JP2013160253A - エネルギー吸収部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】周方向に沿って波形状に起伏する周壁8を有するステイ素材7を用いる。ステイ素材7の周方向に沿った周壁の外周の周長L(波形状の起伏に沿って1周したときの延べ長さ)が、同じ外径(最小外接円9の径)の単なる円筒形の周壁の周長L0より長い(L>L0)。L−L0を余剰線長という。ステイ素材7の周壁8がこの余剰線長を有することにより、周壁8の端部を拡開してフランジ部を成形したとき、大きい径のフランジ部を形成することができる。
【選択図】図1
Description
このアルミニウム合金押出材等は、バンパーステイが衝突時に吸収すべき所定のエネルギー吸収量に対応して、その直径及び肉厚が決定されるが、電磁成形による拡管でフランジ部は材料が伸ばされるため、拡管率(拡管後の周長/元の周長)が大きいと、フランジ部の外周部に割れが入ったり、肉厚減少を生じるため、電磁成形で成形できるフランジ幅には限界がある。
本発明において金属製形材とは、長手方向に沿って実質的に同一断面を有する金属製部材を意味する。筒状の金属製形材には筒状の押出材のほか、板材を筒状に成形したものも含まれ、そのうち特に望ましいのはアルミニウム合金押出材である。
周壁の外周の周長円相当径が最小外接円径より大きいとは、周方向に沿った周壁の外周の周長(波形状の起伏に沿って1周したときの延べ長さ)が、同じ外径(最小外接円径)の単なる円筒形の周壁の周長より長いことを意味する。
エネルギー吸収部材の軸部に相当する箇所は実質的に拡管せず、元の金属製形材の断面形状をほぼそのまま維持することもできるが、フランジ部の成形と同時に適当な拡管率で拡管することも本発明に含まれる。後者の場合、軸部の周壁は、素材である金属製形材の周壁と同様の形態で波形状に起伏している必要はない。例えば金属製形材の周壁の波形状の起伏が、正弦波状の形態を有していた場合、拡管により軸部の周壁の波形形状を三角波状の形態に変えることも可能である。
また、エネルギー吸収部材の軸部の周壁が、周方向に沿って波形状に起伏していることから、軸方向にみると、軸部の周壁に軸方向に平行な一種の稜線が複数個形成されていることになり、これが衝突時の座屈変形を抑制するので、平均荷重及びエネルギー吸収量を増大させることができる。
初めに図14を参照して、従来の金属製形材(ステイ素材)とエネルギー吸収部材(バンパーステイ)について説明する。
図14(a),(b)は、金属製形材(アルミニウム合金押出材)を所定長さに切断したステイ素材1を示す。ステイ素材1は円形断面を有する筒状体で、この例では、両方の端面(切断面)が軸方向に対し垂直な平面内にある。なお、ステイ素材1として、金属板をプレス成形又はロール成形し、筒状としたものを用いることもできる。
フランジ部5,6の拡管成形は、1回だけの電磁成形でなく、特許文献5に記載されているように、2回以上の電磁成形を繰り返して行ったり、電磁成形の前後に適宜プレス成形を付加して行うこともできる。
図1(a)に示すとおり、ステイ素材7の周壁8は、周方向に沿って波形状に起伏している。この波形は波長λの正弦波状の形態を有し、凸部8aと凹部8bからなる単位波形が周壁8の周方向に沿って8個繰り返され、周壁8は軸方向に垂直な断面において8回対称となっている。周壁8の厚みは全周で一定であり、周壁8の外周面(凸部8aの頂部)に接する最小外接円9及び周壁8の内周面(凹部8bの底部)に接する最大内接円11が同心である。周壁8の外周の周長(波形状の起伏に沿って一周したときの延べ長さ)をLとし、最小外接円9の周長をL0とすると、L>L0の関係にある。
ステイ素材7は、従来のステイ素材1と同様に、両方の端部(切断面)が軸方向に対し垂直な平面内にある。ステイ素材7として、金属板をプレス成形又はロール成形で筒状に成形したもの(金属製形材)を用いることもできる。
ステイ素材7がこの余剰線長を有するため、ステイ素材1と同じ拡管率(拡管後の周長/元の周長)でフランジ部16,17を成形した場合、拡管後の周長(フランジ部16,17の外径)を大きくし、そのフランジ幅W16,W17(図2に示すのはフランジ幅の最も小さい箇所)を大きくすることができる。なお、周壁8が周方向に沿って波形状に起伏するステイ素材7を用いた場合でも、フランジ部16,17の外周(輪郭)は図2(a)に図示のとおりほぼ円形に成形される。
あるいは、電磁成形とプレス成形を組み合わせてフランジ部を成形することもできる。この点を図4(a),(b)を参照して説明する。まず、第1工程として、図4(a)に示すように、ステイ素材18(ステイ素材7と同じ断面形状を有するものとする)の周壁19の周囲を金型21で包囲し、ステイ素材18の内部に円形断面(同一径でらせん状に巻き回した)の電磁成形コイル22を挿入し、電磁成形コイル22に瞬間大電流を流し、金型21の端面から突き出していたステイ素材18の端部をフレア状に拡管成形し、ステイ中間材18aを成形する。続いて第2工程として、図4(b)に示すように、金型23によりステイ中間材18aを保持し、パンチ24でフレア状部25aを軸方向にプレス成形して拡開し、フランジ部25を成形する。
