以下に添付図面を参照して、本発明にかかる復調器および復調方法の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
(実施の形態1にかかる復調器の構成)
図1は、実施の形態1にかかる復調器の構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる復調器100は、第1調整部110と、第1デジタル変換部120と、直交検波部130と、アナログ変換部140と、第2調整部150と、第2デジタル変換部160と、ベースバンド復調部170と、を備えている。
第1調整部110は、第1デジタル変換部120へ入力される第1サンプリングクロックの周波数を調整する。たとえば、第1調整部110は、第1デジタル変換部120へ入力される可変周波数の第1サンプリングクロックを生成する第1クロック生成部を制御することによって第1サンプリングクロックの周波数を調整する。第1調整部110は、たとえば制御回路によって自動的に第1サンプリングクロックの周波数を調整してもよいし、ユーザの操作に応じて第1サンプリングクロックの周波数を調整してもよい。
第1デジタル変換部120には、復調器100による復調対象のアナログ信号が入力される。復調器100による復調対象のアナログ信号は、たとえば、復調器100の前段のアンテナにより受信され、RF信号からIF信号に変換されたアナログ信号である。ただし、復調器100による復調対象のアナログ信号はこのようなアナログ信号に限らない。
第1デジタル変換部120は、入力されたアナログ信号を、第1調整部110によって周波数が調整された第1サンプリングクロックによりサンプリングして量子化することによりデジタル信号に変換する。第1デジタル変換部120は、変換したデジタル信号を直交検波部130へ出力する。
直交検波部130は、第1デジタル変換部120から出力されたデジタル信号の直交検波を行う。直交検波部130は、検波結果によって得られたベースバンド(基底帯域)のデジタル信号をアナログ変換部140へ出力する。アナログ変換部140は、直交検波部130から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。アナログ変換部140は、変換したアナログ信号を第2デジタル変換部160へ出力する。
第2調整部150は、第2デジタル変換部160へ入力される第2サンプリングクロックの周波数を調整する。たとえば、第2調整部150は、第2デジタル変換部160へ入力される可変周波数の第2サンプリングクロックを生成する第2クロック生成部を制御することによって第2サンプリングクロックの周波数を調整する。第2調整部150は、たとえば制御回路によって自動的に第2サンプリングクロックの周波数を調整してもよいし、ユーザの操作に応じて第2サンプリングクロックの周波数を調整してもよい。
第2デジタル変換部160には、アナログ変換部140から出力されたアナログ信号を、第2調整部150によって周波数が調整された第2サンプリングクロックによりサンプリングして量子化することによりデジタル信号に変換する。第2デジタル変換部160は、変換したデジタル信号をベースバンド復調部170へ出力する。ベースバンド復調部170は、第2デジタル変換部160から出力されたデジタル信号をベースバンド復調する。ベースバンド復調部170は、ベースバンド復調による復調結果を出力する。
このように、復調器100は、直交検波部130とベースバンド復調部170との間において、アナログ変換部140、第2調整部150および第2デジタル変換部160により任意のレートでサンプリングし直す構成である。これにより、直交検波部130によるデジタル直交検波と、ベースバンド復調部170によるベースバンド復調と、をそれぞれ独立したレートで行うことが可能になる。
(サンプリングによる折り返し)
図2−1は、サンプリングによる折り返しの例1を示すグラフである。図2−1の縦軸は、受信されたRF信号から変換したIF信号のレベルを示している。図2−1の横軸は、受信されたRF信号から変換したIF信号の周波数を示している。横軸の周波数Fsは、第1デジタル変換部120によってIF信号をデジタル信号に変換する際のサンプリング周波数を示している。したがって、横軸の周波数Fs/2は、第1デジタル変換部120によってIF信号をデジタル信号に変換する際のナイキスト周波数である。
ここでは、周波数0〜周波数Fs/2を第1ナイキストゾーンとし、周波数Fs/2〜周波数Fsを第2ナイキストゾーンとし、周波数Fs〜周波数3*Fs/2を第3ナイキストゾーンと称する。
IF信号211は、受信されたRF信号から変換したIF信号を示している。図2−1に示す例では、IF信号211の周波数が、第3ナイキストゾーンの中心の周波数となっている。IF信号211をデジタル信号に変換すると、IF信号211が他のナイキストゾーンにコピーされる折り返し現象が発生する。
折り返し成分212は、IF信号211が第2ナイキストゾーンにコピーされた成分である。折り返し成分213は、折り返し成分212が第1ナイキストゾーンにコピーされた成分である。図2−1に示す例では、折り返し成分212,213は、それぞれ第2ナイキストゾーンおよび第1ナイキストゾーンに発生し、IF信号211に重なっていない。このため、たとえば折り返し成分213に基づく直交検波およびベースバンド復調によりIF信号211を復調(符号214)することができる。
図2−2は、サンプリングによる折り返しの例2を参考として示すグラフである。図2−2において、図2−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図2−2に示す例では、IF信号211の周波数が、第1ナイキストゾーンと第2ナイキストゾーンとの境界である周波数Fs/2となっている。このため、IF信号211の帯域が第1ナイキストゾーンおよび第2ナイキストゾーンを跨いでいる。
折り返し成分221(斜線部)は、IF信号211が折り返し現象によりコピーされた成分である。図2−2に示す例では、IF信号211の帯域が第1ナイキストゾーンおよび第2ナイキストゾーンを跨いでいる。
このため、折り返し成分221がIF信号211に重なり、直交検波およびベースバンド復調を行ってもIF信号211の復調が困難である。このように、サンプリング周波数Fsは、サンプリング時の折り返しを考慮するとIF信号の周波数に依存する。一方、ベースバンド復調においては、シンボルレートの整数倍(たとえば4倍)のサンプリング周波数Fsとすることが望ましい(オーバーサンプリング)。
これに対して、復調器100は、直交検波部130とベースバンド復調部170との間において、任意のレートでサンプリングし直す構成である。このため、直交検波の前のA/D変換においてはIF信号が複数のナイキストゾーンを跨がないサンプリング周波数を設定し、ベースバンド復調の前段のA/D変換においてはシンボルレートの整数倍となるようにサンプリング周波数を設定することが可能になる。
したがって、サンプリングにおいて折り返し成分がIF信号に重なることを回避しつつ、シンボルレートの整数倍オーバーサンプリングによるベースバンド復調を行うことができるため、復調性能を向上させることができる。なお、ベースバンド復調の前段のA/D変換においては、ベースバンド復調の前段のA/D変換においては、A/D変換の対象の信号が直交検波によりベースバンド信号となっており、かつシンボルレートの整数倍でオーバーサンプリングするため、折り返し成分は発生しない。
また、サンプリングし直す構成として、直交検波部130により得られたデジタル信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を第2サンプリングクロックによって再度デジタル信号に変換する構成を用いる。これにより、たとえばデジタル処理によってサンプリングレートを変換する構成に比べて、有理数比を含めた、より柔軟なサンプリングレート変換比を実現することができる。このため、たとえばシンボルレートなどが未知の信号を、サンプリングレートを柔軟に変更することによって復調することが可能になる。
図3−1は、IF周波数とサンプリング周波数との関係の一例を示す図(その1)である。図3−1において、図2−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。IFサンプリング方式において、IF信号211の周波数(IFとする)とサンプリング周波数(Fs)との関係が下記(1)式を満たす場合に、IF信号211の周波数がナイキストゾーンの中心波長と一致する。これにより、IF信号211の折り返し成分がIF信号211に重なることを回避することができる。
IF=(1/4)*Fs+((n−1)/2)*Fs …(1)
上記(1)式において、nは自然数(1,2,3,…)である。n=1の場合は、IF信号211の周波数IFは、図3−1に示す第1ナイキストゾーンの中心波長(1/4)*Fsと一致する。n=2の場合は、IF信号211の周波数IFは、図3−1に示す第2ナイキストゾーンの中心波長(3/4)*Fsと一致する。n=3の場合は、IF信号211の周波数IFは、図3−1に示す第3ナイキストゾーンの中心波長(5/4)*Fsと一致する。このように、n=kの場合は、IF信号211の周波数IFは、第kナイキストゾーンの中心周波数と一致する。
