JP2013162051A - フッ素樹脂フィルム製圧電素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 耐熱性、耐薬品性等の化学的特性に優れたフッ素樹脂系プラスチックフィルムを用いて、帯電性を高めた圧電素子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で所定個数の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(厚み方向長さ上位平均値An)を指標として、多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程;及び前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理する工程を含む。前記選択工程は、前記平均値が、所定の値以下の多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程であることが好ましく、前記所定の値は、多孔質フッ素樹脂フィルムの厚み、及び平均値の母数となる前記所定個数に依存して設定されることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、超音波センサ、接触センサ、感圧センサ等のセンサ類、スイッチ、マイクロフォン、ヘッドホン、スピーカなどに用いることができる多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子、及びその製造方法に関する。
圧電性プラスチックフィルムは、圧電性セラミックにはない可撓性、柔軟性を有することから、圧電素子材料としての研究が進められている。
圧電性プラスチックフィルムとしては、圧電処理したポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムが一般に知られている。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のベータ型結晶は多くは延伸により発現し、極性を有することから、分極処理により分子の双極子方向を揃えることで圧電性を発現させることができる。
例えば、特開昭60−55034号公報(特許文献1)に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶融押出成形した厚み100μm程度の未配向シートを、一軸延伸したフィルム両面に金属真空蒸着して電極を形成し、融点以下の温度に加熱しながら1000kV/cm程度の直流高電界を厚み方向に60分間印加することで、圧電素子が得られることが開示されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、圧電性付与のためには高電圧、長時間の電圧印加を要する上に、得られる圧電性も十分でない。また、フィルム内に気孔が存在すると、分極処理において空気放電や絶縁破壊を起こし、高電圧の印加が達成しにくく、さらに均一に電界がかかりにくく、その結果、十分な圧電性が発現されないと考えられている。
一方、分子及び結晶構造に起因して圧電性を発現しているポリフッ化ビニリデンフィルムとは全く異なるメカニズムにより圧電性を発現する圧電性プラスチックフィルムとして、USP4654546号公報(特許文献2)に、円盤状の気泡を有する延伸多孔質ポリプロピレンフィルムが提案されている。
この多孔質ポリプロピレンフィルムは、近年、emfit社からEmfit(登録商標)フェロエレクトレットフィルムとして市販され、高い圧電率を示すことで注目されている。このEmfit(登録商標)フィルムは、多孔性ポリプロピレンフィルムを二軸延伸し、さらに高圧気体を注入して、内部の気孔を膨張させた、平らな気孔を多数有するラメラ構造のフィルムである(非特許文献1、emfit社ホームページ)。このようなフィルムに、コロナ放電を行うと、気孔の上下の面にプラス、マイナスの電荷がトラップされる。これに応力がかかると、多孔体であるため大きく変形し、その結果、帯電荷の空間配置が移動するために、圧電性が発現する。emfitフィルムの圧電定数(d33)は、ポリフッ化ピニリデン(PVDF)の数10倍であるといった報告もある(非特許文献2、ユーロプロテック社ホームページ)。
また、非特許文献3(Masatoshi Nakayama, et.al, "Piezoelectricity of Ferroelectret Porous Polyethylene Thin Film", Japanese Journal of Applied Physics 48(2009))に示すように、厚み30μm、気孔率58%のフェロエレクトレットといわれる多孔質ポリエチレン(Fp−PE)フィルムをコロナ放電して得られる圧電定数(d33)は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムの3倍にもなったことが報告されている。
このように、多孔質プラスチックフィルムでは、ナノサイズの分子及び結晶構造に起因する双極子に基づいて圧電性を発揮する、ポリフッ化ビニリデンフィルムよりも高い圧電性が得られることから、近年、多孔質プラスチックフィルムを用いて、圧電性を高める方法が検討されている。
