JP2013143969A - 植物における糖鎖構造の改変方法及びその植物体 - Google Patents

植物における糖鎖構造の改変方法及びその植物体 Download PDF

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Abstract

【課題】植物におけるN−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制させる方法、当該フコース修飾を減少、抑制した植物形質転換体等を提供する。
【解決手段】糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子の転写、翻訳を、posttranscriptional gene silencing(PTGS)、ウイルス誘導ジーンサイレンシング(VIGS)、又はtranscriptional gene silencing(TGS)により阻害し、植物細胞内におけるGDP−フコース量を減少させることにより、糖蛋白質糖鎖、糖脂質糖鎖、オリゴ糖、多糖等を含む糖鎖へのフコース修飾を減少・抑制させる。
【効果】アレルゲンとなり得るフコース修飾が除去された糖蛋白質等の生産が可能となり、植物で生産させた医療用糖蛋白質の臨床応用が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、糖蛋白質糖鎖、糖脂質糖鎖、オリゴ糖もしくは多糖を含む糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する植物における糖鎖構造の改変方法に関するものであり、更に詳しくは、糖ヌクレオチドの一種であるGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードするGMD遺伝子又はGER遺伝子の相同遺伝子断片を挿入した植物形質転換用ベクターを用いて植物体を形質転換させることにより、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する植物型のN−結合型糖鎖構造を改変する方法、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制された糖蛋白質を産生する植物形質転換体、その形質転換植物体を用いてフコース修飾の減少、抑制された糖蛋白質を合成する方法に関するものである。
糖鎖は、その化学的、物理的特性から、様々な機能を有している。特に、糖蛋白質の糖鎖は、該糖蛋白質を構成する蛋白質の安定性に寄与するだけでなく、蛋白質が糖鎖修飾を受けることによって、初めて機能することも知られている。多くの糖蛋白質は、蛋白質のアスパラギン残基に糖鎖が結合した、アスパラギン結合型糖鎖(以下、N−結合型糖鎖と記載することがある。)による修飾を受けている。
N−結合型糖鎖は、Man3GlcNAc2からなる共通のトリマンノシルコア構造を有するが、植物に由来する植物型のN−結合型糖鎖のコア糖鎖部分には、動物型には認められない植物特有のα−1,3−フコース、β−1,2−キシロース修飾が存在する(図1)。
これらの構造は、動物の生体内に投与した際に、アレルゲンになる可能性が指摘されており(非特許文献1)、血中等に直接投与する医療用糖蛋白質を、遺伝子組換え植物で生産した場合、アレルゲン性を除くために、その除去が必要となる。
植物型の糖鎖修飾は、植物細胞内において合成されたGDP−フコース及びUDP−キシロースが、ゴルジ体内において、α−1,3−フコース転移酵素、β−1,2−キシロース遺伝子により、N−結合型糖鎖へ付加されることで形成される。
これまでに、例えば、抗体組成物含有医薬(特許文献1)、ゲノムが改変された細胞(特許文献2)、抗体組成物を産生する細胞(特許文献3)、抗体組成物の製造方法(特許文献4)、が提案されている。これらの特許文献には、動物型N−結合型糖鎖のα−1,6−フコース付加を抑制するために、α−1,6−フコース転移酵素及びGDP−フコース合成に関与する酵素を抑制することが開示されているが、GMD遺伝子に関しては、動物細胞からレクチン耐性株を選抜したのみであり、植物における植物型糖鎖についての遺伝子操作による遺伝子抑制は行われていない。
また、これまでに、植物由来N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース、β−1,2−キシロース修飾抑制について報告されている。シロイヌナズナ(非特許文献2)、コケ(非特許文献3)、ウキクサ(非特許文献4)において、α−1,3−フコース転移酵素、β−1,2−キシロース遺伝子が抑制された植物体が、相同組換えや突然変異体の選抜により得られている。また、タバコにおいて、RNAi法により、各遺伝子が抑制された植物体が得られている(非特許文献5)。
一方、トリマンノシルコア構造に対し、非還元末端側にN−アセチルグルコサミンによって糖鎖が伸長した際に、植物においては、N−アセチルグルコサミンに対して、α−1,4−フコース修飾が頻繁になされる。
動物細胞等においては、当該N−アセチルグルコサミンに、β−1,4−ガラクトース等の修飾がなされることが多く、植物におけるα−1,4−フコース修飾は、β−1,4−ガラクトース修飾に競合する。そのため、植物において、動物型糖鎖修飾を有する糖蛋白質を生産する際には、α−1,4−フコース修飾も除去されることが望ましいと考えられる。
糖鎖にフコース修飾がなされるのは、GDP−フコースを、フコース供与体として、各種フコース転移酵素によって、糖鎖にフコース付加がなされることによる。GDP−フコースは、植物細胞内において、GDP−マンノースより、GDP−D−mannose−4,6−dehydratase(GMD)及びGDP−4−keto−6−deoxy−D−mannose−3,5−epimerase−4−reductase(GER)により合成される。
GMD遺伝子が破壊された植物体では、フコース合成ができなくなること、細胞壁多糖の構成糖が変化すること、また、N−結合型糖鎖にフコース修飾がなされない、ことが報告されている(非特許文献6、7)。しかし、上記報告は、突然変異体を選抜したものであり、これまで、植物において、GMD遺伝子等を標的として、植物体を形質転換させる遺伝子操作により、遺伝子発現の抑制を行った報告は無い。
植物由来N−結合型糖鎖には、動物型には見られない還元末端N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)へのα−1,3−フコース修飾(動物型ではα−1,6−フコース修飾)が存在するため、動物型糖鎖のα−1,6−フコース修飾を抑制する方法は、そのまま植物型糖鎖構造に適用することはできない。また、GMD遺伝子をノックアウトしたCHO細胞株についての報告もなされているが、動物細胞での例が、そのままゲノムが倍数体であることが多い植物に応用できるとは限らない。
現在、様々な医療用蛋白質は、微生物、昆虫細胞、動物細胞等を用いて生産されているが、これらの手法は、毒素等の混入の可能性、また、コスト面から、代替、補完する物質生産システムが求められており、その候補の一つとして、植物による物質生産システムの開発が世界各地で進められている。
植物による物質生産、特に、医療用糖蛋白質の生産においては、植物特有の糖鎖修飾の除去が、そのアレルゲン性から求められている。しかし、これまで報告されている知見は、動物型N−結合型糖鎖へのフコース付加を抑制するもの、動物細胞を用いたもの、突然変異体を選択したもの等に留まっているのが実情であり、当技術分野においては、植物において、遺伝子を標的としてウイルスベクター法及び形質転換を適用して、実際に、遺伝子発現を抑制した形質転換体により糖鎖へのフコース修飾を抑制する技術を確立することが強く要請されていた。
国際公開第WO2003/084596 A1 国際公開第WO2003/035741 A1 国際公開第WO2002/031140 A1 国際公開第WO2003/085118 A1
European Journal of Biochemistry 270 (2003) 1327−1337 FEBS Letters,561(2004)132−136 Plant Biotechnology Journal,5(2007)389−401 Nature Biotechnology,24(2006)1591−1597 Plant Biotechnology Journal,6(2008)392−402 Plant Journal,12(1997)335−345 Plant Physiology,119(1999)725−734
