JP2013142875A - 波長選択スイッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】偏向部における中心波長ずれのポート依存性を補正し、通信品質を向上できる波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの入力ポート10aと、入力ポート10aから入力される波長多重された入力光を、波長毎の光に分散する分散部15と、分散部15により分散される波長毎の光を集光する集光素子16と、集光素子16により集光される波長毎の光をそれぞれ偏向する複数の偏向素子18が配列された偏向部17と、偏向部17で偏向された波長毎の光を出力光として出力する少なくとも一つの出力ポート10dと、入力ポート10aから入力される入力光の光路中に配置され、入力ポート10aの配置に基づいて生じる偏向素子18に対する波長毎の光の偏向素子18の配列方向における入射位置のずれを補正する入射位置ずれ補正素子20と、を備える。
【選択図】図1A

Description

本発明は、異なる波長の光を分岐させ、又は結合させることが可能な波長選択スイッチに関するものである。
従来、光波長多重通信に用いられる波長選択スイッチとして、例えば、特許文献1に記載されているように、少なくとも一つの入力ポート及び少なくとも一つの出力ポートにより構成される入出力ポートと、分散素子と、集光素子と、偏向器とを備えた装置が知られている。
特許文献1に記載の波長選択スイッチでは、MEMSミラーアレイ(可動反射体)の形状を、少なくとも長波長側と短波長側で、分散素子の分散特性に合わせるように、異なった形状に形成している。これにより、波長多重光として、一定の周波数間隔dfを有する複数波長が入力された場合に、各々の波長の光が対応するMEMSミラーのほぼ中心に入射するようにしている。このときのMEMSミラー中心からのずれを、「中心波長ずれ」と呼ぶ。この中心波長ずれが大きくなると、透過帯域の減少等が生じ、波長選択スイッチとしての性能を損なうことになる。
特許第4445373号公報
波長選択スイッチは、それぞれ、波長選択スイッチの異なる位置の入力ポートから光を入力し、異なる位置の出力ポートから出力する。典型的には、入力ポート及び出力ポートは、その端面が直列に配列され、波長選択スイッチ内へ光を入力又は出力する。そのため、入力ポート及び出力ポートを通る光の、入出力ポートの配列方向に関する光軸からの距離は、入力ポート及び出力ポート毎にそれぞれ異なっている。したがって、集光位置である偏向素子の偏向素子面上で、ポート毎の光軸からの距離に起因する中心波長ずれが生じる。言い換えれば、入出力ポートの配列方向の位置に依存して、中心波長ずれのポート依存性が生じる。この中心波長ずれのポート依存性は、入出力ポートが増加するに従って顕著になることは明らかである。
特許文献1では、中心波長ずれが生じることが波長選択スイッチの特性に影響を与えることが記載しているものの、入出力ポートが増加した場合に生じる中心波長ずれのポート依存性に関しては記載も示唆もない。実際、中心波長ずれのポート依存性に関して、効果をもつ構成とはなっていない。
このように、偏向素子面上で中心波長ずれのポート依存性が生じると、透過帯域幅の減少や、入力ポートと出力ポートとが光学的に共役な点からずれることから結合効率の低下が生じ、通信品質が劣化する。さらに、今後、1本の光ファイバを用いて、より高速に変調された光信号を多重化するためには、より広帯域な波長毎の透過帯域幅が必要とされる。そのため、中心波長ずれのポート依存性をより小さくすることが要求される。
したがって、上述した観点に着目してなされた本発明の目的は、偏向部における中心波長ずれのポート依存性を補正し、通信品質を向上できる波長選択スイッチを提供することにある。
上記目的を達成する本発明に係る波長選択スイッチは、
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力される波長多重された入力光を、波長毎の光に分散する分散部と、
該分散部により分散される前記波長毎の光を集光する集光素子と、
該集光素子により集光される前記波長毎の光をそれぞれ偏向する複数の偏向素子が配列された偏向部と、
該偏向部で偏向された前記波長毎の光を出力光として出力する少なくとも一つの出力ポートと、
前記入力ポートから入力される入力光の光路中に配置され、前記入力ポートの配置に基づいて生じる前記偏向素子に対する前記波長毎の光の前記偏向素子の配列方向における入射位置のずれを補正する入射位置ずれ補正素子と、
を備える、ことを特徴とするものである。
本発明によれば、入射位置ずれ補正素子を用いて、入力ポートの配置に基づいて生じる、偏向素子面上での中心波長ずれのポート依存性を補正するようにしたので、偏向素子面上での中心波長ずれが補正され、通信品質の向上が図れる。
第1実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を概略的に示す側面図である。 図1Aの波長選択スイッチの上面図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチの具体的構成の一例を示す上面図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチの具体的構成の他の例を示す上面図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおけるビーム整形光学系の機能を説明するための図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチの構成において、入射位置ずれ補正素子が無い場合のビーム整形光学系及び偏向部の近傍でのビームの挙動を示す図である。 図4Aの構成により生じる偏向素子面上での入射ビームの中心波長ずれを示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおけるビーム整形光学系及び偏向部の近傍でのビームの挙動を示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおける入射位置ずれ補正素子の他の配置例を示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおける入射位置ずれ補正素子の一例の構成を模式的に示す斜視図である。 図5Aの入射位置ずれ補正素子の入出力ポートの高さに対する屈折面の中央部からの頂角の変化を示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のxz面内での入射角度のシミュレーション結果を示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のy軸方向への入射位置ずれのシミュレーション結果を示す図である。 