(第1の実施の形態)
図1には、第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置10の要部の構成が一部破断した正面断面図により示されている。
この図に示すように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール20と、ウェビング24と、巻取スプリングユニット34と、テンションリデューサユニット56と、を含んで構成されている。
フレーム12は背板14備えており、背板14の幅方向一方の端部からは背板14の厚さ方向一方の側へ向けて脚板16が延出されている。また、背板14の幅方向他方の端部からは背板14に対する脚板16の延出方向へ向けて脚板(図示省略)が延出されており、この脚板は脚板16と対向して配置されている。
スプール20は、全体として鼓形状に形成されて、脚板16と脚板16に対向する脚板との間に回転可能に配置されている。スプール20の脚板16側の端部には、連結軸部22が設けられている。この連結軸部22は、スプール20と同軸上に配置されて、スプール20から脚板16の外側(図1に矢印A方向)へ突出されている。そして、連結軸部22は、後述するアダプタ44の嵌合孔46に嵌入可能に構成されている。
ウェビング24は長尺帯状に形成されており、その基端部がスプール20に連結固定されている。そして、スプール20をその軸線周り一方(以下、この方向を「巻取方向」と称する)へ回転させると、ウェビング24がその基端側からスプール20の外周部に層状に巻取られ、一方、ウェビング24をその先端側から引張れば、これに伴いスプール20がその軸線周り他方(以下、この方向を「引出方向」と称する)へ回転しながらウェビング24が引出される。
巻取スプリングユニット34は、フレーム12の脚板16の外側に設けられている。この巻取スプリングユニット34は、「収容部材」としてのスプリングケース36と、スプリングカバー42と、「連結部材」としてのアダプタ44と、「付勢手段」としての巻取スプリング52と、を含んで構成されている。
スプリングケース36は、脚板16側へ開口された略箱形状に形成されると共に、脚板16に固定されている。このスプリングケース36の底壁38には、円形状の「露出部」としての露出孔38Aが貫通形成されており、露出孔38Aはスプール20と同軸上に配置されている。また、底壁38には、露出孔38Aの上方及び下方において、円形状の「保持部」としての一対の保持孔38Bが貫通形成されている。さらに、底壁38には、係止壁40が設けられており、係止壁40は底壁38から脚板16側へ向けて突出されている。
スプリングカバー42は、略矩形板状に形成されて、スプリングケース36の開口部を閉塞している。また、スプリングカバー42には、円形状の貫通孔42Aが形成されており、貫通孔42Aはスプール20と同軸上に配置されている。
アダプタ44は、略円筒形状に形成されると共に、軸方向をスプール20の軸方向にしてスプリングケース36内に配置されている。アダプタ44には、軸心部において、「嵌合部」としての嵌合孔46が貫通形成されており、嵌合孔46の断面はスプライン状に形成されている。そして、嵌合孔46内には、前述した連結軸部22が脚板16側から嵌入されており、アダプタ44がスプール20に対して相対回転不能に繋がっている。
また、アダプタ44の軸方向両端部には、略円筒状の一対のボス48,50がそれぞれ設けられており、ボス48,50はアダプタ44と同軸上に配置されている。そして、スプリングケース36の底壁38側のボス48は、スプリングケース36の露出孔38A内に配置されて回転可能に支持されており、スプリングカバー42側のボス50はスプリングカバー42の貫通孔42A内に配置されている。また、ボス48の端面は、底壁38の外側面と面一に配置されており、ボス48がスプリングケース36から外側へ突出されずに、アダプタ44の嵌合孔46が露出孔38Aから露出されている。なお、ボス48の端面が、底壁38の外面側よりも脚板16側に配置されるように設定してもよい。
巻取スプリング52は、ぜんまいばねにより構成されると共に、スプリングケース36内に設けられている。この巻取スプリング52は、渦巻き方向外側から渦巻き方向内側へ引出方向に巻き回されている。そして、巻取スプリング52の渦巻き方向外側の端部は、逆向きに折り返して形成されて、スプリングケース36の係止壁40に係止されている。一方、巻取スプリング52の渦巻き方向内側の端部は、アダプタ44の外周部に係止されている。
これにより、ウェビング24をその先端側へ引張ってスプール20を引出方向へ回転させると、巻取スプリング52の渦巻き方向内側の端部がその渦巻き方向外側の端部に対して引出方向へ相対回転して、巻取スプリング52が巻き締められると共に、巻取スプリング52がスプール20を巻取方向に付勢する。
なお、フレーム12の脚板16に対向する脚板の外側には、周知のセンサユニット(図示省略)が設けられており、センサユニット内には、周知のロック機構(図示省略)が収容されている。そして、車両の急減速時などに、このロック機構が作動されることで、スプール20の引出方向への回転が規制されるように構成されている。
