JP2013108818A - 放射性廃液処理方法及び処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、高濃度の塩を含む放射性廃液について、廃棄物の種類や発生量の増加を防止しつつ、ストロンチウム等の目的の放射性核種を除去する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明においては、塩分を含む放射性廃液から放射性核種を分離する方法において、廃液のpHを溶存する主要なイオンが沈殿しない弱アルカリに調整した後、ろ過及び吸着法で放射性核種を分離し、その後の廃液を濃縮する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明においては、塩分を含む放射性廃液から放射性核種を分離する方法において、廃液のpHを溶存する主要なイオンが沈殿しない弱アルカリに調整した後、ろ過及び吸着法で放射性核種を分離し、その後の廃液を濃縮する。
【選択図】図1
Description
本発明は、海水や地下水などに由来する塩分を含む放射性廃液から、放射性ストロンチウムを分離する放射性廃液処理方法及び処理システムに関する。
海水等の高濃度の塩を含む水溶液から放射性ストロンチウムを分離する方法としては、例えば特許文献1に記載されているような無機系材料(ペロブスカイト型化合物)を用いた選択吸着法が挙げられる。
この特許文献1の手法では、共存イオンの影響は特に論じられていないが、実際には、高濃度の塩を含む放射性廃液から目的の放射性核種を除去する場合、化学性質が類似した共存イオンの影響を大きく受ける。
例えば、海水あるいは地下水に由来する塩分を含む放射性廃液から放射性核種であるストロンチウムを吸着法により除去する場合、ストロンチウムに化学性質が類似した共存イオン(海水あるいは地下水に由来する塩分であるマグネシウムやカルシウム)がストロンチウムの吸着を妨害するために除去率が低下し、吸着材を頻繁に交換する必要が生じる。
これらを防止するには、吸着操作の前に海水あるいは地下水に由来する塩分であるカルシウムやマグネシウムを沈殿法などで粗分離し、溶存する濃度を低減することが効果的と考えられる。
然るに、吸着操作の前にカルシウムやマグネシウムを沈殿分離する場合、その沈殿には同じアルカリ土類である放射性ストロンチウムの一部も同伴する。またその一方で、同伴しなかったストロンチウムが液中に残存する。なお液中のストロンチウムは、後段の処理である吸着法で除去することができる。
このことは、吸着操作の前にカルシウムやマグネシウムを沈殿分離すると、放射性ストロンチウムが沈殿物(スラッジ)と吸着材とに分布し、この何れも放射性廃棄物として取り扱う必要があることから、二次廃棄物の種類を増やす結果になることを意味している。かつ場合によっては、廃棄物の総量が増えることも懸念される。
以上のことから、本発明においては、高濃度の塩を含む放射性廃液について、廃棄物の種類や発生量の増加を防止しつつ、ストロンチウム等の目的の放射性核種を除去することができる放射性廃液処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
以上のことから本発明においては、塩分を含む放射性廃液から放射性核種を分離する方法において、廃液のpHを弱アルカリに調整した後、吸着法で放射性核種を分離し、その後に廃液を濃縮することを特徴とする。
また、廃液のpHを9ないし10の範囲の弱アルカリとする。
また、廃液のpHを弱アルカリに調整し、ろ過した後、吸着法で放射性核種を分離する。
また、pH調整後のろ過が限外ろ過、吸着法がチタン酸塩による吸着、廃液の濃縮が逆浸透膜による濃縮であることを特徴とする。
以上のことから本発明においては、塩分を含む放射性廃液のpHを弱アルカリ性に調整するpH調整槽と、pH調整後の廃液から放射性核種を吸着する吸着塔と、吸着後の廃液を濃縮する逆浸透膜モジュールからなる。
また、pH調整槽内の廃液のpHを9ないし10の範囲の弱アルカリとする。
また、pH調整槽と吸着の間に、廃液をろ過し微粒子や遷移金属のコロイドを除去するろ過装置を備える。
また、ろ過装置は限外ろ過、前記吸着装置はチタン酸塩による吸着、前記逆浸透膜モジュールは逆浸透膜による濃縮である。
本発明によれば、放射性廃棄物の種類や発生量の増加を防止しつつ、放射性ストロンチウムを高効率で分離することができる。
以下に本発明の実施例について図面をもとに説明する。
図1は本発明の放射性廃液処理システムを示している。本発明では、海水や地下水などに由来する塩分(カルシウムやマグネシウム)を含む放射性廃液をpH調整、吸着、濃縮の各工程を経て処理する。
