JP2013134093A - 環境雰囲気の不純物汚染評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境雰囲気中のリンを、高精度に評価するため手段を提供すること。
【解決手段】環境雰囲気中の不純物汚染評価方法。前記評価対象不純物はリンを含み、評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること、上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること、紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること、ならびに、前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること、を含む。
【選択図】なし
【解決手段】環境雰囲気中の不純物汚染評価方法。前記評価対象不純物はリンを含み、評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること、上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること、紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること、ならびに、前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること、を含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、環境雰囲気の不純物汚染評価方法に関するものであり、詳しくは、半導体基板が製造工程において、または保管中に直接曝露される環境雰囲気のリンによる汚染を評価する方法に関するものである。
シリコンウェーハ等の半導体基板が製造工程において、または保管中に直接曝露される環境雰囲気が不純物により汚染されていると、同雰囲気から半導体基板に不純物が混入して基板特性に悪影響を及ぼす。中でもリンは、半導体基板の導電型や抵抗率を決めるドーパント元素であるため意図せぬ汚染は回避すべきである。したがって、上記環境雰囲気におけるリンの汚染量を正確に把握することは、工程管理上、きわめて重要である。
上記環境雰囲気の不純物汚染の評価方法としては、評価対象雰囲気に放置したシリコンウェーハにCVD法により多結晶シリコンを堆積させ、シリコンウェーハと多結晶シリコンとの間に閉じ込めた不純物を二次イオン質量法(SIMS)により分析する方法(Poly−Si Capped SIMS法)が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、上記Poly−Si Capped SIMS法は、CVD処理に時間が掛かることやCVD炉内での不純物汚染の影響を受けること、更にはSIMSによるリンの検出限界が高い(通常、1E10at/cm2程度)ため高感度分析が困難であることなど、多くの課題を有する。
一方、環境雰囲気の不純物汚染の評価方法としては、評価対象雰囲気中の不純物をインピンジャーで捕獲し誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)で分析する方法(インピンジャー法)、シリコンウェーハを測定対象雰囲気中に数時間曝露させ、曝露後ウェーハ表面の汚染をフッ酸系溶液で回収し、ICP−MSで測定する方法(シリコンウェーハ曝露法)が知られている。しかし、シリコンウェーハ曝露法は、不純物がウェーハ表面に集まるまでに長時間(通常12時間超)かかるため測定に時間を要する。これに対しインピンジャーは、比較的短時間で雰囲気気体の捕集が可能であること、ICP−MSは分析感度が高いため高感度分析が可能であること等の利点がある。しかし、ICP−MSは測定原理上有機物を分析できないため、評価対象雰囲気中に有機物の状態で存在するリンは定量結果に影響を及ぼさない。一方で半導体基板の導電型や抵抗率は、無機物として存在するリンの影響を受けるが、有機リン化合物は加水分解や熱分解によって無機リン化合物となって半導体基板の導電型や抵抗率に影響を及ぼす可能性があるため、有機物の状態で存在するリンの存在が反映された定量結果が得られることが、評価対象の環境雰囲気に含まれ、半導体基板の性能に影響を与える可能性のあるリンの存在量をより高精度に把握するうえで望ましい。
そこで本発明の目的は、環境雰囲気中のリンを、高精度に評価するため手段を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、環境雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気した後に紫外線を照射することで、過酸化水素、紫外線のエネルギー、および過酸化水素に紫外線が照射されることで発生するヒドロキシラジカルのそれぞれの分解力によって有機物が分解され無機物となり、これによりICP−MSによって環境雰囲気中で有機物として存在していたリンの存在が反映された評価結果を得ることが可能となることを新たに見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は下記手段によって達成された。
[1]環境雰囲気中の不純物汚染評価方法であって、
前記評価対象不純物はリンを含み、
評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること、
上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること、
紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること、ならびに、
前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること、
を含む、前記評価方法。
