JP2013158381A - 救命浮体寝床マット - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、災害発生時の瞬時調達性に優れ、水難時の浮体救命に役立つ救命浮体寝床マットを提供する事にある。
【解決手段】布帛製筒状袋体に気泡緩衝材シート積層体が挿入された寝床マットであり、該布帛製筒状袋体は並列的に連続して形成されており、前記気泡緩衝材シート積層体は、芯板の周りに気泡緩衝材シートを4〜30回巻き回して積層された状態、またはカットした気泡緩衝材シートを芯板の片側に4〜30枚、該芯板の他の片側に4〜30枚積層された状態のいずれかの積層状態で、該布帛製筒状袋体の中に挿入されていることを特徴とする救命浮体寝床マット。
【選択図】図3

Description

本発明は、災害発生時等において、被災者、避難者等が使用する救命救助用あるいは緊急時の簡易寝床マットに関する。
従来から、突発的大災害が発生した時、若しくはその発生が予想される時には、当該地区の防災指導者は、被災者若しくは避難対象者を、危険が予測される住居や勤務場所から安全とされる市町村営体育館や公民館などの公的場所若しくは企業が保有する堅牢施設などに避難集合誘導することがある。この様な場合、地区自治体等から支給される夜具は概ね毛布とフロアに敷かれる薄いシートや茣蓙(ござ)、ダンボール紙等の類が一般的と考えられる。しかし冬期災害の場合にあっては、体育館等では暖房設備が調っていないので外気の影響で冷え込むことになる。また、体育館は木製フロアが殆どであるために、毛布と薄いシートや茣蓙の類だけでは床からの低温を遮れず、更に被災者、避難者のなかで小児などの走り回る足音や、高齢者のトイレ通いの足音、更にまたフロアの硬さが身体に跳ね返って、足、腰、背中が痛み、十分な睡眠をとることは出来ないなどの状況が報道等で知らされている。
これらの状況を少しでも和らげるためにダンボール等が供与される。ところがダンボールの類は木床の硬さを和らげるだけの緩衝力は無く、空気層を保有しているものの床から伝わる冷たさを充分に遮断することができない。またダンボールを保管時や使用時に水に濡らすと、乾きが悪く、たとえ乾いたとしても変形して最初の原形を維持しない。さらにダンボール自身が古紙使用であるため濡れると黄色っぽい汚れが白物衣服に染み付くといった問題がある。一時凌ぎと言えこのような救護用資材としてのダンボールの使用は、高齢被災者には気の毒であり、寒さや睡眠不足やストレスによって死に至らしめるといったことも、現実に東日本震災現場ではあった様である。
一方、寝床用具としてマットレスと呼ばれるフォームを内蔵した肉厚のクッション材があるが、マットレスは一般家庭にこそ使用されているものの、緊急避難場所に置かれることは稀であり、用意できたとしても数多くの設置はできない。この理由として、マットレスは容積が大きく、コンパクト性や収納性に問題があり、収納場所が問題となる。加えて価格的に高価で、準備する自治体も経費負担が大きくなるし、一方廃棄焼却時には好ましからざるNOXガスが発生して環境悪化問題発生のリスクが伴う。
また、通気性も決して優れていないので冬場は良いが、夏場の災害時の使用には冷房設備の無い体育館等での使用では蒸れることになる。更に一度使用したものは汗臭や加齢臭が付着しているので格納、再利用するには消毒などが大変面倒である等々の問題がある。加えて、災害はいつ発生するか予期できないため、広い収納場所を占有することは難しく、且つ、フォーム素材は経時変化や残留臭の発生があり、そのうえ、高価なクッションマットを用意周到に準備しておくことは自治体にとって大変な負担になる。またこれらフォームを水に浮かべると、初期には浮体としての役目を果たすも比較的短時間のうちにフォーム内部に水の浸透がはじまり、浮体としての効果は期待できない。