第1実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のx軸方向への入射位置ずれ(中心波長ずれ)のシミュレーション結果を示す図である。 第2実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。 図7Aの入射位置ずれ補正素子の一例の構成を模式的に示す斜視図である。 図7Bの入射位置ずれ補正素子の反射面角度を示す図である。 第2実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のxz面内での入射角度のシミュレーション結果を示す図である。 第2実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のy軸方向への入射位置ずれのシミュレーション結果を示す図である。 第2実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のx軸方向への入射位置ずれ(中心波長ずれ)のシミュレーション結果を示す図である。 第3実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。 図9Aの入射位置ずれ補正素子の一例の構成を示す正面図である。 図9Bの入射位置ずれ補正素子の部分拡大斜視図である。 図9Bの入射位置ずれ補正素子の回折格子のピッチ変化(相対値)を示す図である。 第3実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のxz面内での入射角度のシミュレーション結果を示す図である。 第3実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のy軸方向への入射位置ずれのシミュレーション結果を示す図である。 第3実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のx軸方向への入射位置ずれ(中心波長ずれ)のシミュレーション結果を示す図である。 第4実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。 図11Aの入射位置ずれ補正素子の一例の構成を示す斜視図である。 図11Bの入射位置ずれ補正素子の面法線角度の相対値を示す図である。 入射位置ずれ補正機能のない場合の球面ミラー形状を示す図である。 入射位置ずれ補正機能を有する場合の球面ミラー形状を説明するための図である。 第4実施の形態の波長選択スイッチにおける入射位置ずれ補正素子の作用を説明するための図である。 第4実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のxz面内での入射角度のシミュレーション結果を示す図である。 第4実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のy軸方向への入射位置ずれのシミュレーション結果を示す図である。 第4実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のx軸方向への入射位置ずれ(中心波長ずれ)のシミュレーション結果を示す図である。 第5実施の形態に係る波長選択スイッチの入射位置ずれ補正素子の一例を示す斜視図である。 図15Aの入射位置ずれ補正素子の面法線角度の相対値を示す図である。 第5実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のxz面内での入射角度のシミュレーション結果を示す図である。 第5実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のy軸方向への入射位置ずれのシミュレーション結果を示す図である。 第5実施の形態の波長選択スイッチにおける入出力ポートの高さに対する偏向素子面上での入力光のx軸方向への入射位置ずれ(中心波長ずれ)のシミュレーション結果を示す図である。
以下、本発明のある態様に係る実施の形態について、図を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1A及び図1Bは、それぞれ第1実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を概略的に示す側面図及び上面図である。波長選択スイッチは、入出力部10、マイクロレンズアレイ11、入射位置ずれ補正素子20、シリンドリカルレンズ12及び13、平行光束形成素子を構成するレンズ14、分散素子(回折格子)を有する分散部15、集光素子を構成するレンズ16、偏向部を構成する偏向器17を含んで構成される。
図1A及び図1Bに示す構成は、光学的機能を示すための模式図であり、より具体的には図2Aあるいは図2Bに示す上面図のような構成となっている。つまり、図1A及び図1Bのレンズ14及び16は、図2Aでは同一の集光ミラー100で構成されており、図2Bでは同一の集光レンズ110で構成されている。
分散部15は、図1A及び図1Bに示すような、分散面上に第1の方向(y方向)に平行な格子が形成された透過型の回折格子から構成されてもよいし、図2A及び図2Bに示すような、透過型の回折格子200及び反射ミラー210を含むリットマンメトカルフ構成となっていてもよい。また、図示しないが反射型の回折格子であってもよい。分散部15は、波長毎の光の分解性能が高く、より分散角が大きいものが望ましい。
図1A及び図1Bにおいて、入出力部10は、アレイ状に配置された光ファイバにより構成される入力ポート10a〜10c,10e及び出力ポート10dを備える。入力ポート10a〜10c,10e及び出力ポート10dは、それぞれ、波長選択スイッチの外部からの波長多重された信号光を入力させ、また、外部へ信号光を出力させるものである。以下、説明の便宜上、入力ポート10a〜10c,10e及び出力ポート10dを、適宜、入出力ポート10a〜10eとまとめて表記する。
各光ファイバの一端は、波長選択スイッチ内にあり、他端は外部機器と接続される。入出力ポートの数は、例えば10以上であり、図1Aにおいては、便宜上、入出力ポート10cを中心とする5つの入出力ポート10a〜10eのみを図示している。
また、各入出力ポート10a〜10eとマイクロレンズアレイ11内の各マイクロレンズとは対になっている。マイクロレンズは、対応する入出力ポート10a〜10c及び10eから入力される光を、平行光束に変換し、また、入出力ポート10dに向けて出力される平行光束を入出力ポート10dの光ファイバに結合させる。
以下において、入出力ポート10a〜10e及びマイクロレンズアレイ11を透過した平行光束の進行方向を光軸方向(z方向:図1Aにおいて水平方向)とする。この光軸方向は、シリンドリカルレンズ12,13及びレンズ14からなる光学系の光軸方向でもある。また、入出力ポート10a〜10e及びマイクロレンズアレイ11の配列方向を、第1の方向(y方向:図1Aにおいてz方向と直交する方向)とする。さらに、z方向及びy方向のそれぞれに直交する方向を、第2の方向(x方向)と呼ぶ。なお、現実の波長選択スイッチの光路中に、光路を折り曲げるために、図示しないミラー、プリズム等の偏向部材が配置されている場合には、x方向及びy方向との説明は、そのような偏向部材が無いものとした仮想的な光学系を前提として用いられることとする。
