JP2013146738A - 金属細線の伸線方法及びこれを用いたボンディングワイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】断線率低減の効果は維持しつつダイス総数を削減して製造コストを低減でき、更に高速化を達成することができる金属細線の伸線方法及びこれを用いたボンディングワイヤの製造方法並びに伸線機を提供することを。
【解決手段】金属細線10を複数のダイス40〜47に挿通させ、段階的に伸線加工して前記金属細線の線径を縮径する金属細線の伸線方法において、前記複数のダイスを、前記金属細線を挿通させる順に第1、第2、第3及び第4グループG1〜G4にグループ分けするとともに、前記第4グループに属するダイス45〜47のリダクション率を2.5〜6.0%に設定し、前記第2グループに属するダイス41、42の平均リダクション率を前記第4グループに属するダイスの平均リダクション率の2倍以上に設定し、前記第3グループに属するダイス43、44のリダクション率を、前記金属細線が縮径するにつれて漸減するように設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属細線の伸線方法及びこれを用いたボンディングワイヤの製造方法に関し、特に、金属細線を複数のダイスに挿通させ、段階的に伸線加工して前記金属細線の線径を縮径する金属細線の伸線方法及びこれを用いたボンディングワイヤの製造方法に関する。
従来から、半導体素子上の電極パッドをリードフレーム及び樹脂基板等と電気的に接続するために、直径15〜50μm、主として直径15〜25μmのボンディングワイヤを用いることは、広く一般的に行われている。ボンディングワイヤに用いる材料に要求される特性は、展延性に富み、電気抵抗が比較的低いことである。このため、ボンディングワイヤには、銅、銀、金等の貴金属が使用されている。
ボンディングワイヤの製造工程を簡単に説明すると、以下のようになる。まず、高純度の原料へ必要に応じて微量な他元素を添加して溶解鋳造する。次に、粗加工後の母線を伸線機にて所定の線径まで細くする。所定の線径に細くする工程では、伸線機内で複数のダイス(以下、1回の伸線工程に用いる複数のダイスを「ダイスセット」という。)と呼ばれる冶具の中にワイヤ通して引き抜くことで、ワイヤ径を細くしている。最後に加工歪を取り除くために熱処理を施し、所定のスプールに巻いて出荷する。
しかしながら、ボンディングワイヤは15〜25μmの極細線であるため、特に所定の最終線径となる伸線工程において断線し易く、生産性を悪化させる問題点がある。伸線工程における断線の発生には、伸線加工で形成される加工組織の状態、混入した異物の有無、加工中における表面欠陥の発生の有無、スプールに巻かれた母材の巻きほぐれ性、伸線用潤滑剤の特性、伸線機や使用するダイスなどの様々な要因が影響している。
断線回数を低減させるために、母線の結晶組織を柱状晶組織とする方法や(例えば、特許文献1参照)、ダイスでの引き抜き及びボビンへの巻取り張力の最適化を図る方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。また、伸線機及びダイスからの観点では、ダイスセットを適切な範囲に設定することで断線を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平9−10898号公報 特開2002−282929号公報 特開2006−7299号公報
しかしながら、特許文献3で開示された技術は、ダイスセットの先頭ダイス及び最終ダイスに焦点を当てたものであり、断線率低減には効果があるが、製造コストに直結するダイス総数に対する考慮は不十分であった。また生産性を高めるためには伸線加工を高速化することが有効であるが、この面に対しても十分は検討がなされているとは言い難かった。
そこで、本発明は、断線率低減の効果は維持しつつダイス総数を削減して製造コストを低減でき、更に高速化を達成することができる金属細線の伸線方法及びこれを用いたボンディングワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る金属細線の伸線方法は、金属細線を複数のダイスに挿通させ、段階的に伸線加工して前記金属細線の線径を縮径する金属細線の伸線方法において、
前記複数のダイスを、前記金属細線を挿通させる順に第1、第2、第3及び第4グループにグループ分けするとともに、
