JP2013159245A - 二軸船尾双胴型船舶および二軸船尾双胴型船舶の設計方法 - Google Patents

二軸船尾双胴型船舶および二軸船尾双胴型船舶の設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】二軸船尾双胴型船舶において、トンネル部における流れの剥離を抑制して船体の抵抗を低減し、推進効率が向上した二軸船尾双胴型船舶および二軸船尾双胴型船舶の設計方法を提供する。
【解決手段】船体1の船尾2にスケグ3およびスケグ4を有しており、プロペラ5およびプロペラ6が二軸で駆動される二軸船尾双胴型船舶100において、スケグ3とスケグ4との間に形成されるトンネル部7の上下方向の中央部8に船体外板9を隆起させる外板隆起手段10を備えることにより、トンネル部7の流れを改善する。
【選択図】図1

Description

本発明は、船尾に二つのスケグと複数のプロペラとを備えた二軸船尾双胴型船舶に関する。
近年、船舶分野においても燃料代の高騰やエネルギー、環境問題の高まりから各種の省エネルギー化の実現方法が検討されている。船舶の運航方法や港湾等のインフラを除く船舶そのものを省エネルギー化する方法としては機関の効率アップや船型の改良がある。この船型の改良の一環として船尾におけるプロペラ等の推進器とこの推進器に関連して周辺の船型を工夫したいくつかの先行技術が存在する。
特許文献1は、トンネル部トップ中央部に船外機が取付けられた双胴船において、航走時にトンネル部内の水流が船外機に激突して飛沫が船体内に多量に跳ね返ることを防止する目的で、トンネル部内に整流突起を設け、この整流突起の船体後方端部に終端ガイド部を形成する構成を開示する(第8図)。
しかし、同文献に開示されている双胴船は、トンネル部トップ中央部に船外機が一つ設けられているいわゆる一軸双胴船である。また、飛沫の低減を目的としたものであり、省エネルギー化を実現するものではない。
特許文献2は、ツイン・スケグ船型の船尾形状において、船舶航行中に船体が後方から受けた追い波がトンネル状船底凹部内に入ることによる船舶操縦性の低下、騒音およびプロペラ性能の低下等を防止する目的で、トンネル状船底凹部の天井面の船体中心線上の位置をプロペラ近傍位置より後方部に亘り湾曲して垂れ下がった形状、またはそのまま水平状態で延長させた形状とする構成を開示する(図1〜図3)。
特許文献3は、ツインスケグ船において、各スケグ部の船舷方向内側に発生する縦渦を打ち消し又は弱めることにより、船体後部の負圧による抵抗増加を軽減させる目的で、各スケグ部による縦渦と逆回転の縦渦を発生させる中央スケグ部を設けた構成を開示する(図1〜図2)。
実開昭62−198198号公報 特開平8−133172号公報 特開2012―1117号公報
特許文献2に開示されているトンネル状船底凹部の天井面形状は、トンネル状船底凹部内への追い波の侵入防止を目的としている。このため、プロペラより後方にピークが位置するように、追い波の侵入を防止するのに十分な大きさで天井面を突出させる必要がある。したがって、船底凹部からの突出の程度(隆起量)が急激に変化して、側面から見たトンネル状船底凹部の天井面の形状に変曲点が生じてしまう。このような、プロペラ前方の天井面における変曲点は、トンネル状船底凹部内の流れに剥離を生じさせる。また、このトンネル状船底凹部の天井面の突出は、スケグの上部で突出されているため、スケグの後端部の局所的な剥離を防止できるものでない。これらの剥離が生じる結果として、船体の抵抗増加を招くという問題がある。また、トンネル状船底凹部の天井面の突出がプロペラの上方で突出されているため、プロペラへの流れの改善の観点からは限界のあるものであった。
特許文献3に開示されている中央スケグ部は、スケグ部による縦渦と逆回転の縦渦を発生させるものである。このため、特許文献2に開示されている構成同様、スケグ廻りにおける流れの局所的な剥離の改善には役立つものではない。この局所的な剥離が生じる結果として、船体の抵抗増加を招くという問題がある。また、プロペラの中心軸の下方に中央スケグ部が形成されているため、プロペラへの流れの改善の観点からは限界のあるものであった。
本発明は、二つのスケグと複数のプロペラとを備えた二軸船尾双胴型船舶において、トンネル部における流れの剥離を抑制して船体の抵抗を低減し、推進効率が向上した二軸船尾双胴型船舶および二軸船尾双胴型船舶の設計方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の本発明の二軸船尾双胴型船舶は、船体の船尾に二つのスケグを有し複数のプロペラが二軸で駆動される二軸船尾双胴型船舶において、二つの前記スケグ間に形成されるトンネル部の上下方向の中央部に船体外板を隆起させる外板隆起手段を備え、前記外板隆起手段により前記トンネル部の流れを改善したことを特徴とする。
トンネル部の上下方向の中央部に外板隆起手段を備えることにより、船底及びスケグの内側からなるトンネル部内の流れがトンネル部の船体外板表面から剥離することを抑制し、トンネル部の流れを改善することができる。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記外板隆起手段の周辺を含めた隆起形状が、前記船体を側面視した状態で前記プロペラの前方に変曲点を有していないことを特徴とする。
上記の構成により、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制することができる。ここで、「変曲点」とは、その点において隆起形状の外形線の隣接した部分の接線同士の傾きの変化方向が変わる(例えば、時計回り方向から反時計回り方向へ変化、またはその逆の変化など)点、あるいは隆起形状の外形線の接線が船体外板の外形線と交差を生じる点をいう。そして、「前記外板隆起手段の周辺を含めた隆起形状が、前記船体を側面視した状態で前記プロペラの前方に変曲点を有していない」とは、前後方向に平行な鉛直面により外板隆起手段付近を切断した場合の外形を示す外形線のプロペラの前方において、前後で曲率の大きく変わる変曲点が存在しないことをいう。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記船体を側面視した状態で、前記外板隆起手段が前記プロペラの中心軸の上下にわたり配置されていることを特徴とする。