次に、テンションリデューサユニット56について説明する。このテンションリデューサユニット56は、「筐体」としてのリデュースケース58と、「筐体」としてのリデュースカバー64と、テンションリデューサ70と、を含んで構成されている。
リデュースケース58は、フレーム12の脚板16側へ開口された略箱形状に形成されると共に、正面視において略L字形状に形成されている。このリデュースケース58は、巻取スプリングユニット34の外側において、ねじや爪、スナップフィット等の締結固定部材によって脚板16に固定されている。リデュースケース58の底壁60には、略中央部において軸受部62が設けられており、軸受部62は、脚板16側へ向けて開口された略有底円筒状に形成されて、スプール20と同軸上に配置されている。
リデュースカバー64は、正面視においてクランク状に屈曲された板状に形成されている。また、リデュースカバー64は、ねじや爪、スナップフィット等の締結固定部材によってリデュースケース58の開口部に固定されると共に、リデュースケース58の開口部を閉塞している。このリデュースカバー64には、円形状の露出孔66が形成されており、露出孔66はスプール20と同軸上に配置されている。
また、リデュースカバー64には、スプリングケース36の保持孔38Bに対応した位置において、一対の保持ピン68(広義には、「被保持部」として把握される要素である)が設けられている。保持ピン68は、略円錐形状に形成されて、スプリングケース36から脚板16へ突出されると共に、保持孔38B内に挿入されている。
テンションリデューサ70は、リデュースケース58内に配置されると共に、リデュースケース58及びリデュースカバー64によって覆われている。図2にも示すように、このテンションリデューサ70は、ラチェットギヤ72と、ソレノイド80と、パウル84と、リデュースバランススプリング94と、クラッチ100と、を含んで構成されている。
ラチェットギヤ72は、略円盤状に形成されると共に、板状の底壁部74を備えている。この底壁部74の中央部には、円形状の支持孔76が貫通形成されており、この支持孔76内にリデュースケース58の軸受部62が挿入されている。これにより、ラチェットギヤ72がリデュースケース58に回転可能に支持されている。また、ラチェットギヤ72の外周部には、ラチェット部78が形成されている。
ソレノイド80は、ラチェット部78の下方に設けられており、ソレノイド80には、ECU(図示省略)を介して車両に搭載されたバッテリー(図示省略)が電気的に接続されている。また、ECUは、車両のバックル装置(図示省略)に設けられたバックルスイッチに電気的に接続されている。さらに、ソレノイド80には、棒状のプランジャ82が設けられており、プランジャ82の長手方向基端側の部分が、ソレノイド80内に入り込んでいる。そして、ウェビング24に設けられたタングプレート(図示省略)がバックル装置に装着されたことをバックルスイッチが検出すると、ECUがソレノイド80を通電状態にして、プランジャ82がソレノイド80内に引き込まれるように構成されている。
パウル84は、プランジャ82の先端側に設けられると共に、スプール20の軸方向から見て略V字形状に形成されている。このパウル84の略中央部には、円筒部86が設けられており、円筒部86内には、リデュースケース58に保持された軸部88が挿入されている。これにより、パウル84が軸部88周りに回動可能に支持されている。
さらに、パウル84は回転規制片90を有しており、回転規制片90は、円筒部86の外周一部から延出されている。そして、パウル84が軸部88周りの一方である係合方向へ回動すると、回転規制片90の先端はラチェット部78の外周部に接近してラチェット部78のラチェット歯に係合するように構成されている。このように回転規制片90の先端がラチェット部78のラチェット歯に係合した状態では、ラチェットギヤ72の巻取方向への回転が規制されるようになっている。
また、パウル84は連結片92を有しており、連結片92は円筒部86の外周一部から延出されている。パウル84は、この連結片92によってプランジャ82に繋がっており、プランジャ82がソレノイド80内に引き込まれると、連結片92がプランジャ82に引張られて、軸部88周りにパウル84が係合方向へ回動する。さらに、このパウル84には、リターンスプリング(図示省略)の一端が係止されており、リターンスプリングはパウル84を係合方向とは反対方向に付勢している。これにより、ソレノイド80が通電されなければ、このリターンスプリングの付勢力によって、回転規制片90の先端側がラチェット部78の外周部から離間した状態で維持されている。
リデュースバランススプリング94は、ぜんまいばねにより構成されると共に、ラチェットギヤ72の内側に配置されている。このリデュースバランススプリング94は、渦巻き方向外側から渦巻き方向内側へ巻取方向に巻き回されており、リデュースバランススプリング94の付勢力が巻取スプリング52の付勢力よりも弱く設定されている。そして、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向外側端部は、半径方向内方で且つ渦巻き方向内方側に折り曲げられて、ラチェットギヤ72に設けられたリブ96に係止されている。