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、植物において、GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子を標的として、植物体を形質転換させることにより、その遺伝子発現の抑制を行うことを目標として鋭意研究を重ねた結果、GER遺伝子又はGMD遺伝子を標的として、ウイルスベクター法及び形質転換によって、植物において実際にその遺伝子発現を減少、抑制させ、フコース修飾を減少、抑制させた植物形質転換体を創出することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、植物における糖蛋白質である植物型のN−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース修飾を始めとする、糖鎖へのフコース修飾の抑制・除去の手段を提供することを目的とするものである。また、本発明は、植物における糖蛋白質である植物型のN−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース修飾を始めとする、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制させた植物形質転換体を提供することを目的とするものである。尚、ここで上げる糖鎖とは、糖蛋白質N−結合型糖鎖に限定されず、糖脂質糖鎖や、オリゴ糖、多糖等の糖鎖が含まれる。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)糖ヌクレオチドの一種であるGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を抑制する遺伝子断片を挿入した植物形質転換用ベクターを、植物体もしくは植物細胞に導入して該植物の形質転換を行うこと、あるいは、GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を抑制する遺伝子断片を挿入した植物ウイルスベクターを、植物体もしくは植物細胞に感染させることにより、GDP−フコース合成酵素遺伝子の発現を抑制して、植物における植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する糖鎖構造の改変方法であって、上記遺伝子断片として、上記酵素をコードする遺伝子のDNA配列、当該DNA配列の変異体、アレル、バリアント、又はホモログに相当するDNA配列、あるいは、当該遺伝子と50%以上の相同性を持つDNA配列を用いることを特徴とする糖鎖構造の改変方法。
(2)上記植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制が、植物の糖蛋白質糖鎖、糖脂質糖鎖、又は、オリゴ糖もしくは多糖を含む糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制である、前記(1)に記載の方法。
(3)糖ヌクレオチドの一種であるGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を、該遺伝子の転写、翻訳を、transcriptional gene silencing(TGS)、post−transcriptional gene silencing(PTGS)、又はウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)により阻害することにより、GDP−フコースの細胞内での合成を阻害し、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)上記GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、GDP−D−mannose−4,6−dehydratase(GMD)遺伝子、又は、GDP−keto−6−deoxymannose 3,5−epimerase/4−reductase(GER)遺伝子である、前記(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(5)上記遺伝子の抑制を誘導するためのベクターとして、植物ウイルスベクターを用いる、前記(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
(6)上記遺伝子の抑制を誘導するためのベクターとして、植物形質転換用ベクターを用いる、前記(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載の方法で得られた、GDP−フコース合成酵素遺伝子発現が抑制され、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された植物形質転換体、植物細胞、又は植物体。
(8)上記植物形質転換体、植物細胞、又は植物体が、植物細胞、植物体、又はその子孫である、前記(7)に記載の植物形質転換体、植物細胞、又は植物体。
(9)前記(8)に記載の植物細胞、植物体、又はその子孫より得られた糖蛋白質、糖ペプチド、糖脂質、又は糖鎖。
(10)前記(7)又は(8)に記載の植物形質転換体を宿主として、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された糖蛋白質を合成することを特徴とする糖蛋白質の合成方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、糖ヌクレオチドの一種であるGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を抑制する遺伝子断片を挿入した植物形質転換用ベクターを、植物体もしくは植物細胞に導入して該植物の形質転換を行うこと、あるいは、GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を抑制する遺伝子断片を挿入した植物ウイルスベクターを、植物もしくは植物細胞に感染させることにより、GDP−フコース合成酵素遺伝子の発現を抑制して、植物における植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する糖鎖構造の改変方法であって、上記遺伝子断片として、上記酵素をコードする遺伝子のDNA配列、当該DNA配列の変異体、アレル、バリアント、又はホモログに相当するDNA配列、あるいは、当該遺伝子と50%以上の相同性を持つDNA配列を用いることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記糖鎖構造の改質方法を用いて得られた、GDP−フコース合成酵素遺伝子発現が抑制され、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された植物形質転換体、植物細胞、又は植物体の点、また、上記植物細胞、植物体、又はその子孫より得られた糖蛋白質、糖ペプチド、糖脂質、又は糖鎖の点、また、上記植物形質転換体を宿主として、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された糖蛋白質を合成する糖蛋白質の合成方法の点、に特徴を有するものである。