上記の構成により、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制することができる。
請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項の3うちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記プロペラの回転方向を、前記船尾側から前方視した状態で左側に位置するプロペラを時計回りに、右側に位置するプロペラを反時計回りに設定したことを特徴とする。
上記のようにプロペラの回転方向をいわゆる内回りとすれば、トンネル部内に生じる強い上昇流を外板隆起手段によりプロペラに対するカウンターフローとして利用することができる。
請求項5に記載の本発明は、請求項1から請求項4のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記船体を側面視した状態で、前記外板隆起手段の隆起量を前記プロペラの中心軸に近づくに従って増加させたことを特徴とする。
上記の構成により、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制することができる。
請求項6に記載の本発明は、請求項1から請求項5のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記外板隆起手段を複数備えたことを特徴とする。
上記の構成により、複数の外板隆起手段を用いて、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制することができる。
請求項7に記載の本発明は、請求項1から請求項6のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記外板隆起手段の形状は、紡錘形の一部を成すことを特徴とする。
ここで、「紡錘形」とは、円柱状でまん中が太く両端が次第に細くなる立体形状をいう。また、紡錘形の一部を成すとは、紡錘形の表面の一部が外板隆起手段の表面を構成するように、紡錘形の一部を用いて外板隆起手段を形成していることをいう。外板隆起手段を上記のように構成すれば、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制できる。
請求項8に記載の本発明は、請求項1から請求項6のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記外板隆起手段の形状は、フレア形を成すことを特徴とする。
ここで、「フレア形」とは、カールした形をいう。外板隆起手段を上記のように構成すれば、トンネル部内の流れを改善し、剥離を抑制できる。
請求項9に記載の本発明は、請求項1から請求項8のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、二つの前記スケグの下端を、前記トンネル部の内側に向けて捻った形状としたことを特徴とする。
上記の構成によれば、捻った形状のスケグによりトンネル部の流れをさらに内側に向けカウンターフローを強め、伴流利得を増やすことができる。
請求項10に記載の本発明は、請求項1から請求項9のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記プロペラの中心軸を前記スケグのセンター軸からそれぞれオフセットを持たせて位置設定したことを特徴とする。
上記の構成によれば、スケグ後方のプロペラの回転方向と逆方向の流れを積極的にカウンターフローとして利用することが可能となり、伴流利得を増やすことができる。
請求項11に記載の本発明は、請求項10に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記位置設定は、前記プロペラの周方向の流れの速度の平均値あるいは前記プロペラの半径方向の循環の強さに基づいて設定したことを特徴とする。
上記の構成によれば、スケグ後方のプロペラの回転方向と逆方向の流れを的確にカウンターフローとして利用して、伴流利得を増やすことができる。
ここで、「循環」とは、流れの中の閉曲線に沿った各点の接線方向のベクトルと線分の積を全周積分して求めるものである流体力学で言う循環だけでなく、プロペラが回転する円周に沿った流れのベクトルを使って循環的に求めるものを含んだ広義のものをも含んだ概念をいう。
請求項12に記載の本発明は、請求項1から請求項11のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記トンネル部の前記船体外板の水平方向に対して成す傾斜角が15度以上であることを特徴とする。
請求項13に記載の本発明は、請求項1から請求項12のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶において、前記外板隆起手段を前記トンネル部の前記船体外板に後付して備えたことを特徴とする。
請求項14に記載の本発明の二軸船尾双胴型船舶の設計方法は、船体の船尾に二つのスケグを有し複数のプロペラが二軸で駆動され、二つの前記スケグ間に形成されるトンネル部の上下方向の中央部の船体外板に有する外板隆起手段を備えた二軸船尾双胴型船舶の設計方法であって、前記プロペラの回転面における流れを評価する回転面流評価工程と、二つの前記スケグおよび前記外板隆起手段による船体への影響を評価する全体評価工程と、前記回転面流評価工程および前記全体評価工程の評価結果に基づいて、前記外板隆起手段および二つの前記スケグの形状を設計する形状設計工程を備えていることを特徴とする。
