JP2013136562A - アセトンからイソブチレンを製造する方法 - Google Patents

アセトンからイソブチレンを製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アセトンからイソブチレンを反応初期から高選択率に製造する方法を提供する。また、バイオマスから製造されるアセトンをイソブチレンに変換することで、バイオマス由来イソブチレンを製造する。
【解決手段】カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト類似物質、並びにメソ多孔性シリカ及びそれを基材とする固体酸触媒からなる群から選択される少なくとも一つを触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する。また、ゼオライト又はゼオライト類似物質のうち、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも小さな分子サイズを有する有機ケイ素化合物により酸点を不活性化処理したゼオライト又はゼオライト類似物質を触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アセトンからイソブチレンを製造する方法に関するものである。
アセトンは、溶剤あるいは化学品製造の原料などに広く用いられている基幹化合物である。アセトンは、クメン法(クメンヒドロペルオキシドからフェノールを製造する際の副生物)あるいはプロピレンのワッカー酸化法などにより得られる。また、アセトンから製造される化学品としては、アセトンに青酸を反応させて製造したアセトンシアンヒドリン(ACH)に、濃硫酸とメタノールを反応させて製造されるメタクリル酸メチル(MMA)が挙げられる。MMAは、透明樹脂として有用なポリメタクリル酸メチル(PMMA)のモノマー(MMAモノマー)である。
MMAモノマーの製造については、日本を中心としたアジア地域では、イソブチレンを出発原料としたMMAモノマー製造法(イソブチレン直接酸化法)が主に採用されている。このため、イソブチレンはアセトンとともにMMA製造には不可欠な原料である。現在、MMAモノマーの原料としてのイソブチレンは、主に、ナフサ分解により得られるC4留分からブタジエンを分留した残渣であるスペントBBから、イソブチレンを酸触媒による水和反応によりターシャリーブタノールとして抽出した後、これを脱水することで得ている。
前述のACH法は、世界的には最もMMAモノマー生産量が多いプロセスであるが、濃硫酸の使用による装置腐食や廃酸の処理が不可避である。そこで、ACH法の原料であるアセトンをイソブチレンへ変換させた後、該イソブチレンからイソブチレン直接酸化法によりMMAモノマーを製造できれば、ACH法での課題を回避してアセトンをMMAモノマーの原料として使用することができる。アセトンは比較的安価な化学品であり、アセトンをイソブチレンへと高効率で変換することができる触媒及び製造方法が見出せれば、アセトンも有望なイソブチレンソースとして期待できる。
アセトンをイソブチレンに変換する研究としては、ベータ(β)ゼオライト、H−Yゼオライト及びH−ZSM−5ゼオライトを用いて、アセトンからイソブタンやイソホロンを経由してイソブチレンを生成することが報告されている(非特許文献1)。
また、近年、再生可能な資源であるバイオマスからのエネルギー及び化学品製造技術として、バイオリファイナリー技術が世界的な注目を集めている。バイオリファイナリーとは、各種バイオマスのガス化、糖化及び抽出などにより、合成ガス、グルコースなどの糖類及びリグニンなどの芳香族化合物などを製造し、それらを多様に変換することでエネルギー及び化学品を製造しようとするものである。
バイオリファイナリーの原料となるバイオマスは、資源作物に由来するもの、廃棄物に由来するものに大きく分けられる。資源作物に由来するバイオマスとは、食用作物、木材、草花などの他、それらの作物の未利用部分も含まれる。一方、廃棄物に由来するバイオマスとしては、食品廃棄物、下水などの汚泥、家畜糞尿、廃紙などが挙げられる。
バイオリファイナリーにより製造される製品としては、エネルギーではエタノールやブタノール、ディーゼル油などが挙げられる。化学品においても、米エネルギー省が提唱する糖由来のコハク酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、アスパラギン酸などの基幹化合物(プラットフォーム化合物)からの派生によれば、非常に多くの化学品が製造可能である。
アセトンもバイオマスから製造することが可能であり、汚泥をはじめとする有機廃棄物を原料とし、ジルコニウムを担持した鉄酸化物系触媒を用いて製造することができる(特許文献1)。
イソブチレンをさらに安定して入手するために、石油精製由来のスペントBB以外のイソブチレンソースを確保しておくことは、イソブチレン直接酸化法の多様性、競争力の面からも非常に重要である。したがって、バイオマスあるいはバイオマス誘導品からイソブチレンを製造する方法に期待がかかる。アセトン、イソブチレンともに、化学産業において非常に有用な化合物であり、バイオマスからそれらを製造する技術の意義は大きい。
特開2006−61852号公報
Graham J. Hutchings著、ジャーナル オブ キャタリシス (Journal of Catalysis)、147巻、177−185頁、1994年
非特許文献1において報告されているプロトン型のβゼオライト(H−β)やH−ZSM−5ゼオライトを用いたアセトンからイソブチレンへの変換反応では、反応初期のイソブチレン選択率が低いことが記載されている。反応初期においては、イソブタンが高選択的に生成し、反応時間が長くなると、炭素析出(コーキング)による触媒活性低下を伴って、イソブチレンが高選択的に生成するようになる。イソブチレンは、主に図1に示すようにアセトンが自己縮合した化合物(ジアセトンアルコール、メシチルオキシド、ホロン、イソホロンなど)が分解することにより生成すると推定されている。
