JP6241905B2 - 船尾ダクトを有した船尾形状及び船舶 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、環状ノズルの成形外面における境界層範囲に発生する流れの剥離防止を目的として、環状ノズルがスクリューの手前にスクリュー直径以下の水平方向間隔をおいて配置され、環状ノズルの手前の船舶外板に案内羽根が設けられた案内面装置が開示されている。
また、特許文献2には、推進効率の増大等を目的として、プロペラの前方にプロペラの直径までの水平距離をおいて配置された環状ノズルによって取り囲まれている横断面の重心を、プロペラ軸線の上方とした船尾の水流誘導面が開示されている。
また、特許文献3には、省エネルギー効果を得ることを目的として、横方向に長い半円筒状のダクト及びその下端に接続されるステーを有した船舶のダクト装置が開示されている。
また、特許文献4には、省エネルギー効果の向上とコストダウンを目的として、半円筒状のダクト及びその下端に接続される連結板を有した船舶のダクト装置が開示されている。
また、特許文献5には、船舶の推進性能の向上を目的として、ダクトの形状として略円筒又は横長を含む楕円筒状に形成した船舶の推進性能向上装置が開示されている。
また、特許文献6には、船体抵抗の減少を図るとともに船尾流場を均一することを目的として、ダクトに相当するリング状構造物の形状として円の一部を成す形状だけでなく、楕円や直線状又はそれらを組み合わせた形状を採用できる技術が示唆されている。
特許文献2は、環状ノズルは分離面で分離する二つの半円環殻部から成るものであり、構造が複雑になる。
特許文献3及び特許文献4は、ダクト本体の後縁がプロペラの軸心を略中心とする半円を左右両側にずらした上部の中央に平行部を有した形状を開示するものではなく、また、平行部の左右水平方向の幅を数値的に規定しているものでもない。このため、船体推力方向成分をより大きくすることができない。
特許文献5は、ダクトの主要部をプロペラ軸位置よりも下方に設けるものであり、また、ダクト本体の後縁がプロペラの軸心を略中心とする半円を左右両側にずらした上部の中央に平行部を有した形状を開示するものではなく、平行部の左右水平方向の幅を数値的に規定しているものでもない。このため、プロペラ軸下方に剥離が発生しやすくなり、船長方向の推力が得られにくく、船体推力方向成分をより大きくすることができない。
特許文献6は、ダクト本体の後縁がプロペラの軸心を略中心とする半円を左右両側にずらした上部の中央に平行部を有した形状を示唆するものではなく、また、平行部の左右水平方向の幅を数値的に規定することを示唆しているものでもない。このため、船体推力方向成分をより大きくすることができない。
また、ダクト型省エネ付加物は、適用する船体形状により省エネ効果が著しく小さくなる場合があるが、特許文献1から特許文献6はいずれも適用する船体形状を考慮したものではない。すなわち、ダクトによる省エネ効果が小さい船体形状に対して、大幅な輸送効率の改善を図ることができない。
請求項1に記載の本発明によれば、ダクト本体を半円筒状とし、半円の内半径をプロペラの半径の40%以上80%以下の範囲に設定することで、従来の円環ダクトと比べて、プロペラ軸下方の剥離を低減し、船長方向の推力を得やすくなる。また、縦渦が形成されないV型船尾形状において、ダクト本体を上部中央に平行部を有した形状とし、平行部の幅をプロペラの直径との関係を考慮して適切に設定することにより、ダクトによる省エネ効果が小さかったV型船尾形状であっても大幅な輸送効率の改善を図ることができる。
請求項2記載の本発明によれば、肥大度に応じてV型船尾形状(V型船型)とU型船尾形状(U型船型)とを区別でき、船尾ダクトを適用する上で有効な船尾形状を的確に判別できる。
請求項3記載の本発明によれば、より簡便に肥大度に応じてV型船型とU型船型とを区別できる。
なお、表1の数値は、より簡便に肥大度とV型船型とU型船型の関係を区別するためのものであり、実際は肥大度、区分角度とも各数値の間の値を取ることもできる。
