以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施例としての燃料電池搭載車両20を概略的に平面視して示す説明図である。
図示するように、この燃料電池搭載車両20は、車体22に、燃料電池システム30を搭載する。この燃料電池システム30は、燃料電池スタック100と、水素ガスタンク110を含む水素ガス供給系120と、モーター駆動のコンプレッサ130を含む空気供給系140と、ラジエータ150およびファン152を含む冷却系160と、2次電池172と、DC/DCコンバーター174とを備える。燃料電池システム30は、燃料電池スタック100の発電電力、或いは2次電池172の充電電力を、前輪駆動用のモーター170を始めとする負荷に供給する。
燃料電池スタック100は、後述の電池セルユニット340を積層して構成されたスタック構造とされ、前輪FWと後輪RWの間において車両床下に位置する。そして、燃料電池スタック100は、後述の水素ガス供給系120と空気供給系140から供給された水素ガス中の水素と空気中の酸素との電気化学反応を各電池セルユニット340にて起こして発電し、その発電電力にてモーター170等の負荷を駆動する。燃料電池スタック100の発電状態は電流センサー106にて計測され、その計測結果は電流センサー106から後述の制御装置200に出力される。この場合、電池セルユニット340の積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。なお、燃料電池スタック100およびこれを構成する電池セルユニット340の構成については、後述する。
水素ガス供給系120は、水素ガスタンク110から燃料電池スタック100に到る水素供給経路121と、未消費の水素ガス(アノードオフガス)を水素供給経路121に循環させる循環経路122と、アノードオフガスを大気放出するための放出経路123を備える。そして、この水素ガス供給系120は、水素供給経路121の開閉バルブ124の経路開閉と、減圧バルブ125での減圧を経て、水素ガスタンク110の水素ガスを燃料電池スタック100(詳しくは、各電池セルユニット340のアノード102)に供給する。この際、水素ガス供給系120は、減圧バルブ125の下流の水素供給機器126にて調整した流量と、循環経路122の循環ポンプ127にて調整した循環流量との合算した流量の水素ガスを、燃料電池スタック100のアノードに供給する。水素ガス供給量は、アクセル180の操作に基づいて、後述の制御装置200にて定められ、燃料電池スタック100に求められる負荷に応じた供給量となる。なお、水素ガス供給系120は、循環経路122から分岐した放出経路123の開閉バルブ129の開閉調整を経て、適宜、アノードオフガスを放出経路142を経て大気放出する。
空気供給系140は、コンプレッサ130を経て燃料電池スタック100に到る酸素供給経路141と、未消費の空気(カソードオフガス)を大気放出する放出経路142とを備える。そして、この空気供給系140は、酸素供給経路141の開口端から取り込んだ空気を、コンプレッサ130にて流量調整した上で燃料電池スタック100(詳しくは、各電池セルユニット340のカソード103)に、通常は酸素供給経路141を経て供給しつつ、放出経路142の排出流量調整バルブ143で調整された流量でカソードオフガスを放出経路142を経て大気放出する。このように空気供給系140にて空気供給とカソードオフガス排出とを行う場合、空気供給系140は、酸素供給経路141の排出流量調整バルブ143を所定開度にした上で、コンプレッサ130にて空気を供給する。この際の空気供給量にあっても、水素ガスと同様に、アクセル180の操作に基づいて制御装置200にて定められ、燃料電池スタック100に求められる負荷に応じた供給量となる。なお、排出流量調整バルブ143は、流量調整を経て、カソード側の背圧についてもこれを調整する。
また、空気供給系140は、酸素供給経路141と放出経路142とを、加湿装置145を経由するように備える。この加湿装置145は、燃料電池スタック100からのカソードオフガスに含まれる水分を用いて酸素供給経路141の空気を加湿する。例えば、装置内部にガス供給流路とガス排出流路とを備え、この二つの流路間に加湿膜を配置した上で、ガス排出流路を通過するカソードオフガスの水分を流路間の加湿膜を介してガス供給流路のガス(空気)に移動させて、当該ガスを加湿する。
冷却系160は、ラジエータ150から燃料電池スタック100への冷却媒体の循環を図る循環経路161と、バイパス経路162と、経路合流点の三方流量調整弁163と、循環ポンプ164と、温度センサー166を備える。そして、この冷却系160は、ラジエータ150にて熱交換した冷却媒体を循環経路161を経て燃料電池スタック100の図示しないセル内循環経路に導き、燃料電池スタック100を所定温度に冷却する。この場合、循環ポンプ164の駆動量、即ち冷却媒体の循環供給量や、三方流量調整弁163による調整流量は、温度センサー166の検出温度たる燃料電池温度(セル温度)や電流センサー106の検出した発電状態に基づいて、制御装置200にて定められる。
2次電池172は、DC/DCコンバーター174を介して燃料電池スタック100に接続されており、燃料電池スタック100とは別の電力源として機能し、モーター170等に供給する電力源として燃料電池スタック100と併用される。本実施例では、後述するように燃料電池スタック100をアクセル180の踏込に応じた発電状態下で運転制御(通常制御)することを前提とするので、燃料電池スタック100の運転停止状態において、2次電池172は、その充電電力をモーター170に供給する。2次電池172としては、例えば、鉛充電池や、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などを採用することができる。2次電池172には、容量検出センサー176が接続され、当該センサーは、2次電池172の充電状態を検出し、その検出充電量(電池容量)を制御装置200に出力する。
DC/DCコンバーター174は、2次電池172の充・放電を制御する充放電制御機能を有しており、制御装置200の制御信号を受けて2次電池172の充・放電を制御する。この他、DC/DCコンバーター174は、燃料電池スタック100の発電電力および2次電池172の蓄電電力の引出とモーター170への電圧印加とを、制御装置200の制御下で行い、電力引出状態とモーター170に掛かる電圧レベルを可変に調整する。
制御装置200は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、アクセル180等のセンサー入力を受けて燃料電池搭載車両20の種々の制御を司る。例えば、制御装置200は、アクセル180の操作状態に応じたモーター170への要求電力を求め、その要求電力が燃料電池スタック100の発電で得られるよう、或いは、2次電池172の充電電力、もしくはこの両者で賄うよう、燃料電池スタック100を発電制御して当該スタックからの発電電力の出力を制御しつつ、モーター170に電力を供給する。モーター170の要求電力を燃料電池スタック100の発電で得る場合には、その要求電力に見合うよう水素ガス供給系120や空気供給系140でのガス供給量を制御(通常制御)する。また、制御装置200は、モーター170への要求電力に応じて、DC/DCコンバーター174を制御する。なお、DC/DCコンバーター174と燃料電池スタック100との接続の様子については、後述する。
