JP2013115084A - 有機薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性の向上可能な有機薄膜太陽電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板10と、基板上に配置された第1電極層11と、第1電極層上に配置された正孔輸送層12と、正孔輸送層上に配置されたバルクへテロ接合有機活性層14と、バルクへテロ接合有機活性層上に配置された第2電極層16と、第2電極層の表面に配置した不動態膜24とを備える。
【選択図】図7

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池およびその製造方法に関し、特に耐久性を向上させた有機薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
有機薄膜太陽電池においては、有機活性層若しくは電極の表面に微細なパターンを施すことで有機活性層内部に効果的に入射光を閉じ込め、集電効果を高め、光電変換効率の向上が実現されている。
従来の表面プラズモン共鳴を利用した有機薄膜太陽電池では、p型/n型有機層界面や、有機層/電極界面に、有機合成により粒径制御を行った銀(Ag)若しくは金(Au)ナノ粒子に、分散を促すためにアルキル基やチオール基で修飾したものを溶液状態で用いて、スピンコート法により、それぞれの界面上で塗布していた(例えば、特許文献1参照。)。
有機薄膜太陽電池は、極薄、軽量、フレキシブル性を特徴とし、常温、大気圧下の条件で成膜できるので製造コストの低廉化が可能であり、安価な太陽電池として注目されている。
特開2009−246025号公報
一方、有機薄膜太陽電池は、他の方式の太陽電池と比較して、耐久性が極端に低いことが課題となっている。
有機薄膜太陽電池の劣化は、主に雰囲気中の水分と酸素に起因する。即ち、水分と酸素は発電層を構成する有機層に容易に侵入し、有機層と電極を酸化させて発電機能を低下させ、有機薄膜太陽電池を劣化させてしまう。
即ち、従来において、有機薄膜太陽電池は、例えば、ITO付きのガラス基板上に、発電層となる数百nmの有機層を積層し、アルミニウムなどの金属を蒸着して作成される。電極として形成された純アルミニウムは酸化され易い特性を有するため、SiNやSiONなどの無機パッシベーション膜(表面保護膜)を積層したり、乾燥剤を填め込んだ掘り込みガラスで素子を覆って封止を行うなどの手法が用いられていた。
しかし、発電層となる有機層を溶液プロセスで行う湿式有機薄膜太陽電池は、発電層の製膜を常温・大気圧下で行うため、発電層内部に劣化の要因となる水分や酸素を容易に含んでしまい、その水分や酸素は、金属電極を酸化させて、素子の耐久性を低下させていた。
本発明の目的は、耐久性の向上可能な有機薄膜太陽電池およびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、基板と、前記基板上に配置された第1電極層と、前記第1電極層上に配置された正孔輸送層と、前記正孔輸送層上に配置されたバルクへテロ接合有機活性層と、前記バルクへテロ接合有機活性層上に配置された第2電極層と、前記第2電極層の表面に配置された不動態膜とを備える有機薄膜太陽電池が提供される。
本発明の他の態様によれば、基板を準備する工程と、前記基板上に第1電極層を形成する工程と、前記第1電極層上に正孔輸送層を形成する工程と、前記正孔輸送層上にバルクへテロ接合有機活性層を形成する工程と、前記バルクへテロ接合有機活性層上に第2電極層を形成する工程と、前記第2電極層の表面に不動態膜を形成する工程とを有する有機薄膜太陽電池の製造方法が提供される。
本発明によれば、耐久性の向上可能な有機薄膜太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の原理的な構成および動作を説明する模式図。 図1に示された有機薄膜太陽電池の各種材料のエネルギーバンド構造図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において適用する、(a)PEDOTの化学構造式、(b)PSSの化学構造式。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において適用する、(a)p型材料となるP3HTの化学構造式、(b)n型材料となるPCBMの化学構造式。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、真空蒸着で使用する材料の化学構造式であって、(a)Pc:フタロシアニンの例、(b)ZnPc:亜鉛フタロシアニンの例、(c)Me−Ptcdiの例、(d)C60 :フラーレンの例。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、溶液プロセスで使用する材料の化学構造式であって、(a)MDMO−PPVの例、(b)PFBの例、(c)CN−MDMO−PPVの例、(d)PFO−DBTの例、(e)F8BTの例、(f)PCDTBTの例、(g)PC 60 BMの例、(h)PC 70 BMの例。