[2]前記水溶液は、濃度5〜30質量%の過酸化水素水である[1]に記載の評価方法。
[3]前記雰囲気気体の通気を、インピンジャーバブリングによって行う[1]または[2]に記載の評価方法。
[4]前記環境雰囲気は、半導体基板の製造および/または保管雰囲気である[1]〜[3]のいずれかに記載の評価方法。
[5]前記評価対象不純物はホウ素を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の評価方法。
[1]環境雰囲気中の不純物汚染評価方法であって、
前記評価対象不純物はリンを含み、
評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること、
上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること、
紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること、ならびに、
前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること、
を含む、前記評価方法。
[2]前記水溶液は、濃度5〜30質量%の過酸化水素水である[1]に記載の評価方法。
[3]前記雰囲気気体の通気を、インピンジャーバブリングによって行う[1]または[2]に記載の評価方法。
[4]前記環境雰囲気は、半導体基板の製造および/または保管雰囲気である[1]〜[3]のいずれかに記載の評価方法。
[5]前記評価対象不純物はホウ素を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の評価方法。
本発明によれば、クリーンルーム等の半導体基板が製造ないし保管中に直接曝露される環境雰囲気の、該基板の性能に影響を及ぼす可能性のあるリンによる汚染レベルを、より正確に評価することができる。そして得られた結果に基づき上記環境雰囲気の清浄度を調整および管理することによって、高品質な半導体基板を安定供給することが可能となる。
本発明は、環境雰囲気の不純物汚染評価方法に関するものである。評価対象となる環境雰囲気は、例えば、製造工程や保管中に半導体基板が直接曝露されるクリーンルーム等である。
本発明の評価方法における評価対象不純物はリンを含む。前述のように、リンは半導体基板の導電型や抵抗率を決めるドーパント元素であるため、製造工程や保管中に半導体基板が直接曝露される環境雰囲気のリンの汚染レベルを正確に把握することは、工程管理および品質管理上、きわめて重要である。しかし、先に説明したように、高感度分析法として知られるICP−MSは、有機物の状態で存在するリンを定量することができないという課題がある。これに対し本発明は、以下の工程:
評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること(以下、「第一工程」という。)、
上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること(以下、「第二工程」という。)、
紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること(以下、「第三工程」という。)、ならびに、
前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること(以下、「第四工程」という。)、
を経ることによって、リンを高精度に分析することを可能とする。これは、有機物の状態で捕集された上記評価対象不純物を無機物に分解してICP−MS分析に付すことができるため、加水分解等によって半導体基板の性能に影響を及ぼす無機物になる可能性のある環境雰囲気中の有機物の存在が反映された評価結果を得ることができるためである。以下、この点についてより具体的に説明する。
評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること(以下、「第一工程」という。)、
上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること(以下、「第二工程」という。)、
紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること(以下、「第三工程」という。)、ならびに、
前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること(以下、「第四工程」という。)、
を経ることによって、リンを高精度に分析することを可能とする。これは、有機物の状態で捕集された上記評価対象不純物を無機物に分解してICP−MS分析に付すことができるため、加水分解等によって半導体基板の性能に影響を及ぼす無機物になる可能性のある環境雰囲気中の有機物の存在が反映された評価結果を得ることができるためである。以下、この点についてより具体的に説明する。
例えば、環境雰囲気に存在し得る有機リン化合物の1つであるトリブトキシエチルホスフェート(TBEP)は、そのままの状態ではICP−MSにより分析できないため、TBEPに含まれるリンはICP−MSのリン定量結果には影響を及ぼさない。これはICP−MSはカーボンを含むものをイオン化できないことが理由である。一方、TBEPを捕集した過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すると、一部のTBEPは過酸化水素の分解力によって分解されるが、過酸化水素の分解力のみでは、捕集したTBEPを十分に分解することは困難である。これに対しTBEPを捕集した過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すると、紫外線エネルギーによる分解力と、過酸化水素に紫外線が照射されることで発生したヒドロキシラジカルの分解力によってもTBEPが分解される結果、評価対象の環境雰囲気には有機物(TBEP)の状態で存在していたリンは、ICP−MSによりイオン化・定量可能なリン酸(無機物)として存在することになる。その他の有機リン化合物の分解の例として、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチルの過酸化水素中での紫外線を照射による分解の反応式を以下に示す。