この他、制御装置200は、車速センサー182の検出した車速や、外気温センサー184の検出した外気温、水素ガス供給系120において流量センサー128が検出した水素ガス流量、空気供給系140において流量センサー147の検出したエアー流量、容量検出センサー176が検出した2次電池172の電池容量(以下、SOC)等を、上記した制御を行う上での制御パラメータとして入力する。この制御装置200は、既述した適用1の燃料電池システムにおける発電制御などを担う。
次に、燃料電池スタック100の構成について説明する。図2は燃料電池スタック100の概略構成をその構成単位である電池セルユニット340とスタック両端のターミナルプレートの構成と併せて示す説明図である。
燃料電池スタック100は、電池セルユニット340の各コーナ周辺に締結シャフト100sを配置して備える。締結シャフト100sは、そのシャフト端においてボルトにてエンドプレート310aに当接して固定されることで、上記した電池セルユニット340のそれぞれをスタック構造として一対のエンドプレート310aの間において締結する。
燃料電池スタック100は、電池セルユニット340を挟持するに当たり、エンドプレート310aの側にそれぞれ絶縁板320aと前端側ターミナルプレート331と後端側ターミナルプレート332とを介在させる。エンドプレート310aは、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成されている。絶縁板320aは、ゴムや、樹脂等の絶縁性部材によって形成されている。前端側ターミナルプレート331と後端側ターミナルプレート332は、緻密質カーボンや、銅板などのガス不透過な導電性のプレート材によって形成され、その一部領域、本実施例では、図2における上下を区画する領域に、絶縁体360を備える。この絶縁体360は、上記の前後のターミナルプレートを図における上下に電気的に絶縁して区画する。
前端側のエンドプレート310aと絶縁板320aおよび前端側ターミナルプレート331は、それぞれの電池セルユニット340に対応した空気供給口312IN、空気排気口312OUT、水素供給口314IN、水素排気口314OUT、冷却水供給口316INおよび冷却水排出口316OUTを備える。その一方、後端側のエンドプレート310aと絶縁板320aおよび後端側ターミナルプレート332は、これら給排口を備えない。これは、空気および水素を前端側のエンドプレート310aからそれぞれの電池セルユニット340に供給しつつ、その余剰分とアノードオフガスおよびカソードオフガスを後端側ターミナルプレート332に接合した電池セルユニット340にて(詳しくは当該セルのセパレーターにて)折り返して前端側のエンドプレート310aに戻すタイプの燃料電池であることによる。つまり、燃料電池スタック100は、電池セルユニット340のスタック構造の端部の側、具体的には前端側のエンドプレート310aにおいて、それぞれの電池セルユニット340へのガスの給排を行う。電池セルユニット340におけるガス給排については、後述する。冷却水についても、前端側のエンドプレート310aからそれぞれの電池セルユニット340に供給されて折り返され、前端側のエンドプレート310aに戻る。
前端側ターミナルプレート331と後端側ターミナルプレート332の両ターミナルプレートは、空気供給口312IN等の開口を有する点で相違するものの、共に、燃料電池スタック100の前端側の電池セルユニット340或いは後端側の電池セルユニット340に接合して用いられ、燃料電池スタック100の発電電力を外部に出力する。そして、上記の両ターミナルプレートは、絶縁体360にて絶縁分割された領域ごとに、前端上部端子333fと後端上部端子333b、前端下部端子334fと後端下部端子334bを備え、これら端子から既述したDC/DCコンバーター174に発電電力を出力する。この場合、上記の両ターミナルプレートは、絶縁体360により、その上部を、空気供給口312INと水素供給口314INとを含むガス供給側発電領域362とし、絶縁体下部を、空気排気口312OUTと水素排気口314OUTとを含むガス排気側発電領域364とする。なお、各端子からDC/DCコンバーター174への発電電力の出力の様子、即ち制御装置200の制御下におけるDC/DCコンバーター174を介した発電電力の出力制御の様子は後述する。
燃料電池スタック100を構成するそれぞれの電池セルユニット340は、電池セル350を対向するセパレーター341で挟持する。電池セル350は、図1の拡大模式図に示すように、電解質膜101の両側にアノード102とカソード103の両電極を備える。このアノード102とカソード103は、電解質膜101の両膜面に接合され電解質膜101と共に膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を形成する。この他、電池セル350は、上記のMEAを両側から挟持するアノード側ガス拡散層104とカソード側ガス拡散層105とを備え(図1参照)、両ガス拡散層は、対応する電極に接合されている。
電解質膜101は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。アノード102およびカソード103は、触媒(例えば白金、あるいは白金合金)を備えており、これらの触媒を、導電性を有する担体(例えば、カーボン粒子)上に担持させることによって形成されている。アノード側ガス拡散層104とカソード側ガス拡散層105は、ガス透過性を有する導電性で多孔質な部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロスを多孔質基材として形成される。
セパレーター341は、この電池セル350ごとに反応ガス(水素ガスを含有する燃料ガス又は酸素を含有する酸化ガス)が流れるガス流路を形成する部材であって、水素透過性が低く導電性の良好な材料で形成される。例えば、樹脂に導電材料を混入して成形したプレート状の導電性複合材や金属鋼板などがセパレーター341の形成に用いられる。セパレーター341は、その外周近くの互いに対応する位置に、貫通孔344〜349を備えている。貫通孔344〜347は、電池セルユニット340をスタック構造に複数積層させた場合に、互いに重なり合って、電池セルユニット340の積層方向に沿って燃料電池内部を貫通するガス流路を形成する。貫通孔348〜349にあっては、電池セルユニット340をスタック構造に複数積層させた場合に、互いに重なり合って、電池セルユニット340の積層方向に沿って燃料電池内部を貫通する冷媒流路を形成する。そして、貫通孔344と貫通孔345は、セル内エアー流路342の両端に位置して、それぞれエンドプレート310aの空気供給口312INと空気排気口312OUTに接合し、ガス給排マニホールドとして機能する。貫通孔346と貫通孔347にあっては、セル内水素ガス流路343の両端に位置して、それぞれエンドプレート310aの水素供給口314INと水素排気口314OUTに接合し、ガス給排マニホールドとして機能する。貫通孔348と貫通孔349にあっては、図示しないセル内冷却流路の両端に位置して、それぞれエンドプレート310aの冷却水供給口316INと冷却水排出口316OUTに接合し、冷却水給排マニホールドとして機能する。