非特許文献1のH−βやH−ZSM−5の場合のように、ゼオライトの酸点にプロトンが多く存在する場合には、炭素析出により活性点の酸性質がある程度弱められ、触媒の活性が低下するまでは、高選択的にイソブチレンが生成することは期待できない。したがって、プロトン型のゼオライトでは、反応初期から高選択的にイソブチレンを製造することは困難である。一般的に、炭素析出は強い酸点で起こりやすい。このため、反応初期からイソブチレンを製造するためには、酸点の強さを適度に調節したゼオライト触媒を用いる、あるいはゼオライトよりも弱い酸点を有する触媒を用いることが有効であると考えられる。同時に、この場合炭素析出抑制の効果から、触媒寿命の延長も期待される。
また、特許文献1の方法などによりバイオマスから製造したアセトンはバイオマス由来のアセトンであり、さらにそのアセトンをイソブチレンへ変換すれば、バイオマス由来イソブチレンが製造可能となる。そのバイオマス由来イソブチレンをもとにして、イソブチレン直接酸化法などによるバイオマス由来MMAの製造も可能である。
本発明の目的は、アセトンからイソブチレンを反応初期から高選択率で収率よく製造する方法を提供することである。また、バイオマスから製造されるアセトンをイソブチレンに変換することで、バイオマス由来イソブチレンを製造することも本発明の目的である。
本発明は、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト類似物質、並びにメソ多孔性シリカ及びそれを基材とする固体酸触媒からなる群から選択される少なくとも一つを触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する方法である。
また本発明は、ゼオライト又はゼオライト類似物質のうち、該ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも小さな分子サイズを有する有機ケイ素化合物により酸点を不活性化処理したゼオライト又はゼオライト類似物質を触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する方法である。
さらに本発明は、前記アセトンが、バイオマスを原料として製造されたアセトンである。
本発明によれば、アセトンからイソブチレンを反応初期から高選択率で収率よく製造する方法を提供することができる。また、バイオマスから製造されるアセトンをイソブチレンに変換することで、バイオマス由来イソブチレンを製造することができる。
アセトンからイソブチレンへの変換反応において推測される反応機構を示した図である。 アルミノケイ酸塩におけるB酸点の形成機構を示した図である。 本実施例において用いた反応装置の概略を示す図である。 実施例1における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例2における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例3における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例4における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例5における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例6における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 実施例7における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 比較例1における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 比較例2における反応時間に対するアセトン転化率、生成物選択率及びオレフィン中のイソブチレンの選択率を示した図である。 有機ケイ素化合物による酸点不活性化処理(シラン接触分解法)の概略を示した図である。 Space−Fillingモデルにおけるベータ型ゼオライトの細孔構造を示した図である。 Space−Fillingモデルにおけるフェニルシランの分子構造を示した図である。 Space−Fillingモデルにおけるビス(3,5−ジメトキシフェニル)シランの分子構造を示した図である。 Space−Fillingモデルにおけるトリス(3,5−ジメチルフェニル)シランの分子構造を示した図である。 各種有機ケイ素化合物によるMFI型ゼオライトの酸点不活性化度の相違を示した模式図である。
本発明に係るアセトンからイソブチレンを製造する方法において、用いる触媒は、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト類似物質、並びにメソ多孔性シリカ及びそれを基材とする固体酸触媒からなる群から選択される少なくとも一つである。
ゼオライトとは一般的に結晶性の多孔質アルミノケイ酸塩の総称である。ゼオライトは、四面体構造である(SiO44-と(AlO45-を基本構造単位とし、これらが3次元的に連結することで結晶を形成している。また、アルミニウムイオン以外の3価あるいは4価の元素をケイ酸塩骨格に組み込んだメタロケイ酸塩もゼオライトに含まれる。ゼオライトの細孔の入口径は0.4〜0.8nm程度であるため、入口径よりも小さな分子は細孔内に進入できるが、大きな分子は進入できない分子ふるい作用を有する。これらは、構造及び組成が多様であるため、構造コード、生成過程、鉱物学、細孔径、細孔の次元、アルミニウム濃度、他のカチオン濃度及び構成元素などのさまざまな観点から異なる分類がなされている(ゼオライトの科学と工学、小野嘉夫・八嶋建明/編、講談社サイエンティフィック参照)。ゼオライト類似物質とは、ケイ酸塩のゼオライトと類似の構造及び酸点を有する化合物であり、リン酸塩系多孔質結晶が代表的である。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は、ブレンステッド酸点であることが好ましい。一般的に、固体酸触媒における酸点の種類は、ブレンステッド酸点とルイス酸点に大きく分類される。ブレンステッド−ローリーの酸・塩基の定義によれば、ブレンステッド酸(B酸)とはプロトン(H+)を放出する酸であり、ルイス酸(L酸)とはH+の授受を伴わず、電子対の受容により酸反応を媒介する酸である。
