そして、各受電装置106a、106b、106c、106dには、結合器107a、107b、107c、107d各々が搭載される。
伝送線路102を伝搬する電力は、伝送線路102の近傍に配置された結合器107a、107b、107c、107d各々を介して、受電装置106a、106b、106c、106d各々に受電される。その後、受電装置106a、106b、106c、106d各々から、電子棚札ユニット120a、120b、120c、120d各々に給電される。
一方、未使用のまま(どの受電装置にも受電されないまま)伝送線路102の出力端104まで伝搬した電力は、出力端104と接続した電力回生装置301に入力される。なお、伝送線路102と電力回生装置301はインピーダンス整合させている。
出力端104を介して電力回生装置301に入力された電力は、移相器402bを通して合成器401に入力される。そして、合成器401は、交流電源101から移相器402aを介して入力された電力に、出力端104及び移相器402bを介して入力された電力を重畳(合成)させ、合成後の電力を伝送線路102の入力端103に入力する。
移相器402a、402bは、各々交流電源の出力と伝送線路102の出力端104から出力される電力の位相を揃える。なお、移相器402a、402bの少なくともいずれか一方があればよく、両方を備えなくてもよい。但し、移相器402a、402bの両方を備えておくと位相の調整は容易になる。移相器を用いずに、伝送線路102の長さを調節することでも位相を揃えることはできるが、その場合伝送線路102の長さが制限される。
ここで、伝送線路102と電力回生装置301はインピーダンス整合させているので、出力端104における反射電力は抑制される。したがって、定在波を抑制でき、結果、受電装置の設置位置制限を緩和した電力伝送装置を提供することができる。
伝送線路102に沿って配置される受電装置の順序(入力端103から出力端104に向かって現れる順序)によらず、受電電力を適切な範囲に収めるため、受電装置106a、106b、106c、106dに同じ種類の装置を使用するならば、その受電電力は伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、出力端104に到達する未使用電力は大きくなる。このような大きな電力を単に終端抵抗器で熱として消費してしまうと、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電力回生装置301を通して回収して、交流電源101の出力に重畳して再利用することにより電力利用効率の低下を抑制することができる。
また、複数存在し得る受電装置としては特段工夫することなく、送電装置のみの工夫であるため、受電装置の単価を上げずに、また、受電装置の波長依存性を緩和した電力伝送装置を提供することができる。
なお、図示していないが、インピーダンス整合回路やアイソレータ、保護回路、制御回路などは必要に応じて適宜挿入される。また、交流電源101、電力回生装置301などの装置は、必要に応じて一つの筺体に収められる。
(第6の実施の形態)
以下、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図8は本実施の形態を説明する模式図である。図中左端に配置された交流電源101は、少なくとも基本波とその第二高調波を含む電力を出力する回路108を搭載する。ここで、出力電力は少なくとも基本波とその第二高調波含むが、さらに高次の高調波や変調波などその他の周波数成分も含んでいてもよい。
交流電源101の出力は配線501を通して、伝達する電磁波の進行方向に平行に延在する長辺(端辺)を有し、伝達する電磁波の進行方向に対して対直に延在する短辺(端辺)を有する帯状の電磁波伝達シート502の入力部503に接続される。入力部503は、電磁波伝達シート502の1つの短辺(第1の短辺)の近傍に設けられている。電磁波伝達シート502の平面形状は、第1の実施形態で説明した電磁波伝達シートと同様である。
入力部503から入力された電磁波は、入力部503から放射状に進行するが、本実施の形態では、簡単のため、電磁波伝達シート502の短辺の長さは長辺の長さより十分短いとして、主として図8に示したy方向(長辺に平行な方向)に進行するものとして扱う。なお、電磁波伝達シート502の短辺の長さは長辺の長さより十分短いとして扱えない場合は、長辺や短辺に対して斜めに進行する電磁波も十分大きな成分を有するが、一方で長辺に平行に進行する電磁波成分も十分大きく、本発明を適用できることは言うまでもない。また、斜めに進行する電磁波の成分が十分大きい場合、定在波はより抑制されるため、定在波に関する問題も生じにくい。
本実施形態では、このy方向を電磁波の進行方向と称する。電磁波伝達シート502の電磁波の進行方向に沿って1つまたは複数の電子棚ユニットが配置される。図示する例の場合、2つの電子棚札ユニット120a、120bが配置されているが、これに限定されない。各電子棚札ユニット120a、120bには、受電装置106a、106b各々が搭載される。そして、各受電装置106a、106bには、結合器107a、107b各々が搭載される。
電磁波伝達シート502を伝搬する電力は、結合器107a、107b各々を介して、受電装置106a、106b各々に受電される。そして、受電装置106a、106b各々から、電子棚札ユニット120a、120b各々に給電される。
なお、特許文献5に記載がある通り、電磁波伝達シート502においては、表面から、樹脂等からなる保護層、即ち絶縁フィルム、その下にメッシュ状導体部、誘電体、グランド面として配置されたシート状導体部、そして最下層に樹脂等からなる保護層、即ち絶縁フィルムを配置することができる。したがって、該電磁波伝達シート502は、端部を除いて絶縁被覆された交流電力伝送デバイスに該当する。但し、最下層の絶縁フィルムが無く、グランド面として配置されたシート状導体部が露出している場合でも、グランドであるため、感電やショートの危険性を回避できるが、デバイスの保護等の観点から絶縁フィルムがあることが望ましい。ここで、グランド面は前述の接地部分に当たり、前述のように絶縁被覆されていてもよいし、絶縁被覆されていなくてもよい。
受電装置106a、106bは、電子棚札ユニット120a、120bに搭載されている。そして、受電装置106a、106bは、受電電力を電子棚札ユニット120a、120bに給電する。このため、本実施形態の場合、電子棚札ユニットの電源として例えば電池を使用した場合に発生し得る電力制限の問題を緩和することができる。さらに、電池を使用する必要がないため、電池使用に伴う危険物廃棄処理からも解放される。
この給電電力を電源として、本実施形態の電子棚札ユニットは動作し、棚札情報の表示、データの送受信、あるいはポップ広告の表示、人感センサ等のセンサの動作とデータ取得といった動作を行うことができる。このように電子棚札ユニットの機能拡張により、極めて有用なマーケティングリサーチやプロモーションの機会を得ることができる。
ここで、電磁波伝達シート502に沿って配置される電子棚札ユニット120a、120bの順序(入力端503から第2の短辺504に向かって現れる順序)によらず、受電電力を適切な範囲に収めるためには、受電装置106a、106bの受電電力は電磁波伝達シート5002を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、図8における電磁波伝達シートの第2の短辺504に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を単に電磁波吸収媒体により吸収・廃棄すると、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電磁波伝達シート502の第2の短辺504を反射終端とし、帯状の電磁波伝達シート502の長辺も、おなじく反射終端とする。