例えば、特開2010−186960号公報(特許文献3)には、無機圧電材料に匹敵する高い圧電性を有し、加工性に優れた高分子多孔体からなるエレクトレットとして、「気孔の平均アスペクト比が7以上30以下、厚み方向の平均気孔数が1以上10以下であり、厚み方向の平均気孔径が30μm以上200μm以下である」エレクトレットが提案されている(請求項1)。前記高分子多孔体としては、有機高分子発泡体を二軸延伸することにより得られるポリプロピレン発泡体が用いられている(実施例)。ここでは、アスペクト比が大きい気孔を形成することにより、気孔径が大きく、無機圧電体並みの圧電性能が得られると説明されている(段落0011)。また、気孔径としては、延伸方向と平行に割断した断面を走査型電子顕微鏡により観察して、厚み方向の径の平均値を採用している(段落0026)。
また、特開2011−18897号公報(特許文献4)、特開2011−210865号公報(特許文献5)には、平均最大垂直弦長が1〜40μm、かつ平均アスペクト比(平均最大水平弦長/平均最大垂直弦長)が0.7〜4.0の気泡を有し、体積気孔率20〜75%である圧電素子用多孔質樹脂シートが提案されている。このような多孔質樹脂シートは、プラスチックフィルムを構成する樹脂と相分離化剤を混合して、相分離化剤を島とする海島構造のシートを作製し、樹脂成分を硬化させた後、相分離化剤の島を除去することにより製造され、樹脂成分としては、ポリエーテルイミド、環状オレフィンポリマーが用いられている(実施例)。このような多孔質プラスチックフィルムに、絶縁破壊電圧の2/3以上の電圧を印加することで、100pC/N以上の圧電定数d33を得ることができることが開示されている(段落番号0025、表1)。
特許文献4は、高い圧電率及び高い圧縮応力を有する圧電素子用多孔質樹脂シートの提供を目的とするもので、双極子を形成する気泡を大きくして双極子の変化量を増やし、かつアスペクト比を小さくして厚み方向の弾性率を調節することにより目的を達成できるとしている(段落番号0013)。また、平均最大垂直弦長が40μmを超える場合には、帯電処理の際に気泡にかかる電圧密度が低くなり、火花放電が引き難くなると説明されている(段落番号0014)。具体的には、平均最大垂直弦長2.63μm〜4.80μmの多孔質樹脂フィルム(ポリエーテルイミド、シクロオレフィン共重合体、ポリスチレン)を用いた圧電フィルムの圧電定数がd33を66〜1449pC/Nであることが開示されている(表1)。
帯電処理によりエレクトレット化する材料としては上記のようなポリオレフィンだけでなく、フッ素樹脂系フィルムについても、帯電処理によりエレクトレット化することが知られている。例えば、特開平5−137920号公報(特許文献6)には、多孔質ポリテトラフルオロエチレンをエレクトレット化したエアフィルターが開示されている。
特開昭60−55034号公報 USP4654546号公報 特開2010−186960号公報 特開2011−18897号公報 特開2011−210865号公報 特開平5−137920号公報
http://www.emfit.com/en/sensors/products_sensors/emfit-film/ http://www.europrotech.com/Euro/trade/t_emfit2.htmlの表1 Masatoshi Nakayama, et al., "Piezoelectricity of Ferroelectret Porous Polyethylene Thin Film", Japanese Journal of Applied Physics 48(2009)
エレクトレット特性を有する多孔質樹脂フィルムは、圧電センサのように、帯電性に加えて、更に圧縮性も要求される用途に有用であると考えられる。この点、耐熱性、耐薬品性等の化学的特性に優れている多孔質フッ素樹脂フィルムを用いた圧電素子は、有用であると考えられるが、帯電のしやすさが、多孔質ポリオレフィンと比べて劣っているという問題がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性、耐薬品性等の化学的特性に優れたフッ素樹脂系プラスチックフィルムを用いて、帯電性を高めた圧電素子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記特許文献3〜5で説明されているように、高分子多孔質体を用いた圧電素子の圧電性能は、フィルムを構成する樹脂の種類とは別に、気孔の形状、気孔サイズなどの影響を受けると考えられる。従って、多孔質フッ素樹脂フィルムの場合も、高い圧電性能を実現するために、気孔の形状、気孔サイズ、気孔率などを調節することが重要であると考えられるが、現時点において、気孔の性状と圧電性との関係について明らかにした文献は見当たらない。
本発明者らは、多孔質フッ素樹脂フィルムについても、例えば、特許文献4,5で開示されているような垂直弦長に相当する、気孔のフィルム厚み方向の長さの影響が大きいと考えた。しかしながら、本発明者らが検討をしたところ、多孔質フッ素樹脂フィルムの気孔の形状については、長軸が面方向となる断面楕円に近似できる形状に限定されないこと、そして、気孔の垂直弦長に対応する、楕円の短軸の平均値と圧電性との間に、顕著な相関関係が認められないことが判明した。そこで、さらに検討を進めたところ、多孔質フッ素樹脂フィルムの気孔のうち、フィルムの厚み方向の長さが比較的大きい気孔の影響が大きく、圧電性との相関性が高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の圧電素子の製造方法は、多孔質フッ素樹脂フィルムからなる圧電素子の製造方法であって、厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で所定個数の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(厚み方向長さ上位平均値An)を指標として、多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程;及び前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理する工程を含む。
