JP2013121895A - シリコンの精製方法、結晶シリコン材料の製造方法、および、太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属を高純度に精製して高品質化を図る。
【解決手段】不純物を含む金属を溶融させる溶融工程と、溶融金属1中に支持体3を浸漬させる浸漬工程と、溶融金属1中に浸漬させている支持体3を冷却することにより、溶融金属1を凝固偏析させて不純物を低減した精製金属4をこの支持体3の表面に析出させる析出工程とを備える。また、溶融金属1中から支持体3を引き上げる引上工程と、引上工程において精製金属4の外表面に付着した溶融金属1が凝固して形成された液滴状部5を除去する除去工程とを備える。
【選択図】図4
【解決手段】不純物を含む金属を溶融させる溶融工程と、溶融金属1中に支持体3を浸漬させる浸漬工程と、溶融金属1中に浸漬させている支持体3を冷却することにより、溶融金属1を凝固偏析させて不純物を低減した精製金属4をこの支持体3の表面に析出させる析出工程とを備える。また、溶融金属1中から支持体3を引き上げる引上工程と、引上工程において精製金属4の外表面に付着した溶融金属1が凝固して形成された液滴状部5を除去する除去工程とを備える。
【選択図】図4
Description
本発明は、金属の精製方法、金属、シリコンの精製方法、シリコン、結晶シリコン材料および太陽電池に関する。
さまざまな種類の材料が工業的に利用されている。酸素および窒素など自然界に単体で豊富に存在する材料もあるが、シリコンなどの金属材料のほとんどは、酸化物または硫化物などの化合物の状態で存在しており、自然界に単体で存在することは稀である。
したがって、特定の金属元素を得るために、酸化物または硫化物の還元を行なうとともに、不純物の除去が必要になる。各種金属元素はさまざまな用途に用いられるため、金属元素を廉価に高純度化する方法が必要とされている。
一方、環境問題から、石油など化石燃料エネルギーの代替として自然エネルギーの利用が注目されている。自然エネルギーを利用して発電する太陽電池は、大きな設備を必要とせず、また、稼働時の騒音が発生しないことなどの理由により、日本および欧州などで積極的に導入されている。
太陽電池においては、カドミウムテルルなどの化合物半導体からなる新たな太陽電池の開発が進んでいる。しかし、物質自体の安全性、これまでの使用実績および価格の面から、結晶シリコンを基板として用いた太陽電池が現在大きなシェアを占めている。その中でも、多結晶シリコンウエハ(以下、単にウエハとも称する)から作製された多結晶シリコン太陽電池が占める割合が大きい。
結晶シリコン太陽電池に用いられるウエハには、大きく分けて単結晶シリコンウエハと多結晶シリコンウエハとの2つがある。単結晶シリコンウエハの作製には、CZ(Czochralski)法およびFZ(Floating Zone)法が一般的に用いられている。
多結晶シリコンウエハの作製には、溶融シリコンから大きな多結晶塊を成長させた後スライスしてウエハを得るキャスト法、および、溶融シリコンから多結晶シリコンウエハを直接成長させるリボン法がある。リボン法には、基板を用いる方法と、基板を用いない方法との両方がある。また、多結晶シリコンの作製には、ウエハとは形状が異なるが、ウエハと同様に太陽電池などの基材となるシリコン粒を、真空中または不活性ガス中にシリコン液滴を落下させて作製する球状シリコン法などがある。
結晶シリコンウエハ、リボンおよび球状シリコンの作製においては、ほとんどの場合溶融シリコンが必要となり、かつ、金属などの不純物のほとんどは電子デバイスの特性に悪影響を与える。したがって、シリコンも上述の金属元素の例にもれず、廉価に高純度化する方法が必要とされている。
シリコンを高純度化する方法の1つとして、不純物の凝固偏析などを利用した冶金学的方法がある。この方法は、シーメンス法および流動床法などの気相法と比較して不純物濃度が少し高いものの、太陽電池特性に影響を与えない程度に、廉価に不純物の除去を行なえる可能性があるため注目されている。
以下、シリコンを例に挙げて、不純物の除去方法について説明する。冶金学的手法においては、シリコン中の不純物は以下の3種類に分類される。
(1)ボロンのように偏析係数が大きく、蒸気圧も低いもの(以下、第1類と称する)。
(2)リンのように偏析係数が大きく、蒸気圧の高いもの(第2類と称する)。
(3)金属など偏析係数が極端に小さなもの(第3類と称する)。
(1)ボロンのように偏析係数が大きく、蒸気圧も低いもの(以下、第1類と称する)。
(2)リンのように偏析係数が大きく、蒸気圧の高いもの(第2類と称する)。
(3)金属など偏析係数が極端に小さなもの(第3類と称する)。
