JP2013119633A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆した場合に、その初期なじみ性を向上させると共に、初期なじみ後において、これまでに比べて摩擦係数が低減される摺動部材を提供することにある。
【解決手段】摺動部材は、基材の表面に、非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜が形成された摺動部材である。非晶質炭素被膜の表面には、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜がさらに被覆されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、非晶質炭素被膜を被覆した摺動部材に係り、特に、耐摩耗性に優れた摺動部材に関する。
従来から、自動車において、エンジン、トランスミッションなど様々な機器に摺動部材が用いられている。そこでは、摺動部材の摺動抵抗を低減してエネルギ損失を減らし、地球環境の保護のための今後の燃費規制に対応すべく、様々な研究開発が進められている。
例えば、このような研究開発の1つに、構造用鋼または高合金鋼からなる摺動部材の耐摩耗性を向上させると共に低摩擦特性を得るために、その摺動面にコーティングを行う技術がある。近年、このコーティング材料として、ナノダイヤモンド粒子ライクカーボン(DLC)などの非晶質炭素材料が注目されている。この非晶質炭素材料が形成された被膜(非晶質炭素被膜)は、炭素を主成分とする硬質の被膜であり、該硬質の被膜の炭素は固体潤滑剤としても作用するので、低い摺動抵抗と高い耐摩耗性とを両立できる被膜である。
たとえば、このような技術として、非晶質炭素材料に、Ag,Mg,In,Sn等の金属を0.5〜20at%含有させた炭素被膜が形成された摺動部材が提案されており、これに対する相手材には、鉄系材料からなる摺動部材が用いられている(例えば特許文献1参照)。
特開2007−177313号公報
特許文献1に記載の摺動部材は、非晶質炭素材料に、上述した金属を含有させているので、このような被膜を表面に被覆していないものに比べて、摺動部材の摩擦係数を有効に低減することができる。しかしながら、被膜の初期の表面粗さが粗い場合には、被膜そのものの表面硬さが硬いため、摩擦係数が低くなるまでに時間がかかってしまい、摺動部材の初期なじみ性が十分でない場合があった。
また、相手材に鉄系材料などの材料を用いた場合には、摺動部材の被膜の表面硬さよりも、相手材の表面硬さの方が低くなるため、摺動部材の被膜が相手材の表面を攻撃してしまうことにより、いずれの表面粗さも十分に低減することができない場合がある。この結果、初期なじみ後に摺動部材の摩擦係数が安定した場合であっても、摩擦係数が十分さがらない場合があった。
本発明は、このような点を鑑みて、その目的とするところは、基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆した場合に、その初期なじみ性を向上させると共に、初期なじみ後において、これまでに比べて摩擦係数が低減される摺動部材を提供することにある。
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。具体的には、非晶質炭素材料からなる被膜は、相手材に比べて硬質の被膜であるため、たとえ、特許文献1のように、非晶質炭素材料に、単にAg,Mg,In,Sn等の金属を添加した被膜を形成した場合であっても、十分に初期なじみを向上させることができないことがわかった。そこで、このような金属のうち、被膜そのものの硬さを軟らかくする元素を選定して、この元素を多量に添加した場合には、被膜が軟質になるため初期なじみは向上するが、被膜そのものが摩滅、剥離等するおそれがあるため、結果として、基材そのものの表面では初期なじみ後の摩擦係数を安定して低減した状態を維持することができないとわかった。
このような観点から、発明者らは、摺動部材の摺動面に、非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜を被覆するとともに、その表層に、この非晶質炭素材料をベースとして、この材料の炭素と炭化物を生成しない金属を多量に含有させた薄膜を設けることにより、軟質の薄膜により初期なじみ性を向上させ、ベースとなる非晶質炭素被膜により被膜そのものの摩滅等を抑え、安定して摩擦係数を低減することができるとの新たな知見を得た。