図3−2は、IF周波数とサンプリング周波数との関係の一例を示す図(その2)である。図3−2において、図3−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図3−2に示すように、たとえばIF信号211の周波数IFが第2ナイキストゾーンの中心波長(3/4)*Fsとサンプリング周波数Fsとの間になっているとする。
この場合は、IF信号211がナイキストゾーンの中心にないため、IF信号211を透過させ、IF信号211とは異なる周波数成分を減衰させるフィルタ特性321を有するフィルタを実現することが困難である。
図3−3は、IF周波数とサンプリング周波数との関係の一例を示す図(その3)である。図3−3において、図3−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図3−3に示す例では、IF信号211の周波数IFが、第2ナイキストゾーンの中心波長(3/4)*Fsと一致している。
この場合は、IF信号211がナイキストゾーンの中心にあるため、IF信号211を透過させ、IF信号211とは異なる周波数成分を減衰させるフィルタ特性321を有するフィルタを容易に実現することができる。これにより、他のナイキストゾーンからの折り返しを防止することが容易になる。このように、サンプリングにおける折り返し防止効果を高めるためには、IF信号211の周波数IFがナイキストゾーンの中心波長と一致していることが望ましい。
(復調器を適用した受信装置の構成)
図4は、復調器を適用した受信装置の構成の一例を示す図である。図4に示す受信装置400は、図1に示した復調器100を適用した受信装置である。受信装置400は、受信アンテナ410と、無線部420と、復調器430と、制御部440と、を備えている。図4では、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple:直交周波数分割多重)変調方式の信号を受信する受信装置400の構成について説明する。たとえば、受信装置400は、復調器430における復調諸元をソフトウェアの書き換えにより変更可能なソフトウェア無線機である。
受信アンテナ410は、送信側から無線送信されたRF信号を受信する。受信アンテナ410が受信するRF信号は、互いに位相が直交するI信号(第1信号)およびQ信号(第2信号)を含むOFDM信号である。受信アンテナ410は、受信したRF信号を無線部420へ出力する。
無線部420は、受信アンテナ410によって受信されたアナログ信号を、無線信号の周波数(RF)とベースバンド周波数との間の周波数(IF)に変換する周波数変換部である。具体的には、無線部420は、制御部440からの制御によって、受信アンテナ410から出力されたRF信号に対して、増幅、フィルタリング、IFへの周波数変換などの処理を行う(たとえば図6参照)。無線部420は、処理を行ったIF信号を復調器430へ出力する。
復調器430は、図1に示した復調器100に対応する構成である。復調器430は、制御部440からの制御によって、無線部420から出力されたIF信号を復調し、復調結果を出力する。具体的には、復調器430は、直交復調用クロック生成部431と、ベースバンド復調用クロック生成部432と、デジタル直交復調部433と、サンプリングレート変換部434と、ベースバンド復調部435と、を備えている。
直交復調用クロック生成部431および制御部440は、図1に示した第1調整部110に対応する構成である。直交復調用クロック生成部431は、デジタル直交復調部433で使用するクロック信号を生成する(たとえば図10参照)。また、直交復調用クロック生成部431は、制御部440からの制御によって、生成するクロック信号の周波数を変化させる。直交復調用クロック生成部431は、生成したクロック信号をデジタル直交復調部433およびサンプリングレート変換部434へ出力する。
ベースバンド復調用クロック生成部432および制御部440は、図1に示した第2調整部150に対応する構成である。ベースバンド復調用クロック生成部432は、ベースバンド復調部435で使用するクロック信号を生成する(たとえば図10参照)。また、ベースバンド復調用クロック生成部432は、制御部440からの制御によって、生成するクロック信号の周波数を変化させる。ベースバンド復調用クロック生成部432は、生成したクロック信号をサンプリングレート変換部434およびベースバンド復調部435へ出力する。
デジタル直交復調部433は、図1に示した第1デジタル変換部120および直交検波部130に対応する構成である。デジタル直交復調部433は、無線部420から出力されたIF信号を、直交復調用クロック生成部431から出力されたクロック信号をサンプリングクロックとしてサンプリングして量子化することでデジタル信号に変換する。そして、デジタル直交復調部433は、変換したデジタル信号に対して直交復調を行う(たとえば図5−1,図7参照)。デジタル直交復調部433は、直交復調により得られたデジタルのベースバンド信号をサンプリングレート変換部434へ出力する。
サンプリングレート変換部434は、図1に示したアナログ変換部140、第2調整部150および第2デジタル変換部160に対応する構成である。サンプリングレート変換部434は、直交復調用クロック生成部431およびベースバンド復調用クロック生成部432から出力される各クロック信号に基づいて、デジタル直交復調部433から出力されたベースバンド信号のサンプリングレートを変換する。
具体的には、サンプリングレート変換部434は、デジタル直交復調部433から出力されたベースバンド信号を、デジタル直交復調部433で使用されるサンプリングレートからベースバンド復調部435で使用されるサンプリングレートに変換する(たとえば図5−2,図8参照)。サンプリングレート変換部434は、サンプリングレートを変換したベースバンド信号をベースバンド復調部435へ出力する。
ベースバンド復調部435は、図1に示したベースバンド復調部170に対応する構成である。ベースバンド復調部435は、サンプリングレート変換部434から出力されたベースバンド信号に対して、デジタル変調方式のベースバンド復調を行う。ベースバンド復調部435は、ベースバンド復調の結果を復調結果として出力する。
制御部440は、無線部420および復調器430の制御を行う。たとえば、制御部440は、受信装置400のユーザインタフェースによってユーザから入力された指示にしたがって各制御を行う。制御部440による制御内容については後述する。
このように、受信装置400によれば、直交復調(直交検波)をデジタル処理で行うことで、I信号とQ信号とを精度よく直交させることができる。また、受信装置400によれば、直交検波とベースバンド復調との間でサンプリングをやり直してサンプリングレートを変換することで、直交検波とベースバンド復調をそれぞれに適した動作クロックで行うことが可能になる。
図4に示した無線部420は、たとえばアナログ回路によって実現することができる。直交復調用クロック生成部431およびベースバンド復調用クロック生成部432は、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)やVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)などによって実現することができる。
デジタル直交復調部433は、たとえばADCやFPGAなどによって実現することができる。サンプリングレート変換部434は、たとえばDACやADCなどによって実現することができる。ベースバンド復調部435および制御部440は、たとえばFPGAやDSP(Digital Signal Processor)などによって実現することができる。
(デジタル直交復調部の構成)
図5−1は、デジタル直交復調部の構成の一例を示す図である。図4に示したデジタル直交復調部433は、たとえば、図5−1に示すように、ADC511と、直交検波部512と、トレーニング信号生成部513と、信号切替部514と、を備えている。ADC511、直交検波部512、トレーニング信号生成部513および信号切替部514は、直交復調用クロック生成部431から出力されたクロック信号のタイミングで動作する。
ADC511(Analog/Digital Converter)は、図1に示した第1デジタル変換部120に対応する構成である。ADC511は、無線部420から出力されたIF信号を、直交復調用クロック生成部431からのクロック信号をサンプリングクロックとしてデジタル信号に変換する。ADC511は、変換したデジタル信号を直交検波部512へ出力する。
直交検波部512は、ADC511から出力されたデジタル信号の直交検波を行う(たとえば図11参照)。直交検波部512は、直交検波により得られた互いに直交するベースバンドのI信号およびQ信号を信号切替部514へ出力する。
トレーニング信号生成部513は、トレーニング信号として、I信号とQ信号に同じ信号(たとえば図14参照)を生成する生成部である。トレーニング信号生成部513は、トレーニング信号として生成したI信号およびQ信号を信号切替部514へ出力する。