シリンドリカルレンズ12は、y方向に光束を縮める、すなわち、y方向に屈折力を有するレンズである。シリンドリカルレンズ12によるy方向の焦点距離は、f1である。シリンドリカルレンズ(アナモルフィックレンズ)13は、x方向に光束を縮める、すなわち、x方向にのみ屈折力を有するレンズである。シリンドリカルレンズ13は、x方向の焦点位置が、シリンドリカルレンズ12によるy方向の集光位置と一致するように配置される。すなわち、シリンドリカルレンズ13の焦点距離は、シリンドリカルレンズ12の焦点距離f1よりも短い。これにより、マイクロレンズアレイ11によって平行光束となった入力光は、入射位置ずれ補正素子20、シリンドリカルレンズ12及びシリンドリカルレンズ13を経て、ほぼ一次集光面Sf上に集光される。なお、入射位置ずれ補正素子20、シリンドリカルレンズ12及びシリンドリカルレンズ13は、ビーム整形光学系25を構成する。
入射位置ずれ補正素子20は、x方向に頂角を持つ透過型の光学素子である。このx方向の頂角は、y方向の位置に依存して変化する。入射位置ずれ補正素子20は、シリンドリカルレンズ13の前側焦点距離f2の位置に一致するように配置される。
レンズ14の前側焦点位置は、入射位置ずれ補正素子20、シリンドリカルレンズ12及びシリンドリカルレンズ13による入力光の焦点位置と一致する。言い換えれば、レンズ14は、前側焦点位置が一次集光面Sf上に位置する。さらに、シリンドリカルレンズ12,13及びレンズ14を含む光学系の光軸は、例えば、入出力ポート10cを通るように配置される。
また、分散部15は、一次集光面Sfとレンズ14との距離と、レンズ14と分散部15の分散(回折)面との距離とが、共に等しくレンズ14の焦点距離f3となる位置に配置される。
図1Bに示すように、レンズ14を透過した入力光は、平行光束となって分散部15に入射し、分散部15の分散面上でx方向に波長毎に異なる角度で回折される。すなわち、分散部15は、入力光を、当該入力光に含まれる波長毎の光に分離する。なお、簡単のために、図1Aでは、入出力部10から偏向器17に至るz方向の光路を、直線的に示している。さらに、レンズ16及び偏向器17は、分散部15の分散面からレンズ16までの距離と、レンズ16から偏向器17の偏向素子18の偏向素子面(ミラー面)までの距離とが、それぞれ、レンズ16の焦点距離f4となるように配置される。
これにより、図1Bに示すように、分散部15で分散された波長毎の光は、レンズ16により互いに平行な収斂光束となって、各波長に対応した偏向素子18a〜18eに略垂直に入射される。また、図1Aに示すように、一次集光面Sf上の集光点を通過した入力光は、分散部15で分散された後、yz平面内でレンズ16の光軸と偏向素子18の偏向素子面とが交わる高さ位置に集光される。このことは、入出力ポート10a〜10c及び10eの何れから入力された入力光も、同じ高さ位置の偏向素子18(波長に応じて偏向素子18a〜18eのいずれか)に集光されることを意味する。
偏向器17は、例えば、MEMSミラーアレイであり、偏向素子18は、MEMSミラーアレイを構成するマイクロミラーである。偏向素子18は、分離される波長に対応して、レンズ16の光軸の高さ位置に、並列に配置される。偏向素子18は、それぞれのミラーを独立に制御して傾きを変えることができる。特に、図1Aにおけるyz平面内での傾きを変えることにより、入射した波長毎の光を入射方向とは異なる高さ方向へ反射させることができる。なお、図1Bに示すように、y方向から見たとき、波長毎の光は偏向素子18a〜18eに垂直に入射し、垂直に反射されるのが望ましい。
なお、マイクロミラーの傾き制御方向は、yz平面内に限るものではない。例えば、yz平面に傾く際の回転軸と直交する回転軸について傾きを与えることもできる。この傾きを与えることによって、y方向から見たとき、マイクロミラーに入射する波長の光を、入射方向とは異なる方向へ反射させて、隣接する入力ポートから出力ポートへのクロストークを抑制して任意の光減衰を与えることができる。また、図1Bにおいては、偏向素子18を5つのみ図示されているが、偏向素子18の数は、5つに限定されない。
偏向素子18a〜18eにより反射された波長毎の光は、それぞれレンズ16を通り分散部15で回折され、入力光と反対方向の光路を経て、入出力部10のうち入力用に用いられた以外の入出力ポート10dに出力される。
なお、何れの入出力ポート10a〜10eを入力用又は出力用として用いるかは、適宜設計することが可能である。すなわち、入出力ポート10aのみを入力用として用いて、それ以外の入出力ポートを出力用に用いてもよいし、入力用のポートと、出力用のポートとを複数ずつ設けても良い。図1A及び図1Bでは、入出力ポート10a〜10c及び10eが入力ポートであり、入出力ポート10dが出力ポートである場合において、入出力ポート10aから波長多重された入力光が入力され、特定の波長の出力光が入出力ポート10dから出力される場合を図示している。
図1Aにおいて、入出力ポート10aは、シリンドリカルレンズ12,13及びレンズ14による光学系の光軸からの距離(像高)がY1である。入出力ポート10aからの入力光は、図1Aにおいて実線で示されるように、ビーム整形光学系25によって、一次集光面Sf上に集光した後、レンズ14により光軸からの距離がY2の平行光となり、分散部15により波長毎に分散され、レンズ16を通り、それぞれ波長毎に偏向素子18a〜18eに集光される。
ここで、偏向素子18a〜18eに入力した光のうち、少なくとも1つの特定波長の光を入出力ポート10dから出力する場合は、対応する偏向素子18の偏向方向を制御して、図1Aに破線で示すように、特定波長の光を所定の方向に反射させる。偏向素子18によって反射された特定波長の光は、レンズ16を通り、分散部15、レンズ14、ビーム整形光学系25及びマイクロレンズアレイ11の対応するマイクロレンズを経て、入出力ポート10dから出力される。同じ入出力ポート10dに出力する波長の光が複数ある場合は、それら複数の波長の光が分散部15で合波される。
次に、ビーム整形光学系25の機能について、図3を参照して説明する。図3は、図1の入出力ポート10a〜10eから集光点近傍まで、及び偏向素子18の近傍におけるビームの挙動を説明するための図である。この図では、入出力ポート10a及び入出力ポート10cが、ともに入力用ポートとして用いられる。