上記形状設計工程によれば、プロペラ向かう流れと流れの剥離の防止の関係において、外板隆起手段および二つのスケグ形状および位置を最適化することができる。
請求項15に記載の本発明は、請求項14に記載の二軸船尾双胴型船舶の設計方法において、前記プロペラの周方向の流れの速度の平均値あるいは前記プロペラの半径方向の循環の強さに基づいて、前記プロペラの回転中心を前記スケグのセンター軸からそれぞれオフセットを持たせて位置設定する位置セット工程を有することを特徴とする。
上記位置セット工程によれば、スケグ後方のプロペラの回転方向と逆方向の流れを利用して、伴流利得を増やすために適した位置にプロペラを配置できる。
請求項16に記載の本発明は、請求項15に記載の二軸船尾双胴型船舶の設計方法において、前記位置セット工程が、前記回転面流評価工程および前記全体評価工程の評価結果に基づいて位置設定したことを特徴とする。
上記位置セット工程によれば、プロペラ回転面流に加えて、全体の流れをも考慮した位置にプロペラを配置できる。
本発明の二軸船尾双胴型船舶によれば、トンネル部の流れを改善することにより、トンネル部内の流れが剥離を起こすことを抑制し、またスケグに発生する局所的な剥離を抑制することにより船体の抵抗を低減して、推進効率を向上させることが可能となる。
また、外板隆起手段の周辺を含めた形状がプロペラの前方に変曲点を有していないことにより変曲点近傍で剥離が生じることを防止できる。
また、外板隆起手段をプロペラの中心軸の上下にわたり配置することにより、プロペラ近傍のスケグ後端の剥離を抑制することが可能となる。
また、プロペラの回転方向をいわゆる内回りとすれば、トンネル部内に生じる強い上昇流を外板隆起手段によりプロペラに対するカウンターフローとして利用することができる。
また、外板隆起手段の隆起量をプロペラの中心軸に近づくに従って増加させることにより、プロペラに対するカウンターフローを有効に強め、またプロペラ近傍のスケグ後端における剥離を抑制できる。
また、スケグの下端をトンネル部の内側に向けて捻った形状とすることによりトンネル部の流れをさらに内側に向けカウンターフローを強め、伴流利得を増やすことができる。
また、プロペラの伴流利得を増やす構成とすれば、二重反転効果によりプロペラの推進効率を向上させることが可能となる。
また、傾斜角が15度以上となるとトンネル部内において流れの剥離が生じ易くなるが、外板隆起手段により剥離を抑えてトンネル部の流れを改善することにより船体の抵抗を低減して、推進効率を向上させることが可能となる。
また、外板隆起手段を後付して形成することにより、既存船にも外板隆起手段を採用することができ、取り替えやメンテナンスも容易にできる。
本発明の二軸船尾双胴型船舶を設計方法によれば、外板隆起手段および二つのスケグの形状および位置を最適化することにより、船体の抵抗を低減して、推進効率を向上させた二軸船尾双胴型船舶を設計することが可能となる。
また、位置セット工程により伴流利得を増やすために適した位置にプロペラを配置することにより、二重反転効果を考慮したプロペラの推進効率の良好な二軸船尾双胴型船舶を設計することが可能となる。この場合、回転面流評価工程および全体評価工程の評価結果に基づいてプロペラを配置すれば、プロペラの推進効率をさらに良好にすることが可能となる。
図1(a)は第1の実施形態(実施例)の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた背面図、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視断面図 図2(a)は第1の実施形態における二軸船尾双胴型船舶のプロペラの配置の例(その1)を示す背面図、図2(b)は第1の実施形態における二軸船尾双胴型船舶のプロペラの配置の例(その2)を示す背面図 図3(a)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その1)を示す平面図、図3(b)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その2)を示す平面図、図3(c)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その3)を示す平面図、図3(d)は、図3(a)〜図3(c)のE−E線矢視断面図 図4(a)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その4)を示す平面図、図4(b)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その1)、図4(c)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その2)、図4(d)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その3) 図5(a)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その5)を示す平面図、図5(b)は図5(a)のG−G線矢視断面の一例(その1)、図5(c)は図5(a)のG−G線矢視断面の一例(その2)、図5(d)は図5(a)のG−G線矢視断面の一例(その3) 図6(a)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その6)を示す平面図、図6(b)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その7)を示す平面図、図6(c)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その8)を示す平面図 第2の実施形態の二軸船尾双胴型船舶の設計方法のフローチャート 