第1の工程であるpH調整工程では、pH調整槽1に海水や地下水などに由来する塩分を含む放射性廃液7と、例えば水酸化ナトリウム8を投入して、放射性廃液のpHを弱アルカリ(9ないし10)に調整する。pH調整された放射性廃液7aは、次の吸着工程で処理されるが、その前にろ過処理するのが有効である。ろ過装置2では、廃液中に含まれる微粒子と放射性遷移金属等のコロイドを分離する。ここでは限外ろ過膜を用いた全量ろ過、あるいはクロスフローろ過が適用可能である。
ろ過後の放射性廃液7bは、一旦中間槽3に集められ、ここから所定流量で吸着塔4に送られる。第2の工程である吸着工程では、吸着塔4にチタン酸ナトリウムを充填している。また中間槽3から吸着塔4に送られる放射性廃液7cの流量は、望ましくは、毎時10ベッドボリューム程度の流量で供給するのが適切である。吸着工程において、放射性廃液7c中のストロンチウムが分離される。
吸着塔4でストロンチウムを除去した後、廃液7dは中間槽5を介して逆浸透膜モジュール6に送られる。第3の工程である濃縮工程では、逆浸透膜モジュール6において海水や地下水などに由来する塩分を含む放射性廃液7dに溶存しているカルシウム、マグネシウム等の塩を脱塩しながら濃縮する。逆浸透膜モジュール6では、廃液を濃縮廃液9と脱塩水10に分離する。逆浸透膜あるいは蒸発法を用いた濃縮工程では廃液の容積を小さくすることができる。
以上述べたように、本発明は放射性廃液のpHを調整した後、限外ろ過膜で放射性コロイドを分離し、放射性ストロンチウムをチタン酸塩に吸着させ、その後、逆浸透膜で廃液を濃縮する処理システムである。
本発明の処理システムでは、第2の工程である吸着工程でストロンチウムの分離にチタン酸ナトリウム等のチタン酸塩系吸着材を用いる。チタン酸塩は、本来、ストロンチウムに対して高い選択吸着性を有するが、それでも海水を含んだ放射性廃液のように数10ないし数100ppmオーダのカルシウムやマグネシウムが含まれている場合には、それらの妨害影響を受け、ストロンチウムの吸着性が低下する。
ここで、本発明者らの研究によれば、液性を弱アルカリ性にすれば、100ppmレベルのカルシウムやマグネシウムが共存しても、チタン酸塩によるストロンチウムの吸着容量は、有意な影響を受けないことが分かった。この場合に過度に強アルカリにすると水酸化マグネシウム等が沈殿するが、pHを9ないし10の弱アルカリ性に調整すれば、カルシウムやマグネシウムは沈殿しないので、スラッジの発生を防止しつつ、放射性ストロンチウムを効率よく吸着することが可能である。
このために本発明では、第1の工程であるpH調整工程で放射性廃液のpHを弱アルカリ性(9ないし10)に調整している。このように調整することの意味について図2を用いて説明する。図2は、横軸にpH、縦軸に水酸化マグネシウム等の沈殿量を示している。この結果からは、放射性廃液のpHが9ないし10の領域で水酸化マグネシウム等の沈殿量が少なく(ストロンチウムの吸着量が多く)、これ以上pHが高くなると水酸化マグネシウム等の沈殿量が多くなる(ストロンチウムの吸着量が低下)することが見て取れる。
また図3は、放射性廃液のpHと、ストロンチウムの吸着容量の関係を示している。図3において横軸は放射性廃液のpH、縦軸はストロンチウムの吸着容量である。この結果からは、放射性廃液が中性(pH7)であるよりも、弱アルカリ性(pH9)であるときのストロンチウムの吸着容量が高いことが見て取れる。
以上のシステム全体で考えた場合、ストロンチウムの吸着性を改善するために共存アルカリ土類(カルシウムやマグネシウム)を沈殿除去する方法を、pHを調整する方法に代えることで、多様な効果を得ることができる。それらを次に述べる。
通常、放射性廃液中に含まれる核種がストロンチウムのみということはなく、他にも放射性の遷移金属が含まれる。本発明の追加的効果の一つは、ストロンチウム以外の放射性遷移金属イオンが含まれる場合、液性を弱アルカリ性にすることにより、遷移金属イオンが加水分解してコロイド化するので、pH調整後の限外ろ過により多様な放射性核種を分離することが出来ることが挙げられる。
また通常、廃液中には微粒子が含まれるので、吸着塔4の前にはろ過装置2が必要である。本発明では液性をアルカリとするため、ろ過装置2は、単に微粒子を除去する機能だけではなく、放射性の遷移金属イオンを除去する機能をもつことができる。
もう一つは、逆浸透膜による濃縮倍率を増加することが可能になる点である。カルシウムやマグネシウムを沈殿させる場合、液中ではこれらのイオンが飽和溶解度で存在している。この状態で膜濃縮設備に供給すると、濃縮した分だけ膜上に塩が析出し、透過水量が減少する。そのため、濃縮倍率を低く設定する必要がある。