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の模式的断面構造図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池(酸化処理あり)と、比較例に係る有機薄膜太陽電池(酸化処理なし)の素子特性の経時変化を示すグラフ。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の60℃環境試験におけるモジュール光電変換特性の経時変化を示すグラフ。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の85℃/85%RH環境試験におけるモジュール光電変換特性の経時変化を示すグラフ。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、基板上に透明電極層を形成した状態を示す上面図および断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、透明電極層上に正孔輸送層を製膜した状態を示す上面図および断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、正孔輸送層上にバルクへテロ接合有機活性層を製膜した状態を示す上面図および模式的断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、バルクへテロ接合有機活性層上に第2電極層を形成した状態を示す上面図および模式的断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、第2電極層の表面に不動態膜を形成した状態を示す上面図および模式的断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、封止ガラスおよび封止材で封止した状態を示す上面図および模式的断面図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、セルを7個直列接続して配置した例を示す模式的平面パターン図。 (a)図17のI−I線に沿う模式的断面構造図、(b)図18(a)に対応する等価回路構成図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の作成手順を示すフローチャート。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の作成において、第2電極層の表面に酸化膜を形成する際に使用する高密度プラズマエッチング装置を示す概略図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の外観図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の量産化製造工程の一工程であって、基板上に透明電極層のストライプパターンを形成した状態を示す模式的鳥瞰構造図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の量産化製造工程の一工程であって、ストライプ状の透明電極層上に正孔輸送層をスピンコートにより製膜した状態を示す模式的鳥瞰構造図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の量産化製造工程の一工程であって、正孔輸送層上にバルクへテロ接合有機活性層をスピンコートにより製膜した状態を示す模式的鳥瞰構造図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の量産化製造工程の一工程であって、バルクへテロ接合有機活性層上にストライプ状の透明電極層と直交させて第2電極層のストライプパターンを形成した状態を示す模式的鳥瞰構成図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、複数のセルCijをマトリックス状に配置した例を示す模式的平面パターン構成図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造方法において、(a)正孔輸送層およびバルクへテロ接合有機活性層を形成する際のスピンコート法を示す概略図、(b)形成された正孔輸送層およびバルクへテロ接合有機活性層の例を示す模式的鳥瞰構成図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造方法であって、正孔輸送層およびバルクへテロ接合有機活性層をインクジェット印刷法で形成する状態を示す模式図。 実施の形態に係る有機薄膜太陽電池の製造工程の一工程であって、正孔輸送層およびバルクへテロ接合有機活性層をロールツウロール法を用いたグラビア印刷で形成する状態を示す模式図。