[リン酸トリメチル]
(CH3O)3PO + 9H2O2 → H3PO4 + 3CO2 + 12H2O
[リン酸トリエチル]
(C2H5O)3PO + 18H2O2 → H3PO4 + 6CO2 + 24H2O
[リン酸トリブチル]
(C3H9O)3PO + 30H2O2 → H3PO4 + 9CO2 + 42H2O
この結果、環境雰囲気に有機物(TBEP)として存在していたリンの存在が反映されたリン定量結果を得ることが可能となるため、半導体基板の性能に及ぼす可能性のあるリンによる汚染の有無やその程度を、より正確に評価することができる。
環境雰囲気に存在し得る他の有機リン化合物についても同様に、上記の分解によって有機物の結合が切れる結果、リン酸等の無機物とカーボンを含む分解物が生成される。また、軽い水素原子は容易に引き抜かれる。そして上記分解生成物の中で無機物は過酸化水素含有水溶液中に溶解しICP−MSにおいて検出、定量されるのに対し、カーボンを含む分解物は通常は周辺の酸素によって酸化しCO2の状態でガス化する。
なおリンとともに半導体基板の導電型や抵抗率を決めるドーパント元素であるホウ素については、有機ホウ素化合物は上記工程を経ることなくICP−MSにより定量可能である。有機ホウ素化合物は揮発性であるが環境雰囲気中またはインピンジャー内で速やかに分解し非揮発性の無機ホウ素化合物となるためである。例えばホウ酸トリブチルは、環境雰囲気中の空気により速やかに無機ホウ素化合物に加水分解するか、またはホウ酸もしくはホウ酸塩イオンの形でインピンジャー内の過酸化水素含有水溶液に捕集分解され、最終的に過酸化水素または水から水酸化物イオンを受容し3価のH3BO3(ホウ酸)またはB(OH)4 −イオンを生成する結果、ICP−MSによりイオン化・定量可能になる。このように、環境雰囲気に混入した有機ホウ素化合物は、有機リン化合物と異なり環境雰囲気中の空気により速やかに加水分解し無機ホウ素化合物を生成するか、またはインピンジャー内で過酸化水素含有溶液に捕集した後に紫外線照射を行うことなくICP−MSにより分析可能な無機物に転換できるため、紫外線照射によって定量値は大きく変化しない。したがって本発明によれば、ある評価対象雰囲気について、リンによる汚染評価とともにホウ素による汚染評価を行うことも可能である。
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
[リン酸トリメチル]
(CH3O)3PO + 9H2O2 → H3PO4 + 3CO2 + 12H2O
[リン酸トリエチル]
(C2H5O)3PO + 18H2O2 → H3PO4 + 6CO2 + 24H2O
[リン酸トリブチル]
(C3H9O)3PO + 30H2O2 → H3PO4 + 9CO2 + 42H2O
この結果、環境雰囲気に有機物(TBEP)として存在していたリンの存在が反映されたリン定量結果を得ることが可能となるため、半導体基板の性能に及ぼす可能性のあるリンによる汚染の有無やその程度を、より正確に評価することができる。
環境雰囲気に存在し得る他の有機リン化合物についても同様に、上記の分解によって有機物の結合が切れる結果、リン酸等の無機物とカーボンを含む分解物が生成される。また、軽い水素原子は容易に引き抜かれる。そして上記分解生成物の中で無機物は過酸化水素含有水溶液中に溶解しICP−MSにおいて検出、定量されるのに対し、カーボンを含む分解物は通常は周辺の酸素によって酸化しCO2の状態でガス化する。
なおリンとともに半導体基板の導電型や抵抗率を決めるドーパント元素であるホウ素については、有機ホウ素化合物は上記工程を経ることなくICP−MSにより定量可能である。有機ホウ素化合物は揮発性であるが環境雰囲気中またはインピンジャー内で速やかに分解し非揮発性の無機ホウ素化合物となるためである。例えばホウ酸トリブチルは、環境雰囲気中の空気により速やかに無機ホウ素化合物に加水分解するか、またはホウ酸もしくはホウ酸塩イオンの形でインピンジャー内の過酸化水素含有水溶液に捕集分解され、最終的に過酸化水素または水から水酸化物イオンを受容し3価のH3BO3(ホウ酸)またはB(OH)4 −イオンを生成する結果、ICP−MSによりイオン化・定量可能になる。このように、環境雰囲気に混入した有機ホウ素化合物は、有機リン化合物と異なり環境雰囲気中の空気により速やかに加水分解し無機ホウ素化合物を生成するか、またはインピンジャー内で過酸化水素含有溶液に捕集した後に紫外線照射を行うことなくICP−MSにより分析可能な無機物に転換できるため、紫外線照射によって定量値は大きく変化しない。したがって本発明によれば、ある評価対象雰囲気について、リンによる汚染評価とともにホウ素による汚染評価を行うことも可能である。
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
第一工程