前記第4グループに属するダイスのリダクション率を2.5〜6.0%に設定し、
前記第2グループに属するダイスの平均リダクション率を前記第4グループに属するダイスの平均リダクション率の2倍以上に設定し、
前記第3グループに属するダイスのリダクション率を、前記金属細線が縮径するにつれて漸減するように設定したことを特徴とする。
また、前記第4グループに属するダイスの数は3枚以上であるとともに、前記複数のダイスの総枚数の30%以下であることとしてもよい。
また、前記第1グループに属するダイスのリダクション率は、前記第2グループに属するダイスの平均リダクション率の20〜95%であることとしてもよい。
ここで、前記第1乃至第3グループに属するダイスに対応する部分のキャプスタンには円筒形のキャプスタンを用い、
前記第4グループに属するダイスの少なくとも1枚に対応する部分のキャプスタンには段付きキャプスタンを用いることが好ましい。
なお、前記第1グループに属するダイスは、先頭ダイスのみからなってもよい。
本発明の他の態様に係るボンディングワイヤの製造方法は、半導体実装に用いられるボンディングワイヤの製造方法であって、
金属材料を溶解鋳造し、金属母線を生成する鋳造工程と、
該金属母線をダイスに挿通させ、伸線加工して所定の線径を有する金属細線を形成する粗伸線工程と、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属細線の伸線方法を用いて、前記金属細線を前記ボンディングワイヤの線径まで伸線加工する伸線工程と、
前記ボンディグワイヤの線径まで伸線加工された前記金属細線を熱処理する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、断線率低減と製造コスト低減を両立できるとともに、高速で伸線加工を行うことができる。
本発明の実施形態に係る金属細線の伸線方法及び伸線機の一例を示した図である。 本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の金属母線生成工程の一例を示した図である。図2(A)は、金属母線の材料となる金属材料の一例を示した図である。図2(B)は、溶解鋳造工程の一例を示した図である。図2(C)は、生成された金属母線の一例を示した図である。 本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の第1の粗伸線工程の一例を示した図である。 本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の第2の粗伸線工程の一例を示した図である。 本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の熱処理工程の一例を示した図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
図1は、本発明の実施形態に係る金属細線の伸線方法に用いる伸線機の一例を示した図である。図1において、本発明の実施形態に係る金属細線の伸線方法に用いる伸線機は、スプール20、21と、駆動キャプスタン30と、案内キャプスタン31と、ダイス40〜47とを備える。また、図1において、伸線機の伸線加工対象となる金属細線10が示されている。
図1に示すように、通常、伸線加工に用いられる伸線機は、一対の駆動キャプスタン30と案内キャプスタン31を有し、その間に複数のダイス40〜47を配した構造としている。金属細線10は、ダイス40〜47を通過後、駆動キャプスタン30により引抜く力が付与されるとともに、折り返されて案内キャプスタン31に向けて誘導され、案内キャプスタン31により折り返された後ダイス40〜47に導入されることを繰り返して、連続的に伸線加工が行われる。
略円筒形の駆動キャプスタン30と案内キャプスタン31とは、略平行に配置され、金属細線10は、スプール20に巻回された状態で伸線機に供給される。また、伸線加工された金属細線10は、スプール21に巻き取られるようになっている。駆動キャプスタン30と案内キャプスタン31との間には、ダイス40〜47が設けられている。ダイス40〜47は、複数設けられ、図1においては、8個のダイス40〜47が設置されている。金属細線10は、略平行に配置された駆動キャプスタン30と案内キャプスタン31との間を跨ぐように交互に巻き回され、駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31の軸方向に間隔を空けて奧側から手前側に徐々に位置を移動するようにして巻回されている。そして、先頭ダイス40を最初として、案内キャプスタン31から駆動キャプスタン30に跨る度にダイス40〜47のうちの1つを順に通過し、最終的に、総てのダイス40〜47を通過するように構成されている。そして、最終ダイス47を通過し、伸線加工が終了した金属細線10が、スプール21に巻き取られるように構成されている。