上記の第1類および第2類の不純物においては、偏析による不純物除去の効果を得にくいため、酸化処理または真空加熱処理などにより不純物除去が行なわれる。第3類の不純物においては、基本的には粒界への偏析または固体液体界面での偏析などを利用することにより不純物濃度の低減が可能である。
第1類および第2類の不純物については、ウエハの比抵抗を調整する観点から濃度制御することが重要である。第3類の金属不純物については、特に太陽電池の特性面に大きな影響を与えるため、できる限り低濃度に抑える必要がある。
金属などの偏析係数が極端に小さい第3類の不純物を除去する方法を開示した先行文献として、特開2010−173911号公報(特許文献1)、および、特開2006−27940号公報(特許文献2)がある。
特許文献1に記載されたシリコンの精製方法においては、ボロンを除去する工程またはリンを除去する工程の後に、原料シリコンを破砕する工程と、破砕した原料シリコンにリーチングを行なう工程とを備えることにより、精製効率を向上している。
特許文献2に記載された金属の精製方法においては、冷却体の表面に精製金属を析出させて凝固偏析現象を利用して金属を精製している。
特許文献1に記載されたシリコンの精製方法においては、溶融シリコンの凝固偏析の際、粒界に析出した不純物のシリサイドを酸またはアルカリなどの薬品により選択的にエッチングする。このような粒界の選択エッチングにおいて不純物濃度を効果的に下げるためには、凝固塊をできるだけ細かく粉砕し、可能な限り粒界を粒表面に出しておく必要がある。
凝固偏析を行なう際の条件によっては多結晶組織の結晶サイズなどが変化するため、一概にどの程度の大きさまで粉砕する必要があるかを特定することはできないが、凝固偏析前の溶融シリコン中の不純物濃度が特に高い場合は、凝固の過程で組成的過冷却などが発生して微結晶化が自発的に起こるため、微結晶内部の粒界に偏析した不純物を効果的にエッチングするためには、50μm以上3mm以下程度の粒径まで粉砕する必要があるものと考えられる。
ただし、細かい粉体は凝集しやすいため、エッチングした際の凝集体内部に溜まる不純物濃度の高いエッチング液を十分に洗浄することは困難である。仮に、十分に洗浄できたとしても、その後の水洗、乾燥および搬送などの工程において、再度、配管などからの不純物によって汚染されることが懸念される。
また、細かい粉体は次工程での扱いが難しいため、精製工程にリーチングを採用するにあたっては注意を要する。具体的には、細かい粉体は体積あたりの表面積が大きいため、細かい粉体を再度溶融する工程において、表面の酸化膜および表面に付着している水分などの影響により、スプラッシュの発生、または、酸化物が溶湯表面をふさいで融けにくくなるなどの現象が起こることがある。
特許文献2に記載された金属の精製方法においては、冷却体に析出させた精製金属の不純物濃度を、凝固偏析による精製前の溶融金属の不純物濃度よりも大幅に低くすることができる。
しかしながら、実際に得られた精製金属を高純度黒鉛坩堝中で再度溶融させた融液をサンプリングしてICP(Inductively coupled plasma)分析したところ、不純物の偏析係数から予測される不純物濃度より高い平均不純物濃度が検出された。そのため、さらに精製効率の高い、すなわち実効偏析係数がさらに小さい、金属の精製方法が必要とされていた。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、金属を高純度に精製して高品質化を図ることができる、金属の精製方法、金属、シリコンの精製方法、シリコン、結晶シリコン材料および太陽電池を提供することを目的とする。
本発明に基づく金属の精製方法は、不純物を含む金属を溶融させる溶融工程と、溶融金属中に支持体を浸漬させる浸漬工程と、溶融金属中に浸漬させている支持体を冷却することにより、溶融金属を凝固偏析させて不純物を低減した精製金属をこの支持体の表面に析出させる析出工程とを備える。また、金属の精製方法は、溶融金属中から支持体を引き上げる引上工程と、引上工程において精製金属の外表面に付着した溶融金属が凝固して形成された凝固部である液滴状部を除去する除去工程とを備える。
本発明の一形態においては、除去工程において除去した液滴状部を溶融工程における金属と混合する。
本発明の一形態においては、析出工程において、精製金属と溶融金属との界面を攪拌する。
本発明の一形態においては、支持体において溶融金属に浸漬させる浸漬部は、水平断面円形状の外形を有している。析出工程において、上記水平断面に直交し、かつ、浸漬部の外形の円中心を通過する線を軸として、支持体を回転させることにより精製金属と溶融金属との界面を攪拌する。
本発明に基づく金属は、上記のいずれかに記載の金属の精製方法により精製されている。
本発明に基づくシリコンの精製方法は、上記のいずれかに記載の金属の精製方法であって、その金属がシリコンである。