前記選択工程は、前記平均値が、所定の値以下の多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程であることが好ましく、前記所定の値は、多孔質フッ素樹脂フィルムの厚み、及び平均値の母数となる前記所定個数に依存して設定されることが好ましい。
また、前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを、加熱圧縮した後、圧電処理することが好ましく、この場合、前記加熱圧縮時の加熱温度は、100℃以上であることが好ましい。
前記圧電処理は、前記多孔質フッ素樹脂フィルムの片面から放電処理することにより行われることが好ましい。また、片面ずつ両面を処理しても構わない。例えば片面から負極に電圧を印加した電極でコロナ放電処理した後に逆の側から正極に電圧印加した電極でコロナ放電しても構わない。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、上記本発明の製造方法で製造されるもので、代表的には、延伸多孔質フッ素樹脂フィルムからなる圧電素子であって、厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で50個の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(A50)が3μm以下である多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子である。
前記厚み方向長さの平均値(A50)が0.5μm以上であることが好ましく、前記多孔質フッ素樹脂フィルムは、延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムであることが好ましく、また、気孔率40%以下であることが好ましい。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、前記多孔質フッ素樹脂フィルムの両面に、電極が取り付けられていてもよい。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、センサとして好適に用いることができる。また、本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子と、外部基板上の電極端子とが、異方導電性接着剤又は融点150℃以下の半田で接続されている圧電素子搭載基板としても、好適に用いられる。
本発明の圧電素子の製造方法は、高い圧電性を得ることができる多孔質フッ素樹脂フィルムを使用することで、高い圧電性を有する多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子を有効に製造することができる。従って、本発明の製造方法によれば、多孔質ポリオレフィンと比べて、一般に帯電しにくい多孔質フッ素樹脂フィルムであっても、実用可能な圧電性を付与した圧電素子の提供が可能となり得る。
本発明の製造方法の選択工程の一実施形態を示すフロー図である。 本発明における気孔サイズの定義を説明するための模式図である。 本発明における気孔サイズの定義を説明するための模式図である。 実施例で採用した圧電処理(コロナ放電)を説明するための模式図である。 実施例において採用した圧電定数(d33)の測定方法を説明するための図である。 上位50個の気孔の厚み方向長さ平均値(A50)と圧電値(d33)との関係を示すグラフである。 全空孔の厚み方向長さ平均値(Aall)と圧電値(d33)との関係を示すグラフである。 フィルム厚みの圧縮比と上位50個の気孔の厚み方向長さの平均値(A50)の圧縮比との関係を示すグラフである。 圧電フィルムNo.7の厚み方向断面のSEM写真(a)及び二値化処理した後の画像(b)である。 圧電フィルムNo.8の厚み方向断面のSEM写真(a)及び二値化処理した後の画像(b)である。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<圧電素子の製造方法>
本発明の製造方法は、多孔質フッ素樹脂フィルムからなる圧電素子の製造方法であって、厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で所定個数の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(厚み方向長さ上位平均値An)を指標として、多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程;及び前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理する工程を含む。
すなわち、本発明の製造方法は、高い圧電性を得ることができる多孔質フッ素樹脂フィルムを選択的に採用するところに特徴がある。詳述すると、多孔質フィルムの気孔のうち、圧電性と相関性が高いパラメータは、気孔の厚み方向長さであり、しかも対象となる気孔は、多孔質フッ素樹脂フィルムの全ての気孔の平均値よりも、厚み方向長さが長い気孔の寄与が大きい。このようなことから、本発明においては、厚み方向長さ上位平均値Anを選択指標として、圧電性と相関性の高い厚み方向長さを有する多孔質フッ素樹脂フィルムを選択し、これを圧電処理している。
(1)選択工程
図1は、本発明の製造方法における選択工程の代表的処理フローを示す。このフロー図に従って、選択工程を具体的に説明する。
