以下、添付図面を参照して、実装状態判別装置および実装状態判別方法の実施の形態について説明する。
最初に、実装状態判別装置1の構成について図1を参照して説明する。
実装状態判別装置1は、図1に示すように、測定部2、記憶部3、処理部4および表示部5を備え、図2に示す回路基板13における一対の導体パターン11,12によって互いに並列接続されるべき複数(本例では一例として3個)のコンデンサ21a〜21c(以下、区別しないときには「コンデンサ21」ともいう)の実装状態(各コンデンサ21a〜21cが実装状態であるか非実装状態であるか)を判別する。この場合、各導体パターン11,12は、同図に示すように、予め規定されたパターン形状で回路基板13に形成されている。本例では一例として、導体パターン11は、回路基板13の内層グランドパターンとして平面状のパターン形状に形成されている。一方、導体パターン12は、電源ラインとして直線状のパターン形状に形成されている。また、各コンデンサ21a〜21cは、図2,3に示すように、各導体パターン11,12における予め規定された位置に接続されている。この場合、各コンデンサ21a〜21cは、一例として、導体パターン11にはビア14aおよびランド15を介して接続され、導体パターン12にはビア14bおよびランド15を介して接続されている。以下、ビア14a,14bを特に区別しないときには、「ビア14」ともいう。
測定部2は、図1,2に示すように一対のプローブ6,7を介して、各導体パターン11,12上に1つずつ規定された一対の測定点P1,P2(本例では、図2に示すように、ビア14a,14bを介して導体パターン11,12に接続されたランド15上に規定された測定点P1,P2)に接続される。また、測定部2は、各プローブ6,7から各導体パターン11,12間に、つまり導体パターン11,12とコンデンサ21a〜21cとによって構成される回路C(図2,3参照)に対して、周波数をスイープ(変化)させつつ測定用の交流信号(一例として、交流定電流であって、以下「測定用信号S1」ともいう)を供給すると共に、これに伴って各導体パターン11,12間に発生する検出信号S2(この例では、交流電圧)をプローブ6,7を介して検出する。また、測定部2は、測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差を周波数毎に測定する。つまり、測定部2は、測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化(位相差の周波数特性)を測定する。また、測定部2は、周波数毎に測定した位相差(位相差の周波数特性)を示す特性データD1を処理部4に出力する。
記憶部3は、一例として半導体メモリやハードディスク装置を用いて構成されて、処理部4のための動作プログラムおよび後述する判別用データD2を記憶する。
処理部4は、一例としてCPUを用いて構成され、上記した周波数特性の測定を測定部2に対して実行させる測定処理を実行する。また、処理部4は、測定部2から出力される特性データD1、および記憶部3に記憶されている判別用データD2に基づき、コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理を実行する。また、処理部4は、判別処理の結果を表示部5に表示させる表示処理を実行する。
次に、回路Cについての位相差の周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化)、および記憶部3に記憶される判別用データD2について、具体的に説明する。
図2,3に示すように、複数(本例では3個)のコンデンサ21a〜21cが各導体パターン11,12間に実装されている回路Cは、図4に示す等価回路として表される。なお、この等価回路において、L1〜L3は、各コンデンサ21a〜21cと各導体パターン11,12とを接続する各ビア14のインダクタンス(コンデンサに等価的に接続されたインダクタンス成分)を表し、またL4,L5は、各コンデンサ21a〜21c間を接続する各導体パターン11,12のインダクタンスを表している。
ここで、この回路Cのように、複数のコンデンサ21a〜21cが並列接続されているときには、各コンデンサ21a〜21cと各コンデンサ21a〜21cに接続されたインダクタンス成分(上記の等価回路におけるインダクタンスL1〜L5)とによってコンデンサ21a〜21cと同数(この例では、3つ)の共振回路が構成される。また、コンデンサの容量やインダクタンスの値が異なるときには各共振回路の共振周波数fsが異なる。なお、回路Cに実装されるべき各コンデンサ21a〜21cの全てが実装状態である場合におけるコンデンサ21aに対応する共振周波数fsを「共振周波数fs1」ともいい、コンデンサ21bに対応する共振周波数fsを「共振周波数fs2」ともいい、コンデンサ21cに対応する共振周波数fsを「共振周波数fs3」ともいう(図5参照)。