本発明に基づくシリコンは、上記のシリコンの精製方法により精製されている。
本発明に基づく結晶シリコン材料は、上記のシリコンを原料として製造されている。ここで、結晶シリコン材料とは、単結晶シリコンインゴット、単結晶シリコンブロック、単結晶シリコンウエハ、多結晶シリコンインゴット、多結晶シリコンブロック、多結晶シリコンウエハ、シリコンリボンおよび球状シリコンを含む概念である。
本発明に基づく結晶シリコン材料は、上記のシリコンを原料として製造されている。ここで、結晶シリコン材料とは、単結晶シリコンインゴット、単結晶シリコンブロック、単結晶シリコンウエハ、多結晶シリコンインゴット、多結晶シリコンブロック、多結晶シリコンウエハ、シリコンリボンおよび球状シリコンを含む概念である。
本発明に基づく太陽電池は、上記の結晶シリコン材料を用いて作製されている。ここで、太陽電池とは、太陽電池セルおよび太陽電池セルを複数接続して構成された太陽電池モジュールを含む概念である。
本発明によれば、金属を高純度に精製して高品質化を図ることができる。
本発明者らは、さまざまな評価および考察を行なうことにより、凝固偏析を用いて金属を精製した際に、不純物の偏析係数から予測される不純物濃度より高い平均不純物濃度が精製金属から検出される要因を明らかにした。
具体的には、精製金属が表面に析出した支持体は、溶融金属の上方に引き上げられる。その際、精製金属の表面に溶融金属が付着し、付着した溶融金属は支持体の下端側に集まり、温度低下に伴って膨張しつつ凝固する。この凝固部の不純物濃度を測定したところ、精製金属の不純物濃度より著しく高いことが分かった。
本発明は、上記の評価結果に基づいてなされたものであって、シリコンに限らず、他の金属についても適用可能である。本発明に基づいて上記凝固部(以下、液滴状部とも称する)を除去することにより、精製金属の平均不純物濃度を低減可能となり、金属を高純度に精製して高品質化を図ることができる。
以下、本発明に係る金属の精製方法の一実施形態について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
(金属の精製方法の一実施形態)
図1は、本発明に係る金属の精製方法の一実施形態において、溶融金属中に支持体を浸漬させる状態を示す断面図である。図1に示すように、本発明に係る金属の精製方法の一実施形態においては、まず、不純物を含む金属を坩堝2中で溶融させて溶融金属1にする(溶融工程)。次に、溶融金属1中に支持体3を浸漬させる(浸漬工程)。
図1は、本発明に係る金属の精製方法の一実施形態において、溶融金属中に支持体を浸漬させる状態を示す断面図である。図1に示すように、本発明に係る金属の精製方法の一実施形態においては、まず、不純物を含む金属を坩堝2中で溶融させて溶融金属1にする(溶融工程)。次に、溶融金属1中に支持体3を浸漬させる(浸漬工程)。
坩堝2の材料としては、精製する金属の種類にもよるが、黒鉛、シリカ、石英、炭化ケイ素、アルミナ、ムライト、鉄、ステンレス、または、銅など様々な材料を使用可能である。精製する金属がシリコンの場合には、黒鉛、シリカ、石英、炭化ケイ素、アルミナ、または、ムライトなどを使用することができる。ただし、坩堝2からシリコン中への不純物混入を抑制するためには、坩堝2の材料として、黒鉛、シリカ、石英、または、炭化ケイ素が好ましい。
支持体3の材料としては、精製する金属によって選択する必要があり、精製する金属がシリコンの場合には黒鉛が好ましい。支持体3は中空状に形成されており、内部を冷却用流体が流動可能にされている。ただし、支持体3の構造は上記に限られず、たとえば、中実の支持体の上部側に水冷板などの冷却部品を接触させることにより、支持体を冷却可能にしてもよい。
図2は、本実施形態に係る金属の精製方法において、溶融金属中に浸漬させている支持体の表面上に精製金属を析出させている状態を示す断面図である。溶融金属1中に浸漬させている支持体3の内部で低温の窒素ガスを循環させることにより、支持体3を冷却する。
支持体3が冷却されることにより、図2に示すように、支持体3の表面に精製金属4が析出する(析出工程)。精製金属4は、溶融金属1の凝固偏析を伴って析出しているため、不純物濃度が低減されている。
偏析により溶融金属1側に不純物が排出されるため、精製金属4の析出の継続につれて固液界面の液体側の不純物濃度が高くなる。そのため、実効的な偏析係数が大きくなり、精製金属4の不純物濃度が次第に高くなる。
そこで、本実施形態の金属の精製方法においては、精製金属4と溶融金属1との界面を攪拌することにより、不純物濃度の高い溶融金属1を分散させる。
具体的には、たとえば、支持体3において溶融金属1に浸漬させる浸漬部は、水平断面円形状の外形を有している。この水平断面に直交し、かつ、浸漬部の外形の円中心を通過する線3aを軸として、支持体3を回転させることにより精製金属4と溶融金属1との界面を攪拌する。