本発明では、糖ヌクレオチドの一種であるGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を、該遺伝子の転写、翻訳を、transcriptional gene silencing(TGS)、post−transcriptional gene silencing(PTGS)、又はウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)により阻害することにより、GDP−フコースの細胞内での合成を阻害し、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制すること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明では、上記植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制が、植物の糖蛋白質糖鎖、糖脂質糖鎖、又は、オリゴ糖もしくは多糖を含む糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制であること、また、上記GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、GDP−D−mannose−4,6−dehydratase(GMD)遺伝子、又は、GDP−keto−6−deoxymannose 3,5−epimerase/4−reductase(GER)遺伝子であること、更に、上記遺伝子の抑制を誘導するためのベクターとして、植物ウイルスベクター又は植物形質転換用ベクターを用いること、を好ましい実施の態様としている。
本発明において、GDP−フコース合成に関与する酵素遺伝子の抑制は、GMD遺伝子もしくはGER遺伝子由来mRNAを標的とし破壊すること、当該遺伝子からのmRNA合成そのものを抑制すること、それにより、GMD蛋白質もしくはGER蛋白質の合成を阻害すること、により実施することができる。
植物細胞は、ある遺伝子が過剰に発現すると、その遺伝子の発現が抑制される機構を有しており、ウイルス等に対する防御機構として機能している。この防御機構では、過剰発現したmRNAを破壊することで、遺伝子発現を抑制している。本発明では、post−transcriptional gene silencing(PTGS)の手法、及びウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)の手法、を用いることができる。
次に、植物ウイルスベクターの一種である、キュウリモザイクウイルスベクター(CMVベクター)を用いたウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)による方法について詳しく説明する。この方法では、タバコの葉試料を用いて、total RNA試料を精製し、本RNA試料及びオリゴdTプライマーを用い、1本鎖cDNAを合成する。既知のGMD遺伝子配列を元に設計したプライマーNbMD(F)(配列番号1)及びNbMD(R)(配列番号2)を用いたPCRにより、GMD遺伝子の部分配列を単離する。
GMD遺伝子抑制用遺伝子断片を調製するために、単離したGMD遺伝子を鋳型として、制限酵素MluIサイトを有するプライマーCM−NbMD−F(配列番号3)及びCM−NbMD−R(配列番号4)を用いて、PCRを行う。得られたPCR産物について、制限酵素MluIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出し、遠心濾過することで得られる遺伝子断片を含む溶液より、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片を精製する。
GMD遺伝子抑制用CMVベクターを調製するために、例えば、CMVベクターとして、3種のプラスミドpCY1、pCY2(N)、pCY3が用いられる。このうち、pCY2(N)は、遺伝子断片を挿入するためのマルチクローニングサイトを有する。pCY2(N)を、制限酵素MluIで処理後、精製し、更に、DNA末端を脱リン酸化する。脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、pCY2(N)由来のバンド部分を切り出し、遠心濾過することで得られるpCY2(N)を含む溶液より、脱リン酸化ベクターpCY2(N)ΔPを得る。
単離した遺伝子を鋳型として、GMD遺伝子抑制用遺伝子断片を脱リン酸化pCY2(N)ΔPへ挿入する。GMD遺伝子抑制用遺伝子断片が挿入されたpCY2(N)プラスミド(GMD−pCY2(N))は、菌体より精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認し、GMD遺伝子断片がpCY2(N)へセンス方向に挿入されたもの(GMD−pCY2(N)S)、アンチセンス方向に挿入されたもの(GMD−pCY2(N)A)を得る。
接種用CMVベクターを調製するために、植物において、VIGSを誘導するには、ウイルスを植物体に感染させる必要がある。キュウリモザイクウイルスは、RNAウイルスであるため、RNAを、植物体に接種する。GMD遺伝子断片が挿入されたGMD−pCY2(N)S及びpCY1、pCY2(N)、pCY3を鋳型として、N.benthamianaへの接種のためのRNA合成を行う。環状プラスミドであるpCY1、GMD−pCY2(N)S、pCY3を直鎖化するために、pCY1、pCY2(N)及びGMD−pCY2(N)Sは、NotI処理、pCY3は、EcoRI処理に供し、直鎖化DNAを得る。
RNA合成は、直鎖化DNAを鋳型として、in vitro転写により行う。また、Ribo mG Cap Analog(Promega)を反応溶液中に加えることで、キャップ構造を有するRNAの合成を行う。反応終了後、DNA分解酵素処理により、鋳型DNAを分解し、フェノール処理及びエタノール沈殿により、接種用RNAを精製する。接種用RNAは、−80℃で接種直前まで保存する。
GMD遺伝子抑制用CMVベクターをN.benthamianaへ接種するために、pCY1、pCY3に由来するRNAの混合溶液に対し、GMD−pCY2(N)SもしくはGMD−pCY2(N)Aに由来するRNA溶液を混合し、接種用のRNA溶液を調製する。同様に、ネガティブコントロールとして、pCY1、pCY2(N)、pCY3に由来するRNA溶液を混合し、接種用のRNA溶液を調製する。
播種後約1ヶ月のN.benthamianaの展開葉に、RNA溶液を滴下し、手でRNA溶液を葉の全面に塗布することで、CMVベクターを感染させる。接種後3週目に葉試料を採取し、植物型糖鎖修飾抑制効果を検討する。葉試料を用いて、植物由来N−結合型糖鎖を調製する。糖鎖試料は、超純水に溶解し、MALDI−TOF−MS分析に用いる。
MALDI−TOF−MSによる植物型糖鎖修飾抑制効果の評価法は、以下の通りである。1μlの糖鎖試料溶液と0.5μlの2,5−Dihydroxybenzooic Acid(DHB)水溶液(5mg/ml)をMTP AnchorChipTM 600/384 T Fプレート(ブルカーダルトニクス)上のターゲットにおいて混合し、風乾する。測定は、Autoflex II TOF/TOF(ブルカーダルトニクス、reflectronモード、positive ion モード)で行い、観測された各糖鎖のピーク面積の割合(%)を、「糖鎖Aのピーク面積の割合(%)=(糖鎖Aのピーク面積/全糖鎖ピーク面積)×100」、の式により算出する。ウイルスベクター未接種及び接種植物体由来糖鎖試料において、各糖鎖の割合を比較し、植物型糖鎖修飾抑制効果を評価する。
MALDI−TOF−MSによる植物型糖鎖修飾抑制効果として、GMD遺伝子抑制用CMVベクターを接種した植物体において、N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコースの修飾が約70%から20%へと低下することが観察される。
N.benthamianaからRNA試料を調製するために、ウイルス未接種株、CMVベクター接種株(抑制用遺伝子の挿入は無し)、GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株よりウイルス接種後、3週目に葉試料を採取し、それぞれの葉試料を用いて、total RNAを精製する。
RT−PCRによるGMD遺伝子の発現様式の評価を行うために、total RNA試料及びオリゴdTプライマーを用い、1本鎖cDNAを合成する。本cDNA溶液を試料として、PCRを行う。GMD遺伝子用プライマーとしては、NbMD(F)(配列番号1)及びNbMD(R)(配列番号2)を用いる。また、elongation factor−1α(EF−1α)遺伝子由来mRNAを内部標準とし、プライマーEF−1−F(配列番号5)及びEF−1−R(配列番号6)を用いて、その部分配列を増幅する。GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株では、未接種株に比べ、GMD遺伝子由来mRNA量の顕著な減少が認められる。