また、短辺の長さは、電磁波伝達シート502内を伝達する電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しくすることが望ましい。これにより、電磁波伝達シート502の各長辺において電磁波が反射されることにより横幅方向(短辺に平行な方向)で共振状態となり、電磁波伝達シート502の電磁界の横幅方向(短辺に平行な方向)の分布が安定する。したがって、電磁波伝達シート502から漏洩する電界、または磁界分布も安定する。なお、略等しくすると表現した理由は、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の周波数スペクトルは広がりを持つ、すなわち帯域幅を持っていてもよく、その場合には電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波が単一波長では表せないためである。このような場合は、おおむね周波数帯域の中心周波数に該当する波長を代表させて、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数に対応する波長を基本としてもよい。なお、電磁波伝達シート502の各長辺において電磁波が反射されることにより横幅方向(短辺に平行な方向)で共振状態とするために、電磁波伝達シート502の2つの長辺の終端方法を一方は開放、他方は短絡と異なる反射終端とし、短辺の長さ(2つの長辺間の距離)を電磁波の1/4波長の奇数倍に略等しくしてもよい。この場合、上記と同様の効果が得られる。
また、電磁波伝達シート502の第1の短辺(近傍に入力部503を設けた短辺)を除くその他の辺(2つの長辺及び第2の短辺504)すべては、短絡してもよい。すなわち、少なくとも第2の短辺504と2つの長辺は、反射終端として短絡終端を選択することができる。この場合、短絡された辺からは電磁波が漏洩しない。したがって、周辺環境への電磁波漏洩による影響を少なくできる。また、周辺環境の変化による電磁波伝達シート502内の電磁波伝搬の変化も抑制できる。したがって、周辺環境を気にすることなく、容易に電磁波伝達シート502を設置する位置を決定し、設置することができる。
また、第1の短辺(近傍に入力部503を設けた短辺)も短絡させてもよい。その場合、交流電源101から入力部503を通して電磁波伝達シート502に効率よく電力を送るため、インピーダンス整合するように電磁波伝達シート502上の入力部503の配置を第2の短辺504の方に向かって移動させ、さらに必要に応じてスタブなどの整合回路を設けるといった設計を行うことが望ましい。このような設計をすれば、電力伝送装置の動作に問題を生じることなく、電磁波伝達シート502の第1の短辺(近傍に入力部503を設けた短辺)も短絡でき、さらに周辺環境と電磁波伝達シート502内の電磁波伝搬の相互依存性を弱くすることができる。
ここで、電磁波伝達シート502に生じている電圧、または電流の基本波成分と第二高調波成分の節と腹の位置関係を明らかにするため、電圧、または電流の絶対値の一例を濃淡図として図9(a)乃至図9(c)に示した。なお、図9(a)乃至図9(c)は、第2の短辺504が開放終端の場合の電圧、または、第2の短辺504が短絡終端の場合の電流、を表している。
図9(a)は、基本波成分を表している。なお、図8に示す原点O、x方向及びy方向と、図9に示す原点O、x方向及びy方向は対応している。目盛りは基本波成分の1/4波長を単位としている。濃淡と、電圧または電流の絶対値との関係は、図9(a)右端のカラーバーに示されている通り、0から最大1までの相対値をリニアに濃淡で表現している。
図9(b)及び図9(c)は、第二高調波成分を表している。なお、これらの図は、図9(a)と同様、右上の点を原点0とし、図9(a)と同様にx方向及びy方向を定めている。また、図9(a)と同様、目盛りは基本波成分の1/4波長を単位としている。また、濃淡と、電圧または電流の絶対値との関係は、図9(a)と同様である。
なお、図9(a)乃至図9(c)は、電磁波伝達シート502のすべての部分を表しているものではなく、原点O周辺(第2の短辺504近傍)の一部分を示している。なお受電装置106a、106bを配置した場合、伝送線路502上の電力、電圧、電流分布に影響を与えるが、本実施の形態の説明では無視している。この理由は、電磁波伝達シート502を伝搬する電力より、受電装置の受電電力は十分小さいためである。
電圧は開放終端で自由端反射し、電流は短絡終端で自由端反射する。このため、第2の短辺504が開放終端の場合は、電圧の節が、また、第2の短辺504が短絡終端の場合は、電流の節が、電磁波伝達シート502の第2の短辺504(y=0)から入力部503に向かって、まず1/4波長戻った点に線状に現れ、その後、その点から半波長ごとに線状に現れる。一方、腹はまず第2の短辺504(y=0)に現れ、その後、第2の短辺504から入力部503に向かって、半波長単位ごとに現れる。y方向も同様の様相を示し、図9に示したような格子状の濃淡模様を示す。
なお、図9は電磁波伝達シート502の第2の短辺504と図8の奥側に位置する長辺が同様の自由端反射する反射終端となっている場合を示しているが、前述の2つの長辺の終端方法を一方は開放、他方は短絡と異なる反射終端とし、短辺の長さ(2つの長辺間の距離)を電磁波の1/4波長の奇数倍に略等しくした場合も、同様な状態となる。
基本波とその第二高調波を含む電力が交流電源101に搭載した回路108から電磁波伝達シート502に供給されている場合、基本波成分は上記の通り振る舞う。
図9(a)から図9(b)又は図9(c)に跨って、基本波成分の節の位置を破線a1a1´、a2a2´、a3a3´、a4a4´で示した。このうち破線a1a1´、a2a2´は、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる線状の節である。また、破線a3a3´、a4a4´は、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる線状の節である。
一方、第二高調波の波長は基本波波長に対して1/2となる。したがって、第二高調波成分の腹は、電磁波伝達シート502の第2の短辺504(y=0)から入力部503に向かって、まず第2の短辺504(y=0)に線状に現れ、その後、基本波の波長に換算して1/4波長ごとに線状に現れる。実際、図9(b)及び図9(c)にいて、基本波成分の節の位置を示す破線a1a1´、a2a2´、a3a3´、a4a4´を見ると、線状に腹が並んでいる。すなわち、電磁波伝達シート502の基本波成分の節の点は、ほぼ第二高調波成分では腹となる。
また、図9(a)から図9(b)に跨って、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる第二高調波成分の節の位置を一点鎖線b1b1´、b2b2´、b3b3´、b4b4´で示した。また、図9(a)から図9(c)に跨って、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる第二高調波成分の節の位置を一点鎖線c1c1´、c2c2´、c3c3´、c4c4´で示した。
図9(a)上でこれらの一点鎖線と破線を見ると、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる基本波成分の線状の節と、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる第二高調波成分の線状の節との交点か、または、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる基本波成分の線状の節と、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる第二高調波成分の線状の節との交点に、節の位置は点状に限定されることが分かる。これらの交点の一部を図9(a)の左上に白点601a、601b、601c、601dで示した。このように、基本波成分のみでは線状に現れていた節が、第二高調波と重畳することにより、点状に限定される。
以上、電磁波伝達シート502の第2の短辺504が開放終端の場合には、電磁波伝達シート502上の電圧が図9(a)乃至図9(c)に示すような状態となり、節が点状に限定されることとなる。このような場合に、結合器107a、107bとして電界結合器を備える本実施形態によれば、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和して、受電装置106a、106bにより電力を受電することができる。