本発明に係る摺動部材は、基材の表面に、非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜が形成された摺動部材であって、前記非晶質炭素被膜の表面には、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜がさらに被覆されていることを特徴とする。
本発明によれば、摺動部材の表面に非晶質炭素被膜が形成されており、その表面に、上述した元素を含有たる非晶質炭素材料からなる薄膜がさらに形成されている。この薄膜の非晶質炭素材料に含有する元素は、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuであり、このような元素は炭化物を形成しない元素であるので、これらのいずれかの元素を25〜50at%含有した薄膜は、上述した非晶質炭素被膜よりも表面硬さが低く、軟質の薄膜となる。特に、AgまたはSnを含有させた場合には、鉄との凝着性が小さく、摩擦低減効果が大きいため、好適である。
したがって、このような薄膜を設けることにより、摺動部材の初期なじみ性が向上すると共に、例えば非晶質炭素被膜の表面粗さが従来の表面粗さよりも大きい場合であっても、この軟質の薄膜が削れ、摺動部材の摺動面が平滑化される。これにより、初期なじみ後においても、摺動部材の摩擦係数をこれまでに比べて低い状態にすることができる。さらに、非晶質炭素被膜および薄膜のいずれも主材は非晶質炭素材料であるので、これらの膜の密着性は良い。
ここで、発明者らの後述する実験によれば、薄膜中の上述した元素が25at%未満の場合には、薄膜の硬さが硬くなるので、初期なじみ性が低下することがあり、一方、薄膜中の上述した元素が50at%を超えた場合には、この元素が軟質の金属であるため、相手材の表面に凝着しやすく、摩擦係数が急激に上昇することがわかっている。
また、このように、摺動時において初期なじみを向上させるとともに、摩擦係数を低い状態に安定的に維持することができるのであれば、薄膜の膜厚は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記薄膜の厚さが0.1〜0.5μmの範囲にある。
本発明によれば、このような厚さの範囲とすることにより、非晶質炭素被膜よりも軟質である薄膜の上述した機能を十分に発揮することができる。すなわち、薄膜の厚さが0.1μm未満の場合には、初期なじみ性が発揮されるまでに薄膜が摩滅するおそれがあり、薄膜の厚さが0.5μmを超えた場合には、薄膜の摩耗量が増大し、相手材の摩耗量も増大するおそれがある。
さらに、非晶質炭素被膜の表面粗さは、十点平均粗さRz0.4μm以下であることが好ましい。非晶質炭素被膜の表面粗さは、十点平均粗さRz0.2μm未満で用いることが通常であるが、従来よりも粗いこのような粗さRz0.2μm〜0.4μmであっても、軟質の薄膜がこの表面に被覆されているので、初期なじみだけでなく、その後の摩擦係数を低い値に維持することができる。ここで、十点平均粗さRzの上限値は、0.4μmであり、これよりも大きい場合には、軟質の薄膜による低摩擦係数効果を発現し難くなる。
本発明によれば、基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆した場合に、その初期なじみ性を向上させると共に、初期なじみ後において、これまでに比べて摩擦係数が低減される。
本発明の実施例1および比較例1に係る摺動部材の摩擦係数の結果を示した図。 実施例1、比較例1、および比較例2の摺動部材の時間経過に伴う摩擦係数変化を示した図。 実施例2に係る摺動部材の摩擦係数の結果を示した図。
以下の本発明の実施形態を説明する。
〔基材の作製〕
摺動部材の基材を準備する。基材としては、例えば、炭素鋼(JIS:S45C、S30Cなど)、クロム鋼、クロムモリブデン鋼などの合金鋼(JIS規格:SCr、SCMなど)、合金工具鋼(JIS規格:SKS,SKDなど)、ステンレス鋼、軸受鋼、バネ鋼などの特殊用途鋼(JIS規格:SUS、SUJ、SUPなど)、または鋳鉄の鉄系基材を挙げることができる。しかしながら、後述する非晶質炭素被膜20との密着性を確保することができるのであれば、これらの金属材料に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、Cu,Mg,Zn等を含むアルミニウム合金、銅、または、Zn,Al,Sn等を含む銅合金などの金属材料を挙げることができる。