ゼオライトのようなアルミノケイ酸塩においては、4価のSiの一部が3価のAlに置換されており、その電気的中性を保つために、SiとAlを架橋するOへのプロトン付加とAl上への負電荷生成が起こり、図2に示すように架橋OH基によるB酸点が形成される。このB酸点の性質は、ゼオライトの構造、導入される金属あるいは金属イオンの種類あるいはAlの含有量などによって異なる。ゼオライトにおけるAl含有量は、29SiのMAS−NMRから、Siに対するAlの比(Si/Al)を算出することで求めることができる。本発明におけるゼオライトのSi/Alには制限はないが、5〜500であることが好ましい。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は、カチオンによりイオン交換されている。カチオン交換により発現する酸強度は、カチオンの種類や価数よって異なる。カチオンの価数により、カチオン1つにつき交換される酸点の数が変化し、n価のカチオンを用いるとカチオン1つにつきn個の酸点のプロトンを交換することができる。即ち、1価のカチオンでは、カチオン/酸点=1/1で、2価のカチオンでは、カチオン/酸点=1/2で交換される。イオン交換に用いられるカチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、パラジウム、銀などの、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素及び遷移金属からなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンが挙げられる。本発明においては、この中でも、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンが好ましい。また、カチオンによりイオン交換されたゼオライト又はゼオライト類似物質は格子酸素イオンに由来する塩基性を示す場合もあり、強い酸点が必要でない一般的な酸・塩基触媒反応においては、酸点と塩基点とが協奏的に働いて触媒作用を示す。
ゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点プロトンのカチオンによるイオン交換手法には制限はない。例えば、ゼオライト又はゼオライト類似物質を蒸留水に分散させた溶液に、交換に用いるカチオンの硝酸塩を添加し、加熱還流を行う。加熱還流終了後、蒸留水で洗浄して風乾することで、カチオン交換ゼオライト又はゼオライト類似物質を得ることができる。必要に応じて該操作を繰り返し、カチオン交換の度合いを調節することも可能である。また、テンプレート含有ゼオライト又はゼオライト類似物質から調製する場合には、まず、焼成によりテンプレートを除去後、テンプレート除去ゼオライト又はゼオライト類似物質を蒸留水に分散させる。該分散溶液に硝酸アンモニウムを添加して加熱還流を行い、蒸留水で洗浄、風乾することにより、一度アンモニウムイオン交換ゼオライト又はゼオライト類似物質を調製する。その後、該アンモニウムイオン交換ゼオライト又はゼオライト類似物質を前述した方法と同様の方法で目的のカチオンとイオン交換することにより、カチオン交換ゼオライト又はゼオライト類似物質を調製することができる。
また、本発明に係るアセトンからイソブチレンを製造する方法において、用いる触媒は、その細孔径よりも小さな分子サイズを有する有機ケイ素化合物により酸点を不活性化処理したゼオライト又はゼオライト類似物質である。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は、有機ケイ素化合物により不活性化処理されている。ゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は、結晶外表面、細孔入口付近及び細孔内部のいずれにも存在し、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径に対する有機ケイ素化合物の分子サイズを選択することにより、酸点の位置による不活性化処理の有無を制御可能である。一般的に、空間的制限のない結晶外表面の酸点では、芳香族生成、オレフィン消費、炭素析出などが顕著に起こると考えられる。また、細孔内部の酸点のうち、ゼオライトのクロスセクションに存在する酸点では、その酸点密度の高さから前記反応が起こりやすいと考えられる。本発明においては、これらのイソブチレン生成に好適でない外表面及び細孔内部の酸点を、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも小さい分子サイズを有する有機ケイ素化合物により適切に不活性化することで、アセトンからイソブチレンを反応初期から高選択率で収率よく製造できる。
なお、本発明においてゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径とは、ケイ素およびアルミニウムと酸素からなる環構造の解析から求められる細孔開口部のアパーチャー径をもとに、各原子のファンデルワールス半径を考慮して算出して得られる細孔径を示す。
また、本発明における分子サイズとは、ファンデルワールス半径をもとに算出した分子サイズを示す。本発明における代表的な原子のファンデルワールス半径は、水素(H):0.12nm、炭素(C):0.17nm、酸素(O):0.152nm、ケイ素(Si):0.21nmである。
