JP2003322152A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JP2003322152A
JP2003322152A JP2002076377A JP2002076377A JP2003322152A JP 2003322152 A JP2003322152 A JP 2003322152A JP 2002076377 A JP2002076377 A JP 2002076377A JP 2002076377 A JP2002076377 A JP 2002076377A JP 2003322152 A JP2003322152 A JP 2003322152A
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JP2002076377A
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Akinori Norifuji
昭範 乗藤
Toshiaki Kawachi
利明 川地
Hideo Ishikawa
日出夫 石川
Takayuki Shibayama
隆之 柴山
Kunihiko Iwasaki
邦彦 岩崎
Cristian Petrica Lungu
ペトリカ ルング クリスチャン
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Daido Metal Co Ltd
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Daido Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐疲労強度及び耐摩耗性を向上でき、しかも
耐焼付性も向上できる摺動部材を提供する。 【解決手段】 すべり軸受1のすべり面に、銀に固体潤
滑材としてDLCを含有させたオーバレイ4を形成す
る。オーバレイ4は、例えばスパッタリングにより形成
する。オーバレイ4を、銀を主体としたものとすること
により、鉛を主体としたオーバレイのものに比べて耐疲
労強度及び耐摩耗性を向上できる。そして、その銀に固
体潤滑材を含有させたことにより、銀単体の場合に比べ
て摩擦係数を低減できるようになり、耐焼付性を向上で
きるようになる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基材に摺動層を備
えた摺動部材に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】この種の摺動部材、例
えば自動車におけるエンジン用のすべり軸受において、
基材表面のすべり面に設けられるオーバレイ(摺動層)と
しては鉛(Pb)が主体であるが、エンジンの高性能
化、高面圧化等に伴い、耐疲労強度や耐摩耗性の向上が
一層必要となる。そこで、本発明者らは、そのオーバレ
イとして、鉛より強い材料をベースとして開発を進めて
いる。鉛より強い材料として例えば銀(Ag)を用いた
場合、鉛の場合に比べて耐疲労強度及び耐摩耗性は向上
できるが、耐焼付性が劣るという問題が出てきた。
【0003】本発明は上記した事情に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、耐疲労強度及び耐摩耗性を向上
でき、しかも耐焼付性も向上できる摺動部材を提供する
ことにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1の発明の摺動部材は、基材に摺動層を備
え、この摺動層を、銀に固体潤滑材を含有させた材料に
より形成したことを特徴とする。上記した手段によれ
ば、摺動層を銀を主体とすることにより、鉛を主体とし
た摺動層のものに比べて耐疲労強度及び耐摩耗性を向上
できる。そして、その銀に固体潤滑材を含有させたこと
により、銀単体の場合に比べて摩擦係数を低減できるよ
うになり、耐焼付性を向上できるようになる。
【0005】この場合、固体潤滑材としては、グラファ
イト、カーボン、二硫化モリブデン、及び窒化ホウ素の
うちの少なくともいずれか一つを用いることが好ましい
(請求項2の発明)。
【0006】また、摺動層の固体潤滑材の含有率は、
0.05〜10質量%とすることが好ましい(請求項3
の発明)。この場合、固体潤滑材の含有率が0.05質
量%未満の場合には固体潤滑材の効果が発揮されず、逆
に、固体潤滑材の含有率が10質量%を超えると、摺動
層の機械的強度が低下し、耐疲労強度や耐摩耗性が低下
してしまう。
【0007】請求項4の発明は、基材と摺動層との間
に、銀からなる中間層を設けたことを特徴とする。固体
潤滑材入りの摺動層を基材に直接設けると、接着力が低
下することが懸念される。その理由は、固体潤滑材は金
属ではないため、摺動層のマトリックス金属である銀と