第一工程では、評価対象雰囲気に含まれていた評価対象不純物を捕集するために、評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気させる。これにより、評価対象雰囲気に含まれていた評価対象不純物を、過酸化水素含有水溶液中に捕集することができる。本工程は、雰囲気気体を上記水溶液に通気させることができる公知の方法によって行うことができ、操作の簡便性と評価対象不純物の捕集効率の高さの点からは、環境雰囲気の分析において汎用されているインピンジャー法によって行うことが好ましい。インピンジャー法は、図1に示すようにインピンジャー3に回収溶液4を入れ、環境雰囲気1の雰囲気気体を吸引ポンプ2でインピンジャー3に吸引し、回収溶液4にバブリングさせること(インピンジャーバブリング)により、環境雰囲気中に含まれていた評価対象不純物を回収溶液4に捕集する回収方法である。ここで本発明では、回収溶液として過酸化水素(H2O2)含有水溶液を使用することで、前記したように高感度分析が可能となる。過酸化水素含有水溶液としては、有機物の分解反応を良好に進行させる観点から、濃度5〜30質量%の過酸化水素含有水溶液を使用することが好ましい。上記水溶液中に過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分が含まれていてもよいが、これらの成分が存在するとH2O2が分解して有機物の分解効率が低下する場合があるため、上記水溶液中には過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分が含まれないことが好ましく、含まれるとしてもその量を、例えば1質量%以下に抑えることが好ましい。なお本発明において「過酸化水素水」とは、過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分を含まない水溶液をいうものとする。上記水溶液を50〜200ml程度の量で使用することが、上記水溶液中に評価対象不純物を高回収率で回収できるため好ましい。第一工程のその他詳細については、インピンジャー法等の気体の捕集に関する公知技術を適用することができる。
第一工程では、評価対象雰囲気に含まれていた評価対象不純物を捕集するために、評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気させる。これにより、評価対象雰囲気に含まれていた評価対象不純物を、過酸化水素含有水溶液中に捕集することができる。本工程は、雰囲気気体を上記水溶液に通気させることができる公知の方法によって行うことができ、操作の簡便性と評価対象不純物の捕集効率の高さの点からは、環境雰囲気の分析において汎用されているインピンジャー法によって行うことが好ましい。インピンジャー法は、図1に示すようにインピンジャー3に回収溶液4を入れ、環境雰囲気1の雰囲気気体を吸引ポンプ2でインピンジャー3に吸引し、回収溶液4にバブリングさせること(インピンジャーバブリング)により、環境雰囲気中に含まれていた評価対象不純物を回収溶液4に捕集する回収方法である。ここで本発明では、回収溶液として過酸化水素(H2O2)含有水溶液を使用することで、前記したように高感度分析が可能となる。過酸化水素含有水溶液としては、有機物の分解反応を良好に進行させる観点から、濃度5〜30質量%の過酸化水素含有水溶液を使用することが好ましい。上記水溶液中に過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分が含まれていてもよいが、これらの成分が存在するとH2O2が分解して有機物の分解効率が低下する場合があるため、上記水溶液中には過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分が含まれないことが好ましく、含まれるとしてもその量を、例えば1質量%以下に抑えることが好ましい。なお本発明において「過酸化水素水」とは、過酸化水素以外の酸またはアルカリ成分を含まない水溶液をいうものとする。上記水溶液を50〜200ml程度の量で使用することが、上記水溶液中に評価対象不純物を高回収率で回収できるため好ましい。第一工程のその他詳細については、インピンジャー法等の気体の捕集に関する公知技術を適用することができる。
第二工程
第一工程では、評価対象の環境雰囲気に存在していた有機リン化合物は有機物の状態で、無機リン化合物は無機物の状態で、それぞれ過酸化水素含有水溶液に溶解し捕集される。先に説明したように有機物の一部は過酸化水素の分解力によって分解されるが、過酸化水素水の分解力のみでは不十分であり、有機物の状態で捕集されているリンの多くはICP−MSにより分析可能な無機物に分解されず有機物のまま存在してしまう。そこで本発明では第二工程において、評価対象不純物を含む過酸化水素水溶液に紫外線を照射する。これにより前記した通り、紫外線のエネルギーとヒドロキシラジカルの分解力によって、有機物として含まれていたリンの多くを、ICP−MSにより分析可能な無機物に分解することができる。紫外線照射は、過酸化水素含有水溶液を適当な容器内に入れた状態で行うことができる。
第一工程では、評価対象の環境雰囲気に存在していた有機リン化合物は有機物の状態で、無機リン化合物は無機物の状態で、それぞれ過酸化水素含有水溶液に溶解し捕集される。先に説明したように有機物の一部は過酸化水素の分解力によって分解されるが、過酸化水素水の分解力のみでは不十分であり、有機物の状態で捕集されているリンの多くはICP−MSにより分析可能な無機物に分解されず有機物のまま存在してしまう。そこで本発明では第二工程において、評価対象不純物を含む過酸化水素水溶液に紫外線を照射する。これにより前記した通り、紫外線のエネルギーとヒドロキシラジカルの分解力によって、有機物として含まれていたリンの多くを、ICP−MSにより分析可能な無機物に分解することができる。紫外線照射は、過酸化水素含有水溶液を適当な容器内に入れた状態で行うことができる。