図8(a)は比較例の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた背面図、図8(b)は図8(a)のH−H線矢視断面図 参考例の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた背面図 実施例、比較例および参考例の二軸船尾双胴型船舶の全抵抗係数を示すグラフ 模型の二軸船尾双胴型船舶における設計船速に相当するフルード数(Fn)=0.235において、参考例を基準とした船体抵抗の減少割合を示すグラフ 参考例を基準とした、実施例および比較例のプロペラ面に侵入する前後方向(船首から船尾方向)の流れである伴流を示すグラフ プロペラ面における前後方向の流れの速さを示すグラフであり、図13(a)が実施例の結果、図13(b)が比較例の結果、図13(c)が参考例の結果 CFD計算によりトンネル部内の流れを求めた結果を示しており、図14(a)が実施例の結果、図14(b)が比較例の結果、図14(c)が参考例の結果
一軸船に比べ二軸船尾双胴型船舶は、プロペラ荷重度の低減によりプロペラ効率の増加は得られるが、推進効率ηは船殻効率ηの悪化によりプロペラ効率の増加ほどは良くならないとされている。船殻効率は、スケグの形状やトンネル部の傾斜に左右される。その形状の改善を試みる方法としてスケグに捻りを与えることでプロペラの回転方向と反対向きの流れを作り、一葉のプロペラではあるが二重反転プロペラ同様の効果が得られることが分かってきた。
また、効率の良さから一般的に採用される内回りのプロペラに対してスケグに捻りを与えると、スケグの内側の空間が広がりトンネル部内部の流れに剥離が生じることがある。このため、結果として抵抗が増加し、さらにスクグ後方の流れが滞留するのでプロペラと反対方向の流れも弱まってしまうと言う問題があった。
また、トンネル部の傾斜角やトンネル部の形状によってはトンネル部内において流れの剥離を生ずる場合があった。
上記の問題を解決するために、トンネルの上部船底を下方に隆起させ流れが剥離しないよう、また流れが外側に向かい、プロペラと反対方向の流れを促進するようにする。具体的には、プロペラ取り付け位置に近づくにつれ隆起量を大きくして、トンネル内に好ましい流れを作る。この構成によれば、トンネルの傾斜角が大きかったり、形状が剥離しやすい形状であってもトンネル部内の流れの剥離を抑制することが可能となる。また、スケグに捻りを与えた場合には、スケグの内側やスケグの後端に生じる局所的な流れの剥離を抑制することができる。また、スケグに捻りを与えない場合であっても、同様の効果を奏するものと考えられる。
すなわち、トンネル上部での船底を(1)トンネル部の一部を隆起させる(2)スケグ内側上部に水流を送り込む形状とする(3)その隆起量をプロペラ取り付け位置に近づくにつれ増加させるという3つの要素を満たすように設計することが、二軸船尾双胴型船舶の推進効率を向上させるために有効であるという新たな知見に基づいて、本発明に想到するに至った。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明を二軸船尾双胴型船舶として実施する実施形態について説明する。
図1(a)は本実施形態の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた配面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視断面図である。同図に示すように、本実施形態の二軸船尾双胴型船舶100は、船体1の船尾2に二つのスケグ3・スケグ4を有しており、2つのプロペラ5・プロペラ6が別の回転軸すなわち二軸で駆動される二軸船尾双胴型船舶である。スケグ3とスケグ4との間に形成されるトンネル部7の上下方向の中央部8に船体外板9を隆起させる外板隆起手段10を備えている。この外板隆起手段10により、トンネル部7内の流れがトンネル部7内表面から剥離すること、また局所的に剥離することを抑制し、トンネル部7の流れを改善することができる。
二軸船尾双胴型船舶100とは、水面下に沈んで水と直接接する船体1の下部(胴)が細長く左右二つに平行している船尾2の中央部にトンネル部7を有した船舶で、左右の各胴の例えば中心軸上に推進手段を少なくとも一つずつ、合計二つ以上備えたものをいう。二軸船尾双胴型船舶とすることにより、船体の安定性のため設けられるスケグが小型のものでよくなり、積載スペースも増すことができる。
スケグ3・スケグ4は、船体1の船底部から垂直方向に伸ばされた「ひれ」状の構造物である。スケグという呼称を有しないものであっても、おおよそプロペラの前方にあり、船舶の前進に伴う針路安定化を図る同等の船舶形状あるいは造作であればこれに含まれる。
本実施形態では、スケグ3・スケグ4はいずれも、その下端を、トンネル部7の内側に向けて捻った形状としている。これにより、プロペラ5・プロペラ6が、スケグ3・スケグ4により形成したトンネル部7の内側に向けた流れを、カウンターフローとして利用することができる。したがって、二重反転効果によりプロペラ5・プロペラ6の推進効率を向上させることが可能となる。
プロペラ5・プロペラ6は、エンジンやモータ等推進手段の出力を船舶の推進力へと変換するための装置であり、たとえば推進力を得るための複数枚のブレード(羽根)・ブレードを支持するとともにシャフトからの出力を伝えるハブ・その他の部品を備えて構成されるものをいう。
また、推進手段とは、プロペラを駆動して船舶を推進する手段をいい、一般的な船舶に用いられるスクリュー・プロペラ、二重反転プロペラ、ノズル・プロペラなどを駆動する主機関、または電動機駆動による電気ポッド推進器、機械式ドライブ(Zドライブ)などのポッド推進器などを含んでいる。
トンネル部7は、図1(b)にLで示した船体外板9の水平方向に対して成す傾斜角Xが大きくなると、トンネル部7内において流れの剥離が生じ易くなる。具体的には、傾斜角Xが15度以上になると、流れの剥離により船体1の抵抗が増加する。本実施形態の二軸船尾双胴型船舶100では、外板隆起手段10を設けることにより、トンネル部7内の流れの剥離を抑えて流れを改善することができる。このため、傾斜角Xを15度以上とした場合に特に、船体1の抵抗低減効果を顕著に得ることができる。