クラッチ100は、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向最内層の部分(渦巻きの最も内側の部分)の更に内側に設けられている。このクラッチ100は、クラッチケース102と、「伝達部材」としてのクラッチホイール104と、クラッチスプリング110と、を含んで構成されている。
クラッチケース102は、脚板16側へ開口した有底円筒形状に形成されている。また、クラッチケース102の底壁には、挿通孔102Aが貫通形成されており、挿通孔102A内に軸受部62が挿入されて、クラッチケース102がラチェットギヤ72に対して同軸的に相対回転可能に支持されている。さらに、クラッチケース102には、前述したリデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側の端部が係止されている。
クラッチホイール104は、略円柱状に形成されて、クラッチケース102内においてスプール20と同軸上に配置されている。このクラッチホイール104におけるリデュースケース58の底壁60側の端部には、円柱状の支持軸106が形成されており、支持軸106は、クラッチホイール104から底壁60へ突出されている。そして、支持軸106は、クラッチホイール104と同軸上に配置されると共に、リデュースケース58の軸受部62内に挿入されて回転可能に支持されている。
さらに、クラッチホイール104におけるフレーム12の脚板16側の端部には、シャフト状の「被結合部」としてのスプライン軸108が設けられている。スプライン軸108は、クラッチホイール104及びスプール20と同軸上に配置されて、クラッチホイール104から脚板16側へ向けて突出されると共に、リデュースカバー64の露出孔66内を挿通している。つまり、スプライン軸108の先端部が、リデュースケース58から脚板16側へ突出されて露出されている。スプライン軸108の断面形状は、アダプタ44の嵌合孔46の断面形状に対応してスプライン状に形成されており、スプライン軸108が嵌合孔46内に嵌合されて、クラッチホイール104とアダプタ44とが相対回転不能に繋がっている。
クラッチスプリング110は、クラッチケース102の内側で且つクラッチホイール104の外周部に設けられている。このクラッチスプリング110は、軸方向をスプール20の軸方向としたコイル状に形成されており、クラッチスプリング110の一端がクラッチケース102に係止されている。また、クラッチスプリング110の内径寸法はクラッチホイール104の外径寸法に略等しく設定されており、クラッチスプリング110はクラッチホイール104の外周部に摺接している。さらに、クラッチスプリング110では、その他端側が一端側に対して巻取方向へ変位することで、クラッチスプリング110が巻き締まるように設定されている。
次に第1の実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(テンションリデューサ70の動作について)
上記のように構成されたウェビング巻取装置10では、乗員がウェビング24をその先端側へ引張ってウェビング24をスプール20から引出すと、スプール20及びアダプタ44が引出方向へ回転して、巻取スプリング52の渦巻き方向内側端部が、巻取スプリング52の渦巻き方向外側端部に対して引出方向へ回転される。これにより、巻取スプリング52が巻き締まり、アダプタ44を介してスプール20を巻取方向へ付勢する付勢力が漸次増加する。
また、このようにアダプタ44が引出方向へ回転することで、クラッチホイール104が引出方向へ回転する。クラッチホイール104の外周部にはクラッチスプリング110が摺接しているので、クラッチホイール104の外周部とクラッチスプリング110との間の摩擦によって、クラッチスプリング110がクラッチホイール104と共に引出方向へ回転する。そして、クラッチスプリング110の一端がクラッチケース102に係止されているため、クラッチスプリング110と共にクラッチケース102が引出方向へ回転する。
クラッチケース102が引出方向へ回転すると、クラッチケース102に係止されたリデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側端部が引出方向へ回転する。また、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向外側端部は、ラチェットギヤ72のリブ96に係止されている。このため、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側端部が引出方向へ回転すると、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向外側端部が引出方向へ回転すると共に、ラチェットギヤ72が引出方向へ回転する。すなわち、この状態では、スプール20の引出方向への回転力がラチェットギヤ72まで伝わったとしても、ラチェットギヤ72は引出方向へ回転するだけであり、リデュースバランススプリング94に特に変化が生じない。