また、電磁波伝達シート502の第2の短辺504が短絡終端の場合には、電磁波伝達シート502上の電流が図9(a)乃至図9(c)に示すような状態となり、節が点状に限定されることとなる。このような場合に、結合器107a、107bとして磁界結合器を備える本実施形態によれば、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和して、受電装置106a、106bにより電力を受電することができる。
このように、本実施形態では、第2の短辺504の終端が開放終端か、または、短絡終端かに応じて、結合器107a、107bの構成を電界結合器とするか、または、磁界結合器とするかを選択することで、わずかに存在する点状の節を除いた電磁波伝達シート104上の略全面で電力を受電できる。すなわち、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。また、受電装置106a、106bの設置位置を大きく制限されないという効果もある。
さらに本実施の形態では、送電装置側の工夫により上記の効果を得ており、受電装置側は結合器の種類を選択する以外に何ら特別な構成を必要としないため、受電装置の単価上昇を抑制できる。特に複数の受電装置を設置する場合でも、受電装置の単価上昇が抑制されるため、電力伝送装置全体の価格の上昇を抑制できる。
なお、電磁波伝達シート502の第2の短辺504や他の端辺は開放終端か、短絡終端かにかかわらず、絶縁被覆してもよいし、絶縁被覆しなくてもよい。特に短絡終端の場合、接地部分にも該当するため、ショートや感電の危険性はない。入力部においても、誘導結合や容量結合方式を取って、絶縁被覆を通して交流電源で発生した交流電力を入力してもよい。
なお、第2の短辺504で反射され、入力部503に戻ってきた反射電力は、交流電源101に戻すことができる。さらに前記反射電力を、サーキュレータなどのデバイスを使用して進行波電力と分離、回収することも可能である。このような構成にすると、さらに電力利用効率を高めることができる。
以上の通り、本発明によれば、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和した状態で、電磁波の進行方向に垂直方向のみならず、電磁波の進行方向においても、電磁波エネルギーが吸収・廃棄されることを抑制できる。上記の構成によれば、特に送電装置側の伝送線路の終端の状態に合わせて受電装置の結合器を選択することにより、特に受電装置に何ら付加することがないため、受電装置の単価を上げずに、また、受電装置の波長依存性を緩和した状態で使用でき、受電装置の設置位置制限を緩和した電力伝送装置を提供することができる。
(第7の実施の形態)
以下、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図10は、本実施の形態を説明する電圧、または電流の絶対値の一例を濃淡図として示したものである。なお、原点、軸、目盛りの取り方は図9に準ずる。
本実施の形態の電力伝送装置では、特に電磁波伝達シート502の短辺の長さは、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の波長の半分に略等しくしている。また、電磁波伝達シート502の第2の短辺504を短絡終端した場合は、長辺(端辺)を開放終端し、第2の短辺504を開放終端した場合は、長辺(端辺)を短絡終端する。それに合わせて、受電装置106a、106bには、結合器107a、107bとして、前者の場合は磁界結合器を、後者の場合は電界結合器を用いる。
伝送線路102に沿って配置される電子棚札ユニット120a、120bの順序(入力端503から第2の短辺504に向かって現れる順序)によらず、受電電力を適切な範囲に収めるため、受電装置106a、106bに同じ種類の装置を使用するならば、その受電電力は伝送線路102を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、第2の短辺504に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を単に終端抵抗器で熱として消費してしまうと、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電磁波伝達シート502の第2の短辺504を反射終端とし、帯状の電磁波伝達シート502の長辺も、おなじく反射終端とする。
以上説明した構成によれば、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる基本波成分の線状の節は、受電装置106a、106bを用いた受電にあまり利用されない電磁波伝達シート502の端辺(長辺)に位置する。かかる場合、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる第二高調波成分の節(一点鎖線c5c5´、c6c6´、c7c7´、c8c8´)と、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる基本波成分の節との交点は、電磁波伝達シート502の端辺(長辺)に位置することとなる。
したがって、電磁波伝達シート502の平面内に点状に限定されて現れる節は、電磁波伝達シート502の長辺に平行に現れる第二高調波成分の節(一点鎖線b5b5´、b6b6´)と、電磁波伝達シート502の短辺に平行に現れる基本波成分の節(破線a5a5´、a6a6´)との交点のみとなる。これらの交点の一部を図10(a)に白点701a、701bで示した。
本実施形態によれば、第6の実施の形態と比較しても、さらに定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和した電力伝送装置を提供できる。なお、他の効果については第6の実施の形態に準じる。
(第8の実施の形態)
以下、本発明の第8の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図11(a)及び図11(b)は、本実施の形態を説明する模式図である。図11(a)は本実施の形態の構成を説明する模式図であり、図11(b)は、電磁波伝達シート502の上面図を模式的に示している。なお、本実施形態の電磁波伝達シート502の平面形状は略長方形であり、図11(a)でL>Wの関係を満たすものとする。なお、略長方形の概念については、第1の実施形態で説明したとおりである。
図11(a)の左端に配置された交流電源101は交流電力を出力する。その出力は配線501を通して、電磁波伝達シート502の入力部503に接続される。入力部503は、電磁波伝達シート502の4つの端辺(2つの長辺と2つの短辺)のうち、1つの短辺(第1の短辺802)の近傍に設けられる。このように、主として交流電源101と電磁波伝達シート502を含んで送電装置が構成される。
なお、交流電源101の出力する交流電力は単一周波数とは限らず、周波数スペクトルは広がり、すなわち帯域幅を持っていてもよい。その場合には、おおむね周波数帯域の中心周波数を代表させて、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数を基本としてもよい。
一方、電磁波伝達シート502の上面に、長辺にほぼ平行に並んで複数の電子棚札ユニット120a、120bが配置される。なお、電磁波伝達シート502上に配置する電子棚札ユニットの数は、1個でも、図示する2個でも、それ以上でもよい。
電子棚札ユニット120a、120b各々には、受電装置106a、106b各々が搭載される。そして、受電装置106a、106b各々には、結合器107a、107b各々が搭載される。
電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波は、シート表面から交流電界、または交流磁界として漏洩しており、各結合器107a、107bを介して、各受電装置106a、106bに受電される。そして、各受電装置106a、106bから、各電子棚札ユニット120a、120bに給電される。なお、多くの先行文献があるため、電界結合器と磁界結合器についての具体的な構成については、特に詳述しない。