信号切替部514は、直交検波部512によって分離されたI信号およびQ信号と、トレーニング信号生成部513によって生成された各トレーニング信号と、のいずれかを切り替えて出力する。具体的には、信号切替部514は、制御部440からの制御により、トレーニング信号生成部513からのI信号およびQ信号と、トレーニング信号生成部513からのI信号およびQ信号と、のいずれかを選択して出力する信号切替を行う。
(サンプリングレート変換部の構成)
図5−2は、サンプリングレート変換部の構成の一例を示す図である。図4に示したサンプリングレート変換部434は、たとえば、図5−2に示すように、DAC521,522と、ADC523,524と、を備えている。DAC521,522は図1に示したアナログ変換部140に対応する構成である。ADC523,524は、図1に示した第2デジタル変換部160に対応する構成である。
DAC521(Digital/Analog Converter)は、デジタル直交復調部433から出力されたI信号を、直交復調用クロック生成部431から出力されたクロック信号に基づいてアナログ信号に変換する。DAC521は、アナログ信号に変換したI信号をADC523へ出力する。DAC522は、デジタル直交復調部433から出力されたQ信号を、直交復調用クロック生成部431から出力されたクロック信号に基づいてアナログ信号に変換する。DAC522は、アナログ信号に変換したQ信号をADC524へ出力する。
ADC523は、DAC521から出力されたアナログのI信号を、ベースバンド復調用クロック生成部432からのクロック信号をサンプリングクロックとしてデジタル信号に変換する。ADC523は、デジタル信号に変換したI信号をベースバンド復調部435へ出力する。ADC524は、DAC522から出力されたアナログのQ信号を、ベースバンド復調用クロック生成部432からのクロック信号をサンプリングクロックとしてデジタル信号に変換する。ADC524は、デジタル信号に変換したQ信号をベースバンド復調部435へ出力する。
(ベースバンド復調部の構成)
図5−3は、ベースバンド復調部の構成の一例を示す図である。図4に示したベースバンド復調部435は、たとえば、図5−3に示すように、IQ不整合補正部531と、復調処理部532と、を備えている。IQ不整合補正部531および復調処理部532は、ベースバンド復調用クロック生成部432から出力されたクロック信号のタイミングで動作する。
IQ不整合補正部531は、直交検波部512によって分離され、サンプリングレート変換部434を経由したI信号とQ信号との間に生じた特性のずれをデジタル処理により補償する補償部である。具体的には、IQ不整合補正部531は、制御部440からの制御により、サンプリングレート変換部434から出力されたI信号とQ信号との間の不整合を補正する。IQ不整合補正部531によるI信号とQ信号との間の不整合の補正については後述する(たとえば図16参照)。IQ不整合補正部531は、不整合を補正したI信号およびQ信号を復調処理部532へ出力する。
復調処理部532は、IQ不整合補正部531から出力されたI信号およびQ信号を復調する。図9に示した例では、I信号およびQ信号はOFDM変調方式のベースバンド信号となるため、復調処理部532は、OFDM変調方式に対応する方式によって復調する。復調処理部532は、復調結果を出力する。
(無線部の構成)
図6は、無線部の構成の一例を示す図である。図4に示した無線部420は、たとえば、図6に示すように、第1BPF601と、LNA602と、LO603と、MIX604と、第2BPF605と、VGA606と、を備えている。
第1BPF601(Band Pass Filter:バンドパスフィルタ)は、受信アンテナ410から出力されたRF信号のうちの特定のRF帯域の周波数成分を透過させ、特定のRF帯域以外の周波数成分を減衰させるフィルタである。第1BPF601を透過する特定帯域の中心周波数および帯域幅は、制御部440から設定可能になっている。第1BPF601を透過したRF信号はLNA602へ出力される。
LNA602(Low Noise Amplifier)は、第1BPF601から出力されたRF信号を低雑音で増幅する。LNA602は、増幅したRF信号をMIX604へ出力する。LO603(Local Oscillator)は、ローカル信号(局発振号)を生成してMIX604へ出力する。LO603が生成するローカル信号の周波数(ローカル周波数)は、制御部440から設定可能になっている。
MIX604(Mixer)は、LNA602から出力されたRF信号と、LO603から出力されたローカル信号と、ミキシング(乗算)する。これにより、LNA602から出力されたRF信号をIF信号に変換することができる。MIX604は、乗算結果の信号を第2BPF605へ出力する。
第2BPF605は、MIX604から出力された信号のうちの特定のIF帯域の周波数成分を透過させ、特定のIF帯域以外の周波数成分を減衰させるフィルタである。第2BPF605を透過する特定帯域の中心周波数および帯域幅は、制御部440から設定可能になっている。第2BPF605を透過したIF信号はVGA606へ出力される。
VGA606(Variable Gain Amplifier)は、第2BPF605から出力されたIF信号の振幅を、復調に適した所定のレベルに調整する。VGA606は、振幅を調整したIF信号を復調器430へ出力する。第2BPF605によって調整される振幅は、制御部440から設定可能になっている。
なお、図6に示した無線部420の構成は一例である。たとえば、図6に示した無線部420においてはMIX604による1回のミキシングでRF信号がIF信号に変換されるが、複数のMIX604による複数回のミキシングでRF信号がIF信号に変換される構成としてもよい。
(直交復調部の構成の別の例)
図7は、直交復調部の構成の別の例を示す図である。図7において、図5−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すように、デジタル直交復調部433は、図5−1に示した構成に加えて、信号抽出部701と、電力正規化部702と、を備えていてもよい。
信号抽出部701は、直交検波部512から出力されたベースバンドのI信号およびQ信号のうちの復調対象の成分のみを抽出する。信号抽出部701は、抽出したI信号およびQ信号の各成分を電力正規化部702へ出力する。信号抽出部701によって抽出される成分は、制御部440から設定可能になっている。
電力正規化部702は、信号抽出部701から出力されたI信号およびQ信号のそれぞれの電力を所定の電力となるように調整することで正規化する。電力正規化部702は、電力を正規化したI信号およびQ信号を信号切替部514へ出力する。電力正規化部702によって調整される所定の電力は、制御部440から設定可能になっている。
(サンプリングレート変換部の別の例)
図8は、サンプリングレート変換部の別の例を示す図である。図8において、図5−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図8に示すように、サンプリングレート変換部434は、図5−2に示した構成に加えて、LPF801,802を備えていてもよい。
LPF801(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)は、DAC521から出力されたアナログのI信号のうちの、DAC521において発生した高調波成分を除去する。LPF801は、高調波成分を除去したI信号をADC523へ出力する。LPF802は、DAC522から出力されたアナログのQ信号のうちの、DAC522において発生した高調波成分を除去する。LPF802は、高調波成分を除去したQ信号をADC524へ出力する。
LPF801,802のカットオフ周波数は、制御部440から設定可能になっている。また、LPF801,802のカットオフ周波数は予め設定された固定のカットオフ周波数であってもよい。
(復調処理部の構成)
図9は、復調処理部の構成の一例を示す図である。図9において、図4に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図4に示したベースバンド復調部435は、たとえば、図9に示すように、タイミング同期部901と、GI除去部902と、等化部903と、判定部904と、周波数偏差検出部905と、を備えている。
タイミング同期部901は、IQ不整合補正部531から出力されたI信号およびQ信号に基づいて、無線フレームの受信タイミングを検出して、受信タイミングに対して復調タイミングを同期させる。タイミング同期部901は、同期させたI信号およびQ信号を、GI除去部902および周波数偏差検出部905へ出力する。
GI除去部902は、タイミング同期部901から出力されたI信号およびQ信号に含まれるGI(Guard Interval:ガードインターバル)を除去する。GI除去部902は、GIを除去したI信号およびQ信号を等化部903へ出力する。等化部903は、GI除去部902から出力されたI信号およびQ信号の等化処理を行う。等化部903は、等化処理を行ったI信号およびQ信号を判定部904へ出力する。判定部904は、等化部903から出力されたI信号およびQ信号のそれぞれについて、閾値と比較することによって値を判定する。判定部904は、判定結果を復調結果として出力する。