また、各コンデンサ21a〜21cの静電容量が同一の場合にも、各測定点P1,P2から各コンデンサ21a〜21cまでの導体パターン11,12の長さが相違して、インダクタンスL4,L5が相違するため、これに起因して、各コンデンサ21a〜21cと各インダクタンス成分とによって構成される各共振回路の共振周波数fsが異なることとなる。
共振周波数fsが互いに異なる複数の共振回路を有する上記の回路Cに対して周波数を変化させつつ測定用信号S1としての交流信号を供給し、測定用信号S1の供給に伴って発生する検出信号S2の位相と測定用信号S1の位相との位相差(回路Cについての電気的パラメータ)を測定した場合、その位相差の周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴う位相差の変化)には、各共振回路の各共振周波数fsに近い周波数において位相差が急激に上昇に転じる転換点Pt1〜Pt3(図5参照:以下、区別しないときには「転換点Pt」ともいう)が現れる。つまり、位相差の周波数特性には、コンデンサの数(共振回路の数)と同数の転換点Ptが現れる。
図5に示す周波数特性図は、上記の等価回路においてコンデンサ21aの静電容量が1μF、コンデンサ21bの静電容量が0.5μF、コンデンサ21cの静電容量が0.1μFで、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5が20nH、各ビア14のインダクタンスL1,L2,L3が10nHのときに、測定部2によって測定される測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差の周波数特性を表している。なお、同図および後述する図6〜図12において、各コンデンサ21a〜21cを「21a」「21b」「21c」の符号で示すと共に、実装状態を「○」、非実装状態を「×」で示す。
図5の周波数特性図から明らかなように、コンデンサ21a〜21cが正しく実装されている回路C(図4の等価回路)についての位相差の周波数特性には、コンデンサ21a〜21cの数と同数(この例では、3つ)の転換点Pt1〜Pt3が各共振周波数fs1〜fs3に近い周波数(具体的には、各共振周波数fs1〜fs3よりもそれぞれやや低い周波数)において現れている。なお、本例のように各コンデンサ21a〜21cの静電容量が互いに相違する場合には、原則として、静電容量の小さなコンデンサ21ほど対応する共振周波数fsが高くなる。
また、図5の周波数特性図から明らかなように、周波数の低い順に見て最初に現れた転換点Pt(以下、「最初の転換点Pt」ともいう)、つまり実装状態の各コンデンサ21の中で静電容量が最も大きいコンデンサ21に対応する転換点Pt(この例では、コンデンサ21aに対応する転換点Pt1)において、位相差が−90°〜−80°の値から急激に上昇に転じる。また、この周波数特性図から明らかなように、周波数の低い順に見て2番目以降に現れた転換点Pt(以下、「2番目以降の転換点Pt」ともいう:この例では、コンデンサ21b,21cに対応する転換点Pt2,Pt3)の周波数よりもやや低い周波数において位相差が70°〜80°の値から20°〜30°急激に下降し、その転換点Ptにおいて急激に上昇に転じる。
一方、各コンデンサ21a〜21cのいずれかが非実装状態のときの位相差の周波数特性には、実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptのみが現れ、非実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptは現れない。例えば、コンデンサ21a,21bが実装状態で、コンデンサ21cが非実装状態のときの位相差の周波数特性についてのシミュレーション結果を図6に示す。同図の周波数特性図から明らかなように、この例では、実装状態のコンデンサ21a,21bに対応する転換点Pt1,Pt2のみが現れ、非実装状態のコンデンサ21cに対応する転換点Pt3は現れない。
また、図7に示すように、コンデンサ21aが実装状態で、コンデンサ21b,21cが非実装状態のときには、コンデンサ21aに対応する転換点Pt1のみが現れ、コンデンサ21cに対応する転換点Pt2,Pt3は現れない。また、図8に示すように、コンデンサ21a,21cが実装状態で、コンデンサ21bが非実装状態のときには、コンデンサ21a,21cに対応する転換点Pt1,Pt3のみが現れ、コンデンサ21bに対応する転換点Pt2は現れない。さらに、図5〜図8の各周波数特性図から明らかなように、転換点Pt2,Pt3が2番目以降の転換点Ptとして現れたときには、その転換点Ptにおける位相差の値が、その転換点Ptが現れないときの位相差の値よりも小さな値となる。