i cycler(Bio−Rad)及びiQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad)を用いたReal−time PCRを行い、GMD遺伝子由来mRNA量を概算すると、GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株では、未接種株に比べ、10%以下となり、その顕著な減少が認められる。
これから、N.benthamiana由来GMD遺伝子を組み込んだCMVベクターよるVIGS誘導で、植物由来糖蛋白質N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース修飾が抑制可能であることが分かる。これは、GMD遺伝子抑制用CMVベクター感染により誘導されたVIGSにより、GMD遺伝子由来mRNAが破壊された結果、植物体中でのGMD蛋白質が減少し、α−1,3−フコース転移酵素へのフコース供与体であるGDP−フコースの合成が阻害されたためと考えられる。
次に、タバコ植物体を形質転換することでPTGSを誘導する方法について詳しく説明する。GMD遺伝子抑制用遺伝子断片を調製するために、単離したGMD遺伝子を鋳型として、制限酵素サイトを有するプライマーペアを作製し、Nb−iMD−F(Xba)(配列番号7)及びNb−iMD−R(Bam)(配列番号8)、Nb−iMD−F(Sac)(配列番号9)及びNb−iMD−R(Sma)(配列番号10)を用いたPCRにより、約400bpの遺伝子断片NbiMD(Xba−Bam)及びNbiMD(Sma−Sac)を得る。
NbiMD(Xba−Bam)について、制限酵素XbaI及びBamHIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出し、ゲル切片を遠心濾過することで得られる遺伝子断片を含む溶液より、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片NbiMD(X−B)を得る。NbiMD(Sma−Sac)について、制限酵素SmaI及びSacIで処理後、NbiMD(Xba−Bam)と同様に処理し、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片NbiMD(S−S)を得る。
イントロン配列を単離するために、Arabidopsis thaliana葉試料より、DNA試料を精製する。本DNA試料より、既知のβ−1,2−キシロース転移酵素遺伝子配列(Accession number NM124932)を元に設計したプライマーAtX(F)(配列番号11)及びAtX(R)(配列番号12)を用いたPCRにより、β−1,2−キシロース転移酵素遺伝子を単離する。
単離した遺伝子を鋳型として、AtXylt−int1(F)(配列番号13)及びAtXylt−int1(R)(配列番号14)により、イントロン部分を増幅する。増幅したイントロン部分DNAを、鋳型として、制限酵素サイト付きプライマーAtXTint1−F(Bam)(配列番号15)及びAtXTint1−R(Sma)(配列番号16)を用い、A.thalianaβ−1,2−キシロース転移酵素遺伝子に由来するイントロン配列であるAtXTint1(Bam−Sma)を得る。
AtXTint1(Bam−Sma)について、制限酵素BamHI及びSmaIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出し、ゲル切片を遠心濾過することで得られる遺伝子断片を含む溶液より、ベクターへ挿入するイントロン配列AtXTint1(B−S)を得る。
植物形質転換用ベクターpBE2113からGUS遺伝子を削除するために、植物形質転換用ベクターであるpBE2113を、制限酵素SmaIとSacIで処理後、精製し、更に、DNA末端を脱リン酸化する。脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片を遠心濾過することで得られるDNA溶液より、GUS遺伝子を削除した遺伝子断片 pBE2113ΔGUSを得る。
GMD遺伝子抑制用植物形質転換用ベクターGMDinv−pBE2113を調製するために、pBE2113ΔGUSに対し、GMD遺伝子断片NbiMD(S−S)を挿入する。GMD遺伝子抑制用遺伝子断片が挿入されたベクターGMD−pBE2113は、菌体より精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認する。
GMD−pBE2113を、制限酵素BamHIとSmaIで処理後、精製し、更に、DNA末端を脱リン酸化する。脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、GMD−pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片を遠心濾過することで得られるDNA溶液より、GMD−pBE2113ΔPを精製する。
GMD−pBE2113ΔPに対し、イントロン配列AtXTint1(B−S)を挿入する。イントロン配列AtXTint1(B−S)が挿入されたベクターINT−GMD−pBE2113は、菌体より精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認する。
INT−GMD−pBE2113を、制限酵素XbaIとBamHIで処理後、精製し、更に、DNA末端を脱リン酸化する。脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、INT−GMD−pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片を遠心濾過することで得られるDNA溶液より、INT−GMD−pBE2113ΔPを精製する。
INT−GMD−pBE2113ΔPに対し、GMD遺伝子断片NbiMD(X−B)を挿入する。GMD遺伝子断片NbiMD(X−B)が挿入されたベクターGMDinv−pBE2113は、菌体より精製後、挿入遺伝子断片のシーケンス解析し、GMD遺伝子断片がイントロン配列をはさみ、逆反復配列を形成していることを確認する。
タバコNicotiana benthamianaを形質転換するために、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株を用い、リーフディスク法により行う。タバコの葉からリーフディスクをコルクポーラーにより切り抜き、GMDinv−pBE2113を有するAgrobacterium tumefacience LBA4404株の菌液に浸して、MS寒天培地上で共存培養して、タバコ葉にAgrobacteriumを感染させる。
カナマイシンとカルベニシリンを含むMS液体培地でリーフディスクを洗浄することで、Agrobacterium菌体を除去する。リーフディスクは、これら抗生物質を加えた再分化用MS寒天培地上で培養し、形質転換タバコのシュートを得る。シュートは、カナマイシン及びカルベニシリンを含む発根培地において培養し、育成する。
MALDI−TOF−MSにより、植物型糖鎖修飾抑制効果を評価するために、得られた形質転換植物体より、N−結合型糖鎖を精製し、MALDI−TOF−MSによる糖鎖構造解析を行い、フコース修飾抑制の程度を評価する。MDi−11株において、N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコースの修飾が70%から5%へと低下することが観察される。
RT−PCRによりGMD遺伝子の発現様式を評価するために、total RNA試料及びオリゴdTプライマーを用い、1本鎖cDNAを合成する。本cDNA溶液を試料として、PCRを行う。GMD遺伝子用プライマーとしては、NbMD(F)(配列番号1)及びNbMD(R)(配列番号2)を用いる。また、elongation factor−1α遺伝子由来mRNAを内部標準とし、プライマーEF−1−F(配列番号5)及びEF−1−R(配列番号6)を用いて、その部分配列を増幅する。形質転換タバコでは、非形質転換タバコに比べ、GMD遺伝子由来mRNA量の顕著な減少が認められる。