周波数偏差検出部905は、タイミング同期部901から出力されたI信号およびQ信号に基づいて、受信装置400が受信したキャリア信号と、デジタル直交復調部433におけるローカル信号と、の間の周波数偏差(ずれ)を検出する。周波数偏差検出部905は、周波数偏差の検出結果を制御部440へ出力する。
(各クロック生成部の構成)
図10は、各クロック生成部の構成の一例を示す図である。図10において、図4に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図4に示した直交復調用クロック生成部431およびベースバンド復調用クロック生成部432のそれぞれは、たとえば図10に示すクロック生成部1000によって実現することができる。
クロック生成部1000は、周波数設定部1001と、周波数補正部1002と、発振部1003と、を備えている。周波数設定部1001は、制御部440からの制御により、発振部1003が発振するクロック信号の周波数を設定する。周波数補正部1002は、制御部440からの制御により、周波数設定部1001によって設定された、発振部1003が発振するクロック信号の周波数を補正(微調整)する。
発振部1003は、周波数補正部1002によって設定された周波数を、周波数補正部1002によって設定された補正値によって補正した周波数のクロック信号を発振する。発振部1003は、発振したクロック信号を出力する。なお、周波数設定部1001および周波数補正部1002は、1つの設定部によって構成してもよい。
(直交検波部の構成)
図11は、直交検波部の構成の一例を示す図である。図11において、図5−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5−1に示した直交検波部512は、たとえば、図11に示すように、複素LO生成部1101と、テーブル記憶部1101aと、乗算部1102,1103と、LPF1104,1105と、を備えている。テーブル記憶部1101aには、たとえばテーブル値として「+1」、「0」、「−1」が記憶されている。
複素LO生成部1101は、乗算部1102,1103へ供給する各ローカル信号を生成する。複素LO生成部1101によって生成される各ローカル信号は、たとえばデジタルの複素正弦波(90[°]ずれた2つの正弦波)である。複素LO生成部1101は、直交検波部512のサンプリング周期の4倍の周期で、テーブル記憶部1101aからテーブル値を順に読み出すことで各ローカル信号を生成する。
これにより、精度よく直交する2つの正弦波を簡単な構成によって生成することができる(たとえば図12−1,図12−2参照)。なお、複素LO生成部1101のサンプリング周期は、直交復調用クロック生成部431からのサンプリングクロックによって設定される。複素LO生成部1101は、生成した各ローカル信号をそれぞれ乗算部1102,1103へ出力する。複素LO生成部1101は、たとえばNCO(Numerically Controlled Oscillator:数値制御発振器)によって実現することができる。
乗算部1102,1103には、ADC511から出力されたデジタルのIF信号が入力される。たとえば、乗算部1102,1103へ入力されるIF信号は、ADC511において第1ナイキストゾーンに折り返された折り返し成分(たとえば図2−1の折り返し成分213)とすることができる。
乗算部1102は、入力されたIF信号と、複素LO生成部1101から出力されたローカル信号と、を乗算し、乗算結果の信号をLPF1104へ出力する。乗算部1103は、入力されたIF信号と、複素LO生成部1101から出力されたローカル信号と、を乗算し、乗算結果の信号をLPF1105へ出力する。
LPF1104へ出力される信号には、乗算部1102において乗算されたIF信号とローカル信号との各周波数の和の周波数成分と、各周波数の差の周波数成分と、が含まれている。LPF1104は、乗算部1102から出力された信号のうちの、各周波数の和の周波数成分を減衰させ、各周波数の差の周波数成分をI信号として透過させる。これにより、ベースバンドのI信号を出力することができる。
LPF1105へ出力される信号には、乗算部1103において乗算されたIF信号とローカル信号との各周波数の和の周波数成分と、各周波数の差の周波数成分と、が含まれている。LPF1105は、乗算部1103から出力された信号のうちの、各周波数の和の周波数成分を減衰させ、各周波数の差の周波数成分をQ信号として透過させる。これにより、ベースバンドのQ信号を出力することができる。
(複素LO生成部によって生成されるローカル信号)
図12−1は、複素LO生成部によって生成されるローカル信号の一例を示すグラフ(その1)である。図12−2は、複素LO生成部によって生成されるローカル信号の一例を示すグラフ(その2)である。図12−1および図12−2において、横軸は時間を示している。横軸の0,T,2T,3T,…は、複素LO生成部1101のサンプリング周期である。また、縦軸はローカル信号の振幅を示している。
図11に示したテーブル記憶部1101aには、テーブル値として「+1」、「0」、「−1」の3値が記憶されている。複素LO生成部1101は、サンプリング周期ごとに、テーブル記憶部1101aのテーブル値を「+1」、「0」、「−1」、「0」、…の順に読み出すことで、乗算部1102へ出力するローカル信号1210を生成する。ローカル信号1210は、COS(2πfT)によって示すことができる。
また、複素LO生成部1101は、サンプリング周期ごとに、テーブル記憶部1101aのテーブル値を「0」、「−1」、「0」、「+1」、…の順に読み出すことで、乗算部1102へ出力するローカル信号1220を生成する。ローカル信号1220は、−SIN(2πfT)によって示すことができる。また、ローカル信号1220は、ローカル信号1210に対して位相がπ/2ずれている(直交している)。
(IQ不整合補正部の構成)
図13は、IQ不整合補正部の構成の一例を示す図である。図5−3に示したIQ不整合補正部531は、たとえば、図13に示すように、振幅補正部1310と、DCオフセット補正部1320と、位相補正部1330と、を備えている。
<振幅補正部>
振幅補正部1310は、サンプリングレート変換部434から出力されたI信号およびQ信号の振幅の不整合を補正する。具体的には、振幅補正部1310は、電力検出部1311と、増幅部1312と、電力検出部1313と、増幅部1314と、を備えている。振幅補正部1310へ入力されたI信号は、電力検出部1311および増幅部1312へ入力される。振幅補正部1310へ入力されたQ信号は、電力検出部1313および増幅部1314へ入力される。
電力検出部1311は、入力されたI信号の電力を、I信号を積分することにより検出する。電力検出部1311は、検出した電力と目標電力Wとの差を示すゲイン係数を増幅部1312へ出力する。増幅部1312は、入力されたI信号を、電力検出部1311からのゲイン係数に基づいて増幅することで、I信号の電力を目標電力Wに調整する。増幅部1312は、増幅したI信号をDCオフセット補正部1320へ出力する。
電力検出部1313は、入力されたQ信号の電力を、Q信号を積分することにより検出する。電力検出部1313は、検出した電力と目標電力Wとの差を示すゲイン係数を増幅部1314へ出力する。増幅部1314は、入力されたQ信号を、電力検出部1313からのゲイン係数に基づいて増幅することで、Q信号の電力を目標電力Wに調整する。増幅部1314は、増幅したQ信号をDCオフセット補正部1320へ出力する。これにより、I信号およびQ信号の振幅をともに目標電力Wにすることができる。
<DCオフセット補正部>
DCオフセット補正部1320は、振幅補正部1310から出力されたI信号およびQ信号のDCオフセット(直流オフセット)の不整合を補正する。具体的には、DCオフセット補正部1320は、DCオフセット検出部1321と、減算部1322と、DCオフセット検出部1323と、減算部1324と、を備えている。
DCオフセット補正部1320へ入力されたI信号は、DCオフセット検出部1321および減算部1322へ入力される。DCオフセット検出部1321は、入力されたI信号のDCオフセットを、I信号を平均することにより検出する。DCオフセット検出部1321は、検出したDCオフセットの積分値がゼロとなるDCオフセット量を減算部1322へ出力する。減算部1322は、入力されたI信号から、DCオフセット検出部1321からのDCオフセット量を減算することで、I信号のDCオフセットをゼロに調整する。減算部1322は、減算したI信号を位相補正部1330へ出力する。
DCオフセット補正部1320へ入力されたQ信号は、DCオフセット検出部1323および減算部1324へ入力される。DCオフセット検出部1323は、入力されたQ信号のDCオフセットを、Q信号を平均することにより検出する。DCオフセット検出部1323は、検出したDCオフセットの積分値がゼロとなるDCオフセット量を減算部1324へ出力する。減算部1324は、入力されたQ信号から、DCオフセット検出部1323からのDCオフセット量を減算することで、Q信号のDCオフセットをゼロに調整する。減算部1324は、減算したQ信号を位相補正部1330へ出力する。これにより、I信号およびQ信号のDCオフセットをともにゼロにすることができる。
<位相補正部>
