JP2013123418A - 鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉱物油類で汚染された土壌や地下水をバイオレメディエーションにより速やかに浄化する。
【解決手段】アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物とデルフチア(Delftia)属に属する微生物とのコンソーシアムを使用して汚染土壌又は汚染地下水を浄化する。ここで、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物としては塩分を含む環境下で鉱物油類分解活性を有しているアシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)を使用することができ、デルフチア(Delftia)属に属する微生物としてはデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)を使用することができる。この微生物コンソーシアムによれば、鉱物油類で汚染された土壌や地下水をNaCl濃度0〜5%(W/V)の範囲で浄化することができる。
【選択図】なし
【解決手段】アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物とデルフチア(Delftia)属に属する微生物とのコンソーシアムを使用して汚染土壌又は汚染地下水を浄化する。ここで、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物としては塩分を含む環境下で鉱物油類分解活性を有しているアシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)を使用することができ、デルフチア(Delftia)属に属する微生物としてはデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)を使用することができる。この微生物コンソーシアムによれば、鉱物油類で汚染された土壌や地下水をNaCl濃度0〜5%(W/V)の範囲で浄化することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法に関するものである。
近年、日本の各地域で産業活動の活発化に伴い、土壌・地下水汚染が広範囲に拡がっている。そして、企業の自主的な取り組みや社会の関心の高まりから、この土壌・地下水汚染が顕在化し、その解決が企業等の社会的使命となっている。
土壌・地下水汚染を浄化する方法としては、汚染された土壌を掘削し浄化プラントで無害化して埋め戻す方法、汚染された土壌中に空気や水等を注入・回収することで汚染物質を除去する方法、汚染された地下水を汲み上げて浄化した後に下水道等に排除する方法、バイオレメディエーション(bioremediation)等、種々の方法が提案されている。
しかしながら、一度汚染された広範囲の土壌・地下水汚染を浄化するためには、莫大な費用を要することもあり、低コスト浄化手法の確立が求められている。また、平成22年4月に改正・施行された土壌汚染対策法により、汚染土壌の搬出が更に厳格化され、汚染土壌を区域外のプラントに搬送して浄化することが困難になった。
このような状況の中で注目されているのが、汚染土壌の搬出を伴わない原位置浄化技術であり、特に微生物の力を利用して環境を回復するバイオレメディエーションのニーズが高まっている。その理由としてバイオレメディエーションは、他の原位置浄化技術と比較し安価であること、環境負荷が小さいことが挙げられる。
汚染土壌や地下水を微生物を利用して浄化するバイオレメディエーションとしては、後述する特許文献に記載されているように、種々の方法が提案されている。しかし、バイオレメディエーションは、浄化期間が長く、汚染物質によっては微生物分解できない等の問題もある。
特に鉱物油類を対象に土壌・地下水の浄化を行う場合、鉱物油類が多種類の混合物であり、構成成分の中には難分解性の物質もあるため、鉱物油類に対し分解特性の高い菌自体を添加するバイオオーグメンテーションが適用される場合が多い。
このため、いくつかの微生物製剤が市販されているが、浄化の対象となる成分が限定されたり、分解菌の菌種が特定されていない等の課題もある。
Mimmi Throne-Holst. Sidsel Markussen. Asgeir Winnberg. Trond E. Ellingsen. Hans-Kristian Kotlar. Sergey B. Zotchev (2006) Utilization of n-alkanes by a newly isolated strain of Acinetobacter venetianus: the role of two AlkB-type alkane hydroxylases. Appl Microbiol Biotechnol72: 353-360
本発明が解決しようとする課題は、従来のバイオレメディエーションでは、鉱物油類で汚染された広範囲の土壌や地下水を速やかに浄化できない点である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、鉱物油類分解活性を有する微生物コンソーシアムを用いて鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水を速やかに浄化する浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、東京湾海水から重質油に対する分解特性の高い菌を複数種類分離し、それらの組み合わせにより、高い油分解率を安定的に示すことを発見し、これらの菌の安全性の確認(菌株特定によるBSLの確認、ミジンコ及び藻類に対する毒性試験の実施)、環境中での分析方法の確立(リアルタイムPCR法による定量方法の確立及び土壌からの抽出率の確認)、大量培養方法の確立を行った。