また、トンネル部7内における強い上昇流により、スケグ3・スケグ4の内側にも局所的な流れの剥離が生じる場合がある。特に、スケグ3・スケグ4の下端を捻った場合は、局所的な流れの剥離が生じ易くなる。また、スケグ3・スケグ4の後端においても形状がよほど流線形をしていない限り、局所的な流れの剥離を生じる。このような局所的な剥離に対しても外板隆起手段10により、トンネル部7の流れをスケグ3・スケグ4に回り込ませて付着するように改善することにより、局所的な流れの剥離を抑制できる。
外板隆起手段10とは、トンネル部7の前端と後端とを結んだ平面(図1(b)に一点鎖線で示す)から突出した部分をいう。このように、外板隆起手段10がトンネル部7の上下方向の中央部8を含む位置に設けられていることから、トンネル部7内の流れを改善することができる。なお、外板隆起手段10は、二軸船尾双胴型船舶100に最初から備えることも、後付けにより設けることもできる。
外板隆起手段10は、図1(b)に示すようにその周辺を含めた隆起形状が、船体1を側面視した状態でプロペラ5・プロペラ6の前方に変曲点を有していない。すなわち、外板隆起手段10の隆起形状及び周辺のトンネル部7の船体外板9との接合部及び船体外板9の外形線を含めて、プロペラの前方に前後で曲率の大きく変わる変曲点が存在していない。
また、図1(b)にBで示すように、プロペラ5・プロペラ6は、側面から見たとき外板隆起手段10と重なる位置に配置されている。すなわち、外板隆起手段10が、プロペラ5・プロペラ6の前後にわたり配置されている。
そして、外板隆起手段10の隆起量Cは、プロペラ5・プロペラ6の中心軸Dに近づくに従って増加するように構成されている。また、外板隆起手段10は、船体1を側面視した状態で、プロペラ5・プロペラ6の中心軸Dの上下にわたり配置されている。
これらの構成により、トンネル部7内の流れの剥離を抑制し、特にスケグ3・スケグ4の後端の剥離を抑制する効果を向上させることができる。このスケグ3・スケグ4の後端の剥離を抑制することにより、プロペラ5・プロペラ6への流れが乱れることへの影響を抑制し、振動やキャビテーションの発生を防止することもできる。また、プロペラ5・プロペラ6の中心軸Dの下方にも外板隆起手段10の一部が存在しているためプロペラ5・プロペラ6に対するカウンターフローを有効に強めることができる。
図1(a)に示すように、本実施形態の二軸船尾双胴型船舶100のトンネル部7は、船首側から船尾側に行くに従い、その幅(スケグ3とスケグ4の船底側の距離)が大きくなっている。トンネル部7の幅が広くなると、トンネル部7内の流れが遅くなる部分が生じ、流れの剥離が生じ易くなる。そこで、船底側の船体外板9に外板隆起手段10を設けることにより、トンネル部7の幅の増大による流路の増大を補償する。また、外板隆起手段10は、スケグ3・スケグ4の周辺に生じる局所的な流れの剥離の抑制にも寄与する。
これにより、トンネル部7の流れを整えること、すなわち、トンネル部7における流れをそのままの状態でプロペラ5・プロペラ6まで到達させることができる。このため、外板隆起手段10は、プロペラ5・プロペラ6の位置に達するまで、その隆起量がトンネル部7の幅の増大に対応するように変化する構成とすることが好ましい。ここで、外板隆起手段10の隆起量がトンネル部7の幅の増大に対応するとは、トンネル部7の幅が増大する領域において、流れの剥離を抑制する効果が得られるように、外板隆起手段10の隆起量を変化させることをいう。例えば、トンネル部7の幅の増大によるトンネル部7内の断面積(船体1の前後方向の直線に対する垂直面の断面積)が略一定になるように、外板隆起手段10の隆起量を変化させる構成を採用することができる。
図2(a)は第1の実施形態における二軸船尾双胴型船舶のプロペラの配置の例(その1)を示す背面図であり、図2(b)は第1の実施形態における二軸船尾双胴型船舶のプロペラの配置の例(その2)を示す背面図である。
これらの図に示すように、船尾側から前方視した状態で左側に位置するプロペラ5を時計回りに、右側に位置するプロペラ6を反時計回りに設定している。このように、いわゆる内回りとすることにより、トンネル部7内の流れFを利用して伴流利得を増やし、二重反転効果により推進効率を向上させることが可能となる。ただし、プロペラ5・プロペラ6の回転方向は、内回りに限られるものではなく、外回りとすることもできる。
プロペラ5・プロペラ6は、図2(a)に示すように、中心軸Dが、スケグ3・スケグ4のセンター軸Eと一致するように位置設定してもよく、また、図2(b)に示すように、その中心軸Dがセンター軸Eからそれぞれ内側にオフセットを持たせて位置設定してもよい。
スケグ3・スケグ4の「センター軸E」とは、船舶の進行方向に垂直な平面で切断した断面の重心付近を、船舶前方から後方まで結んだ線のように、スケグ3・スケグ4の内部を貫く軸のことをいう。
その中心軸Dがセンター軸Eからそれぞれオフセットを持たせて位置設定する構成を採用する場合、プロペラ5・プロペラ6の周方向の流れの速度の平均値あるいはプロペラ5・プロペラ6の半径方向の循環の強さに基づいて設定することが好ましい。この構成によれば、プロペラ5・プロペラ6の回転方向と逆方向の流れF(カウンターフロー)を利用して、伴流利得を増やして、二重反転効果により推進効率を向上させることが可能となる。
図3(a)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その1)を示す平面図であり、図3(b)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その2)を示す平面図であり、図3(c)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その3)を示す平面図であり、図3(d)は、図3(a)〜図3(c)のE−E線矢視断面図である。