セパレーター341は、上記した各マニホールドを介したガス給排を電池セルごとに行うべく、その表裏面に、セル内エアー流路342とセル内水素ガス流路343とを備える。本実施例では、この両流路は、セル面内(電極面内)において直交配列された流路とされ、セル内エアー流路342は図において上下に延びる多列の直線状流路とされ、流路上下流側で貫通孔344と貫通孔345に接続している。よって、電池セル350は、空気供給口312INを経て供給された空気を、貫通孔344からセル内エアー流路342に流入させ、当該流路軌跡に沿ってカソード103に空気を供給する。余剰の空気は、貫通孔345を経て空気排気口312OUTから排出される。水素についても同様である。
また、セパレーター341は、前端側ターミナルプレート331および後端側ターミナルプレート332の絶縁体360と重なる絶縁体360を備える。よって、電池セル350を挟持するセパレーター341にあっても、この絶縁体360により、その上下を電気的に絶縁して区画し、絶縁体360の上部および下部を、既述したガス供給側発電領域362とガス排気側発電領域364とする。この場合、電池セル350は、絶縁体360を有しないことから、供給された水素と酸素の電気化学反応を電極面の全域、即ちガス供給側発電領域362に対応した電極面とガス排気側発電領域364に対応した電極面とにおいてそれぞれ進行させて発電する。こうして得られた発電電力は、ガス供給側発電領域362については、これに属する前端上部端子333fと後端上部端子333bとで集電され、ガス排気側発電領域364については、これに属する前端下部端子334fと後端下部端子334bとで集電され、それぞれの発電領域から個別に出力可能となる。
次に、燃料電池スタック100における各電池セルユニット340からの発電電力の出力系統について説明する。図3は燃料電池スタック100とその発電電力の出力を図るDC/DCコンバーター174との接続系統を示す説明図である。
図示するように、燃料電池スタック100は、ガス供給側発電領域362に属する前端上部端子333fと後端上部端子333bとをDC/DCコンバーター174に接続し、ガス排気側発電領域364に属する前端下部端子334fと後端下部端子334bとについては、ガス供給側発電領域362とは異なる系統でDC/DCコンバーター174に接続する。こうして上記の各端子に接続されたDC/DCコンバーター174は、制御装置200からの制御信号を受けて、ガス供給側発電領域362に対応した電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力と、ガス排気側発電領域364に対応した電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力とを、個別に取り出し、その取り出した発電電力の出力を制御装置200からの制御信号により制御する。この場合、燃料電池スタック100における各電池セルユニット340において、空気は、図中の白抜き矢印に示すように、空気の供給側から排出側に向けて流れ、既述した電池セル350におけるアノード102とカソード103の並びにより、前端上部端子333fと前端下部端子334fが負極端子となり、後端上部端子333bと後端下部端子334bが正極端子となる。
次に、上記した構成を有する燃料電池搭載車両20の制御装置200が行う燃料電池スタック100の発電制御について説明する。図4は制御装置200による燃料電池スタック100の発電制御の制御手順を示すフローチャートである。制御装置200は、燃料電池システム30が起動すると、ドライバーからの燃料電池搭載車両20に対する駆動要求に基づいて燃料電池スタック100を発ガス電制御する通常運転の実行を開始する(ステップS100)。燃料電池搭載車両20に対するドライバーからの駆動要求は、ドライバーによるアクセル180の踏込操作量やその踏込速度等から要求電力Ptとして得ることができる。
図5は燃料電池スタック100の運転時における燃料電池スタック100の出力制御を説明するための説明図である。この図5には、燃料電池スタック100のI−V特性を示すグラフGI-Vと、I−P特性を示すグラフGI-Pとを、左右の縦軸をそれぞれ電圧(V)と電力(P)とし、横軸を電流(I)として示してある。通常、燃料電池のI−V特性は、電流の増加に従って下降する横S字状の曲線グラフとして表される。また、燃料電池のI−P特性は、上に凸の曲線グラフとして表される。
制御装置200は、燃料電池スタック100についてのI−V特性およびI−P特性を表す情報を、燃料電池スタック100の制御用情報として予め記憶している。なお、燃料電池スタック100のI−V特性およびI−P特性は、燃料電池スタック100の運転温度など、その運転条件に応じて変化するため、制御装置200は、それらの運転条件ごとの制御用情報を有していることが好ましい。
制御装置200は、燃料電池スタック100のI−P特性に基づいて、要求電力Ptに対して燃料電池スタック100が出力すべき目標電流Itを取得する。そして、制御装置200は、燃料電池スタック100のI−V特性に基づいて、目標電流Itを出力するための燃料電池スタック100の目標電圧Vtを取得する。制御装置200は、DC/DCコンバーター174に目標電圧Vtに設定させることにより、燃料電池スタック100および2次電池172に要求電力Ptを出力させる。こうした取得した目標電流Itや目標電圧Vtが得られるよう、制御装置200は、水素および空気のガス供給量を算出して、図1における水素ガス供給系120の開閉バルブ124や循環ポンプ127、および空気供給系140のコンプレッサ130等を駆動制御する。
制御装置200は、上記の要求電力Ptに対する燃料電池スタック100の目標電流Itの取得に際して、2次電池172からの放電電力制御をも実行する。図6は制御装置200による2次電池172の放電電力制御の制御手順を示すフローチャートである。
制御装置200は、上記の通常運転および後述の一時的電圧降下の際にあっても、図6に示す放電電力制御を繰り返して実行しており、まず、ドライバーによるアクセル180の踏込操作量やその踏込速度等から要求電力Ptを算出する(ステップS200)。次いで、既述した燃料電池スタック100についての目標電流It目標電圧Vtとから、燃料電池スタック100の発電電力Fvを算出し(ステップS210)、要求電力Ptと発電電力Fvとの差分を2次電池172に必要な放電電力Bvとして算出する(ステップS220)。
次いで、この放電電力Bvが2次電池172にその性能上許容される所定の放電電力量αを下回るか否かを判定し(ステップS230)、肯定判定すれば、制御装置200は、2次電池172から放電電力Bvでの放電を行い(ステップS240)、処理を一旦終了する。これにより、DC/DCコンバーター174は、制御装置200の制御を受けて、燃料電池スタック100の発電電力Fvと2次電池172の放電電力Bvとを、モーター170の駆動のために出力する。この放電電力量αは、2次電池172の性能や耐久性から予め定まり、制御装置200に記憶済みである。