本発明では、植物の遺伝子発現抑制機構を利用して、遺伝子発現を抑制する手法として、PTGS法、VIGS法を利用することが可能である。抑制したい遺伝子と相同な遺伝子配列を植物細胞内で過剰に発現させることで、特定の遺伝子の抑制が可能となる。PTGS及びVIGSを誘導する方法は、抑制したい遺伝子と相同な遺伝子配列を植物細胞内で発現可能な方法であれば良く、形質転換やウイルスベクターを利用する等の方法を利用することができる。
本発明では、上記遺伝子の抑制を誘導するためのベクターとして、植物ウイルスベクター、例えば、CMVベクター(Plant Biotechnol.J.,2007,Nov;5(6):778−90)、tobacco rattle virus(J.Biol.Chem.,2006,May 12;281(19):13708−16、The Plant Journal(2001)25(2),237−245)、Potatoウイルスベクター(Plant Physiology,April 2004,Vol.134,pp.1308)、また、植物形質転換用ベクター、例えば、pBE2113(Genetics,Vol.160,343−352,January 2002)、pKANNIBAL(BMC Biotechnol.,2008,Apr.3;8:36)、pBE2113及びpHELLSGATE8(Plant Physiology,November 2005,Vol.139,pp.1175)、pBI121(Plant Physiology,July 2001,Vol.126,pp.965)、各種形質転換用ベクター(Journal of Integrative Plant Biology 2007,49(4):556−567)、等を用いることができる。本発明において、植物形質転換用ベクター及び植物ウイルスベクターとしては、適宜のプラスミドベクター、ウイスルベクターを使用することが可能である。
植物において、主に、当該遺伝子のプロモーター領域がメチル化される転写抑制型[transcriptional gene silencing(TGS)]の遺伝子の不活性化も行われる。TGSにおいては、例えば、抑制したい遺伝子のプロモーター領域を含むDNA配列をそのまま、もしくは逆反復配列を形成するように、植物細胞内で過剰に発現させることで、誘導が可能である(EMBO Journal 19(2000)5194−5201等)。
本発明では、GMD遺伝子やGER遺伝子を抑制するための遺伝子配列としては、GMD蛋白質もしくはGER蛋白質そのものをコードする遺伝子配列、例えば、N.benthamianaのGMD遺伝子(部分)配列(NCBI、Accession Number:CN747648、CN747739、U81805)、Arabidopsi thalianeのGMD遺伝子配列(NCBI、Accession Number:U81805、NM 126026、NM 114976)、等を用いることができる。また、GMD蛋白質もしくはGER蛋白質に機能的に類似した蛋白質をコードするDNA配列、例えば、変異体、アレル、バリアント、ホモログ等、また、GMD遺伝子やGER遺伝子をコードするDNA配列と50%以上の相同性を持つDNA配列、更に、メチル化されることによって、当該遺伝子の転写を抑制可能なDNA配列、等を用いることができる。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)植物における糖蛋白質N−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制して植物型糖鎖構造の改変方法を提供することができる。
(2)糖蛋白質N−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制させた植物形質転換体を調製し、提供することができる。
(3)上記植物形質転換体を宿主として利することにより糖蛋白質の糖鎖構造を改変した糖蛋白質を合成することが可能となる。
(4)本発明の植物形質転換体を利用することで、生体内に投与した際にアレルゲンになる可能性がある植物特有のフコース修飾を減少、抑制した糖蛋白質を生産することが可能となる。
(5)遺伝子組換え植物で、アレルゲン性を低下させた医療用糖蛋白質を生産し、提供することが可能となる。
植物型糖鎖と動物型糖鎖における糖蛋白N−結合型糖鎖修飾の相違点を示す。植物型では、α−1,3−フコース、β−1,2−キシロース修飾が存在する。 植物型糖鎖修飾抑制に用いるキュウリモザイクウイルス(CMV)ベクターのpCY1、pCY2(N)、pCY3を示す。 植物体におけるGMD遺伝子抑制用CMVベクターによるN−結合型糖鎖へのフコース修飾抑制効果を示す。 RT−PCRによる各ウイルスベクター接種植物体におけるGMD遺伝子発現様式の解析結果を示す。 Real−time PCRによるGMD遺伝子由来mRNAの存在比を示す。 GMD遺伝子抑制用に設計した植物形質転換用ベクターGMDinv−pBE2113を示す。 形質転換体よりN−結合型糖鎖を精製し、MALDI−TOF−MSによる糖鎖構造解析を行いフコース修飾抑制の程度を評価した結果を示す。 RT−PCRによるGMD遺伝子抑制組換え植物体におけるGMD遺伝子発現様式の解析結果を示す。
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の好適な例を示すものであり、植物種や、PTGS、VIGS、及びTGSを誘導する手法等において、本発明の範囲を限定するものではない。
本実施例では、植物ウイルスベクターの一種である、キュウリモザイクウイルスベクター(CMVベクター)を用いたウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)により、糖鎖へのフコース修飾の抑制を行った。
(1)タバコNicotiana benthamianaからのGMD遺伝子の単離
タバコの一種であるNicotiana benthamiana葉試料を、液体窒素中で磨砕し、RNeasy Plant Mini Kit(Quiagen社)により、total RNA試料を精製した。本RNA試料及びオリゴdTプライマーを用い、Ready−To−Go RT−PCR Beads(GEヘルスケア)により、1本鎖cDNAを合成した。
既知のGMD遺伝子配列(Accession number CN747648及びCN747739)を元に設計したプライマーNbMD(F)(配列番号1:5’−AAGTAGCTCTGATCACCGGC)及びNbMD(R)(配列番号2:5’−TAACTCAATATCCTCGTCCACC)を用いたPCRにより、GMD遺伝子の部分配列を単離した。PCRには、KOD−plus− Ver.2(TOYOBO)を用い、94℃で3分処理後、98℃(30秒)→56℃(15秒)→68℃(2分)のサイクルを35回繰り返した。
(2)GMD遺伝子抑制用遺伝子断片の調製
単離したGMD遺伝子を鋳型として、制限酵素MluIサイトを有するプライマーCM−NbMD−F(配列番号3:5’−TAGTTAACGCGTAGTTCTTGGAGATGGCATTCAG)及びCM−NbMD−R(配列番号4:5’−TAGTTAACGCGTTAACTCAATATCCTCGTCCACC)を用い、KOD−plus−Ver.2(TOYOBO)によるPCRにより、約200bpの遺伝子断片を得た。PCRは、94℃で3分処理後、98℃(30秒)→56℃(15秒)→68℃(1分)のサイクルを35回繰り返した。
得られたPCR産物について、制限酵素MluIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出した。ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により遠心濾過することで(5,000×g、5分)、遺伝子断片を含む溶液を得た。本溶液より、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片を精製した。
(3)GMD遺伝子抑制用CMVベクターの調製