〔非晶質炭素被膜の被覆〕
基材の表面に非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜を被覆する。具体的には、基材を、スパッタリング、真空蒸着、イオン化蒸着、イオンプレーティング、などを利用した物理的蒸着法(PVD)により成膜してもよく、プラズマ処理などを利用した化学気相成長法(CVD)により成膜してもよい。
ここでは、非晶質炭素被膜の表面硬さは、Hv1000〜5000であることが好ましく、このような表面硬さの範囲とすることにより、相手材に対する耐摩耗性を向上することができ、たとえば、スパッタリングの場合には、バイアス電圧を変化させることにより、このような表面硬さを確保することができる。
また、この非晶質炭素被膜中に、Si、Ti、Cr、Fe、W、Bなどの添加元素を含有させてもよく、このような元素を添加することにより、被膜の表面硬さを調整することもできる。
また、非晶質炭素被膜の膜厚は、後述する薄膜の膜厚よりも厚く、より好ましい範囲としては、1〜3μmの範囲である。すなわち、膜厚が1μm未満の場合には、たとえ、後述する薄膜を形成したとしても、非晶質炭素被膜が摩滅するおそれがある。一方、非晶質炭素被膜の膜厚が3μmを超えた場合には、膜内に内部圧縮応力により、基材との密着性を確保することができない場合がある。
また、非晶質炭素被膜の表面粗さは、基材の表面に被覆することから、基材の表面粗さに依存するものであり、非晶質炭素被膜の表面粗さは、より小さいこと(Rz0.2μm未満であること)が望ましい。しかしながら、本実施形態の場合には、非晶質炭素被膜の表面粗さは、十点平均粗さRz0.2μm〜0.4μmの範囲にあってもよい。
従来の如く、このような範囲の非晶質炭素被膜のみが被膜として被覆された摺動部材は、表面粗さが大き過ぎるため、相手材と共に非晶質炭素被膜も摩耗しやすいが、本実施形態の場合には、このような表面粗さであっても後述する軟質の薄膜がこの表面に被覆されているので、この薄膜が削れて平滑化され、初期なじみだけでなく、その後の摩擦係数を低い値に維持することができる。
〔薄膜の被覆〕
前記非晶質炭素被膜の表面には、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜をさらに被覆する。ここで、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを選定した理由は、非晶質炭素材料の炭素と炭化物を形成しないからである。
たとえば、このような薄膜は、以下のようにして成膜される。具体的には、スパッタリング法による成膜を例示すると、カーボンターゲットと、上述した金属元素(すなわち、Ag、Sn、Zn、Au、またはCu)からなる材料からなる金属ターゲットを準備し、これらのターゲットに対して、同時にアルゴン等の不活性ガスを電界で加速し照射する。
これにより、カーボンターゲットおよび金属ターゲットの表面の原子または分子を放電させ、これらを物理的作用により蒸気化することにより、非晶質炭素被膜(第1の非晶質炭素被膜)の表面に、さらに薄膜(第2の非晶質炭素被膜)を成膜する。このようにして、非晶質炭素材料をベースに、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuの粒子を内部に分散した被膜が、非晶質炭素被膜の表面に被覆された摺動部材を得ることができる。
本実施形態では、薄膜に対して、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを25〜50at%(原子%)含有せる。スパッタリング法で成膜する場合には、上述した金属ターゲットに対するターゲット電力(電圧×電流)を調整することにより、このような範囲の金属を含有させることができる。
そして、25〜50at%の範囲となるように、薄膜に対してAg、Sn、Zn、Au、またはCuを含有させることにより、薄膜は、上述した非晶質炭素被膜よりも表面硬さが低い軟質の薄膜となる。
このような薄膜を設けることにより、摺動部材の初期なじみ性が向上すると共に、例えば非晶質炭素被膜の表面粗さが従来の表面粗さよりも大きい場合であっても、この軟質の薄膜が削れ、摺動部材の摺動面が平滑化される。これにより、初期なじみ後においても、摺動部材の摩擦係数をこれまでに比べて低い状態にすることができる。
ここで、薄膜中の上述した元素を25at%未満の場合には、薄膜の硬さが硬くなるので、初期なじみ性が低下することがあり、一方、薄膜中の上述した元素が50at%を超えた場合には、この元素が軟質の金属であるため、相手材の表面に凝着しやすく、摩擦係数が急激に上昇する。