多孔質フッ素樹脂フィルムを、FIB加工や凍結破断により、フィルムの厚み方向と平行に切断し、得られた断面を、走査型電子顕微鏡等により撮像して、画像データを取得する。
ここで、フィルムの切断は、フィルムの厚み方向と平行に切断した断面が得られる切断であればよく、フィルムの長手方向と平行に切断する場合と、幅方向と平行に切断する場合とがあるが、本発明では特に限定しない。ただし、延伸多孔質フッ素樹脂フィルムの場合、延伸処理により異方性を有することから、延伸方向に沿って(二軸延伸の場合は最初に延伸する方向に沿って)平行に切断した面を取得することが好ましい。
断面画像データの取得方法について、使用する顕微鏡の種類、撮像倍率、画像解像度、取得する断面サイズなどは特に限定しないが、電界放出型の走査型電子顕微鏡を用いることが好ましい。このような顕微鏡には、例えば、走査型電子顕微鏡としてUltra55(Carl Zeiss社製)が挙げられる。解像度及び観察視野サイズは、フィルムの長手方向×厚み方向が114μm×30μm(1024ビクセル×270ビクセル)程度とすることが好ましい。
次に、取得した断面画像を、気孔部分と気孔でない部分とが十分に区別できるように、所定の閾値を基準に2値化処理する。2値化処理のための具体的閾値は、取得する画像解像度、階調などに応じて適宜設定される。例えば、住友金属テクノロジー株式会社の粒子解析ヴァージョン3という画像処理ソフトを用いて、画像モード:モノクロ、256階調のうち、35の閾値で2値化変換することにより、気孔部分を黒色とし、樹脂部分を白色とした画像データを得ることができる。
得られた2値化画像データに基づき、各気孔の厚み方向長さaを計測する。ここで、気孔の厚み方向長さaとは、各気孔形状を内包する最小の長方形(縦:厚み方向、横:フィルム面内方向)を想定し、その縦方向の長さのことをいう。
従って、2値化処理した結果、図2のように、得られる楕円の長軸がフィルムの面方向にほぼ平行の場合には短軸が、厚み方向長さaとなる。一方、2値化処理した結果、得られる気孔形状が、図3(a)のように、フィルムの面に対して傾きを有する楕円であったり、図3(b)(c)のように、楕円以外の形状の場合、これらの気孔を囲む仮想最小長方形(図中の破線)の縦方向の長さが、厚み方向長さaとなる。
以上のようにして得られた2値化画像に基づいて、気孔の厚み方向長さを降順に並べ、最長のものから所定個数(n)の気孔の厚み方向長さの平均値(An)を求める。
ここで、平均値の母数とする個数nは、圧電値との相関係数が高くなる個数であり、好ましくは相関係数の絶対値が0.8以上となる個数が好ましい。このような個数は、フッ素樹脂フィルムの種類、製造方法等、二値化処理方法(階調など)により一概にはいえないが、通常40〜80個程度であり、好ましくは50個程度である。母数が多くなりすぎると、全気孔の平均値に近づき、圧電性との相関性が低下する。一方、母数が少なくなりすぎると、選択指標を設定するための断面の位置などによるデータのばらつきの影響を受けやすくなる。
求めた厚み方向長さの平均値Anが、所定の値(P)以下となる多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する。上記方法で求められる厚み方向長さの平均値Anと圧電性とは、負の相関性がある。理由は明らかではないが、本発明者らの研究によると、上位n個の気孔の厚み方向長さの平均値AnについてAnが小さいほど、高い圧電性(大きなd33値)が得られる傾向にある。圧電処理として、例えばコロナ放電を行うが、その際に厚み方向の長さが短いと、孔内で放電が起こり、帯電、分極しやすいということかもしれない。Anの値が大きいということは、厚み方向長さが大きい空孔が多く存在することを意味することから、このような多孔質フッ素樹脂フィルムよりも、Anの値が小さい、すなわち厚み方向長さが比較的小さい空孔が多く存在する方が、フィルム全体として、効率よく帯電されるということかもしれない。
従って、厚み方向長さの平均値Anが所定値(P)以下の多孔質フッ素樹脂フィルムを選択することで、圧電処理の方法を変えずに、高い圧電性を得ることが可能となる。
ここで、基準とする所定値(P)は、平均値Aを求める母数(n)により異なるが、平均値Anと圧電値d33との関係に基づき、所望の圧電値が得られる値を、所定値Pとして設定すればよい。
例えば、n=50の場合、所定値Pは、3μm程度とすることが好ましい。つまり、厚み方向長さが大きな気孔が少ない、あるいは最大気孔の厚み方向長さは小さい方が、圧電性が高い多孔質フッ素樹脂フィルムがえられやすい。
本発明で閾値として採用する「所定値P以下」は、採用する切断面、切断部位のばらつきと関係から、通常、誤差プラスマイナス20%程度は認められる。従って、上位50個の厚み方向長さの平均値(A50)が「3μm以下」という場合には、閾値として「2.5〜3.5μm」程度を採用する場合と均等の意味となる。
尚、図1に示す処理フローでは、「Anが所定値P以下」の関係を採用したが、本発明の選択工程はこれに限定しない。Anの逆数やAnをある数式処理した値と、これに対応する所定値とを比較してもよく、比較するパラメータに応じて、選択手法を適宜設定すればよい。例えば、Anの逆数を用いる場合には、所定の設定値以上を選択するようにしてもよい。
以上のように、選択指標として、厚み方向長さが最大のものから上位n個の気孔の厚み方向長さの平均値Anを用いることにより、フッ素樹脂フィルムの種類(フッ素樹脂の種類、フィルムの製造方法、フィルムの厚みなど)にかかわらず、フィルム断面のSEM画像を得て、特定のデータ処理を行うだけで、高い圧電性を得ることができる多孔質フッ素樹脂フィルムを効率よく選択することができる。具体的には、製造された多孔質フッ素樹脂フィルムの適宜断面を選び、処理により得られた厚み方向長さaが所定値を充足する製造ロットの多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理することで、効率よく、圧電性の高いフッ素樹脂フィルムを製造することが可能となる。