一方、制御装置200は、ステップS230において否定判定すると、2次電池172から放電電力Bvを放電電力量αに制限し、この放電電力量αで2次電池172からの放電を行い(ステップS250)、処理を一旦終了する。これにより、DC/DCコンバーター174は、制御装置200の制御を受けて、燃料電池スタック100の発電電力Fvと2次電池172の放電電力Bv(=放電電力量α)とを、モーター170の駆動のために出力する。なお、燃料電池スタック100の通常運転であれば、燃料電池スタック100の発電電力Fcも安定していることから、2次電池172は、ステップS240を経てその放電電力Bvを出力することになる。
制御装置200は、通常運転の実行中に、所定の周期で、燃料電池スタック100の発電電圧の一時的な低下をもたらすべき事象の有無を判定する(図5:ステップS110)。例えば、温度センサー166をスキャンして燃料電池スタック100の温度を検出し、スタックが高温状態であると、燃料電池スタック100の発電電圧の一時的な低下をもたらすべき事象が起きている、もしくは起きると判定する。そして、制御装置200は、このステップS110で発電電圧の一時的な低下をもたらす事象が起きていないと判定すれば、通常運転の制御(ステップS100)を再開する。
一般に、燃料電池スタック100では、その有する各電池セルユニット340が高温状態での運転を継続すると、電池セル350の電解質膜101の乾燥が進む。また、アノード102やカソード103の電極触媒層では、触媒はアイオノマーにより被覆された状態にあるが、このアイオノマー周囲の水分が高温度に晒されて少なくなり、触媒の露出や露出表面の酸化を招き得る。こうなると、触媒性能が低下して、電池セル350や電池セルユニット340、延いては燃料電池スタック100の発電性能の低下が危惧される。よって、例えば、既述した高温状態での運転継続により燃料電池スタック100の発電電圧の一時的な低下をもたらすべき事象が起きている、もしくは起きると判定すると、生成水の増加を介して乾燥抑制や水分補充を図る一時的電圧低下運転を実行する(ステップS120)。
制御装置200は、この一時的電圧低下運転を行うに当たり、図2〜図3に示したガス供給側発電領域362とガス排気側発電領域364とで、異なる出力制御を行う。まず、制御装置200は、ガス供給側発電領域362については、前端上部端子333fと後端上部端子333bとで接続されたDC/DCコンバーター174に対して、低電圧で高電流の発電電力の出力をする制御信号を出力する。これにより、ガス供給側発電領域362では、図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)に比して、低電圧で高電流の運転ポイント(目標電流ItL/目標電圧VtH)での発電電力に対応した発電が起き、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。その一方、ガス排気側発電領域364では、図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)のままでの発電電力に対応した発電が起き、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。この場合、ガス供給側発電領域362からの発電電力とガス排気側発電領域364からの発電電力は、DC/DCコンバーター174にて、合わせてモーター170に出力される。
制御装置200は、上記した一時的電圧低下運転においても、図6に示した放電電力制御を繰り返して実行している。よって、この一時的電圧低下運転では、2次電池172は、要求電力Ptと発電電力Fv(ガス供給側発電領域362の発電電力とガス排気側発電領域364の発電電力の和)との差分の放電電力Bvを放電する。
以上説明したように、本実施例の燃料電池搭載車両20に搭載した燃料電池システム30は、例えば、高負荷での走行が継続等して燃料電池スタック100が高温となると、燃料電池スタック100の発電電圧を一時的に低下させる。この一時的な発電電圧低下を図るに当たり、本実施例の燃料電池システム30は、燃料電池スタック100におけるガス供給側発電領域362について、これを、I−V特性における運転ポイントを低電圧で高電流の運転ポイント(図5参照;目標電流ItL/目標電圧VtH)で発電させる。このため、ガス排気側発電領域364については、発電電圧の一時的な低下を起こすような出力制御を受けず、通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)のまま発電するので、燃料電池スタック100の全体としては、発電電圧の一時的な大きな低下を起こさない。これにより、燃料電池スタック100の発電電圧を一時的に低下させることが要請される状況において、発電電圧の一時的な低下に起因した出力低下を小さくできる。この結果、本実施例の燃料電池システム30によれば、ガス供給側発電領域362について発電電圧の一時的な低下を図るだけで、発電電圧の一時的な低下が要請される状況での発電電圧の一時的な低下に起因した出力低下を補う電力を小さくでき、簡便に出力を補填できる。
そして、発電電圧の一時的な低下を起こすガス供給側発電領域362では、電圧低下に伴って電流が増加するので、その分、生成水の生成量が増える。よって、ガス供給側発電領域362における電解質膜101の乾燥や触媒性能の低下を抑制できる。しかも、ガス供給側発電領域362は、ガスの供給側であるため、ガスの流れ方向の下流側であるガス排気側発電領域364には、ガス供給側発電領域362でその生成が増えた生成水がガスに運ばれる。このため、ガス排気側発電領域364における電解質膜101の乾燥抑制や触媒性能の低下抑制に有益となる。
また、本実施例の燃料電池システム30は、ガス供給側発電領域362についての発電電圧の一時的な低下により、燃料電池スタック100全体としての出力が低下すると、その出力低下を2次電池172で補って要求電力を賄う。この場合、既述したように燃料電池スタック100全体としての出力低下は小さいので、2次電池172による補填電力も小さくなる。この結果、本実施例の燃料電池システム30によれば、2次電池172からの放電電力量が電池性能等から制約されても、その制約範囲でより確実に2次電池172によって電力低下を補填できる。そして、この2次電池172による電力補填を介して、ドライバーの負荷要求に適う電力をモーター170に供給できる。加えて、2次電池172では、小さな出力低下を補えばよいことから、図6のステップS230において否定判定されがたくなるので、発電電圧を一時的に低下させる際でも、2次電池172の出力制限(ステップS250)の頻度を小さくできる。
また、本実施例の燃料電池システム30では、発電電圧の一時的な低下を起こすガス供給側発電領域362は、ガスの供給側であることから、ガス下流側のガス排気側発電領域364よりも発電運転時の電圧上昇幅が大きい。よって、本実施例の燃料電池システム30によれば、発電電圧の一時的な低下に伴う出力低下を既述したように小さくした上で、ガス供給側発電領域362における一時的な発電電圧を、確実に起こすことができる。
また、上記した燃料電池システム30を搭載した燃料電池搭載車両20によれば、燃料電池スタック100の発電電圧に一時的な低下が求められる状況となっても、既述した出力低下を2次電池172にて補って、モーター170には要求電力を供給できる。よって、出力低下に起因するドライバビリティーの悪化を招き難くできる。
