JP2013103995A - 共重合芳香族ポリエステル、配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体 - Google Patents

共重合芳香族ポリエステル、配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた配向ポリエステルフィルムおよび上記の寸法安定性に優れた配向ポリエステルフィルムを提供しうるポリエステルの提供。
【解決手段】塩素化された4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分およびフェニレン基またはナフタレンジイル基にジカルボン酸が付加した芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコールまたはシクロアルキレングリコールからなるグリコール成分とからなり、芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を1モル%以上40モル%未満含む共重合芳香族ポリエステルおよびそれを用いた配向ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明はα,β−ビス(クロルフェノキシ)アルキレン−4,4′−ジカルボキシレート成分を共重合した芳香族ポリエステルならびにそれを用いた配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体に関する。
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表される芳香族ポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の磁気記録媒体などにおける記録密度向上への要求は厳しく、それに伴いベースフィルムに求められる寸法安定性も、ポリエチレンテレフタレートはもちろん、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムでも達成できない状況となってきていた。
ところで、特許文献1〜3にはポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレートからなるフィルムが提案されている。これら公報によると、ガスバリア性が高く、高強度、走行耐久性や熱収縮などによる歪の小さいフィルムが得られることが開示されている。
特開昭59−38031号公報 特開昭60−171626号公報 特開昭59−38925号公報
本発明の第1の目的は、寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた配向ポリエステルフィルムおよび上記の寸法安定性に優れた配向ポリエステルフィルムを提供しうるポリエステルを提供することにある。
本発明の第2の目的は、温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性と、平坦性および巻取性とを高度に両立させやすい配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、湿度変化に対する寸法安定性に優れ、延伸などの製膜性に優れた配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
配向ポリエステルフィルムにおいて、湿度膨張係数と温度膨張係数はともにヤング率と非常に密接な関係にあり、ヤング率が高いほど一般的に低くなる。しかしながら、ヤング率はいくらでも高められるというわけではなく、製膜性や直交する方向のヤング率確保の点から自ずと限界がある。そのため、同じヤング率なら温度や湿度に対するより低い膨張係数をもつフィルムが得られないか鋭意研究したところ、前述のポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレートからなるフィルムが低い湿度膨張係数を示し、かつそれを共重合成分として用いたとき、驚くべきことに寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた配向ポリエステルフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、主たる芳香族ジカルボン酸成分が下記式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分(I)と下記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分(II)で、主たるグリコール成分が下記式(III)で示されるグリコール成分(III)である共重合芳香族ポリエステルであって、
芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が、芳香族ジカルボン酸成分(I)と(II)の合計モル数を基準として、1モル%以上40モル%未満の範囲にある共重合芳香族ポリエステルおよび少なくとも一つの層が前記共重合芳香族ポリエステルからなる配向ポリエステルフィルムが提供される。
Figure 2013103995
上記構造式(I)〜(III)中の、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニル基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜10のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。
また、本発明によれば、該芳香族ジカルボン酸成分(I)が、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分であること、該芳香族ジカルボン酸成分(II)が、テレフタル酸成分または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であること、該グリコール成分(III)がエチレングリコール成分であることのいずれかを具備する前記共重合芳香族ポリエステルおよび前記配向ポリエステルフィルムも提供される。
さらに本発明によれば、前記共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層(A)と、前記芳香族ジカルボン酸成分(II)と前記グリコール成分(III)とからなり、芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が、1モル%未満の芳香族ポリエステルBからなるフィルム層(B)とからなること、さらにフィルム層Aの合計厚みAと、フィルム層Bの合計厚みBとが、1:99〜95:5の範囲にある配向ポリエステルフィルムも提供される。
本発明の芳香族ポリエステルによれば、前記芳香族ジカルボン酸成分(I)の湿度膨張係数を低減できるという優れた特性を維持しつつ、製膜性を高度に高めることができ、その結果、従来のポリエステル対比、優れた寸法安定性を具備する配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
したがって、本発明によれば、湿度と温度による影響も加味した高度の寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムに適したフィルムが提供される。そして、本発明のフィルムを用いれば、優れた寸法安定性を有する高密度磁気記録媒体なども提供できる。
また、本発明によれば、さらに平坦性と巻取性とを高度に両立させやすい配向積層ポリエステルフィルムも得られる。
さらにまた、本発明によれば、さらに延伸などの製膜性に優れた配向多層積層フィルムも提供される。
<芳香族ポリエステル>