まず、本実施の形態では、屈折力がy方向のシリンドリカルレンズ12と屈折力がx方向のシリンドリカルレンズ13とを、光路上の位置を異ならせて配置し、シリンドリカルレンズ13に、より大きな屈折力を持たせている。すなわち、この光学系は、x方向により大きな開口数を有する。そのため、一次集光面Sf上では、入出力ポート10cからの入力光が、図3に実線で示すように楕円形状スポットB1となる。この楕円形状スポットB1は、レンズ14及び16により、図3に実線で示すように、共役な関係にある偏向素子面Sm上に、楕円形状スポットB2として結像される。
本実施の形態において、レンズ14及び16は、同一素子から構成されているので、楕円形状スポットB1及びB2は等倍の共役関係にあり、ほぼ同一の形状となる。より厳密には、y方向の倍率は1倍であるが、x方向の倍率については、分散部15にリトロー以外の入射角度で入射した光はビーム整形されるため、1倍から若干ずれる。このスポットは、分散部15によって波長毎に分離されているので、複数のスポットが波長の分離方向である水平方向に並列に並ぶことになる。
ここで、波長選択スイッチでより多くの波長の切り換えを行うためには、入力光に含まれる波長毎の光の周波数間隔をより狭くすることが必要となる。特に、占有波長帯域幅が狭くなる50GHzスペーシングでは、より波長の分離方向に狭い偏向素子18を用いて、より幅の狭いスポットを集光させる必要がある。本実施の形態におけるように、ビーム整形光学系25を用いて、偏向素子面Sm上におけるビームのスポット形状を分散部15の分散方向に短軸を有する楕円形状に整形することによって、波長の分解度を高め、異なる波長の光が同一の偏向素子18に入射することによるクロストークの発生を防止することができる。
また、入射位置ずれ補正素子20は、レンズ16によって生じる中心波長ずれのポート依存性を補正する機能を有する。
ここで、入射位置ずれ補正素子20を有しない場合、分散部15から出射されるそれぞれの波長ごとに分かれた光は、レンズ16の収差に従って中心波長ずれのポート間依存性を生じる。図4Aは、入射位置ずれ補正素子20が無い構成でのビーム整形光学系25及び偏向部17の近傍でのビームの挙動を示す図である。
この場合、偏向素子面Sm上において、軸外ポートからの光は、軸上ポートからの光に対してx方向にずれた位置に入射することになる。つまり、波長ごとに分かれた光は、レンズ16の光軸に対し同じ方向に偏心して入射することになる。その結果、中心波長ずれは、図4Bに示すように、全ての波長について同一方向(偏向素子18の配列方向)に生じる傾向にある。この中心波長ずれは、ポートの高さに依存し、ポート数が増加するに従って顕著になることは明らかである。そして、中心波長ずれは、透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークの発生等、波長選択スイッチの通信品質の劣化を招くことになる。
本実施の形態においては、このような中心波長ずれのポート依存性を補正するため、入射位置ずれ補正素子20が設けられている。図4Cは、入射位置ずれ補正素子20を有する本実施の形態における構成でのビーム整形光学系25及び偏向部17の近傍でのビームの挙動を示す図である。かかる構成において、軸外ポートからの光は、シリンドリカルレンズ13の前側焦点位置に設置された入射位置ずれ補正素子20を出射する際に、xz面内において軸上ポートからの光とは異なる角度に偏向される。そのため、軸外ポートからの光は、シリンドリカルレンズ13から出射する際、軸上ポートからの光とxz面内の角度は同様であるが、x軸方向にずれた位置で一次集光面Sfに入射することになる。
ここで、1つの波長の光だけを抜き出して考えると、一次集光面Sfと偏向素子面Smとは共役な関係にあるため、一次集光面Sf面上においてスポットをx軸方向へ平行移動させることは、偏向素子面Sm上でx軸方向(偏向素子18の配列方向)へのスポットの平行移動を生じさせることになる。これにより、後段の光学系で生じる中心波長ずれのポート依存性を補正することが可能である。また、入射位置ずれ補正素子20をシリンドリカルレンズ13の前側焦点位置に設けているため、一次集光面Sfへのxz面内での入射角度への影響は小さい。そのため、偏向素子面Smにおいてもxz面内での入射角度はほとんど影響を受けない。
なお、入射位置ずれ補正素子20は、図4Dに示すように、シリンドリカルレンズ13の前側焦点位置より前方に配置することも可能である。この場合、各入出力ポートから入力された光は、シリンドリカルレンズ12の作用により、一次集光面Sfに向かってy軸方向に集光していく。そのため、シリンドリカルレンズ12に近い位置に入射位置ずれ補正素子20を設けることで、各入出力ポートからの光がより分離された状態で、各々のポートからの光に補正効果を作用させることが可能となる。ただし、この場合は、同時に偏向素子面Smへのxz面内での入射角度変化αを生じさせるため、偏向素子の特性によって決まる入射角度の許容範囲でのみ補正効果が可能となる。なお、偏向素子に対する入射角度の許容範囲を満たせば、入射位置ずれ補正素子20をシリンドリカルレンズ13の前側焦点位置より後方に配置することも可能である。本明細書においては、この入射位置ずれ補正素子20の配置範囲を、シリンドリカルレンズ13の前側焦点位置近傍と呼ぶこととする。なお、より最適には、シリンドリカルレンズ13の前側焦点位置と後側焦点位置とが離れるように、シリンドリカルレンズ13を構成するのがよい。
次に、入射位置ずれ補正素子20の具体的構成例について説明する。
図5Aは、図1の入射位置ずれ補正素子20の一例の構成を示す斜視図である。図5Bは、図5Aの入射位置ずれ補正素子20の入出力ポートの高さ(横軸)に対する屈折面の中央部からの頂角の変化(縦軸)を示す図である。なお、図5Aは、5つの入出力ポートに対応する構成を模式的に示し、図5Bは、実際に設けられる10以上の入出力ポートのなかの代表的な入出力ポートに対応する頂角の変化を示す。この入射位置ずれ補正素子20は、ガラス等の光透過性部材で構成されている。図5Aにおいて、手前側は入出力ポートごとに異なる中心波長ずれ補正効果を与えるための面であり、その背面側は平面となっている。実際には、平面側を入出力ポート側に向けるのがよい。
また、入射位置ずれ補正素子20は、xz面内の頂角が第1の方向(y方向)の位置により離散的に異なっている。より具体的には、それぞれの入出力ポートからの光は、それぞれ一様な頂角の位置に入射するが、異なる入出力ポートからの光は、異なる頂角を有する面に入射するように、それぞれ異なる入出力ポート10a〜10eに対応する屈折面の境界に段差が設けられて構成されている。これにより、光軸からy方向に離れた位置を通る光束の偏向素子面Smへの入射位置を、後段の光学系によって生じる中心波長ずれが相殺される方向にずらしている。また、入射位置ずれ補正素子20は、光軸に対しy方向に対称な構成となっているのが望ましい。