また、先般の東日本を襲った大地震で発生した巨大津波によって逃げ遅れた人々が次々と津波に飲み込まれていく様子を見て、手元に浮体でもあれば投げ込んで掴ませる事も出来たであろうと考える。この場において、何も出来なかった惨めさをつくづく感じさせられる。更には、台風やゲリラ降雨などの水害で突如濁流に流され行方不明になったケースも多々あり、このような場合、浮体性能を有するものが予め準備されておれば、投げ込むことで一命が取り留められる可能性は大きい。海、川などの船上ならともかく、陸上においてはそのような用意は万全ではなく、準備されていたとしても、ジャケット類やタイヤチューブ、ポリ塩化ビニル製の浮き輪等が考えられる程度である。しかしジャケット類は最初から身に装着して使用するものであり、流されている被災者に投げ込み着用させることは難しい。またポリ塩化ビニル製やゴムタイヤ製浮き輪も膨らましたままでの保管は意外と短時間のうちに空気が漏れてしまう欠点があり、急きょ膨らましているうちに救命機会を失してしまうことさえ考えられる。更にこれら救命具は、全戸は無論、自治体経営公民館等に用意されているところは、数少ない。
特開平11−187953号公報 特開平7−255570号公報 登録実用新案第3092450号公報 特開2003−210285号公報
前記背景技術に鑑みて、前記する特許文献1〜4に解決の糸口となりそうな技術が示されている。特許文献1には、快適さ及び快適さレベルの調節性が改善されたエアベッドが記載されている。しかしながら、特許文献1のエアベッドは快適さを得るためにエアマットが使用されており、エアを送り込むためにポンプが必携であって、ポンプを動かすには電気が必要とされる。災害時の使用を考えた場合、送電が必要になってくる。従って災害時等の使用は問題がある。また空気マットに使用される素材が可塑剤の含有量が高いポリ塩化ビニルを使用しているものが多く、これらを使用後に廃棄する場合、焼却の際に塩素ガスが発生するという問題だけでなく、可塑剤によっては環境ホルモンを撒き散らすといった問題も予想される。またポリ塩化ビニルを使用したエアマットは、詰めた空気が意外と短時間に抜けてしまう欠点があり、数日間の使用を考えた場合、空気が漏れるためにその都度空気を注入する必要がでてくる。また、浮体としての性能は十分にあるが、値段が高くなり、しかも長期に保管する際、保管時に可塑剤が放散し、マットが硬化するといった問題が考えられる。
特許文献2には、密閉された気密チャンバを形成するために周囲に沿って繋ぎ合わされた2つの主壁と、加圧された気体、特に圧縮空気を前記チャンバに導入するための少なくとも1つのバルブとによって構成される種類のエアマットレスが記載されている。しかしながら、特許文献2のエアマットレスは、表裏組織の間を一定長の連結糸で繋いだ構造の織物に表裏面に空気が漏れないないようにコーティングあるいはその他の気密化で空気が漏れ出さないようにした構造になっており、ポンプが必須要件であり、特許文献1のエアベッドと同様の問題を抱えている。また、浮体としての性能はあるが災害発生時の瞬時調達性には問題がある。
特許文献3には、膨らませると傾斜した横臥面を形成するとともに収納が便利なエアマットが開示されている。このエアマットは、日常の生活用品としての利用はあるが、前記特許文献1および2と同様に膨らませるためにポンプが必要となる。このエアマットは浮体としての性能は有しているが、災害発生時の瞬時調達性には問題がある。
特許文献4には、ウレタンフォームのマットに匹敵する緩衝能力と断熱作用をもつ気泡シートを利用して、充分な厚さをもち、防水性や防湿性に関してはより有利であり、かつウレタンフォーム製品よりは安価であって、焼却処理が容易なプラスチック製の簡易マットが開示されている。しかしここに記載されている簡易マットは、クッション性と熱遮断性は良いが、布帛を使用していないためにプラスチック気泡シート同士が擦れあって騒音が発生して十分な睡眠が得られないこと、はじめからコルゲート構造となっているために嵩張りが大きく保管場所が大変であること、汗や体臭が付いた場合、洗浄がし難いこと、消臭・抗菌加工が出来ないこと、災害発生時の瞬時調達性のないこと、といった多くの問題がある。