また、図9に示すように、コンデンサ21b,21cが実装状態で、コンデンサ21aが非実装状態のときには、コンデンサ21b,21cに対応する転換点Pt2,Pt3のみが現れ、コンデンサ21aに対応する転換点Pt1は現れない。また、図10に示すように、コンデンサ21cが実装状態で、コンデンサ21a,21bが非実装状態のときには、コンデンサ21cに対応する転換点Pt3のみが現れ、コンデンサ21a,21bに対応する転換点Pt1,Pt2は現れない。また、図11に示すように、コンデンサ21bが実装状態で、コンデンサ21a,21cが非実装状態のときには、コンデンサ21bに対応する転換点Pt2のみが現れ、コンデンサ21a,21cに対応する転換点Pt1,Pt3は現れない。さらに、図12に示すように、全てのコンデンサ21a〜21cが非実装状態のときには、各転換点Pt1〜Pt3のいずれも現れない。また、図9〜図11の各周波数特性図から明らかなように、転換点Pt1〜Pt3が最初の転換点Ptとして現れたときには、その転換点Ptにおける位相差の値は、−80°よりも大きな値となる。
このため、例えば、各コンデンサ21の実装状態において測定される位相差の値であって、各コンデンサ21が実装状態のときに現れる各転換点Ptにおける位相差の測定値(後述する周波数範囲fr内のいずれかの周波数における位相差の測定値および複数の測定値の平均値の少なくとも一方の一例)に対して、コンデンサ21の静電容量やインダクタンスのばらつき、およびノイズの影響などを考慮した値(余裕値)を加算した値(上記した転換点Ptにおける位相差の測定値よりも大きく規定された値)を上限値θUとして予め規定すると共に、−80°(上記した転換点Ptにおける位相差の測定値よりも小さく規定された値)を下限値θLとして予め規定し(図5参照)、測定した位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較することで、そのコンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができる。
具体的には、位相差の測定値θmが上限値θU以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたときには、そのコンデンサ21が実装状態であると判別し、その条件を満たしていないときには、そのコンデンサ21が非実装状態であると判別する。なお、以下の説明において、コンデンサ21aに対応する上限値θUを「上限値θU1」ともいい、コンデンサ21bに対応する上限値θUを「上限値θU2」ともいい、コンデンサ21cに対応する上限値θUを「上限値θU3」ともいう(図5参照)。
また、各コンデンサ21a〜21cにそれぞれ対応する各共振周波数fsは、非実装状態のコンデンサ21が存在するか否かによって変動する。また、各共振周波数fsは、コンデンサ21a〜21cの静電容量のばらつきや、各ビア14および導体パターン11,12のインダクタンスのばらつきなどによっても変動する。このため、実装されるべき全てのコンデンサ21が実装状態である回路C(良品の回路C)における各共振周波数fs1〜fs3をそれぞれ含む予め決められた幅の周波数範囲fr(以下、コンデンサ21aに対応する周波数範囲frを「周波数範囲fr1」ともいい、コンデンサ21bに対応する周波数範囲frを「周波数範囲fr2」ともいい、コンデンサ21cに対応する周波数範囲frを「周波数範囲fr3」ともいう:図5参照)を設定し、その周波数範囲fr内のいずれかの周波数における位相差の測定値θm(例えば、周波数範囲fr内における複数の測定値θmの最小値)、または周波数範囲fr内の複数の測定値θmの平均値と、上限値θUおよび下限値θLとを比較するのが好ましい。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、上記した上限値θU、下限値θLおよび周波数範囲frが各コンデンサ21a〜21cにそれぞれ対応して個別的に規定され、これを示す判別用データD2が記憶部3に記憶されている。
次に、一例として、3つのコンデンサ21a〜21cが実装されるべき回路C(図2参照)における各コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを、実装状態判別装置1を用いて判別する実装状態判別方法について、図面を参照して説明する。