電磁波伝達シート502に沿って配置される電子棚札ユニット120a、120bの順序(入力端503から第2の短辺504に向かって現れる順序)によらず、受電装置106a、106bの受電電力を適切な範囲に収めるため、受電装置106a、106bの受電電力は、電磁波伝達シート502内部を伝搬する電力より十分小さくすることが望ましい。その場合、電磁波伝達シート502の第2の短辺504に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を電磁波吸収媒体により吸収・廃棄すると、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電磁波伝達シート502の第2の短辺504を反射終端とし、電磁波伝達シート502の長辺(端辺)も、おなじく反射終端とする。この構成により、電磁波伝達シート502の短辺に平行に進行する電磁波のみならず、長辺に平行に進行する電磁波においても、電磁波エネルギーが吸収・廃棄されることを抑制することができる。
図11(b)に示した電磁波伝達シート502の上面図の通り、本実施の形態においては、第2の短辺504を電磁波伝達シート502の長辺に略垂直にし、かつ、少なくとも2つの部分(第1部分504a、第2部分504b)に分ける。そして、第1部分504aは、短絡終端とすることにより反射終端とし、第2部分504bは、開放終端とすることにより反射終端とする。例えば、図11(b)に示すように、第2の短辺504を、第1部分504a及び第2部分504bに2分してもよい。
ここで、電磁波伝達シート502上における、第1部分504aを電磁波伝達シート502の長辺に平行な方向に移動させた際に通過する領域を第1シート502a、第2部分504bを同様に移動させた際に通過する領域を第2シート502bと定義する。参考までに、図11(b)に、第1シート502a及び第2シート502bの境界を、AA´の一点鎖線で示す。
なお、電磁波伝達シート502を、1シート502aと第2シート502bに分ける処理は仮想的なものであり、1シート502a及び第2シート502bは一体となって、電磁波伝達シート502を構成しているものとする。ただし、入力部503に到達しない範囲で第2の短辺504から切れ込みを入れ、電磁波伝達シート502の一部を、実際に、第1シート502a及び第2シート502bに分離した状態で動作するようにしてもよい。このようにすれば、第1シート502a内に生じる定在波と、第2シート502b内に生じる定在波の相互に与える影響を小さくすることができるため、安定的に定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。
第1部分504a及び第2部分504b各々の長さ、すなわち、第1シート502a及び第2シート502b各々の幅は、各シートが、電子棚札ユニット120a、120bに所望の動作電力を送電できる範囲で、任意に定めることができる。なお、第1部分504a及び第2部分504bの長さは一致していても、異なっていてもよい。
第1部分504aは短絡終端とし、第2部分は開放終端とする。なお、ここでいう、短絡終端、または開放終端は完全に寄生容量や寄生インダクタンス、寄生抵抗などの寄生回路素子成分のない理想的な完全反射終端を意味するわけではなく、現実に当業者の作成できる範囲内の反射終端としての短絡終端、または開放終端を意味している。
図11(b)では不図示とした結合器107a、107bは、第1シート502a及び第2シート502bに跨って配置される。そして、結合器107a、107bが電界結合器の場合、第1シート502aの表面から漏洩する電磁波に起因する交流電界と、第2シート502bの表面から漏洩する電磁波に起因する交流電界の、両方の電界と結合できる。したがって、第1シート502aの表面からも、第2シート502bの表面からも、結合器107a、107bを介して、受電装置106a、106bに給電することができる。
なお、図11に示す例では、電力伝送装置の製造コストを最も抑制できる受電装置1個につき1個の結合器を搭載する構成としたが、本実施形態はこれに限られるものではない。1つの受電装置には、例えば第1シート502a専用の結合器と第2シート502b専用の結合器を搭載するといったように、第2の短辺504を分割した部分の数や定在波群の数に合わせて複数の結合器を1個の受電装置に搭載することもできる。
さらに、図11に示す例では、交流電源101や入力部503の数は、電力伝送装置の製造コストを最も抑制できる、各々一個としたが、本実施形態はこれに限られるものではない。例えば、第1シート502a及び第2シート502b間の相互の影響を小さくするため、図11(b)の破線AA´に沿って、電磁波伝達シート502を完全に切り離し、第1シート502a及び第2シート502bを完全に独立して動作させてもよい。この場合、入力部は、第1シート502a及び第2シート502b各々独立に設けることが望ましい。これら独立に設けた入力部への交流電力の入力は、一個の交流電源101の出力を分岐して行ってもよいし、あるいは2個の交流電源を用いて各々の入力部に各々の電源から入力してもよい。
本実施の形態では、交流電源101から出力され、配線501を通して入力部503に入力された交流電力は、主に第2の短辺504に向かって進行する。ここで、「主に」と記した理由は、長辺801a、801bで反射されながらx方向へ進行する成分と、y方向に進行する成分が合成され、一般的には斜めに進行するが、電磁波伝達シート502が略長方形であることから、巨視的に見れば入力部503から第2の短辺504に向かう進行波とみなせるためである。
第2の短辺504に到達した交流電力の進行波は、第1部分504a(短絡終端)、または、第2部分504b(開放終端)にて反射される。ここで、第2の短辺504は、電磁波伝達シート502の長辺に略垂直であり、電圧でみれば第1部分504a(短絡終端)では固定端反射、第2部分504b(開放終端)では自由端反射、電流でみれば第1部分504a(短絡終端)では自由端反射、第2部分504b(開放終端)では固定端反射となる。すなわち、第1部分504a及び第2部分504b(開放終端)は、一方で固定端反射する場合は、他方では自由端反射する関係となる。
上記状況を説明するため、図12に自由端における進行波、反射波、およびそれらの合成により形成される定在波の様子を示した。また、図13は、反射端が固定端である場合を、図12と同様の手法で示している。図12と図13の横軸は、電磁波伝達シート502内部をy方向に進行する電磁波の波長を単位として、図11の原点Oからy方向に測った電磁波伝達シート502上の位置を示している。したがって、図12及び図13の横軸が0の位置は、電磁波伝達シート502上における第2の短辺504の位置に相当する。
図12と図13は各々3個のグラフから構成され、上から進行波の振幅、反射波の振幅、それらを合成した合成波の振幅をプロットしている。実線のグラフは定在波の最大振幅を与える位相の電磁波の振幅を示し、この位相を基準に、一点鎖線は60°、二点鎖線は120°、破線は180°位相が進んだ状態を各々示している。なお、本実施形態の作用を簡単に説明するため、図12と図13では理想的な完全反射終端としてグラフを描いている。完全に寄生容量や寄生インダクタンス、寄生抵抗などの寄生回路素子成分のない理想的な反射終端を実現できないことは周知の事実であり、実際には当業者の作成できる範囲内の反射終端としての短絡終端、または開放終端となる。しかしながら、その実際の反射終端においても、本実施の形態で説明される作用はおおむね再現され、本発明の効果が提供されることは言うまでもない。
図12では進行波は自由端(y=0)において進行波と同位相で反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、電磁波伝達シート502内部にはy方向に定在波を生じる。定在波の腹は自由端、即ちy座標が0.00(第2の短辺504)に現れたのち、y座標が−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。一方、節は、第2の短辺504からy方向に−1/4波長、即ちy座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
図13では進行波は固定端(y=0)において進行波と180°位相が進んで反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、電磁波伝達シート502内部にはy方向に定在波を生じる。定在波の節は固定端、即ちy座標が0.00(第2の短辺504)に現れたのち、y座標が−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。一方、腹は、第2の短辺504からy方向に−1/4波長、即ちy座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