次に、他の実施例について説明する。図7は第2実施例の燃料電池スタック100Aの概略構成を図2相当に表した説明図、図8は燃料電池スタック100AとDC/DCコンバーター174との接続系統を示す説明図である。この燃料電池スタック100Aは、積層された一部の電池セルユニット340について、既述した一時的電圧低下を起こす点に特徴がある。
図7に示すように、燃料電池スタック100Aは、既述した燃料電池スタック100とほぼ同じ構成を備え、前端側ターミナルプレート331と後端側ターミナルプレート332には、絶縁体360と前端下部端子334f、後端下部端子334bを備えない。また、前端側ターミナルプレート331の側に並んだ複数個、例えば、燃料電池スタック100Aにおけるセルスタック数の半分の数の電池セルユニット340(以下、これらユニットを前端側電池セルユニット群340Gとも称する)が絶縁体360を備える。そして、残りの電池セルユニットについては、絶縁体360を備えない電池セルユニット340Aとされている。なお、図7では、電池セルユニット340Aについての図示を省略しているが、その構成は、図示する電池セルユニット340から絶縁体360を除外したものである。
この燃料電池スタック100Aは、前端側電池セルユニット群340Gにおいて前端側ターミナルプレート331から最も離れた電池セルユニット340に、中央上部端子333mを有する。燃料電池スタック100Aにおける上記の端子は、図8に示すように、DC/DCコンバーター174と接続される。そして、DC/DCコンバーター174は、制御装置200の制御を受けて、前端側電池セルユニット群340Gに属する各電池セルユニット340のガス供給側発電領域362に対応した電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力を個別に取り出し、その取り出した発電電力の出力を制御する。また、DC/DCコンバーター174は、前端側電池セルユニット群340Gに属する各電池セルユニット340のガス排気側発電領域364に対応した電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力と、前端側電池セルユニット群340Gに含まれない電池セルユニット340Aの全電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力とを合わせて取り出し、その取り出した発電電力の出力を制御する。つまり、この実施例の燃料電池スタック100Aでは、前端側電池セルユニット群340Gに属する各電池セルユニット340のガス供給側発電領域362が、他のスタック部位と異なる系統でDC/DCコンバーター174に接続されることになる。
上記構成の燃料電池スタック100Aでの一時的電圧低下運転(図4;ステップS120)では、制御装置200は、前端側電池セルユニット群340Gに属する各電池セルユニット340のガス供給側発電領域362については、前端上部端子333fと中央上部端子333mとで接続されたDC/DCコンバーター174に対して、低電圧で高電流の発電電力の出力をする制御信号を出力する。これにより、上記のガス供給側発電領域362では、図5で説明したように、低電圧で高電流の運転ポイント(目標電流ItL/目標電圧VtH)での発電電力に対応した発電が起き、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。その一方、前端側電池セルユニット群340Gに属する各電池セルユニット340のガス排気側発電領域364および前端側電池セルユニット群340Gに属さない電池セルユニット340A(以下、これらを便宜上、残余セルユニットと称する)では、図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)のままでの発電電力に対応した発電が起き、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。この場合、ガス供給側発電領域362からの発電電力と残余セルユニットの発電電力は、DC/DCコンバーター174にて、合わせてモーター170に出力される。
上記した第2実施例の燃料電池スタック100Aによっても、既述した効果を奏することができる。
図9は第3実施例の燃料電池スタック100Bの概略構成をその接続系統と併せて示す説明図である。この燃料電池スタック100Bは、二つの燃料電池スタックを備え、その一方について、既述した一時的電圧低下を起こす点に特徴がある。
図9に示すように、燃料電池スタック100Bは、第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2とを有する。この第1、第2の両燃料電池スタックは、図2に示した燃料電池スタック100と次の点で相違する。第1、第2の両燃料電池スタックに含まれる電池セルユニットは、絶縁体360を有しない上記第2実施例の電池セルユニット340Aと同一である。また、前端側ターミナルプレート331と後端側ターミナルプレート332にあっては、前端上部端子333f1、333f2と後端上部端子333b1、333b2を備え、絶縁体360と前端下部端子334f、後端下部端子334bを備えない。
第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2の前端側ターミナルプレート331は、ターミナル間配線370で接続され、当該配線にはスイッチ372が配設されている。また、第1燃料電池スタック100B1は、前端上部端子333f1を正極配線374にてDC/DCコンバーター174に接続し、後端上部端子333b1を負極配線376にてDC/DCコンバーター174に接続する。第2燃料電池スタック100B2も同様であり、その前端上部端子333f2を正極配線382にて、後端上部端子333b2を負極配線384にてDC/DCコンバーター174に接続する。第1燃料電池スタック100B1の負極配線376にはスイッチ380が、と第2燃料電池スタック100B2の正極配線382にはスイッチ386が配設されている。
上記のスイッチ372は、制御装置200の制御を受けて回路の開閉・閉鎖を図るので、第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2の前端側ターミナルプレート331は、スイッチ372により導通する。上記のスイッチ380とスイッチ386にあっても、制御装置200の制御を受けて回路の開閉・閉鎖を図るので、第1燃料電池スタック100B1の後端上部端子333b1はスイッチ380により、第2燃料電池スタック100B2の前端上部端子333f2はスイッチ386により、それぞれ負極配線376或いは正極配線382にてDC/DCコンバーター174と導通する。