図14に、The International Zeolite Associationのゼオライト構造データベースに記載のBEA型ゼオライトの結晶構造をもとにして、各原子のファンデルワールス半径を用いたSpace−Fillingモデルにより示したBEA型ゼオライトの構造を示す。占有体積を表すファンデルワールス半径を用いると、BEAの細孔径は、一般的に用いられるBEAのアパーチャー径(0.64×0.76nm)よりも小さく表現される。また、図14においては、T原子は全てケイ素(Si)とした。図15〜17には、フェニルシラン(図15)、ビス(3,5−ジメトキシフェニル)シラン(図16)およびトリス(3,5−ジメチルフェニル)シラン(図17)の有機ケイ素化合物について、各原子のファンデルワールス半径を用いたSpace−Fillingモデルによる構造を示す。
有機ケイ素化合物が細孔開口部に対する分子サイズを最小にする方向で細孔に接近したとき、その分子サイズが細孔径よりも小さい場合には、細孔内へ侵入(拡散)することができる。図14のBEA型ゼオライトの細孔径と図15〜17の有機ケイ素化合物の分子サイズを比較する。1つのベンゼン環を有するフェニルシラン(図15)はBEA型ゼオライトの細孔内へ侵入(拡散)することが可能である。しかし、2つおよび3つのベンゼン環を有するビス(3,5−ジメトキシフェニル)シラン(図16)およびトリス(3,5−ジメチルフェニル)シラン(図17)では、細孔内への侵入(拡散)が困難である。一方、ベンゼン環を有さず、ベンゼン環よりも小さなメチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基などのアルキル基やアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物は、細孔内への侵入(拡散)が容易である。したがって、有機ケイ素化合物の分子サイズによって、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔内への侵入(拡散)挙動が異なり、細孔内部の酸点まで不活性化できるかどうかが決定される。
また、細孔径よりも小さい分子サイズとは開口部の細孔径よりも小さいサイズを示し、非等方的な細孔においては長軸方向の開口部細孔径よりも小さいサイズを示す。
本発明における有機ケイ素化合物としては、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも小さい分子サイズを有し、下記式(1)に示す化合物を用いることができる。
(前記式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基及び水素からなる群から選択される1種を表す。また、R4は水素を表す)。
ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径にもよるが、前記アルキル基としては、メチルプロピオキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。また、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、前記アリール基としては、フェニル基、メチルフェニル等が挙げられる。
前記有機ケイ素化合物としては、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径にもよるが、具体的にはジエトキシメチルシラン、フェニルシラン、テトラメチルシラン等が挙げられる。しかし、有機ケイ素化合物はこれらに限定されない。
これら有機ケイ素化合物の種類は、ゼオライト及びゼオライト類似物質の細孔径、不活性化する酸点の位置、有機ケイ素化合物の物性及び入手の容易性などを考慮して、適宜選択することが可能である。例えば、0.64×0.76nmのアパーチャー径(Aperture size)を有するβゼオライトでは、フェニルシラン(R1=C65、R2=R3=R4=H)、ジエトキシメチルシラン(R1=R2=C25O、R3=CH3、R4=H)などが好適である。
有機ケイ素化合物によるゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点を不活性化する処理方法には制限はない。例えば、有機ケイ素接触分解法(以下、シラン接触分解法)が挙げられる。該手法ではまず、ゼオライト又はゼオライト類似物質と、加熱により気化させた有機ケイ素化合物とを物理接触させることで有機ケイ素化合物をゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点に化学吸着させる。その後、高温で焼成することで、化学吸着した有機ケイ素化合物の有機物部分を除去しシリカ(SiO2)へと変性させる。これにより、ゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は不活性化される。不活性化により生じたSiO2は反応中においても安定に存在する上、炭素析出などによる触媒劣化も抑制されるため、選択性の向上のみならず触媒寿命の延長を達成することもできる。有機ケイ素化合物の化学吸着温度及びその後の焼成温度は、該有機ケイ素化合物の沸点や熱分解特性などを考慮して適宜選択される。
シラン接触分解法の概念図を図13に示す。図13では有機ケイ素化合物としてメチルジエトキシシラン(DEMS)を用いている。まず、ゼオライト又はゼオライト類似物質の外表面及び細孔内に存在する酸点にDEMSが化学吸着する。その後、N2雰囲気下で加熱されることにより、揮発性の炭化水素が気化し、不揮発性のSi含有物が酸点上に残存する。さらに空気中で焼成することによりSi含有物がSiO2となり安定化し、酸点上にSiO2を選択的に形成することができる。
