JP2013120727A - アルカリ電解質および該電解質を備えた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明によって、直接形燃料電池等に好適に用いることができるアルカリ電解質20が提供される。ここで上記アルカリ電解質20は、層状複水酸化物を形成する組成物によって構成されており、上記組成物は、二価の陽イオンと、三価の陽イオンと、少なくとも水酸化物イオンを含む陰イオンと、両性イオンになり得る有機化合物23とを包含する。ここで開示されるアルカリ電解質は、従来に比べ強固なイオン伝導パス(経路)を形成し得るため、湿度依存性が少なく、低湿度条件においても高いイオン伝導性を発揮することができる。
【選択図】図2
Description
ここで開示されるアルカリ電解質は、二価および三価の陽イオンの水酸化物からなる層(水酸化物層)と、該水酸化物層の層間に入った物質(即ち、陰イオンと、水分子と、両性イオンになり得る有機化合物)とからなる、層状複水酸化物により構成される。ここで上記水酸化物層は正に帯電しているため、該水酸化物層の表面には、陰イオンや分極を生じた有機化合物(の負電荷を有する元素部位)が結合している。そして、該有機化合物の正電荷を有する元素部位には、陰イオンや分極した水分子(Hδ+−OHδ−)が結合し、これにより強固なイオン伝導パス(経路)を形成し得る。さらに、水酸化物層の層間に該有機化合物が入っているため、水酸化物層間の距離(以下、層間距離と言う。)が広がり、より多くの水分子を構造中に包含することができる。よって、ここで開示されるアルカリ電解質は従来に比べて湿度依存性が小さく、低湿度条件においても高いイオン伝導性を発揮することができる。
上記元素はイオン化傾向が比較的大きいため、かかる元素を備えた該層状複水酸化物は、高いイオン伝導性を示す。また該層状複水酸化物は化学的安定性にも優れているため、アルカリ電解質として好適である。
水酸化物層中の陽イオンの比率が上記範囲にある場合、結晶構造の安定性に優れ、且つイオン伝導体として優れた性能を発揮し得る。このため、アルカリ電解質として好適である。
水酸化物層中の陽イオンの比率が上記を満たす場合、より結晶構造の安定性に優れ、イオン伝導体としても一層優れた性能を発揮することができる。
上記有機化合物として含まれるアミノ酸(若しくはアミノ酸誘導体)は分子構造中に、アミノ基(−NH2等)とカルボキシル基(−COOH)とを有しているため、分子内で分極が生じやすい。よって、該有機化合物を有するアルカリ電解質では、より強固なイオン伝導パスを形成することができる。
上記有機化合物は水との親和性(即ち、水溶性)が高いため、該有機化合物を有するアルカリ電解質は、高いイオン伝導性を発揮することができる。
上記有機化合物として含まれるアルキルグリシンは、アルキル鎖が比較的短いため上記水酸化物層の層間に入り込みやすく、また該層間を好適な距離に保ち得るため、好ましく用いることができる。
トリメチルグリシンは、上記アルキルグリシンの中でも化学的安定性に優れている。また天然に広く存在していることから、環境面からも好適である。
かかる製造方法によれば、ここで開示される湿度依存性の小さいアルカリ電解質を、好適に合成することができる。
ここで開示されるアルカリ電解質は、湿度依存性が小さく、低湿領域(例えば、20%RH〜60%RH)においても、高いイオン伝導性を示す。よって該電解質を用いた燃料電池では、従来に比べ低湿領域における発電性能が向上し、発電安定性を向上させることができる。
なお、本明細書において特に断りがない場合、「湿度」は飽和水蒸気圧に対する水蒸気圧の分圧(即ち、相対湿度(RH:Relative Humidity))のことを指し、便宜上「%RH」という単位で表記する。
ここで、正に帯電した水酸化物層22の表面22aには、陰イオン25や分極した有機化合物(即ち、両性イオン)23がクーロン力(静電引力)により結合している。このため、水酸化物層22と該層間24との抵抗が低減されている。また、両性イオンの正電荷を有する元素部位と、水分子(典型的には分極した状態)26とが結合し、より強固なイオン伝導パス(経路)を形成し得る。さらに、水酸化物層の間に有機化合物23が入ることで層間24の距離が広がり、より多くの水分子26を構造中に包含することができる。このため、ここで開示されるアルカリ電解質は従来に比べて湿度依存性が少なく、低湿度条件においても高いイオン伝導性を発揮することができる。
特に限定するものではないが、上記二価の陽イオン(MII)と上記三価の陽イオン(MIII)とのモル比(MII/MIII)は、2以上4以下(より好ましくは、2.5以上3.5以下)であることが好ましい。水酸化物層中の陽イオンの比率が上記範囲にある場合、結晶構造の安定性に優れ、且つイオン伝導体としても一層優れた性能を発揮し得る。このため、アルカリ電解質として好適に用いることができる。