本発明では、緊急発生時に対応使用される簡易マット及び浮体救命具の従来技術では対応できていない要求性能、すなわち、衝撃吸収(緩衝)性能、床伝播遮音及び遮熱性能、保温性能、蒸れ防止性能、再生使用性能、使用耐久性能、易持ち運び性能、易組立性能、意匠性能、易廃棄性能、易洗濯性能、浮体性能、易機能特性付与性能、水濡れ時の安定性、保管収納性、緊急時易調達性能、コストパフォーマンス性能等の多岐にわたる要求性能を検討し、これらの要求性能を満たす救命浮体寝床マットを提供する事を課題とする。
上記課題を解決するための手段、即ち本発明の構成は、布帛製筒状袋体に気泡緩衝材シート積層体が挿入された寝床マットであり、該布帛製筒状袋体は並列的に連続して形成されており、前記気泡緩衝材シート積層体は、芯板の周りに気泡緩衝材シートを4〜30回巻き回して積層された状態、またはカットした気泡緩衝材シートを芯板の片側に4〜30枚、該芯板の他の片側に4〜30枚積層された状態のいずれかの積層状態で、該布帛製筒状袋体の中に挿入されていることを特徴とする救命浮体寝床マットである。
布帛製筒状袋体の並列連続列数が2〜20列であることが好ましい。
気泡緩衝材シートは、2枚のポリエチレンシートからなり、一方のシートが多数の円柱状の突起を有し、該突起の中に空気を閉じ込めた状態で他方のシートと接合成型されており、前記円柱状突起の直径が7〜15mm、高さが2.5〜5.0mm、単位面積当りの個数が4000〜25000個/mであることが好ましい。
布帛製筒状袋体の単位面積あたりの質量が50〜1000g/mであることが好ましい。
布帛製筒状袋体がポリエステル繊維素材からなることが好ましい。
布帛が編地からなることが好ましい。
本発明は、上記の構成により、災害発生時の瞬時調達性に優れ、水難時の浮体救命に役立ち、且つ、衝撃吸収(緩衝)性能、床伝播遮音及び遮熱性能、保温性能、蒸れ防止性能、再生使用性能、使用耐久性能、持ち運び容易性能、組立容易性能、意匠性能、廃棄容易性能、洗濯容易性能、水濡れ時に損傷がない性能、保管収納性、緊急時容易調達性、コストパフォーマンス性能等を併せ持った救命浮体寝床マットを提供する事が出来る。
図1は、本発明に係る、気泡緩衝材シートを芯板の周りに巻き回し積層した気泡緩衝材シート積層体を示す図である。 図2は、本発明に係る、筒状袋体を並列的に連続させた布帛製筒状袋体を示す図である。 図3は、本発明の救命浮体寝床マットに人が横臥している状態を示す図である。 図4は、本発明に係る、救命浮体寝床マットを表裏一体化結合部でアコーディオン状に折畳んだ状態を示す図である。 図5は、比較例1の段ボール箱を利用した簡易ベッドを示す図である。
本発明の救命浮体寝床マットは、布帛製筒状袋体に気泡緩衝材シート積層体が挿入された寝床マットであり、該布帛製筒状袋体は並列的に連続して形成されており、前記気泡緩衝材シート積層体は、芯板の周りに気泡緩衝材シートを4〜30回巻き回して積層された状態、またはカットした気泡緩衝材シートを芯板の片側に4〜30枚、該芯板の他の片側に4〜30枚積層された状態のいずれかの積層状態で、該布帛製筒状袋体の中に挿入されている。
本発明の救命浮体寝床マットを構成する布帛製筒状袋体は、1マットの大きさとしては、幅0.7〜1.5mで長さが1.5〜2.4m程度の大きさになる。筒状袋体は例えば、長さ方向に、1マット中に並列的に2〜20列連続して設けてある。袋体の筒幅は、1マットの大きさに対応して、任意に決定すればよいが、例えば、気泡緩衝材挿入前の筒幅としては、10〜40cmとするのが良い。筒状構造体の素材としては、寝床具となるので使用時の不快感は無くしたい。そのためフィルム製では、小孔を多数開けて通気性を持たしたとしても、フィルム特有のベタツキ感や寝具としての癒し感に乏しいために好ましくない。従って筒状袋体は布帛で形成されるのが良い。布帛の単位面積あたり質量は50〜1000g/mの範囲とするのが良い。50g/m未満では軽量であるが、破損しやすい欠点が顕在化してくる。また1000g/mを超えると重くなり、洗濯する時は重たいし乾くのに時間がかかるので好ましくない。また浮体としての浮力のマイナスにもなる。好ましくは150〜500g/mとするのが、上述の性能を保持及び付与させやすいので好ましい。