また、MFI型ゼオライト(アパーチャー径:0.54×0.56nm)を例としたときの有機ケイ素化合物の種類による酸点不活性化度の相違を図18に示す。図18では有機ケイ素化合物として、DEMS、フェニルシラン(PS)、ジフェニルメチルシラン(DPMS)、トリフェニルシラン(TPS)を用いている。前記ゼオライトの細孔径よりも小さい分子サイズを有するDEMS及びPSについては、図18に示すようにゼオライトの外表面に存在する酸点、細孔内に存在する酸点いずれも不活性化される。一方、前記ゼオライトの細孔径よりもやや大きい分子サイズを有するDPMSについては、ゼオライトの外表面に存在する酸点及び細孔入口付近に存在する酸点については不活性化されるが、細孔内部に存在する酸点は不活性化されない。さらに、前記ゼオライトの細孔径よりも大きい分子サイズを有するTPSについては、ゼオライトの外表面に存在する酸点のみが不活性化され、細孔内に存在する酸点は不活性化されない。本発明においては、酸点の不活性化にゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも分子サイズが小さい有機ケイ素化合物を用いるため、図18のDEMS及びPSを用いた例のようにゼオライト又はゼオライト類似物質の外表面に存在する酸点、細孔内に存在する酸点の両者を不活性化することができる。
前記有機ケイ素化合物による酸点の不活性化処理は、脱アルミニウム処理やカチオン交換したゼオライト及びゼオライト類似物質に対しても適用可能であり、脱アルミニウム処理により生じるネストシラノールに対しても適用可能である。
ゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点の性質(量、強度)は、アンモニアなどの塩基性分子をプローブとして用いた昇温脱離法(TPD)や吸着熱法によって求めることができる。本発明においては、ゼオライト又はゼオライト類似物質の酸性OH基のプロトンが、カチオンによりイオン交換されることにより、アンモニアTPDにおける573K以上に現れるアンモニア脱離ピークが減少する。一般的に、アンモニアTPDでの573K以上のアンモニア脱離ピークは、ゼオライト又はゼオライト類似物質の強い酸点に起因するものであり、本発明においては、より強い酸点のプロトンの一部あるいは全てがカチオン交換されることによって、アセトンからイソブチレンを製造するために好適な酸点が形成される。これにより、反応初期からイソブチレンを高選択的に製造可能となる。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔構造及び細孔径には制限はないが、酸素10員環以上の細孔を有するゼオライト又はゼオライト類似化合物が好ましい。酸素10員環よりも小さな細孔を有するゼオライト又はゼオライト類似化合物を用いると、イソブチレンの細孔外への拡散が阻害されることによる分解や逐次酸化が増加し、イソブチレンの選択性が低下する場合がある。酸素10員環以上を有するゼオライト又はゼオライト類似化合物としては、AlPO4−11(AEL)、EU−1(EUO)、フェリエライト(FER)、ヒューランダイト(HEU)、ZSM−11(MEL)、ZSM−5(MFI)、NU−87(NES)、シータ−1(TON)、ウェイネベアイト(WEI)、AlPO4−5(AFI)、AlPO4−31(ATO)、ベータ(BEA)、CIT−1(CON)、X、Y、ホージャサイト(FAU)、グメリナイト(GME)、L(LTL)、モルデナイト(MOR)、ZSM−12(MTW)、オフレタイト(OFF)、STA−1(SAO)、SAPO−37(FAU)、クローバライト(CLO)、VPI−5(VFI)、AlPO4−8(AET)、CIT−5(CFI)及びUTD−1(DON)などが挙げられる。カッコ内は構造コードである。この中でも、細孔径や酸強度の観点からMFI、X、Y、BEAおよびFAUが好ましい。これらのゼオライト及びゼオライト類似物質は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。しかし、本発明におけるゼオライト及びゼオライト類似物質はこれらに限定されない。これらのゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点プロトンを、カチオンによりイオン交換する、もしくは、有機ケイ素化合物により不活性化処理することで、好適な触媒が得られる。
ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔は、1次元、2次元あるいは3次元に規則的に発達した細孔径が2nmよりも小さいミクロ細孔である。規則性ミクロ細孔の有無は、透過型電子顕微鏡(TEM)などによる観察により確認することができる。
また、本発明の製造方法における触媒は、メソ多孔性シリカまたはそれを基材とする固体酸触媒である。メソ多孔性シリカとは、メソポーラスシリカとも呼ばれ、細孔径2〜50nmの細孔が、1次元、2次元あるいは3次元に均一な大きさかつ規則的に発達したSi−O骨格からなる化合物である。規則性メソ細孔の有無は、TEMによる観察の他、窒素吸着法及びX線回折法によっても確認することができる。代表的なメソ多孔性シリカとしては、FSM−16、MCM−41、MCM−48、MCM−50及びSBA−15などが挙げられる。これらはシラノール基由来のOH基(Si−OH)を有しており、ゼオライト又はゼオライト類似物質よりも弱い酸性を示すことが知られている。メソ多孔性シリカが有する弱い酸点は、本発明における反応の進行には好適である。また、メソ多孔性シリカにアルミニウムやニッケルを含有させたメソ多孔性シリカを基材とする固体酸触媒も、本発明の製造方法における触媒として好適である。
本発明においては、主にアセトンの二量化反応あるいは三量化反応を経由して、イソブチレンが生成される(図1)。アセトンのアルドール縮合によって生成するジアセトンアルコール及びメシチルオキシド、メシチルオキシドとアセトンとのアルドール縮合によって生成するホロン、及びホロンの1,6−マイケル付加によって生成するイソホロンの分解反応により、イソブチレンが生成する。このアセトンの自己縮合反応及び引き続く分解反応は非常に複雑であり、種々の反応経路が考えられるため、図1ではイソブチレン生成への寄与が大きいと考えられる経路を挙げた。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質の酸点は、カチオンによりイオン交換されている、もしくは、有機ケイ素化合物により不活性化処理されている。アセトンのアルドール縮合反応はカチオン交換されたB酸点によって特に促進される。一般的に、アルドール縮合反応は比較的弱い酸の他、塩基によっても進行し、強い酸が必須ではない。本発明におけるアセトンのアルドール縮合反応は、二量化及び三量化のどちらの反応経路においても鍵となる反応であり、イソブチレン生成にはカチオン交換されたB酸点は不可欠である。一方、L酸点では芳香族化や炭素析出などが促進される場合も多く、B酸点が存在せず、L酸点のみ存在する触媒を用いた場合には、イソブチレンはほとんど生成しない。