請求項2に記載の本発明によれば、ダクト本体の後縁とプロペラの前縁との距離を近接させることによって、プロペラとの干渉効果も高め推進効率を更に向上させることができる。
請求項5に記載の本発明によれば、船体とダクト本体下端との隙間に生じる剥離を大幅に減少させ、大きな推進性能を得ることができる。また、舵に省エネ付加物を設けた場合は、省エネ付加物に対して良い影響を及ぼす。
請求項6に記載の本発明によれば、船体とダクト本体下端との隙間に生じる剥離を更に減少させて、より大きな推進性能を得ることができる。
請求項7に記載の本発明によれば、船尾縦渦とダクト本体の迎角が相対的に悪化して抵抗となるのを避け、従来の円環ダクトよりも高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得を稼ぐことができる。
請求項8に記載の本発明によれば、船尾縦渦と翼の迎角が相対的に悪化して抵抗となるのを避け、従来の円環ダクトよりも高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得を稼ぐことができる。
請求項9に記載の本発明によれば、より確実に、船尾縦渦と翼の迎角が相対的に悪化して抵抗となるのを避け、従来の円環ダクトよりも高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得を稼ぐことができる。
請求項10に記載の本発明によれば、ダクト本体より下流での流れを遅くして有効伴流率を小さくでき、かつダクト本体の前部側でのスラスト成分を増加させて推進力を高めることができる。
請求項11に記載の本発明によれば、ストラット部によってダクト本体を船尾部に取り付けることができるので、ダクト本体を設置しやすく、特にプロペラに対して適正な位置に配置しやすい。
請求項12に記載の本発明によれば、プロペラ面にプロペラ回転方向とは逆の流れを誘起し、二重反転効果により推進性能を向上させることができる。
請求項13に記載の本発明によれば、省エネ付加物によって更に輸送効率を高めることができる。
請求項14に記載の本発明によれば、推力を得やすい取り付け位置となるため、省エネ付加物が効果を発揮しやすくなり、高い推進効率を達成することができる。
請求項15に記載の本発明によれば、従来よりも省エネ効果が高い船尾ダクトを有した船尾形状を備えた船舶を提供することができる。
本実施形態による船尾ダクトを有した船尾形状及び船舶は、船体10の船尾部15に設けられたプロペラ20と、プロペラ20の前方に取り付けられた船尾ダクト30と、プロペラ20の後方に取り付けられた舵40とを備える。なお、「A.P.」は船尾垂線を示し、「F.P.」は船首垂線を示し、「L.P.P.」は船長(垂線間長)を示している。なお、船体10はV型船尾形状を有しているが、この点については後述する。また、V型船尾形状を有する船型がV型船型である。
船尾ダクト30のダクト本体31は、半円筒状である。ダクト本体31の後縁32は、船体10の後方から前方視した場合に、プロペラ20の軸心(プロペラ軸)21を略中心とする半円を左右両側にずらして構成された外殻の上部の中央に平行部33を有した形状である。図2において円α及び円βは、ダクト本体31の後縁32の半円の仮想内周を示している。円α及び円βは、プロペラ20の軸心(プロペラ軸)21を略中心とする円を左右両側にずらしたものであり、ダクト本体31は、円α及び円βの一部を構成する半円に平行部33を連ねて外殻を構成して形成される。なお、図2に示されるようにダクト本体31の下端36が、軸心(プロペラ軸)21の下方にある点から明らかなように、数値的に「半円」とは、左右両側にさらに30度程度ずつ長くした240度までを含むものとする。
平行部33の左右水平方向の幅W(以下、単に「幅W」という)は、プロペラ20の直径Dpの5%以上25%以下としている。
また、ダクト本体31は、ダクト本体31を側方視した場合に上底が下底よりも長い台形状を成している。ダクト本体31の下部の翼型の翼コード長L2は、ダクト本体31の上部の翼型の翼コード長L1よりも短く設定されている。すなわち、ダクト本体31の前縁34は、上部から下部にかけて徐々に前後方向の長さが短くなるテーパー状に形成されている。