さらに詳細に説明するため、図14に、第1シート502a及び第2シート502b各々における、第1部分504a及び第2部分504b近傍の定在波の様子を濃淡図で示した。ここでは、第1部分504aが固定端、第2部分504bは自由端であり、長辺(端辺)801a、801bは固定端とする。
なお、実験により確認した結果、第1シート502a内に生じる定在波と、第2シート502bに生じる定在波の相互に与える影響は十分小さいことが分かったため、この図14ではこの影響を無視している。上下の濃淡図の間に記載した横軸は、電磁波伝達シート502内部をy方向に進行する電磁波の波長を単位として、図11の原点Oからy方向に測ったシート上の位置を示している。この図では一例として、第1シート502a及び第2シート502bのx軸方向のサイズが1波長の場合をプロットした。図中の濃淡は電圧の絶対値の最大振幅を示しており、黒の部分から白の部分になるにつれて電圧の絶対値の最大振幅が大きくなっていることを示している。
前述の通り、図14に示す例は、例えば、第1部分504a短絡終端、第2部分504bは開放終端であり、電磁波伝達シート502の長辺(端辺)801a、801bは短絡した場合に相当する。
その結果、第1シート502aでは、黒く示される節は、y座標が0.00の第1部分504aに現れたのち、y座標が−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。また、白く示される腹は、y座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
一方、第2シート502bでは、白く示される腹はy座標が0.00の第2部分504bに現れたのち、y座標が−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。また、黒く示される節は、y座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
なお、図14では一例として、第1シート502a及び第2シート502bのx軸方向の長さが定在波の1波長の場合をプロットしたため、AA´で示された第1シート502a及び第2シート502bの境界では、両シートともに節となっている。これにより、第1シート502a内に生じる定在波と、第2シート502bに生じる定在波の相互に与える影響を小さくすることができる。但し、本発明はこの条件に限られるものではなく、第1シート502a内に生じる定在波と、第2シート502bに生じる定在波が相互に影響を与える場合にも適用できることは言うまでもない。
以上図面で示した通り、第2の短辺504の状態が自由端と固定端で比較すると、原点Oからy方向に測ったシート上の位置座標(y座標値)が同じ場合、一方が腹の場合には他方に節が、一方が節の場合には他方に腹が現れる。
すなわち、第2の短辺504が少なくとも2つの部分(第1部分504a及び第2部分504b)を有し、これに基づいて少なくとも2つの領域(第1シート502a及び第2シート502b)に分けることができる本実施形態の電磁波伝達シートにおいては、上記2つの部分の一方が短絡終端の場合には他方が開放終端となるので、原点Oからy方向に測った第1シート502a及び第2シート502b各々の上の位置座標(y座標値)が同じ点で比較すると、一方が腹の場合には他方が節に、一方が節の場合は他方が腹になる。このように、本実施の形態では、第1シート502a及び第2シート502bで相補的に腹と節が現れるため、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和した電磁波伝送装置を提供できる。
さらに前述の通り、結合器107a、107bは、第1シート502a及び第2シート502bに跨って配置され、両方のシートから電力を受電できる。したがって、例え、第1シート502a及び第2シート502bの一方が節の部分に、結合器107a、107bの一部が掛っていても、該シートの長辺に略垂直な線分上の位置に相補的に並ぶ、他方のシートの腹から電力を受電することにより、送電装置から電力を受け取ることができる。
さらに、電磁波伝達シート502を囲む4つの端辺に電磁波吸収媒体を備える必要がないため、電磁波の進行方向に垂直方向のみならず、電磁波の進行方向においても、電磁波エネルギーが吸収・廃棄されることを抑制した電磁波伝送装置を提供することができる。
また、前述の通り、入力部503を第1シート502a及び第2シート502b各々に個別に設けることができる。そして、これら個別に設けた入力部503への交流電力の入力は、例えば2個の交流電源101を用いて行う場合、あるいは1個の交流電源101の出力を分岐して行う場合が考えられる。いずれにおいても、一般的に、第1シート502a及び第2シート502b内部で生じている各々の定在波は独立の位相となる。
例えば、図12と図13に実線で示した基準位相の実現される時刻は、第1シート502a及び第2シート502b各々で異なる。しかしながら、第1シート502a及び第2シート502b内部で生じている各々の定在波の位置、特に腹の位置と節の位置は前記位相に依存しない。したがって、入力部503や交流電源101の個数にかかわらず、本発明の効果が得られる。
なお、図11を用いて説明した例では、第2の短辺504を第1部分504a、及び、第2部分504bの2つの部分に分け、一方を短絡終端、他方を開放終端としたが、構成はこれに限らない。たとえば、図11(b)で第2の短辺504を上から奇数個の部分に分け、上から短絡終端と開放終端を交互に配置してもよい。この場合、短絡と異なり開放はシートを切り出した状態でよいため、低コストで製造できる。その他、第2の短辺504を偶数個の部分に分け、上から短絡終端と開放終端を交互に配置してもよい。
また、例えば電磁波伝達シート502の長辺(端辺)801a、801bをともに短絡し、長辺(端辺)801a、801bから漏洩する電磁波や、電磁は伝達シート502の周囲からシート内に侵入する電磁波の影響をなくし、安定な動作を確保してもよい。そして、長辺(端辺)801a、801bの延長として、第2の短辺504の両端部も短絡終端としてもよい。その場合、さらに電磁波の漏洩しやすい、電磁波伝達シートの角の部分も容易にシールドできる。
同様に、交流電源101の数や入力部503の数も、前述の通り、本発明の効果を同様に得られる様々な構成が考えられ、第2の短辺504を奇数個の部分に分けた場合、それに応じて入力部503の個数や交流電源101の個数を様々に変えることもできる。
なお、入力部503に近接する電磁波伝達シート502の第1の短辺802も短絡してもよい。その場合、交流電源101から入力部503を通して電磁波伝達シート502に効率よく電力を送るため、インピーダンス整合するように電磁波伝達シート502上の入力部503の配置を、少し第2の短辺504に向かって移動させ、さらに必要に応じてスタブなどの整合回路を設けるといった設計を行うことが望ましい。このような設計をすれば、電力伝送装置の動作に問題を生じることなく、電磁波伝達シート502の第1の短辺802も短絡でき、さらに周辺環境と電磁波伝達シート502内の電磁波伝搬の相互依存性を弱くすることができる。
また、第1の短辺802は開放してもよい。この場合、短絡処理が不要のため、電磁波伝達シート502を低コストに製造できる。
さらに、第2の短辺504同様、第1の短辺802も、短絡終端と開放終端の組み合わせとしてもよい。この場合、第1の短辺802と第2の短辺504の反射終端の構成を対称性の低い構成とすることが望ましい。さらに望ましくは、第1の短辺802と第2の短辺504の反射終端の構成を、線対称でも回転対称でもない構成とすることが望ましい。そうすれば、意図しない節の出現をさらに抑制でき、さらに定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和した電磁波伝送装置を提供できる。