本発明においては、規則的に発達したミクロ細孔あるいはメソ細孔という制御された空間内で反応が進行することにより、アセトンの縮合反応が三量化までに抑制され、それ以上の縮合による副反応が抑制されることにより、イソブチレン選択性及び収率の向上が可能となる。規則的な細孔空間を有さない触媒では、アセトン縮合度の制御が不十分であり、イソブチレン選択性及び収率は高くない。
本発明においては、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔内に存在する酸点で反応が進行することが好ましく、細孔外に存在する酸点を除去することも性能向上には有効である。具体的には、シラン化剤を用いて、細孔外に存在する酸点を選択的に修飾する。さらに、本発明においては、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔内において、イソブチレンの酸化、2量化などの好ましくない逐次反応を抑制するために、ゼオライト又はゼオライト類似物質の結晶の大きさを小さくすることで、細孔内での拡散を制御することも可能である。
本発明におけるゼオライト又はゼオライト類似物質、メソ多孔体の製造方法には、特に制限はなく、一般的な金属酸化物や酸触媒の合成手法が適用できる。また、触媒の結晶性や粒子径を制御するために、水熱合成や常圧合成を適宜使い分けることができる。一般的に、ゼオライトやメソポーラスシリカのように規則性細孔を有する触媒は、pH、温度及び圧力などを制御して、テンプレートである界面活性剤と無機種(触媒前駆体)が自己組織的に集合した構造体を構築した後、熱処理によりテンプレートを除去し、洗浄、イオン交換及び乾燥を適宜行うことで調製することができる。この場合の細孔の大きさや形状は、集合体生成条件、界面活性剤の炭素鎖長などにより制御可能である。
本発明におけるアセトンは、各種バイオマス原料から製造されたアセトンを原料として用いることができる。また、石油精製、化学工業で得られるクメン法フェノール製造の副生アセトンなどを用いても差し支えない。アセトンの含水率は0.6質量%以上である。アセトンの含水率が0.6質量%以上の場合、反応中に水分子が触媒上の酸点に吸着して酸点強度が変化することにより、副反応やコーキングが抑制され、イソブチレン選択率や収率が向上する。アセトンの含水率は0.75質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、アセトンの含水率は20質量%以下である。アセトンの含水率が20質量%以下の場合、長時間の使用時にゼオライト骨格中のAlの脱離に伴う触媒機能の低下が比較的起こりにくく触媒寿命が長くなる。アセトンの含水率は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
アセトンは自分で合成したものや市販品を使用することができる。アセトンの含水率を測定し、含水率が低い場合は蒸留水等を加えて含水率を高くすることができる。アセトンの含水率が高い場合は、蒸留やモレキュラーシーブによって含水率を低くすることができる。アセトンの含水率は、アセトンの含水率が低い場合はカールフィッシャー法にて、アセトンの含水率が高い場合はTCD−ガスクロマトグラフ法にて測定することが好ましい。
なお、本発明においてはアセトンの含水率が高くても、便宜的にアセトン水溶液ではなく、アセトンと称する。
本発明におけるアセトンからイソブチレンを製造する方法は、気相反応が好適である。反応器としては、固定床流通式反応器が用いられる。バッチ式及び連続式のいずれもが使用可能であるが、生産性を考慮すれば、連続式が好ましい。
反応に用いる触媒の質量をW(kg−cat)、アセトンの流量をF(kg−アセトン/h)とする。W/Fは0.01h以上が好ましく、より好ましくは0.05h以上、さらに好ましくは0.1h以上である。また、W/Fは20以下が好ましく、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。
同伴させる流通ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、酸素及びこれらの混合ガスを用いることができる。
反応温度は250℃以上が好ましく、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。また、反応温度は650℃以下が好ましく、より好ましくは600℃以下、さらに好ましくは550℃以下である。
反応圧力は常圧で差し支えないが、背圧弁などを用いて、必要に応じて加圧することも可能である。
本発明によれば、アセトンからイソブチレンを反応初期から高選択率で収率よく製造できる触媒を提供することができる。また、炭素析出抑制により触媒寿命を延長させることができる。また、バイオマスから製造可能なアセトンを原料としてイソブチレンを製造する新たな製造方法を実現し、バイオマス由来イソブチレンの供給が可能となる。さらに、得られたバイオマス由来イソブチレンを用いて、MMAモノマーなどの化学品を製造することができる。
以下、本発明において、実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(反応装置)
本実施例において、反応装置には固定床流通式触媒反応器を用いた。本実施例で使用した反応装置の概略を図3に示す。原料であるアセトンをマイクロフィーダー1から、同伴ガスである窒素(N2)をN2ボンベ3から流量計2を介して供給した。供給したアセトンを、テープヒーター4による加熱部分(130℃)において気化し、触媒を充填した固定床流通式反応器5に導入した。固定床流通式反応器5には、電気炉6及び熱電対7が備え付けられている。固定床流通式反応器5の出口部分も、テープヒーター8により加熱した(145℃)。ガス状の原料及び生成物をガスクロマトグラフ9に導入して分析した。分析ガス以外のガスはパージバルブ10から排気した。