すなわち、本発明は、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物とデルフチア(Delftia)属に属する微生物とのコンソーシアムを有効量含有した汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法である。ここで、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物としてはアシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)を使用し、デルフチア(Delftia)属に属する微生物としてはデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)を使用することができる。
また、アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物の最適生育温度は10〜37℃である。また、この微生物は塩分を含む環境下で鉱物油類分解活性を有しており、NaCl濃度0〜6%(W/V)の範囲で生育可能である。また、この微生物の菌学的性質及び生理・生化学的性質は下記の通りであり、独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−22211として寄託した。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性
また、アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物(Acinetobacter venetianus S4)は16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号1に記載の配列を有している。
また、デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物の最適生育温度は4〜37℃である。また、この微生物はNaCl濃度0〜5%(W/V)の範囲で生育可能である。また、この微生物の菌学的性質及び生理・生化学的性質は下記の通りであり、独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−22210として寄託した。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性
また、デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物(Delftia acidovorans S2)は16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号2に記載の配列を有している。
次に、本発明による汚染土壌・地下水の浄化方法を、ベンゼン(トルエン、キシレン等)を対象とした場合と、燃料油や潤滑油等を対象とした場合に分けて説明する。
ベンゼン(トルエン、キシレン等)単独の汚染の場合、浄化に酸素を多くは要しないため、本菌及び栄養塩(窒素やりんの無機塩)、必須元素(微量の金属類)を添加することで浄化が可能である。これら薬剤の添加方法としては、注入井戸を用いる方法(井戸注入法)、自走式ボーリングマシンを用いた直接注入(ロット注入)、高圧噴射攪拌法、重機を用いた土壌攪拌工法等がある。分解速度を上昇するため、酸素供給工法を併用することも可能である。
燃料油や潤滑油を対象とした浄化の場合、油含有量濃度が高いこと、浄化対象が混合物となりその分解には十分な酸素が必要となるため、土壌・地下環境に効率よく酸素を供給することが重要となる。酸素の供給方法として、従前からのエアーズパーシング(バイオスパーシング)のほか、マイクルナノバブルを利用する方法(二重管井戸工法、バイオ循環工法等)、過酸化マグネシウムや過酸化水素等の過酸化物を用いる方法がある。
本発明によれば、菌を東京湾の海水から抽出した経緯から、該菌は通性嫌気性菌であり、淡水から塩濃度の高い環境でも油分解特性が高く、通常、酸素が多くは存在しない土壌・地下水汚染から汚染土壌を掘削し地上で微生物分解を行うランドファーミング、沿岸域のように塩類濃度の高い水域や底質等幅広い環境の浄化に適用することができるという効果がある。
すなわち、本発明によれば、土壌中や地下水中の鉱物油類を低コストで速やかに分解・除去することができ、特に、塩分濃度の高い土壌中や地下水中の鉱物油類を低コストで速やかに分解・除去することができるという効果がある。
本発明者らは難分解性の潤滑油などを効率よく分解する微生物の探索研究を実施し、東京湾の表面海水中から高い鉱物油類分解能を示す二つのフローラ(以下flora A,flora B)を得た。これらのフローラを地下水・土壌汚染へ応用するためには、それらの鉱物油類分解能が保持され、安全性を満たす必要があると思われる。
複数の微生物が含まれるフローラの場合、その分解能や群集構造が、継代培養や保存等の過程で変化する可能性が考えられる。そこで、flora A およびflora B は、鉱物油類のみを炭素源とした継代培養および鉱物油類を用いずに高栄養培地を用いた培養を行い、継代培養や保存等の過程で鉱物油類分解能が保持されることを確認した。
次に、これら二つのフローラの中から、安定した高い鉱物油類分解能を有するとともに、ベンゼンに対しても高い分解能を示すflora Aを選択し、構成菌の単離と同定を行い、安全性(バイオセーフティレベル、BSL)を評価した。
また、単離した菌の組合せによる鉱物油類分解能についても調べた。ここで、鉱物油類としてはシェルテラスオイルC46(C22〜C36の炭素範囲で、C30〜C32にピークを持つ。)を用いた。この鉱物油類は97質量%以上の基油と3質量%以下の添加剤で構成されている工業用潤滑油である。