は冶金的な結合はしない。基材と冶金的な結合をして接
着力を持つのはマトリックス金属である銀であるため、
摺動層の固体潤滑材の含有量が増えるほど接着力が低下
し、耐疲労性が低下する。そこで、基材と摺動層との間
に、摺動層のマトリックス金属と同じ銀の中間層を設け
ることにより、基材と中間層との接着力が向上し、ま
た、中間層と、固体潤滑材入りの摺動層のマトリックス
金属が同じ銀であることから、境界で結晶構造が大きく
変化しないため、大きな接着力が確保されるようにな
り、ひいては耐疲労性が向上する。
【0008】請求項5の発明は、上記請求項4の発明に
おいて、中間層の銀の濃度は、基材の接合面から摺動層
の接合面に向かって減少することを特徴とする。
【0009】請求項6の発明は、摺動層は、ラマン分析
するとGピークとDピークが認められ、これらGピーク
とDピークとのピーク比I=Gピーク/Dピークが、
0.5≦I≦5.0の範囲にあることを特徴とする。摺
動層に含まれる固体潤滑材が、アモルファスカーボン、
なかでもダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC)の
場合、この条件を満たす。DLCは、摩擦係数が小さい
ので、目的に適している。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施例につい
て、図1〜図6を参照して説明する。まず、図1には、
摺動部材としてのすべり軸受の断面が模式的に示されて
いる。この図1において、すべり軸受(摺動部材)1は、
鋼からなる裏金2aと、この裏金2aの図中上面に設け
られた軸受合金層2bと、この軸受合金層2bの図中上
面に設けられたオーバレイ(摺動層)4との三層構造とな
っている。この場合、裏金2aと軸受合金層2bとによ
り基材3を構成し、オーバレイ4はすべり軸受1のすべ
り面となる。軸受合金層2bとしては、一般にアルミ系
合金または銅系合金が使用される。
【0011】そして、上記オーバレイ4は、銀に、固体
潤滑材としてアモルファスカーボン、なかでもDLCを
含有させた材料により形成している。ここで、オーバレ
イ4を設ける方法としては、湿式メッキと、乾式メッキ
とが考えられる。オーバレイの材料が銀単体の場合に
は、湿式メッキと乾式メッキのどちらでも可能である
が、上記したオーバレイ4のように銀と固体潤滑材(D
LC)との複合材料の場合には、湿式メッキでは困難で
ある。そこで、本実施例においては、乾式メッキの一つ
であるスパッタリングにより上記オーバレイ4を設ける
ようにした。そのオーバレイ4の厚さは、例えば10〜
20μmである。また、オーバレイ4におけるカーボン
(DLC)の含有率としては、0.4〜8.5質量%と
し、残りは銀としている。
【0012】ここで、オーバレイ4の効果を評価するた
め、本発明者らは、次のようなことを行った。まず、E
CR[(Electron Cyclotron Resonance)(電子サイク
ロトロン共鳴)]スパッタリング装置を用い、このEC
Rスパッタリング装置によりオーバレイを形成するよう
にした。このスパッタリングの原理を図2に示す。図2
において、オーバレイを形成する基材としての基板5を
チャンバ6内にセットすると共に、円筒状のターゲット
7をセットする。基板5としては、ブロンズを鏡面仕上
げしたものを使用した。また、ターゲット7は、オーバ
レイの材料となるもので、この場合、銀のリングと、D
LCの原料となるグラファイト(Gr)のリングとを組
み合わせて円筒状に形成する。オーバレイを形成する銀
とDLCの割合は、リングの数によって調整する。A
g:Grを例えば7:3の比率とする。銀単体の場合
は、ターゲット7は銀のリングのみにより形成する。
【0013】マグネトロン8により発生する高周波(例
えば2.45GHz)を、水晶の窓9を通してプラズマ
室10内に流すと共に、マグネットコイル11により例
えば87500μT(=875G)の磁場を起こし、製
膜時の圧力においてアルゴン(Ar)イオンが最大の密
度となるように調整する。プラズマ室10内の電子は、
磁場と、高周波による電場との相互作用によりら旋を描
きながらドリフト運動する(サイクロトロン運動)。磁
場の強度が87500μTのとき、電子サイクロトロン
共鳴の条件が満たされ、プラズマ室10内の電子が加速
される。このため、プラズマ室10内での電子衝撃によ
る中性粒子の電離確率が高まり、比較的高い真空度にお
いても高電離プラズマが生成される。
【0014】プラズマ室10内で発生したプラズマ中の
電子は、発散磁界の勾配と相互作用して試料(基板5)
側に引き出され、その引き出された電子は負の空間電荷
を発生させ、その空間電荷を中和するため、アルゴンイ
オン(Ar)が引き出される。引き出されたアルゴン
イオンは、電圧が印加されているターゲット7に入射
し、スパッタリングにより銀とDLCが基板5の表面に