照射する紫外線の波長は、例えば185〜254nm程度であって、紫外線の光源としては、水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、無電極ランプ等の公知の光源を使用することができる。出力100W以上(例えば100W〜1000W)の光源を用いて、30分間以上20時間以下の照射時間で紫外線を照射することが有機リン化合物の分解効率の点から好ましい。有機リン化合物の種類によっては10時間以上紫外線を照射しなければ完全に分解しない場合もあるが、20時間程度の紫外線照射によりほぼすべての有機リン化合物は分解可能である。一方で長時間の紫外線照射は評価時間の長期化につながる。以上の観点から、紫外線照射時間は90分以上20時間以下の照射時間とすることがより好ましい。同様の理由から、光源を過酸化水素含有水溶液に接触しない範囲で近い位置に配置して紫外線照射を行うことが好ましい。本発明において、過酸化水素含有水溶液に溶解、回収された有機リン化合物はすべてをICP−MSによる検出が可能な無機物に分解することは必須ではない。例えば、第三工程における紫外線照射によって、存在する有機リン化合物の少なくとも一部が分解されれば、ここで得られる定量結果を、第一工程の後に第二工程(紫外線照射)を行わずに第三工程に付した参照サンプルについて得られるリン定量結果と比較して参照サンプルの定量結果からの増加が確認された場合には、評価対象の環境雰囲気に有機物として存在するリンが含まれると判断することができる。評価対象の環境雰囲気に有機物として存在するリンも含めた定量結果を得たい場合には、有機リン化合物が十分に分解されるまで紫外線照射を行うことが好ましい。この場合の紫外線照射条件は、適宜予備実験を行い決定することができる。
第三工程
本工程は、第二工程で紫外線照射を行った過酸化水素含有水溶液をICP−MSに付すことにより、評価対象不純物量を定量する工程である。環境雰囲気に有機物として含まれていたリンは第二工程を経ることで少なくとも一部が無機物に分解されるため、ICP−MSによる定量結果には環境雰囲気中に有機物として含まれていたリン量も反映されることとなる。この結果、環境雰囲気において加水分解等によって無機物となり半導体基板の性能に影響を及ぼす可能性のある有機リン化合物も含めた定量結果を得ることが可能となり、評価結果の有用性を高めることができる。ICP−MSは四重極型ICP−MSと二重収束型ICP−MSに大別されるが、二重収束型ICP−MSは四重極型ICP−MSに比べて高分解能であることから、高感度分析を行うためには、二重収束型ICP−MSを用いることが好ましい。
本工程は、第二工程で紫外線照射を行った過酸化水素含有水溶液をICP−MSに付すことにより、評価対象不純物量を定量する工程である。環境雰囲気に有機物として含まれていたリンは第二工程を経ることで少なくとも一部が無機物に分解されるため、ICP−MSによる定量結果には環境雰囲気中に有機物として含まれていたリン量も反映されることとなる。この結果、環境雰囲気において加水分解等によって無機物となり半導体基板の性能に影響を及ぼす可能性のある有機リン化合物も含めた定量結果を得ることが可能となり、評価結果の有用性を高めることができる。ICP−MSは四重極型ICP−MSと二重収束型ICP−MSに大別されるが、二重収束型ICP−MSは四重極型ICP−MSに比べて高分解能であることから、高感度分析を行うためには、二重収束型ICP−MSを用いることが好ましい。
第四工程
本工程は、第三工程で得られた定量結果を指標として、評価対象雰囲気の評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価する工程である。第三工程により測定された不純物量は、評価対象雰囲気の不純物量に対応するため、上記工程により測定されたリン量が多いほど、評価対象雰囲気のリンによる汚染レベルが高いと判定することができる。例えば異なる環境雰囲気(例えばクリーンルーム)において、同一条件で操作を行い得られたリン量の違いは、環境雰囲気間のリンによる汚染レベルの違いに相当する。したがって本発明によれば、異なる環境雰囲気のリンによる汚染レベルの違いを正確に把握することができる。また、得られた評価結果に基づき製造工程または保管中に半導体基板が直接曝露される環境雰囲気の構成変更(例えば空調機フィルターの変更)、洗浄強化等の汚染低減のための各種手段を取ることにより、環境雰囲気からのリン汚染の低減された高品質な半導体基板を提供することが可能となる。また前述のように、紫外線照射なしの参照サンプルの定量結果と比較することで、評価対象の環境雰囲気に有機物として含まれるリンの存在を確認することができる。有機リン化合物が主汚染源である環境雰囲気については、有機リン化合物量が低減されるような構成変更や洗浄強化等の手段を取ることができる。更に本発明によれば、評価対象の環境雰囲気における存在状態(有機物であるか無機物であるか)を問わずにリンを定量分析することも可能となるため、無機リン化合物の検出のみ可能であった従来の方法と比べて、工程管理上有用な評価結果を得ることができる。
本工程は、第三工程で得られた定量結果を指標として、評価対象雰囲気の評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価する工程である。第三工程により測定された不純物量は、評価対象雰囲気の不純物量に対応するため、上記工程により測定されたリン量が多いほど、評価対象雰囲気のリンによる汚染レベルが高いと判定することができる。例えば異なる環境雰囲気(例えばクリーンルーム)において、同一条件で操作を行い得られたリン量の違いは、環境雰囲気間のリンによる汚染レベルの違いに相当する。したがって本発明によれば、異なる環境雰囲気のリンによる汚染レベルの違いを正確に把握することができる。また、得られた評価結果に基づき製造工程または保管中に半導体基板が直接曝露される環境雰囲気の構成変更(例えば空調機フィルターの変更)、洗浄強化等の汚染低減のための各種手段を取ることにより、環境雰囲気からのリン汚染の低減された高品質な半導体基板を提供することが可能となる。また前述のように、紫外線照射なしの参照サンプルの定量結果と比較することで、評価対象の環境雰囲気に有機物として含まれるリンの存在を確認することができる。有機リン化合物が主汚染源である環境雰囲気については、有機リン化合物量が低減されるような構成変更や洗浄強化等の手段を取ることができる。更に本発明によれば、評価対象の環境雰囲気における存在状態(有機物であるか無機物であるか)を問わずにリンを定量分析することも可能となるため、無機リン化合物の検出のみ可能であった従来の方法と比べて、工程管理上有用な評価結果を得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例1、比較例1]