本発明の共重合芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる。
まず、具体的な前述の構造式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分(I)としては、Rの部分が炭素数1〜10のアルキレン基であるものであり、好ましくはα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分、α,β−ビス(3−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分、1,3−ビス(2−クロルフェノキシ)プロパン−4,4′−ジカルボキシレート成分、1,4−ビス(2−クロルフェノキシ)ブタン−4,4′−ジカルボキシレート成分などが挙げられる。これらの中でも本発明の効果の点からは、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分が好ましい。
つぎに、具体的な前述の式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分(II)としては、Rの部分が、フェニレン基またはナフタレンジイル基であるものであり、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいテレフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
最後に、前述の式(III)で示されるグリコール成分としては、Rの部分が炭素数2〜10のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基であるものであり、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいエチレングリコール成分が好ましい。
なお、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の共重合成分、例えば脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、前述の式(III)に該当しないアルキレングリコール成分、ヒドロキシカルボン酸成分、トリメリット酸などの3官能以上の官能基を有する酸成分やアルコール成分などを共重合してもよい。もちろん、共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、前述の式(I)および(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数および前述の式(III)で示されるグリコール成分のモル数が、それぞれ90モル%以上、さらに95モル%以上を占めることが好ましい。
ところで、本発明の共重合芳香族ポリエステルの特徴は、共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、1モル%以上40モル%未満の範囲で、前記芳香族ジカルボン酸成分(I)が共重合されていることである。芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が下限未満では、湿度膨張係数の低減効果などが発現されがたい。他方、上限を超えると、製膜性が損なわれ、ヤング率などの機械的特性を延伸によって向上させにくく、温度膨張係数を下げにくくなることや、さらにひどい場合は延伸などの製膜工程で破断してしまう。また、驚くべきことに、芳香族ジカルボン酸成分(I)による湿度膨張係数の低減効果は、比較的少ない量でも効率的に発現される。そのような観点から、好ましい芳香族ジカルボン酸成分(I)の含有割合の上限は、35モル%以下、さらに30モル%以下であり、他方下限は、3モル%以上、さらに5モル%以上、よりさらに7モル%以上である。
そのような観点から、上記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分の好ましい割合は、上限が99モル%以下、さらに97モル%以下、よりさらに95モル%以上、特に93モル%以下であり、下限が60モル%を超え、さらに65モル%以上、特に70モル%以上である。
このような特定量の芳香族ジカルボン酸成分(I)を共重合した共重合芳香族ポリエステルとすることで、温度膨張係数と湿度膨張係数の両方をともに低い成形品、例えばフィルムなどを製造することができる。
なお、上記芳香族ジカルボン酸成分(I)の共重合量は、重合段階で所望の共重合量となるように原料の組成を調整するか、酸成分として上記芳香族ジカルボン酸成分(I)のみを用いたホモポリマーもしくはその共重合量が多いポリマーと、共重合していないポリマーまたは共重合量の少ないポリマーとを用意し、所望の共重合量となるようにこれらを溶融混練によってエステル交換させることで調整できる。
<芳香族ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明の共重合芳香族ポリエステルの製造方法について、詳述する。
前述の構造式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分(I)としては、カルボン酸の状態でもアルキルエステル誘導体の状態でも使用することができ、アルキルエステル誘導体としては、炭素数1〜3のアルキル基が付加したものが好ましく、特にメチルエステル誘導体を使用することが好ましい。
また、本発明の芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分(I)をカルボン酸の状態またはそのアルキルエステル誘導体の状態で、例えばエチレングリコールとを反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。その際、他の芳香族ジカルボン酸成分、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と一緒に反応させることもできる。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られるポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.2dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。
なお、ポリエステルの前駆体を製造する反応工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよい。例えば酢酸マンガン、酢酸亜鉛、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン化合物などが上げられる。フィルムにしたときの表面高突起を抑えることができるチタン化合物が好ましい。
つぎに、重縮合反応について説明する。まず、重縮合温度は得られるポリマーの融点以上でかつ230〜300℃以下、より好ましくは融点より5℃以上高い温度から融点より30℃高い温度の範囲である。重縮合反応では通常100Pa以下の減圧下で行なうのが好ましい。また、重縮合触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合触媒はエステル化反応においても使用することができる。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、ロジウム、イリジウム、ジルコニウム、ハフニウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。より好ましい金属としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズなどであり、前述したように、特にチタン化合物を使用するとフィルムとしたときに触媒で使用した残存金属の影響による表面の高突起物を抑えられるため、これを使用することが好ましい。