位相補正部1330は、DCオフセット補正部1320から出力されたI信号およびQ信号の位相(タイミング)の不整合を補正する。具体的には、位相補正部1330は、スイッチ1331と、FIRフィルタ1332と、スイッチ1333と、減算部1334と、係数制御部1335と、を備えている。DCオフセット補正部1320から出力されたI信号は、スイッチ1331へ入力される。DCオフセット補正部1320から出力されたQ信号は、FIRフィルタ1332および係数制御部1335へ入力される。
スイッチ1331は、制御部440からの制御により、DCオフセット補正部1320から出力されたI信号を、IQ不整合補正部531の後段に接続された第1経路R11と、減算部1334に接続された第2経路R12と、のいずれかへ出力する。
FIRフィルタ1332は、DCオフセット補正部1320から出力されたQ信号を、設定されたフィルタ係数に応じて遅延させるFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタである。FIRフィルタ1332のフィルタ係数は係数制御部1335によって制御される。FIRフィルタ1332は、遅延させたQ信号をスイッチ1333へ出力する。
スイッチ1333は、制御部440からの制御により、FIRフィルタ1332から出力されたQ信号を、IQ不整合補正部531の後段に接続された第3経路R21と、減算部1334に接続された第4経路R22と、のいずれかへ出力する。
減算部1334は、スイッチ1331から出力されたI信号から、スイッチ1333から出力されたQ信号を減算する。減算部1334は、減算結果の信号を係数制御部1335へ出力する。係数制御部1335は、減算部1334から出力された信号に基づいてFIRフィルタ1332のフィルタ係数を制御する。
たとえば、係数制御部1335は、I信号を基準として、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムによりQ信号の位相を補正することで、I信号およびQ信号の位相の不整合を補正する。たとえば、時刻mにおいてDCオフセット補正部1320から出力されるQ信号をX(m)とする。
また、時刻mにおいて係数制御部1335によって制御されるFIRフィルタ1332のフィルタ係数をW(m)とする。また、時刻mにおいてスイッチ1333から減算部1334へ出力される信号をY(m)とする。Y(m)は、たとえばY(m)=Σ{W(k)*X(m−k)}によって示すことができる。
また、時刻mにおいてスイッチ1331から減算部1334へ出力されるI信号をR(m)とする。また、時刻mにおいて減算部1334から係数制御部1335へ出力される信号をE(m)とする。E(m)は、R(m)−Y(m)であり、時刻mにおけるI信号とQ信号との差分を示す信号である。
係数制御部1335は、たとえば、時刻(m+1)においてFIRフィルタ1332に設定するフィルタ係数W(m+1)を、たとえばW(m+1)=W(m)+μ*E(m)*conj(X(m))によって算出することができる。μはステップ係数である。これにより、I信号およびQ信号の位相の不整合を補正することができる。
制御部440は、まず、トレーニング信号を出力するようにデジタル直交復調部433の信号切替部514(たとえば図5−1,図11参照)を制御し、トレーニング信号において、振幅補正、DCオフセット補正および位相補正を行う。トレーニング信号における振幅補正、DCオフセット補正および位相補正が終了すると、制御部440は、振幅補正部1310の各ゲイン係数、DCオフセット補正部1320の各DCオフセット量、および位相補正部1330のフィルタ係数W(m)を固定させる。
そして、制御部440は、受信信号に含まれるI信号およびQ信号を出力するようにデジタル直交復調部433の信号切替部514を制御する。これにより、トレーニング信号によって設定された各ゲイン係数、各DCオフセット量およびフィルタ係数W(m)の各パラメータを用いて、復調対象のI信号およびQ信号の不整合を補正することができる。
(トレーニング信号)
図14は、トレーニング信号生成部によって生成されるトレーニング信号の一例を示すグラフである。図14において、横軸は時間を示している。縦軸は、トレーニング信号の振幅を示している。トレーニング信号1400は、トレーニング信号生成部513によって生成されるトレーニング信号である。トレーニング信号1400のように、トレーニング信号生成部513は、たとえば正弦波のトレーニング信号を生成する。
トレーニング信号1400は、振幅が+1と−1との間の振幅である。また、トレーニング信号1400の位相は、時間ゼロにおいて0[°]となる位相になっている。また、トレーニング信号1400のDC成分(振幅の中心)はゼロになっている。
図15は、トレーニング信号に発生するIQ不整合の一例を示すグラフである。図15において、横軸は時間を示している。縦軸は、トレーニング信号の振幅を示している。トレーニング信号1500は、サンプリングレート変換部434を通過してIQ不整合補正部531へ入力されたトレーニング信号である。
トレーニング信号生成部513によって生成されたトレーニング信号1400(図14)は、サンプリングレート変換部434のアナログ回路を通過する際に、振幅や位相が変動したり、DCオフセットが発生したりする。このため、IQ不整合補正部531へ入力されるトレーニング信号は、たとえばトレーニング信号1500のようになる。
具体的には、図15に示すトレーニング信号1500の振幅は、+αと−βとの間の振幅であり、+1と−1との間の振幅であるトレーニング信号1400より小さくなっている。また、トレーニング信号1500には、プラス方向のDCオフセットが発生している。また、トレーニング信号1500の位相は、時間ゼロにおいて0[°]となる位相よりも遅い位相となっている。
これに対して、IQ不整合補正部531において、振幅補正部1310による振幅補正、DCオフセット補正部1320によるDCオフセット補正、位相補正部1330による位相補正を行うことで、I信号とQ信号との間の不整合が補正される。
(IQ不整合補正処理)
図16は、IQ不整合補正処理の具体例を示すシーケンス図である。受信装置400は、IQ不整合補正処理として、たとえば以下の各ステップを実行する。まず、制御部440が、トレーニング信号出力開始を信号切替部514に指示する(ステップS1601)。また、制御部440が、スイッチ1331を第2経路R12に切り替えるとともに、スイッチ1333を第4経路R22に切り替える(ステップS1602)。これにより、I信号およびQ信号が減算部1334へ出力される。
つぎに、信号切替部514が、ステップS1601による指示にしたがって、トレーニング信号生成部513からのトレーニング信号をIQ不整合補正部531へ出力する(ステップS1603)。つぎに、制御部440が、I信号およびQ信号の振幅補正をIQ不整合補正部531へ指示する(ステップS1604)。
つぎに、IQ不整合補正部531の振幅補正部1310が、ステップS1604による指示にしたがって、I信号およびQ信号のゲイン補正を行う(ステップS1605)。これにより、I信号とQ信号との振幅の不整合が補正される。振幅補正部1310は、I信号とQ信号との振幅の不整合を補正した後に、I信号およびQ信号の各ゲイン係数を固定する。つぎに、IQ不整合補正部531が、ステップS1605によるゲイン補正の完了を制御部440へ通知する(ステップS1606)。
つぎに、制御部440が、I信号およびQ信号のDCオフセット補正をIQ不整合補正部531へ指示する(ステップS1607)。つぎに、IQ不整合補正部531のDCオフセット補正部1320が、ステップS1607による指示にしたがって、I信号およびQ信号のDCオフセット補正を行う(ステップS1608)。これにより、I信号とQ信号とのDCオフセット補正の不整合が補正される。DCオフセット補正部1320は、I信号とQ信号とのDCオフセットの不整合を補正した後に、I信号およびQ信号の各DCオフセット量を固定する。つぎに、IQ不整合補正部531が、ステップS1608によるDCオフセット補正の完了を制御部440へ通知する(ステップS1609)。
つぎに、制御部440が、タイミング補正をIQ不整合補正部531へ指示する(ステップS1610)。つぎに、IQ不整合補正部531の位相補正部1330が、ステップS1610による指示にしたがって、Q信号のタイミング補正を行う(ステップS1611)。これにより、I信号とQ信号との位相の不整合が補正される。位相補正部1330は、I信号とQ信号とのDC位相の不整合を補正した後に、フィルタ係数Wを固定する。つぎに、IQ不整合補正部531が、ステップS1611によるタイミング補正の完了を制御部440へ通知する(ステップS1612)。
つぎに、制御部440が、トレーニング信号出力終了を信号切替部514に指示する(ステップS1613)。これにより、信号切替部514が、トレーニング信号生成部513からのトレーニング信号の出力を終了し、復調対象のI信号およびQ信号の出力を開始する。つぎに、制御部440が、スイッチ1331を第1経路R11に切り替えるとともに、スイッチ1333を第3経路R21に切り替える(ステップS1614)。これにより、振幅補正、DCオフセット補正およびタイミング補正がなされた状態で、復調対象のI信号およびQ信号が復調処理部532へ出力される。