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
以下の実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、「透明」とは、透過率が約50%以上であるものと定義する。また「透明」とは、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、可視光線に対して、無色透明という意味でも使用する。可視光線は波長約360nm〜830nm程度、エネルギー約3.45eV〜1.49eV程度に相当し、この領域で透過率が50%以上あれば透明である。
有機薄膜太陽電池1aの動作原理を説明する模式図は、図1に示すように表される。また、図1に示された有機薄膜太陽電池1aの各種材料のエネルギーバンド構造は、図2に示すように表される。図1および図2を参照して、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1aの原理的な構成と、その動作について説明する。
図1の左図に示すように、有機薄膜太陽電池1aは、基板10と、基板10上に配置された透明電極層11と、透明電極層11上に配置された正孔輸送層12と、正孔輸送層12上に配置されたバルクへテロ接合有機活性層14と、バルクへテロ接合有機活性層14上に配置された第2電極層16とを備える。第2電極層16は、Alで形成され、カソード電極層となる。
ここで、バルクへテロ接合有機活性層14は、図1の右図に示すように、p型有機活性層領域とn型有機活性層領域が混在し、複雑なバルクへテロpn接合を形成している。ここで、p型有機活性層領域は、例えば、P3HTで形成され、n型有機活性層領域は、例えば、PCBMで形成されている。
(a)まず、光を吸収すると、バルクへテロ接合有機活性層14内で、励起子が生成される。
(b)次に、励起子は、バルクへテロ接合有機活性層14内のpn接合界面において、自発分極によって、電子(e−)と正孔(h+)の自由キャリアに解離する。
(c)次に、解離した正孔(h+)は、アノード電極となる透明電極層11に向けて走行し、解離した電子(e−)は、カソード電極層16に向けて走行する。
(d)結果として、カソード電極層16・透明電極層11間には、逆方向電流が導通して、開放電圧Vocが発生し、有機薄膜太陽電池が得られる。
有機薄膜太陽電池において、正孔輸送層12に適用するPEDOT:PSSの内、PDOTの化学構造式は、図3(a)に示すように表され、PSSの化学構造式は、図3(b)に示すように表される。
有機薄膜太陽電池において、バルクヘテロ接合有機活性層14に適用されるP3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5diyl))の化学構造式は、図4(a)に示すように表され、バルクヘテロ接合有機活性層14に適用されるPCBM(6,6-phenyl-C61-butyric acid methyl ester)の化学構造式は、図4(b)に示すように表される。
有機薄膜太陽電池において、真空蒸着で使用する材料の化学構造式の例は、以下の通りである。すなわち、フタロシアニン(Pc:Phthalocyanine)の例は、図5(a)に示すように表され、亜鉛フタロシアニン(ZnPc:Zinc- phthalocyanine)の例は、図5(b)に示すように表され、Me−Ptcdi(N,N’-dimethyl perylene-3,4,9,10-dicarboximide)の例は、図5(c)に示すように表され、フラーレン(C 60 :Buckminster fullerene)の例は、図5(d)に示すように表される。
有機薄膜太陽電池において、溶液プロセスで使用する材料の化学構造式の例は、以下の通りである。すなわち、MDMO-PPV(poly[2-methoxy-5-(3,7-dimethyl octyloxy)]-1,4-phenylene vinylene)の例は、図6(a)に示すように表される。PFB(poly (9,9’-dioctylfluorene-co-bis-N,N’-(4-butylphenyl)-bis-N,N’-phenyl-1,4-phenylenediamine)の例は、図6(b)に示すように表される。CN-MDMO-PPV (poly-[2-methoxy-5-(2’-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)-phenylene]) の例は、図6(c)に示すように表される。PFO-DBT (poly[2,7-(9,9-dioctyl-fluorene)-alt-5,5-(4,7’-di-2-thienyl-2’,1’,3’-benzothiadiazole)])の例は、図6(d)に示すように表される。