析出(成膜)され、この結果、基板5の表面に15μm
のオーバレイが形成される。このとき、良好なサンプル
を得るため、基板5を10〜15回/分で回転させた。
また、基板5は、ヒータ12により150℃に調整し
た。
【0015】このようにして、基板5の表面にオーバレ
イを形成した。この場合、オーバレイとして銀に1.7
質量%DLCを含有したもの(以下、Ag/DLCと表
す)と、銀のみのもの(以下、Agのみと表す)との2
種類を作成した。
【0016】このようにして作成した2種類の試料を用
いて、摺動試験を行った。摺動試験は、ボールオンディ
スク摩擦試験機(CSME社製、ボール材質高炭素ステ
ンレス軸受鋼鋼材(SUJ2)、ボール直径6mm)に
より行った。荷重は1N、3N、5N、7Nに変化さ
せ、また、摺動速度は0.1m/sで一定とした。摺動
距離は、荷重が1Nの場合が100m、それ以外は50
mとした。
【0017】図3に摩擦力の測定結果を示す。摩擦係数
μは、摩擦力を荷重で割って求める。この図3から明ら
かなように、オーバレイがAgのみのものの摩擦係数μ
Aは、荷重の増加に伴い0.7から0.535に減少す
るのに対し、Ag/DLCのものの摩擦係数μBは、
0.465から0.43の間で変化した。基板(オーバ
レイを形成していないもの)の摩擦係数μ0は、上記と
同様な試験の結果、0.78±0.05であった。従っ
て、基板の摩擦係数μ0を1とした場合に、Agのみの
ものの摩擦係数μAは平均で約82%に低減し、また、
Ag/DLCのものの摩擦係数μBは平均で約57%に
低減していることがわかる。
【0018】そして、Ag/DLCのものの摩擦係数μ
Bは、Agのみのものの摩擦係数μAに対して全ての荷
重条件のもとで低くなっており、Agのみのものの摩擦
係数μAに対して約64〜80%に低減している(δ=
μB/μA)。Ag/DLCのものの摩擦係数μBが、
Agのみのものの摩擦係数μAに対して低減した理由と
して、DLCが固体潤滑材の役目をしたことと、Ag/
DLCのものの表面形状が、図4に示すように円錐状部
13が多数形成されているためであると考えられる。表
面に円錐状部13が多数形成されていると、相手との接
触面積が少なくなり、摩擦係数が小さくなる。
【0019】従って、上記したように、すべり軸受1の
オーバレイ4を、銀を主体としたものとすることによ
り、鉛を主体としたオーバレイのものに比べて耐疲労強
度及び耐摩耗性を向上できる。そして、オーバレイ4
は、銀にDLCを含有させた構成としたことにより、銀
単体の場合に比べて摩擦係数を低減できるようになり、
耐焼付き性を向上でき、一層の高面圧化にも対応できる
ようになる。
【0020】ここで、アルゴンレーザ(波長514.5
nm)を励起光とした場合の上記オーバレイ4のラマン
分光スペクトルを図5に示す。この図5からわかるよう
に、波数が1600cm−1付近にGピーク(バンド)
が、1300cm−1付近にDピーク(バンド)が認めら
れ、これはオーバレイ4中にアモルファス化度の高いD
LCが含まれていることを示している。上記のGピーク
は、sp結合成分(平面構造)に関連し、Dピーク
は、長距離秩序の損失に関連している。この場合、Gピ
ークとDピークとのピーク比I=Gピーク/Dピークが
次の範囲にあることが好ましい。このときのピーク比I
は、オーバレイ4中に含有されるDLCの性質(「DL
C中に含まれる水素の量」、「DLCの硬さ」、「DL
Cの摩擦係数」)を表すものである。
【0021】0.5≦I≦5 …(1) Iが0.5未満の場合、sp結合成分(正四面体構
造)の割合が多くなるので、オーバレイ4中に含有され
るDLCは、非常に硬く摩擦係数が高くなり、摺動時に
相手を攻撃したりするので、固体潤滑材の目的に適して
いない。Iが5を超える場合、長距離秩序の損失が少な
くなるので、オーバレイ4中に含有されるDLCは、D
LCに含まれる水素量が少ないため、非常に硬く、摩擦
係数が高くなり、摺動時に相手を攻撃したりするので、
固体潤滑材の目的に適していない。
【0022】従って、上記(1)式に示された範囲は、
摺動時、相手を攻撃することのない適度な硬さを持ち、
かつ低摩擦特性を有するDLCを意味する。その中でも
最も好ましいのは、0.8≦I≦3である。
【0023】ちなみに、図5の結果では、Gピークの強
度が約6800(a.u.)、Dピークの強度が約63
00(a.u.)となっていて、ピーク比Iは約1.0
8となっている。アモルファス化度の高いDLCは、摩
擦係数が低いので、固体潤滑材としての目的に適してい
る。
【0024】また、オーバレイ4のトライボ特性を評価
するために、焼付試験、摩耗試験、疲労試験を行った。
表1は、焼付試験の試験条件を示し、図6は、このとき
の焼付試験パターンを示す。焼付の評価は、図6の試験
パターンに示すように、0.5hr毎に3MPaずつ荷