前記布帛製筒状袋体の繊維素材としては天然繊維、化学繊維、合成繊維、天然若しくは化学繊維と合成繊維の混合品の他、生分解性繊維などいずれでも良いが好ましくはセルロース系繊維、ポリエステル繊維、若しくはこれらの混合品が吸湿性や肌触りなどが好ましく、洗濯、乾燥及び加工の容易さからポリエステル素材がより好ましい。また布帛構造は、編物、織物、不織布あるいはこれらの複合で出来ていても良いが、編物構造が特に好ましい。その理由としては、筒状袋体の筒の中に気泡緩衝材シートを挿入する作業の際に、編地構造は伸縮特性があるので挿入しやすく、挿入後も適度に収縮が起り、ピッタリと気泡緩衝材シート積層体を包むからである。
また、布帛製筒状袋体は着色、非着色を問わない。上述の機能性を付与させる方法としても特に制限しないが布帛製筒状袋体はポリエステル繊維である場合、さまざまな機能剤を付与することが可能である。更にこの布帛製筒状袋体とは別の通気性布帛シーツを用意し、これにも色付けや機能付けを行い、筒状袋体上に置いて使用するように構成しても良い。また布帛製筒状袋体及び通気性布帛シーツにも、自治体を示す番号や県、市町村名を標記することもできる。緊急時の際に被害の無い若しくは少ない他府県や他市町村から緊急援助として、自らが保有する本発明品を急遽貸し出すことが出来、しかもそれらがどこの自治体からどれだけ借り入れたかを簡単に区別することも可能である。
また、気泡緩衝材シートの積層体を布帛製筒状袋体中に挿入固定する方法としては、布帛に設けられる袋構造をファスナーで設置固定、マジックファスナー(登録商標)による設置固定、紐、リボンによる縛り設置固定、ボタン止めによる設置固定、縫製で袋を布帛に設置固定等がある。これらの固定方法のいずれでもよいが、布帛製筒状袋体を編地構造にする場合、製編と同時に筒状ポケットを作ることができる。後工程で袋構造を作ることによるコストダウンを考える場合にあっては、筒状ポケットの片方の底に気泡緩衝材シート積層体を挿入する際に、筒状袋の底(挿入口とは反対側)まで到達した事が容易にわかるようなストッパー構造としても良い。底部全体を封印せずポケットの両端の一部のみを封印し、中央部分はそのまま穴の開いた状態としても良い。底全体を封じ込めずに一部のみにストッパーを設ける意味は、ストッパーの無い穴より片手を挿入し、挿入されてくる気泡緩衝材シート積層体の端を掴んで引き入れることで速やかなる挿入が出来、組立効率を上げるためである。このような一部にストッパー付の布帛製筒状袋体を得るためにダブル丸編み機を用いて、筒状袋体を製造することが可能である(図2参照)。尚、製法はこれらの方法に限定されるものではない。
次に、本発明にいう気泡緩衝材シートについて説明する。気泡緩衝材シートは、従来知られている梱包用に用いられるポリエチレン製フィルムを貼り合わせてシートに多数の気体を封じ込めた突起付シートを用いる。気泡緩衝材シートは、2枚のポリエチレンシートからなり、一方のシートが多数の円柱状の突起を有し、該突起の中に空気を閉じ込めた状態で他方のシートと接合成型されており、前記円柱状突起の直径が7〜15mm、高さが2.5〜5.0mm、単位面積当りの個数が4000〜25000個/mに作製されたシートが好ましい。
円柱状突起の単位面積当りの個数が4000個/m未満では、突起部の密度が粗くなって積層時に厚みが出にくく、また衝撃吸収(緩衝)性能、床伝播遮音及び遮熱性能、保温性能等を発揮しにくくなる。これを補うために積層枚数を多くするとコストアップ要因となる。また4000個未満では浮体性能も劣る。また円柱状突起の個数が25000個/mを超えると、突起1個のサイズを小さく且つ突起の高さを低くせざるを得ない。こうなると衝撃吸収(緩衝)性能や浮体としての性能が低下してくる。好ましくは7000〜22000個/mの範囲で用いるのが目的効果を得る面でより好ましい。