図3は、本実施形態の金属の精製方法において、溶融金属から支持体を引き上げた状態を示す断面図である。図3に示すように、精製金属4が表面に析出した支持体3は、溶融金属1の上方に引き上げられる(引上工程)。その際、精製金属4の表面に溶融金属1が付着し、付着した溶融金属1は支持体3の下端側に集まり、温度低下に伴って膨張しつつ凝固する。
このように凝固した凝固部は、凝固偏析を伴わずに形成されているため、不純物濃度が溶融金属1と略同等であり、精製金属4と比較して不純物濃度の高い液滴状部5となっている。したがって、精製金属4と液滴状部5との平均不純物濃度は、精製金属4の不純物濃度より高くなる。なお、上記の攪拌を行なっていない場合には、液滴状部5の不純物濃度は、溶融金属1の不純物濃度より高くなる。
図4は、本実施形態の金属の精製方法において、液滴状部を精製金属から除去した状態を示す断面図である。金属がシリコンなどの脆性材料である場合、液滴状部5にハンマーなどで打撃を与えることにより、精製金属4から容易に液滴状部5を除去することができる(除去工程)。金属が延性材料である場合、精製金属4から液滴状部5を切断して除去することができる(除去工程)。液滴状部5の除去方法は、金属の材料特性に合わせて適宜決定する。
本実施形態においては、除去した液滴状部5を溶融金属1中に再度混合する。このようにすることにより、材料の歩留まりの低減を抑制できる。なお、本実施形態においては、精製金属4が支持体3と一体になっている状態で液滴状部5を除去したが、精製金属4を支持体3から分離させた後で液滴状部5を除去してもよい。また、溶融金属1中に除去した液滴状部5を、その都度混合してもよいし、ある程度蓄積してから混合してもよい。
本実施形態に係る金属の精製方法により、精製金属の平均不純物濃度を低減可能となり、金属を高純度に精製して高品質化を図ることができる。
以下、本発明に係るシリコンの精製方法の実施例1および2について、シリコンの精製方法の比較例1および2と比較しつつ説明する。
(シリコンの精製方法の実施例1,2および比較例1,2)
シリコンの精製方法の実施例1,2および比較例1,2においては、図1に示すように、黒鉛からなる坩堝2内で、不純物として鉄を350ppmwの濃度で含む約400kgのシリコンを溶融させた(溶融工程)。
シリコンの精製方法の実施例1,2および比較例1,2においては、図1に示すように、黒鉛からなる坩堝2内で、不純物として鉄を350ppmwの濃度で含む約400kgのシリコンを溶融させた(溶融工程)。
支持体3として黒鉛からなる中空の部材を用い、支持体3の内部に冷却流体を循環可能とした。支持体3において溶融シリコン1に浸漬させる浸漬部は、水平断面円形状の外形を有するようにした。
坩堝2中の溶融シリコン1を融点+15℃の温度で保持し、坩堝2の上方から支持体3を溶融シリコン1中に浸漬させた(浸漬工程)。図2に示すように、支持体3の内部に、低温の窒素ガスを循環させて支持体3を冷却することにより、溶融シリコン1を凝固偏析させて不純物を低減した精製シリコン4を支持体3の表面に析出させた(析出工程)。
この析出工程において、実施例1および比較例1においては、精製シリコン4と溶融シリコン1との界面における攪拌を行なわなかった。一方、実施例2および比較例2においては、支持体3の浸漬部の水平断面に直交し、かつ、浸漬部の外形の円中心を通過する線3aを軸として、支持体3を毎分50回転させることにより精製シリコン4と溶融シリコン1との界面を攪拌した。
図3に示すように、精製シリコン4が約15kg析出した段階で、溶融シリコン1中から支持体3を引き上げた(引上工程)。その後、図4に示すように、実施例1および2においては、精製シリコン4上に付着した溶融シリコン1が凝固して形成された液滴状部5を除去した(除去工程)。一方、比較例1および2においては、液滴状部5の除去は行なわなかった。
実施例1および2の精製シリコン4の不純物濃度と、比較例1および2の精製シリコン4と液滴状部5との平均不純物濃度とを比較するために、それぞれを小型の高純度石英坩堝を用いて再溶融させて、ICP分析用の溶融状態のサンプルを採取した。分析の際には不純物が混入しないように固化したサンプルを粉砕した後、フッ硝酸により処理してICP分析を行なった。
表1は、実施例1,2および比較例1,2のようにシリコンの精製を行なって得られたシリコン中の平均不純物濃度をまとめたものである。
表1に示すように、実施例1,2および比較例1,2のようにシリコンの精製を行なって得られたシリコン中の平均不純物濃度は、実施例1では1.8ppmw、比較例1では3.2ppmw、実施例2では0.2ppmw、比較例2では1.7ppmwとなった。