金属細線10は、伸線加工の対象となる金属細線であり、半導体実装用のボンディングワイヤとして用いられる材料の金属から構成される。例えば、金からなる金属細線10や、銅を主成分とする芯材をパラジウムで被覆した金属細線10等が用いられる。金属細線10は、例えば、金属材料を溶解鋳造して金属母線を生成した後、金属母線を伸線加工して所定の線径とすることにより形成されるが、この点の詳細については後述する。
スプール20、21は、金属細線10、11を巻き取って収容するための部材であり、金属細線10、11を巻回するための円筒形状を有して構成される。また、スプール20、21は、必要に応じて、円筒形状部分から金属細線10、11が外れないように、円筒形状部分よりも径が大きい円形平板部分を両端に有して構成される。
駆動キャプスタン30は、軸周りに回転し、スプール20から金属細線10を引き込み、金属細線10を前に送り出して順次ダイス40〜47を通過するように回転駆動する部材である。駆動キャプスタン30は、例えば、モータにより回転駆動され、金属細線10を巻き込んで移動させる。
案内キャプスタン31は、駆動キャプスタン30により移動される金属細線10をガイドするための部材であり、駆動キャプスタン30と同様に、円筒形状に構成される。案内キャプスタン31は、駆動キャプスタン30の駆動により移動する金属配線10の進行に応じて例えばモータにより回転し、金属配線10を前に送り出す。
駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31の形状には、大きく分けて円筒型のストレートキャプスタンと、ダイス40〜47のリダクション率に対応して細線側ほどキャプスタン径を太くした段付キャプスタンの2種類が主として用いられている。両者にはそれぞれ長所と短所があり、ストレートキャプスタンは、構造が単純なために製造が容易であること、ダイスセット40〜47のリダクション率には左右されない自由度が高いことが長所である。
しかし、ストレートキャプスタンは、キャプスタン径が一定のためキャプスタン周速は一定であるが、金属細線10は、伸線機内では線径が太いほど線速は遅くなるので、キャプスタン周速との速度差は大きくなり、またキャプスタン30、31のほうが金属細線10よりも速いため、この速度差は、金属細線10をキャプスタン30、31に絡みつかせる方向に働く。線径が太い場合は引抜力及び張力が高いために絡みつくことに対抗する力も大きいが、線径が細くなるに従い対抗力も小さくなるので、絡みつきによる断線は、伸線機内で線径が最も細いダイス数枚の領域で起きることがほとんどである。この絡みつきの発生発端は、伸線中の金属細線10の振動が突発的に大きくなったためと考えられ、振動は伸線速度とキャプスタン周速と金属細線10の速度差に依存するため、ストレートキャプスタンでは高速化が難しいのが短所となる。
逆に、段付キャプスタンは、ダイスのリダクション率に応じてキャプスタン径を変えるため、キャプスタン周速と線材の速度差は線径によらず一定に保つことが可能であり、高速化か可能となる反面、キャプスタン構造が複雑で製造コストが高いことや、ダイスリダクション率とキャプスタン直径が合致していないと金属細線10にかかる張力が増大して断線に至ることがあるため、ダイスセット40〜47の自由度が低い短所を持つ。以上より、様々な線径を伸線しなければならない場合は、速度を犠牲としてストレートキャプスタンを選択する場合がある。
本実施形態に係る金属細線の伸線方法に用いる伸線機は、ストレートキャプスタンと段付きキャプスタンを組み合わせた構成を有する。図1においては、ダイス40〜45に対応する駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31をストレートキャプスタンとし、ダイス46、47に対応する駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31を段付きキャプスタンとして構成している。このように、本実施形態に係る伸線機では、駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31について、線径が太い最初の段階ではストレートキャプスタンを用い、線径が細い最終段階では段付きキャプスタンを用いるが、何番目のダイス40〜47でストレートキャプスタンから段付きキャプスタンに切り替えるかは、用途に応じて種々の構成としてよい。なお、この点の詳細については後述する。