次に、本発明において重要な構成要件の一つである前記気泡緩衝材シートの積層形態について説明する。積層の形態は2通りあり、どちらの形態でも良い。1つ目は、芯板を中心として、芯板の周りに気泡緩衝材シートを連続して4〜30回巻き回した形態である。2つ目は、気泡緩衝材シートを複数枚重ねて芯板の両側に4〜30枚積層する形態である。この場合、気泡緩衝材シートをカットしたものを積層する。芯板は、コスト面で有利な段ボール紙でも良いが、濡れることを想定すると芯材としての効果を失してしまう欠点があり、ポリプロピレン材料段ボール構造体を用いるのが好ましい。この芯板の両側に気泡緩衝材シートをそれぞれ4〜30枚積層することが重要である。4回巻き回し(芯板の片側に4枚積層)未満ではその上に就寝横臥した際に床の硬さが痛みとして感じられ、浮体能力としても小児はともかくも大人には不適合であった。また30回巻き回しを超えてくると、浮体性能は大きくなるが、折り畳んだ際の嵩高性が大きくなり収納スペース占有率が大きくなるので好ましくない。従って8〜20回巻き回しの範囲とするのがより好ましい。また積層に際しての注意点としては、巻かれて積層された気泡緩衝材シートの最表面側には突起体面が位置するように巻かれることが好ましい。これはこの突起体シートが厚み方向には通気性は全くないが、水平方向には突起体間にある間隙を利用して身体から放出される水分(水蒸気)を外部に逃がす為の通気性を得るためである。
次に、本発明の好ましい態様と付帯効果について説明する。本発明に使用する気泡緩衝材シートの1例として、円柱突起体の直径が1cm、突起高さが0.35cm、突起体個数が8000個/mを使用して、積層数が芯板の片側9枚(両側で18枚)で7列連結したマットは、安全を見込んで約12kgの物体を浮かすことが出来る。実際は25kgで沈み始める。屋内保存なら長期備蓄に対しても気体抜けや、脆化することが少ない。理由は紫外線に暴露されないからである。また本発明品を迅速に作るには最も製造時間を必要とする筒状袋体さえ備蓄しておけば、気泡緩衝材シートは市販されているので、簡単に入手できる。1000〜1500セット/日・2人で作製することが出来るが、災害が起こってから製造されるよりも予め作っておいて各自治体が災害時に備えてある程度備蓄保管しておくことが望まれる。この気泡緩衝材シートは緩衝材料として多用されているために、入手は簡単であり、停電状態であっても全く電力を必要とせずに組立も出来るし、予め組み立てた後に折り畳むと、梱包状態の形状がヨコ幅0.91m×タテ幅0.28m×高さ0.25m/セットで直方体になるため体積は0.0637mと大きな場所を占有せずに保管も出来るし、持ち運びも3kg未満/セットと軽量であることが本発明の目的効果に寄与する理由である(図4参照)。
本発明の救命浮体寝床マットは、そのままで横臥就寝できるが、少し長期の滞在となるケースを想定して梅雨〜夏季の高温や多湿時期の蒸れを抑制するために気泡緩衝材シート積層体は突起面を表面になるよう積層している。これは厚さ方向には通気性が無いが、突起体間にある配列間隙を利用して蒸れを逃すことにある。更に簡単に洗濯ができる機能付きシーツも組合わせることが出来る。一例であるが、シーツ用として繊度167dtexのポリエステル加工糸を使用して密度44コース/インチ、30ウェール/インチ、筒状時目付け672g/幅・mの袋構造を持った編み地を作製した。次にこの生機を開反し、プレセット後に高温高圧の液流染色機で淡色に染色し、乾燥、テンターで、密度53コース/インチ、23ウェール/インチ、目付け423g/mで抗菌加工反としてシーツにして非常に効果があることを確認している。
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではなく、前後記の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
気泡緩衝材シートとしては、川上産業株式会社のポリエチレン製:プチプチ(登録商標)品番#37( 幅1.2m 円筒状突起の直径1cm 突起の高さ0.35cm 突起体個数約8000個/m)を幅1.2m、長さ2.7mにカットした。次に幅24cm、長さ90cm、厚さ0.3cmのポリプロピレン製ダンボール構造の長方形の板(以下、PP板ということもある)を芯材とし、前記2.7mにカットした気泡緩衝材シートを巻き終わり面の突起体が表面になるように巻き始め、巻き終わった時点で芯板のPP板を基準に片側が10枚積層に、他の面が9層の積層構造体とし、構造体の総厚さが約3.5cmの気泡緩衝材シート積層体が得られた。90cmのPP板からはみ出た部分のプチプチ:品番#37はカットして90cmになるようにした。巻き付けたシートが緩まないように透明テープにて数箇所を固定した(図1参照)。