東京湾表面海水中から分離した高い鉱物油類分解能を示すfloraA培養液100μlを、10 ml の鉱物油類分解菌増殖培地(MSM培地)(油0.5 %)を含む50 ml の遠心チューブに接種した後、27 ℃、140rpmで振とう培養した。培養14日後にその培養液100 μlを分取し、新しいMSM培地(油0.5 %)に接種した。以後同様の操作を繰り返すことにより継代培養を行った。
なお、MSM培地はNH4NO3 4 g, KH2PO4 4.7 g, Na2HPO4 0.119 g, CaCl2・2H2O 0.01g, MgS04・7H2O 1 g, MnCl2・4H2O 0.01 g, FeS04・7H2O 0.015 gをイオン交換水1Lに添加した後pHを7に調整し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したものを使用した。また、添加潤滑油は孔径0.2 μmのフィルターで濾過滅菌した後、培地に0.5 %添加した。
高い油分解能が見られたflora Aの菌叢をpH7に調整した蛋白分解物寒天培地に画線培養し、得られたコロニーの単離を行った。その結果、flora A から、k1、k2、k3、k4の4種類の菌が単離された。
次に、得られた単離菌の全ての組合せについて油分解率を調べるために、単離菌それぞれについて酵母エキス2.0gとポリペプトン4.0gを1Lのイオン交換水に添加した培地で培養した。そして、それぞれの単離菌の培養液50μlをMSM培地(油0.5%)に接種し、27℃で7日間振とう培養し、Thin LayerChromatography - Flame Ionization Detection (TLC-FID)により油分解率を調べた。
また、培養14日目の培養液について、培養液と等量のヘキサンで培養液中の油分を抽出し、Itoらの方法に基づいてTLC-FID法により油分解能を測定した。Itoらの方法:Ito H, Hosokawa R, Morikawa M, Okuyama H: A turbine oil degrading bacterial consortium from soils of oil fields and its characteristics. International Biodeterioration and Biodegradation. 2008; 61: 223 232.
次に、単離菌k1、k2、k3、k4の全ての組合せパターンについて油分解率を測定したところ、図1に示す通りであった。そして、これらの結果の中で、70%以上の油分解率を示すものは図2に示す通りであった。これらの結果から、以下のことが言える。
鉱物油類分解の場合、1種類の菌だけでは高い分解能を示さず、2種類以上の菌の組合せにより、初めて高い分解能を示すので、鉱物油類分解に関して複数の微生物の相互作用が重要であることがわかる。また、単離菌4種類混合の場合より、2種類又は3種類混合の場合の方が油分解率が高いので、鉱物油類分解には4種類の菌全てが必要ではないことがわかる。
更に、油分解率が70%以上の高分解率を示した組合せのいずれにも、k3が共通して含まれていることから、微生物群集での油分解において、k3菌は重要な役割を演じていると推察される。ただし、k3菌単独では油分解率が低いことから、他の菌がk3菌の油分解を促進する役割を果たしていると考えられる。
次に、k1菌とk3菌についてゲノムDNAを抽出した後、PCRを行い、16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定した。k1の塩基配列は配列表の配列番号2に示す通りであり、k3菌の塩基配列は配列表の配列番号1に示す通りであった。
そして、この塩基配列に基づき、定法により、データベース中の登録配列と相同性を比較し、これらの菌の種を同定した。k1菌はDelftia acidovoransに属する微生物(以下、Delftia acidovorans S2という。)であり、k3菌はAcinetobacter venetianusに属する微生物(以下、Acinetobacter venetianus S4という。)であることがわかった。
以上の結果から、日本細菌学会発行「病原体等安全取扱・管理指針」によると、Delftia acidovorans S2(k1菌)はBSL 1 に該当し、Acinetobacter venetianus S4(k3菌)はBSLに該当なしであり、ミジンコ及び藻類に対する影響はないことを確認している。
生育温度の検討
nutrient broth 培地(ニュートリエントブロス:肉エキス 3.0g、ペプトン 5.0g、水1.0L、pH6.8±0.2)を、12本の25mLの試験管に10mLずつ入れ、そのうち6本にDelftia acidovorans S2(k1菌)を植菌し、別の6本にAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を植菌した。それらの試験管を4℃、10℃、20℃、27℃、37℃、50℃で、Delftia acidovorans S2(k1菌)を植菌した試験管とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を植菌した試験管を1本ずつ静置し、10間培養し、生育温度を検討した。結果は表1に示す通りであった。
nutrient broth 培地(ニュートリエントブロス:肉エキス 3.0g、ペプトン 5.0g、水1.0L、pH6.8±0.2)を、12本の25mLの試験管に10mLずつ入れ、そのうち6本にDelftia acidovorans S2(k1菌)を植菌し、別の6本にAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を植菌した。それらの試験管を4℃、10℃、20℃、27℃、37℃、50℃で、Delftia acidovorans S2(k1菌)を植菌した試験管とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を植菌した試験管を1本ずつ静置し、10間培養し、生育温度を検討した。結果は表1に示す通りであった。