この第3実施例の燃料電池スタック100Bでは、図4で説明した通常運転(ステップS100)の間において、制御装置200は、スイッチ372をオンに、スイッチ380とスイッチ386については、これらをオフとする。このため、通常運転では、第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2は、それぞれの前端側ターミナルプレート331の導通により、一つの燃料電池スタックを構成する。そして、こうして構成された一つの燃料電池スタックとしては、正極側端子としての前端上部端子333f1がDC/DCコンバーター174に接続し、負極側端子としての後端上部端子333b2がDC/DCコンバーター174に接続される。これにより、通常運転では、DC/DCコンバーター174は、第1燃料電池スタック100B1を構成する各電池セルユニット340Aの全電極面で進行したで進行した電気化学反応に基づく発電電力と、第2燃料電池スタック100B2を構成する各電池セルユニット340Aの全電極面で進行した電気化学反応に基づく発電電力とを合わせて取り出し、その取り出した発電電力の出力を制御する。制御装置200は、上記の通常運転において、既述した図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)での運転制御を図る。このため、通常運転にあっては、第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2は、上記の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)のままでの発電電力に対応した発電を起こし、DC/DCコンバーター174は、両スタックの発電電力をモーター170に出力する。
その一方、図4で説明した一時的電圧低下運転(ステップS120)では、制御装置200は、スイッチ372をオフに、スイッチ380とスイッチ386については、これらをオンとする。このため、一時的電圧低下運転では、第1燃料電池スタック100B1と第2燃料電池スタック100B2とは、それぞれ異なる系統で個別にDC/DCコンバーター174と接続されることになる。そして、一時的電圧低下運転では、制御装置200は、例えば、第1燃料電池スタック100B1については、当該スタックと接続されたDC/DCコンバーター174に対して、低電圧で高電流の発電電力の出力をする制御信号を出力する。これにより、第1燃料電池スタック100B1では、図5で説明したように、低電圧で高電流の運転ポイント(目標電流ItL/目標電圧VtH)での発電電力に対応した発電が起き、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。この場合、第2燃料電池スタック100B2では、通常運転での運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)のままでの発電電力に対応した発電を起こし、DC/DCコンバーター174は、その発電電力をモーター170に出力する。この場合、第1燃料電池スタック100B1の発電電力と第2燃料電池スタック100B2の発電電力は、DC/DCコンバーター174にて、合わせてモーター170に出力される。
上記した第3実施例の燃料電池スタック100Bにあっても、この燃料電池スタック100Bを構成する燃料電池スタック100Bの各電池セルユニット340Aについてだけ既述した一時的電圧低下を起こすようにできる。よって、既述した効果を第1実施例の燃料電池スタック100と同様に奏することができる。
図10は第4実施例の燃料電池スタック100Cの概略構成を説明するためのブロック図である。この燃料電池スタック100Cは、その有する電池セルユニットをグループ分けし、ガス供給量をグループごとに調整することで、既述した一時的電圧低下を起こす点に特徴がある。
図10に示すように、燃料電池スタック100Cは、電池セルユニット340Aの積層方向に三つのセルグループ340G1〜340G3に区画する。この燃料電池スタック100Cにおける電池セルユニット340Aは、図におけるセル上端側でガス(エアー)の供給を受け、その供給を受けたエアーをセル下端側に送るよう構成されている。そして、燃料電池スタック100Cは、エアー供給側において、セルグループ340G1〜340G3ごとに可変絞り弁390〜394を有する。可変絞り弁390〜394は、制御装置200の制御を受けて、下流側へのガス通過量を調整することから、燃料電池スタック100Cは、これら絞り弁の調整を経て、セルグループ340G1〜340G3ごとに、各セルグループに属するそれぞれの電池セルユニット340Aへのエアー供給量を調整する。なお、セルグループ数は三つに限られるものではない。また、図10では、可変絞り弁390〜394をガス供給側に設けたが、図におけるセル下端側のガス排気側に絞り弁を設ける構成や、ガス供給側と排気側の双方に絞り弁を設ける構成とできる。
この第4実施例の燃料電池スタック100Cでは、図4で説明した通常運転(ステップS100)の間において、制御装置200は、既述した図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)に適った供給量で、エアーと水素ガスを燃料電池スタック100Cに供給する。この際、制御装置200は、セルグループ340G1〜340G3ごとのガス(エアー)の供給量がほぼ均等となるよう、可変絞り弁390〜394を調整する。そして、DC/DCコンバーター174は、燃料電池スタック100C全体での発電電力をモーター170に出力する。
その一方、図4で説明した一時的電圧低下運転(ステップS120)では、制御装置200は、可変絞り弁390〜394の少なくともいずれかを制御して、セルグループ340G1〜340G3の少なくとも一つのセルグループのガス供給量を他のセルグループより多くする。こうしてガス供給量が多くなったセルグループ、例えばスタック中央のセルグループ340G2に属する電池セルユニット340Aでは、ガス流量の増加に伴って電流密度が大きくなることから、電流増加と電圧低下を引き起こす。つまり、本実施例の燃料電池スタック100Cは、一時的電圧低下運転において、セルグループ340G2に属する電池セルユニット340Aについてのガス供給量を、セルグループ340G2に属する電池セルユニット340Aの出力電圧がセルグループ340G2以外のセルグループ340G1とセルグループ340G3に属する電池セルユニット340Aの出力電圧より低くなる側に調整することになる。
上記した第4実施例の燃料電池スタック100Cにあっても、この燃料電池スタック100Cにおけるセルグループ340G2に属する電池セルユニット340Aについてだけ既述した一時的電圧低下を起こすようにできる。よって、既述した効果を第1実施例の燃料電池スタック100と同様に奏することができ、こうした効果を得るに当たっては、セルグループ340G2とこれ以外のセルグループ340G1およびセルグループ340G3でガス供給量を変更するだけでよく、簡便である。
図11は第5実施例の燃料電池スタック100Dの概略構成を説明するためのブロック図、図12は燃料電池スタック100Dの概略構成を断面視して示す説明図である。この燃料電池スタック100Dは、その有する電池セルユニットをグループ分けし、エアー供給量をグループごとにバイパス流路にて調整することで、既述した一時的電圧低下を起こす点に特徴がある。
図11に示すように、燃料電池スタック100Dは、前端側ターミナルプレート331の側で並んだ複数の電池セルユニット340Bをバイパス流路セルグループ340BGとする。この電池セルユニット340Bは、既述した電池セルユニット340Aと図12に示すパイパス流路402を有する点でその構成が相違する。本実施例では、図12に示すように、電池セルユニット340Aおよび電池セルユニット340Bは、共に、その有する電池セル350をシール部材410にて取り囲んで一体化させたシール部材一体型MEAとして備え、このシール部材一体型MEAをセパレーター341で挟持する。シール部材410は、電池セル350を支持するための部材であり、シリコーンゴムを用いて射出成形により形成されている。