一方、本発明の場合、アルカリ土類の沈殿が生じない範囲でpHを調整するので、その液中ではカルシウムやマグネシウムは飽和溶解度になっていない。その分、濃縮倍率を高くすることができる。結果的には、最終の放射性廃液発生量を低減することができる。
以上述べたように本発明によれば、廃棄物の種類や発生量の増加を防止しつつ、ストロンチウムや遷移金属等の放射性核種を高効率で分離することができる。また、逆浸透膜で濃縮する際に、溶存塩のスケール析出の影響を小さくできるため、濃縮倍率を高くすること出来る。結果的には、最終の放射性廃液発生量を低減することが出来る。
1:pH調整槽
2:ろ過装置
3:中間槽1
4:吸着塔
5:中間槽
6:逆浸透膜モジュール
7:放射性廃液
8:水酸化ナトリウム
9:濃縮廃液
10:脱塩水
2:ろ過装置
3:中間槽1
4:吸着塔
5:中間槽
6:逆浸透膜モジュール
7:放射性廃液
8:水酸化ナトリウム
9:濃縮廃液
10:脱塩水
Claims (8)
- 塩分を含む放射性廃液から放射性核種を分離する方法において、
廃液のpHを弱アルカリに調整した後、吸着法で放射性核種を分離し、その後に廃液を濃縮することを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 請求項1に記載の放射性廃液の処理方法において、
前記廃液のpHを9ないし10の範囲の弱アルカリとすることを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 請求項1または請求項2に記載の放射性廃液の処理方法において、
前記廃液のpHを弱アルカリに調整し、ろ過した後、吸着法で放射性核種を分離することを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 請求項3に記載の放射性廃液の処理方法において、
pH調整後のろ過が限外ろ過、吸着法がチタン酸塩による吸着、廃液の濃縮が逆浸透膜による濃縮であることを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 塩分を含む放射性廃液のpHを弱アルカリ性に調整するpH調整槽と、pH調整後の廃液から放射性核種を吸着する吸着塔と、吸着後の廃液を濃縮する逆浸透膜モジュールからなることを特徴とした放射性廃液の処理システム。
- 請求項5に記載の放射性廃液の処理システムにおいて、
前記pH調整槽内の廃液のpHを9ないし10の範囲の弱アルカリとすることを特徴とする放射性廃液の処理システム。 - 請求項5または請求項6に記載の放射性廃液の処理システムにおいて、
前記pH調整槽と前記吸着の間に、廃液をろ過し微粒子や遷移金属のコロイドを除去するろ過装置を備えることを特徴とする放射性廃液の処理システム。 - 請求項7に記載の放射性廃液の処理システムにおいて、
前記ろ過装置は限外ろ過、前記吸着装置はチタン酸塩による吸着、前記逆浸透膜モジュールは逆浸透膜による濃縮であることを特徴とする放射性廃液の処理システム。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015114315A (ja) * | 2013-12-06 | 2015-06-22 | 株式会社 環境浄化研究所 | 晶析を利用したストロンチウム除去方法 |
CN107545940A (zh) * | 2016-06-29 | 2018-01-05 | 中国辐射防护研究院 | 放射性废水的络合吸附处理方法 |
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JPS62110195A (ja) * | 1985-11-08 | 1987-05-21 | 三菱重工業株式会社 | 放射性濃縮廃液の処理方法 |
JPH02302700A (ja) * | 1989-05-01 | 1990-12-14 | Westinghouse Electric Corp <We> | 可溶性の有害又は放射性核種で汚染された廃棄物の処理方法 |
-
2011
- 2011-11-21 JP JP2011253410A patent/JP2013108818A/ja active Pending
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JPN6015026338; JUKKA LEHTO,LEENA BRODKIN,and RISTO HARJULA: 'SEPARATION OF RADIOACTIVE STRONTIUM FROM ALKALINE' インターネット vol.127 No.1, 199907, p.81-p.87, 米国原子力学会 * |
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