次にこの気泡緩衝材シート積層体を、布帛製筒状袋体に挿入した。布帛製筒状袋体は、以下のようにして作製した。口径30インチのダブル丸編み機を用いた。繊度167dtexのポリエステル製ヒーター加工糸を用いて、編地の幅方向に筒状構造を有する(図2参照)袋体構造で、生機密度43コース/インチ、30ウェール/インチの筒状構造の編地を作製した。次にこの編地生機を開反し、プレセット後に高温高圧の液流染色機で淡色に染色し、乾燥し、テンターで、密度47コース/インチ、27ウェール/インチ、の幅だしを行った。1枚あたり重さ423gであった。筒状袋体の幅が27cm、長さが90cmであった。筒状袋体の片端が開放されており、他の一端が一部ストッパーとして塞がった状態になった筒状袋体とした。該筒状袋体が幅方向に7列並んだ形状で、1枚の総全幅が189cmでその両端にピンテンターでの把持分が両耳に約5cm程度付いた総幅が約200cmの加工反を得た(図2参照)。
次にこの袋構造丸編み加工反の7列並んだ筒状袋体に、前記した、総厚が約3.5cmの気泡緩衝材シート積層体を1つずつ筒状袋体の編み地の伸縮性を利用して挿入した。このようにして得られたマットは、幅が90cm、長さが約180cm、厚さが約3.5cm/枚(図3参照)であり、7列並んだ気泡緩衝材シート積層体が挿入された筒状構造体を利用して端からアコーディオンを畳むように畳むと幅27cm、長さ90cm、厚みが約25cm、総重量が1.98kgいう軽量なほぼ直方体に纏まった(図4参照)。
また図4の状態に畳んだ本発明品を市販のポリオレフィン製荷造り紐で3箇所(中央部と左右の端より15cm内側の部分に各1箇所)を畳んだマットが開かぬように縛った状態とし、プールに浮かべて錘を変えながら浮く能力を調べた結果、25kgになったときに沈み始めたが、安全を見て12.5kgとした場合でも、成人での頭+胸付近か、頭+両腕くらいは十分に浮かせる能力はあることが判った。これは選択した材料のプチプチ:品番#37の比重が0.96と軽量である上に、気体を約8000個/mの円柱状突起体内に閉じ込めているためである。これは0.2cc/突起体1個の内気体容量としても、8000個/m×2.7m×0.9m/枚×7枚で27000cc=27リットルに相当する。また芯板の段ボール構造板もPPであるために比重が0.91と水に浮く材料である。布帛のポリエステルの比重が1.38であり、全体に占める布帛の質量割合は極めて少ないので浮体に重さを与える影響はほとんど無い。
(実施例2)
この気泡緩衝材シート積層構造体を挿入する布帛製筒状袋体として、実施例1と同様の丸編み機に繊度167dtexポリエステル製ヒーター加工糸の2本を揃えた状態とし、後は実施例1と同様に処理して布帛製筒状袋体を得た。この袋体の重さは860g/枚で、実施例1同様にPP芯板と気体封じ込めシート状構造体の積層体を挿入した総重量は2.62kg/枚であり、浮体性能は実施例1と大きな差は無かった。
(比較例1)
段ボール箱を使用して床からの冷熱遮断、軽量、簡単組立、高齢者が寝起きする際の足腰負担を軽減するなどのメリットを謳った災害発生時に使用する段ボール箱を利用した簡易ベッドがある(産経新聞2011年10月1日夕刊1面掲載参照)。大き目の段ボール箱中に小さめの段ボール製箱を嵌め込み、その小さめの段ボール箱中に段ボール製の仕切り板を骨組みとして置いて耐圧性能を向上させる構造となっている(図5参照)。これに毛布1枚を敷いて簡易ベッドとしたものである。
(比較例2)
特許文献2に記載のエアマットレスと本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
(比較例3)
特許文献4に記載の簡易マットと本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