また、F8BT(poly(9,9’-dioctyl fluoreneco-benzothiadiazole))の例は、図6(e)に示すように表され、PCDTBT(poly[N-9’-hepta-decanyl-2,7-carbazole-alt-5,5-(4’,7’-di-thienyl-2’1’,3’-b3nzothiadizaole)])の例は、図6(f)に示すように表される。
また、PC60BM (6,6-phenyl-C61-butyric acid methyl ester)の例は、図6(g)に示すように表され、PC70BM(6,6-phenyl-C71-butyric acid methyl ester)の例は、図6(h)に示すように表される。
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1は、図7に示すように、基板10と、基板10上に配置された透明電極層(第1電極層)11と、第1電極層11上に配置された正孔輸送層12と、正孔輸送層12上に配置されたバルクヘテロ接合有機活性層14と、バルクヘテロ接合有機活性層14上に配置されたカソード電極層(第2電極層)16と、第2電極層16の表面に配置された不動態膜24とを備える。
不動態膜24は、第2電極層16の酸化膜で構成される。
また、第2電極層16の酸化膜は、第2電極層16の表面を酸素プラズマ処理することによって、形成可能である。
前記不動態膜の厚さは、例えば、約10オングストローム〜約100オングストロームである。
第2電極層は、Al、W、Mo、Mn、Mgの何れかの金属で構成されていても良い。
さらに、内壁面に乾燥剤を設けた封止層によって全体が封止されるようにできる。
また、有機薄膜太陽電池1からなるセルを複数個直列接続した構成とすることもできる。
有機薄膜太陽電池1は、第2電極層16の表面に不動態膜24を備えるため、バルクヘテロ接合有機活性層14内に水分や酸素が侵入した場合であっても、第2電極層16がその水分・酸素によって酸化する事態を防止することができる。これにより、有機太陽電池の劣化を抑制することができ、耐久性を高めることができる。
図8は、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1(酸化処理あり)と、比較例に係る有機薄膜太陽電池1a(酸化処理なし)の各素子特性の経時変化を示すグラフである。なお、図8において、縦軸は規格化光電変換効率(PCE)、横軸は時間(day)である。
図8のグラフから分かるように、酸化処理なしの場合には約17日で発電効率は0になっている。これに対して、酸化処理ありの場合には約280日を経過しても初期の発電効率を維持している。このように、第2電極層16の表面に不動態膜24を形成した実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1は、耐久性が著しく向上している。
また、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1について、各種の温度湿度条件下において環境試験を実施したところ、一定の環境試験(例えば25℃や60℃)では高い耐久性を示すことが確認された。
図9は、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の60℃環境試験におけるモジュール光電変換特性の経時変化を示すグラフである。図9において、縦軸は規格化光電変換効率(PCE)、横軸は時間(hour)である。また、光源は、800ルックス(0.100mW/cm)の蛍光灯を用いた。
図9に示すように、有機薄膜太陽電池1を60℃の環境下で保存した場合に、4512時間経過時に、安定化後の特性が99%維持されている。
図10は、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の85℃/85%RH環境試験におけるモジュール光電変換特性の経時変化を示すグラフを示す。図10において、縦軸は規格化光電変換効率(PCE)、横軸は時間(hour)である。また、光源は、1000ルックス(0.106mW/cm)の蛍光灯を用いた。
図10に示すように、有機薄膜太陽電池1を85℃/85%RHの環境下で保存した場合に、2400時間経過時において安定化後の特性から約43%低下している。
(製造方法)
図11〜図16を参照して、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の製造方法について説明する。
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の製造方法は、基板10を準備する工程と、基板10上に第1電極層11を形成する工程と、第1電極層11上に正孔輸送層12を形成する工程と、正孔輸送層12上にバルクヘテロ接合有機活性層14を形成する工程と、バルクヘテロ接合有機活性層14上に第2電極層16を形成する工程と、第2電極層16の表面に不動態膜24を形成する工程と有する。
第2電極層16を形成する工程は、バルクヘテロ接合有機活性層14上にAl、W、Mo、Mn、Mgなどの何れかの金属を蒸着して形成する工程を有する。