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、芳香族ポリエステルの繰り返し単位のモル数に対して、0.001〜0.1モル%、さらには0.005〜0.05モル%が好ましい。
そして、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、前述の通り、所望の共重合量の共重合芳香族ポリエステルとなるように重合してもよいし、溶融混練時にエステル交換反応が進むので、2種以上の共重合量の異なる芳香族ポリエステルを作成し、それらを溶融混練して所望の共重合量となるようにブレンドして作成してもよい。
<フィルム>
本発明の配向ポリエステルフィルムは、前述の共重合芳香族ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出し、製膜方向(以下、縦方向、長手方向またはMD方向と称することがある。)またはそれに直交する方向(以下、幅方向、横方向またはTD方向と称することがある。)に延伸することで作成できる。
もちろん、前述の本発明の共重合芳香族ポリエステルを溶融製膜したフィルムであることから、芳香族ジカルボン酸成分(I)と前述の式(II)と(III)からなる芳香族ポリエステルの優れた機械的特性なども具備している。また、本発明の配向ポリエステルフィルムは少なくとも一つの層が前述の本発明の共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層であればよく、単層に限られず、積層フィルムであってもよい。
ところで、本発明の配向ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、フィルムのその面方向における少なくとも一方向、特に幅方向の温度膨張係数(αt)が、14ppm/℃以下であることが好ましい。例えば最も寸法安定性が求められるフィルムの方向と合わせることで、環境変化に対する優れた寸法安定性を得られるフィルムに発現することが出来る。好ましい温度膨張係数(αt)の下限は、−10ppm/℃以上、さらに−7ppm/℃以上、特に−5ppm/℃以上であり、また上限は10ppm/℃以下、さらに7ppm/℃以下、特に5ppm/℃以下である。
また、本発明の配向ポリエステルフィルムは、磁気テープのベースフィルムに用いる場合など、フィルム面方向の少なくとも一方向、特に幅方向の湿度膨張係数が1〜7(ppm/%RH)、さらに3〜7(ppm/%RH)、特に3〜6(ppm/%RH)の範囲にあることが好ましく、下限は特に制限されないが通常1(ppm/%RH)程度が好ましい。この範囲から外れると、湿度変化に対する寸法変化が大きくなる。このような湿度膨張係数は、前述のブレンドまたは共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
本発明の配向ポリエステルフィルムは、フィルム面方向の少なくとも一方向、特に幅方向のフィルムのヤング率が少なくとも4.5GPa以上あることが好ましく、上限は特に制限されないが通常12GPa程度が好ましい。特に好ましいヤング率の範囲は5〜11GPa、特に6〜10GPaの範囲にあることが好ましい。この範囲から外れると、前述のαtやαhを達成することが困難になることや、機械的特性が不十分になることがある。このようなヤング率は、前述のブレンドまたは共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
ところで、本発明の配向ポリエステルフィルムは、一方向にのみ延伸処理を施した一軸配向ポリエステルフィルムでもよいが、磁気記録テープのベースフィルムなど直交する方向にそれぞれ高度の機械的特性が要求される用途では、製膜方向および幅方向に延伸処理を施した二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
また、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の添加剤や他の樹脂をブレンドして組成物としてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などが挙げられ、用いられる用途の要求に応じて適宜選択すればよい。また、他の樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、液晶性樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
また、フィルムとした場合の取扱い性を向上させるために、フィルム表面は適度に突起を有することが好ましく、このような表面の突起は、突起を形成したい側のフィルム層に不活性粒子を含有させたりして、突起を形成すればよい。含有させる不活性粒子としては、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)および粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる粒子、さらに(3)異なる素材を例えばコアとシェルに用いたコアシェル型などの複合粒子など粒子の状態で添加する外部添加粒子や(4)触媒などの析出によって形成する内部析出粒子などを挙げることができる。これらの中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンおよび二酸化ケイ素(但し、多孔質シリカなどは除く)からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが、粒子の粒径のバラツキを小さくしやすいことから好ましい。もちろん、これらは2種以上を併用しても良い。
ところで、本発明の配向ポリエステルフィルムは、前述の通り単層フィルムに限られず、積層フィルムであってもよく、それによって平坦性と巻取性とを両立しやすい。
以下、本発明配向ポリエステルフィルムが配向積層ポリエステルフィルムである場合について、説明する。
本発明の配向ポリエステルフィルムが2層以上のフィルム層からなる配向積層ポリエステルフィルムである場合、少なくともいずれかのフィルム層が前述の共重合芳香族ポリエステルからなるものであればよく、他のフィルム層は、前述の共重合芳香族ポリエステル以外のポリエステルからなるものであってもよい。
例えば、前述の共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層をフィルム層(A)、前述の共重合芳香族ポリエステル以外のポリエステルからなるフィルム層をフィルム層(B)とした場合、フィルム層(B)を形成するポリエステルとしては、より製膜性を高めやすいことから、前記芳香族ジカルボン酸成分(II)と前記グリコール成分(III)とからなり、芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が、1モル%未満の芳香族ポリエステルBからなることが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレン−2,6−ナフタレートなどのアルキレン−2,6−ナフタレートを繰り返し単位とするポリアルキレン−2,6−ナフタレートが好ましく挙げられる。これらの中でも、機械的特性などの点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。また、ガラス転移温度を高くできる共重合成分を共重合することや、ポリエーテルイミドや液晶樹脂をブレンドすること(例えば、特開2000−355631号公報、特開2000−141475号公報および特開平11−1568号公報などを参照)も好ましい。特にエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする場合は、このような共重合やブレンドをすることが好ましい。また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などを共重合したものも好ましい。