このように、制御部440は、まず、各トレーニング信号を出力するように信号切替部514を制御し、各トレーニング信号の間の特性のずれを補償するパラメータをIQ不整合補正部531(補償部)に設定させる。パラメータには、たとえばゲイン係数、DCオフセットおよびフィルタ係数が含まれる。その後に、制御部440は、パラメータをIQ不整合補正部531に維持させつつ、復調対象のI信号およびQ信号を出力するように信号切替部514を制御する。これにより、サンプリングレート変換部434のアナログ回路によって生じる特性のずれを補償するパラメータを導出し、復調対象のI信号とQ信号との間の特性のずれを精度よく補償することができる。
また、制御部440は、IQ不整合補正部531にパラメータを設定させる際に、まず、各トレーニング信号の間における振幅およびDCオフセットの特性のずれを補償するパラメータ(ゲイン係数およびDCオフセット)をIQ不整合補正部531に設定させる。その後に、制御部440は、各トレーニング信号の間の位相のずれを補償するパラメータ(フィルタ係数)をIQ不整合補正部531に設定させる。
また、制御部440は、たとえば、I信号の位相にQ信号の位相を合わせるようにQ信号を通過させるFIRフィルタ1332のフィルタ係数を設定する。これにより、各トレーニング信号の間の位相のずれを補償するフィルタ係数をIQ不整合補正部531に設定させることができる。また、これにより、I信号を基準として、Q信号の振幅およびDCオフセットがさらに補正される。
(初期設定処理)
図17は、初期設定処理の具体例を示すシーケンス図である。受信装置400は、初期設定処理として、たとえば以下の各ステップを実行する。以下に示す例においては、受信装置400が受信するRF信号のキャリア周波数が3[GHz]であるとする。また、RF信号の変調方式は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)であり、ロールオフ率が0.3であるとする。
まず、制御部440が、無線部420における第1BPF601の中心周波数および帯域幅を設定する(ステップS1701)。ステップS1701においては、たとえば、第1BPF601の中心周波数が3[GHz]に設定され、第1BPF601の帯域幅が20[MHz]に設定される。
つぎに、制御部440が、無線部420におけるLO603が生成するローカル信号の周波数を設定する(ステップS1702)。ステップS1702においては、たとえばローカル信号の周波数が2710[MHz]に設定される。この場合は、MIX604から出力されるIF信号の周波数は90[MHz]となる。
つぎに、制御部440が、無線部420における第2BPF605の帯域幅を設定する(ステップS1703)。ステップS1703においては、たとえば第2BPF605の帯域幅が20[MHz]に設定される。つぎに、制御部440が、無線部420におけるVGA606の初期値(所定のレベル)を設定する(ステップS1704)。ステップS1704においては、たとえばVGA606の初期値はフルゲインに設定される。
つぎに、制御部440が、直交復調用クロック生成部431によって生成される直交復調用クロックの周波数を設定する(ステップS1705)。ステップS1705においては、たとえば直交復調用クロックの周波数は120[MHz]に設定される。これにより、IF信号の周波数が90[MHz]であるときに、サンプリング周波数=120[MHz]であれば、IF信号の周波数がナイキストゾーンの中心となる(n=2)。
つぎに、直交復調用クロック生成部431が、デジタル直交復調部433およびサンプリングレート変換部434へのクロック信号の供給を開始する(ステップS1706)。つぎに、制御部440が、ベースバンド復調用クロック生成部432によって生成されるベースバンド復調用クロックの周波数を設定する(ステップS1707)。ステップS1707においては、たとえばベースバンド復調用クロックの周波数は64[MHz]に設定される。つぎに、ベースバンド復調用クロック生成部432が、サンプリングレート変換部434およびベースバンド復調部435へのクロック信号の供給を開始する(ステップS1708)。
つぎに、制御部440が、デジタル直交復調部433の信号抽出部701に、抽出する帯域幅を設定する(ステップS1709)。ステップS1709においては、たとえば帯域幅が20[MHz]に設定される。つぎに、制御部440が、ベースバンド復調部435に復調諸元を設定する(ステップS1710)。ステップS1710においては、たとえば変調方式としてQPSKが設定され、ロールオフ率が0.3に設定され、シンボルレート(変調速度)が16[MHz]に設定される。また、ステップS1710においては、オーバーサンプリングのサンプリングレートがシンボルレートの4倍(64[MHz])に設定される。
(受信装置における連続受信時の動作)
図18は、受信装置における連続受信時の動作の一例を示すフローチャートである。受信装置400は、動作中に受信を継続して行う連続受信を行う場合に、たとえば制御部440によって以下の各ステップを実行する。まず、受信装置400は、図17に示した初期設定処理を実行する(ステップS1801)。つぎに、受信装置400は、図16に示したIQ不整合補正処理を実行する(ステップS1802)。
つぎに、受信装置400は、外部からの受信指示があるか否かを判断する(ステップS1803)。受信指示は、たとえば、受信装置400のユーザや、受信装置400を管理する管理装置によって受信装置400へ入力される。受信指示がない場合(ステップS1803:No)は、受信装置400は、ステップS1802へ戻ってIQ不整合補正処理を実行する。受信指示がある場合(ステップS1803:Yes)は、受信装置400は受信処理を行う(ステップS1804)。受信処理は、たとえば、復調処理部532によって受信信号を復調する復調処理である。
つぎに、受信装置400は、外部からの受信指示がまだあるか否かを判断する(ステップS1805)。受信指示がまだある場合(ステップS1805:Yes)は、受信装置400は、ステップS1804へ戻って受信処理を行う。受信指示がなくなった場合(ステップS1805:No)は、受信装置400は、復調器430の復調諸元が変更されたか否かを判断する(ステップS1806)。
ステップS1806において、復調諸元が変更されていない場合(ステップS1806:No)は、受信装置400は、ステップS1802へ戻ってIQ不整合補正処理を実行する。復調諸元が変更された場合(ステップS1806:Yes)は、受信装置400は、ステップS1801へ戻って初期設定処理からやり直す。
図18に示したように、受信装置400は、制御部440による初期設定後、受信指示があるまではIQ不整合補正処理を行い、受信処理に備える。そして、受信指示があると、受信装置400は、IQ不整合補正処理を終了して受信処理を開始する。受信指示がなくなると、受信装置400は、復調諸元の変更がある場合は初期設定処理からやり直し、復調諸元の変更がない場合はIQ不整合補正処理からやり直す。
(受信装置におけるTDD受信時の動作)
図19は、受信装置におけるTDD受信時の動作の一例を示すフローチャートである。受信装置400は、送信と交互に受信を行うTDD(Time Division Duplex:時分割複信)受信を行う場合に、たとえば制御部440によって以下の各ステップを実行する。図19に示すステップS1901〜S1903は、図18に示したステップS1801〜S1803と同様である。
ステップS1903において、受信指示がある場合(ステップS1903:Yes)は、受信装置400は、現在の時刻が受信タイミングであるか否かを判断する(ステップS1904)。受信タイミングである場合(ステップS1904:Yes)は、受信装置400は、受信処理を行い(ステップS1905)、ステップS1907へ移行する。
ステップS1904において、現在の時刻が受信タイミングではなく送信タイミングである場合(ステップS1904:No)は、受信装置400は、図16に示したIQ不整合補正処理を実行し(ステップS1906)、ステップS1907へ移行する。ステップS1907,S1908は、図18に示したステップS1805,S1806と同様である。
図19に示したように、TDD受信を行う場合には、受信装置400は、受信指示が出てから、受信タイミングのときには受信処理を行い、送信タイミングのときにはIQ不整合補正処理を行う。
このように、実施の形態1にかかる復調器100によれば、デジタル直交検波とベースバンド復調との間で任意のレートでサンプリングし直す構成とすることにより、デジタル直交検波およびベースバンド復調をそれぞれ適切なレートで行うことが可能になる。
具体的には、デジタル直交検波においては、IF信号の帯域がナイキストゾーンを跨がないようにサンプリングレートを設定することで、IF信号の折り返し成分がIF信号に重ならないようにし、デジタル直交検波における復調性能を向上させることができる。
また、ベースバンド復調においては、たとえばIF信号のシンボルレートの整数倍となるようにサンプリングレートを設定(オーバーサンプリング)することで、ベースバンド復調における復調性能を向上させることができる。