該有機化合物としては、分極の生じやすい化合物、典型的には酸性と塩基性の官能基を有する化合物が挙げられる。例えば、分子中に、アミノ基(−NH2等)とカルボキシル基(−COOH)とを有する、アミノ酸やその誘導体(塩)はその典型例である。アミノ酸の具体例としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の帯電した側鎖を有するものや、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン等の非帯電性の側鎖を有するもの、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等の疎水性の側鎖を有するもの、グリシン、システイン、セレノシステイン、プロリン等が挙げられる。例えば、一般式:R1R2R3N+R4COO−(ただし、R1、R2、R3、R4は、それぞれ水素原子または炭素数1〜5の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。)で示されるアミノ酸やその誘導体(塩)有機化合物は水との親和性(即ち、水溶性)が高いため、該有機化合物を有するアルカリ電解質は高いイオン伝導性を発揮することができる。なかでも上記一般式中のR4がCH2である一般式:R1R2R3N+CH2COO−で表記されるアルキルグリシンとその誘導体は、アルキル鎖が比較的短いため上記水酸化物層の層間に入り込みやすく、また該層間を好適な距離に保ち得るため、好ましく用いることができる。アルキルグリシンの具体的例としては、例えばトリメチルグリシン(グリシンベタインとも言う。単に、ベタインと言う場合もある。)、ジメチルグリシン、メチルグリシン、エチルグリシン、プロピルグリシン等が挙げられ、例えば、陰イオンを吸着しやすく且つ化学的安定性に優れるトリメチルグリシンを好ましく用いることができる。またトリメチルグリシンは天然に広く存在していることから、環境面からも好適である。また、上記アミノ酸の誘導体であり、一般に工業等の分野で用いられている、各種の両性界面活性剤等も用いることができる。
ここで開示される製造方法では、先ず、出発原料たる化合物(即ち、「二価の陽イオン」源、「三価の陽イオン」源)および必要に応じてそれ以外の添加物を用意する。そして、これらを所望の組成比率となるよう秤量し、水性溶液中に溶解させる。
ここで用いられる二価の陽イオン源は、既に上述した二価の陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等)のうち少なくとも一つを含む化合物であれば特に限定されず、製造目的たるアルカリ電解質を構成する層状複水酸化物の組成に応じて、適宜選択することができる。例えば、該金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等を用いることができる。より具体的には、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができ、なかでもイオン化傾向の大きな硝酸塩(例えば硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2:水和物の状態であり得る。)を好ましく用いることができる。同様に、ここで用いられる三価の陽イオン源も、既に上述した三価の陽イオン(Al3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+等)のうち少なくとも一つを含む化合物であれば特に限定されず、製造目的たるアルカリ電解質を構成する層状複水酸化物の組成に応じて、適宜選択することができる。例えば、該金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等を用いることができる。より具体的には、例えばアルミニウムイオン(Al3+)を使用する場合は、硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を用いることができ、なかでも硝酸アルミニウム(Al(NO3)3:水和物の状態であり得る。)を好ましく用いることができる。
上記水性溶液の調製時には、従来公知の種々の攪拌・混合操作を採用することができる。かかる操作としては、例えば、超音波の照射や、マグネチックスターラーによる撹拌等が挙げられる。また、溶解させる順序も特に限定されず、二価の陽イオン源と三価の陽イオン源とを同時に水性溶液中に添加してもよく、先ずどちらか一方を水性溶液中に添加して溶解させた後にもう一方の陽イオン源を添加し溶解させてもよい。なお、ここで用いられる水性溶液中には、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記陽イオン源以外に各種添加剤(例えば、分散剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤等)を適宜添加してもよい。
ここで開示される製造方法では、次に、上記用意した水性溶液に両性イオンになり得る有機化合物を、所望の組成比率となるよう秤量し添加する。