なお、積層フィルムの場合、環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点からは、フィルム層(A)がより厚く用いられていることが好ましく、両フィルム層に用いられていることがもっとも好ましい。
本発明の配向ポリエステルフィルムが配向積層ポリエステルフィルムで、その一方の表面が平坦なフィルム層で、その他方の表面が粗さの粗いフィルム層を積層したものである場合、配向積層ポリエステルフィルムの平坦でない側のフィルム層側の表面粗さ(RaR)が、他方の表面粗さ(RaS)よりも1.0nm以上、さらに2.0nm以上、よりさらに3.0nm以上大きいことが好ましい。RaSとRaRとの表面粗さの差を下限以上にすることで、単層フィルムに比べ、優れた平坦性と巻取性とを高度に具備させることができる。なお、RaSとRaRとの差の上限は、特に制限されないが、平坦にしたいフィルム層側の表面を、平坦でないフィルム層側によって損なわれないようにする点から、8.0nm以下、好ましくは5.0nm以下、さらに好ましくは4.0nm以下であることが好ましい。
また、本発明の配向積層ポリエステルフィルムは、得られる積層フィルムに優れた平坦性を具備させるために、平坦なフィルム層側の表面粗さ(RaS)は1.0〜7.0nm、さらに1.5〜5.0nm、特に2.0〜4.0nmの範囲にあることが好ましい。一方、得られる積層フィルムに優れた巻取性を具備させるために、平坦でないフィルム層側の表面粗さ(RaR)は5.0〜15.0nm、さらに6.0〜10.0nm、特に6.0〜8.0nmの範囲にあることが好ましい。
ところで、本発明の配向ポリエステルフィルムは、上述のとおり、配向積層ポリエステルフィルムであることが好ましく、また、以下のような配向多層積層ポリエステルフィルムであることも好ましい。
<配向多層積層フィルム>
本発明の配向積層ポリエステルフィルムが配向多層積層ポリエステルフィルムである場合、その積層数は、5層以上積層したものであることが製膜性の点から好ましい。好ましい積層数は、31〜10001の範囲、さらに41〜1001の範囲にあることが層構成の均一性と効果の発現性の点から好ましい。積層数が下限未満であると、延伸性の向上効果が小さくなりやすく、またカールの発生を抑制しがたくなる。なお、積層数の上限は特に制限されないが、積層構造を維持しやすい点から、上記上限以下であることが好ましい。また、各フィルム層の1層あたり厚みは、0.1〜1000nmの範囲、さらに1〜100nmの範囲にあることが層構成の均一性と効果の発現性の点から好ましい。
ところで、多層にすることでさらに製膜性が向上するが、前述のフィルム層(A)とフィルム層(B)とを交互に積層したものであることがさらに製膜性を向上できることから好ましい。その場合、フィルム層(A)の厚みの合計が、多層積層フィルムの厚みに対して、30〜80%、好ましくは35〜75%、さらに好ましくは40〜70%の範囲にあることが好ましい。このような範囲とすることで、湿度変化に対する寸法安定性向上効果と製膜性とをより高度に発現出来る。
もちろん、本発明の効果を損なわない範囲で、他のフィルム層を積層したり、塗膜層を設けたりしても良い。
<配向ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明の配向ポリエステルフィルムは、製膜方向または幅方向に分子配向を高めたものであり、好ましくは製膜方向および幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであり、例えば以下のような方法で製造することが製膜性を維持しつつ、ヤング率を高め、温度膨張係数や湿度膨張係数を低減しやすいことから好ましい。
まず、上述の本発明の共重合芳香族ポリエステルを原料とし、これを乾燥後、該芳香族ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す。この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを製膜方向または幅方向に延伸する。
なお、本発明で規定するαt、αh、さらにヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが必要であり、本発明のポリエステルポリマーは結晶化速度が速い傾向にあり、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行なうことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行なうことが可能となる。
なお、二軸延伸の場合、それ自体公知のものを採用でき、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう逐次二軸延伸の製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理として共重合芳香族ポリエステルの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。
なお、本発明の配向ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分(I)だけでなく、前記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸(II)が共重合されていることにより延伸が可能となる。
前述の説明は逐次二軸延伸について説明したが、本発明の配向ポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行なう同時二軸延伸でも製造でき、例えば先で説明した延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
また、本発明の配向ポリエステルフィルムが積層フィルムの場合、2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出し、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出すか、2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、ついで前述の単層フィルムの場合と同様な方法で一軸延伸もしくは二軸延伸および熱処理を行なうとよい。また、前述の塗布層を設ける場合、前記した未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうことが好ましい。
本発明によれば、本発明の上記配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その一方の面に非磁性層および磁性層をこの順で形成し、他方の面にバックコート層を形成することなどでデータストレージなどの磁気記録テープとすることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
(1)固有粘度
得られた共重合芳香族ポリエステルおよびフィルムの固有粘度は、P−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
(2)共重合量
酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、13C−NMR(日本電子製、JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量およびグリコール成分量を測定した。
(3)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
(4)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向がそれぞれ測定方向となるように長さ20mm、幅4mmに切り出し、SII製EXSTAR6000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、80℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後30℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(ppm/℃)である。
(5)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向がそれぞれ測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、BRUKER製TMA4000SAにセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度20%RHと湿度80%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαh(ppm/%RH)とした。
αh=(L80−L20)/(L80×△H)
ここで、上記式中のL20は20%RHのときのサンプル長(mm)、L80は80%
RHのときのサンプル長(mm)、△H:60(=80−20)%RHである。
(6)中心面平均粗さ(Ra)
Zygo社製 非接触三次元表面構造解析顕微鏡(NewView5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより中心面平均粗さRaを以下の式より求めた。
Figure 2013103995
Zjkは測定方向(283μm)、それと直交する方向(213μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における2次元粗さチャート上の高さである。
(7)巻取性
スリット速度60m/分で、スリット幅1000mmのサイズで、10000m巻いた時の巻き上がったフィルムロールを観察し、以下の基準で巻取性を評価した。
良 : シワが見られない
可 : シワが多少見られるが、実用的には問題ないレベル
不可: シワが多数発生
(8)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(8μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は10m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、実施例1を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。
良 : +1dB以上
可 : −1dB以上、+1dB未満
不可: −1dB未満
なお、電磁変換特性測定に供する磁気記録テープは、以下の方法で作成した。
まず、各実施例及び比較例で得られたフィルムの一方の表面(積層フィルムの場合はフィルム層Bの表面)に下記組成のバックコート層塗料をダイコーターで塗布し、乾燥させた後、フィルムの他方の表面(積層フィルムの場合はフィルム層Aの表面)に下記組成の非磁性塗料、磁性塗料をダイコーターで同時に膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テ−プを12.65mmにスリットし、カセットに組み込み磁気記録テープとした。なお、乾燥後のバックコート層、非磁性層および磁性層の厚みは、それぞれ0.5μm、1.2μmおよび0.1μmであった。
<非磁性塗料の組成>
・二酸化チタン微粒子 :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体):10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート):5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<磁性塗料の組成>
・鉄(長さ:0.3μm、針状比:10/1、1800エルステッド):100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体:10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート):5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<バックコート層塗料の組成:>
カーボンブラック :100重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 :60重量部
イソシアネート化合物 :18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル :0.5重量部
メチルエチルケトン :250重量部
トルエン :50重量部
(9)積層フィルムおよびフィルム層の厚み
積層フィルムを層間の空気を排除しながら10枚重ね、JIS規格のC2151に準拠し、(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージMDC−25Sを用いて、10枚重ね法にて厚みを測定し、1枚当りのフィルム厚みを計算する。この測定を10回繰り返して、その平均値を1枚あたりの積層フィルム全体の厚みとした。
一方、フィルム層Aおよびフィルム層Bの厚みは、フィルムの小片をエポキシ樹脂にて定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、フィルム層Aとフィルム層Bのポリマーが異なり、境界が観察できる場合はその境界からフィルム層AとBの厚みを求め、境界が観察できないような同種のポリマーの場合は、不活性粒子の存在量が変化する厚みの位置を、それぞれの表面側からそれぞれ100箇所求め、それらの平均値からA層とB層の厚みを求めた。
(10)加工時の伸びによる塗布斑
ダイコーターで、20MPaの張力条件で、幅500mmにスリットされた長さ500mのフィルムにおける一方の表面に、前記(9)の電磁変換特性の測定で用いた組成の非磁性塗料、磁性塗料を同時に、乾燥後の非磁性層および磁性層の厚みが、それぞれ1.2μmおよび0.1μmとなるように膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて120℃×30秒の条件で乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。そして、得られた磁性層付フィルムについて、目視判定により、以下の基準で塗布斑を評価した。なお、目視判定は、フィルムの裏側に蛍光灯を設置し、磁性層の抜けによる光の漏れをカウントすることで行い、この磁性層付フィルムを必要に応じてバックコート層などを設けた上で、幅12.65mmにスリットし、カセットに組み込みことで磁気記録テープにできる。
良 :塗布抜けが2個/250m未満
可 :塗布抜けが2個/250m以上10個/250m未満
不可:塗布抜けが10個/250m以上
(11)高温伸び
セイコーインスツルメンツ製TMA/SS6000を用いて、フィルム幅4mm、フィルム長20mmにサンプリングして、フィルムの製膜方向に荷重40gをかけて、昇温速度5℃/分にて180℃まで昇温し、30℃のときのフィルム長さ(L30)と110℃のときのフィルム長さ(L110)を測定し、伸び割合((L110−L30)/L30(%))を求めた。伸び割合が低いほど、寸法安定性に優れるといえる。