よって、液滴状部5を除去することにより不純物濃度を低減することができ、また、析出工程において攪拌することによって不純物濃度を低減することができることが確認された。
以下、本発明に係る太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例1について、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの比較例1と比較しつつ説明する。
(太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例1および比較例1)
<単結晶シリコンインゴットおよび単結晶シリコンウエハ>
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例1においては、上記のシリコンの精製方法の実施例2により精製されたシリコンを原料として単結晶シリコンインゴットを製造し、その単結晶シリコンインゴットを切断して単結晶シリコンウエハを形成し、その単結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
<単結晶シリコンインゴットおよび単結晶シリコンウエハ>
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例1においては、上記のシリコンの精製方法の実施例2により精製されたシリコンを原料として単結晶シリコンインゴットを製造し、その単結晶シリコンインゴットを切断して単結晶シリコンウエハを形成し、その単結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの比較例1においては、上記のシリコンの精製方法の比較例2により精製されたシリコンを原料として単結晶シリコンインゴットを製造し、その単結晶シリコンインゴットを切断して単結晶シリコンウエハを形成し、その単結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
具体的には、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例1および比較例1において、それぞれ約45kgのシリコンを石英製の坩堝中で溶融させ、CZ法により、(100)方位の長さが6インチでボディ長が400mmのp型の単結晶シリコンインゴットを成長させた。
その単結晶シリコンインゴットの中から、比抵抗が3Ωcm以上6Ωcm以下程度の範囲を切り出して単結晶シリコンブロックを形成した。単結晶シリコンブロックを厚さが180μmとなるようにスライスすることにより単結晶シリコンウエハを形成した。その後、下記の太陽電池セル製造プロセスに投入することにより、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを作製した。
<太陽電池セル製造プロセス>
図5は、単結晶シリコンインゴットからスライスされて形成された単結晶シリコンウエハを示す断面図である。上記のようにして形成された単結晶シリコンウエハ10の表面をエッチングした。これにより、図5に示す単結晶シリコンウエハ10の表面のスライスダメージ11を除去することができた。
図5は、単結晶シリコンインゴットからスライスされて形成された単結晶シリコンウエハを示す断面図である。上記のようにして形成された単結晶シリコンウエハ10の表面をエッチングした。これにより、図5に示す単結晶シリコンウエハ10の表面のスライスダメージ11を除去することができた。
上記エッチング工程では、たとえば、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることで表面にテクスチャ構造を形成してもよい。
<太陽電池セルの作製工程>
図6(a)〜(i)は、単結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製する各工程における断面図である。
図6(a)〜(i)は、単結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製する各工程における断面図である。
図6(a)に示すように、上記のようにして形成したp型の単結晶シリコンウエハ10を準備した。単結晶シリコンウエハ10の表面には、テクスチャエッチングを行なうことによって形成されたテクスチャ構造が形成されていてもよい。
図6(b)に示すように、単結晶シリコンウエハ10の表面に、PSG(リンシリケートガラス)液21を塗布した。
PSG液21の塗布後の単結晶シリコンウエハ10を加熱することによってPSG液21から単結晶シリコンウエハ10にリンを拡散させることによって、図6(c)に示すように、単結晶シリコンウエハ10の受光面側となる表面にn+層22を形成した。このとき、n+層22上にはPSG膜21aが形成されている。その後、図6(d)に示すように、リンの拡散の際に形成されたPSG膜21aを除去した。