図3(a)および図3(d)に示すように、外板隆起手段10Aの形状は、紡錘形の一部を成すものである。外板隆起手段10として、紡錘形の一部を成す形状のものを用いることは、トンネル部7内の流れを改善するために好適である。図3(a)に示した外板隆起手段10の形状は、図3(b)に示すように船尾側を切り取った形状の外板隆起手段10A1としてもよく、また、図3(c)に示すように船首側を切り取った形状の外板隆起手段10A2としてもよい。
図4(a)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その4)を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その1)であり、図4(c)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その2)であり、図4(d)は図4(a)のF−F線矢視断面の一例(その3)である。
図4(a)に示すように、稜線を有する外板隆起手段10Bを用いることもできる。このように稜線を有する場合は、図4(a)に示す頂上部の両側が船体外板9とは反対側に突出する曲線となった形状の外板隆起手段10B1、図4(b)に示す頂上部の両側が直線となった形状の外板隆起手段10B2、図4(c)に示す頂上部の両側が船体外板9側に突出する曲線となった形状すなわちフレア形の外板隆起手段10B3などとして構成することができる。
外板隆起手段10は、全体が同じ断面形状のものとして構成しても、複数の断面形状の部分を備えたものとして構成してもよい。また、図3(a)〜図3(c)同様、その1部を取り除いて構成してもよい。
図5(a)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その5)を示す平面図であり、図5(b)は図5(a)のF−F線矢視断面の一例(その1)であり、図5(c)は図5(a)のF−F線矢視断面の一例(その2)であり、図5(d)は図5(a)のF−F線矢視断面の一例(その3)である。
図5(a)に示すように、頂上部が平面により構成された外板隆起手段10Cを用いることもできる。頂上部を平面とした場合、図5(a)に示す頂上部の両側が船体外板9とは反対側に突出する曲線となった形状の外板隆起手段10C1、図5(b)に示す頂上部の両側が直線となった形状の外板隆起手段10C2、図5(c)に示す頂上部の両側が船体外板9側に突出する曲線となった形状すなわちフレア形の外板隆起手段10C3などとして構成することができる。
外板隆起手段10は、全体が同じ断面形状のものとして構成しても、複数の断面形状の部分を備えたものとして構成してもよい。また、外板隆起手段10Aと外板隆起手段10B・10C同様、その1部を取り除いて構成してもよい(図3(a)〜図3(c)参照)。
図6(a)は本実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その6)を示す平面図であり、図6(b)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その7)を示す平面図であり、図6(c)は第1の実施形態の外板隆起手段の形状の一例(その8)を示す平面図である。
図6(a)は、図3(a)に示した外板隆起手段10Aを、船首側と船尾側とが反対になるように配置した外板隆起手段10Dを示している。上述した外板隆起手段はいずれも、船尾側と船首側で反対になるように配置することとしてもよい。図8(b)に示すように、複数の外板隆起手段10Eを備えた構成としてもよい。図8(c)に示すような別の形状の外板隆起手段10Fとすることもできる。
以上説明したように、本実施形態の二軸船尾双胴型船舶100は、外板隆起手段10を備えることにより、トンネル部7内の流れがトンネル部内表面から剥離すること抑制し、トンネル部7の流れを改善することができる。したがって、船体1の抵抗を低減して、推進効率を向上させることが可能となる。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明を二軸船尾双胴型船舶の設計方法として実施する実施形態について説明する。
図7は本実施形態の二軸船尾双胴型船舶の設計方法のフローチャートである。
同図に示すように、設計開始時点において、offset、IGESなどの船型形状データを集める(S10)。続いて、外板隆起手段の形状および位置が、船体および流場に及ぼす影響を評価する(S20)。
S20において、船体に及ぼす影響は、全抵抗係数、形状影響係数、船体表面圧分布、船体表面限界流線等で評価する。また、流場に及ぼす影響は、プロペラ面内で、流速分布・周方向平均速度分布で評価する。
S20において得られた情報を元に、複数の外板隆起手段の形状および位置を選定する(S30)。そして、計算・実験などにより、目的関数に見合った最適形状および位置を探索する(S40)。S40において、目的関数は、様々なものが想定できる。例えば、(1)全抵抗係数が最小となる、(2)形状影響係数が最小となる、(3)伝達馬力が最小となる、(4)プロペラ半径の70%位置での旋回流強さが最大となる、(5)公称伴流係数が最小となる等を目的関数として用いることができる。
S40において、外板隆起手段の最適形状および位置を得ることができたかを判断する(S50)。そして、S50において最適形状および位置を得ることができたと判断された場合(YES)、その形状および位置を外板隆起手段の最適形状・最適位置とする(S60)。また、S50において最適形状および位置を得ることができなかったと判断された場合(NO)、再度S30に戻る。
上述したS40について、以下に説明する。