シリコンウェーハの製造工程で使用される、有機物除去用ケミカルフィルターを備えたクリーンルーム内で、図1に示す構成の雰囲気気体捕集装置を用いてインピンジャーバブリングによって雰囲気気体を回収溶液に通気した。具体的には、回収溶液として10質量%過酸化水素100mlを注入したインピンジャーを8本用意し、クリーンルーム内の同一ポイントで吸引ポンプを作動させ1L/minの流量で360分間吸引した。その後、各インピンジャー中の過酸化水素水をテフロン(登録商標)容器に移し替えて、4サンプルに低圧水銀ランプ(波長184.9nm)を液面とランプとの距離が5cm程度となる位置に配置して出力100Wで120分間紫外線照射を行った。紫外線を照射した4サンプル(実施例1)および紫外線照射なしの4サンプル(比較例1)を、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン(P)およびホウ素(B)濃度を測定した。結果を図2に示す。
図2に示すリンの結果から、紫外線照射有無によってリンの定量結果に大きな違いがあることが明らかとなった。この結果から、紫外線照射ありのサンプルで定量されたリンは評価対象のクリーンルーム内では有機物の状態で存在していたものであり、紫外線照射された過酸化水素水中で無機物に分解されたためICP−MSによって定量可能となったことが確認できる。また、約1.6ng/m3の低濃度も検出されていることから、過酸化水素水による回収と紫外線照射との組み合わせにより高感度リン分析が可能であることも確認できる。
一方、図2に示すホウ素の結果から、紫外線照射有無によってホウ素の定量結果に違いがないことが明らかとなった。これは、評価対象のクリーンルームに混入した有機ホウ素化合物がクリーンルーム内で、またはインピンジャー内で過酸化水素含有溶液に捕集した後速やかに分解されたため、紫外線照射の影響を受けなかったことによるものと推測される。また、約0.8ng/m3の低濃度も検出されていることから、過酸化水素水による回収で高感度ホウ素分析が可能であることも確認できる。
以上の結果から、本発明によればリンによる雰囲気汚染およびホウ素による雰囲気汚染を高感度に評価可能であることが示された。また、この結果を受けて、クリーンルームの有機物除去用ケミカルフィルターを、より高い有機リン化合物の除去能を有するものに交換する設計変更を行うことで、リン汚染がより一層低減された高品質なシリコンウェーハを提供することが可能となる。
シリコンウェーハの製造工程で使用される、有機物除去用ケミカルフィルターを備えたクリーンルーム内で、図1に示す構成の雰囲気気体捕集装置を用いてインピンジャーバブリングによって雰囲気気体を回収溶液に通気した。具体的には、回収溶液として10質量%過酸化水素100mlを注入したインピンジャーを8本用意し、クリーンルーム内の同一ポイントで吸引ポンプを作動させ1L/minの流量で360分間吸引した。その後、各インピンジャー中の過酸化水素水をテフロン(登録商標)容器に移し替えて、4サンプルに低圧水銀ランプ(波長184.9nm)を液面とランプとの距離が5cm程度となる位置に配置して出力100Wで120分間紫外線照射を行った。紫外線を照射した4サンプル(実施例1)および紫外線照射なしの4サンプル(比較例1)を、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン(P)およびホウ素(B)濃度を測定した。結果を図2に示す。
図2に示すリンの結果から、紫外線照射有無によってリンの定量結果に大きな違いがあることが明らかとなった。この結果から、紫外線照射ありのサンプルで定量されたリンは評価対象のクリーンルーム内では有機物の状態で存在していたものであり、紫外線照射された過酸化水素水中で無機物に分解されたためICP−MSによって定量可能となったことが確認できる。また、約1.6ng/m3の低濃度も検出されていることから、過酸化水素水による回収と紫外線照射との組み合わせにより高感度リン分析が可能であることも確認できる。
一方、図2に示すホウ素の結果から、紫外線照射有無によってホウ素の定量結果に違いがないことが明らかとなった。これは、評価対象のクリーンルームに混入した有機ホウ素化合物がクリーンルーム内で、またはインピンジャー内で過酸化水素含有溶液に捕集した後速やかに分解されたため、紫外線照射の影響を受けなかったことによるものと推測される。また、約0.8ng/m3の低濃度も検出されていることから、過酸化水素水による回収で高感度ホウ素分析が可能であることも確認できる。
以上の結果から、本発明によればリンによる雰囲気汚染およびホウ素による雰囲気汚染を高感度に評価可能であることが示された。また、この結果を受けて、クリーンルームの有機物除去用ケミカルフィルターを、より高い有機リン化合物の除去能を有するものに交換する設計変更を行うことで、リン汚染がより一層低減された高品質なシリコンウェーハを提供することが可能となる。
[参考例1]
有機リン化合物の分解の確認
有機リン化合物によって既知汚染[1(ppb)リン酸トリクレシル・1(ppb)リン酸トリメチル・1(ppb)リン酸トリブチル・1(ppb)リン酸トリエチル]した10質量%過酸化水素水100mlを4サンプル調製し、2サンプルは実施例1と同様に紫外線照射に付した。紫外線照射ありの2サンプルおよび紫外線照射なしの2サンプルを、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定について、既知汚染したリン量に対する定量値の割合(回収率)を算出した結果を図3に示す。
図3に示すリンの結果から、紫外線を照射することで回収率は大幅に向上し既知汚染したリンをほぼ100%、ICP−MSによって検出、定量することができた。この結果から、過酸化水素水による回収と紫外線照射との組み合わせによって、そのままではICP−MSによる分析が困難な有機物として存在するリンを、ICP−MSによって検出可能な状態にできることが実証された。