ダイス40〜47は、内径が徐々に細くなる円筒形状又は環状の加工治具であり、金属配線10が挿通されることにより、金属配線10の線径を縮径する。ダイス40〜47は、複数設けられ、用途に応じて適切な数のダイス40〜47を設けることができるが、図1においては、8つのダイス40〜47が設けられている。本実施形態においては、供給された金属細線10が通過する順にダイス40〜47と呼び、先頭ダイス40、第2のダイス41、第3のダイス42、第4のダイス43、第5のダイス44,第6のダイス45、第7のダイス46及び最終ダイス47と呼ぶこととする。ダイス40〜47を通過する度に金属配線10は伸線加工されて縮径するので、金属配線10を供給する奧側のスプール20の位置から、駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31上を手前側に移動するにつれて、金属細線10の線径は小さくなってゆくことになる。
本実施形態に係る金属細線の伸線方法及び伸線装置においては、8つのダイス40〜47を、金属細線10が通過する順に、4グループに分類する。つまり、線径の太い金属細線10を加工する順に、第1グループG1、第2グループG2、第3グループG3及び第4グループG4と分類する。図1においては、第1グループG1に属するのはダイス40の1つ、第2グループG2に属するのはダイス41、42の2つ、第3グループG3に属するのはダイス43、44の2つ、第4グループG4に属するのはダイス45、46、47の3つとなっている。つまり、第1グループG1は先頭ダイス40のみにて構成されるが、以降第2グループG2〜第4グループG4は、複数のダイス41〜47から構成されている。
なお、本実施形態に係る金属細線の伸線方法及び伸線装置においては、第1グループG1に属するダイスは先頭ダイス40の1つのみである例を挙げて説明するが、第1グループG1に属するダイスも、先頭ダイス40を含む複数のダイスであってもよい。
このように4つのグループG1〜G4に分けたのは、伸線加工による断線は線径が細くなるほど発生し易くなる傾向があることから、加工対象となる金属細線10の線径の近似したダイス40〜47同士でグループG1〜G4を作り、これを効果的に防止するためである。この点について、各グループG1〜G4の分類の基準について触れながら説明する。
第4グループG4は、最も線径が細い部分に相当し、断線が起きやすい箇所であるため、リダクション率を低く設定して断線を回避する。第4グループG4に属するダイス45〜47のリダクション率は、6.0%以下に設定することが好ましく、更に5.0%以下に設定するのがより好ましい。
しかしながら、徒にリダクション率を低く設定すると、伸線加工中の引抜き力が低下して無用な振動が発生し、キズの発生や微小な加工むらによる不規則模様が発生することがあるため、リダクション率は2.5%以上に設定し、好ましくは3.0%以上に設定する。従って、第4グループG4に属するダイス45〜47のリダクション率は、2.5%〜6.0%、より好ましくは3.0%〜5.0%に設定する。
ここで、リダクション率とは、減面率と称することもあるが、ダイスにより伸線加工される前と後の断面積比を表したものであり、下記(1)式で表される。
Figure 2013146738
なお、第4グループG4に属する個々のダイス45〜47のリダクション率は、上述の範囲を満たしていれば、線径が細くなるに従ってリダクション率が漸減するように設定しても、線径に関らず一定のリダクション率に設定してもどちらでもよい。
一方、第4グループG4に属するダイス45〜47は、断線回避を重視してリダクション率を低く設定するため、ダイスセット総数に対する第4グループG4に属するダイス総数の比率を高くすると、ダイスコストの面では不利になる。よって、第4グループG4に属するダイス45〜47の総数は制限する必要がある。しかしながら、第4グループG4に属するダイス45〜47の総数が少なすぎれば、断線を回避する効果が発揮できなくなるので、少なくとも3枚は必要である。また、第4グループG4に属するダイス45〜47の最大数(上限)は、ダイスセット総枚数の30%以下と設定すればよい。なお、図1においては、最低の枚数である3枚のダイス45〜47を用いた数が示されているが、3枚以上ダイスセット総数の30%以下の個数であれば、用途に応じて種々の個数とすることができる。