(原料及び生成物の分析)
原料及び生成物の分析は、ガスクロマトグラフ(GC)法で行った。
原料であるアセトンをA(モル)、GC法により求められた残存アセトンをB(モル)とした場合、アセトンの転化率C(%)は以下のように表される。
C(%)=100×(A−B)/A
また、GCにより検出された各生成物のモル数をD(n)(モル)とした場合、各生成物の選択率S(n)(%)は以下のように表される。D(n)は、目的生成物であるイソブチレンの炭素数4を基準として換算した。
S(n)(%)=100×D(n)/(A−B)
GC法により検出され同定された生成物は、オレフィン(エチレン、プロピレン、イソブチレン)の他、酢酸、パラフィン、芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン)であった。不明成分は合算し、その他とした。炭素析出反応により析出し、反応後の触媒上に残存した炭素成分(コーク)の分析は、熱重量分析(TG)により行った。
[実施例1]
(触媒調製)
・テンプレート除去
テンプレート含有NH4型ベータ型ゼオライト(商品名:「HSZ−930NHA」、東ソー株式会社製、略号:BEA、SiO2/Al23=27)を、空気中で、毎分1.94℃で350℃まで、3時間で昇温し、3時間保持した。その後、引き続いて毎分1.1℃で550℃まで、3時間で昇温し、48時間保持してテンプレートを除去した。
・イオン交換処理
テンプレートを除去したNH4型ベータ型ゼオライト(H−BEA)5gを、蒸留水150mlに分散し、硝酸アンモニウム(NH4NO3)10gを添加して、70℃で3時間加熱還流した。還流終了後、蒸留水で洗浄し風乾した。この操作を合計3回行い、アンモニウム型BEA(NH4−BEA)を得た。ここで、2回目及び3回目の操作におけるNH4NO3量はそれぞれ15g及び20gとした。さらに、得られたNH4−BEA5gを蒸留水150mlに分散し、硝酸カリウム(KNO3)を添加して、70℃で3時間加熱還流した。このイオン交換処理を合計3回行い、カリウム型BEA(K−BEA)を得た。ここで、用いたKNO3量は、1回目:10g、2回目:15g及び3回目:20gとした。
・前処理
反応前に、触媒を500℃で1時間空気焼成した。
(アセトンの調製)
アセトンとして、関東化学(株)製の特級アセトンを用いた。このアセトンについてカールフィッシャー法にて含水率を測定した結果、0.01質量%未満であった。このアセトンに和光純薬工業(株)製の蒸留水を加えて、含水率4.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.69gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率4.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分58.1cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図4に示す。なお、オレフィン選択率の下に示した括弧内の数字は、オレフィン中のイソブチレンの選択率を示す(図5から7、11及び12においても同様とする)。また、後述するすべての実施例、比較例の反応条件において、同伴ガス中のアセトン濃度とW/F値を統一するために、同伴ガス流量と触媒量をそれぞれわずかに変化させている。
[実施例2]
(触媒調製)
実施例1と同様に、カリウム型BEA(K−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率3.5質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.69gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率3.5質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分58.3cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図5に示す。
[実施例3]
(触媒調製)
実施例1と同様に、カリウム型BEA(K−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率3.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.69gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率3.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分58.6cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図6に示す。
[実施例4]
(触媒調製)
実施例1と同様に、カリウム型BEA(K−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率2.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.70gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率2.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分59.1cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図7に示す。
[実施例5]
(触媒調製)