次いで、ウェビング24が乗員の身体に掛け回されて、ウェビング24に設けられたタングがバックル装置に装着されると、バックルスイッチからの電気信号に基づいてECUがソレノイド80を通電状態にする。ソレノイド80が通電されると、プランジャ82がソレノイド80内に引き込まれて、パウル84がリターンスプリングの付勢力に抗して係合方向へ回動する。これにより、パウル84の回転規制片90がラチェット部78のラチェット歯に係合して、ラチェットギヤ72の巻取方向への回転が規制される。
この状態で、ウェビング24に付与された引張力が解消されると(乗員がウェビング24の引張りをやめると)、巻取スプリング52の付勢力によってスプール20が巻取方向へ回転されて、ウェビング24の弛みが解消される。そして、アダプタ44が巻取方向へ回転されることでクラッチホイール104が巻取方向へ回転すると、クラッチホイール104とクラッチスプリング110との間の摩擦によって、クラッチスプリング110の他端が巻取方向へ回転し、クラッチスプリング110が巻き締まる。
クラッチスプリング110が巻き締まると、クラッチスプリング110とクラッチホイール104との間の摩擦が増大して、クラッチスプリング110全体がクラッチホイール104と共に巻取方向へ回転する。クラッチスプリング110が巻取方向へ回転すると、クラッチケース102が巻取方向へ回転して、クラッチケース102に係止されているリデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側端部が巻取方向へ回転する。
また、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向外側端部は、ラチェットギヤ72のリブ96に係止されているため、この端部とラチェットギヤ72とが巻取方向へ回転しようとする。一方、ラチェットギヤ72の巻取方向への回転は規制されているため、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向外側端部の巻取方向への回転が規制される。これにより、リデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側端部が、渦巻き方向外側端部に対して相対的に巻取方向へ回転する。また、リデュースバランススプリング94は、渦巻き方向外側から渦巻き方向内側へ巻取方向に巻き回されている。このため、この際には、リデュースバランススプリング94が巻き締められて、渦巻き方向内側端部を引出方向に回転させようとする付勢力が増大する。
このようにして生じた(増大した)リデュースバランススプリング94の付勢力はリデュースバランススプリング94の渦巻き方向内側端部が係止されたクラッチケース102を巻取方向に回転させようとする力に抗することになる。
したがって、巻取スプリング52の付勢力がリデュースバランススプリング94の付勢力によって低減されることで、スプール20を巻取方向に回転させようとする力が減少し、乗員の身体に装着されているウェビング24をその基端側へ引張る力が減少する。これにより、ウェビング24が乗員に付与する締め付け(静的締付力)が軽減される。
また、ウェビング24を装着した乗員の身体が移動すると、ウェビング24が引き出される。ウェビング24が引き出されることでスプール20が引出方向に回転すると巻取スプリング52が巻き締められ、スプール20を巻取方向に付勢する力、ひいては、ウェビング24を引張って乗員の身体を締め付ける力が増加する。しかしながら、本ウェビング巻取装置10では、リデュースバランススプリング94の付勢力によって巻取スプリング52の付勢力が低減されるので、乗員の身体が移動してウェビング24を引張った際のウェビング24の締付力(動的締付力)の増加を抑制できる。
(テンションリデューサユニット56の組付けについて)
テンションリデューサ70は、リデュースケース58とリデュースカバー64とによって覆われており、これらの部材がテンションリデューサユニット56としてユニット化されている。また、テンションリデューサ70の一部を構成するクラッチ100のクラッチホイール104には、スプライン軸108が設けられており、スプライン軸108の先端がリデュースカバー64から突出して露出されている。さらに、リデュースカバー64には、一対の保持ピン68が設けられており、保持ピン68がリデュースカバー64から外側へ突出されている。
このテンションリデューサユニット56をウェビング巻取装置10に組付ける際には、フレーム12の脚板16に固定されたスプリングケース36の外側にテンションリデューサユニット56を配置する。そして、リデュースカバー64の一対の保持ピン68をスプリングケース36の保持孔38Bに合わせつつ、テンションリデューサユニット56を脚板16側へ移動させる。