(2)多孔質フッ素樹脂フィルム
上記選択工程に供することができる多孔質フッ素樹脂フィルム、すなわち素材となる多孔質フッ素樹脂フィルムは、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることが好ましいが、他に、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロ・テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、及びこれらの1種又は2種以上とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合物等の多孔質フィルムも用いることができる。
多孔質フッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂のファインパウダーと潤滑剤との混合物(ペースト)をシート状またはチューブ状に押出し、必要に応じて圧延した後、延伸、燒結を行う方法、あるいは、PTFEのディスパージョン液を、基材上に塗布等し、分散媒を蒸発乾燥後、フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱して焼結後に延伸する方法などにより製造することができる。チューブ状押出物の場合には、切開によりフィルム状とすればよい。延伸処理は、一軸延伸であってもよいし、2軸延伸であってもよい。
このようにして製造される多孔質フッ素樹脂フィルムとしては、その製造方法、延伸方法等により、種々の気孔形状、気孔率を有しているが、通常、延伸多孔質PTFEの場合、ノードと称されるPTFE粒子塊(二次粒子)部分を、フィブリルと称される繊維状のPTFE部分でつないだような網状構造を有している。このような網状構造を有するフィルムでは、フィブリル間、フィブリル・ノード間間隙が気孔に該当する。
延伸多孔質フッ素樹脂フィルムとしては、市販のものを用いることもできる。例えば、ゴアテックス(登録商標)、住友電工ファインポリマーの「ポアフロン」(登録商標)などを用いてもよい。
フィルムの厚みは、特に限定しないが、圧電処理のしやすさ、圧電特性の付与効率、圧電センサとしての可撓性などの点から、通常、5〜80μmであることが好ましい。
上記のような多孔質フッ素樹脂フィルムを、さらに圧縮処理してもよい。圧縮により、多孔質フッ素樹脂フィルムを薄くでき、ひいては気孔の厚み方向長さを小さくできる傾向にある。厚み方向の圧縮は、所定サイズのフィルムをプレス機等でプレスすることにより行ってもよいし、長尺のフィルムを圧延ロールで圧延しながら巻き取るようにしてもよい。
上記圧縮処理は、加熱下で行うことが好ましい。加熱下で圧縮することにより、厚み方向長さを効率よく小さくできる。加熱温度は、多孔質フッ素樹脂フィルムを構成するフッ素樹脂の種類により適宜選択されるが、通常、100℃以上、好ましくは110〜200℃である。
フィルム厚みについての圧縮比率(圧縮後の厚み/圧縮前の厚み)は、特に限定しないが、0.45以下とすることが好ましく、より好ましくは0.40以下である。圧縮比率を0.45以下とすることにより、上位n個の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値Anを効率よく小さくできる傾向にある。
(3)圧電処理工程
圧電処理方法は、特に限定せず、多孔質プラスチックフィルムのエレクトレット化の分野ですでに知られている圧電処理方法を採用することができる。
圧電処理は、延伸多孔質フッ素樹脂フィルムの両面に電極を設けた後、両電極間に、高電圧を印加する方法、電子線を照射する方法、図4に示すように、金属板上に延伸多孔質フッ素樹脂フィルムを載置し、該フィルムから所定間隔をあけて、コロナ放電により荷電させる方法などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、コロナ放電する方法である。
コロナ放電は、多孔質フッ素樹脂フィルムの片面から放電処理することにより行われることが好ましい。また、片面ずつ両面を処理しても構わない。例えば片面から負極に電圧を印加した電極でコロナ放電処理した後に逆の側から正極に電圧印加した電極でコロナ放電しても構わない。
なお、コロナ放電に際しては、多孔質フッ素樹脂フィルムの気孔内の空気をヘリウムやアルゴンに置換してから行ってもよい。不活性ガスで気孔を充満しておくことにより、気孔内での放電が発生しやすくなり、圧電性の起源となる気孔部の帯電が発生しやすくなる傾向にある。
多孔質フッ素樹脂フィルムとして、積層タイプのフィルムを用いる場合、所定厚みに積層した積層フィルムを圧電処理してもよいし、先に各薄膜フィルムを圧電処理した後、積層してもよい。
以上のようにして作製される圧電素子は、気孔サイズに基づき、高い圧電定数(d33:pC/N)を有する。ここで、圧電定数(d33:pC/N)とは、厚さ方向に加えた応力と電極に発生する電荷の関係を示す係数である。
<圧電素子>
本発明の圧電素子は、多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理してなるもので、上記本発明の製造方法に基づいて製造される、高圧電性の圧電素子である。すなわち、上述のように、高い圧電性能が得られ得る多孔質フッ素樹脂フィルムを用いて製造されたものである。