ここで用いられる両性イオンになり得る有機化合物は、既に上述した有機化合物のうち1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。該有機化合物の添加量は、特に限定されないが、例えば上記水性溶液に含まれる三価の陽イオンのモル数に対し、例えば凡そ0.5〜20.0モルとすることができ、凡そ0.8〜10.0モルとすることが好ましい。また、添加の方法は特に限定されず、例えば該有機化合物が粉末状(粉状、粒状等を含む)である場合は、そのまま上記水性溶媒に添加してもよく、先ず任意の溶媒(以下、第2の溶媒と呼ぶ。)に溶解させて溶液状にした後に、上記水性溶媒に添加してもよい。なお、ここで用いられる第2の溶媒としては、上記水性溶媒と均一に混合し得るものが好ましく、例えば上述した水性溶媒と同種の溶媒を用いることができる。また、撹拌・混合操作に関してはすでに上述した手法を適宜用いることができる。撹拌・混合に要する時間は特に限定されないが、例えば数分〜数十分(典型的には1分〜60分、例えば5分〜40分)とすることができる。
ここで開示される製造方法では、次に、上記有機化合物を添加した水性溶液をアルカリ性に調整し、該水性溶液から層状複水酸化物の粒子を析出させる(共沈法とも言う。)。
ここでアルカリ性に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば上記水性溶液中に、アルカリ剤(即ち、液性をアルカリ性に傾ける作用のある化合物)を添加することが挙げられる。かかるアルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等を、典型的には水溶液の形態で用いることができる。好ましい一態様では水酸化ナトリウム水溶液を使用する。
水性溶液のpHは、使用する陽イオン種や溶液の濃度によっても異なるため、特に限定されないが、極端に高いpHでは析出した水酸化物が再溶解する虞がある。また、均質な(例えば、粒径や粒子構造等が平均から大きく外れた粒子の個数割合が少ない)粒子が得られやすいという観点からは、上記水性溶液から短時間のうちに多数の核を析出させ得ることが好ましい。かかる析出態様を好適に実現するには、典型的にはpH8以上、例えば8以上12以下、好ましくは9以上11以下に調整することが好ましい。なお、本明細書中において、pHの値は、市販のpHメーターを用いて室温(液温25℃)において測定された値を指す。
ここで開示される製造方法では、次に、上記析出させた層状複水酸化物粒子(即ち、二価および三価の陽イオンと両性イオンと少なくとも水酸化物イオンを含む陰イオンとを含む複水酸化物粒子)を水性溶液から分離し、洗浄して乾燥させる。分離方法としては、従来公知の方法(遠心分離、濾過、デカンテーション等)を一種または二種以上組み合わせて用いることができる。そして、上記得られた粒子を適宜、粉砕および/または分級処理する。かかる粉砕処理では、従来用いられる装置のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。例えば、ジェットミル、プラネタリーミキサー等の非媒体型分散機や、ボールミル等の媒体型分散機を用いることができる。また、粉砕処理の条件(例えば、粉砕速度や粉砕時間)は、所望の粒径が得られるよう、適宜を調節するとよい。
このようにして、例えば、平均粒径が凡そ1000nm以下(典型的には1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは1nm以上250nm以下)程度の層状複水酸化物粒子を得ることができる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、動的光散乱法に基づく粒度分布測定により、キュムラント解析法から算出した平均粒子径を指す。具体的には、例えば、型式「Zetasizer Nano ZS ZEN3600」(Malvern Instruments社製)等の動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置により測定することができる。
そして、上記得られた層状複水酸化物粒子を、所望の形状に成形する。成形の手法については特に限定されず、従来行われている公知の成形技法(金型成形、冷間静水圧成形、押出し成形、射出成形、鋳込み成形、プレス成形等)等を用いて製造することができる。
具体的には、例えば、先ず粉末状の層状複水酸化物と、バインダ(例えば、セルロース系ポリマー)とを分散溶媒(水や有機溶剤)中に分散させることによって、スラリー状(ペースト状、インク状を含む。)の分散液を調製する。なお、該スラリー状の分散液には、必要に応じて分散剤や界面活性剤等の添加剤を含み得る。次に、上述した公知の成形技法を用いてスラリー状の分散液を所望の形状に成形する。そして、該成形体を乾燥(例えば加熱)することにより、アルカリ電解質を製造することができる。
ここで開示される製造方法により得られるアルカリ電解質は、用途に応じた種々の形状をとり得る。例えば、膜状、平板(薄板)状、円柱状(ペレット状)などが挙げられるが、形状やサイズ等は特に限定されない。また、かかるアルカリ電解質の厚み(典型的には膜厚)は、典型的には10μm〜500μm程度であり、好ましくは20μm〜300μm程度であるが、かかる膜厚に限定されるものではない。