なお、回路Cを構成するこの導体パターン11,12、ビア14および各コンデンサ21a〜21cは、上記したように図4に示す等価回路で表され、また、同図に示される各コンデンサ21a〜21cの静電容量はそれぞれ1μF、0.5μF、0.1μFであり、各ビア14のインダクタンスL1,L2,L3は10nHであり、各導体パターン11,12のインダクタンスL4,L5は20nHであるものとする。
この実装状態判別装置1では、処理部4が、測定処理を実行する。この測定処理では、処理部4は、測定部2に対して周波数特性を測定させる。この場合、測定部2は、プローブ6,7を介して入出力される測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差を測定用信号S1の周波数毎に測定し、測定したこの周波数特性を示す特性データD1を処理部4に出力する。
次いで、処理部4は、判別処理を実行する。この判別処理では、処理部4は、測定部2から出力された特性データD1によって特定される位相差の周波数特性と記憶部3から読み出した判別用データD2とに基づき、回路Cにおいて、コンデンサ21a〜21cが実装状態であるか非実装状態であるかを判別する。具体的には、処理部4は、判別用データD2に基づいてコンデンサ21aに対応する周波数範囲fr1、上限値θU1および下限値θLを特定する。次いで、処理部4は、特性データD1に基づき、周波数範囲fr1内の各周波数における位相差の各測定値θmの中の最小値を特定する。
続いて、処理部4は、特定した測定値θmの最小値と上限値θU1および下限値θLとを比較する。この場合、測定値θmの最小値が上限値θU1以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたとき、つまり、図5〜図8に示すように、上限値θU1、下限値θLおよび周波数範囲fr1によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21aが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図9〜図12に示すように、上限値θU1、下限値θLおよび周波数範囲fr1によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21aが非実装状態であると判別する。
次いで、処理部4は、判別用データD2に基づいてコンデンサ21bに対応する周波数範囲fr2、上限値θU2および下限値θLを特定する。次いで、処理部4は、特性データD1に基づき、周波数範囲fr2内の各周波数における位相差の各測定値θmの中の最小値を特定する。続いて、処理部4は、測定値θmの最小値と上限値θU2および下限値θLとを比較する。この場合、測定値θmの最小値が上限値θU2以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたとき、つまり、図5,6,9,11に示すように、上限値θU2、下限値θLおよび周波数範囲fr2によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21bが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図7,8,10,12に示すように、上限値θU2、下限値θLおよび周波数範囲fr2によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21bが非実装状態であると判別する。
次いで、処理部4は、判別用データD2に基づいてコンデンサ21cに対応する周波数範囲fr3、上限値θU3および下限値θLを特定する。次いで、処理部4は、特性データD1に基づき、周波数範囲fr3内の各周波数における位相差の各測定値θmの中の最小値を特定する。続いて、処理部4は、測定値θmの最小値と上限値θU3および下限値θLとを比較する。この場合、測定値θmの最小値が上限値θU3以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたとき、つまり、図5,8,9,10に示すように、上限値θU3、下限値θLおよび周波数範囲fr3によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21cが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図6,7,11,12に示すように、上限値θU3、下限値θLおよび周波数範囲fr3によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値θmの最小値が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21cが非実装状態であると判別する。