代表的には、延伸多孔質フッ素樹脂フィルム(好ましくは延伸多孔質PTFE)で、上位50個の厚み方向長さの平均値(A50)が3μm以下、好ましくは2.5μm以下の延伸多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理したものである。更に、具体的には、延伸多孔質フッ素樹脂フィルム(好ましくは延伸多孔質PTFE)をFIB加工や凍結破断により、延伸方向に沿って切断した切断面を、走査型電子顕微鏡(例えば、電界放出型顕微鏡Ultra55(Carl Zeiss社製))を用いて、倍率1000倍程度で撮影した画像を得る。得られた断面画像を、画像処理ソフト(例えば、住友金属テクノロジー株式会社の粒子解析ヴァージョン3)で、画像モード:モノクロ、256階調のうち、35の閾値で2値化変換した画像データを作成するとともに、さらに作成された画像に基づいて、厚み方向長さが最大から50個の気孔について算出した厚み方向長さの平均値(A50)が3μm以下となる多孔質フッ素樹脂フィルムを、圧電処理したものである。
圧電処理の前後で、気孔サイズは原則として変化しないと考えられるので、上記方法で算出される厚み方向長さ平均値は、圧電処理前の厚み方向長さ平均の誤差範囲内となる。ここでいう誤差範囲とは、取得する断面の部位が違うことに基づく誤差であり、設定平均値の±20%程度である。
従って、本発明の圧電素子は、多孔質フッ素樹脂フィルムを、上述のように2値化処理して、母数(n)=50個として算出される厚み方向長さ平均値A50が3μm以下とは、誤差を考慮した場合には、最大、3.5μm以下のものまで対象範囲内となる。好ましくは2.5μm以下のものである。
上述のように、厚み方向長さaが最大のものから上位所定個数の気孔の厚み方向長さ平均値Anと圧電値d33とは反比例する相関性がある。具体的には、A50が3.5μmを超えると、圧電値は15〜45pC/Nといった低い圧電性となる。一方、A50が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下とすることにより、圧電値d33を70pC/N以上とすることが可能となる。
本発明の圧電素子に用いる多孔質フッ素樹脂フィルムの厚みは、5〜80μmであることが好ましく、より好ましくは7〜30μmである。かかる厚み範囲のフィルムにおいて、厚み方向の孔サイズと圧電性能との間に強い相関性が認められるからである。フィルム厚みは、単独の1枚のフィルムとして、上記厚みを有するものであってもよいし、複数枚積層することにより、厚みを上記範囲内とするものであってもよい。ただし、複数枚積層する際には、積層間が接着していることが望ましい。接着していない場合、形成される空気の層によりうまく圧電処理ができないからである。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルムにおいて、A50は0.5μm以上であることが望ましい。本発明の多孔質フッ素樹脂フィルムにおいては、厚み方向の変形により圧電性が発現するが、A50が0.5μm未満では適度な変位を得ることが困難な傾向にあるからである。
本発明で使用する多孔質フッ素樹脂フィルムは、気孔率が40%以下であることが好ましく、より好ましくは10〜40%である。気孔率が大きいと、繰り返し応力を受けたり、長時間にわたって応力を受け続けると、経時的に変形が起こり、圧電性能が変化してしまうからである。
ここで、気孔率とは、多孔質フッ素樹脂フィルムの見かけの体積(V)に占める気孔体積(V)の割合をいい、下記式より求められる。
気孔率(%)=(V/V)×100
式中、フィルムの見かけの体積Vは、フィルムの面積と厚みにより算出される。気孔体積(V)は、多孔質フィルムの乾燥重量を樹脂の真比重(PTFEなら2.17g/cm3)で除することにより算出されるフィルムの樹脂部分体積(R)を、多孔質フィルムの見かけの体積から差し引くことにより算出される(V=V−R)。
<圧電素子の用途>
以上のように圧電処理した多孔質フッ素樹脂フィルムの両面に、金属箔を貼付、あるいは金属を蒸着等することにより電極を取り付けることで、高圧電率を有する圧電素子を得ることができる。圧電素子はその表面に耐湿性の向上や衝撃防止などのために、PETフィルムなどの保護フィルムを設けることが好ましい。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、フッ素樹脂フィルムの特性に基づいて、耐薬品性、耐熱性、耐湿性に優れ、且つ可撓性を有し、しかも優れた圧電性能を有している。本発明の圧電処理した延伸多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、センサとして用いることができる。具体的には、超音波センサ、接触センサ、感圧センサ等の用途に利用できる。
また、本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、フレキシブルプリント配線板やリジッドプリント配線板等の外部基板に、搭載して用いられることができる。本発明に係る圧電素子搭載基板では、本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子が、異方導電性接着剤又は融点が150℃以下の半田を用いて、外部基板の電極端子と接続されているところに特徴がある。
ここで、異方導電性接着剤とは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂に、導電性粒子(Au、Ag、Ni、Cu、半田等の金属粒子など)及び硬化剤(イミダゾール系、ヒドラジド系、アミン系など)を含有する接着剤である。好ましくは接続しようとする電極サイズに合わせたフィルム状異方導電性接着剤であり、より好ましくは導電性粒子として針状粒子を用いたフィルム状異方導電性接着剤である。異方導電性接着剤は、通常、130〜180℃に加熱して軟化溶融させた後、硬化することにより、被着体となる圧電素子と外部電極端子とを接続する。