実施例1と同様に、カリウム型BEA(K−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率4.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.70gを触媒とし、W/F=1.0hで、含水率4.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分29.1cc(0.0018m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図8に示す。
[実施例6]
(触媒調製)
実施例1と同様に、調製したカリウム型BEA(K−BEA)にフェニルシラン処理を行ったPS1K−BEAを調製した。
・有機ケイ素化合物処理
前記イオン交換処理で得られたK−BEA 1.0gを有機ケイ素化合物処理装置のガラス製焼成管に充填し、石英ウールで固定した。40ml/minの空気流通下、550℃まで昇温し、550℃で1時間保持した。その後、流通ガスをN2ガスに切り替えて100℃まで放冷した。焼成炉が100℃に安定後、N2ガスにフェニルシラン(東京化成工業株式会社製、略号:PS)を47℃で気化器から同伴させ、K−BEAにPSを化学吸着させた。30分後気化装置を放冷し、40℃以下になった時点で焼成管も放冷した。焼成管を取り出し、軽く振とうしてゼオライト層をかき混ぜた後、再び焼成管を焼成炉に保持し、N2ガスを流通して100℃に加熱し、PSの化学吸着を繰り返した。その後、550℃で1.5時間N2ガス下焼成の後、引き続いて550℃で1.5時間空気焼成して有機シラン処理を行ったK−BEA(PS1K−BEA)を得た。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率4.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したPS1K−BEA(Si/Al=13.5)0.70gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率4.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分58.2cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図9に示す。
[実施例7]
(触媒調製)
実施例6と同様に、PS1K−BEAを調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率4.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したPS1K−BEA(Si/Al=13.5)0.70gを触媒とし、W/F=1.0hで、含水率4.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分29.1cc(0.0018m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図10に示す。
[比較例1]
(触媒調製)
実施例1と同様に、カリウム型BEA(K−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1の関東化学(株)製の特級アセトンをそのまま用いた。
(反応評価)
調製したK−BEA(Si/Al=13.5)0.69gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率0.01質量%未満のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分60.0cc(0.0036m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図11に示す。
[比較例2]
(触媒調製)
実施例1と同様に、テンプレートを除去したNH4型ベータ型ゼオライト(H−BEA)を調製した。
(アセトンの調製)
実施例1と同様の方法で、含水率4.0質量%のアセトンを調製した。
(反応評価)
調製したH−BEA(Si/Al=13.5)0.69gを触媒とし、W/F=0.5hで、含水率4.0質量%のアセトンを供給した。同伴ガスとしてN2ガスを毎分58.1cc(0.0035m3/h)で供給した。反応評価は500℃で行った。このときの反応時間に対するアセトンの転化率と生成物選択率を図12に示す。
なお、本実施例、比較例においては市販のアセトンを原料に用いているが、バイオマスを原料として製造されたアセトンを原料に用いた場合にも、同様の効果が得られる。
1 マイクロフィーダー(アセトン供給用)
2 流量計
3 N2ボンベ
4 テープヒーター
5 固定床流通式触媒反応器(触媒充填)
6 電気炉
7 熱電対
8 テープヒーター
9 ガスクロマトグラフ(GC)
10 パージバルブ

Claims (5)

  1. カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト、カチオンによりイオン交換された酸点を有するゼオライト類似物質、並びにメソ多孔性シリカ及びそれを基材とする固体酸触媒からなる群から選択される少なくとも一つを触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する方法。
  2. ゼオライト又はゼオライト類似物質のうち、ゼオライト又はゼオライト類似物質の細孔径よりも小さな分子サイズを有する有機ケイ素化合物により酸点を不活性化処理したゼオライト又はゼオライト類似物質を触媒として用いて、含水率が0.6〜20質量%のアセトンからイソブチレンを製造する方法。
  3. 有機ケイ素化合物がメチルジエトキシシラン又はフェニルシランである請求項2に記載のアセトンからイソブチレンを製造する方法。
  4. ゼオライトがベータ型ゼオライト又はMFI型ゼオライトである請求項1から3のいずれか1項に記載のアセトンからイソブチレンを製造する方法。
  5. アセトンがバイオマスを原料として製造されたアセトンである請求項1から4のいずれか1項に記載のアセトンからイソブチレンを製造する方法。
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