ダクト本体31の下部の翼コード長L2と上部の翼コード長L1との比は、1/2以上1未満に設定されている。
この構成により、船尾縦渦と翼の迎角とが相対的に悪化して抵抗となるのを避け、従来の円環ダクトよりも高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得をより稼ぐことができる。
なお、ダクト本体31を側方視した場合の台形状は、プロペラ20側の後縁32がプロペラ軸21に対して垂直となる形状である。しかし、台形状としてはこの限りではなく、プロペラ20側の後縁32がプロペラ軸21に対して垂直とならない形状も含まれる。
この構成により、ダクト本体31より下流での流れを遅くして有効伴流率を小さくでき、かつダクト本体31の前部側でのスラスト成分を増加させて推進力を高めることができる。
また、図4に示すように、ダクト本体31の後縁32に近い部分(L4の範囲)は、やや開き気味に形成されており、内部の翼型を確保するとともに、ダクト本体31より下流での流れの遅い部分を増やして有効伴流率をさらに小さくしている。
なお、やや開き気味に形成されているL4の範囲は、翼コード長L1の10%以上20%以下とすることが好ましい。
ストラット部35はプロペラ20の回転方向とは逆の流れを誘起するように、左ストラット部35Aの角度と右ストラット部35Bの角度を変えている。すなわち、図3に示すように左ストラット部35Aは、ダクト本体31を側方視した場合に右ストラット部35Bよりも前上がりに傾斜している。
このように左ストラット部35Aの角度と右ストラット部35Bの角度を、プロペラ20の回転方向とは逆の流れを誘起するように異ならせることで、図5に示すように、プロペラ面にプロペラ回転方向とは逆の流れを誘起し、二重反転効果により推進性能を向上させることができる。
なお、左ストラット部35Aと右ストラット部35Bの角度は、船体形状による推進性能を考慮して決定するため、船体形状によっては左ストラット部35Aと右ストラット部35Bが同じ角度、又はキャンバーの向きとなることもありえる。
ダクト本体31の後縁32とプロペラ20の前縁との距離L3を近づけることによって、船尾ダクト30とプロペラ20との干渉効果の増加により伴流利得が大きくなり、プロペラ効率が増加する。一方、距離L3を近づけすぎるとプロペラ20との干渉で、ダクト本体31の抵抗成分が卓越し推力減少係数が悪化する。そのため、推進効率全体を考えた場合、伴流利得の増加と推力減少係数の悪化のトレードオフ関係から、適切な距離L3を導くことができ、距離L3が最適位置にあれば、推進効率を更に向上させることができる。
この距離L3は、プロペラ20の直径Dpの1.0%以上25%以下が好ましく、更には10%以上20%以下がより好ましい。また、距離L3を近づけすぎると、キャビテーションが発生し易くなる場合がある。このような場合、ダクト本体31の半円の内半径を小さくすることによりキャビテーショ発生の問題を抑制することが可能となる。
図6は同船尾形状を後方から前方視した状態においてプロペラ円と船尾ダクトを示す図であり、図7及び図8はV型船型及びU型船型における同船尾ダクトの直径による推力の比較図である。
図6において、半円101は、平行部33の幅Wがプロペラ20の直径Dpの10%であってダクト本体31の後縁32の半径r1(直径d1)がプロペラ20の半径R(直径Dp)の40%の場合の船尾ダクト30の形状を示し、半円102は、平行部33の幅Wがプロペラ20の直径Dpの10%であってダクト本体31の後縁32の半径r2(直径d2)がプロペラ20の半径R(直径Dp)の100%の場合の船尾ダクト30の形状を示している。円103はプロペラ円を示している。
図7(a)は、平行部33の幅Wがプロペラ20の直径Dpの10%である場合の船尾ダクト30を、半径r(直径d)を変えてV型船型(肥大度0.87、接線角度40度)に適用した場合の船体推進方向成分の分布を示す。図7(b)は、船尾ダクト30の半径r(直径d)ごとの図7(a)の積分値であり、縦軸が実際の船長方向推力を示す。