図6A〜図6Cは、入出力ポートの高さ(横軸)に対する偏向素子面Sm上での入力光の、xz面内の入射角度(図6A)、y軸方向への入射位置ずれ(図6B)、x軸方向への入射位置ずれ(図6C)のそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。なお、図6A〜図6Cにおいて、実線は図5A及び図5Bで示した入射位置ずれ補正素子20を用いた場合のシミュレーション結果を示し、破線は入射位置ずれ補正素子20を用いずに後段に同じ光学系を配置した場合のシミュレーション結果を示している。また、図6A及び図6Bにおいて、縦軸はそれぞれ設計の許容値を1として規格化して相対的に表したものであり、絶対的な値を示しているものではない。図6A〜図6Cから明らかなように、入射位置ずれ補正素子20によって、図6Cに示す入射位置ずれ(中心波長ずれ)のみを、図6A及び図6Bに示す他の特性に影響を与えることなく効果的に補正することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る波長選択スイッチは、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、いずれの入出力ポート10a〜10c及び10eから入力されたかに係らず、各偏向素子18の偏向素子面で中心波長ずれが生じないように補正して集光させる入射位置ずれ補正素子20を備えている。これにより、分散部15によって分散された波長毎の光を、入力光が入力される入出力ポート10a〜10c及び10eの位置に依存することなく、偏向素子18の偏向素子面上に高い精度で集光させることができる。したがって、中心波長ずれによって生じる透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークを抑制でき、通信品質を高めることができる。
また、入射位置ずれ補正素子20は、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、一次集光面Sfにいったん集光させるビーム整形光学系25内に設けられるので、小型に構成することができる。
また、集光ミラー100または集光レンズ110は、図1A及び図1Bのレンズ14及び16と同等の機能を奏している。このような配置により、分散部15の前段と後段とで同じ光学素子により、光を収束・平行化できる。このため、異なるレンズ素子の物理的な干渉を回避させるために、入出力ポートの並ぶ方向に垂直な面内における装置サイズを増大させる必要がない。また、物理的な干渉を回避させる必要がないため、分散素子の選択の自由度が大きくなる。
(第2実施の形態)
図7Aは、第2実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。本実施の形態に係る波長選択スイッチは、図2Aに示した構成において、入射位置ずれ補正素子20の機能と、リットマンメトカルフ構成の分散部15を構成する反射ミラー210の機能とを、1つの入射位置ずれ補正素子21に持たせたものである。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
図7Bは、図7Aの入射位置ずれ補正素子21の一例の構成を示す斜視図である。図7Cは、図7Bの入射位置ずれ補正素子21の入出力ポートの高さ(横軸)に対する反射面角度(縦軸)を示す図である。なお、図7Bは、5つの入出力ポートに対応する構成を模式的に示し、図7Cは、実際に設けられる10以上の入出力ポートのなかの代表的な入出力ポートに対応する頂角の変化を示す。この入射位置ずれ補正素子21は、反射面のxz面内の法線方向が、第1の方向(y方向)の位置により離散的に異なっている。より具体的には、それぞれの入出力ポートからの光は、それぞれ一様なxz面内の法線方向の位置に入射するが、異なる入出力ポートからの光は、異なるxz面内の法線方向を有する面に入射するように、それぞれ異なる入出力ポート10a〜10eに対応する反射面の境界に段差が設けられて構成されている。これにより、光軸からy方向に離れた位置を通る光束の偏向素子面Smへの入射位置を、中心波長ずれが相殺される方向にずらしている。また、入射位置ずれ補正素子21は、光軸に対しy方向に対称な構成となっているのが望ましい。
次に、入射位置ずれ補正素子21の作用について説明する。図1Aに示したように、偏向器17及び分散部15は、レンズ16に対してそれぞれf4の距離に設けられている。そのため、偏向器17の位置における位置ずれは、分散部15における角度ずれに相当する。したがって、本実施の形態において、分散部15の入射位置ずれ補正素子21の反射面角度を、入出力ポート10a〜10eに対応するように変化させることで、第1実施の形態と同様の補正効果を得ることが可能となる。
図8A〜図8Cは、入出力ポートの高さ(横軸)に対する偏向素子面Sm上での入力光の、xz面内の入射角度(図8A)、y軸方向への入射位置ずれ(図8B)、x軸方向への入射位置ずれ(図8C)のそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。なお、図8A〜図8Cにおいて、実線は図7Bで示した入射位置ずれ補正素子21を用いた場合のシミュレーション結果を示し、破線は入射位置ずれ補正素子21を用いないこと以外は同じ光学系を配置した場合のシミュレーション結果を示している。また、図8A及び図8Bにおいて、縦軸はそれぞれ設計の許容値を1として規格化して相対的に表したものであり、絶対的な値を示しているものではない。図8A〜図8Cから明らかなように、入射位置ずれ補正素子21によって、図8Cに示す入射位置ずれ(中心波長ずれ)のみを、図8A及び図8Bに示す他の特性に影響を与えることなく効果的に補正できる。
以上説明したように、本実施の形態に係る波長選択スイッチは、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、いずれの入出力ポート10a〜10c及び10eから入力されたかに係らず、各偏向素子18の偏向素子面Smで中心波長ずれが生じないように補正して集光させる入射位置ずれ補正素子21を備えている。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、分散部15によって分散された波長毎の光を、入力光が入力される入出力ポート10a〜10c及び10eの位置に依存することなく、偏向素子18の偏向素子面Sm上に高い精度で集光させることができる。したがって、第1実施の形態の場合と同様に、中心波長ずれによって生じる透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークを抑制でき、通信品質を高めることができる。
また、本実施の形態においては、リットマンメトカルフ構成の分散部15の要素として機能するミラーに、入射位置ずれ補正素子の機能を付加しているので、部品点数の増加を伴わない構成となっている。また、分散部15において、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光は、yz面内にほぼ平行に入射するため、入力光の分離度を高くできる。これにより、入力光の一部が他の入出力ポートに対応する反射面部分に入射するのを、より高い精度で抑制できるので、意図しないクロストークを抑制することができる。