例えば、n、mをl以上の異なる奇数であって、互いに素とすると、上述のように第2の短辺504をn分割、第1の短辺802をm分割し、上から短絡終端と開放終端を交互に配置する構成を取ることができる。この場合、第1の短辺802と第2の短辺504の分割数が異なり、且つ分割数が互いに素であるため、第1の短辺802及び第2の短辺504各々の反射終端の構成は、線対称でも回転対称でもない構成となる。
さらに、反射終端は短絡終端と開放終端に限定されない。特許文献5に記載がある通り、電磁波伝達シート502表面の絶縁フィルム直下にあるメッシュ状導体部と、電磁波伝達シート502下部にグランド面として配置されたシート状導体部との間に、インダクターやキャパシタを挿入して接続することにより、短絡終端や開放終端と比較して進行波に対する反射波の位相差を0°や180°ではない状態にすることもできる。なお、特許文献5には、上記絶縁フィルムは樹脂等からなる保護層と記載されている。
第2の短辺504へのこのようなインダクターやキャパシタの装荷により、例えば短絡終端と開放終端とは異なる、反射終端の組み合わせであって、前述の短絡終端と開放終端の組み合わせと同様、腹と節が相補的に並ぶ構成を実現できる。さらに、定在波の位置を自由に操作でき、腹と節の位置も自由に配置できる。このようにすれば、第2の短辺504を固定端と自由端の2種類のみで構成した場合に、緩和されてなお残る電磁波強度の不均一、即ちリップルをさらに低減できる。
例えば、第2の短辺504を複数の部分に分割し、各々を、インダクターやキャパシタを装荷した反射終端とすることができる。短絡終端と開放終端の組み合わせで残存する受電電力の低下する位置に、このような構成によりさらに腹を追加すれば、さらに定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和した電磁波伝送装置を提供できる。
なお、上記のインダクターやキャパシタは、例えば可変コイルやバリコン、トリマーキャパシターのような可変素子であってもよい。この場合、製造後も、必要に応じてインダクタンスやキャパシタンスを調整することにより、定在波の位置を調整できる。
電磁波伝達シート502の幅W(短辺の長さ)は特に限定されないが、図14に一例を示したように、2つの長辺(端辺)801a、801b反射終端の種類(短絡終端または開放終端)を同じにした場合には、幅Wを、電磁波伝達シート502内部をx方向に伝搬する電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しくしてもよい。これにより、電磁波伝達シート502の長辺(端辺)801a、801bにおいて電磁波が反射されることにより、横幅方向(x方向)で共振状態となり、電磁波伝達シート502の電磁界の横幅方向(x方向)の分布が安定する。したがって、電磁波伝達シート502から漏洩する電界、または磁界分布も安定する。
なお、略等しくすると表現した理由は、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の周波数スペクトルは広がり、すなわち帯域幅を持っていてもよく、その場合には電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波が単一波長では表せないためである。このような場合は、おおむね周波数帯域の中心周波数に該当する波長を代表させて、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数に対応する波長としてもよい。
なお、電磁波伝達シート502の長辺(端辺)801a、801bにおいて電磁波が反射されることにより、横幅方向(x方向)で共振状態とするために、前述のように、電磁波伝達シート502の2つの長辺(端辺)801a、801bの終端方法を一方は短絡、他方は開放と異なる反射終端とし、短辺の長さを電磁波の1/4波長の奇数倍に略等しくしてもよい。この場合、上記と同様の効果が得られる。
(第9の実施の形態)
以下、本発明の第9の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態と同様な構成については、適宜説明を省略する。すなわち、当該実施の形態では、他の実施の形態で説明した構成を適宜採用することができる。
図15は本実施の形態に係る電子棚札システムの構成うちの、略長方形の電磁波伝達シートの一例の上面図を模式的に示した図である。なお、交流電源、電子棚札ユニット、受電装置等、不図示のその他の構成については、例えば第8の実施の形態に準じるものとする。
図15の電磁波伝達シート502の略長方形を構成する4つの端辺の中の第1の短辺802の近傍に、入力部503が設けられ、不図示の交流電源の出力が接続される。なお、交流電源の出力する交流電力は単一周波数とは限らず、周波数スペクトルは広がりを持つ、すなわち帯域幅を持っていてもよい。その場合には、おおむね周波数帯域の中心周波数を代表させて、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の波長とすればよい。あるいは変調波などの場合には搬送波の周波数を基本としてもよい。
電磁波伝達シート502に沿って配置される複数の電子棚札ユニットの順序(入力端503から第2の短辺504に向かって現れる順序)によらず、受電装置の受電電力を適切な範囲に収めるためには、受電装置の受電電力は電磁波伝達シート502を伝搬する電力より、十分小さくすることが望ましい。その場合、図15における電磁波伝達シート502の第2の短辺504に到達する電力は大きくなる。このような大きな電力を単に電磁波吸収媒体により吸収・廃棄すると、電力利用効率は極めて低くなってしまう。本実施の形態では、この問題を解決するため、電磁波伝達シート502の第2の短辺504を反射終端とし、略長方形の電磁波伝達シート502の長辺801a、801bも、おなじく反射終端とする。
図15に示した電磁波伝達シート502の上面図の通り、本実施の形態においては、第2の短辺504は少なくとも3つの部分(第1部分504a、第2部分504b、第3部分504c)を有する。
このうち、第1部分504a、及び、第2部分504bは、互いに平行に直線的に延在している。第1部分504a、及び、第2部分504bが延在する方向は、電磁波伝達シート502を伝搬する電磁波の伝搬する方向、例えば電磁波伝達シート502の長辺801a、801bの方向と略垂直である。
なお、図15に示すように、第1部分504a、及び、第2部分504bのx方向の位置は互いにずれている。また、第1部分504a、及び、第2部分504bのy方向の位置も互いにずれている。すなわち、入力部503からの距離は互いに異なる。y方向の位置のずれ(y方向の間隔)は、具体的は、電磁波伝達シート502内を伝搬する電磁波の波長λの半分をM(0以上の整数)倍した値に、波長λの1/4を加えた値に略等しくする。なかでもM=0とし、第1部分504a、及び、第2部分504bのy方向の位置のずれ(y方向の間隔)を、長辺801a、801bに平行に電磁波伝達シート502内を進行する電磁波の波長λの1/4に略等しくするが好ましい。このようにした場合、特に電磁波伝達シート502の端部のy方向の幅を短くできる。ここで、略等しくするとは、先に述べたとおり、波長が代表値にすぎない場合や、電磁波伝達シート502の製造公差などを考慮したものである。
第1部分504a、第2部分504b、第3部分504cは全て、短絡終端か、開放終端かの同一の種類の反射終端とする。
ここで、電磁波伝達シート502上における、第1部分504aを電磁波伝達シート502の長辺801a、801bに平行な方向に移動させた際に通過する領域を第1シート502a、第2部分504bを同様に移動させた際に通過する領域を第2シート502b、第3部分504cを同様に移動させた際に通過する領域を第3シート502cと定義する。参考までに、図15に、第1シート502aと第3シート502cの境界をBB´の一点鎖線で、また、第2シート502bと第3シート502cの境界をCC´の一点鎖線で示す。
なお、電磁波伝達シート502を、1シート502a、第2シート502b、第3シート502cに分ける処理は仮想的なものであり、これらのシートは一体となって、電磁波伝達シート502を構成しているものとする。ただし、y方向の位置が入力部503まで到達しない範囲で第2の短辺504から切れ込みを入れ、電磁波伝達シート502の一部を、実際に、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502cに分離した状態で動作するようにしてもよい。このようにすれば、各シート内に生じる定在波が、他のシート内に生じる定在波へ与える影響を小さくすることができるため、安定的に定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。