本実施例で用いたCMVベクターは、3種のプラスミドpCY1、pCY2(N)、pCY3より構成され、このうち、pCY2(N)は、遺伝子断片を挿入するためのマルチクローニングサイトを有する(図2及び特開2005−013164号公報)。
pCY2(N)を、制限酵素MluIで処理後、精製し、更に、E.coli Alkaline Phosphatase(TOYOBO)により、DNA末端を脱リン酸化した。脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、pCY2(N)由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により遠心濾過することで(5,000×g、5分)、pCY2(N)を含む溶液を得た。本溶液より、脱リン酸化ベクターpCY2(N)ΔPを得た。
単離した遺伝子を鋳型として、GMD遺伝子抑制用遺伝子断片の脱リン酸化pCY2(N)ΔPへの挿入は、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ)により行った。ライゲーション反応液は、そのままEscherichia coli DH5αコンピテントセル(タカラバイオ)の形質転換に用いた。
GMD遺伝子抑制用遺伝子断片が挿入されたpCY2(N)プラスミド(GMD−pCY2(N))は、菌体よりWizard Plus Minipreps DNA Purification System(Promega)により精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認し、GMD遺伝子断片がpCY2(N)へセンス方向に挿入されたもの(GMD−pCY2(N)S)、及びアンチセンス方向に挿入されたもの(GMD−pCY2(N)A)を得た。
(4)接種用CMVベクターの調製
植物において、VIGSを誘導するには、ウイルスを植物体に感染させる必要がある。キュウリモザイクウイルスは、RNAウイルスであるため、RNAを植物体に接種することとなる。
GMD遺伝子断片が挿入されたGMD−pCY2(N)S及びpCY1、pCY2(N)、pCY3を鋳型として、N.benthamianaへの接種のためのRNA合成を行った。まず、環状プラスミドであるpCY1、GMD−pCY2(N)S、pCY3を直鎖化するために、pCY1、pCY2(N)及びGMD−pCY2(N)Sは、NotI処理、pCY3は、EcoRI処理に供し、直鎖化DNAを得た。
RNA合成は、直鎖化DNAを鋳型として、RiboMAX Large Scale RNA Production System−T7(Promega)によるin vitro転写により行った。また、Ribo m7G Cap Analog(Promega)を反応溶液中に加えることで、キャップ構造を有するRNAの合成を行った。
反応終了後、DNA分解酵素処理により、鋳型DNAを分解し、フェノール処理及びエタノール沈殿により、接種用RNAを精製した。接種用RNAは、RNase free水に溶解後、−80℃で接種直前まで保存した。また、RNA分解を極力抑えるため、接種用RNAの合成は、接種当日に行った。
(5)GMD遺伝子抑制用CMVベクターのN.benthamianaへの接種
N.benthamianaへのRNAの接種(CMVベクターの感染)は、以下のように行った。pCY1、pCY3に由来するRNAの混合溶液に対し、GMD−pCY2(N)SもしくはGMD−pCY2(N)Aに由来するRNA溶液を混合し、接種用のRNA溶液を調製した。同様に、ネガティブコントロールとして、pCY1、pCY2(N)、pCY3に由来するRNA溶液を混合し、接種用のRNA溶液を調製した。
播種後約1ヶ月のN.benthamianaの展開葉2枚に、少量のカーボランダム(ナカライテスク)を散布し、そこに、RNA溶液をピペットマンにより滴下し、ゴム手袋を着用した手で、RNA溶液を葉の全面に塗布することで、CMVベクターを感染させた。接種後3週目に、葉試料を採取し、植物型糖鎖修飾抑制効果を検討した。
(6)植物由来N−結合型糖鎖の調製法
植物由来N−結合型糖鎖の調製は、以下のように行った。葉試料50mgを、乳鉢・乳棒を用い磨砕し、磨砕物を2mlの100mM Tris−HClバッファー(pH7.5)へ懸濁した。懸濁液を3,000rpmで10分間遠心後、上澄をミニザルトシリンジフィルター(0.2μm、Sartorius)で濾過した。
濾液に、600μlの50%トリクロロ酢酸を滴下・混合後、4℃で一晩静置した。試料溶液を3,000rpmで10分間遠心することで、蛋白質を沈殿させた。沈殿した蛋白質は、90%アセトン水溶液で3回洗浄後、1.5mlエッペンドルフチューブにおいて、減圧乾固した。乾固した蛋白質は、50μlの脱イオン水を加えた後に、100℃で10分間処理した。
本溶液に、50μlの0.02M HClを加え、蛋白質を再懸濁した。懸濁液に、ペプシン(5mg/ml(0.01M HCl))を20μl加え、37℃で2時間静置した。その後、更に、前記ペプシン溶液を20μl加え、37℃で一晩静置した。ペプシン処理液を、1Mアンモニア水溶液で中和後、100℃で10分間処理によりペプシンを失活させた。
試料溶液を、16,000rpmで10分間遠心し、上澄を新たな1.5mlエッペンドルフチューブに移し、減圧乾固した。乾固物を47.5μlの0.5Mクエン酸バッファー(pH5.0)に懸濁後、0.1Mクエン酸バッファー(pH5.0)に溶解したグリコペプチダーゼA(0.05mU/2.5μl、生化学工業)を加え、37℃で一晩静置した。
グリコペプチダーゼA処理液に、50μlの1M Tris−HClバッファー(pH8.0)を加え、100℃で10分間処理に供した。試料溶液を16,000rpmで10分間遠心し、上澄をDowex50(H+)カラム、Dowex1(CO3 2-)カラム及びカーボグラフカラムで順次処理し、精製・脱塩後、減圧乾固し、糖鎖試料を得た。糖鎖試料は、10μlの超純水に溶解し、MALDI−TOF−MS分析に用いた。
(7)MALDI−TOF−MSによる植物型糖鎖修飾抑制効果の評価法
1μlの糖鎖試料溶液と、0.5μlの2,5−Dihydroxybenzooic Acid(DHB)水溶液(5mg/ml)を、MTP AnchorChipTM 600/384 T Fプレート(ブルカーダルトニクス)上のターゲットにおいて混合し、風乾した。測定は、Autoflex II TOF/TOF(ブルカーダルトニクス、reflectronモード、positive ion モード)で行い、観測された各糖鎖のピーク面積の割合(%)を以下の式で算出した。
糖鎖Aのピーク面積の割合(%)=(糖鎖Aのピーク面積/全糖鎖ピーク面積)×100
ウイルスベクター未接種及び接種植物体由来糖鎖試料において、各糖鎖の割合を比較し、植物型糖鎖修飾抑制効果を評価した。
(8)MALDI−TOF−MSによる植物型糖鎖修飾抑制効果の評価
GMD遺伝子抑制用CMVベクターを接種した植物体において、N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコースの修飾が、約70%から20%へと低下することが観察された(図3及び表1)。
Figure 2013143969
(9)N.benthamianaからのRNA試料の調製
ウイルス未接種株、CMVベクター接種株(抑制用遺伝子の挿入は無し)、GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株より、ウイルス接種後3週目に、葉試料を採取し、それぞれの葉試料を、液体窒素中で磨砕し、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)によりtotal RNAを精製した。
(10)RT−PCRによるGMD遺伝子の発現様式の評価
total RNA試料を5μg及びオリゴdTプライマーを用い、Ready−To−Go RT−PCR Beads(GEヘルスケア)により、1本鎖cDNAを合成した。本cDNA溶液1μlを試料として、GoTaq Green Master Mix(Promega)及びT−personal Thermal Cycler(Biometra)を用いたPCRを行った。PCRは、94℃で3分処理後、94℃(30秒)→56℃(30秒)→72℃(1分30秒)のサイクルを35回繰り返した。