すなわち、ベースバンド復調処理に使用するサンプリングクロックは、IF信号の周波数との関係を考慮しなくても、復調諸元(たとえばシンボルレート)によって決定することができるため、任意のシンボルレートをサポートすることが可能になる。
また、直交検波をデジタル処理により行うことで、直交検波におけるI信号とQ信号との間の不整合の発生を抑えることができる。また、IQ不整合補正部531により、サンプリングレート変換部434のアナログ回路において発生するI信号とQ信号との間の不整合をデジタル処理によって補償することができる。このため、たとえばアナログ処理によってI信号とQ信号との間の不整合を補償するベースバンド信号サンプリング方式に比べて、I信号とQ信号との間の不整合を精度よく補償することができる。
(実施の形態2)
(実施の形態2にかかる受信装置の構成)
図20は、実施の形態2にかかる受信装置の構成の一例を示す図である。図20において、図4に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図20に示すように、制御部440は、ベースバンド復調部435の周波数偏差検出部905から、キャリア信号とローカル信号との間の周波数偏差の検出結果を取得する。周波数偏差の検出結果は、たとえば、受信装置400におけるローカル周波数が、受信信号のキャリア周波数に対して、高いか、低いか、または等しいかを示す情報である。
制御部440は、取得した周波数偏差の検出結果に応じて、直交復調用クロック生成部431によって生成されるクロック信号の周波数を調整する。これにより、デジタル直交復調部433におけるサンプリングレート(動作周波数)が変化し、複素LO生成部1101が生成するローカル信号の周波数が変化する。このため、AFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)を実現することができる。
(実施の形態2にかかる受信装置におけるAFC処理)
図21は、実施の形態2にかかる受信装置におけるAFC処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる制御部440は、AFC処理として、たとえば以下の各ステップを実行する。まず、制御部440は、周波数偏差検出部905から、周波数偏差の検出結果を取得する(ステップS2101)。
つぎに、制御部440は、ステップS2101によって取得した検出結果に基づいて、ローカル周波数がキャリア周波数より高いか否かを判断する(ステップS2102)。ローカル周波数がキャリア周波数より高い場合(ステップS2102:Yes)は、制御部440は、直交復調用クロック生成部431のクロック周波数を低下させ(ステップS2103)、ステップS2101へ戻る。これにより、複素LO生成部1101によって生成されるローカル信号の周波数(ローカル周波数)が低下する。
ステップS2102において、ローカル周波数がキャリア周波数より高くない場合(ステップS2102:No)は、制御部440は、ローカル周波数がキャリア周波数より低いか否かを判断する(ステップS2104)。ローカル周波数がキャリア周波数より低い場合(ステップS2104:Yes)は、制御部440は、直交復調用クロック生成部431のクロック周波数を増加させ(ステップS2105)、ステップS2101へ戻る。これにより、複素LO生成部1101によって生成されるローカル信号の周波数(ローカル周波数)が増加する。
ステップS2104において、ローカル周波数がキャリア周波数より低くない場合(ステップS2104:No)は、制御部440は、ステップS2101へ戻る。これにより、ローカル周波数とキャリア周波数とが一致している場合は、ローカル周波数を維持することができる。
このように、受信装置400は、周波数偏差の検出結果に基づいて、直交復調用クロック生成部431のクロック周波数を制御することで、複素LO生成部1101によって生成されるローカル信号を変化させ、AFCを実現することができる。
図22は、実施の形態2にかかる受信装置におけるAFC処理の具体例を示すシーケンス図である。実施の形態2にかかる受信装置400は、AFC処理として、たとえば以下の各ステップを繰り返し実行する。まず、ベースバンド復調部435が、周波数偏差検出部905により、キャリア信号とローカル信号との間の周波数偏差を検出する(ステップS2201)。つぎに、ベースバンド復調部435が、ステップS2201による周波数偏差の検出結果を制御部440へ通知する(ステップS2202)。
つぎに、制御部440が、ステップS2202によって通知された周波数偏差の検出結果に基づいて、クロック周波数微調整を直交復調用クロック生成部431に指示する(ステップS2203)。つぎに、直交復調用クロック生成部431が、ステップS2203による指示にしたがって、デジタル直交復調部433およびサンプリングレート変換部434へ出力するクロック周波数を微調整し(ステップS2204)、一連のAFC処理を終了する。
このように、直交検波部512は、直交復調用クロック生成部431から出力される第1サンプリングクロックに基づいて生成した第1サンプリングクロックの周波数の整数倍の周波数のローカル信号を用いて直交検波を行う。そして、実施の形態2にかかる復調器100および受信装置400によれば、制御部440は、復調対象のアナログ信号のキャリア周波数とローカル信号の周波数とのずれの検出結果に基づいて、第1サンプリングクロックの周波数を調整する。
具体的には、制御部440は、復調対象のアナログ信号のキャリア周波数とローカル信号の周波数とのずれが小さくなるように第1サンプリングクロックの周波数を調整する。第1サンプリングクロックの周波数を調整することで、回路規模の大きなNCOを使用しなくても、ローカル信号の周波数を自動的に調整することができる。このため、回路規模の増加を抑えつつAFC機能を実現することができる。
また、復調器100および受信装置400においては、第1サンプリングクロックおよび第2サンプリングクロックはそれぞれ独立して調整可能である。このため、AFC機能のために第1サンプリングクロックの周波数を調整しても、第2サンプリングクロックを用いるベースバンド復調には影響しないため、ベースバンド復調の性能の劣化を回避しつつAFC機能を実現することができる。
(実施の形態3)
図23は、実施の形態3にかかる受信装置の構成の一例を示す図である。図23において、図4に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。ベースバンド復調部435のタイミング同期部901(たとえば図9参照)は、IQ不整合補正部531から出力されたI信号およびQ信号に基づいて、キャリア信号に対するベースバンド復調部435の動作のタイミングずれを検出し、検出結果を出力する。
図23に示すように、制御部440は、ベースバンド復調部435のタイミング同期部901から、キャリア信号に対するベースバンド復調部435の動作のタイミングずれの検出結果を取得する。そして、制御部440は、取得したタイミングずれの検出結果に応じて、ベースバンド復調用クロック生成部432によって生成されるクロック信号の周波数を調整する。これにより、ベースバンド復調部435におけるサンプリングクロックが変化する。このため、タイミング同期(周波数同期)の機能を実現することができる。
なお、従来のIFサンプリング方式の場合は、タイミング同期処理のためにクロック周波数を微調整すると、AFC用のキャリア周波数(NCO発振周波数)も変更されるため、クロック周波数を微調整することができなかった。これに対して、復調器100および受信装置400のタイミング同期処理では、直交検波部512とベースバンド復調部435のクロックが別系統になっており、個別に制御が可能な構成になっている。このため、クロック周波数の微調整によるタイミング同期処理が可能となる。
(実施の形態3にかかる受信装置におけるタイミング同期処理)
図24は、実施の形態3にかかる受信装置におけるタイミング同期処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる制御部440は、タイミング同期処理として、たとえば以下の各ステップを実行する。まず、制御部440は、タイミング同期部901から、タイミングずれの検出結果を取得する(ステップS2401)。
つぎに、制御部440は、ステップS2401によって取得した検出結果に基づいて、ベースバンド復調部435の動作のタイミングが受信信号より早いか否かを判断する(ステップS2402)。動作のタイミングが受信信号より早い場合(ステップS2402:Yes)は、制御部440は、ベースバンド復調用クロック生成部432のクロック周波数を低下させ(ステップS2403)、ステップS2401へ戻る。これにより、ベースバンド復調部435のサンプリングレート(動作周波数)が低下する。
ステップS2402において、動作のタイミングが受信信号より早くない場合(ステップS2402:No)は、制御部440は、動作のタイミングが受信信号より遅い(位相が遅れている)か否かを判断する(ステップS2404)。動作のタイミングが受信信号より遅い場合(ステップS2404:Yes)は、制御部440は、ベースバンド復調用クロック生成部432のクロック周波数を増加させ(ステップS2405)、ステップS2401へ戻る。これにより、ベースバンド復調部435のサンプリングレート(動作周波数)が増加する。