第2グループG2の属するダイス41、42は、線径が比較的太い金属細線10を伸線加工する領域であり断線は第4グループG4のダイス45〜47よりも発生し難いため、リダクション率は高く設定することが可能である。第2グループG2のダイス41、42の平均リダクション率は、第4グループG4のダイス45〜47の平均リダクション率の2倍以上とする。第2グループG2に属するダイス41、42のリダクション率は、線径、線の素材によるダイス加工時の引抜力と線材の破断荷重にも依存するが、概ね12%〜17%の範囲内とすることが好ましい。
なお、第2グループG2に属する個々のダイス41、42のリダクション率も、線径が細くなるに従ってリダクション率が漸減するように設定しても、線径に関らず一定のリダクション率に設定してもどちらでもよい。
第3グループG3に属するダイス43、44は、第2グループG2に属するダイス41、42から第4グループG4のダイス45〜47へのリダクション率の急激な変化を緩和するために、線径が細くなるに従いダイス43、44のリダクションを漸減させるようにする。なお、第2グループG2又は第4グループG4に属するダイスセット41、42、45〜47のリダクション率が漸減するように設定した時の第3グループG3のダイス43、44との区切りは、第3グループG3のリダクション率変化率を第2グループG2又は第4グループG4よりも高くして、変化率が異なる境界をグループ間の区切りとすればよい。
前工程で伸線加工された金属母線がスプールに巻かれる時に食い込み等があると、突発的に金属細線10にかかる張力が増大して断線することがある。従って、第1グループG1に属するダイス40のリダクション率は、第2グループG2に属するダイス41、42の平均リダクション率よりも低く設定することが必要であり、その設定は第2グループG2に属するダイス41、42の平均リダクション率の20%〜95%とするのが好ましい。なぜなら、20%未満では、ダイス41、42による引抜力が小さいために、金属細線10にかかる張力が低くなり、キャプスタン30、31に絡みつくことがあるからである。一方、95%を超えると、食い込み等による突発的な張力増大による金属細線10の断線を回避することが難しいからである。
本実施形態に係るダイスセット40〜47を使えば、例えば、第4グループG4のダイスセット45〜47のリダクション率を固定として、第1グループG1から第3グループG3のダイスセット40〜44を調整すれば、種々の線径に対応したダイスセット40〜47を用意することが可能となる。また、最も断線が起きやすい領域に該当する第4グループG4に属するダイス45〜47のリダクション率を低く設定するため、断線を回避することが可能である。更に、このダイスセット40〜47を用いた本実施形態に係る伸線機において、第1グループG1から第3グループG3までのダイス40〜45に対応する部分の駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31はストレートキャプスタン、第4グループG4のダイス46、47に対応する部分の駆動キャプスタン30及び案内キャプスタン31を段付キャプスタンとすれば、ダイスセット40〜47中のリダクション率が固定されない部分はストレートキャプスタンの長所が発揮でき、ダイスセット40〜47のリダクション率を固定した第4グループG4の部分は段付キャプスタンにより金属細線10の速度とキャプスタン周速の速度差を一定とできるため、金属細線10の振動が低減され、断線を起こすことなく高速化が可能となる。当然、第4グループG4に属する線径が太い方の金属細線10を加工する最初のダイス45の位置から金属細線通過後の位置のキャプスタンを全て段付キャプスタンにすれば、最もこの効果を発揮できるが、少なくとも、相対するキャプスタン30、31間にあるダイスセット40〜47の最後のダイス47を通過後の案内キャプスタンのみ段付キャプスタンとしても、効果が見られる。なお、この効果を左右する要因は金属細線10の速度とキャプスタン周速との速度差であるため、伸線速度を決める巻取りスプール21の回転数とキャプスタン30、31の回転数を金属細線10の最終線径、素材に応じて適切に設定することが必要であるのは言うまでもない。