GMD遺伝子用プライマーとしては、NbMD(F)(配列番号1:5’−AAGTAGCTCTGATCACCGGC)及びNbMD(R)(配列番号2:5’−TAACTCAATATCCTCGTCCACC)を用いた。また、elongation factor−1α(EF−1α)遺伝子由来mRNAを内部標準とし、プライマーEF−1−F(配列番号5:5’−GATTGGTGGTATTGGAACTGTCC)及びEF−1−R(配列番号6:5’−GAGCTTCGTGGTGCATCTC)を用いて、その部分配列を増幅した。その結果、GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株では、未接種株に比べ、GMD遺伝子由来mRNA量の顕著な減少が認められた(図4)。
i cycler(Bio−Rad)及びiQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad)を用いたReal−time PCRを行った。GMD遺伝子由来mRNA量を概算した結果、GMD遺伝子抑制用CMVベクター接種株では、未接種株に比べ10%以下となり、その顕著な減少が認められた(図5)。
以上の結果から、N.benthamiana由来GMD遺伝子を組み込んだCMVベクターよるVIGS誘導で、植物由来糖蛋白質N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース修飾が抑制可能であることが明らかとなった。これは、GMD遺伝子抑制用CMVベクター感染により誘導されたVIGSにより、GMD遺伝子由来mRNAが破壊された結果、植物体中でのGMD蛋白質が減少し、α−1,3−フコース転移酵素へのフコース供与体であるGDP−フコースの合成が阻害されたためと推定される。
本実施例では、タバコ植物体を形質転換することで、PTGSを誘導することにより、糖鎖へのフコース修飾の抑制を行った。
(1)GMD遺伝子抑制用遺伝子断片の調製
単離したGMD遺伝子を鋳型として、制限酵素サイトを有するプライマーペアとして、Nb−iMD−F(Xba)(配列番号7:TAGTTATCTAGACAATCATGAATCTCCTAGGCGG)及びNb−iMD−R(Bam)(配列番号8:TAGTTAGGATCCTAACTCAATATCCTCGTCCACCATC)、Nb−iMD−F(Sac)(配列番号9:TAGTTAGAGCTCCAATCATGAATCTCCTAGGCGG)及びNb−iMD−R(Sma)(配列番号10:TAGTTACCCGGGTAACTCAATATCCTCGTCCACCATC)を用い、KOD−plus−Ver.2(TOYOBO)を用いたPCRにより、約400bpの遺伝子断片NbiMD(Xba−Bam)及びNbiMD(Sma−Sac)を得た。PCRは、94℃で3分処理後、98℃(30秒)→56℃(15秒)→68℃(1分30秒)のサイクルを35回繰り返した。
NbiMD(Xba−Bam)について、制限酵素XbaI及びBamHIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出した。ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により、遠心濾過することで(5,000×g、5分)、遺伝子断片を含む溶液を得た。本溶液より、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片NbiMD(X−B)を得た。
NbiMD(Sma−Sac)について、制限酵素SmaI及びSacIで処理後、NbiMD(Xba−Bam)と同様に処理し、ベクターへ挿入するGMD遺伝子断片NbiMD(S−S)を得た。
(2)イントロン配列の単離
Arabidopsis thaliana葉試料より、DNeasy Plant Mini Kit(Quiagen社)により、DNA試料を精製した。本DNA試料より、既知のβ−1,2−キシロース転移酵素遺伝子配列(Accession number NM124932)を元に設計したプライマーAtX(F)(配列番号11:5’−ATGAGTAAACGGAATCCGAAGATTCTG)及びAtX(R)(配列番号12:5’−TTAGCAGCCAAGGCTCTTCATG)を用いたPCRにより、β−1,2−キシロース転移酵素遺伝子を単離した。PCRには、KOD−plus−Ver.2(TOYOBO)を用い、94℃で3分処理後、98℃(30秒)→56℃(15秒)→68℃(2分)のサイクルを35回繰り返した。
単離した遺伝子を鋳型として、AtXylt−int1(F)(配列番号13:5’−GT GAAGAGGTTT GTGCATTTTA CTCATTG)及びAtXylt−int1(R)(配列番号14:5’−TCCACCCACTGCAGCCAAACAAAAAG)により、イントロン部分を増幅した。
増幅したイントロン部分DNAを鋳型として、制限酵素サイト付きプライマーAtXTint1−F(Bam)(配列番号15:5’−TAGTTAGGATCC GAGGTTT GTGCATTTTA CTCATTGATC TG)及びAtXTint1−R(Sma)(配列番号16:5’−TAGTTACCCGGG CCACTGCAGCCAAACAAAAAGC)を用い、A.thalianaβ−1,2−キシロース転移酵素遺伝子に由来するイントロン配列であるAtXTint1(Bam−Sma)を得た。
AtXTint1(Bam−Sma)について、制限酵素BamHI及びSmaIで処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、遺伝子断片バンド部分を切り出した。ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により、遠心濾過することで(5,000×g、5分)、遺伝子断片を含む溶液を得た。本溶液より、ベクターへ挿入するイントロン配列AtXTint1(B−S)を得た。
(3)植物形質転換用ベクターpBE2113からのGUS遺伝子の削除
植物形質転換用ベクターであるpBE2113を、制限酵素SmaIとSacIで処理後精製し、更に、E.coli Alkaline Phosphatase(TOYOBO)により、DNA末端を脱リン酸化した。
脱リン酸化物を精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により、遠心濾過することで(5,000×g、5分)、DNA溶液を得た。本溶液より、GUS遺伝子を削除した遺伝子断片pBE2113ΔGUSを得た。
(4)GMD遺伝子抑制用植物形質転換用ベクターGMDinv−pBE2113の調製
pBE2113ΔGUSに対し、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ)により、GMD遺伝子断片NbiMD(S−S)を挿入した。ライゲーション反応液は、そのままEscherichia coli DH5αコンピテントセル(タカラバイオ)の形質転換に用いた。GMD遺伝子抑制用遺伝子断片が挿入されたベクターGMD−pBE2113は、菌体より、Wizard Plus Minipreps DNA Purification System(Promega)により、精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認した。
GMD−pBE2113を、制限酵素BamHIとSmaIで処理後、精製し、更に、E.coli Alkaline Phosphatase(TOYOBO)により、DNA末端を脱リン酸化した。脱リン酸化物を精製後アガロースゲル電気泳動に供し、GMD−pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により、遠心濾過することで(5,000×g、5分)、DNA溶液を得た。本溶液より、GMD−pBE2113ΔPを精製した。