図6(e)に示すように、単結晶シリコンウエハ10のn+層22上に、窒化シリコン膜などの反射防止膜23を形成した。
図6(f)に示すように、単結晶シリコンウエハ10の裏面にアルミニウムペースト24aを塗布した。そして、アルミニウムペースト24aの塗布後の単結晶シリコンウエハ10を焼成することにより、アルミニウムペースト24aからアルミニウムを単結晶シリコンウエハ10の裏面に拡散させて、図6(g)に示すように、単結晶シリコンウエハ10の裏面にアルミニウム電極24とp+層25とを同時に形成した。
図6(h)に示すように、反射防止膜23の表面上に銀ペースト26aを塗布するとともに、単結晶シリコンウエハ10の裏面上に銀ペースト27aを塗布し、その後焼成した。これにより、図6(i)に示すように、n+層22と電気的に接続する表面電極としての銀電極26が形成されるとともに、単結晶シリコンウエハ10の裏面と電気的に接続する銀電極27が形成され、太陽電池セル20が得られた。
図7は、太陽電池セルの受光面を示す平面図である。図7に示すように、太陽電池セル20の受光面に、サブグリッド28と銀電極26とを形成した。
<太陽電池モジュール化工程>
図8は、太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。図8に示すように、太陽電池モジュールは、上記のようにして作製された太陽電池セル20を電気的に直列に複数接続することによって構成されている。
図8は、太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。図8に示すように、太陽電池モジュールは、上記のようにして作製された太陽電池セル20を電気的に直列に複数接続することによって構成されている。
すなわち、隣り合うようにして配置された、一方の太陽電池セルの受光面側の表面電極である銀電極26と、他方の太陽電池セルの裏面側の銀電極27とが、それぞれ、インターコネクタと言われる導電性部材31によって電気的に接続されることにより、これらの太陽電池セルが電気的に直列に接続されて太陽電池ストリングを構成している。
そして、上記の太陽電池ストリングが、透明基板32と、保護シート33との間に設置された封止材34中に封止されることによって太陽電池モジュールが得られた。ここで、透明基板32としては、ガラス基板を用いた。また、保護シート33としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた。さらに、封止材34としては、EVA(エチレンビニルアセテート)を用いた。
<太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定>
このようにして得られた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性をソーラーシミュレータ下で測定した。
このようにして得られた太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性をソーラーシミュレータ下で測定した。
表2は、実施例1および比較例1のそれぞれの太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定結果をまとめたものである。
表2に示すように、実施例1および比較例1のそれぞれの太陽電池セルについて測定した結果、比較例1の太陽電池セルの出力特性を100として、実施例1の太陽電池セルの出力特性は106.2で、約6%の向上が認められた。
表2に示すように、実施例1および比較例1のそれぞれの太陽電池モジュールについて測定した結果、比較例1の太陽電池モジュールの出力特性を100として、実施例1の太陽電池モジュールの出力特性は105.9で、約6%の向上が認められた。
このように、液滴状部5の除去によりシリコンを高純度に精製して高品質化した効果が確認することができた。したがって、本発明により、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのコストパフォーマンスを向上可能であることが実証された。
以下、本発明に係る太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例2について、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの比較例2と比較しつつ説明する。
(太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例2および比較例2)