ここで、薄膜の厚さが0.1〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、成膜時間を調節することにより、このような範囲の膜厚にすることができる。このような厚さの範囲とすることにより、非晶質炭素被膜よりも軟質である薄膜の上述した機能を十分に発揮することができる。すなわち、薄膜の厚さが0.1μm未満の場合には、初期なじみ性が発揮されるまでに薄膜が摩滅するおそれがあり、薄膜の厚さが0.5μmを超えた場合には、薄膜の摩耗量が増大し、相手材の摩耗量も増大するおそれがある。
また、薄膜の表面硬さは、Hv200〜700の範囲にあることが好ましく、このような範囲において、上述した非晶質炭素被膜の表面硬さよりも低いことが条件となる。この薄膜の表面硬さは、上述した薄膜に含有させる金属元素の含有量に依存するものであり、Hv700を超えた場合には、薄膜が硬くなりすぎで、初期なじみ性が低下してしまい、一方、Hv200未満の場合には、薄膜が軟らかすぎて摩耗が促進され、初期なじみ後の摩擦係数を低減することができない場合がある。
さらに、非晶質炭素被膜の表面粗さは、十点平均粗さRz0.4μm以下であることが好ましい。非晶質炭素被膜の表面粗さが、従来(十点平均粗さRz0.2μm未満)よりも粗いこのような粗さ(十点平均粗さRz0.2〜0.4μm)であっても、軟質の薄膜がこの表面に被覆されているので、初期なじみだけでなく、その後の摩擦係数を低い値に維持することができる。ここで、十点平均粗さRzの上限値は、0.4μmであり、これよりも大きい場合には、軟質の薄膜による低摩擦係数効果を発現し難くなる。
また、薄膜の成膜する際に、上述した不活性ガスと共に、例えば、メタンガス、アセチレンガスなどの炭化水素ガスを導入し、放電により炭化水素ガスを分解し、非晶質炭素材料に水素をさらに含有させてもよい。これにより、薄膜には、さらに水素原子を含むので、得られた摺動部材は、さらなる低摩擦特性を発現することができる。
以下に本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
摺動部材の基材として、軸受鋼(JIS規格:SUJ2、焼き入れ品、表面硬さHv800)、6.3mm×15.7mm×高さ10mmのブロック試験片(表面粗さ、十点平均粗さRz0.4μm)を準備した。次に、スパッタリング法(PVD法)により、カーボンターゲットにArガスを電界で加速してターゲットに照射することで、カーボンターゲットのカーボンの原子または分子を弾き出し、ブロック試験片の6.3mm×15.7mmを構成する表面に、これを蒸着させて、非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜を成膜(被覆)した。このときのブロック試験片の温度は、200℃、バイアス電圧は、200Vであり、成膜時間は、120分とし、これにより、膜厚2μm、表面粗さRz0.4〜0.5μm、表面硬さHv2000の非晶質炭素被膜を得た。
次に、非晶質炭素被膜の表面に薄膜を被覆した。具体的には、グラファイトターゲットとAgターゲットを用い、処理室内に基材(ブロック試験片)を配置し、基材温度を100℃にした。次に、反応ガスとしてArガスを処理室内に流すと共に、グラファイトターゲット側のバイアス電圧を200V印加し、Agターゲット側のバイアス電圧を200V印加した。
これにより、スパッタリング法(PVD法)により、非晶質炭素被膜の表面に0.3μmの膜厚の非晶質炭素被膜を被覆し、本発明に相当する摺動部材を得た。なお、得られた非晶質炭素被膜の表面粗さは、十点平均粗さRz0.4μm、表面硬さは、Hv500、Ag含有量は、40at%であった。
(比較例1)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、薄膜の被覆時にAgターゲットを用いていない点である。すなわち、比較例1の場合、6.3mm×15.7mm×10mmのブロック試験片(JIS規格:SUJ2、焼き入れ品、表面硬さHv800)の6.3mm×15.7mmを構成する表面に、実施例1と同じ条件で、スパッタリング法により、カーボンターゲットのみを用いて非晶質炭素被膜および薄膜を被覆した。