次いで、処理部4は、表示処理を実行して、上記の判別結果を表示部5に表示させる。なお、この判別結果の表示部5での表示に際しては、回路基板13を平面視した状態での各コンデンサ21a〜21cの配置図を画面上に表示させると共に、この配置図上において非実装状態のコンデンサ21を実装状態のコンデンサ21と区別し得る表示態様で表示させる手法を採用したり、図4に示す等価回路を表示させて、この等価回路上において非実装状態のコンデンサ21を実装状態のコンデンサ21と区別し得る表示態様で表示させる手法を採用することができる。また、非実装状態のコンデンサ21または実装状態のコンデンサ21の識別情報のみを表示させる簡易な手法を採用することもできる。
このように、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、コンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別する判別処理において、判別対象のコンデンサ21を含んで構成される共振回路の共振周波数fsが含まれる周波数範囲fr内のいずれかの周波数における測定用信号S1と検出信号S2との位相差の測定値θmが予め規定された上限値θU以下でかつ予め規定された下限値θL以上との条件を満たしたときに判別対象のコンデンサ21が実装状態であると判別する。つまり、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、位相差の周波数特性を測定したときに共振周波数fsに近い周波数において位相差が上昇に転じる転換点Ptが現れることを利用して、判別対象のコンデンサ21に対応する共振周波数fsを含む周波数範囲fr内の周波数における位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較するだけで判別対象のコンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別する。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、判別処理において基準範囲の上限値および下限値と測定値θmとを全周波数に亘って比較して測定値θmが基準範囲内であるか否かを判別する従来の構成および方法と比較して、判別処理を十分に短時間で行うことができる。
また、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法では、判別処理において、周波数範囲fr内の複数の周波数における位相差の各測定値θmの最小値が上限値θU以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたときに判別対象のコンデンサ21が実装状態であると判別する。このため、この実装状態判別装置1および実装状態判別方法によれば、各コンデンサ21にそれぞれ対応する各共振周波数fsが、コンデンサ21の静電容量のばらつきやコンデンサ21に等価的に接続されるインダクタンス成分のばらつきなどによって変動して、転換点Ptの位置(転換点Ptに対応する周波数)が周波数範囲fr内においてずれたとしても、その転換点Ptにおける位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較することができるため、コンデンサ21の実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
なお、実装状態判別装置1および実装状態判別方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、判別処理において、周波数範囲fr内の複数の周波数における位相差の各測定値θmの最小値と上限値θUおよび下限値θLとを比較して実装状態および非実装状態の判別を行う構成および方法について上記したが、周波数範囲fr内の任意の周波数における位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較して判別を行う構成および方法を採用することができる。具体的には、共振周波数fs(周波数範囲fr内のいずれかの周波数の一例)における位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較して判別を行う構成および方法を採用することができる。この構成および方法によれば、測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較する処理を1回行うだけで判別対象のコンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができるため、判別処理をさらに短時間で行うことができる。