融点が150℃以下の半田(「低温半田」と称する場合がある)としては、例えば、Sn−52In(融点117℃)、In−3Ag(融点141℃)、Sn−30In−54Bi(融点81℃)、16Sn−52Bi−32Pb(融点95℃)、42Sn42−58Bi(融点138℃)などが挙げられる。このような低温半田では、100〜150℃で加熱して軟化溶融させた後、硬化することにより、被着体となる圧電素子と外部電極端子とを接続する。
異方導電性接着剤、低温半田のいずれも、上記のように、接続時に加熱する必要があるが、多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子は、ポリオレフィンフィルム製圧電素子やPVDFフィルム製圧電素子と比べて耐熱性に優れることから、フィルム両面に設けられた電極であっても、加熱により、外部電極端子との接続作業を行うことができるという利点がある。
すなわち、ポリオレフィンフィルムやポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム等の従来のプラスチックフィルム製圧電素子では、耐熱性との関係から、外部基板への接続は、加熱を要しないビス留め等に限定されていたため、作業性の点、コスト面、さらにはビス留めのためのスペースを要するといった点などから、改善が求められていたが、圧電素子として、耐熱性に優れた多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子を用いることにより、これらの課題が解決できることになる。
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
〔測定、計算方法〕
はじめに、本実施例で行なった測定出方法について説明する。
(1)気孔サイズ
延伸多孔質PTFEフィルムを液体窒素中で冷却させた後、フィルム厚み方向と平行で且つフィルム延伸方向と平行に破断して得られる断面を、低加速高分解能走査電子顕微鏡(Curl Zeisss社 Ultra55)、加速電圧1.5kV、傾斜0度、観測倍率1000倍で撮影した。得られた断面画像(長手方向×厚み方向が114μm×30μmのエリアの画像)を、住友金属テクノロジー株式会社の粒子解析Ver3の画像処理ソフトを用いて、画像モード:モノクロ、256階調のうち35の閾値で2値化変換し、エリア内の気孔が黒色部分として得られる2値化画像を得た。この2値化画像に基づいて、各気孔を内包する最小の長方形(縦:厚み方向、横:フィルム面内方向)の縦方向長さa及び横方向長さbを最大値から降順で並べ、上位50個(母数n=50)の平均値(縦方向A50、横方向B50)及び全気孔の平均値(縦方向Aall、横方向Ball)を算出した。
(2)圧電定数(d33:pC/N)
図5に示すように、サンプルフィルム11の両面に、Al箔を重ねて、3×3cm2の電極を形成した。交流電界(1V、90Hz)を印加した際の厚み方向(z方向)の振動をレーザードップラー計で測定し、フィルム11の厚み方向の圧電定数(pC/N)を算出した。
(3)気孔率(%)
4.5cm×4.5cmの多孔質フッ素樹脂フィルムの厚みを測定し、見掛けの体積(V)を求める。また、その多孔質フッ素樹脂フィルムの乾燥重量を樹脂の真比重(PTFEなら2.17g/cm3)で除することにより算出されるフィルムの樹脂部分体積(R)を、多孔質フッ素樹脂フィルムの見かけの体積から差し引くことにより、気孔体積Vを算出する(V=V−R)。算出した、多孔質フッ素樹脂フィルムの見かけの体積(V)に占める気孔体積(V)の割合を、下記式より求める。
気孔率(%)=(V/V)×100
〔多孔質フッ素樹脂フィルムの気孔サイズと圧電性能の関係〕
フィルム厚み、気孔率、気孔サイズが種々異なる9種類の延伸多孔質PTFEフィルム(No.1〜9)、さらに室温下、3MPaで60分間、圧縮処理(No.10,11)、130℃加熱下で、3MPaで20分間、圧縮処理した多孔質PTFEフィルム(No.12〜15)について、上記方法により気孔サイズを算出した。次いで、図4に示すように、金属板上に延伸多孔質フッ素樹脂フィルムを載置し、フィルムから所定間隔をあけて、コロナ放電(アルゴン雰囲気下、針電極−8kV、90秒間飽和電流が流れるまで処理)することにより、圧電処理を行った。得られた圧電フィルムについて、下記測定方法により、圧電値を測定した。測定結果を表1に示すとともに、上位50個平均法で求めた厚み方向長さ平均値Aと圧電値との関係を示すグラフを図6、全気孔平均法で求めた厚み方向長さ平均値Tと圧電値との関係を示すグラフを図7に、それぞれ示す。各グラフにおいて、No.10,11の測定結果は白抜き四角(□)、No.12−15の測定結果は黒三角(▲)、No.1−10の測定結果は黒菱形(◆)で表わされている。
また、厚み圧縮比率(圧縮後の厚み/圧縮前の厚み)と圧縮前後のA50との関係を表2及び図8に示す。白菱形(◇)は、常温で圧縮した場合であり、黒菱形(◆)は、加熱圧縮した場合を示す。
図6からわかるように、上位50個平均法により基づく厚み方向平均値A50を横軸、圧電値(d33)を縦軸とするグラフにおいて、負の相関性(相関係数−0.90)が認められ、厚み方向長さ平均値A50が4.5μmを超えると、圧電値向上効果は認められなかった。A50は、3μm以下とすることで、高い圧電性が得られやすいことがわかる。