(比較例2)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、薄膜に対してAgを含有する量を、20at%にした点である。具体的には、薄膜を成膜する際に、Agターゲットに印加する電圧を変化させることにより、Agの含有量を変化させた。
<摩擦試験>
実施例1、比較例1、および比較例2の摺動部材の相手部材として、構造用炭素鋼(JIS規格:S50C、焼入れ品、表面硬さHv600)を用いて、外径35mm、内径30mm、幅10mmのリング試験片を作製した。得られた円筒試験片の周面の表面粗さは、十点平均粗さRz1.0μmであった。
そして、それぞれの実施例1、比較例1、および比較例2の摺動部材(ブロック試験片)の6.3mm×15.7mmの表面(すなわち、非晶質炭素被膜が被覆された表面)と、円筒試験片の外周面を接触させ、潤滑油(SAE5W−30)、油温80℃を供給しながら、面圧130MPa、回転数160rpmの条件で、円筒試験片を30分間回転させ、摩擦係数を測定した。の結果を図1および図2に示す。
図1は、実施例1および比較例1の30分直後の値である。図2は、実施例1、比較例1、および比較例2の摺動部材の時間経過に伴う摩擦係数変化を示した図である。
〔結果1および考察〕
図1に示すように、実施例1の摺動部材の摩擦係数は、比較例1のものに比べて、0.04と低い値となった。また、これは、実施例1の摺動部材は、薄膜に対してAgを40at%含有させることにより、薄膜は、非晶質炭素被膜よりも表面硬さが低い軟質の薄膜となったことが起因していると考えられる。また、図2に示すように、実施例1の摺動部材が、摩擦係数0.04に安定するまでの時間が短かった。
以上のことから、実施例1の如く、非晶質炭素被膜の表面に、非晶質炭素材料の炭素と炭化物を形成しない元素であるAgを25〜50at%の範囲に含有した非晶質炭素材料からなる薄膜を設けることにより、摺動部材の初期なじみ性が向上すると共に、初期なじみ後にはこの軟質の薄膜が削れ、摺動部材の摺動面が平滑化される。これにより、初期なじみ後においても、摺動部材の摩擦係数をこれまでに比べて低い状態にすることができたと考えられる。
(実施例2)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、薄膜に対してAgを含有する量を、図3に示すように変更した点である。具体的には、薄膜を成膜する際に、Agターゲットに印加する電圧を変化させることにより、Agの含有量を変化させた。そして、実施例1と同様の摩擦試験を行った。この結果を図3に示す。図3は、摺動部材の薄膜中のAgの含有量と摩擦係数との関係を示した図であり、摩擦係数は、摩擦試験30分直後の値である。
〔結果2および考察〕
図3に示すように、Agを25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜は、摩擦係数が0.05以下となり、この範囲がAg含有の最適な範囲といえる。そして、薄膜中のAgが25at%未満の場合には、薄膜の硬さが硬くなるので、初期なじみ性が低下することが考えられ、一方、薄膜中のAgが50at%を超えた場合には、この元素が軟質の金属であるため、相手材の表面に凝着しやすく、摩擦係数が急激に上昇したものと考えられる。
そして、非晶質炭素材料の炭素と炭化物を形成しない元素として、Agのほかにも、Sn、Zn、Au、またはCuを挙げることができ、このような元素を25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜を、非晶質炭素被膜の表面に、被覆したとしても同様の結果が得られるものと推察される。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。

Claims (3)

  1. 基材の表面に、非晶質炭素材料からなる非晶質炭素被膜が形成された摺動部材であって、
    前記非晶質炭素被膜の表面には、Ag、Sn、Zn、Au、またはCuを25〜50at%含有した非晶質炭素材料からなる薄膜がさらに被覆されていることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記薄膜の厚さが0.1〜0.5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記非晶質炭素被膜の表面粗さは、Rz0.4μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
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