また、不動態膜24を形成する工程は、第2電極層16を酸素プラズマ処理する工程を有する。
(a)まず、純水、アセトン、エタノールで洗浄したガラス基板10(例えば、長さ約50mm×幅約50mm×厚さ約10.4mm)をICPエッチャ−に入れ、Oプラズマにより、表面の付着物を取り除く(ガラス基板表面処理)。なお、基板10をガラス基板で形成し、有機活性層へ光を効率的に誘導するために、ガラス表面に反射防止処理を実施しても良い。
(b)次に、図11に示すように、ガラス基板10上に、例えば、ITOからなる透明電極層11を形成する。図11に示すように、透明電極層11は溝部を挟んだストライプパターンで複数形成される。溝部の形成には、酸素プラズマエッチング技術、レーザパターニング技術、ナノインプリント技術などを適用することができる。
(c)次に、図12に示すように、各透明電極層11上に、正孔輸送層12を形成する。正孔輸送層12の形成には、スピンコート技術、スプレー技術、スクリーン印刷技術などを適用することができる。ここで、正孔輸送層12の形成工程では、例えば、PEDOT:PSSをスピンコートによって製膜を行い、水分除去のために、アニ−ルを120℃で約10分間行う。溝部の形成には、酸素プラズマエッチング技術、レーザパターニング技術、ナノインプリント技術などを適用することができる。
(d)次に、図13に示すように、各正孔輸送層12上に、バルクヘテロ接合有機活性層14を形成する。バルクヘテロ接合有機活性層14の形成工程においては、例えば、P3HTをスピンコートによって製膜を行う。
(e)次に、図14に示すように、各バルクヘテロ接合有機活性層14上に、カソード電極層16を形成する。カソード電極層16の形成には、例えばAl、W、Mo、Mn、Mgなどの金属層を真空加熱蒸着法により堆積することによって行われる。真空加熱蒸着法の代わりに、スクリーン印刷技術を適用しても良い。
(f)次に、図15に示すように、バルクヘテロ接合有機活性層14および正孔輸送層12をエッチング処理した後、カソード電極層16の表面に酸化膜(不動態膜)24を形成する。バルクヘテロ接合有機活性層14および正孔輸送層12をエッチング処理することによって、各セルを分離することができる。また、不動態膜24は、第2電極層16を酸素プラズマ処理することによって形成することができる。不動態膜24の形成は、例えば、高密度プラズマエッチング装置を用いて行うことができる。
(g)次に、図16に示すように、封止ガラス(カバーガラス)40および封止材41によって素子全体を封止する。封止材41は、エポキシ樹脂や光硬化樹脂等で構成される。なお、ガラス封止の工程は、大気中の水分や酸素による劣化を防ぐために、窒素雰囲気中で行うと良い。また、封止ガラス40の内壁面に乾燥剤を設け、水分や酸素による影響をより一層排除するようにしても良い。
以上の工程により、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1を得ることができる。
(直列接続例)
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1において、セルを7個直列接続した模式的平面パターン構成は、図17に示すように表される。また、図17のI−I線に沿う模式的断面構造は、図18(a)に示すように表され、図18(a)に対応する等価回路構成は、図18(b)に示すように表される。
各セルは、基板10と、基板10上に配置されたアノード電極層11と、アノード電極層11上に配置された正孔輸送層12と、正孔輸送層12上に配置されたバルクヘテロ接合有機活性層14と、バルクヘテロ接合有機活性層14上に配置されたカソード電極層16とを備える。さらに7個のセル全体が、封止層40によって、中空封止されている。封止層40の内壁面には、乾燥剤42が配置されている。なお、図示は省略するが、カソード電極層16の表面には、不動態膜が形成されている。
図18(a)から明らかなように、カソード電極層16(K1)は、アノード電極層11(A2)とセル周辺部において接続され、同様に、カソード電極層16(K2)は、アノード電極層11(A3)とセル周辺部において接続され、…、カソード電極層16(K6)は、アノード電極層11(A7)とセル周辺部において接続されている。結果として、有機薄膜太陽電池のセルを7個直列接続した構造が得られる。
このようにセルを複数個直列接続することによって、各セルに発生する起電力の総和としての高い開放電圧Vocを、同一電流値で、得ることができる。
図21は、セルを7個直列接続した有機薄膜太陽電池1の外観図である。
(有機薄膜太陽電池の作成手順)
図19に示すフローチャートに基づいて、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の作成手順について説明する。
(a)ステップS1では、基板10上に、PEDOT:PSSを塗布する。例えば、0.45μmPTFEメンブレンフィルターでPEDOT:PSS水溶液を濾過し、溶け残りや不純物を取り除き、PEDOT:PSS水溶液をITO基板10上に塗布し、スピンコート(例えば、4000rpm,30sec)する。