また、本発明により、ここで開示されるいずれかのアルカリ電解質を備えた燃料電池が提供される。ここで開示されるアルカリ電解質は、湿度依存性が小さく、低湿領域(例えば、20%RH〜60%RH)においても、高いイオン伝導性を示す。よって該電解質を用いた燃料電池では、従来に比べ低湿領域における発電性能が向上し、発電安定性をも向上させることができる。
ここで開示されるアルカリ電解質は、水酸化物イオンをイオン伝導体として用いる燃料電池であれば、特に制限なく用いることができる。かかる燃料電池としては、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer electrolyte fuel cell)や、直接形メタノール燃料電池(DMFC:Direct methanol fuel cell)、直接形エタノール形燃料電池(DEFC:Direct ethanol fuel cell)等の直接形燃料電池(DFC:Direct Fuel Cell)等と総称される燃料電池が挙げられる。
また、かかる形状も特に限定されず、例えば、従来公知の平板型(Planar)、縦縞円筒型(Tubular)、円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat tubular)、一体積層型等の燃料電池に用いることができる。なお、該燃料電池に用いる材料(例えば、該電極を構成する材料や該電池セルを構成する部材等)および該電池の構築方法は従来と同様のものを用いることができ、特別な操作を必要としない。
かかるAFCに電流を印加すると、カソード30において、酸素含有ガス中の酸素と、水(H2O)とが反応し、水酸化物イオン(OH−)を生成する。該水酸化物イオンは、カソード30からアルカリ電解質20を介してアノード10に供給される。そして該アノード10において、燃料と反応して水を生成し、電子を放出することにより、発電が行われる。
先ず、二価の陽イオン源たる硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O)と、三価の陽イオン源たる硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O)とを、陽イオン(即ち、Mg2+とAl3+)のモル比が3:1になるよう秤量し、精製水(75ml)に溶解させて水性溶液を調製した。次に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)を秤量し、精製水(300ml)に溶解させて水性溶液を調製した。そして、陽イオン源の溶解した水性溶液に溶液状態の両性イオン源を添加し、20分間スターラーで攪拌した。
上記調製した水性溶液に、2MのNaOH溶液を添加し、該水性溶液のpHを9.5に調整した。該水性溶液をスターラーでさらに30分間攪拌した後、電気炉に入れ80℃で4時間保持(放置)し析出物を得た。かかる析出物を遠心分離した後にろ過し、精製水で3回洗浄してから乾燥(80℃、24時間)することにより、平均粒径120nmの層状複水酸化物(例1)を得た。
上記炭酸ナトリウムに替えて、両性イオンになり得るトリメチルグリシン((CH3)3N+CH2COO−)を用いたことと、80℃での保持時間を24時間としたこと以外は、上記<例1>と同様の方法で層状複水酸化物(例2)を得た。
上記硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物と含む水性溶液に、陰イオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(CH3(CH2)11OSO3Na)を添加したこと以外は、上記<例1>と同様の方法で層状複水酸化物(例3)を得た。
上記硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物と含む水性溶液に、陰イオン系界面活性剤であるストアリン酸ナトリウム(CH3(CH2)16COONa)を添加し、溶媒として精製水とエタノールの混合溶媒(配合比は、1:1)を用いたこと以外は、上記<例1>と同様の方法で層状複水酸化物(例4)を得た。
上記二価の陽イオン源たる硝酸マグネシウム六水和物と、三価の陽イオン源たる硝酸アルミニウム九水和物とを、陽イオンのモル比が2:1になるよう秤量したこと以外は、上記<例1>と同様の方法で層状複水酸化物(例5)を得た。
上記炭酸ナトリウムに替えて、両性イオンになり得るトリメチルグリシン((CH3)3N+CH2COO−)を用いたことと、80℃での保持時間を24時間としたこと以外は、上記<例5>と同様の方法で層状複水酸化物(例6)を得た。
上述した各サンプルの構成について下表1に纏める。
ここで、上記得られた層状複水酸化物(例1〜6)について、下記の条件でX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)測定を行った。二価の陽イオン(Mg2+)と、三価の陽イオン(Al3+)との比を3:1とした層状複水酸化物(例1〜4)のXRDチャートを図3に、上記陽イオンの比を2:1とした層状複水酸化物(例5、6)のXRDチャートを図4に、それぞれ示す。またXRDチャートのピーク位置と、Braggの式(2dsinθ=nλ)から得られた層間距離d(nm)について纏めた結果を表2の該当箇所に示す。