図8(a)は、平行部33の幅Wがプロペラ20の直径Dpの0%よりやや大きい場合の船尾ダクト30の半径r(直径d)を変えたU型船型(肥大度0.87、接線角度75度)の船体推進方向成分の分布を示す。図8(b)は、船尾ダクト30の半径r(直径d)ごとの図8(a)の積分値であり、縦軸が実際の船長方向推力を示す。なお、V型船型とU型船型の詳細な定義については後述する。
図7(a)及び図8(a)において、ダクト本体31の後縁32の半径r(直径d)がプロペラ20の半径R(直径Dp)の40%のときの推力を線104、60%のときの推力を線105、80%のときの推力を線106、100%のときの推力を線107で示している。
図7(b)及び図8(b)から、ダクト本体31の後縁32の半径r(直径d)は、プロペラ20の半径R(直径Dp)の40%以上80%以下の範囲が好ましく、特にV型船型に限って言えば、プロペラ20の半径R(直径Dp)の40%以上70%以下の範囲がより好ましく、50%以上65%以下の範囲がさらに好ましいことが分かる。なお、例えば50%以上65%以下の場合、ダクト本体31の後縁32とプロペラ20の前縁との距離L3のより好ましい範囲として、前述した10%以上20%以下を5%以上15%以下とすることができる。
図9(b)及び(c)において、色が濃い部分は流れが無いか逆流して抵抗となる部分(剥離領域A)を示している。図9(a)においては、従来の円環ダクト300の下端を仮想的に細長い楕円で示すとともに剥離領域Aを円で示している。
図9(a)及び(b)より、従来の円環ダクト300では、船体10と円環ダクト300の下端との隙間に剥離領域Aが生じるため、剥離現象が発生し抵抗が著しく高くなっていることが分かる。
なお、軸下端部23とは、プロペラ20の取り付けられる船尾部15の船体10(船尾管や船尾管外殻)の軸下端部23が略対向する船尾管後縁24の下端部の位置を含むものとする。通常、プロペラ20の軸下端部23と船尾管後縁24の下端部は、同一の高さに構成されることが多いが、船尾管後縁24の下端部が軸下端部23よりも若干下方になる場合もある。
基本的には、後縁32の下部と船体10の船尾管後縁24との前後方向の水平距離を0%以上50%未満に設定するが、本実施形態のようにダクト本体31を側方視した場合に上底が下底よりも長い台形状とした場合には、ダクト本体31の下部が短いため、ダクト本体31の下部の一部が後にはみ出すか、又は船体10から後方に離れて全く重ならない場合であっても剥離が生じる領域が小さいため、プロペラ20の直径Dpの−15%に設定してもよい。
このように、ダクト本体31の形状を半円筒状とし、船体プロファイルとの関係及びダクト本体と船体10との水平距離を一体設計することで、水が流れにくく剥離が生じる領域をなくし、抵抗性能を大きく改善することができる。
図10は、本実施形態において船体10の肥大度Cbが0.80の場合の例であり、船体10を前後方向(船長方向)に輪切りにしたときにできる曲面の断面を示す船尾線図である。なお、肥大度Cbは、船体10の排水量を、船長と船幅と喫水で乗算した値で除して得られる無次元数である。
図10において、線108はU型船型を示し、線109はV型船型を示している。線110はU型線型とV型船型とを分ける線であり、線111はプロペラ20のプロペラ軸(軸心)21と水平な線である。
また、「A.P.」は舵40の回転の中心を通る垂直線である船尾垂線の位置を示し、「S.S.□」は、垂線間長(船長)L.P.P.全体を10としたときの船尾垂線A.P.からの位置を示す。すなわち、「S.S.1」は、船尾垂線A.P.から垂線間長L.P.P.の10%前方の位置である。
なお、「S.S.1/2」と船尾垂線A.P.の位置における線108及び線109は省略している。
この図10のように、船体10の肥大度Cbが0.80の場合は、線111と、「S.S.1」の位置において線108と線109が交わる点を通る線108又は線109の接線との成す接線角度θ1、θ2が、84度を超える場合の船型をU型船型、84度以下の場合の船型をV型船型と定義している。なお、図10においてはU型船型の線108の接線角度θ1は92度であり、V型船型の線109の接線角度θ2は82度である。