GMD−pBE2113ΔPに対し、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ)により、イントロン配列AtXTint1(B−S)を挿入した。ライゲーション反応液は、そのままEscherichia coli DH5αコンピテントセル(タカラバイオ)の形質転換に用いた。イントロン配列AtXTint1(B−S)が挿入されたベクターINT−GMD−pBE2113は、菌体より、Wizard Plus Minipreps DNA Purification System(Promega)により、精製後、挿入遺伝子断片のシーケンスを確認した。
INT−GMD−pBE2113を、制限酵素XbaIとBamHIで処理後、精製し、更に、E.coli Alkaline Phosphatase(TOYOBO)により、DNA末端を脱リン酸化した。脱リン酸化物を、精製後、アガロースゲル電気泳動に供し、INT−GMD−pBE2113由来のバンド部分を切り出し、ゲル切片をウルトラフリーMCフィルターユニット(Millipore)により、遠心濾過することで(5,000×g、5分)、DNA溶液を得た。本溶液より、INT−GMD−pBE2113ΔPを精製した。
INT−GMD−pBE2113ΔPに対し、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ)により、GMD遺伝子断片NbiMD(X−B)を挿入した。ライゲーション反応液は、そのままEscherichia coli DH5αコンピテントセル(タカラバイオ)の形質転換に用いた。GMD遺伝子断片NbiMD(X−B)が挿入されたベクターGMDinv−pBE2113(図6)は、菌体より、Wizard Plus Minipreps DNA Purification System(Promega)により、精製後、挿入遺伝子断片のシーケンス解析し、GMD遺伝子断片がイントロン配列をはさみ、逆反復配列を形成していることを確認した。
(5)タバコNicotiana benthamianaの形質転換
タバコ(N.benthamiana)の形質転換は、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株を用い、リーフディスク法により行った。殺菌処理を行ったタバコの葉から、直径約1cmのリーフディスクを、コルクポーラーにより切り抜き、GMDinv−pBE2113を有するAgrobacterium tumefacience LBA4404株の菌液に浸して、2日間MS寒天培地上で共存培養(23℃、16時間照明)して、タバコ葉にAgrobacteriumを感染させた。
3日目に、5mg/lカナマイシンと500mg/lカルベニシリンを含むMS液体培地でリーフディスクを洗浄することで、Agrobacterium菌体を除去した。リーフディスクは、これら抗生物質を加えた再分化用MS寒天培地上で培養し、形質転換タバコのシュートを得た。シュートは、カナマイシン及びカルベニシリンを含む発根培地において培養し、十分に発根後、温室において育成した。
(6)MALDI−TOF−MSによる植物型糖鎖修飾抑制効果の評価
得られた形質転換植物体より、N−結合型糖鎖を精製し、MALDI−TOF−MSによる糖鎖構造解析を行い、フコース修飾抑制の程度を評価した。その結果、MDi−11株において、N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコースの修飾が70%から5%へと低下することが観察された(図7及び表2)。
Figure 2013143969
(7)RT−PCRによるGMD遺伝子の発現様式の評価
total RNA試料を3μg及びオリゴdTプライマーを用い、Ready−To−Go RT−PCR Beads(GEヘルスケア)により、1本鎖cDNAを合成した。本cDNA溶液1μlを試料として、GoTaq Green Master Mix(Promega)及びT−personal Thermal Cycler(Biometra)を用いたPCRを行った。PCRは、94℃で3分処理後、94℃(30秒)→56℃(30秒)→72℃(1分30秒)のサイクルを35回繰り返した。
GMD遺伝子用プライマーとしては、NbMD(F)(配列番号1:5’−AAGTAGCTCTGATCACCGGC)及びNbMD(R)(配列番号2:5’−TAACTCAATATCCTCGTCCACC)を用いた。また、elongation factor−1α遺伝子由来mRNAを内部標準とし、プライマーEF−1−F(配列番号5:5’−GATTGGTGGTATTGGAACTGTCC)及びEF−1−R(配列番号6:5’−GAGCTTCGTGGTGCATCTC)を用いて、その部分配列を増幅した。その結果、形質転換タバコでは非形質転換タバコに比べ、GMD遺伝子由来mRNA量の顕著な減少が認められた(図8)。
以上詳述したように、本発明は、植物における糖鎖構造の改変方法及びその植物体に係るものであり、本発明により、植物における糖蛋白質N−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制して植物型糖鎖構造の改変方法を提供することができる。糖蛋白質N−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制させた植物形質転換体を調製し、提供することができる。上記植物形質転換体を宿主として利することにより糖蛋白質の糖鎖構造を改変した糖蛋白質を合成することが可能となる。本発明の植物形質転換体を利用することで、生体内に投与した際にアレルゲンになる可能性がある植物特有のフコース修飾を減少、抑制した糖蛋白質を生産することが可能となる。
本発明により、植物において、糖鎖へのフコース修飾の抑制・除去が可能となり、植物に特有な糖鎖修飾であり、動物へのアレルゲンとなる可能性がある糖蛋白質N−結合型糖鎖へのα−1,3−フコース修飾が除去可能であり、植物による医療用糖蛋白質の生産への本発明の応用が可能である。本発明は、遺伝子組換え植物で、アレルゲン性を低下させた医療用糖蛋白質を生産し、提供することを可能とするものとして有用である。

Claims (5)

  1. GDP−D−mannose−4,6−dehydratase(GMD)遺伝子発現を抑制する核酸断片を挿入した植物形質転換用ベクターを、植物に導入して該植物の形質転換を行うか、あるいは、GMD遺伝子発現を抑制する核酸断片を挿入した植物ウイルスベクターを、植物に感染させることにより、GMD遺伝子の発現を抑制して、GDP−フコース合成系を阻害し、植物における植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する糖鎖構造の改変方法であって、
    前記核酸断片が、GMD遺伝子の部分配列に相当するセンス鎖又はアンチセンス鎖からなる塩基配列を含み、かつ、それぞれ配列番号1及び2,配列番号3及び4、配列番号7及び8,並びに配列番号9及び10に示される塩基配列の組み合わせから選択されるいずれかのプライマーセットによって増幅される塩基配列を含んでいることを特徴とする糖鎖構造の改変方法。
  2. 上記植物型のN−結合型糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制が、植物の糖蛋白質糖鎖、糖脂質糖鎖、又は、オリゴ糖もしくは多糖を含む糖鎖へのフコース修飾の減少、抑制である、請求項1に記載の方法。
  3. GMD遺伝子発現の抑制が、該遺伝子の転写、翻訳を、transcriptional gene silencing(TGS)、post−transcriptional gene silencing(PTGS)、又はウイルス誘導ジーンサイレンシング(Virus−induced gene silencing;VIGS)により阻害することであり、そのことにより、GDP−フコースの細胞内での合成を阻害し、糖鎖へのフコース修飾を減少、抑制する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の方法で得られた、GDP−フコース合成酵素遺伝子発現が抑制され、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された植物体又はその子孫。
  5. 請求項4に記載の植物体又はその子孫を宿主として、糖鎖へのフコース修飾が減少、抑制された糖蛋白質を合成することを特徴とする糖蛋白質の合成方法。
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