また、周波数範囲fr内の複数の測定値θmの平均値が上限値θU以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたときに判別対象のコンデンサ21が実装状態であると判別する構成および方法を採用することもできる。この構成および方法によれば、例えば、周波数範囲fr内における位相差の測定値θmがノイズの影響によって大きく変動して、周波数範囲fr内の1つの周波数における測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとの比較ではコンデンサ21の実装状態および非実装状態を正確に判別するのが困難な場合において、測定値θmの平均値と上限値θUおよび下限値θLとを比較することで、ノイズの影響を軽減することができるため、このような場合においても実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
さらに、周波数範囲fr内のいずれかの周波数における測定値θm(上記した、測定値θmの最小値や、共振周波数fsにおける測定値θm)、および上記した測定値θmの平均値の双方が上限値θU以下でかつ下限値θL以上との条件を満たしたときに判別対象のコンデンサ21が実装状態であると判別する構成および方法を採用することもできる。この構成および方法によれば、周波数範囲fr内のいずれかの周波数における測定値θm、および測定値θmの平均値の双方と上限値θUおよび下限値θLとを比較することで、ノイズの影響がさほど大きくない場合において、ノイズの影響を軽減することで、コンデンサ21の実装状態および非実装状態をより正確に判別することができる。
また、転換点Ptにおける位相差の測定値よりも大きい値を上限値θUとして規定し、その測定値よりも小さい値を下限値θLとして規定した例について上記したが、各コンデンサ21の実装状態において測定される位相差の値であって周波数範囲fr内のいずれかの周波数(転換点Pt以外の任意の周波数)における位相差の測定値(例えば、周波数範囲fr内の各周波数における測定値のうちの最小の測定値)よりも大きい値を上限値θUとして規定し、いずれかの周波数における位相差の測定値よりも小さい値を下限値θLとして規定する構成および方法を採用することもできる。この場合、各コンデンサ21の実装状態において測定される周波数範囲fr内の各周波数における位相差の各測定値のうちの最大値よりも大きい値を上限値θUとして規定し、各測定値のうちの最小値よりも小さい値を下限値θLとして規定するのが好ましい。また、各コンデンサ21の実装状態において測定される周波数範囲fr内の複数の周波数における位相差の各測定値の平均値よりも大きい値を上限値θUとして規定し、その平均値よりも小さい値を下限値θLとして規定する構成および方法を採用することもできる。
また、測定用信号S1の位相と検出信号S2の位相との位相差(電気的パラメータの一例)を測定し、判別処理において、位相差の測定値θmと上限値θUおよび下限値θLとを比較する構成および方法について上記したが、測定点P1,P2間のインピーダンス(電気的パラメータの他の一例)を測定用信号S1の周波数を変化させつつ各周波数毎に(インピーダンスの周波数特性を)測定して、判別処理において、インピーダンスの測定値と基準値とを比較する構成および方法を採用することもできる。以下、この構成および方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記した実装状態判別装置1および実装状態判別方法と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。なお、図13〜図20において、各コンデンサ21a〜21cを「21a」「21b」「21c」の符号で示すと共に、実装状態を「○」、非実装状態を「×」で示す。
まず、回路Cについてのインピーダンスの周波数特性(測定用信号S1の周波数の変化に伴うインピーダンスの変化)について説明する。図13に示す周波数特性図は、上記の等価回路(図4参照)の測定点P1,P2において測定部2によって測定されるインピーダンスの周波数特性を表している。この周波数特性図から明らかなように、コンデンサ21a〜21cが正しく実装されている回路Cについてのインピーダンスの周波数特性には、コンデンサ21a〜21cの数と同数(この例では、3つ)の転換点Pt4〜Pt6(以下、区別しないときには「転換点Pt」ともいう)が各共振周波数fs1〜fs3において現れている。
また、図13の周波数特性図から明らかなように、この例では、各転換点Pt4〜Pt6の周波数よりもやや低い周波数においてインピーダンスの値が急激に下降し、各転換点Pt4〜Pt6において急激に上昇に転じる。