図11は、本実施形態において船体10の肥大度Cbが0.87の場合の例であり、船体10を前後方向(船長方向)に輪切りにしたときにできる曲面の断面を示す船尾線図である。なお、図10で説明した事項と実質的に同様な点は、説明を省略する。
この図11のように、船体10の肥大度Cbが0.87の場合は、線111と、「S.S.1」の位置において線108と線109が交わる点を通る線108又は線109の接線との成す接線角度θ1、θ2が、57度を超える場合の船型をU型船型、57度以下の場合の船型をV型船型と定義している。なお、図11においてはU型船型の線108の接線角度θ1は75度であり、V型船型の線109の接線角度θ2は40度である。
このように、V型船型とU型船型は、船尾垂線A.P.から船長(垂線間長)L.P.P.の10%前方の位置における船体10のプロペラ軸(軸心)21を通る水平な線と船体10の接線との成す接線角度と、船体10の肥大度Cbにより区分して定義される。
図12(a)、(b)は、船体10の肥大度Cbと区分角度(V型船型とU型船型を分ける角度)との関係を示す図である。
図12(a)において、船体10の肥大度Cbと、船尾垂線A.P.から船長(垂線間長)L.P.P.の10%前方の位置における船体10のプロペラ軸(軸心)21を通る水平な線111と船体10の接線との成す接線角度θ1、θ2が、線114以下となるものをV型船尾形状(V型船型)として定義して取り扱う。肥大度Cbが0.783以下では、区分角度である90度以下の接線角度のものがV型船尾形状に相当する。また、肥大度Cbが0.783を超え0.914未満の範囲においては、区分角度=-342.86Cb+358.29 により得られる数値の区分角度以下が、V型船尾形状に相当する。また、肥大度Cbが0.914以上では、区分角度である45度以下のものがV型船尾形状に相当する。なお、図12(b)及び表1の数値は、より簡便に肥大度とV型船型とU型船型の関係を区別するためのものであり、実際は肥大度Cb、区分角度とも各数値の間の値を取ることもできる。
この図13におけるU型船型の肥大度Cbは、0.87であり、また接線角度は75度である。また、V型船型の肥大度Cbは、0.87であり、また接線角度は40度である。
図13(a)は左舷側の船尾線図であり、図13(b)はU型船型(線108)の伴流を示し、図13(c)はV型船型(線109)の伴流を示している。図13(b)及び(c)において数値は船速で無次元化されており、U=1.0を船速としている。また、長さは垂線間長(船長)L.P.P.が1.0になるように無次元化している。
「伴流」とは船体10の後の流れのことである。通常は船体10の影響で流れが遅くなる。また、図13(b)に示すように、U型船型では船長方向を軸とする縦渦が形成される。船長方向を軸とする縦渦が形成されないV型船型においては、平行部33の幅Wを所定の範囲とすることが好ましい。
図14(b)及び(c)において、横軸は船尾ダクト30の上端からの距離であり、図14(a)及び(c)に示すように、それぞれ左右90度までの値を算出しており、平行部33の大きさによって終端位置が異なる。なお、この上端からの距離は、船長L.P.P.で無次元化している。縦軸は船尾ダクト30が翼素流れにより誘起する推力と抗力のベクトル和の船体推力方向成分であり、力を水の密度と船長L.P.P.の二乗で割った値である。具体的には、無次元の揚力係数(CL)と抗力係数(CD)に無次元速度Uの二乗をかけた値である。
また、算定条件は、船尾ダクト30の後縁32とプロペラ20の前縁との距離をプロペラ20の直径Dpの10%、船尾ダクト30の後縁32の径をプロペラ20の直径Dpの60%、ダクト開き角はV型船型が12度でU型船型が10度としている。また、船尾ダクト30の翼コード長L1を、V型船型はプロペラ20の直径Dpの25%とし、U型船型はプロペラ20の直径Dpの30%としている。
図14(b)より、V型船型においては、平行部33の幅Wがプロペラ20の直径Dpの20%の場合に他の場合と比べてより推力を発生していることが分かる。また、平行部33の幅Wが30%になると、船体推力方向成分がマイナスとなる部分が発生しているが、これは流れに剥離が生じ出していることに起因している。