このように、何番目のダイス40〜47から段付きキャプスタンにするかは、用途に応じて種々定めることができる。
次に、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の金属母線生成工程の一例を示した図である。図2(A)は、金属母線の材料となる金属材料の一例を示した図であり、図2(B)は、溶解鋳造工程の一例を示した図であり、図2(C)は、生成された金属母線の一例を示した図である。
図2(A)に示すように、金属母線の材料となる金属材料8は、板状の金属板として供給される。なお、添加物が必要な場合には、添加物の金属板も同様に用意する。
図2(B)に示すように、金属母線の生成は、連続鋳造装置50を用いて行われる。連続鋳造装置50は、チャンバ51と、タンディッシュ52と、鋳型53と、ウォータージャケット54と、ローラ55とを備える。連続鋳造装置において、チャンバ51内に収容されたタンディッシュ52内で金属材料8が溶解され、溶解した金属材料8がウォータージャケット54を有する鋳型53を通り、ローラ55により引き出されて金属母線9が生成される。なお、チャンバ51内は、例えば、窒素ガスで満たされてよい。また、金属材料8の他、添加物もタンディッシュ52内で溶解供給されてよい。なお、タンディッシュ52に溶解した金属材料8を供給する取鍋や、複数の役割を有するローラ55も、必要に応じて設けられてよい。
図2(C)は、生成された金属母線9の一例を示しているが、金属母線9は、金属細線10よりも遙かに太い線径を有しており、例えば、数mmの線径を有する。
図3は、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の第1の粗伸線工程の一例を示した図である。第1の粗伸線工程においては、金属母線9の伸線加工が行われ、金属母線9が縮径される。図3に示すように、第1の粗伸線工程においては、一対のキャプスタン32、33と、1つのダイス60を用いて、金属母線9の伸線が行われる。金属母線9は数mmの太さを有し、ダイス60を挿通させるために要する力も大きいので、1つのダイス60のみで、十分な力を与えて伸線加工を行う。なお、第1の粗伸線工程は、必要に応じて複数回繰り返され、金属母線9を所定の線径にするまで行われる。例えば、第1の粗伸線工程で、金属母線9は、1mm程度の線径とされてもよい。
図4は、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の第2の粗伸線工程の一例を示した図である。第2の粗伸線工程においては、図1で説明した伸線工程と同様に、一対のキャプスタン34、35と、複数のダイス61〜65を用いて伸線加工が行われる。第2の粗伸線工程では、複数のダイス61〜65を用いることにより、効率よく伸線加工を行うことができる。第2の粗伸線工程により、金属母線9は、数100μmレベルの金属細線10に加工される。
なお、第2の粗伸線工程においても、複数のダイス61〜65を用いているので、図1で説明した本実施形態に係る伸線方法を適用することができる。図4においては、ダイス61〜65が5つしか備えられていないが、ダイス61〜65の数を増やし、第1〜第4のグループG1〜G4に分けることができるようにし、更に図1において説明したダイスの条件を満たすようにすれば、第2の粗伸線工程においても、本実施形態に係る伸線方法及び伸線機を実現することができる。
第2の粗伸線工程の後は、図1において説明した伸線方法を、伸線工程として行う。かかる伸線工程により、金属細線10は、ボンディングワイヤとして出荷される最終線径まで伸線される。なお、伸線工程の具体的な内容は、図1を用いて既に説明済みであるので省略する。最終伸線工程に、本実施形態に係る伸線方法を適用することにより、ダイス40〜47の総数を低減させ、低コストでボンディングワイヤ製造中の断線を低減させることができるともに、高速で伸線工程を実施することができ、生産性を高めることができる。
図5は、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法の熱処理工程の一例を示した図である。熱処理工程においては、伸線加工後の金属細線10について、熱処理を施し、加工歪みを除去する。この処理により、ボンィングワイヤが完成する。
熱処理終了後は、出荷用のスプールに熱処理後の金属細線、つまりボンディングワイヤの完成品が巻回され、出荷される。