表1において、−、+、++、+++ の印は、−が生育せず、+が生育、++が生育良好、+++が非常に良く生育するを意味する。Delftia acidovorans S2(k1菌)の生育可能範囲は、4~37℃の範囲であり、10~37℃の範囲が最適生育温度であることが分かる。Acinetobacter venetianus S4(k3菌)の生育可能範囲は、10~37℃の範囲であり、この温度範囲内で同等の良好な生育を示した。
生育pHの検討
nutrient broth 培地(ニュートリエントブロス:肉エキス 3.0g、ペプトン 5.0g、水1.0L)について、塩酸と水酸化ナトリウムを用いてpHを4,5,6,7,8,9,10,11に調整し、8種類のpHが異なる培地を調製した。25mLの試験管にpHを調整した培地10mLを入れ、S2菌を植菌した(1種類のpHにつき1本)。S4菌についても同様に行った。それらの試験管を、27℃で7日間振盪培養した。結果は表2に示す通りであった。
nutrient broth 培地(ニュートリエントブロス:肉エキス 3.0g、ペプトン 5.0g、水1.0L)について、塩酸と水酸化ナトリウムを用いてpHを4,5,6,7,8,9,10,11に調整し、8種類のpHが異なる培地を調製した。25mLの試験管にpHを調整した培地10mLを入れ、S2菌を植菌した(1種類のpHにつき1本)。S4菌についても同様に行った。それらの試験管を、27℃で7日間振盪培養した。結果は表2に示す通りであった。
表2において、−、+、++、+++ の印は、−が生育せず、+が生育、++が生育良好、+++が非常に良く生育することを意味する。S2菌の生育可能範囲は、pH5~10の範囲であり、pH7~9の範囲が最適生育pHであることが分かる。S4菌の生育可能範囲は、pH5~10の範囲であり、pH7~9の範囲が最適生育pHであることが分かる。
耐NaClの検討
nutrient broth 培地に、NaClを濃度が0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%になるように加え、この培地でDelftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を、27℃で7日間振盪培養し、耐NaClの濃度を検討した。結果は表3に示す通りであった。
nutrient broth 培地に、NaClを濃度が0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%になるように加え、この培地でDelftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を、27℃で7日間振盪培養し、耐NaClの濃度を検討した。結果は表3に示す通りであった。
表3において、−、+、++、+++ の印は、−が生育せず、+が生育、++が生育良好、+++が非常に良く生育するを意味する。Delftia acidovorans S2(k1菌)は、NaCl濃度0~5%(w/v)の範囲で生育可能であった。Acinetobacter venetianus S4(k3菌)は、NaCl濃度0~6%(w/v)の範囲で生育可能であった。
次に、Delftia acidovorans S2(k1菌)の菌学的性質及び生理・生化学的性質について調べたところ、下記の通りであった。なお、Delftia acidovorans S2(k1菌)は独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−22210として寄託した。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性
また、Acinetobacter venetianus S4(k3菌)の菌学的性質及び生理・生化学的性質について調べたところ、下記の通りであった。なお、Acinetobacter venetianus S4(k3菌)は独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−22211として寄託した。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性
文献(Int J Syst Evol Microbiol (2009), 59, 118-124.)のTable 1. に示されている Acinetobacter 属細菌の種々化合物の資化性比較表に従い、S4菌とAcinetobacter venetianus strain ATCC31012 について資化性を調べた。
その結果、S4菌は上記項目(22)〜(26)および(17)に示したすべての化合物に対して資化性陽性であった。それに対してAcinetobacter venetianus strain ATCC31012は、項目(22)〜(25)の化合物には資化性陽性であったが、項目(22)および(17)の化合物には資化性陰性であった。
S4菌は、Acinetobacter venetianus strain ATCC31012 の16S rRNA遺伝子とは100%の相同性を有するが、資化性においては異なる性質を示した。
次に、Delftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)のコンソーシアム(混合菌)による軽油の分解能を調べた。実験に用いた鉱物油類としてはガソリンスタンドで販売されているディーゼル燃料を用いた。Delftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)は前培養をして用いた。前培養培地 100mLに、S2菌 またはS4菌を植菌し、27℃、160rpmで2日間振とう培養した。この培養液を植菌液として用いた。前培養培地1Lの組成は、酵母エキス 2.0gとポリペプトン 4.0gであり、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したものを使用した。
Delftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)のそれぞれについて、前培養液1mLを、500 mlの 鉱物油類分解菌増殖培地を含む3Lのフラスコ(3本)に添加し、27℃、120rpmで振とう培養した。鉱物油類分解菌増殖培地としてはMSM培地に油0.5%を添加した培地を用いた。
MSM培地は淡水系の培地であり、1Lの組成はNH 4 NO3 4g, KH2PO4 4.7g, Na2HPO4 0.119g, CaCl2・2H2O 0.01g, MgSO4・7H2O 1g, MnCl2・4H2O 0.01g, FeSO4・7H2O 0.015gにNaOHでpHを7に調整し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したものを使用した。また、添加潤滑油は孔径0.2μmのフィルターで濾過滅菌したものを使用した。
培養開始後7、14、21日目の培養液について、JIS K0102 24 に基づいてノルマルヘキサン抽出物質として油分を定量した。なお、分解菌を添加しない培養液をコントロールとして使用した。結果は表4に示す通りであった。
また、Delftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)のコンソーシアム(混合菌)による灯油の分解能を調べた。鉱物油類として、灯油を用いた以外、実施例9と同様に実施した。結果は表5に示す通りであった。
塩分濃度と鉱物油類分解能との関係を調べた。実験に用いた鉱物油類としては、シェルテラスオイルC46(炭素数C22〜C36のアルカンを含む)を用いた。本製品は97質量%以上の基油と3質量%以下の添加剤で構成されている工業用潤滑油である。
実験に用いたDelftia acidovorans S2(k1菌)とAcinetobacter venetianus S4(k3菌)は前培養をして用いた。前培養培地 100mLに、Delftia acidovorans S2(k1菌) またはAcinetobacter venetianus S4(k3菌)を植菌し、27℃、160rpmで2日間振とう培養した。この培養液を植菌液として用いた。前培養培地1Lの組成は、酵母エキス 2.0gとポリペプトン 4.0gであり、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したものを使用した。
Delftia acidovorans S2(k1菌)またはAcinetobacter venetianus S4(k3菌)の前培養液100μlを、10mlの鉱物油類分解菌増殖培地を含む50mlのフラスコに添加し、27℃、120rpmで振とう培養した。ここで、鉱物油類分解菌増殖培地としては、NaCl濃度0%の場合は、MSM培地に油0.5%を添加、NaCl濃度1~10%の場合、NaClを添加したMSM培地に油0.5%を添加したものを用いた。
MSM培地は淡水系の培地であり、1Lの組成はNH4NO3 4g, KH2PO4 4.7g, Na2HPO4 0.119g, CaCl2・2H2O 0.01g, MgSO4・7H2O 1g, MnCl2・4H2O 0.01g, FeSO4・7H2O 0.015gにNaOHでpHを7に調整し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したものを使用した。また、添加潤滑油は孔径0.2μmのフィルターで濾過滅菌したものを使用した。
培養開始後14日目の培養液について、培養液と等量のn-ヘキサンで培養液中の油分を抽出し、その抽出液と同量のステアリン酸(内部標準物質)のn-ヘキサン溶液(10mg/mL)を混合し、TLC-FID(シリカゲル薄層クロマトグラフィー−水素炎イオン化検出法)法により油分の定量を行った。なお、分解菌を添加しない培養液をコントロールとして使用した。結果は図3に示す通りであった。
50mLガラス遠沈管に、12メッシュ以下に揃えたシルト質土壌を120℃で40分間オートクレーブ処理して調製した滅菌土壌を0.15g、鉱物油としてシェルテラスオイルC46(炭素数C22〜C36のアルカンを含む)を20mgおよび無機培地(表6)を入れ、実施例11で調製したDelftia acidovorans S2(k1菌) およびAcinetobacter venetianus S4(k3菌)をそれぞれ0.5mL加えて27℃で振とう培養を行った。この試料の水分量は94w%である。
培養開始後14日目と21日目の培養液について、6mLのn-ヘキサンで培養液中の油分を2回抽出し、その抽出液と同量のステアリン酸(内部標準物質)のn-ヘキサン溶液(10mg/mL)を混合し、TLC-FID(シリカゲル薄層クロマトグラフィー−水素炎イオン化検出法)法により油分の定量を行った。なお、分解菌を添加しない培養液をコントロールとして使用した。
各培養液から抽出された鉱物油残存量(mg)を表7に示した。コントロールに対して、分解菌を添加した培養液中の鉱物油残存率は、培養7日目に30%、培養21日目に10%まで減少した。なお、シルト土壌とは、凝集して0.02~0.002mm程度の土塊を形成する物性の土壌を指す。
本発明の油分解菌は、水中でも、土壌中でも鉱物油類に対して高い分解能を発現する。
更に本発明の油分解菌は、海水より高濃度のNaCl濃度でも増殖する。従って、本発明の油分解菌および浄化法によれば、鉱物油類で汚染された地下水または土壌を微生物を利用して浄化するバイオレメディエーション技術が提供される。鉱物油類で汚染された地下水または土壌が、海水より高いNaCl濃度を有する場合においても、本発明の微生物を利用したバイオレメディエーション技術が有効であることが期待される。