測定装置:RINT−TTRIII(株式会社リガク製)
ターゲット:Cu(Kα線)
スリット:発散スリット=1°、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1°
測定範囲:3°≦2θ≦80°
測定温度:室温(25℃)
また、図4に示すように、例5のXRDパターンより目的物が合成できていることを確認した。例6では2θ=10°付近に二つピークが重なって観察され、トリメチルグリシンが層間に入ったことで層間距離が広がったものと考えられた。
上記得られた層状複水酸化物(例1〜6)について、イオン伝導率σ(S/cm)を測定した。具体的には、まず測定用サンプル(ペレット)を作製した。即ち、上記得られた層状複水酸化物(0.2g)をペレット成形用の金型(直径10mm)に入れ、所定の条件で加圧成形(例えば、ここでは6kNで30秒間加圧した後、より強い圧力(12kN)で5分間加圧)した。そして、得られたペレットの表裏に導電性ペースト(ドータイトD−500、藤倉化成株式会社製)を塗布し、80℃で10分間乾燥させた。かかるペレットに電極用金板(厚み0.1mm)を設置し、測定用サンプル(例1〜6)とした。
測定装置:1260型(Solartron社製)
測定電圧:10mV
測定周波数:10MHz〜0.1Hz
測定方法:2端子法
測定温度:80℃
なお、陰イオン系界面活性剤を添加した例3および例4では、80%RHにおいても他の例に比べ小さなイオン伝導率を示した。この理由としては、水酸化物層の層間に分子量の大きな該界面活性剤が大量に存在することで、イオンの可動性(移動性)が著しく低下した(即ち、電荷移動抵抗が著しく増大した)ことが考えられる。
10 アノード(燃料極)
11 燃料室
20 アルカリ電解質
22 水酸化物層
23 両性イオン(分極を生じた有機化合物)
24 層間
25 陰イオン
26 水分子(層間水)
30 カソード(空気極)
31 酸化剤ガス室
Claims (10)
- アルカリ電解質であって:
前記アルカリ電解質は、層状複水酸化物を形成する組成物によって構成されており、
前記組成物は、二価の陽イオンと、三価の陽イオンと、少なくとも水酸化物イオンを含む陰イオンと、両性イオンになり得る有機化合物と、
を包含する、アルカリ電解質。 - 前記二価の陽イオンはマグネシウムイオンであり、前記三価の陽イオンはアルミニウムイオンである、請求項1に記載のアルカリ電解質。
- 前記二価の陽イオン(MII)と前記三価の陽イオン(MIII)とのモル比(MII/MIII)は、2以上4以下である、請求項1または2に記載のアルカリ電解質。
- 前記二価の陽イオン(MII)と前記三価の陽イオン(MIII)とのモル比(MII/MIII)は、2.5以上3.5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアルカリ電解質。
- 前記有機化合物として、少なくとも1種のアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のアルカリ電解質。
- 前記有機化合物として、少なくとも以下の一般式(1):
R1R2R3N+R4COO− (1)
(ここで、R1、R2、R3、R4は、それぞれ水素原子または炭素数1〜5の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。)
で示されるアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルカリ電解質。 - 前記有機化合物として、少なくとも以下の一般式(2):
R1R2R3N+CH2COO− (2)
(ここで、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子または炭素数1〜5の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。)
で示されるアルキルグリシンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のアルカリ電解質。 - 前記有機化合物として、少なくともトリメチルグリシンを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のアルカリ電解質。
- 層状複水酸化物からなるアルカリ電解質の製造方法であって:
二価の陽イオン源および三価の陽イオン源を含有する水性溶液を用意すること;
前記用意した水性溶液に、両性イオンになり得る有機化合物を添加すること;
前記有機化合物を添加した水性溶液をアルカリ性に調整し、析出物を得ること;
前記アルカリ性の水性溶液から析出物を回収すること;および
前記回収した析出物を成形すること;
を包含する、アルカリ電解質の製造方法。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載のアルカリ電解質、または請求項9に記載の製造方法により得られたアルカリ電解質、を備えた燃料電池。
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