これとは逆に、第1工程として、プレス成形でステイ素材の端部をフレア状に成形した後、フレア状部を電磁成形でさらに拡開し、フランジ部を成形することもできる(特許文献5参照)。
なお、以上の例では、ステイ素材の周壁(及びバンパーステイの軸部の周壁)の波形は8個の単位波形からなるが、衝突時の軸部の変形モードを考慮すると、周壁の波形を構成する単位波形の数は偶数個が望ましい。ただし、奇数個を排除するものではない。
なお、クラッシュビードの形成位置は、周壁の波形の凹部に限定されるものではない。
(1)電磁成形用コイルの成形力が相対的に及びにくい周壁の中心から遠い箇所(波形の凸部)を相対的に薄肉とする。電磁成形用コイルの成形力が十分でない場合でも、フランジ部の成形が可能となる。
(2)フランジ成形後のボルト締結位置になる箇所(ボルト締結予定箇所)を相対的に厚肉として、ボルト締結部の強度を上げる。
(3)バンパーステイの軸部の周壁にクラッシュビードを膨出成形する場合、ステイ素材の周壁のクラッシュビードを成形する箇所(波形の凹部)を相対的に薄肉として、電磁成形で膨出しやすくし、その代わりに波形の凸部を相対的に厚肉として、バンパーステイの軸部のエネルギー吸収量の低下を防止する。
図7に示すステイ素材33の周壁34は、周方向に沿って波形状の起伏を有する。この波形は歯車状の形態を有し、凸部34aと凹部34bからなる波長λの単位波形が周壁34の周方向に沿って8個繰り返され、周壁34は軸方向に垂直な断面において8回対称となっている。前記単位波形の波長λのうち、凹部34bの成分が大部分を占める。周壁34の厚みは全周で一定であり、周壁34の外周面に接する最小外接円35及び周壁34の内周面に接する最大内接円36が同心である。
ステイ素材33は、周壁34の外周の周長(波形状の起伏に沿って一周したときの延べ長さ)をLとし、最小外接円35の周長をL0とすると、L>L0の関係にあり、周壁34は先に述べた余剰線長を有する。
拡管用の電磁成形コイルは、導線を円筒状又は切頭円錐筒状に螺旋形に巻き回した構成のものが一般的に用いられることから、ステイ素材33の場合、周壁34と電磁成形用コイルを周方向の大部分において極めて近接させることができ、フランジ部の成形にあたり、電磁成形コイルによる高い成形力(反発力)をステイ素材33の周壁34に与えることができる。
ステイ素材37は、周壁38の外周の周長(波形状の起伏に沿って一周したときの延べ長さ)をLとし、最小外接円39の周長をL0とすると、L>L0の関係にあり、周壁38は先に述べた余剰線長を有する。
このステイ素材37は、周壁38が歯車状の波形を有する点で、ステイ素材33と類似するが、波形の凸部38aの周方向に沿った長さが凹部38bの周方向に沿った長さより長い点で異なる。凸部38aをフランジ成形後のボルト締結位置になる箇所(ボルト締結予定箇所)とするのが望ましい。
周壁43は、周方向に沿って波形の波長、高さ及び肉厚が変化し、周壁43の厚みは凸部43aが相対的に薄肉とされ、電磁成形により変形しやすくなっている。凸部43cは、凸部43aに比べて周方向に長く、かつ厚肉である。凸部43cの位置をフランジ成形後のボルト締結位置とするのが望ましい。
ステイ素材の材質は、熱伝導度が高く、熱処理により高強度化できるJIS6000系アルミニウム合金が好ましい。
ステイ素材の周壁の波形を構成する単位波形(1つの凸部と1つの凹部の組み合わせ)の数Nは、3≦N≦30の範囲から選択することが好ましく、中でもNは偶数であることが好ましい。Nがこれより多いと波形の曲率変化が大きく、フランジ部の成形の際に割れが発生する可能性があり、少ないと余剰線長を確保しにくい。
ステイ素材の周壁の波形の振幅(ステイ素材の外径(最小外接円径)d2と内径(最大内接円径)d1の差)d2−d1は、2mm≦d2−d1≦40mmの範囲から選択することが好ましい。d2−d1がこれより大きいと拡管に必要な電磁力を作用させることが困難であり、小さいと有効な余剰線長を確保しにくい。
図10は、バンパーステイ46とバンパーリインフォース47からなるバンパー構造体を示す。バンパーステイ46は、周方向に沿って波形状に起伏する周壁を有する筒状の軸部48と、その両端部に形成されたフランジ部49,51からなる。軸部46の軸方向に対し傾斜して成形されたフランジ部49が、バンパーリインフォース47の背面にボルト・ナットで締結されている。一方、サイドメンバ側(車体側)のフランジ部51は、軸部46の軸方向に対し垂直に形成され、図示しないサイドメンバの前端にボルト・ナットで締結される。
バンパーリインフォース47は、鋼製又はアルミニウム合金製の中空材からなり、鋼製の場合はロールフォーム鋼が、アルミニウム合金製の場合は押出材が好適に利用できる。
バンパーステイ46は、アルミニウム合金押出材からなるステイ素材、又はアルミニウム合金板を筒状に成形したステイ素材から成形される。
バンパーリインフォース53は、バンパーリインフォース47と同様に鋼製又はアルミニウム合金製の中空材からなり、両端部が前後方向に潰し加工され、断面略コの字状に成形されている。この潰し加工によりバンパーリインフォース53の前後壁は密着し、そこに円形のバーリング穴54が成形されている。バーリング穴54の穴フランジは、衝突時の危害を防止する観点から、サイドメンバ側に向いて突出して形成されている(特許文献3の図4参照)。