また、図14(c)より、U型船型においては、平行部33がプロペラ20の直径Dpの0%の場合に他の場合と比べてより推力を発生していることが分かる。この点から、U型船型においては、却って平行部33を設けない方が船体推力面から有利だと言える。
図15は、図14(b)のV型船型について、平行部33の幅W毎に船体推力方向成分を積分した結果を示す。なお、図15においては、平行部33の幅Wは、プロペラ20の直径Dpの40%と50%とした場合を更に追加している。平行部33の幅Wが30%の場合は、船体推力方向成分がマイナスとなる部分が発生してはいるが、積分値としてはまだプラスとなっている。但し、剥離は平行部33の幅W以外の条件(船尾ダクト30の内面の凹凸や流線の方向等)によっても変わってくるため、平行部33の幅Wの上限は余裕を取って小さめに設定し、25%とすることが好ましい。
また、輸送効率の面から、本実施形態の船尾ダクトを有した船尾形状の建造コスト等を考慮すると、船体推進方向成分の積分値として、0.0018程度はあることが好ましく、平行部33の幅Wの下限としてはプロペラ20の直径Dpの5%程度あることが好ましい。
したがって、船長方向を軸とする縦渦が形成されないV型船型においては、平行部33の幅Wを5%以上25%以下とすることが好ましく、船体推進方向成分の積分値が単調増加する5%以上20%以下とすることがより好ましく、船体推進方向成分の積分値の値がある程度大きくなる10%以上20%以下とすることがさらに好ましい。
このように、船体形状としてV型船型を船体10の肥大度Cbと区分角度から見極め、ダクト本体31の平行部33の左右水平方向の幅Wを、プロペラ20の直径Dpとの関係等を考慮して適切に設定することで高い輸送効率を得ることができる船尾形状とすることが可能となる。
舵40には、船体10を前方に推進するPost−swirl型省エネ装置等の省エネ付加物50を有している。省エネ付加物50は例えばフィンである。省エネ付加物50の舵40への縦方向における取付け位置は、推力を得やすいプロペラ20のボス位置と略同一レベルとしている。省エネ付加物50によって高い推進効率を達成して更に輸送効率を高めることができる。
船尾ダクト30を適用した場合(図16(b))には、従来の円環ダクト300を適用した場合(図16(a))と比べて、舵40に設置された省エネ付加物50が効果を発揮するのに必要な船底からの強い上昇流が誘起される。この点は、図16(b)において、船尾ダクト30の左側の流線が、軸心(プロペラ軸)21に向かう方向に密となっている点からも理解できる。
なお、省エネ付加物50の舵40への縦方向における取付け位置が、プロペラ20のボス位置と略同一レベルとしている関係上、船尾ダクト30のダクト本体下端36を、プロペラ20の軸心よりも下方でプロペラ20の軸下端部23よりも上方に設定することにより、好適に流線を省エネ付加物50に導くことができる。
このように船尾ダクト30は省エネ付加物50と相性がよく相乗効果が発揮されるので、組み合わせによって更に輸送効率を高めることができる。
なお、省エネ付加物としては、フィン形状の省エネ付加物50以外にも、各種の形状が採用可能である。
また、1軸船のみならず2軸船や多軸船、単胴船のみならず双胴船や多胴船にも適用が可能である。
15 船尾部
20 プロペラ
21 軸心(プロペラ軸)
24 船尾管後縁
30 船尾ダクト
31 ダクト本体
32 後縁
33 平行部
35 ストラット部
35A 左ストラット部
35B 右ストラット部
36 ダクト本体下端
40 舵
50 省エネ付加物
A.P. 船尾垂線
Cb 肥大度
Dp プロペラの直径
L1 上部の翼コード長
L2 下部の翼コード長
L3 ダクト本体の後縁とプロペラの前縁との距離
L.P.P. 船長(垂線間長)
R プロペラの半径
W 幅
θ1、θ2 接線角度
Claims (15)