更に本発明の油分解菌は、海水より高濃度のNaCl濃度でも増殖する。従って、本発明の油分解菌および浄化法によれば、鉱物油類で汚染された地下水または土壌を微生物を利用して浄化するバイオレメディエーション技術が提供される。鉱物油類で汚染された地下水または土壌が、海水より高いNaCl濃度を有する場合においても、本発明の微生物を利用したバイオレメディエーション技術が有効であることが期待される。
Claims (22)
- アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物とデルフチア(Delftia)属に属する微生物とのコンソーシアムを有効量含有することを特徴とする鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物がアシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)であり、デルフチア(Delftia)属に属する微生物がデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)であることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が塩分を含む環境下で鉱物油類分解活性を有することを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物がNaCl濃度0〜6%(W/V)の範囲で生育可能な微生物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が下記菌学的性質及び下記生理・生化学的性質を有する微生物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性 - アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号1に記載の配列を有する微生物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに寄託している受領番号FERM AP−22211の微生物であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物がNaCl濃度0〜5%(W/V)の範囲で生育可能な微生物であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が下記菌学的性質及び下記生理・生化学的性質を有する微生物であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性 - デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号2に記載の配列を有する微生物であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに寄託している受領番号FERM AP−22210の微生物であることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤。
- アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物とデルフチア(Delftia)属に属する微生物とのコンソーシアムを用いて汚染土壌又は汚染地下水中の鉱物油類を分解させることを特徴とする汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する微生物がアシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)であり、デルフチア(Delftia)属に属する微生物がデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)であることを特徴とする請求項12に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が塩分を含む環境下で鉱物油類分解活性を有することを特徴とする請求項13に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物がNaCl濃度0〜6%(W/V)の範囲で生育可能な微生物であることを特徴とする請求項13又は14に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が下記菌学的性質及び下記生理・生化学的性質を有する微生物であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(チ)粘調度:生クリーム様
(6)生育温度試験(℃):12〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陰性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陰性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陰性
(16)n-カプリン酸資化性:陽性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陽性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陰性
(22)アゼライン酸資化性:陽性
(23)マロン酸資化性:陽性
(24)L-アルギニン資化性:陽性
(25)エタノール資化性:陽性