No.8とNo.10とを比べると、圧縮処理による厚み方向長さ平均値A50は、誤差範囲内であり、圧縮処理により、厚み方向長さの低減が得られにくかった。一方、No.7とNo.12、No.8とNo.13、No.9とNo.14、No.3とNo.15をそれぞれ比較すると、いずれの組合せにおいても厚み方向長さが小さくなっており、加熱下での圧縮処理により、有効に厚み方向長さを低減できることがわかる。
一方、図7からわかるように、厚み方向長さの全気孔平均Aallと圧電値d33との間に、特別な相関性が認められなかった(相関係数−0.26)。従って、多孔質フッ素樹脂フィルムを用いて、高い圧電性を付与しようとする場合、厚み方向長さを最大値から上位所定個数の平均値に基づいて、当該平均値(本実施例ではA50)が小さい多孔質フッ素樹脂フィルムを用いて圧電処理することが効果的であることがわかる。
また、図8から、フィルムの圧縮比率(圧縮後の厚み/圧縮前の厚み)とA50の圧縮比率との関係は正比例関係にないことがわかる。フィルム厚みの圧縮比率を0.45以下、好ましくは0.40以下とすることで、A50を効率よく小さくできることがわかる。
図9は、No.7の延伸多孔質PTFEフィルムのSEM画像(a)及び上記2値化処理後の画像(b)である。図10は、No.8のSEM画像(a)及び上記2値化処理後の画像(b)である。多孔質フッ素樹脂の製造方法の違いに基づいて、No.8では、網状構造をしていて、比較的面方向に伸びる楕円に近い気孔が多くあるのに対して、No.7では、円形に近い気孔が多かった。このように気孔形状が大きく異なる場合(幅方向長さ)が大きく異なると考えられる多孔質フッ素樹脂であっても、フィルムの厚み方向長さに着目して、最大長さの気孔から所定個数の厚み方向長さの平均値Anを指標として選択することで、有効に高い圧電性能が得られ得るフッ素樹脂フィルムを選択することが可能となる。
本発明の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子の製造方法によれば、多孔質フッ素樹脂の種類(樹脂の種類、気孔率、延伸倍率、製造方法など)にかかわらず、厚み方向長さの上位所定個数平均値というパラメータのみに基づいて、高い圧電性能が得られやすい多孔質フッ素樹脂フィルムを選択でき、ひいては、従来、多孔質ポリオレフィンフィルムと比べて、高い圧電値が得られにくいと考えられていた多孔質フッ素樹脂フィルムを用いて、高い圧電素子を得ることが可能になる。よって、耐熱性、耐薬品性といった厳しい条件で用いられる用途の圧電素子、圧電センサとして有望である。

Claims (14)

  1. 多孔質フッ素樹脂フィルムからなる圧電素子の製造方法であって、
    厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で所定個数の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(厚み方向長さ上位平均値An)を指標として、多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程;及び
    前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを圧電処理する工程
    を含む圧電素子の製造方法。
  2. 前記選択工程は、前記平均値が、所定の値以下の多孔質フッ素樹脂フィルムを選択する工程である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記所定の値は、多孔質フッ素樹脂フィルムの厚み、及び平均値の母数となる前記所定個数に依存して設定される請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記選択した多孔質フッ素樹脂フィルムを、加熱圧縮した後、圧電処理する請求項1〜3のいずれかに記載の圧電素子の製造方法。
  5. 前記加熱圧縮時の加熱温度は、100℃以上である請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記圧電処理は、前記多孔質フッ素樹脂フィルムの片面から放電処理することにより行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造される多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子。
  8. 多孔質フッ素樹脂フィルムからなる圧電素子であって、
    厚み方向の切断面に基づく、気孔の厚み方向長さが最長の気孔から降順で50個の気孔について得られた、厚み方向長さの平均値(A50)が3μm以下である多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子。
  9. 前記厚み方向長さの平均値(A50)が0.5μm以上である請求項7又は8に記載の多孔質フッ素樹脂フィルム製圧電素子。
  10. 前記延伸多孔質フッ素樹脂フィルムは、延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムである請求項7〜9のいずれかに記載の圧電素子。
  11. 前記多孔質フッ素樹脂フィルムは、気孔率40%以下である請求項7〜10のいずれかに記載の圧電素子。
  12. 前記多孔質フッ素樹脂フィルムの両面に、電極が取り付けられている請求項7〜11のいずれか1項に記載の圧電素子。
  13. 請求項7〜12のいずれか1項に記載の圧電素子を用いたセンサ。
  14. 請求項7〜12のいずれか1項に記載の圧電素子と、外部基板上の電極端子とが、異方導電性接着剤又は融点150℃以下の半田で接続されている圧電素子搭載基板。
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