なお、本実施の形態において、入射位置ずれ補正素子21は、集光ミラー100(図1Aのレンズ16)からf4だけ離れた分散部15近傍において、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光のそれぞれに、xz面内の角度変化を付加すればよい。したがって、回折格子200の屈折面の角度をポートごとに変えてもよいし、第1実施の形態で示したような屈折型の素子を分散部15に追加してもよい。
(第3実施の形態)
図9Aは、第3実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。本実施の形態に係る波長選択スイッチは、図2Aに示した構成において、入射位置ずれ補正素子20の機能と、リットマンメトカルフ構成の分散部15を構成する回折格子200の機能とを、1つの入射位置ずれ補正素子22に持たせたものである。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
図9B及び図9Cは、図9Aの入射位置ずれ補正素子22の一例の構成を示す正面図及び部分拡大斜視図である。また、図9Dは、入射位置ずれ補正素子22の入出力ポートの高さ(横軸)に対する回折格子のピッチ変化を相対値(縦軸)で示す図である。なお、図9Bは、5つの入出力ポートに対応する構成を模式的に示し、図9Dは、実際に設けられる10以上の入出力ポートのなかの代表的な入出力ポートに対応するピッチ変化を示す。この入射位置ずれ補正素子22は、図9B及び図9Cに示すように、y軸方向に複数の領域を有し、それぞれの領域ごとに回折格子のピッチpが異なっている。また、それぞれの領域内は一定のピッチpからなる回折格子により構成されている。より具体的には、それぞれの入出力ポートからの光はそれぞれ一様な領域に入射するが、異なる入出力ポートからの光は異なる領域に入射するように構成されている。また、それぞれ異なる入出力ポート10a〜10eに対応する領域の境界では、格子形状が不連続になっている。これにより、光軸から第1の方向(y方向)に離れた位置を通る光束の偏向素子面Smへの入射位置を、中心波長ずれが相殺される方向にずらしている。なお、入射位置ずれ補正素子22は、光軸に対しy方向に対称な構成となっているのが望ましい。
次に、入射位置ずれ補正素子22の作用について説明する。図1Aに示したように、偏向器17及び分散部15は、レンズ16に対してそれぞれf4の距離に設けられている。そのため、偏向器17の位置における位置ずれは、分散部15における角度ずれに相当する。したがって、本実施の形態において、分散部15の入射位置ずれ補正素子22の反射面角度を、入出力ポート10a〜10eに対応するように変化させることで、第1実施の形態と同様の補正効果を得ることが可能となる。
図10A〜図10Cは、入出力ポートの高さ(横軸)に対する偏向素子面Sm上での入力光の、xz面内の入射角度(図10A)、y軸方向への入射位置ずれ(図10B)、x軸方向への入射位置ずれ(図10C)のそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。なお、図10A〜図10Cにおいて、実線は図9B及び図9Cに示した入射位置ずれ補正素子22を用いた場合のシミュレーション結果を示し、破線は入射位置ずれ補正素子22を用いないこと以外は同じ光学系を配置した場合のシミュレーション結果を示している。また、図10A及び図10Bにおいて、縦軸はそれぞれ設計の許容値を1として規格化して相対的に表したものであり、絶対的な値を示しているものではない。図10A〜図10Cから明らかなように、入射位置ずれ補正素子22によって、図10Cに示す射位置ずれ(中心波長ずれ)のみを、図10A及び図10Bに示す他の特性に影響を与えることなく効果的に補正することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る波長選択スイッチは、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、いずれの入出力ポート10a〜10c及び10eから入力されたかに係らず、各偏向素子18の偏向素子面で中心波長ずれが生じないように補正して集光させる入射位置ずれ補正素子22を備えている。これにより、上記実施の形態の場合と同様に、分散部15によって分散された波長毎の光を、入力光が入力される入出力ポート10a〜10c及び10eの位置に依存することなく、偏向素子18の偏向素子面上に高い精度で集光させることができる。したがって、上記実施の形態の場合と同様に、中心波長ずれによって生じる透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークを抑制でき、通信品質を高めることができる。
また、本実施の形態においては、リットマンメトカルフ構成の分散部15の要素として機能する回折格子に、入射位置ずれ補正素子の機能を付加しているので、部品点数の増加を伴わない構成となっている。また、分散部15において、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光は、yz面内にほぼ平行に入射するため、入力光の分離度を高くできる。これにより、入力光の一部が他の入出力ポートに対応する反射面部分に入射するのを、より高い精度で抑制できるので、意図しないクロストークを抑制することができる。
更に、回折格子は、一般に、マスクを使用したリソグラフィ技術や、マスタを使用して作製されるので、一度条件を設定することで、外形形状を制御する場合よりも、再現性よくかつ容易に、領域ごとのピッチpの相対値が一定の入射位置ずれ補正素子22を作製することが可能となる。
(第4実施の形態)
図11Aは、第4実施の形態に係る波長選択スイッチの構成を示す上面図である。本実施の形態に係る波長選択スイッチは、図2Aに示した構成において、入射位置ずれ補正素子20の機能と、集光ミラー100の機能とを、1つの入射位置ずれ補正素子23に持たせたものである。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
図11Bは、図11Aの入射位置ずれ補正素子23の一例の構成を示す斜視図である。また、図11Cは、図11Bの入射位置ずれ補正素子23の入出力ポートの高さ(横軸)に対する面法線角度θの相対値(縦軸)を示す図である。なお、図11Bは、5つの入出力ポートに対応する構成を模式的に示し、図11Cは、実際に設けられる10以上の入出力ポートのなかの代表的な入出力ポートに対応する面法線角度θの相対値を示す。この入射位置ずれ補正素子23は、図11Bに示すように、y軸方向に複数の領域を有し、それぞれの領域ごとに面法線のxz面内での角度θが異なっている。また、それぞれの領域内は、1つの連続なx、yの関数により記述され得る連続面により構成されている。ここで、連続なx、yの関数とは、例えば球面、放物面あるいは一般的な非球面等である。そして、それぞれの入出力ポートからの光は、それぞれ一様な領域に入射するが、異なる入出力ポートからの光は、異なる領域に入射するように構成されている。