<多結晶シリコンインゴットおよび多結晶シリコンウエハ>
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例2においては、上記のシリコンの精製方法の実施例2により精製されたシリコンを原料として多結晶シリコンインゴットを製造し、その多結晶シリコンインゴットを切断して多結晶シリコンウエハを形成し、その多結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
<多結晶シリコンインゴットおよび多結晶シリコンウエハ>
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例2においては、上記のシリコンの精製方法の実施例2により精製されたシリコンを原料として多結晶シリコンインゴットを製造し、その多結晶シリコンインゴットを切断して多結晶シリコンウエハを形成し、その多結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの比較例2においては、上記のシリコンの精製方法の比較例2により精製されたシリコンを原料として多結晶シリコンインゴットを製造し、その多結晶シリコンインゴットを切断して多結晶シリコンウエハを形成し、その多結晶シリコンウエハを用いて太陽電池セルを作製した。
具体的には、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの実施例2および比較例2において、それぞれ約250kgのシリコンを窒化ケイ素の離型材を塗布したシリカ製の坩堝中で溶融させ、キャスト法により、底部側から一方向凝固を行なってp型の多結晶シリコンインゴットを成長させた。坩堝としては、内寸が680mm×680mm×高さ420mmである坩堝を用いた。
成長させた多結晶シリコンインゴットを坩堝から取り出し、その多結晶シリコンインゴットから156mm角の16本の角柱を切り出した。各角柱のボトム部およびトップ部には、太陽電池セルの特性を低下させる不純物および欠陥などが含まれている。そのため、各角柱の下端から10mmおよび上端から15mmの範囲を切断除去して、多結晶シリコンブロックを形成した。その後、多結晶シリコンブロックの品質評価として、少数キャリアライフタイムの測定などを行なった後、マルチワイヤーソーにより厚さが180μmとなるようにスライスすることにより多結晶シリコンウエハを形成した。このように形成した多結晶シリコンウエハの比抵抗は、1.2Ωcm以上1.7Ωcm以下であった。
<太陽電池セル製造プロセス>
多結晶シリコンウエハの表面のダメージ層の除去を兼ねたテクスチャ構造の形成には、単結晶シリコンウエハと同様に水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液が用いることもできるが、酸を用いてもよい。
多結晶シリコンウエハの表面のダメージ層の除去を兼ねたテクスチャ構造の形成には、単結晶シリコンウエハと同様に水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液が用いることもできるが、酸を用いてもよい。
太陽電池セルの作製工程および太陽電池モジュール化工程に関しては、上述の単結晶シリコンウエハを用いて作製された太陽電池セルの作製工程および太陽電池モジュール化工程と略同様とした。
<太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定>
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定に関しても、上述の単結晶シリコンウエハを用いて作製された太陽電池セルの作製工程および太陽電池モジュールの特性測定と同様に行なった。
太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定に関しても、上述の単結晶シリコンウエハを用いて作製された太陽電池セルの作製工程および太陽電池モジュールの特性測定と同様に行なった。
表3は、実施例2および比較例2のそれぞれの太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性測定結果をまとめたものである。
表3に示すように、実施例2および比較例2のそれぞれの太陽電池セルについて測定した結果、比較例2の太陽電池セルの出力特性を100として、実施例2の太陽電池セルの出力特性は104.1で、約4%の向上が認められた。
表3に示すように、実施例2および比較例2のそれぞれの太陽電池モジュールについて測定した結果、比較例2の太陽電池モジュールの出力特性を100として、実施例2の太陽電池モジュールの出力特性は104.4で、約4%の向上が認められた。