重を上昇させていき、軸受背面温度が急激に上昇し、2
00℃に達した場合、または摩擦トルクが急激に上昇
し、4.9N・mに達した場合の荷重を焼付荷重とす
る。表2は摩耗試験の試験条件を示す。表3は疲労試験
の試験条件を示す。表4は、焼付試験、摩耗試験、疲労
試験それぞれの試験結果を示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】試料としては、発明品としてC(DLC)
の含有率が0.4、1.7、5.9、8.5質量%の4
種類(発明品試料1〜4)を用い、比較品としてC(DL
C)の含有率が0、12質量%のもの(比較品試料1、
2)と、従来のPb−8Sn−2Cuのオーバレイのも
の(比較品試料3)との3種類を用いた。なお、比較品
試料1は、DLCは含有されておらず、銀単体の場合で
ある。
【0030】表4から、発明品試料1〜4は、焼付かな
い最大面圧が27MPa以上であり、摩耗量が0.00
6mm以下であり、疲労しない最大面圧が115MPa
以上である。比較品試料1と比較した場合、表4から、
比較品試料1の焼付かない最大面圧が24MPaであ
り、摩耗量が0.009mmであり、疲労しない最大面
圧が115MPaであり、発明品試料1〜4は、非焼付
性と耐摩耗性が非常に優れており、また耐疲労性も同等
以上であることがわかる。
【0031】比較品試料2と比較した場合、表4から、
比較品試料2の焼付かない最大面圧が27MPaであ
り、摩耗量が0.003mmであり、疲労しない最大面
圧が80MPaであり、発明品試料1〜4は、耐疲労性
が非常に優れ、また非焼付性も同等以上であることがわ
かる。比較品試料3と比較した場合、表4から、比較品
試料3の焼付かない最大面圧が30MPaであり、摩耗
量が0.015mmであり、疲労しない最大面圧が80
MPaであり、発明品試料1〜4は、耐摩耗性と耐疲労
性が非常に優れていることがわかる。
【0032】従って、オーバレイ4におけるDLCの含
有率は、0.05〜10質量%とすることが好ましい。
DLCの含有率が0.05質量%より低い場合には、固
体潤滑材としての効果が発揮されず、逆に、DLCの含
有率が10質量%を超える場合には、オーバレイの機械
的強度が低下し、耐疲労性が低下してしまう。
【0033】次に本発明の第2実施例について図7を参
照して説明する。この第2実施例は上記した第1実施例
とは次の点が異なっている。すなわち、基材3と、銀に
固体潤滑材としてDLCを含有したオーバレイ4との間
に、銀の中間層15を設けた構成とする。この場合は次
のようにして作成する。
【0034】第1実施例と同様なECRスパッタリング
装置を用いる。ターゲット7としては銀のみを用いる。
基材となる基板5及びターゲット7をスパッタリング装
置内にセットし、装置を高真空にした後、アルゴンガス
を導入する。そして、第1実施例で記載したように、ア
ルゴンイオン(Ar)が銀のターゲット7に入射し、
スパッタリングにより銀が基板5表面に析出(成膜)さ
れる。これにより、銀の中間層が形成される。中間層の
厚さは約1.5μmとする。
【0035】この後、プラズマ室10内にCH(メタ
ン)ガスを、アルゴンガスの流量に対して10%の割合
となるように導入する。このときプラズマ室10内での
電子衝撃やイオン衝撃によりCHガスは、C−H結合
が切断され、CHガスを構成している原子のカーボン
と水素に分離される。また分離されたカーボンや水素
は、プラズマ室10内での電子衝撃などにより、さらに
電離し、イオンとなる場合もある。
【0036】プラズマ室10内で発生したプラズマ中の
電子は、発散磁界の勾配と相互作用して試料(基板5)側
に引き出され、その引き出された電子は、負の空間電荷
を発生させ、その空間電荷を中和するために、アルゴン
イオン(Ar)が引き出される。引き出されたアルゴ
ンイオンは、電圧が印加されているターゲット7に入射
し、ターゲット7の材料である銀がスパッタリングされ
る。
【0037】また、プラズマ室10内でCHガスより
分離されたカーボン及び水素と、スパッタリングされた
銀は、基板5側に引き出される電子やアルゴンイオンの
流れ(プラズマ流)に乗って基板5側に引き出される。
スパッタリングされた銀と、プラズマ流に乗って基板5
側に引き出されたカーボン及び水素は、基板5表面に衝
突し、基板5表面に析出(成膜)され、この結果、基板5
の表面にオーバレイが形成される。
【0038】中間層15の効果を評価するため疲労試験
を行い、その結果を表5に示す。なお、この疲労試験の
試験条件は、表3と同じである。試料としては、銀の中
間層がないもの(発明品試料2)と、銀の中間層を設けた
もの(発明品試料5)とを用いた。なお、オーバレイの組
成は同じである。
【0039】
【表5】
【0040】表5から、疲労しない最大面圧は、中間層
を設けていない発明品試料2では120MPaであるの