ここで、スプリングケース36内には、連結軸部22によってスプール20に連結されたアダプタ44が収容されており、このアダプタ44の嵌合孔46が、スプリングケース36の露出孔38Aによって露出されている。このため、一対の保持ピン68及び保持孔38Bによって嵌合孔46に対して同軸上に配置されたスプライン軸108が、露出孔38Aによって露出された嵌合孔46と嵌合することで、アダプタ44によってテンションリデューサ70とスプール20とが連結される。これにより、テンションリデューサ70を、巻取スプリング52とは別にウェビング巻取装置10に組付けできるため、例えば、ウェビング巻取装置10におけるテンションリデューサ70の有無によるバリエーションに対応できる。つまり、ウェビング巻取装置10のバリエーションにおいてテンションリデューサ70が省略された場合には、スプリングケース36をウェビング巻取装置10の外周部として構成して対応できる。したがって、ウェビング巻取装置10のバリエーションに対応してテンションリデューサ70を組付けできる。
また、テンションリデューサユニット56をウェビング巻取装置10に後付けできるため、ウェビング巻取装置10における組付性を向上できる。
さらに、テンションリデューサ70の有無におけるバリエーションにおいて、テンションリデューサ70を省略したウェビング巻取装置10を共用化でき、ひいては、当該ウェビング巻取装置10の生産量を向上できる。
また、テンションリデューサ70は、リデュースケース58及びリデュースカバー64に覆われており、リデュースカバー64からクラッチホイール104のスプライン軸108の先端部が突出されている。これにより、スプライン軸108がリデュースカバー64から突出された状態でテンションリデューサ70をユニット化できる。
さらに、リデュースカバー64には一対の保持ピン68が設けられており、スプリングケース36には、保持ピン68に対応した位置に一対の保持孔38Bが設けられている。これにより、テンションリデューサユニット56を組付ける際に保持ピン68を保持孔38Bに挿入させることで、テンションリデューサ70のスプライン軸108がアダプタ44の嵌合孔46に同軸上に配置されるため、テンションリデューサユニット56の組付けを一層向上できる。
また、アダプタ44のボス48は、スプリングケース36の露出孔38A内に配置されている。これにより、アダプタ44の嵌合孔46が露出孔38A内に配置されるため、アダプタ44のスプリングケース36からの突出を抑制しつつ、嵌合孔46をスプリングケース36から露出させることができる。これにより、テンションリデューサ70を省略したウェビング巻取装置10において、スプリングケース36がウェビング巻取装置10の外周部を構成する場合には、アダプタ44のボス48をスプリングケース36から突出させずに対応できる。
(第2の実施の形態)
図3には、第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置200の要部の構成が一部破断した正面断面図にて示されている。第2の実施の形態におけるウェビング巻取装置200では、第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置10と略同様の構成をしているが以下の点において異なる。
この図に示すように、第2の実施の形態におけるウェビング巻取装置200では、センサユニット202がフレーム12の脚板16の外側に設けられており、テンションリデューサユニット56は、このセンサユニット202の外側に設けられている。また、巻取スプリングユニット34は、フレーム12の脚板16に対向する脚板の外側に設けられている(図3では、巻取スプリングユニット34が図示省略されている)。つまり、第2の実施の形態では、テンションリデューサユニット56と巻取スプリングユニット34とがスプール20を跨いで配置されている。
このセンサユニット202は、「収容部材」としてのセンサカバー204と、「連結部材」としてのアダプタ210と、ロック機構220と、を含んで構成されている。
センサカバー204は、脚板16側へ向けて開口された略箱形状に形成されている。このセンサカバー204の底壁206には、円形状の「露出部」としての露出孔206Aが貫通形成されており、露出孔206Aはスプール20と同軸上に配置されている。
アダプタ210は、略円筒形状に形成されると共に、軸方向をスプール20の軸方向としてセンサカバー204内に配置されている。アダプタ210には、軸心部におけるスプール20側の部分において、断面円形状の嵌入孔212が形成されており、嵌入孔212内には、円柱状に形成された連結軸部22の先端部が嵌入されている。これにより、アダプタ210がスプール20と一体に回転されるように構成されている。
また、アダプタ210には、軸心部におけるセンサカバー204の底壁206側の部分において、「嵌合部」としての嵌合孔214が形成されており、嵌合孔214の断面形状はスプライン状にされて、嵌入孔212と連通されている。この嵌合孔214は、テンションリデューサユニット56のスプライン軸108と嵌合可能に構成されている。