電池セルユニット340Bは、電池セルユニット340Aと同様、供給側のエアー流路となる貫通孔344や排気側のエアー流路となる貫通孔345を備えるほか、貫通孔344から分岐したパイパス流路402を有する。このパイパス流路402は、バイパス流路セルグループ340BGに含まれて前端側ターミナルプレート331(図11参照)から最も離れた電池セルユニット340Bにおいて、貫通孔344から分岐し、前端側ターミナルプレート331に到る。このパイパス流路402は、バイパス流路セルグループ340BGに属する電池セルユニット340Bの貫通孔344を流れようとするガス(エアー)をスタック外に持ち去ることで、バイパス流路セルグループ340BGに属する電池セルユニット340Bのガス供給量を低減させる。パイパス流路402は、セパレーター341において、水素ガスおよび空気の流路と干渉しないよう、形成されている。
パイパス流路402には、流量調整弁400が配設され、この流量調整弁400は、制御装置200の制御を受けて、パイパス流路402を経て排出されるエアーバイパス流量を調整する。これにより、燃料電池スタック100Dは、流量調整弁400の調整を経て、バイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bへのエアー供給量を低減調整する。こうした流量調整弁400の調整がなされても、バイパス流路セルグループ340BGに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aでは、調整以前とほぼ同じ供給量でエアーが供給される。
この第5実施例の燃料電池スタック100Dでは、図4で説明した通常運転(ステップS100)の間において、制御装置200は、流量調整弁400を閉弁制御した上で、既述した図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)に適った供給量で、エアーと水素ガスを燃料電池スタック100Dに供給する。よって、バイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bと、バイパス流路セルグループ340BGに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aとには、ほぼ同等の供給量でガス(エアーおよび水素ガス)が供給され、それぞれの電池セルユニットは発電する。そして、DC/DCコンバーター174は、燃料電池スタック100D全体での発電電力をモーター170に出力する。
その一方、図4で説明した一時的電圧低下運転(ステップS120)では、制御装置200は、流量調整弁400を開弁した上でバイパスエアー流量を調整する。これにより、バイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bでは、パイパス流路402を経て排気される分だけ、エアー供給量が少なくなる。つまり、バイパス流路セルグループ340BGに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについては、バイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bよりエアー供給量を多くする。こうしてエアー供給量が多くなった上記のそれぞれの電池セルユニット340Aでは、ガス流量の増加に伴って電流密度が大きくなることから、電流増加と電圧低下を引き起こす。つまり、本実施例の燃料電池スタック100Dは、一時的電圧低下運転において、バイパス流路セルグループ340BGに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについてのガス供給量を、これら電池セルユニット340Aの出力電圧がバイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bの出力電圧より低くなる側に調整することになる。
上記した第5実施例の燃料電池スタック100Dにあっても、この燃料電池スタック100Dにおける上記の電池セルユニット340Aについてだけ既述した一時的電圧低下を起こすようにできる。よって、既述した効果を第1実施例の燃料電池スタック100と同様に奏することができ、こうした効果を得るに当たっては、バイパス流路セルグループ340BGに属するそれぞれの電池セルユニット340Bについてのエアー供給量をパイパス流路402を介して変更するだけでよく、簡便である。
図13は第6実施例の燃料電池スタック100Eの概略構成を説明するためのブロック図、図14は燃料電池スタック100Eの概略構成を断面視して示す説明図である。この燃料電池スタック100Eは、上記の燃料電池スタック100Dと同様、エアー供給量をバイパス流路にて調整することで、既述した一時的電圧低下を起こす。
図13に示すように、燃料電池スタック100Eは、スタックほぼ中央において、電池セルユニット340Aをガスの流れに沿った上流側と下流側の電池セルユニット340Bで挟み、この電池セルユニット340Bを含む範囲をバイパス流路セルグループ340BGとする。電池セルユニット340Bは、図13〜図14に示すように、スタック外に延びたパイパス流路404を有する点でその構成が相違する。本実施例では、図14に示すように、電池セルユニット340Bにあっても、その有する電池セル350をシール部材410にて取り囲んで一体化させたシール部材一体型MEAとして備える。
上流側の電池セルユニット340Bは、電池セルユニット340Aと同様、供給側のエアー流路となる貫通孔344や排気側のエアー流路となる貫通孔345を備えるほか、貫通孔344から分岐してスタック外に延び、下流側の電池セルユニット340Bの貫通孔344に合流するパイパス流路404を有する。このパイパス流路404は、バイパス流路セルグループ340BGに属する上流側の電池セルユニット340Bと下流側の電池セルユニット340Bまでの電池セルユニット340A(以下、これら電池セルユニットをバイパス電池セルユニット340BCと称する)の貫通孔344を流れようとするガス(エアー)を、下流側にバイパスさせて持ち去ることで、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCのガス供給量を低減させる。
パイパス流路404には、流量調整弁400が配設され、この流量調整弁400は、制御装置200の制御を受けて、パイパス流路404を経て下流側に持ち去られるバイパスエアー流量を調整する。これにより、燃料電池スタック100Eは、流量調整弁400の調整を経て、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCへのエアー供給量を低減調整する。こうした流量調整弁400の調整がなされても、バイパス流路セルグループ340BGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aでは、調整以前とほぼ同じ供給量でエアーが供給される。また、バイパス流路セルグループ340BGより下流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aでは、調整以前よりバイパス流量分だけエアー供給量が増えることになる。