このように、本実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法によれば、製造コストの低減と断線発生の低減を両立できるとともに、高速で伸線加工を行い、ボンディングワイヤ製造の生産性を高めることができる。
なお、本実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法においては、比較的簡素の工程の例を説明したが、必要に応じて熱処理の回数を追加する等、用途に応じて必要な工程を追加するようにしてもよい。また、例えば、金属細線10がパラジウム被覆銅線等の被覆金属細線の場合には、被覆を行うためのめっき工程等を追加してもよい。
このように、本実施形態に係るボンディングワイヤの製造方法は、伸線工程を適切に行う限り、用途に応じて種々の工程を追加することができる。
〔実施例1、2〕
以下、本発明の実施例1、2に係る金属細線の伸線方法について、比較例1、2と比較して具体的に説明する。
実施例1、2及び比較例1、2とも、高純度の金にカルシウムを10質量ppm、ベリリウムを5質量ppm添加して連続鋳造機で溶解後、粗伸線工程、伸線工程、熱処理工程を経て最終線径として20μmの線材を作製した。
表1は、実施例1、2及び比較例1、2の最終の20μmまでの伸線を行うダイスセットの各ダイスのダイス径(μm)を示している。
Figure 2013146738
表1において、カッコ内の値は各ダイスにおけるリダクション率(%)を示したものである。伸線工程において、母線は先頭ダイス、ダイス2,ダイス3,・・・,最終ダイスの順に通過し、所定の線径にまで線径が絞られる。
実施例1では、第2グループに属するダイスのリダクション率を14%、第4グループに属するダイスを4%になるように設定してある。実施例2では、第2グループ、第3グループ、第4グループのそれぞれのダイスが、線径が細くなるほどリダクション率が漸減し、かつ第3グループのリダクション率の減少率が第2グループ及び第4グループの減少率よりも高く設定してある。
比較例1では、先頭ダイス及び最終ダイスを除いてリダクション率が8.5%になるように設定してあり、この設定は特許文献3に開示された技術に属するものである。比較例2では、第2グループに属するダイスのリダクション率を14%、第4グループに属するダイスを2%になるように設定してあり、第4グループのリダクション率が本発明の範囲外となる。なお個々のダイスのリダクション率は線径表示の有効数字の関係から、設計値から多少のずれはある。
次に、実施例1,2及び比較例1,2の各ダイスセットの評価方法について説明する。各ダイスセットをそれぞれ用いて、伸線後の線材の長さが1,000,000mになるまで伸線を行い、断線回数を測定するとともに伸線工程終了後の線材の外観を観察した。外観の観察では不規則な模様が発生していないかどうかという観点から観察を行った。なお本伸線に用いた伸線機はストレートキャプスタンを装着してあり、伸線速度は150m/min.とした。
表2に実施例1,2及び比較例1,2の各ダイスセットを用いた場合の断線回数の測定結果および外観観察の結果を示す。
Figure 2013146738
表2に示すように、実施例1、2及び比較例1では断線は発生せず、伸線工程後の線材の外観も良好であった。しかしながら、比較例1に対し実施例1、2はセットダイス中のダイス枚数は2枚少なく、製造コストが低減できていることが分かる。比較例2は、断線の発生はなかったが伸線工程後の線材の外観に異常が見られた。
このように、実施例1、2に係る伸線方法及び伸線装置によれば、断線の発生し易い最も線径が細い部分のダイスのリダクション率を低減させ、伸線加工時の断線を低コストで低減できるとともに、ダイスの総数を低減させ、製造コストの低減を図ることができる。
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3に係る金属細線の伸線方法及び伸線装置について、比較例3と比較しつつ説明する。
実施例3においては、実施例1と同様のダイスセットを用いて、実施例3及び比較例3に係る伸線機により伸線を行った。実施例3に係る伸線機は、図1で示した伸線機の相対する一対のキャプスタン30、31において、39.8μmから20.9μmのダイスに対応する部分はストレートキャプスタン、20.4μm及び20.0μmのダイスに対応する部分は段付キャプスタンとしてある。