第1部分504a、第2部分504b、第3部分504cの長さについては、第8の実施形態で説明した第1部分504a、及び、第2部分504bの長さと同様である。
第8の実施の形態同様、図15では不図示とした結合器は、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502cに跨って配置される。結合器は、各々のシート表面から漏洩する電磁波に起因する交流電界または交流磁界と結合する。したがって、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502cの各々の領域全てから、結合器を介して受電装置に給電することができる。なお、本実施形態で受電装置1個につき搭載する結合器の数は1個以上であれば、特に制限はない。例えば分割した部分の数や定在波群の数に合わせて専用の結合器を用意し、1個の受電装置に搭載してもよい(第8の実施形態同様)。
さらに、本実施形態では電磁波伝達シート502に設ける入力部503の数や、その入力部503に接続する交流電源101の数は、各々一個に限られるものではない。例えば、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502cの各領域に生じる定在波の間で相互に与える影響を小さくするため、図15の破線BB´とCC´に沿って、電磁波伝達シート502を3つに完全に切り離し、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502c各々を完全に独立して動作させてもよい。この場合、入力部503は各シートに独立に設けることが望ましい。これら独立に設けた入力部503への交流電力の入力は、一個の交流電源101の出力を分岐して行ってもよいし、あるいは3個の交流電源101を用いて各々の入力部503に各々の交流電源101から入力してもよい。
本実施の形態では、不図示の交流電源から出力され、入力部503に入力された交流電力は、主に第2の短辺504に向かって進行する。ここで、「主に」と記した理由は、長辺801a、801bで反射されながらx方向へ進行する成分と、y方向に進行する成分が合成され、一般的には斜めに進行するが、電磁波伝達シート502が略長方形であることから、巨視的に見れば入力部503から第2の短辺504に向かう進行波とみなせるためである。
第1部分504a、第2部分504b、第3部分504c各々に到達した交流電力の進行波は、各々反射される。これらが短絡終端の場合、電圧でみれば固定端反射、電流で見れば自由端反射する。逆に開放終端の場合、電圧でみれば自由端反射、電流で見れば固定端反射する。したがって、以下の動作の説明では、まず自由短反射の場合を説明し、次に固定端反射の場合を説明する。
本実施の形態の動作を説明するため、第1部分504aでの自由端反射の振幅を説明するグラフを図16に、第2部分504bでの自由端反射の振幅を説明するグラフを図17に示す。
図16、図17はともに3個のグラフから構成され、各々上から進行波の振幅、反射波の振幅、それらを合成した合成波の振幅をプロットしている。横軸は、電磁波伝達シート502内部をy方向に進行する電磁波の波長λを単位として、図15の原点Oからy方向に測ったシート上の位置を示している。実線のグラフは定在波の最大振幅を与える位相の電磁波の振幅を示し、この位相を基準に、一点鎖線は60°、二点鎖線は120°、破線は180°位相が進んだ状態を各々示している。
なお、本実施形態の作用を簡単に説明するため、図16と図17では理想的な完全反射終端としてグラフを描いている。完全に寄生容量や寄生インダクタンス、寄生抵抗などの寄生回路素子成分のない理想的な反射終端を実現できないことは周知の事実であり、実際には当業者の作成できる範囲内の反射終端としての短絡終端、または開放終端となる。しかしながら、その実際の反射終端においても、本実施の形態で説明される作用はおおむね再現され、本発明の効果が提供されることは言うまでもない。
図16では第1部分504aの自由端(y=0)において進行波は同位相で反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、第1シート502a内部にはy方向に定在波を生じる。定在波の腹は自由端、即ちy座標が0.00の位置に現れたのち、−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。一方、節は、y座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
図17では第2部分504bの自由端(y=0.25)において進行波は同位相で反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、第2シート502b内部にはy方向に定在波を生じる。第2部分504bは原点Oからy方向に0.25移動した位置にあるため、定在波の腹はy座標が0.25の位置に現れたのち、−0.25、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。一方、節は、y座標が0.00の点に現れたのち、−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。
さらに詳細に説明するため、図18に、第1シート502a及び第2シート502b各々における、第1部分504a及び第2部分504b近傍の定在波の様子を濃淡図で示した。
なお、実験により確認した結果、第1シート502a内に生じる定在波と第2シート502bに生じる定在波の相互に与える影響は十分小さいことが分かったため、この図18ではこの影響を無視している。上下の濃淡図の間に記載した横軸は、電磁波伝達シート502内部をy方向に進行する電磁波の波長を単位として、図15の原点Oからy方向に測ったシート上の位置を示している。縦軸は第1シート502a及び第2シート502bのx軸を示す。この図では一例として、第1シート502a及び第2シート502bのx軸方向の長さが半波長の場合をプロットした。図中の濃淡は電圧の絶対値の最大振幅を示しており、黒の部分から白の部分になるにつれて電圧の絶対値の最大振幅が大きくなっていることを示している。
前述の通り、第1部分504a及び第2部分504bは自由端であり、この図18では電磁波伝達シート502の長辺801a、801bをともに固定端とした場合に相当する。
第1シート502aでは、白く示されている腹は、y座標が0.00の第1部分504aに現れたのち、−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。また、黒く示されている節は、y座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
一方、第2シート502bでは、白く示されている腹は、y座標が0.25の第2部分504bに現れたのち、−0.25、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。また、黒く示されている節は、y座標が0.00の点に現れたのち、−0.50、−1.00と半波長ごとに現れる。
なお、図18では一例として、第1シート502a、第2シート502b各々のx軸方向の長さが半波長の場合をプロットしたが、本実施形態はこの条件に限られるものではなく、第1シート502a内に生じる定在波と、第2シート502b内に生じる定在波が相互に影響を与える場合にも適用できることは言うまでもない。
従って、第1シート502a及び第2シート502bを比較すると、原点Oからy方向に測ったシート上の位置(y座標の値)が同じ場合、一方が腹の場合には他方が節に、一方が節の場合には他方が腹になる。このように、第2の短辺504一種類の反射終端とした場合と比較して、本実施の形態では、第1シート502a及び第2シート502bで相補的に腹と節が現れるため、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。したがって、商品陳列棚前面で商品位置に合わせて自由に電子棚札ユニット配置できる電子棚札システムを提供できる。