(26)安息香酸資化性:陽性 - アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号1に記載の配列を有する微生物であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- アシネトバクター・べネチアヌス(Acinetobacter venetianus)に属する前記微生物が独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに寄託している受領FERM AP−22211の微生物であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物がNaCl濃度0〜5%(W/V)の範囲で生育可能な微生物であることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が下記菌学的性質及び下記生理・生化学的性質を有する微生物であることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
A.菌学的性質
(1)細胞形態 :幅0.4〜0.5μm、長さ1.0〜1.5μm の桿菌
(2)グラム染色性:陰性
(3)胞子の有無:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態(48時間培養)
(イ)直径:2.5〜3.0 mm
(ロ)色調:淡黄色
(ハ)形:円形
(ニ)隆起状態:半レンズ状
(ホ)周縁:全縁
(ヘ)表面の形状など:スムーズ
(ト)透明度:不透明
(6)生育温度試験(℃):4〜37℃
B.生理・生化学的性質
(1)硝酸塩還元:陰性
(2)インドール産生:陽性
(3)ブドウ糖酸性化:陰性
(4)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(5)ウレアーゼ:陰性
(6)エスクリン加水分解:陰性
(7)ゼラチン加水分解:陽性
(8)β−ガラクトシダーゼ:陰性
(9)ブドウ糖資化性:陰性
(10)L-アラビノース資化性:陰性
(11)D-マンノース資化性:陰性
(12)D-マンニトール資化性:陽性
(13)N-アセチル-D-グルコサミン資化性:陰性
(14)マルトース資化性:陰性
(15)グルコン酸カリウム資化性:陽性
(16)n-カプリン酸資化性:陰性
(17)アジピン酸資化性:陽性
(18)dl-リンゴ酸資化性:陽性
(19)クエン酸ナトリウム資化性:陰性
(20)酢酸フェニル資化性:陰性
(21)チトクロームオキシダーゼ:陽性 - デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が16SrRNA遺伝子の塩基配列が配列表の配列番号2に記載の配列を有する微生物であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
- デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)に属する前記微生物が独立行政法人産業総合研究所の特許生物寄託センターに寄託している受領番号FERM AP−22210の微生物であることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載の汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2011274874A JP2013123418A (ja) | 2011-12-15 | 2011-12-15 | 鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011274874A JP2013123418A (ja) | 2011-12-15 | 2011-12-15 | 鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2013123418A true JP2013123418A (ja) | 2013-06-24 |
Family
ID=48775051
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2011274874A Pending JP2013123418A (ja) | 2011-12-15 | 2011-12-15 | 鉱物油類で汚染された汚染土壌又は汚染地下水の浄化剤とこの浄化剤を用いた汚染土壌又は汚染地下水の浄化方法 |
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JP (1) | JP2013123418A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017099209A1 (ja) | 2015-12-11 | 2017-06-15 | 東レ株式会社 | 3-オキソアジピン酸の製造方法 |
CN107792992A (zh) * | 2016-09-06 | 2018-03-13 | 深圳先进技术研究院 | 一种海洋船舶油污水的联合处理方法 |
CN115755722A (zh) * | 2022-11-30 | 2023-03-07 | 国网福建省电力有限公司 | 一种矿物油泄漏用污染物防控系统 |
-
2011
- 2011-12-15 JP JP2011274874A patent/JP2013123418A/ja active Pending
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WO2017099209A1 (ja) | 2015-12-11 | 2017-06-15 | 東レ株式会社 | 3-オキソアジピン酸の製造方法 |
CN107792992A (zh) * | 2016-09-06 | 2018-03-13 | 深圳先进技术研究院 | 一种海洋船舶油污水的联合处理方法 |
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