(b)ステップS2では、PEDOT:PSSを焼結する。即ち、製膜後、水分除去のために120℃、10分間加熱処理をする。なお、基板10全体に熱が伝わるように予めホットプレートで温めておいたシャーレを被せると良い。
(c)ステップS3では、P3HT:PCBMを塗布する。具体的には、例えば、ジクロロベンゼン(o-dichlorobenzen)にP3HT16mgとPCBM16mgを溶解させる。溶液は、窒素雰囲気中の50℃で一晩攪拌を行った後に、50℃で1分間超音波処理を行う。溶液は窒素置換されたグローブボックス(<1ppmO、HO)内で洗浄処理したITO基板10上にスピンコートを行う。回転数は例えば550rpm・60secの後に2000rpm・1secである。
(d)ステップS4では、プレアニールを行う。即ち、ステップS3の塗布の後、120℃で10分間加熱を行う。なお、基板10全体に熱が伝わるように予めホットプレートで温めておいたシャーレを被せると良い。
(e)ステップS5では、LiF真空蒸着を行う。具体的には、LiF(純度:99.98%)は、真空度:1.1×10−6torr・蒸着レートが0.1Å/secで真空加熱蒸着を行う。
(f)ステップS6では、Al真空蒸着を行って第2電極層16を形成する。具体的には、Al(純度:99.999%)は、真空度:1.1×10−6torrで蒸着レートが〜2Å/secで真空加熱蒸着を行う。
(g)ステップS7では、第2電極層16について、電極酸化被膜処理を行う。具体的には、図20に示すような高密度プラズマエッチング装置を用いて酸素プラズマにより第2電極層16表面を酸化し、酸化膜24を形成する。
(h)ステップS8では、パネル封止を行う。具体的には、パネルはグローブボックス内でUV硬化樹脂を塗布し、素子の測定部位にアルミ箔を被せてUVオーブンで例えば、約10分間露光を行い素子を完全に封止する。
(高密度プラズマエッチング装置)
図20を参照して、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1の作成において、第2電極層16の表面に酸化膜24を形成する際に使用される高密度プラズマエッチング装置の概略について説明する。
高密度プラズマエッチング装置は、酸素ガスPの導入口56と、反応後の排気ガスQを排出する排気口58を設けたチャンバー50を備える。
チャンバー50内には、高周波電源Vに接続された上部電極52と、有機薄膜太陽電池1の載置台54が設けられている。また、載置台54の下方には、アースされた下部電極53が設けられている。
そして、載置台54の上に、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1を載置した後、チャンバー50内に導入口56から酸素ガスPを導入すると共に、高周波電源Vを稼働させることにより、載置台54の上方に酸素プラズマRが生成される。
処理条件は、例えば、酸素ガス流量:100sccm、高周波電源出力:300W、バイアス:5W、電圧(Vpp):−4V、処理時間:30〜60secである。
これにより、酸素プラズマRが有する高い酸化力によって、有機薄膜太陽電池1の第2電極層16の表面が酸化されて、不動態膜24が形成される。
このような酸素プラズマによる電極酸化のメリットは、次の通りである。
(1)SiNなどのパッシベーション膜を新たに形成する必要ないため、短時間・低コストで酸化膜24を形成できる。
(2)基板10の表面の不純物が酸素プラズマによって除去されるため、封止時に基板洗浄処理を行う必要がなくなる。
(3)基板10の表面の不純物が酸素プラズマによって除去されるため、基板10と各層の密着性が増す。
(4)第2電極層16の表面の不動態化により、バルクヘテロ接合有機活性層14への水分・酸素の浸入を抑制できる。
なお、有機薄膜太陽電池の電極としてよく用いられる銀(Ag)は、酸化銀を形成し、表面が黒ずむ傾向が見られるが、Agの上にAlを、例えば約30nm積層して酸素プラズマ処理を行ったところ、電極の黒ずみを防ぐことができた。
(量産化工程)
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池は、図22〜図26に示すように、複数のセルをマトリックス状に配置し、量産化工程によって製造することもできる。
以下、図22〜図26を参照して説明する。
(a)まず、純水、アセトン、エタノールで洗浄したガラス基板10をICPエッチャ−に入れ、Oプラズマにより、表面の付着物を取り除く(ガラス基板表面処理)。なお、有機活性層へ光を効率的に誘導するために、ガラス基板10の表面に反射防止処理を実施しても良い。
(b)次に、図22に示すように、ガラス基板10上に、例えば、ITOからなる透明電極層11を形成する。図22に示す例では、透明電極層11は隙間を挟んだ2本のストライプパターンで形成される。隙間の形成には、酸素プラズマエッチング技術、レーザパターニング技術、ナノインプリント技術などを適用することができる。