一方、各コンデンサ21a〜21cのいずれかが非実装状態のときのインピーダンスの周波数特性には、実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptのみが現れ、非実装状態のコンデンサ21に対応する転換点Ptは現れない。例えば、コンデンサ21a,21bが実装状態で、コンデンサ21cが非実装状態のときのインピーダンスの周波数特性についてのシミュレーション結果を図14に示す。同図の周波数特性図から明らかなように、この例では、実装状態のコンデンサ21a,21bに対応する転換点Pt4,Pt5のみが現れ、非実装状態のコンデンサ21cに対応する転換点Pt6は現れない。
また、図15に示すように、コンデンサ21aが実装状態で、コンデンサ21b,21cが非実装状態のときには、コンデンサ21aに対応する転換点Pt4のみが現れ、コンデンサ21cに対応する転換点Pt5,Pt6は現れない。また、図16に示すように、コンデンサ21a,21cが実装状態で、コンデンサ21bが非実装状態のときには、コンデンサ21a,21cに対応する転換点Pt4,Pt6のみが現れ、コンデンサ21bに対応する転換点Pt5は現れない。また、図17に示すように、コンデンサ21b,21cが実装状態で、コンデンサ21aが非実装状態のときには、コンデンサ21b,21cに対応する転換点Pt5,Pt6のみが現れ、コンデンサ21aに対応する転換点Pt4は現れない。
また、図18に示すように、コンデンサ21cが実装状態で、コンデンサ21a,21bが非実装状態のときには、コンデンサ21cに対応する転換点Pt6のみが現れ、コンデンサ21a,21bに対応する転換点Pt4,Pt5は現れない。また、図19に示すように、コンデンサ21bが実装状態で、コンデンサ21a,21cが非実装状態のときには、コンデンサ21bに対応する転換点Pt5のみが現れ、コンデンサ21a,21cに対応する転換点Pt4,Pt6は現れない。さらに、図20に示すように、全てのコンデンサ21a〜21cが非実装状態のときには、各転換点Pt4〜Pt6のいずれも現れない。また、図13〜図20の各周波数特性図から明らかなように、転換点Pt4〜Pt6が現れたときには、その転換点Ptにおけるインピーダンスの値が、その転換点Ptが現れないときのインピーダンスの値よりも小さな値となる。
このため、例えば、各コンデンサ21の実装状態において測定されるインピーダンスの値であって、各コンデンサ21が実装状態のときの各共振周波数fsにおけるインピーダンスの測定値(後述する周波数範囲fr4〜fr6内のいずれかの周波数におけるインピーダンスの測定値および複数の測定値の平均値の少なくとも一方の一例)に対して、コンデンサ21の静電容量やインダクタンスのばらつき、およびノイズの影響などを考慮した値(余裕値)を加算した値(上記した共振周波数fsにおけるインピーダンスの測定値よりも大きく規定された値)を上限値ZUとして予め規定し、測定したインピーダンスの測定値Zmと上限値ZUとを比較することで、そのコンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができる。具体的には、インピーダンスの測定値Zmが上限値ZU以下との条件を満たしたときには、そのコンデンサ21が実装状態であると判別し、その条件を満たしていないときには、そのコンデンサ21が非実装状態であると判別する。なお、以下の説明において、コンデンサ21aに対応する上限値ZUを「上限値ZU1」ともいい、コンデンサ21bに対応する上限値ZUを「上限値ZU2」ともいい、コンデンサ21cに対応する上限値ZUを「上限値ZU3」ともいう(図13参照)。
この場合、上記したように共振周波数fsは変動するため、実装されるべき全てのコンデンサ21が実装状態である回路C(良品の回路C)における各共振周波数fs1〜fs3をそれぞれ含む予め決められた幅の周波数範囲fr4〜fr6(図13〜図20参照)を予め設定し、その周波数範囲fr4〜fr6内のいずれかの周波数におけるインピーダンスの測定値Zm(例えば、周波数範囲fr4〜fr6内における複数の測定値Zmの最小値)、および周波数範囲fr4〜fr6内の複数の測定値Zmの平均値の少なくとも一方(いずれか一方または双方)と上限値ZU1〜ZU3とを比較する処理を処理部4が実行する。
具体的には、処理部4は、コンデンサ21aに対応する周波数範囲fr4内における測定値Zmの最小値や平均値(以下、「測定値Zmの最小値等」ともいう)と、コンデンサ21aに対応する上限値ZU1とを比較して、測定値Zmの最小値等が上限値ZU1以下との条件を満たしたとき、つまり、図13〜図16に示すように、上限値ZU1および周波数範囲fr4によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21aが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図17〜図20に示すように、上限値ZU1および周波数範囲fr4によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21aが非実装状態であると判別する。