- 船体の船尾部に設けられたプロペラと、前記プロペラの前方に取り付けられた船尾ダクトとを備え、前記船体がV型船尾形状を有し、前記船尾ダクトのダクト本体が半円筒状を成し、前記船体の後方から前方視した場合に前記ダクト本体の後縁が前記プロペラの軸心を略中心とする半円を左右両側にずらした上部の中央に平行部を有した形状であり、かつ前記半円の内半径を前記プロペラの半径の40%以上80%以下の範囲に設定し、前記平行部の左右水平方向の幅を前記プロペラの直径の5%以上25%以下に設定したことを特徴とする船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記V型船尾形状は、船尾垂線から船長の10%前方の位置における前記船体の前記プロペラの前記軸心を通る水平な線と前記船体の接線との成す接線角度が、前記船体の肥大度ごとに定義された区分角度以下となる形状であることを特徴とする請求項1に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記区分角度が、前記V型船尾形状を有する船型を規定する下表1に基づいて定められることを特徴とする請求項2に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の前記後縁と前記プロペラの前縁との距離を、前記プロペラの直径の1.0%以上50%未満に設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体のダクト本体下端を、前記プロペラの前記軸心よりも下方で前記プロペラの軸下端部よりも上方に設定したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の前記後縁の下部と前記船体の船尾管後縁との前後方向の水平距離を、前記後縁が前記船体の前方にある場合をプラスとして、前記プロペラの直径の−15%以上50%未満に設定したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体が、前記ダクト本体を側方視した場合に上底が下底よりも長い台形状を成していることを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の断面が翼型を成し、前記翼型の翼コード長を前記ダクト本体の上部よりも下部を短く設定したことを特徴とする請求項7に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の前記下部の前記翼コード長と前記上部の翼コード長との比を、1/2以上1未満に設定したことを特徴とすることを特徴とする請求項8に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記半円の内半径を、前記ダクト本体の後部よりも前部の方を大きく設定したことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の下端に、前記ダクト本体を前記船尾部に支持するストラット部を有していることを特徴とする請求項1から請求項10のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ストラット部が前記プロペラの回転方向とは逆の流れを誘起するように、左右の前記ストラット部の角度を変えたことを特徴とする請求項11に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記プロペラの後方に舵を備え、前記舵に前記船体を前方に推進する省エネ付加物を有したことを特徴とする請求項1から請求項12のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記省エネ付加物の前記舵への縦方向における取付け位置が、前記プロペラのボス位置と略同一レベルであることを特徴とする請求項13に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 請求項1から請求項14のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状を前記船体に備えたことを特徴とする船舶。
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