(c)次に、図23に示すように、ガラス基板10および透明電極層11上に、正孔輸送層12を形成する。正孔輸送層12の形成には、スピンコート技術、スプレー技術、スクリーン印刷技術などを適用することができる。ここで、正孔輸送層12の形成工程では、例えば、PEDOT:PSSをスピンコートによって製膜を行い、水分除去のために、アニ−ルを120℃で約10分間行う。
(d)次に、図24に示すように、正孔輸送層12上に、バルクヘテロ接合有機活性層14を形成する。バルクヘテロ接合有機活性層14の形成工程においては、例えば、P3HT:PCBMをスピンコートによって製膜を行う。バルクヘテロ接合有機活性層14の厚さは、例えば100〜200nmとされる。
(e)次に、図25に示すように、バルクへテロ接合有機活性層14上に、2本のストライプパターンのカソード電極層16を透明電極層11と直交させて形成する。
カソード電極層16の形成には、例えばAl、W、Mo、Mn、Mgなどを真空加熱蒸着法により堆積することによって行われる。真空加熱蒸着法の代わりに、スクリーン印刷技術を適用しても良い。
(f)次に、図示は省略するが、カソード電極層16の表面に酸化膜(不動態膜)を形成する。不動態膜は、カソード電極層16を酸素プラズマに暴露させて形成することができる。酸素プラズマによる酸化膜の形成は、例えば前述の高密度プラズマエッチング装置を用いて行うことができる。
(g)次に、封止ガラス(カバーガラス)および封止材によって素子全体を封止する。封止材は、エポキシ樹脂や光硬化樹脂等で構成される。なお、ガラス封止の工程は、大気中の水分や酸素による劣化を防ぐために、窒素雰囲気中で行うと良い。
以上の工程により、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1を量産化することができる。
実施の形態に係る有機薄膜太陽電池において、複数のセルCijをマトリックス状に配置した模式的平面パターン構成例は、図26に示すように表される。アノード電極層11で形成されるアノード電極パターン…,Aj, Aj+1,…と、アノード電極パターン…, Aj, Aj+1,…と直交し、カソード電極層16で形成されるカソード電極パターン…,Ki-1, Ki, Ki+1,…の交差部にセル…Cij…が配置されている。アノード電極パターン…, Aj, Aj+1,…と、カソード電極パターン…, Ki-1, Ki, Ki+1,…を選択することによって、交差部に配置されたセル…Cij…の特性をそれぞれ別個に測定することもできる。
(スピンコート法)
例えば、実施の形態に係る有機薄膜太陽電池1において、比較的小面積の素子を作成する場合には、図27(a)に示すようなスピンコート法を適用することができる。
即ち、図27(a)に示すように、モータ等の駆動源に接続される高速回転可能なスピンドル62と、スピンドル62に固設され基板10を載置するテーブル63とを備えるスピンコーターが用いられる。
そして、テーブル63上に基板10を載置し、モータ等の駆動源を稼働させてテーブル63を例えば2000〜4000rpmで矢印A、B方向に高速回転させる。次いで、スポイト60を用いて、正孔輸送層12やバルクへテロ接合有機活性層14を形成する溶液の液滴64を落下させる。これにより、液滴64は遠心力により基板10上に均一な厚さの正孔輸送層12およびバルクへテロ接合有機活性層14(図27(b)参照)を形成することができる。
(インクジェット印刷法)
また、比較的大面積の有機薄膜太陽電池を作成する場合には、図28に示すようなインクジェット印刷による手法を用いることができる。
即ち、図28に示すように、ガラス等で構成される基板70上に、複数の透明電極層11が形成されている。透明電極層11は隙間を挟んだ複数本のストライプパターンで形成することができる。隙間の形成には、酸素プラズマエッチング技術、レーザパターニング技術、ナノインプリント技術などを適用することができる。
そして、隙間を埋めるようにして絶縁層72が形成されている。絶縁層72は、例えば、SiO薄膜等で構成することができる。各絶縁層72は、エッチングによりパターン形成される。
また、各絶縁層72の上には、さらに別の絶縁層74が形成される。絶縁層74の形成には、例えば、SiO薄膜等で構成することができる。各絶縁層72は、エッチングによりパターン形成される。
次いで、図28の右側に示すように、インクジェットノズル80、80、80を備えるインクジェット装置78を用いて、絶縁層72間および絶縁層74間の隙間に、正孔輸送層12およびバルクへテロ接合有機活性層14を形成する溶液の液滴76を順次噴射することにより、正孔輸送層12およびバルクへテロ接合有機活性層14を形成することができる。
ここで、図示は省略されているが、バルクへテロ接合有機活性層14の表面には、第2電極層が配置される。さらに、第2電極層の表面には、酸素プラズマ処理により不動態膜が形成される。