このように、液滴状部5の除去によりシリコンを高純度に精製して高品質化した効果が確認することができた。したがって、本発明により、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのコストパフォーマンスを向上可能であることが実証された。
なお、実施例2と比較して実施例1の方が出力特性向上の効果が高かった理由は、単結晶シリコンウエハから作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの方が、多結晶シリコンウエハから作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールよりも出力特性の絶対値が高いため、多結晶シリコンと比較して単結晶シリコンの方において、ライフタイムキラーとなる不純物の特性に与える影響が大きく現れるためと考えられる。
<シリコンリボンおよび球状シリコン>
シリコンリボンおよび球状シリコンにおいても、上述のように液滴状部5の除去によりシリコンを高純度に精製して高品質化することにより、そのシリコンを原料として製造されたシリコンリボンまたは球状シリコンを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのコストパフォーマンスを向上可能である。
シリコンリボンおよび球状シリコンにおいても、上述のように液滴状部5の除去によりシリコンを高純度に精製して高品質化することにより、そのシリコンを原料として製造されたシリコンリボンまたは球状シリコンを用いて作製された太陽電池セルおよび太陽電池モジュールのコストパフォーマンスを向上可能である。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 溶融金属(シリコン)、2 坩堝、3 支持体、4 精製金属(シリコン)、5 液滴状部、10 単結晶シリコンウエハ、11 スライスダメージ、20 太陽電池セル、21 PSG液、21a PSG膜、22 n+層、23 反射防止膜、24 アルミニウム電極、24a アルミニウムペースト、25 p+層、26,27 銀電極、26a,27a 銀ペースト、28 サブグリッド、31 導電性部材、32 透明基板、33 保護シート、34 封止材。
本発明は、金属の精製方法およびシリコンの精製方法に関する。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、金属を高純度に精製して高品質化を図ることができる、金属の精製方法およびシリコンの精製方法を提供することを目的とする。
本発明は、シリコンの精製方法、結晶シリコン材料の製造方法、および、太陽電池の製造方法に関する。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シリコンを高純度に精製して高品質化を図ることができる、シリコンの精製方法、結晶シリコン材料の製造方法、および、太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、シリコンを高純度に精製して高品質化を図ることができる。
Claims (9)
- 不純物を含む金属を溶融させる溶融工程と、
溶融金属中に支持体を浸漬させる浸漬工程と、
溶融金属中に浸漬させている前記支持体を冷却することにより、溶融金属を凝固偏析させて不純物を低減した精製金属を該支持体の表面に析出させる析出工程と、
溶融金属中から前記支持体を引き上げる引上工程と、
前記引上工程において前記精製金属の外表面に付着した溶融金属が凝固して形成された凝固部である液滴状部を除去する除去工程と
を備える、金属の精製方法。 - 前記除去工程において除去した前記液滴状部を前記溶融工程における金属と混合する、請求項1に記載の金属の精製方法。
- 前記析出工程において、前記精製金属と溶融金属との界面を攪拌する、請求項1または2に記載の金属の精製方法。
- 前記支持体において溶融金属に浸漬させる浸漬部は、水平断面円形状の外形を有し、
前記析出工程において、前記水平断面に直交し、かつ、前記浸漬部の前記外形の円中心を通過する線を軸として、前記支持体を回転させることにより前記精製金属と溶融金属との界面を攪拌する、請求項3に記載の金属の精製方法。 - 請求項1から4のいずれかに記載の金属の精製方法により精製された、金属。
- 請求項1から4のいずれかに記載の金属の精製方法であって、金属がシリコンである、シリコンの精製方法。
- 請求項6に記載のシリコンの精製方法により精製された、シリコン。
- 請求項7に記載のシリコンを原料として製造された、結晶シリコン材料。
- 請求項8に記載の結晶シリコン材料を用いて作製された、太陽電池。
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