次に、入射位置ずれ補正素子23の構成について、図12A及び図12Bを参照しながら更に詳細に説明する。ここでは、簡単のため、球面のミラー形状で説明する。図12Aは、入射位置ずれ補正機能のない通常の球面ミラーの構成を示す。図12Bは、入射位置ずれ補正機能のある球面ミラーの構成を示す。入射位置ずれ補正機能のない通常の球面ミラーの場合、図12Aに示すように、y軸方向に異なる位置でのそれぞれのxz断面S1,S2,S3は、xz平面内で同心の円形状である。
これに対し、本実施の形態におけるように、入射位置ずれ補正機能のある球面ミラーの場合、図12Bに示すように、異なる入出力ポートからの光の入射位置に対応した領域ごとに、球芯がxz平面内で異なっているように構成される。図12Bは、同一xz平面上において、異なる2つの入出力ポートのそれぞれの領域に対応する球面のxz断面S1,S2の球芯が、xz平面内でθ(y)異なっている場合を示している。また、各領域内では、断面の円の中心は一致している。ここで、異なる入出力ポートからの光の入射位置に対応したそれぞれの領域の回転角度量θ(y)は、例えば、光軸上の面頂におけるy軸を回転軸したときの回転量で規定する。これにより、光軸からy方向に離れた位置を通る光束の偏向素子面Smへの入射位置を、中心波長ずれが相殺される方向にずらしている。なお、入射位置ずれ補正素子23は、光軸に対しy方向に対称な構成となっているのが望ましい。
次に、入射位置ずれ補正素子23の作用について、図13を参照して説明する。ここでは、平行な3つの光線R1〜3を入射位置ずれ補正素子23に入射する場合を考える。y軸方向の中央部におけるxz断面をSc、y軸方向の端部におけるxz断面をSe、それぞれの断面における光線R2の入射位置での面法線をそれぞれnc、neで表す。
図13において、断面Scに入射した光線R1〜R3は、入射位置ずれ補正素子23の焦点距離に応じて点P1に収束する。また、断面Seに入射した光線R1〜R3は、入射位置ずれ補正素子23の焦点距離に応じて点P1とはxz平面上の異なる点P2に収束する。光線を逆追跡すると、点P1及びP2から出射した光線は、それぞれ断面Sc及びSeに作用して、光線R1に平行な方向に出射する。ここで、図1Aに示したように、分散部15は、レンズ16に対しf4の距離に設けられている。したがって、点P1及びP2は、分散部15が設けられている位置に相当する。
また、断面Sc及びSeで反射されたそれぞれの入出力ポートからの入力光は、それぞれ分散部15の異なる位置P1及びP2で波長ごとに異なる角度に分散され、再び断面Sc及びSeに向けて出射される。つまり、分散部15における分散後に入射位置ずれ補正素子23に再入射したそれぞれの波長の光は、それぞれの入出力ポートからの入力光とxz面内においてほぼ平行に入射位置ずれ補正素子23から出射されることになる。そのため、入射位置ずれ補正素子23は、分散部15に対する入出射角度を制御することで各偏向素子18の偏向素子面における中心波長ずれのポート依存性の補正効果を得ることが可能となる。
図14A〜図14Cは、入出力ポートの高さ(横軸)に対する偏向素子面Sm上での入力光の、xz面内の入射角度(図14A)、y軸方向への入射位置ずれ(図14B)、x軸方向への入射位置ずれ(図14C)のそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。なお、図14A〜図14Cにおいて、実線は図11Bで示した入射位置ずれ補正素子23を用いた場合のシミュレーション結果を示し、破線は入射位置ずれ補正素子23を用いないこと以外は同じ光学系を配置した場合のシミュレーション結果を示している。また、図14A及び図14Bにおいて、縦軸はそれぞれ設計の許容値を1として規格化して相対的に表したものであり、絶対的な値を示しているものではない。図14A〜図14Cから明らかなように、入射位置ずれ補正素子23によって、図14Cに示す入射位置ずれ(中心波長ずれ)のみを、図14A及び図14Bに示す他の特性に影響を与えることなく効果的に補正できる。
以上説明したように、本実施の形態に係る波長選択スイッチは、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、いずれの入出力ポート10a〜10c及び10eから入力されたかに係らず、各偏向素子18の偏向素子面Smで中心波長ずれが生じないように補正して集光させる入射位置ずれ補正素子23を備えている。これにより、上記実施の形態の場合と同様に、分散部15によって分散された波長毎の光を、入力光が入力される入出力ポート10a〜10c及び10eの位置に依存することなく、偏向素子18の偏向素子面Sm上に高い精度で集光させることができる。したがって、上記実施の形態の場合と同様に、中心波長ずれによって生じる透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークを抑制でき、通信品質を高めることができる。
また、集光ミラー100に入射位置ずれ補正素子の機能を付加しているので、部品点数の増加を伴わない構成となっている。また、集光ミラー100において、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光は、yz面内にほぼ平行に入射するため、入力光の分離度を高くできる。これにより、入力光の一部が他の入出力ポートに対応する反射面部分に入射するのを、より高い精度で抑制できるので、意図しないクロストークを抑制することができる。また、集光ミラー100は、偏向素子18面上に結像させるものであるため、最終性能を見ながらの調整が容易であり、効率的な組み立てが可能となる。
(第5実施の形態)
図15Aは、第5実施の形態に係る波長選択スイッチの入射位置ずれ補正素子の一例を示す斜視図である。この入射位置ずれ補正素子24は、第4実施の形態における入射位置ずれ補正素子23の反射面を、連続的な1つの反射面としたものである。
図15Bは、図15Aの入射位置ずれ補正素子24の入出力ポートの高さ(横軸)に対する面法線角度θの相対値(縦軸)を示す図である。図15Bから明らかなように、入射位置ずれ補正素子24の反射面は、yの値に従ってxz面内での面法線の角度θが連続的に異なっている。これにより、第4実施の形態の場合と同様にして、分散部15に対する入出射角度を制御することで、各偏向素子18の偏向素子面における中心波長ずれのポート依存性の補正効果を得ることが可能となる。
図16A〜図16Cは、入出力ポートの高さ(横軸)に対する偏向素子面Sm上での入力光の、xz面内の入射角度(図16A)、y軸方向への入射位置ずれ(図16B)、x軸方向への入射位置ずれ(図16C)のそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。なお、図16A〜図16Cにおいて、実線は図15Aで示した入射位置ずれ補正素子24を用いた場合のシミュレーション結果を示し、破線は入射位置ずれ補正素子24を用いないこと以外は同じ光学系を配置した場合のシミュレーション結果を示している。また、図16A及び図16Bにおいて、縦軸はそれぞれ設計の許容値を1として規格化して相対的に表したものであり、絶対的な値を示しているものではない。