さらに、アダプタ210には、センサカバー204の底壁206側の端部において、略円筒形状のボス216が設けられている。そして、このボス216は露出孔206A内に挿入されて、嵌合孔214が露出孔206Aから露出されている。また、ボス216の端面は、センサカバー204の外側面と面一若しくは当該外側面よりも脚板16側に配置されている。
ロック機構220は、周知のロック機構として構成されている。このロック機構220について簡単に説明すると、ロック機構220は、アダプタ210とスプール20との間に配置されたVギヤ222と、スプール20の脚板16側の端部に設けられたロックプレート224と、を含んで構成されている。Vギヤ222は、スプール20の連結軸部22に回転可能に支持されており、車両が急減速した際及びスプール20が急激に引出方向へ回転された際には、Vギヤ222の引出方向への回転が規制されるように構成されている。そして、この際には、スプール20がVギヤ222に対して引出方向へ相対回転されて、ロックプレート224がフレーム12の脚板16に形成されたラチェット歯226に噛合されることで、スプール20の引出方向への回転が規制されるように構成されている。
また、フレーム12の脚板16とテンションリデューサユニット56との間には板状のシート228が設けられており、テンションリデューサユニット56がシート228を介して脚板16に固定されている。
ここで、テンションリデューサユニット56を脚板16に組付ける際には、テンションリデューサユニット56をセンサユニット202の外側に配置してセンサユニット202側へ移動させる。そして、アダプタ210の嵌合孔214内に、テンションリデューサユニット56のスプライン軸108を嵌合させることで、アダプタ244によってテンションリデューサ70とスプール20とが連結される。そして、ねじ等の締結固定部材によってテンションリデューサユニット56がフレーム12の脚板16に固定される。
これにより、第2の実施の形態においても、テンションリデューサ70を、巻取スプリング52とは別にウェビング巻取装置200に組付けできる。このため、テンションリデューサ70と巻取スプリング52とがスプール20を跨いで配置される場合でも、テンションリデューサ70をウェビング巻取装置200に組付けできる。つまり、ウェビング巻取装置200におけるテンションリデューサ70の配置によるバリエーションにも対応できる。したがって、ウェビング巻取装置200のバリエーションに対応してテンションリデューサ70を組付けできる。
さらに、第1の実施の形態におけるアダプタ44の嵌合孔46及び第2の実施の形態におけるアダプタ210の嵌合孔214は、いずれもテンションリデューサユニット56のスプライン軸108と嵌合可能に構成されている。このため、ウェビング巻取装置10、200におけるテンションリデューサ70のバリエーションに対応してアダプタ44、210を設定することで、このバリエーションに対してテンションリデューサユニット56を共用して適用できる。
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、クラッチホイール104にスプライン軸108が設けられると共に、アダプタ44、210に嵌合孔46、214が設けられており、スプライン軸108が嵌合孔46、214内に嵌合されている。つまり、クラッチホイール104に軸部が設けられており、アダプタ44、210に、この軸部が嵌合可能な嵌合孔が設けられている。これに替えて、アダプタ44、210に軸部を設けて、クラッチホイール104に、この軸部が嵌合可能な嵌合孔を設けてもよい。
この場合について、例えば第1の実施の形態を用いて説明する。図4に示すように、この場合には、アダプタ44の嵌合孔46は、アダプタ44のスプール20側の端部からアダプタ44の軸方向中間部まで延伸される。また、アダプタ44には、スプリングケース36の底壁38側の端部において、断面円形状の凹部126が形成されて、この凹部126の中央部には、断面スプライン状の「嵌合部」としてのスプライン軸122が設けられている。一方、クラッチホイール104には、スプライン軸108が略円筒形状に形成される共に、その内部に「被嵌合部」としての断面スプライン状の嵌合凹部120が設けられる。さらに、スプリングケース36の底壁38には、露出孔38Aの周囲において、円筒形状の支持部124を一体に設ける。そして、凹部126内にスプライン軸108及び支持部124を配置して、嵌合凹部120内にスプライン軸122が嵌合されるように構成してもよい。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、嵌合孔46、214の断面形状がスプライン状に形成されると共に、スプライン軸108の断面形状が嵌合孔46、214に対応してスプライン状に形成されているが、嵌合孔46、214及びスプライン軸108の断面形状は、これに限らない。例えば、嵌合孔46、214及びスプライン軸108の断面形状を多角形に形成してもよい。つまり、アダプタ44、210がクラッチホイール104に相対回転不能に嵌合される形状に形成してもよい。