有機リン化合物の分解の確認
有機リン化合物によって既知汚染[1(ppb)リン酸トリクレシル・1(ppb)リン酸トリメチル・1(ppb)リン酸トリブチル・1(ppb)リン酸トリエチル]した10質量%過酸化水素水100mlを4サンプル調製し、2サンプルは実施例1と同様に紫外線照射に付した。紫外線照射ありの2サンプルおよび紫外線照射なしの2サンプルを、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定について、既知汚染したリン量に対する定量値の割合(回収率)を算出した結果を図3に示す。
図3に示すリンの結果から、紫外線を照射することで回収率は大幅に向上し既知汚染したリンをほぼ100%、ICP−MSによって検出、定量することができた。この結果から、過酸化水素水による回収と紫外線照射との組み合わせによって、そのままではICP−MSによる分析が困難な有機物として存在するリンを、ICP−MSによって検出可能な状態にできることが実証された。
[参考例2]
ホウ素定量結果に対する紫外線照射の影響有無の確認
無機リン化合物によって既知汚染[1(ppb)ホウ酸水溶液]した10質量%過酸化水素水100mlを4サンプル調製し、2サンプルは実施例1と同様に紫外線照射に付した。紫外線照射ありの2サンプルおよび紫外線照射なしの2サンプルを、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しホウ素濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定について、既知汚染したホウ素量に対する定量値の割合(回収率)を算出した結果を図3に示す。
先に説明したように、本発明では環境雰囲気のリン汚染を高感度分析するために評価対象不純物を捕集した過酸化水素含有水溶液に対して紫外線を照射するが、図3に示すホウ素の結果から、この紫外線照射によりホウ素の定量結果は実質的に変化しないことが確認できる。したがって本発明によれば、リン汚染とともにホウ素汚染も高感度分析可能である。
ホウ素定量結果に対する紫外線照射の影響有無の確認
無機リン化合物によって既知汚染[1(ppb)ホウ酸水溶液]した10質量%過酸化水素水100mlを4サンプル調製し、2サンプルは実施例1と同様に紫外線照射に付した。紫外線照射ありの2サンプルおよび紫外線照射なしの2サンプルを、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しホウ素濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定について、既知汚染したホウ素量に対する定量値の割合(回収率)を算出した結果を図3に示す。
先に説明したように、本発明では環境雰囲気のリン汚染を高感度分析するために評価対象不純物を捕集した過酸化水素含有水溶液に対して紫外線を照射するが、図3に示すホウ素の結果から、この紫外線照射によりホウ素の定量結果は実質的に変化しないことが確認できる。したがって本発明によれば、リン汚染とともにホウ素汚染も高感度分析可能である。
[実施例2、3、4、比較例2]
シリコンウェーハの製造工程で使用される、クリーンルーム(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター無し)内で、図1に示す構成の雰囲気気体捕集装置を用いてインピンジャーバブリングによって雰囲気気体を回収溶液に通気した。具体的には、回収溶液として10質量%過酸化水素100mlを注入したインピンジャーを8本用意し、クリーンルーム内の同一ポイントで吸引ポンプを作動させ1L/minの流量で360分間吸引した。その後、各インピンジャー中の過酸化水素水をテフロン(登録商標)容器に移し替えて、2サンプルに低圧水銀ランプ(波長184.9nm)を液面とランプとの距離が5cm程度となる位置に配置して出力100Wで60分間、他の2サンプルには120分間、他の2サンプルには240分間紫外線照射を行った。紫外線を60分間照射した2サンプル(実施例2)、120分間照射した2サンプル(実施例3)、240分間照射した2サンプル(実施例4)、および紫外線照射なしの2サンプル(比較例2)を、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン濃度およびホウ素濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定結果を図4に示す。
図4に示すリンの結果から、紫外線照射なしのサンプル(比較例2)ではリンは検出されなかったのに対し、紫外線照射時間60分のサンプル(実施例2)、120分のサンプル(実施例3)、240分のサンプル(実施例4)においてリンが定量されたことから、紫外線照射なしではICP−MSにより検出できない有機リン化合物を、紫外線照射によって検出可能とすることができ、また上記の結果から、評価対象のクリーンルーム内に有機リン化合物が存在することが確認できる。また、120分のサンプルと240分のサンプルの結果がほぼ同レベルであったので、今回の紫外線照射条件では120分照射でリンがほぼ全量分解したことが確認できた。さらに紫外線を長時間照射し、有機リン化合物がほぼ100%分解されて定量値が飽和することも確認した。
一方、図4に示すホウ素の結果において、全ての水準において約2.5ng/m3の濃度でホウ素が定量されたことから、ホウ素においては紫外線照射の影響がほとんど無いことも確認できる。これは前述のように、有機ホウ素化合物は評価対象のクリーンルームに混入したとしてもクリーンルーム中またはインピンジャー内で速やかに分解されるため、クリーンルーム中またはインピンジャー内では無機ホウ素化合物の状態で存在していたので、紫外線照射の影響を受けなかったことによるものと推測される。