バンパーステイ52は、周方向に沿って波形状に起伏する筒状の周壁を有する軸部55と、サイドメンバ側の端部に形成されたフランジ部56からなり、軸部55の先端部(接続部55a)がバンパーリインフォース53にかしめ接続されている。接続部55aの周壁はバーリング穴54の内周面に密着し、先端が拡開して小さいフランジ部57が形成されている。
なお、ステイ素材を予成形することなく、ステイ素材のままその前方部分を前記バーリング穴54に挿入し、ステイ素材の全長を電磁成形で拡管することにより、軸部55及びフランジ部56を成形し、同時にバンパーリインフォース53にかしめ接続することも可能である(特許文献3参照)。
バンパーリインフォース63は、バンパーリインフォース47と同様に鋼製又はアルミニウム合金製の中空材からなる。バンパーリインフォース63は、全長にわたり同じ断面形状を有し(両端部が潰し加工されていない)、バンパーリインフォース63の前後壁にバーリング穴64,65が形成され、両方のバーリング穴64,65の穴フランジがどちらもバンパーリインフォース63の中空内部側に突出している点で、図11に示すバンパーリインフォース53と異なる。
バンパーステイ62とバンパーリインフォース63からなるバンパー構造体前の製造にあたっては、図11に示すバンパー構造体と同様の方法が適用できる。
バンパーリインフォース69はハット型断面であり、高張力鋼やホットスタンプ鋼からなる。両端部に円形のバーリング穴71が成形され、その穴フランジはサイドメンバ側に向いて突出して形成されている。
バンパーステイ68は、図11に示すバンパーステイ52と同様の構造を有する。
バンパーステイ68とバンパーリインフォース69からなるバンパー構造体前の製造にあたっては、図11に示すバンパー構造体と同様の方法が適用できる。
8,19,34,38,43 ステイ素材の周壁
8a 周壁の凸部
8b 周壁の凹部
9,35,39,44 周壁の外周面に接する最小外接円
11,36,41,45 周壁の内周面に接する最大内接円
12,28 バンパーステイ
13,21 金型
14,22 電磁成形コイル
15,26,29 バンパーステイの軸部
16,17,25 バンパーステイのフランジ部
24 パンチ
Claims (11)
- 周方向に沿って波形状に起伏する周壁を有し、該周壁の外周の周長円相当径が最小外接円径より大きい筒状の金属製形材から成形されたエネルギー吸収部材であり、周方向に沿って波形状に起伏する筒状の周壁を有する軸部と、前記金属製形材の端部周壁の全周が拡開して形成されたフランジ部からなることを特徴とするエネルギー吸収部材。
- 前記軸部の周壁の外周の周長円相当径が最小外接円径より大きいことを特徴とする請求項1に記載されたエネルギー吸収部材。
- 前記軸部の周壁の断面形状が、前記金属製形材の周壁の断面形状とほぼ同一であることを特徴とする請求項2に記載されたエネルギー吸収部材。
- 前記金属製形材がアルミニウム合金押出材からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材。
- 前記軸部の周壁に外向きに膨出する複数個のクラッシュビードが成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材。
- 前記エネルギー吸収部材がバンパーステイであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材。
- 周方向に沿って波形状に起伏する周壁を有し、該周壁の外周の周長円相当径が最小外接円径より大きい筒状の金属製形材を素材とし、その端部周壁の全周を塑性加工により拡開してフランジ部を形成し、周方向に沿って波形状に起伏する筒状の周壁を有する軸部と前記フランジ部からなるエネルギー吸収部材を製造することを特徴とするエネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記軸部の周壁の外周の周長円相当径が最小外接円径より大きいことを特徴とする請求項7に記載されたエネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記金属製形材がアルミニウム合金押出材からなり、前記塑性加工の全部又は一部を電磁成形で行うことを特徴とする請求項7又は8に記載されたエネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記電磁成形により、前記金属製形材の周壁を外向きに膨出させ、前記軸部の周壁に外向きに膨出する複数個のクラッシュビードを形成することを特徴とする請求項9に記載されたエネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記エネルギー吸収部材がバンパーステイであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載されたエネルギー吸収部材の製造方法。
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