目的関数に見合った最適形状および位置を探索する工程(S40)は、例えば、プロペラの回転面における流れを評価する回転面流評価工程(S41)と、二つのスケグおよび外板隆起手段による船体への影響を評価する全体評価工程(S42)とを備えたものとすることができる。
回転面流評価工程(S41)においては、回転面流として、プロペラ半径の70%位置での旋回流強さ、プロペラ面を船首側から船尾側に通過する流れを示す(公称伴流係数)等を用いることができる。
また、全体評価工程(S42)において、スケグおよび外板隆起手段による船体への影響として、全抵抗係数、形状影響係数、伝達馬力等を用いることができる。
S40が上記工程を備えている場合、外板隆起手段の最適形状・最適位置を決定する(S60)形状設計工程では、回転面流評価工程(S41)および全体評価工程(S42)において得られた結果に基づいて、外板隆起手段および二つの前記スケグの形状を設計する。
上記各工程に加えて、プロペラの周方向の流れの速度の平均値あるいはプロペラの半径方向の循環の強さに基づいて、プロペラの回転中心をスケグのセンター軸からそれぞれオフセットを持たせて位置設定する位置セット工程(S70)を備えていてもよい。
位置セット工程(S70)により、スケグ後方のプロペラの回転方向と逆方向の流れを利用して、伴流利得を増やすために適した位置にプロペラを配置できる。したがって、二重反転効果を考慮したプロペラ推進効率の良好な二軸船尾双胴型船舶を設計することが可能となる。
また、S40が回転面流評価工程(S41)および全体評価工程(S42)を備えている場合、位置セット工程(S70)は、回転面流評価工程および全体評価工程の評価結果に基づいて位置設定する。これにより、プロペラ回転面流に加えて、全体の流れをも考慮した位置にプロペラを配置できる。
以上のように、本実施形態の二軸船尾双胴型船舶の設計方法によれば、外板隆起手段および二つのスケグの形状および位置を最適化することにより、船体1の抵抗を低減して、推進効率を向上させた二軸船尾双胴型船舶を設計することが可能となる。
以下に、本発明の二軸船尾双胴型船舶について、模型船を用いた実験の結果、およびCFD(計算流体力学・数値流体力学、Computational Fluid Dynamics)計算の結果を示す。
〔実施例〕
実施例として、図1に示した第1の実施形態の二軸船尾双胴型船舶の模型について、水槽実験を行い船舶全体の抵抗およびプロペラ面への伴流の測定を行った。
〔比較例〕
図8(a)は比較例の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた背面図であり、図8(b)は図8(a)のH−H線矢視断面図である。同図に示す比較例の二軸船尾双胴型船舶200は、外板隆起手段10を備えていない点のみにおいて、図1に示した実施例と異なっている。
〔参考例〕
図9は参考例の二軸船尾双胴型船舶を船尾側からみた背面図を示している。同図に示すように参考例の二軸船尾双胴型船舶は、外板隆起手段10を備えていない点に加えて、スケグ3・スケグ4が、トンネル部7の内側に向けて捻った形状ではなく、真っ直ぐ下方に伸びた形状をしている点において、図1に示した実施例と異なっている。
図10は、実施例、比較例および参考例の二軸船尾双胴型船舶の全抵抗計数を示すグラフである。同図の横軸(Fn)は、フルード数(無次元値)で示した船速を表している。また、縦軸(Ctm[E−3])は、船体抵抗(無次元値)を示している。同図に三角(△)で示した実施例は、菱形(◇)で示した比較例および、丸(○)で示した参考例と比較して、全ての速度において船体抵抗が低下していることが分かる。
図11は、模型の二軸船尾双胴型船舶における設計船速に相当するフルード数(Fn=0.235)において、参考例を基準とした船体抵抗の減少割合を示すグラフである。同図に示すように、実施例では、参考例との比較において、船体抵抗が2.2%減少していた。対して、比較例では、参考例との比較において、船体抵抗が0.2%減少したに過ぎなかった。この結果より、トンネル部に設けた外板隆起手段により、船体抵抗が低下することが分かる。これは、外板隆起手段によりトンネル部の幅の増大が補償されたことによりトンネル部内の流れが整流された結果として、剥離が抑制されたためと考えられる。
図12は、参考例を基準とした、実施例および比較例のプロペラ面に侵入する前後方向(船首から船尾方向)の流れである伴流を示すグラフである。同図に示すように、比較例の二軸船尾双胴型船舶では、伴流の低下が0.4%であったのに対し、実施例の二軸船尾双胴型船舶では、伴流の低下が0.6%であった。
図12に示した伴流の低下は、例えば、トンネル部内の流れに淀みが生じた場合にも生じる。しかし、この場合、船体抵抗が増加する原因となるから好ましくない。このため、トンネル部内の比較的遅い前後方向の流れをそのままプロペラ面に流入させることが好ましいといえる。
図13はプロペラ面における前後方向の流れの強さを示すグラフであり、図13(a)が実施例、図13(b)が比較例、図13(c)が参考例についての結果を示している。同図においては、濃い色の部分が流れの速い部分を示している。図13において、薄い色で示される流域が全体的に広がっていれば、トンネル部内の比較的遅い前後方向の流れがそのままプロペラ面に流入していることを示す。図13(a)〜図13(c)を比較すると、実施例の結果を示す図13(a)は、図13(b)および図13(c)における上部の色の濃いラインが薄く全体的にぼんやりとなっていることが認められる。このことから、実施例では、外板隆起手段を設けることにより、トンネル部内の比較的遅い前後方向の流れがそのままプロペラに流入することが分かった。
図14は、CFD計算によりトンネル部内の流れを求めた結果を示しており、図14(a)が実施例、図14(b)が比較例、図14(c)が参考例の結果について示している。これらの図では、船体の左半分を船底側から見た場合のトンネル部内の流れを示しており、図の右端が船体中央に相当する。図14(a)と図14(b)との比較から、外板隆起手段10を設けることにより、トンネル部7内の流れをスケグ3に沿ったものとし、トンネル部内表面からの流れの剥離が抑制されたことが分かる。