(比較例4)
特許文献3に記載のエアマットと本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
(比較例5)
ポリウレタンフォームの厚み5cm〜10cm×幅90cm×長さ2.1m/枚で3つ折り畳み仕様の寝具用マットと本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
(比較例6)
鋼製スプリングを多用した厚み20cm×幅90cm×長さ2.1m/枚の折りたためないベッド用マットと本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
(比較例7)
通常用いられる毛布を2枚重ねた状態と本発明の救命浮体寝床マットと性能の対比を行った。
前記実施例および比較例についての性能評価結果を表1に示す。
尚、評価の項目方法は多岐にわたる角度からの要求性能に対して、以下に示す5段階にて評価を行った。
5:性能が優れている。
4:性能が良好。
3:性能がやや劣る。
2:性能が劣る。
1:性能が出ない。
(評価の考察)
表1から次のことが確認された。実施例1、2のマットは、災害発生時の瞬時調達性および浮体性能に優れ、すべての評価項目について4点以上の評価が得られ、総合評価点が84点、83点と高い評価が得られた。比較例1は、浮体性能が出なく、水濡れ時の損傷といった欠点がある。比較例2〜4は浮体性能を有しているが、災害発生時の瞬時調達性に問題があり、洗濯容易性、コストパフォーマンスに欠ける。比較例5、6は、災害発生時の瞬時調達性および浮体性能が劣り、廃棄容易性能、洗濯容易性能、保管収納性がない。比較例7は災害発生時の瞬時調達性は有しているが、浮体性能、衝撃吸収(緩衝)性能、遮熱性能に欠ける。
1:ポリプロピレン製段ボール構造芯板
2:気泡緩衝材シート表面
3:気泡緩衝材シート積層体
4:布帛製筒状袋体
5:耳
6:加工時のテンターピンマーク
7:布帛製筒状袋体
8:挿入口
9:ストッパー
10:布帛製筒状袋の底穴
11:編み組織・表裏一体結合部
12:抗菌・防臭加工シーツ
13:本発明救命浮体寝床マットを袋体の表裏一体結合部で折畳んだ状態
14:段ボール最外箱
15:段ボール中箱
16:段ボール中箱の仕切り板
17:段ボール製平板
18:毛布

Claims (6)

  1. 布帛製筒状袋体に気泡緩衝材シート積層体が挿入された寝床マットであり、該布帛製筒状袋体は並列的に連続して形成されており、前記気泡緩衝材シート積層体は、芯板の周りに気泡緩衝材シートを4〜30回巻き回して積層された状態、またはカットした気泡緩衝材シートを芯板の片側に4〜30枚、該芯板の他の片側に4〜30枚積層された状態のいずれかの積層状態で、該布帛製筒状袋体の中に挿入されていることを特徴とする救命浮体寝床マット。
  2. 布帛製筒状袋体の並列連続列数が2〜20列である請求項1に記載の救命浮体寝床マット。
  3. 気泡緩衝材シートは、2枚のポリエチレンシートからなり、一方のシートが多数の円柱状の突起を有し、該突起の中に空気を閉じ込めた状態で他方のシートと接合成型されており、前記円柱状突起の直径が7〜15mm、高さが2.5〜5.0mm、単位面積当りの個数が4000〜25000個/mである請求項1または2に記載の救命浮体寝床マット。
  4. 布帛製筒状袋体の単位面積あたりの質量が50〜1000g/mである請求項1乃至3のいずれかに記載の救命浮体寝床マット。
  5. 布帛製筒状袋体がポリエステル繊維素材からなる請求項1乃至4のいずれかに記載の救命浮体寝床マット。
  6. 布帛が編地からなる請求項1乃至5のいずれかに記載の救命浮体寝床マット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019037753A (ja) * 2017-08-28 2019-03-14 コニシセイコー株式会社 非常時用マットレス

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