一方、比較例3に係る伸線機は、図1で示した伸線機の相対する一対のキャプスタン30、31において、総ての領域でストレートキャプスタンを使用している。評価は伸線速度150m/min.と300m/min.の条件で実施し、評価項目は実施例1、2及び比較例1、2で行った評価と同じとした。
表3は、実施例3及び比較例3に係る金属細線の伸線方法及び伸線装置の評価結果を示している。
Figure 2013146738
表3より、第4グループに属するダイスのうち一部を段付キャプスタンとした実施例3は、伸線速度を300m/min.にしても断線することはなく、伸線上がりの外観も特に異常は見られない。これに対し、ストレートキャプスタンにて伸線した比較例3は、伸線速度を300m/min.にすると断線している。
このように、実施例3に係る金属細線の伸線方法及び伸線装置によれば、キャプスタンの形状を、加工対象となる金属細線の線径に対応させて変えることにより、伸線加工時の断線を低減させるとともに、伸線加工の高速化を図ることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
本発明は、所定線径の金属細線を用いる装置全般に利用することができ、例えば、半導体実装に用いられるボンディングワイヤに利用することができる。
8 金属材料
9 金属母線
10 金属細線
20、21 スプール
30〜35 キャプスタン
40〜47、60〜65 ダイス
50 連続鋳造装置
51 チャンバ
52 タンディッシュ
53 鋳型
54 ウォータージャケット
55 ローラ

Claims (6)

  1. 金属細線を複数のダイスに挿通させ、段階的に伸線加工して前記金属細線の線径を縮径する金属細線の伸線方法において、
    前記複数のダイスを、前記金属細線を挿通させる順に第1、第2、第3及び第4グループにグループ分けするとともに、
    前記第4グループに属するダイスのリダクション率を2.5〜6.0%に設定し、
    前記第2グループに属するダイスの平均リダクション率を前記第4グループに属するダイスの平均リダクション率の2倍以上に設定し、
    前記第3グループに属するダイスのリダクション率を、前記金属細線が縮径するにつれて漸減するように設定したことを特徴とする金属細線の伸線方法。
  2. 前記第4グループに属するダイスの数は3枚以上であるとともに、前記複数のダイスの総枚数の30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属細線の伸線方法。
  3. 前記第1グループに属するダイスのリダクション率は、前記第2グループに属するダイスの平均リダクション率の20〜95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属細線の伸線方法。
  4. 前記第1乃至第3グループに属するダイスに対応する部分のキャプスタンには円筒形のキャプスタンを用い、
    前記第4グループに属するダイスの少なくとも1枚に対応する部分のキャプスタンには段付きキャプスタンを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属細線の伸線方法。
  5. 前記第1グループに属するダイスは、先頭ダイスのみからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属細線の伸線方法。
  6. 半導体実装に用いられるボンディングワイヤの製造方法であって、
    金属材料を溶解鋳造し、金属母線を生成する金属母線生成工程と、
    該金属母線をダイスに挿通させ、伸線加工して所定の線径を有する金属細線を形成する粗伸線工程と、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属細線の伸線方法を用いて、前記金属細線を前記ボンディングワイヤの線径まで伸線加工する伸線工程と、
    前記ボンディグワイヤの線径まで伸線加工された前記金属細線を熱処理する熱処理工程と、を有することを特徴とするボンディングワイヤの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118122801A (zh) * 2024-05-07 2024-06-04 烟台元泰金属材料技术有限公司 一种可以在拉丝过程中更换模具的金属拉丝装置

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