図16A〜図16Cから明らかなように、図16Cに示す入射位置ずれ補正素子24による入射位置ずれ(中心波長ずれ)の補正効果は、図16A及び図16Bに示す他の特性に与える影響に比べ極端に大きい。また、本実施の形態では、入射位置ずれ補正素子24が連続面で構成されるため、図16Bに示すように、y軸方向への入射位置ずれが若干生じるが、その影響はそれ程大きいものではない。したがって、本実施の形態においても、他の性能への影響を与えることなく、入射位置ずれ(中心波長ずれ)のポート依存性を効果的に補正することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る波長選択スイッチは、入出力ポート10a〜10c及び10eから入力された入力光を、いずれの入出力ポート10a〜10c及び10eから入力されたかに係らず、各偏向素子18の偏向素子面Smで中心波長ずれが生じないように補正して集光させる入射位置ずれ補正素子24を備えている。これにより、上記実施の形態の場合と同様に、分散部15によって分散された波長毎の光を、入力光が入力される入出力ポート10a〜10c及び10eの位置に依存することなく、偏向素子18の偏向素子面Sm上に高い精度で集光させることができる。したがって、上記実施の形態の場合と同様に、中心波長ずれによって生じる透過帯域の劣化、入出力ポートの光学的共役関係がくずれることによる結合効率の劣化、結合しない光の他の入出力ポートへのクロストークを抑制でき、通信品質を高めることができる。
また、集光ミラー100に入射位置ずれ補正素子の機能を付加しているので、部品点数の増加を伴わない構成となっている。また、入射位置ずれ補正素子24が連続面で構成されているので、離散的な面構成を有する場合と比べ、意図しないクロストークを抑制することができる。更に、集光ミラー100は、偏向素子18面上に結像させるものであるため、最終性能を見ながらの調整が容易であり、効率的な組み立てが可能となる。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施の形態においては、それぞれ単一の部材が入射位置ずれ補正素子として機能していたが、複数の部材で入射位置ずれ補正素子として機能させても良い。この場合、それぞれの部材の製造ばらつきにより生じる、入射位置ずれ補正素子としての補正力のばらつきを、互いにキャンセルするようにそれぞれの部材を選別してやることにより、実質的に部材の歩留まりを向上することが可能である。
10 入出力部
10a〜10e 入出力ポート
11 マイクロレンズアレイ
12,13 シリンドリカルレンズ
14,16 レンズ
15 分散部
17 偏向器
18,18a〜18e 偏向素子
20,21,22,23,24 入射位置ずれ補正素子
25 ビーム整形光学系
100 集光ミラー
110 集光レンズ
200 回折格子
210 反射ミラー

Claims (10)

  1. 少なくとも一つの入力ポートと、
    該入力ポートから入力される波長多重された入力光を、波長毎の光に分散する分散部と、
    該分散部により分散される前記波長毎の光を集光する集光素子と、
    該集光素子により集光される前記波長毎の光をそれぞれ偏向する複数の偏向素子が配列された偏向部と、
    該偏向部で偏向された前記波長毎の光を出力光として出力する少なくとも一つの出力ポートと、
    前記入力ポートから入力される入力光の光路中に配置され、前記入力ポートの配置に基づいて生じる前記偏向素子に対する前記波長毎の光の前記偏向素子の配列方向における入射位置のずれを補正する入射位置ずれ補正素子と、
    を備える、ことを特徴とする波長選択スイッチ。
  2. 前記入力ポートから入力される前記入力光を平行光束として前記分散部へ導く平行光束形成素子を備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
  3. 前記集光素子と、前記平行光束形成素子とは、同一部材である、
    ことを特徴とする請求項2に記載の波長選択スイッチ。
  4. 前記偏向素子上に集光される前記波長毎の光のスポットを楕円形状とするように、前記入力ポートから入力される前記入力光を整形するビーム整形光学系を備え、
    前記平行光束形成素子は、前記ビーム整形光学系により整形された入力光を平行光束として前記分散部へ導く、
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の波長選択スイッチ。
  5. 前記入射位置ずれ補正素子は、前記ビーム整形光学系内に配置されている、
    ことを特徴とする請求項4に記載の波長選択スイッチ。
  6. 前記分散部は、前記入力光を波長ごとの光に分散する分散素子と、該分散素子により分散される前記波長ごとの光を反射させて再び前記分散素子に入射させる反射素子と、を備え、
    前記入射位置ずれ補正素子は、前記反射素子と一体に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ。
  7. 前記分散部は、前記入力光を波長ごとの光に分散する回折格子を備え、
    前記入射位置ずれ補正素子は、前記回折格子と一体に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ。
  8. 前記回折格子は、前記入力ポート及び前記出力ポートの並ぶ方向に、前記入射位置ずれ補正素子として機能する格子ピッチの異なる複数の領域を有する、
    ことを特徴とする請求項7に記載の波長選択スイッチ。
  9. 前記入射位置ずれ補正素子は、前記集光素子と一体に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の波長選択スイッチ。
  10. 前記入射位置ずれ補正素子は、連続的な面から構成されている、
    ことを特徴とする請求項9に記載の波長選択スイッチ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016103021A (ja) * 2014-11-29 2016-06-02 華為技術有限公司Huawei Technologies Co.,Ltd. ビーム処理装置、ビーム減衰および切り替え装置、ならびに光波長選択スイッチシステム
WO2023124374A1 (zh) * 2021-12-30 2023-07-06 华为技术有限公司 波长选择器件、波长选择的方法和roadm

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