(12)カール
フィルムサンプルをフィルムの製膜方向(MD)に長さ250mm、幅方向(TD)に幅100mmとなるように切り取り、MD方向に20MPaの荷重をかけた状態で120℃×1分処理し、その後常温で無荷重状態でのカールの度合いを下記基準により判断した。
良 :カールなし
可 :フィルムサンプルの四方のみが軽くめくれる程度のカール
不可:フィルムサンプルが筒状に丸まる程のカール
[実施例1]
α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.71dl/gの芳香族ポリエステルa1を得た。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gの芳香族ポリエステルb1を得た。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は265℃、ガラス転移温度は120℃であった。
更に、ポリエステルb1と同様に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行った後に平均粒径0.2μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、1.5重量%となるように含有させた固有粘度0.60dl/gの芳香族ポリエステルc1を得た。
このようにして得られた芳香族ポリエステルa1、b1、c1を、酸成分の20モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分となるように、また平均粒径0.2μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように添加した。この樹脂を170℃にて6時間乾燥後、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度40℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が150℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、155℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた共重合芳香族ポリエステルと二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
[実施例2〜3]
芳香族ポリエステルa1、b1、c1の割合を、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分が表1に示すとなるように変更したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた共重合芳香族ポリエステルと二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
[実施例4]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gの芳香族ポリエステルb2を得た。このポリエチレンテレフタレートの融点は242℃、ガラス転移温度は76℃であった。
更に、ポリエステルb1と同様にテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行った後に平均粒径0.2μmの架橋ポリスチレン粒子(PS)を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、1.5重量%となるように含有させた固有粘度0.60dl/gの芳香族ポリエステルc2を得た。
そして、芳香族ポリエステルa1、b2、c2の割合を、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分表1に示すとなるように変更し、添加粒子の種類と量も表1に示すとおり変更した。この樹脂を170℃にて4時間乾燥後、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度20℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、125℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。
[比較例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gであるポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。なお、該ポリエチレン−2,6−ナフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は265℃、ガラス転移温度は120℃であった。
このようにして得られたポリエチレン−2,6−ナフタレートを、押し出し機に供給して300℃でダイから溶融状態で回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、140℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.3倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
[比較例2]
実施例4のポリエステルb2と同様にテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行った後に平均粒径0.2μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、1.5重量%となるように含有させた固有粘度0.60dl/gの芳香族ポリエステルc3を得た。
そして、実施例1で作成した芳香族ポリエステルa1と、実施例1で作成した芳香族ポリエステルb2と、上記のようにして得た芳香族ポリエステルc3を、酸成分の40モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分となるように、また平均粒径0.2μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように、押し出し機に供給して280℃でダイから溶融状態で回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、125℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた共重合芳香族ポリエステルと二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
[比較例3]
α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行った後に平均粒径0.2μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた固有粘度0.71dl/gの芳香族ポリエステルa2を得た。
そして、得られた芳香族ポリエステルa2を押し出し機に供給して280℃でダイから溶融状態で回転中の温度25℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が150℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、155℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた共重合芳香族ポリエステルと二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