また、処理部4は、コンデンサ21bに対応する周波数範囲fr5内における測定値Zmの最小値等と、コンデンサ21bに対応する上限値ZU2とを比較して、測定値Zmの最小値等が上限値ZU2以下との条件を満たしたとき、つまり、図13,14,17,19に示すように、上限値ZU2および周波数範囲fr5によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21bが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図15,16,18,20に示すように、上限値ZU2および周波数範囲fr2によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21bが非実装状態であると判別する。
さらに、処理部4は、コンデンサ21cに対応する周波数範囲fr6内における測定値Zmの最小値等と、コンデンサ21cに対応する上限値ZU3とを比較して、測定値Zmの最小値等が上限値ZU3以下との条件を満たしたとき、つまり、図13,16,17,18に示すように、上限値ZU3および周波数範囲fr6によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれているときには、処理部4は、コンデンサ21cが実装状態であると判別する。一方、上記の条件を満たしていないとき、つまり、図14,15,19,20に示すように、上限値ZU3および周波数範囲fr6によって区画される領域(同図に斜線で示す領域)内に測定値Zmの最小値等が含まれていないときには、処理部4は、コンデンサ21cが非実装状態であると判別する。
この構成および方法においても、共振周波数fsにおいてインピーダンスが上昇に転じる転換点Ptが現れることを利用して、周波数範囲fr内の周波数におけるインピーダンスの測定値Zmや周波数範囲fr内の複数の測定値Zmの平均値と、上限値ZUとを比較するだけで判別対象のコンデンサ21の実装状態および非実装状態を判別するため、判別処理を十分に短時間で行うことができる。
また、この構成および方法においても、判別処理において、周波数範囲fr内の複数の周波数におけるインピーダンスの各測定値Zmの最小値が上限値ZU以下との条件を満たしたときに判別対象のコンデンサ21が実装状態であると判別することで、各コンデンサ21にそれぞれ対応する各共振周波数fsが、コンデンサ21の静電容量のばらつきやコンデンサ21に等価的に接続されるインダクタンス成分のばらつきなどによって変動して、転換点Ptの位置(転換点Ptに対応する周波数)が周波数範囲fr内においてずれたとしても、その転換点Ptにおけるインピーダンスの測定値Zmと上限値ZUとを比較することができるため、コンデンサ21の実装状態および非実装状態を正確に判別することができる。
また、この構成および方法においても、判別処理において、周波数範囲fr内の任意の周波数におけるインピーダンスの測定値Zmと上限値ZUとを比較して判別を行う構成および方法を採用することができる。具体的には、共振周波数fsにおけるインピーダンスの測定値Zmと上限値ZUとを比較して判別を行う構成および方法を採用することができる。この構成および方法によれば、測定値Zmと上限値ZUとを比較する処理を1回行うだけで判別対象のコンデンサ21が実装状態であるか非実装状態であるかを判別することができるため、判別処理をさらに短時間で行うことができる。
なお、インピーダンスの測定値と基準値とを比較するこの構成および方法においても、共振周波数fsにおけるインピーダンスの測定値よりも大きい値を上限値ZUとして規定するのに代えて、各コンデンサ21の実装状態において測定されるインピーダンスの値であって周波数範囲fr内のいずれかの周波数(共振周波数fs以外の任意の周波数)におけるインピーダンスの測定値よりも大きい値を上限値ZUとして規定する構成および方法を採用することができる。具体的には、各コンデンサ21の実装状態において測定される周波数範囲fr内の各周波数におけるインピーダンスの各測定値のうちの最大値よりも大きい値を上限値ZUとして規定することができる。また、各コンデンサ21の実装状態において測定される周波数範囲fr内の複数の周波数におけるインピーダンスの各測定値の平均値よりも大きい値を上限値ZUとして規定する構成および方法を採用することもできる。