ステップS2404において、動作のタイミングが受信信号より遅くない場合(ステップS2404:No)は、制御部440は、ステップS2401へ戻る。これにより、ベースバンド復調部435の動作のタイミングが受信信号に対して一致している場合は、ベースバンド復調部435の動作のタイミングを維持することができる。
このように、受信装置400は、動作タイミングずれの検出結果に基づいて、ベースバンド復調用クロック生成部432のクロック周波数を制御することで、ベースバンド復調における動作タイミングを変化させ、タイミング同期処理を実現することができる。
図25は、実施の形態3にかかる受信装置におけるタイミング同期処理の具体例を示すシーケンス図である。実施の形態3にかかる受信装置400は、AFC処理として、たとえば以下の各ステップを繰り返し実行する。まず、ベースバンド復調部435が、タイミング同期部901により、キャリア信号に対するベースバンド復調部435の動作のタイミングずれを検出する(ステップS2501)。つぎに、ベースバンド復調部435が、ステップS2501によるタイミングずれの検出結果を制御部440へ通知する(ステップS2502)。
つぎに、制御部440が、ステップS2502によって通知されたタイミングずれの検出結果に基づいて、クロック周波数微調整をベースバンド復調用クロック生成部432に指示する(ステップS2503)。つぎに、ベースバンド復調用クロック生成部432が、ステップS2503による指示にしたがって、サンプリングレート変換部434およびベースバンド復調部435のクロック周波数を微調整し(ステップS2504)、一連のタイミング同期処理を終了する。
このように、ベースバンド復調部435は、ベースバンド復調用クロック生成部432から出力される第2サンプリングクロックの周波数でベースバンド復調を行う。そして、実施の形態3にかかる復調器100および受信装置400によれば、制御部440は、復調対象のアナログ信号のキャリア周波数とベースバンド復調の周波数とのずれの検出結果に基づいて、第2サンプリングクロックの周波数を調整する。
具体的には、制御部440は、復調対象のアナログ信号のキャリア周波数とベースバンド復調の周波数とのずれが小さくなるように第2サンプリングクロックの周波数を調整する。第2サンプリングクロックの周波数を調整することで、複雑な処理を行わなくても、ベースバンド復調部435のベースバンド復調の周波数を自動的に調整することができる。このため、回路規模の増加を抑えつつタイミング同期機能を実現することができる。
また、復調器100および受信装置400においては、第1サンプリングクロックおよび第2サンプリングクロックはそれぞれ独立して調整可能である。このため、タイミング同期機能のために第2サンプリングクロックの周波数を調整しても、第1サンプリングクロックを用いる直交検波には影響しないため、直交検波による復調性能の劣化を抑えつつタイミング同期機能を実現することができる。
以上説明したように、復調器および復調方法によれば、復調性能を向上させることができる。
なお、上述した各実施の形態においては、OFDM変調方式の信号を受信する受信装置400の構成について説明したが、受信装置400が対応する変調方式はOFDM変調方式に限らない。たとえば、受信装置400は、シングルキャリア変調方式の信号を受信する構成としてもよい。この場合は、たとえば、ベースバンド復調部435におけるIQ不整合補正部531、GI除去部902、等化部903などを省いた構成としてもよい。
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)第1サンプリングクロックの周波数を調整する第1調整部と、
復調対象のアナログ信号を、前記第1調整部によって周波数が調整された第1サンプリングクロックによりサンプリングしてデジタル信号に変換する第1デジタル変換部と、
前記第1デジタル変換部によって変換されたデジタル信号の直交検波を行う直交検波部と、
前記直交検波部の前記直交検波によって得られたデジタル信号をアナログ信号に変換するアナログ変換部と、
前記第1サンプリングクロックとは異なる第2サンプリングクロックの周波数を調整する第2調整部と、
前記アナログ変換部によって変換されたアナログ信号を、前記第2調整部によって周波数が調整された第2サンプリングクロックによりサンプリングしてデジタル信号に変換する第2デジタル変換部と、
前記第2デジタル変換部によって変換されたデジタル信号をベースバンド復調するベースバンド復調部と、
を備えることを特徴とする復調器。
(付記2)前記直交検波部は、前記第1デジタル変換部によって変換されたデジタル信号に含まれる、互いに直交する各信号を前記直交検波により分離し、
前記ベースバンド復調部は、前記直交検波部によって分離され、前記アナログ変換部および前記第2デジタル変換部を経由した各信号の間に生じた特性のずれをデジタル処理により補償する補償部を含み、前記補償部により前記特性のずれを補償した各信号をベースバンド復調することを特徴とする付記1に記載の復調器。
(付記3)正弦波をトレーニング信号として生成する生成部と、
前記直交検波部によって分離された各信号と、前記生成部によって生成された各トレーニング信号と、のいずれかを切り替えて前記アナログ変換部へ出力する信号切替部と、
前記各トレーニング信号を出力するように前記信号切替部を制御し、前記各トレーニング信号の間の前記特性のずれを補償するパラメータを前記補償部に設定させた後に、前記パラメータを前記補償部に維持させつつ、前記各信号を出力するように前記信号切替部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする付記2に記載の復調器。
(付記4)前記特性のずれは、振幅および直流オフセットの少なくとも一方の特性のずれと、位相のずれと、を含み、
前記制御部は、前記各トレーニング信号の間における振幅および直流オフセットの少なくとも一方の特性のずれを補償するパラメータを前記補償部に設定させた後に、前記各トレーニング信号の間の位相のずれを補償するパラメータを前記補償部に設定させることを特徴とする付記3に記載の復調器。
(付記5)前記補償部は、前記各トレーニング信号のうちの一方のトレーニング信号の位相に、前記各トレーニング信号のうちの他方のトレーニング信号の位相を合わせるように、前記他方のトレーニング信号を通過させるFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタの係数を設定することを特徴とする付記4に記載の復調器。
(付記6)前記直交検波部は、前記第1調整部によって周波数が調整された第1サンプリングクロックの周波数の整数分の1の周波数のローカル信号を用いて前記直交検波を行い、
前記第1調整部は、前記復調対象のアナログ信号のキャリア周波数と前記ローカル信号の周波数とのずれの検出結果に基づいて、前記第1サンプリングクロックの周波数を調整することを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の復調器。
(付記7)前記ベースバンド復調部は、前記第2調整部によって周波数が調整された第2サンプリングクロックの周波数で前記ベースバンド復調を行い、
前記第2調整部は、前記復調対象のアナログ信号のキャリア周波数と前記ベースバンド復調の周波数とのずれの検出結果に基づいて、前記第2サンプリングクロックの周波数を調整することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の復調器。
(付記8)第1サンプリングクロックの周波数を調整し、
復調対象の第1アナログ信号を、周波数を調整した前記第1サンプリングクロックによりサンプリングして第1デジタル信号に変換し、
変換した前記第1デジタル信号の直交検波を行い、
前記直交検波によって得られた第2デジタル信号を第2アナログ信号に変換し、
前記第1サンプリングクロックとは異なる第2サンプリングクロックの周波数を調整し、
変換した前記第2アナログ信号を、周波数を調整した前記第2サンプリングクロックによりサンプリングして第3デジタル信号に変換し、
変換した前記第3デジタル信号をベースバンド復調することを特徴とする復調方法。
(付記9)無線信号を受信するアンテナと、
前記アンテナによって受信されたアナログ信号を、前記無線信号の周波数とベースバンド周波数との間の周波数に変換する周波数変換部と、
第1サンプリングクロックの周波数を調整する第1調整部と、
前記周波数変換部によって周波数が変換されたアナログ信号を、前記第1調整部によって周波数が調整された第1サンプリングクロックによりサンプリングしてデジタル信号に変換する第1デジタル変換部と、
前記第1デジタル変換部によって変換されたデジタル信号の直交検波を行う直交検波部と、
前記直交検波部の前記直交検波によって得られたデジタル信号をアナログ信号に変換するアナログ変換部と、
前記第1サンプリングクロックとは異なる第2サンプリングクロックの周波数を調整する第2調整部と、
前記アナログ変換部によって変換されたアナログ信号を、前記第2調整部によって周波数が調整された第2サンプリングクロックによりサンプリングしてデジタル信号に変換する第2デジタル変換部と、
前記第2デジタル変換部によって変換されたデジタル信号をベースバンド復調するベースバンド復調部と、
を備えることを特徴とする受信装置。