Figure 2013103995
表1中の、NAは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、CPEAはα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸成分、TAはテレフタル酸成分、CTEは温度膨張係数、CHEは湿度膨張係数、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向を示す。
[実施例5]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の70モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の30モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−1)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。また平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%含有させた以外は前記(A−1)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−1)を得た。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−1)と(B−1)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が150℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、155℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ4.5μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
[実施例6]
芳香族ポリエステル(A−1)の代わりに、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた固有粘度0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボシキレートを用いたほかは、実施例5と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
[実施例7]
芳香族ポリエステル(A−1)が含有するシリカ粒子を、平均粒径0.05μmのものに変更し、さらにその含有量を0.3重量%に変更したほかは、実施例5と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
[実施例8]
フィルムA層とフィルムB層の厚みを、表2に示すように変更したほかは、実施例5と同様な操作を繰り返した。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
[実施例9]
テレフタル酸ジメチル、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の70モル%がテレフタル酸成分、酸成分の30モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−2)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A−2)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.05μmの架橋ポリスチレン粒子(PS)を0.1重量%含有させた。
また平均粒径0.3μmの架橋ポリエスチレン粒子(PS)を0.2重量%含有させた以外は前記(A−2)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−2)を得た。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−2)と(B−2)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が8:1となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、125℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ4.5μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
Figure 2013103995
表2中の、NAは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、CPEAはα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸成分のモル%、CTEは温度膨張係数、CHEは湿度膨張係数、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向、高温伸びは上記(10)の加工時の伸びによる塗布を示し、A面とB面とは、二軸配向積層ポリエステルフィルムのフィルム層A側の表面と、フィルム層B側の表面とを示す。
[実施例10]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、フィルム層(A´)用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A´−1)を得た。なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A´−1)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。
また、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の70モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の30モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸であるフィルム層(B´)用の芳香族ポリエステル(B´−1)を得た。なお、芳香族ポリエステル(B´−1)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%含有させた。
このようにして得られた芳香族ポリエステル(A´−1)と(B´−1)を170℃で6時間乾燥後、押出し機に供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、(A´−1)の層用ポリエステルを100層、(B´−1)の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、(A´−1)の層と(B´−1)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、(A´−1)の層と(B´−1)の層が交互に積層された総数200層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、最表層に位置するA´層のみ厚くなるようにし、B´層とA´層の吐出比率は2:1とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が150℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、155℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ4.5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