これにより、耐久性を向上させた比較的大面積の有機薄膜太陽電池を効率的に作成することができる。
(ロールツウロール法)
また、有機薄膜太陽電池1は、正孔輸送層12およびバルクへテロ接合有機活性層14をロールツウロール法を用いたグラビア印刷で形成することもできる。
即ち、図29に示すように、グラビア印刷を適用した装置は、円周に沿って複数の凹部を形成したシリンダ94と、圧着ローラ96と、シリンダ94と圧着ローラ96との間に挟まれて搬送されるフィルム98と、シリンダ94の下部が浸され、正孔輸送層12やバルクへテロ接合有機活性層14を形成する溶液90を収容した容器92とを備える。
そして、図示しない駆動源を稼働させてシリンダ94および圧着ローラ96を回動させると、シリンダ94が備える凹部に溶液が保持された状態で搬送される。なお、シリンダ94には図示しないドクターブレードが接触されており、余分な溶液を掻き落とすようになっている。
シリンダ94の凹部によって上方に搬送された溶液は、圧着ローラ96の作用によって、フィルム98の表面に転移される。
このようにして、正孔輸送層12やバルクへテロ接合有機活性層14を形成することができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
本発明の有機薄膜太陽電池は、耐久性を大幅に向上させ、太陽光発電パネル、モバイル機器用充電装置や太陽エネルギーシステムなど幅広い分野に適用可能である。
1、1a…有機薄膜太陽電池
10…基板(ITO基板)
11…第1電極層(アノード電極層、透明電極層)
12…正孔輸送層
14…バルクヘテロ接合有機活性層
16…第2電極層(カソード電極層)
24…不動態膜(酸化膜)
40…封止層(封止ガラス)
41…封止材
42…乾燥剤
50…チャンバー
52…上部電極
53…下部電極
54…載置台
56…導入口
58…排気口
60…スポイト
62…スピンドル
63…テーブル
64…液滴
70…基板
72、74…絶縁層
76…液滴
78…インクジェット装置
80…インクジェットノズル
90…溶液
92…容器
94…シリンダ
96…圧着ローラ
98…フィルム

Claims (10)

  1. 基板と、
    前記基板上に配置された第1電極層と、
    前記第1電極層上に配置された正孔輸送層と、
    前記正孔輸送層上に配置されたバルクへテロ接合有機活性層と、
    前記バルクへテロ接合有機活性層上に配置された第2電極層と、
    前記第2電極層の表面に配置された不動態膜と
    を備えることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  2. 前記不動態膜は、前記第2電極層の酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  3. 前記酸化膜は、前記第2電極層の表面を酸素プラズマ処理により形成されることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜太陽電池。
  4. 前記不動態膜の厚さは、10オングストローム〜100オングストロームであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池。
  5. 前記第2電極層は、Al、W、Mo、Mn、Mgの何れかの金属で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池。
  6. 内壁面に乾燥剤を設けた封止層によって全体が封止されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池からなるセルを複数個直列接続したことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  8. 基板を準備する工程と、
    前記基板上に第1電極層を形成する工程と、
    前記第1電極層上に正孔輸送層を形成する工程と、
    前記正孔輸送層上にバルクへテロ接合有機活性層を形成する工程と、
    前記バルクへテロ接合有機活性層上に第2電極層を形成する工程と、
    前記第2電極層の表面に不動態膜を形成する工程と
    を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
  9. 前記第2電極層を形成する工程は、
    前記バルクへテロ接合有機活性層上に金属を蒸着して形成する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
  10. 前記不動態膜を形成する工程は、
    前記第2電極層を酸素プラズマ処理する工程を有することを特徴とする請求項8または9に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
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