さらに、図2の実施例1(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター有り)と図4の実施例3(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター無し)のリンの結果を比較すると、実施例3では実施例1と比べて10倍以上のリンが検出された。この結果から、本発明によれば異なる環境雰囲気の汚染レベルの違いを正確に把握できることも確認できる。
シリコンウェーハの製造工程で使用される、クリーンルーム(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター無し)内で、図1に示す構成の雰囲気気体捕集装置を用いてインピンジャーバブリングによって雰囲気気体を回収溶液に通気した。具体的には、回収溶液として10質量%過酸化水素100mlを注入したインピンジャーを8本用意し、クリーンルーム内の同一ポイントで吸引ポンプを作動させ1L/minの流量で360分間吸引した。その後、各インピンジャー中の過酸化水素水をテフロン(登録商標)容器に移し替えて、2サンプルに低圧水銀ランプ(波長184.9nm)を液面とランプとの距離が5cm程度となる位置に配置して出力100Wで60分間、他の2サンプルには120分間、他の2サンプルには240分間紫外線照射を行った。紫外線を60分間照射した2サンプル(実施例2)、120分間照射した2サンプル(実施例3)、240分間照射した2サンプル(実施例4)、および紫外線照射なしの2サンプル(比較例2)を、それぞれ二重収束型ICP−MS装置に導入しリン濃度およびホウ素濃度を測定した。
以上の測定により、同一処理条件について2回、測定が行われた。1回目および2回目の測定結果を図4に示す。
図4に示すリンの結果から、紫外線照射なしのサンプル(比較例2)ではリンは検出されなかったのに対し、紫外線照射時間60分のサンプル(実施例2)、120分のサンプル(実施例3)、240分のサンプル(実施例4)においてリンが定量されたことから、紫外線照射なしではICP−MSにより検出できない有機リン化合物を、紫外線照射によって検出可能とすることができ、また上記の結果から、評価対象のクリーンルーム内に有機リン化合物が存在することが確認できる。また、120分のサンプルと240分のサンプルの結果がほぼ同レベルであったので、今回の紫外線照射条件では120分照射でリンがほぼ全量分解したことが確認できた。さらに紫外線を長時間照射し、有機リン化合物がほぼ100%分解されて定量値が飽和することも確認した。
一方、図4に示すホウ素の結果において、全ての水準において約2.5ng/m3の濃度でホウ素が定量されたことから、ホウ素においては紫外線照射の影響がほとんど無いことも確認できる。これは前述のように、有機ホウ素化合物は評価対象のクリーンルームに混入したとしてもクリーンルーム中またはインピンジャー内で速やかに分解されるため、クリーンルーム中またはインピンジャー内では無機ホウ素化合物の状態で存在していたので、紫外線照射の影響を受けなかったことによるものと推測される。
さらに、図2の実施例1(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター有り)と図4の実施例3(クリーンルームに有機物除去用ケミカルフィルター無し)のリンの結果を比較すると、実施例3では実施例1と比べて10倍以上のリンが検出された。この結果から、本発明によれば異なる環境雰囲気の汚染レベルの違いを正確に把握できることも確認できる。
本発明は、半導体基板の製造分野に有用である。
Claims (5)
- 環境雰囲気中の不純物汚染評価方法であって、
前記評価対象不純物はリンを含み、
評価対象雰囲気から採取した雰囲気気体を過酸化水素含有水溶液に通気し評価対象不純物を該水溶液中に捕集すること、
上記通気後の過酸化水素含有水溶液に紫外線を照射すること、
紫外線照射後の過酸化水素含有水溶液を誘導結合プラズマ質量分析に付すことにより、前記評価対象不純物量を定量すること、ならびに、
前記定量結果を指標として、評価対象雰囲気の前記評価対象不純物汚染の有無およびその程度を評価すること、
を含む、前記評価方法。 - 前記水溶液は、濃度5〜30質量%の過酸化水素水である請求項1に記載の評価方法。
- 前記雰囲気気体の通気を、インピンジャーバブリングによって行う請求項1または2に記載の評価方法。
- 前記環境雰囲気は、半導体基板の製造および/または保管雰囲気である請求項1〜3のいずれか1項に記載の評価方法。
- 前記評価対象不純物はホウ素を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の評価方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011283226A JP2013134093A (ja) | 2011-12-26 | 2011-12-26 | 環境雰囲気の不純物汚染評価方法 |
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JP2011283226A JP2013134093A (ja) | 2011-12-26 | 2011-12-26 | 環境雰囲気の不純物汚染評価方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112114023A (zh) * | 2019-06-19 | 2020-12-22 | 湖北中烟工业有限责任公司 | 一种检测加热不燃烧卷烟烟气中铝释放量的方法 |
-
2011
- 2011-12-26 JP JP2011283226A patent/JP2013134093A/ja active Pending
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