に対し、中間層を設けた発明品試料5では130MPa
となっており、中間層を設けた発明品試料5の方が耐疲
労性に優れていることがわかる。
【0041】なお、中間層15の銀の濃度は、基材3と
の接合面からオーバレイ(摺動層)4との接合面に向か
って減少してもよい。このとき、オーバレイ4との接合
面における中間層15の銀の濃度は、オーバレイ4中の
銀濃度と同等か、またはそれ以上とする。
【0042】また、中間層15の銀の濃度は、オーバレ
イ4との接合面における中間層15の銀の濃度をρAと
し、基材3との接合面における中間層15の銀の濃度を
ρBとすると、次式(2)を満足し、かつ基材3との接
合面からオーバレイ4との接合面に向かって減少しても
よい。 0<(ρB−ρA)≦10 …(1)
【0043】本発明は、上記した両実施例にのみ限定さ
れるものではなく、次のように変形または拡張すること
ができる。オーバレイ4を形成する銀に含有させる固体
潤滑材としては、DLCに限らず、グラファイト、カー
ボン、二硫化モリブデン、及び窒化ホウ素でも良く、ま
た、それらを複数種類混ぜるようにしても良い。
【0044】オーバレイ4の形成方法としては、上記し
たスパッタ方式以外の乾式メッキによる方法(イオンプ
レーティング、真空蒸着など)でも良く、また、湿式メ
ッキの方式でも良い。オーバレイ4が設けられる基材3
としては、軸受合金層のみ、あるいは鋼裏金のみであっ
ても良い。また、オーバレイ4の表面に、軟質のなじみ
層を設けるようにしても良い。なじみ層の材料として
は、Pb,Sn,In、或いは合成樹脂などが考えられ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すすべり軸受の断面図
【図2】ECRスパッタリング装置の原理を示す図
【図3】摺動試験の結果を示す特性図
【図4】オーバレイの表面形状の概略的な拡大斜視図
【図5】オーバレイのラマン分析の結果を示す特性図
【図6】焼付試験の試験パターンを示す図
【図7】本発明の第2実施例を示す図1相当図
【符号の説明】
図面中、1はすべり軸受(摺動部材)、2aは裏金、2b
は軸受合金層、3は基材、4はオーバレイ(摺動層)、1
5は中間層を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石川 日出夫 名古屋市北区猿投町2番地 大同メタル工 業株式会社内 (72)発明者 柴山 隆之 名古屋市北区猿投町2番地 大同メタル工 業株式会社内 (72)発明者 岩崎 邦彦 山口県宇部市大字沖宇部573番地の3 株 式会社超高温材料研究所内 (72)発明者 クリスチャン ペトリカ ルング 山口県宇部市大字沖宇部573番地の3 株 式会社超高温材料研究所内 Fターム(参考) 3J011 JA01 KA02 MA22 NA01 QA02 SE02 SE05 SE06 4K029 AA02 BA04 BA34 BA51 BA59 BA64 BB02 BC00 BC02 BD04 CA05 DC15 DC48

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材に摺動層を備え、この摺動層を、銀
    に固体潤滑材を含有させた材料により形成したことを特
    徴とする摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記固体潤滑材として、グラファイト、
    カーボン、二硫化モリブデン、及び窒化ホウ素のうちの
    少なくともいずれか一つを用いたことを特徴とする請求
    項1記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記摺動層の固体潤滑材の含有率が、
    0.05〜10質量%であることを特徴とする請求項1
    または2記載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記基材と摺動層との間に、銀からなる
    中間層を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のい
    ずれかに記載の摺動部材。
  5. 【請求項5】 前記中間層の銀の濃度は、基材の接合面
    から摺動層の接合面に向かって減少することを特徴とす
    る請求項4記載の摺動部材。
  6. 【請求項6】 前記摺動層は、ラマン分析するとGピー
    クとDピークが認められ、これらGピークとDピークと
    のピーク比I=Gピーク/Dピークが、0.5≦I≦
    5.0の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし5
    のいずれかに記載の摺動部材。
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