[実施例11]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、フィルム層(A´)用のポリエチレンテレフタレート(A´−2)を得た。なお、ポリエチレンテレフタレート(A´−2)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。
また、テレフタル酸ジメチル、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の61モル%がテレフタル酸成分、酸成分の39モル%がα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸であるフィルム層(B´)用の芳香族ポリエステル(B´−2)を得た。なお、芳香族ポリエステル(B´−2)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%含有させた。
このようにして得られた芳香族ポリエステル(A´−2)と(B´−2)を170℃で4時間乾燥後、押出し機に供給し、290℃まで加熱して溶融状態とし、(A´−2)の層用ポリエステルを20層、(B´−2)の層用ポリエステルを20層に分岐させた後、(A´−2)の層と(B´−2)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度20℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、(A´−2)の層と(B´−2)の層が交互に積層された総数40層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、最表層に位置するA´層のみ厚くなるようにし、B´層とA´層の吐出比率は2:1とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、125℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ4.5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
[実施例12]
実施例11において、樹脂組成と添加粒子、各層の層数および厚みを表3に示すとおり変更したほかは同様な操作を繰り返し、厚さ4.5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
Figure 2013103995
ここで、表3中の、NAは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、CPEAはα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸成分のモル%、CTEは温度膨張係数、CHEは湿度膨張係数、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向を示し、tAは最表層にあるA層の厚み、taは内層にあるA層の厚み、tBは表層にあるB層の厚み、tbは内層にあるB層の厚み、RaXは平坦な方の表面の表面粗さで、実施例10〜12では最表層にA層が位置する側の表面粗さ、RaAは粗い方の表面の表面粗さで、実施例10〜12では最表層にB層が位置する側の表面粗さを示す。
本発明の共重合芳香族ポリエステルおよびそれから得られる配向ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは達成できなかったような優れた寸法安定性を有し、寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして、好適に使用することができる。
さらに、本発明の配向積層ポリエステルフィルムは、上記寸法安定性に加え、高度に平坦性と巻取性と両立させやすいことから、さまざまな用途に利用でき、特に高密度磁気記録媒体の支持体として好適に利用できる。

Claims (13)

  1. 主たる芳香族ジカルボン酸成分が下記式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分(I)と下記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分(II)で、主たるグリコール成分が下記式(III)で示されるグリコール成分(III)である共重合芳香族ポリエステルであって、
    芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が、芳香族ジカルボン酸成分(I)と(II)の合計モル数を基準として、1モル%以上40モル%未満の範囲にあることを特徴とする共重合芳香族ポリエステル。
    Figure 2013103995
    (上記構造式(I)〜(III)中の、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニル基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。)
  2. 該芳香族ジカルボン酸成分(I)が、α,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
  3. 芳香族ジカルボン酸成分(II)が、テレフタル酸成分または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
  4. グリコール成分(III)がエチレングリコール成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
  5. 少なくとも一つのフィルム層が、前記請求項1〜4のいずれかに記載の共重合芳香族ポリエステルからなる配向ポリエステルフィルム。
  6. フィルム層数が1層の単層フィルムである請求項5記載の配向ポリエステルフィルム。
  7. フィルム層数が2層の2層積層フィルムである請求項5記載の配向ポリエステルフィルム。
  8. フィルム層数が5層以上の多層積層フィルムである請求項5記載の配向ポリエステルフィルム。
  9. 全てのフィルム層が前記共重合芳香族ポリエステルからなる請求項7または8のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルム。
  10. 前記共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層(A)と、前記芳香族ジカルボン酸成分(II)と前記グリコール成分(III)とからなり、芳香族ジカルボン酸成分(I)の割合が、1モル%未満の芳香族ポリエステルBからなるフィルム層(B)とからなる請求項7または8のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルム。
  11. フィルム層Aの合計厚みAと、フィルム層Bの合計厚みBとが、1:99〜95:5の範囲にある請求項10記載の配向ポリエステルフィルム。
  12. 一方の表面の表面粗さ(Ra1)が他方の表面粗さ(Ra2)よりも1.0nm以上大きい請求項7または8記載のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルム。
  13. 磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項5記載の配向ポリエステルフィルム。
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