さらに、本実施形態では、電磁波伝達シート502の4つの端辺に電磁波吸収媒体を備える必要がないため、電磁波の進行方向に垂直方向のみならず、電磁波の進行方向においても、電磁波エネルギーが吸収・廃棄されることを抑制した電子棚札システムを提供することができる。
次に、固定端反射の場合を説明する。第1部分504aでの固定端反射の振幅を説明するグラフを図19に、第2部分504bでの固定端反射の振幅を説明するグラフを図20に示す。
図19、20ともに3個のグラフから構成され、各々上から進行波の振幅、反射波の振幅、それらを合成した合成波の振幅をプロットしている。横軸は、電磁波伝達シート502内部をy方向に進行する電磁波の波長を単位として、図15の原点Oからy方向に測った電磁波伝達シート502上の位置を示している。実線のグラフは定在波の最大振幅を与える位相の電磁波の振幅を示し、この位相を基準に、一点鎖線は60°、二点鎖線は120°、破線は180°位相が進んだ状態を各々示している。
なお、本発明の作用を簡単に説明するため、図19と図20では理想的な完全反射終端としてグラフを描いている。完全に寄生容量や寄生インダクタンス、寄生抵抗などの寄生回路素子成分のない理想的な反射終端を実現できないことは周知の事実であり、実際には当業者の作成できる範囲内の反射終端としての短絡終端、または開放終端となる。しかしながら、その実際の反射終端においても、本実施の形態で説明される作用はおおむね再現され、本発明の効果が提供されることは言うまでもない。
図19では、第1部分504aの固定端において進行波は180°位相回転して反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、第1シート502a内部には、y方向に定在波を生じる。定在波の節は自由端、即ちy座標が0.00の位置に現れたのち、−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。一方、腹は、y座標が−0.25の点に現れたのち、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。
図20では、第2部分504bの固定端において進行波は180°位相回転して反射され、反射波を形成する。その進行波と反射波の合成により、第2シート502b内部には、y方向に定在波を生じる。第2部分504bは原点Oからy方向に0.25移動した位置にあるため、定在波の節はy座標が0.25の位置に現れたのち、−0.25、−0.75、−1.25と半波長ごとに現れる。一方、腹は、y座標が0.00の点に現れたのち、−0.50、−1.00、−1.50と半波長ごとに現れる。
従って、第1シート502a及び第2シート502bを比較すると、原点Oからy方向に測ったシート上の位置(y座標の値)が同じ場合、一方が腹の場合には他方が節に、一方が節の場合には他方が腹になる。このように、第2の短辺504を一種類の反射終端とした場合と比較して、本実施の形態では、第1シート502a及び第2シート502bで相補的に腹と節が現れるため、定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。したがって、電子棚札ユニットの設置位置制限と動作不安定性を緩和した、電子棚札システムを提供することができる。
さらに結合器は、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502cに跨って配置され、各シートから電力を受電することができる。したがって、例え第1シート502a及び第2シート502bの一方が節の部分に、結合器の一部が掛っていても、該シートの長辺に略垂直な線分上の位置(y座標が一致する位置)に相補的に並ぶ、他方のシートの腹から電力を受電することにより、送電装置から電力を受け取ることができる。
さらに電磁波伝達シート502の4つの端辺に電磁波吸収媒体を備える必要がないため、電磁波の進行方向垂直方向のみならず、電磁波の進行方向においても、電磁波エネルギーが吸収・に廃棄されることを抑制した電子棚札システムを提供することができる。
なお、第3部分504cは長辺801a、801bと垂直ではないため、上記のようなきれいな定在波にはならず、反射波の位相がさらに分散される。このため、さらに電磁波強度の不均一を緩和することに役立つ。
なお、図示した通り、第3部分504cは直線状ではなく曲線状であるが、このようにして、反射波の位相が分散される量に重みを付けることにより、さらに電磁波強度の不均一を緩和することができる。例えば、上記のように第1シート502aと第2シート502bで相補的に腹と節が現れる構成を取った場合であって、その漏れ電界、または磁界を1個の結合器で受電する場合には、第1シート502a、第2シート502b内で生じている定在波の位相にも依存するが、一例としてy座標で、−0.375、−0.875、−1.375といった1/8波長を基本とし、−3/8波長、−7/8波長、−11/8波長で電磁波強度の小さい部分を生じやすい。当該不都合を解消するため、第1部分504aと第2部分504bの間のy座標(λ/8)に位置する第3部分504cを多くするのが好ましい。この場合、先ほどの電磁波強度の小さい部分を、x方向の長さを長くした第3部分504cの一部分の定在波の腹で補うことができる。したがって、さらに定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和することができる。
また、前述の通り、第1シート502a、第2シート502b、第3シート502c各々に入力部を個別に設けることができる。これら個別に設けた入力部への交流電力の入力手段としては、例えば3個の交流電源を用いて行う場合、あるいは1個の交流電源の出力を分岐して行う場合、2個の交流電源のうち1個の交流電源の出力を2分岐して合計3出力用意して行う場合など、あらゆる態様が考えられるが、一般的に第1シート502a、第2シート502b、第3シート502c各々の内部で生じている各定在波は独立の位相となる。例えば、図16と図17、あるいは図19と図20に実線で示した基準位相の実現される時刻は、第1シート502aと第2シート502bとで異なる。しかしながら、各シート内部で生じている各定在波の位置、特に腹の位置と節の位置は前記位相に依存しない。したがって、入力部や電源の個数にかかわらず、本発明の効果が得られる。
なお、図15を用いて説明した例では、第2の短辺504を3つの部分に分けたが、構成はこれに限らない。図21に、第2の短辺504の別の様態を示す。この場合は、第2の短辺504の長辺801a、801bと平行な方向、即ちy方向の長さの幅(y座標の最大差)は、長辺801a、801bに平行に電磁波伝達シート502内を進行する電磁波の波長λの1/4に略等しくし、凹凸形状を複雑にしている。このように、y方向の間隔の条件を守りながら、複雑な形状とすることで、さらに定在波を抑制でき、電磁波強度の不均一を緩和できる。
同様に電源の数や入力部の数も、前述の通り、本発明の効果を同様に得られる様々な構成が考えられ、図21のように第2の短辺504の分割数を変更した場合、それに応じて入力部の個数や交流電源の個数を様々に変えることもできる。
なお、第2の短辺504同様、第1の短辺802(入力部が近傍に設けられる短辺)も複数の部分から構成してもよい。例えば図22に示すように、第1の短辺802の長辺801a、801bと平行な方向、即ちy方向の長さの幅(y座標の最大差)は、長辺801a、801bに平行に電磁波伝達シート502内を進行する電磁波の波長λの1/4に略等しくし、凹凸形状を複雑にしている。
この場合、第1の短辺802と第2の短辺504との反射終端の構成を対称性の低い構成とすることが望ましい。さらに望ましくは、第1の短辺802と第2の短辺504との反射終端の構成を、線対称でも回転対称でもない構成とすることが望ましい。そうすれば、意図しない節の出現をさらに抑制でき、さらに定在波に起因して生じる電磁波強度の不均一を緩和できる。なお、図22では、3つの入力部503a、503b、503cを設けた例を示している。
以上、本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。