この第6実施例の燃料電池スタック100Eでは、図4で説明した通常運転(ステップS100)の間において、制御装置200は、流量調整弁400を閉弁制御した上で、既述した図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)に適った供給量で、エアーと水素ガスを燃料電池スタック100Eに供給する。よって、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCと、バイパス流路セルグループ340BGに属さない上流側および下流側のそれぞれの電池セルユニット340Aには、ほぼ同等の供給量でガス(エアーおよび水素ガス)が供給され、それぞれの電池セルユニットは発電する。そして、DC/DCコンバーター174は、燃料電池スタック100E全体での発電電力をモーター170に出力する。
その一方、図4で説明した一時的電圧低下運転(ステップS120)では、制御装置200は、流量調整弁400を開弁した上でバイパスエアー流量を調整する。これにより、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCでは、パイパス流路404を経て下流側にエアーがバイパスされる分だけ、エアー供給量が少なくなる。そして、バイパス流路セルグループ340BGより下流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについては、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCよりエアー供給量を多くする。こうしてエアー供給量が多くなった上記のそれぞれの電池セルユニット340Aでは、ガス流量の増加に伴って電流密度が大きくなることから、電流増加と電圧低下を引き起こす。つまり、本実施例の燃料電池スタック100Eは、一時的電圧低下運転において、バイパス流路セルグループ340BGより下流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについてのガス供給量を、これら電池セルユニット340Aの出力電圧がバイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCの出力電圧より低くなる側に調整することになる。
上記した第6実施例の燃料電池スタック100Eにあっても、この燃料電池スタック100Eにおける上記の電池セルユニット340Aについてだけ既述した一時的電圧低下を起こすようにできる。よって、既述した効果を第1実施例の燃料電池スタック100と同様に奏することができ、こうした効果を得るに当たっては、バイパス流路セルグループ340BGに属するバイパス電池セルユニット340BCについてのエアー供給量をパイパス流路404を介して変更するだけでよく、簡便である。
図15は第7実施例の燃料電池スタック100Fの概略構成を説明するためのブロック図、図16は燃料電池スタック100Fの概略構成を断面視して示す説明図である。この燃料電池スタック100Fは、セル内に設けた流量調整弁400にて、その上下流でのエアー供給量を調整することで、既述した一時的電圧低下を起こす点に特徴がある。
図15に示すように、燃料電池スタック100Fは、後端側ターミナルプレート332の側の電池セルユニット340Dに流量調整弁400を備え、この電池セルユニット340Dから下流側を流量調整セルグループ340DGとする。電池セルユニット340Dにあっても、その有する電池セル350をシール部材410にて取り囲んで一体化させたシール部材一体型MEAとして備える。
電池セルユニット340Dは、電池セルユニット340Aと同様、供給側のエアー流路となる貫通孔344や排気側のエアー流路となる貫通孔345を備えるほか、は、図16に示すように、その貫通孔344に流量調整弁400を有する。この流量調整弁400は、制御装置200の制御を受けて、電池セルユニット340Dとその下流側の電池セルユニット340A(以下、これら電池セルユニットを流調調整電池セルユニット340DCと称する)の貫通孔344を流れようとするガス(エアー)のガス供給量を低減調整する。これにより、流量調整セルグループ340DGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aでは、流量調整セルグループ340DGへのエアー流量が低減される分だけエアー供給量が増えることになる。流量調整弁400による調整前では、流量調整セルグループ340DGに属する流調調整電池セルユニット340DCと、流量調整セルグループ340DGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aとでは、ほぼ同じ供給量でエアーが供給される。
この第7実施例の燃料電池スタック100Fでは、図4で説明した通常運転(ステップS100)の間において、制御装置200は、流量調整弁400を開弁制御した上で、既述した図5の燃料電池スタック100のI−V特性における通常運転の際の運転ポイント(目標電流It/目標電圧Vt)に適った供給量で、エアーと水素ガスを燃料電池スタック100Fに供給する。よって、流量調整セルグループ340DGに属する流調調整電池セルユニット340DCと、流量調整セルグループ340DGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aには、ほぼ同等の供給量でガス(エアーおよび水素ガス)が供給され、それぞれの電池セルユニットは発電する。そして、DC/DCコンバーター174は、燃料電池スタック100E全体での発電電力をモーター170に出力する。
その一方、図4で説明した一時的電圧低下運転(ステップS120)では、制御装置200は、流量調整弁400を流量低減側に制御し、流量調整セルグループ340DGに流れようとするエアーの流量を低減調整する。これにより、流量調整セルグループ340DGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについては、流量調整セルグループ340DGに属する流調調整電池セルユニット340DCよりエアー供給量を多くする。こうしてエアー供給量が多くなった上記のそれぞれの電池セルユニット340Aでは、ガス流量の増加に伴って電流密度が大きくなることから、電流増加と電圧低下を引き起こす。つまり、本実施例の燃料電池スタック100Fは、一時的電圧低下運転において、流量調整セルグループ340DGより上流側で当該セルグループに属さないそれぞれの電池セルユニット340Aについてのガス供給量を、これら電池セルユニット340Aの出力電圧が流量調整セルグループ340DGに属する流調調整電池セルユニット340DCの出力電圧より低くなる側に調整することになる。
上記した第7実施例の燃料電池スタック100Fにあっても、この燃料電池スタック100Fにおける上記の電池セルユニット340Aについてだけ既述した一時的電圧低下を起こすようにできる。よって、既述した効果を第1実施例の燃料電池スタック100と同様に奏することができ、こうした効果を得るに当たっては流量調整セルグループ340DGに属する流調調整電池セルユニット340DCについてのエアー供給量を流量調整弁400を介して変更するだけでよく、簡便である。
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。