実施例(図1)、比較例(図8)、参考例(図9)について得られた結果(図10〜図14)によれば、トンネル部の上下方向の中央部に外板隆起手段を備えることにより、トンネル部内の流れが剥離することを抑制し、トンネル部の流れを改善することができることが分かった。
また、プロペラの回転面における流れの評価(回転面流評価工程)の結果として得られた公称伴流係数(図12、図13参照)、ならびにスケグおよび外板隆起手段による船体への影響の評価(全体評価工程)の結果として得られた全抵抗計数(図10、図11、図14参照)に基づいて、外板隆起手段および二つのスケグの形状を設計すること(形状設計工程)により、プロペラ向かう流れと流れの剥離の防止の関係において、外板隆起手段ならびに二つのスケグの形状および位置を最適化できることが分かった。
本発明は、大型船舶をはじめとして、小型船舶に対して利用可能であり、さらに、造船業、海運業をはじめとした海事産業全般のみならず、環境面においても広く社会全般に対して大きな有益性をもたらすものである。
1 船体
2 船尾
3,4 スケグ
5,6 プロペラ
7 トンネル部
8 上下方向の中央部
9 船体外板
10 外板隆起手段
100 二軸船尾双胴型船舶
E スケグのセンター軸
D プロペラの中心軸

Claims (16)

  1. 船体の船尾に二つのスケグを有し複数のプロペラが二軸で駆動される二軸船尾双胴型船舶において、
    二つの前記スケグ間に形成されるトンネル部の上下方向の中央部に船体外板を隆起させる外板隆起手段を備え、前記外板隆起手段により前記トンネル部の流れを改善したことを特徴とする二軸船尾双胴型船舶。
  2. 前記外板隆起手段の周辺を含めた隆起形状が、前記船体を側面視した状態で前記プロペラの前方に変曲点を有していないことを特徴とする請求項1に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  3. 前記船体を側面視した状態で、前記外板隆起手段が前記プロペラの中心軸の上下にわたり配置されていることを特徴とする請求項2に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  4. 前記プロペラの回転方向を、前記船尾側から前方視した状態で左側に位置するプロペラを時計回りに、右側に位置するプロペラを反時計回りに設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  5. 前記船体を側面視した状態で、前記外板隆起手段の隆起量を前記プロペラの中心軸に近づくに従って増加させたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  6. 前記外板隆起手段を複数備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  7. 前記外板隆起手段の形状は、紡錘形の一部を成すことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  8. 前記外板隆起手段の形状は、フレア形を成すことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  9. 二つの前記スケグの下端を、前記トンネル部の内側に向けて捻った形状としたことを特徴とする請求項1から請求項8のうちの1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  10. 前記プロペラの中心軸を前記スケグのセンター軸からそれぞれオフセットを持たせて位置設定したことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  11. 前記位置設定は、前記プロペラの周方向の流れの速度の平均値あるいは前記プロペラの半径方向の循環の強さに基づいて設定したことを特徴とする請求項10に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  12. 前記トンネル部の前記船体外板の水平方向に対して成す傾斜角が15度以上であることを特徴とする請求項1から請求項11のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  13. 前記外板隆起手段を前記トンネル部の前記船体外板に後付して備えたことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項に記載の二軸船尾双胴型船舶。
  14. 船体の船尾に二つのスケグを有し複数のプロペラが二軸で駆動され、二つの前記スケグ間に形成されるトンネル部の上下方向の中央部の船体外板に有する外板隆起手段を備えた二軸船尾双胴型船舶の設計方法であって、
    前記プロペラの回転面における流れを評価する回転面流評価工程と、
    二つの前記スケグおよび前記外板隆起手段による船体への影響を評価する全体評価工程と、
    前記回転面流評価工程および前記全体評価工程の評価結果に基づいて、前記外板隆起手段および二つの前記スケグの形状を設計する形状設計工程
    を備えていることを特徴とする二軸船尾双胴型船舶の設計方法。
  15. 前記プロペラの周方向の流れの速度の平均値あるいは前記プロペラの半径方向の循環の強さに基づいて、前記プロペラの回転中心を前記スケグのセンター軸からそれぞれオフセットを持たせて位置設定する位置セット工程を有することを特徴とする請求項14に記載の二軸船尾双胴型船舶の設計方法。
  16. 前記位置セット工程が、前記回転面流評価工程および前記全体評価工程の評価結果に基づいて位置設定したことを特徴とする請求項15に記載の二軸船尾双胴型船舶の設計方法。
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