JP2013103593A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両後進走行時の走行駆動力を内燃機関のモータリングによって上昇させる場合に、段差を乗り越える際の走行駆動力を高く得ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】FF方式のハイブリッド車両1において、後進走行時、後輪が段差を乗り越したことを加速度センサによって検知し、その後の後進走行距離が車両のホイールベースに近づき、その差が所定値未満となって前輪6a,6bが段差に当接する直前で第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを行い、前輪6a,6bへのトルクを増大させる。これにより段差乗り越しのための走行駆動力を最適なタイミングで高めることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、走行駆動力源として内燃機関と電動機とが搭載されたハイブリッド車両の制御装置に係る。特に、本発明は、車両後進走行時の制御の改良に関する。
下記の特許文献1〜特許文献3に開示されているように、ハイブリッド車両に採用されるパワートレーンとして、エンジン、第1及び第2の電動機(モータジェネレータ)、動力分割機構を構成する遊星歯車機構を備えたものが知られている。具体的には、動力分割機構のプラネタリキャリアにエンジンのクランクシャフトが連結され、サンギヤに第1電動機(第1モータジェネレータMG1)が連結され、リングギヤにリダクション機構(例えば遊星歯車機構により構成されている)を介して第2電動機(第2モータジェネレータMG2)が連結されている。そして、このリングギヤには、減速機構やデファレンシャルギヤを介して駆動輪が動力伝達可能に連結されている。
これにより、通常走行時(前進走行時)には、エンジンからプラネタリキャリアに入力された駆動力(トルク)が、リングギヤ(駆動輪側)及びサンギヤ(第1電動機側)に分割(トルクスプリット)される。リングギヤ側に分割されたトルクは、直達トルク(エンジンから駆動輪に向けて直接的に伝達されるトルク)として駆動輪を駆動する。一方、サンギヤ側に分割されたトルクは第1電動機に伝達され、この第1電動機が発電を行う。これにより得られた電力によって第2電動機が駆動し(トルクが発生し)、駆動輪に対するアシストトルクが得られることになる。
このように、上記動力分割機構が差動機構として機能し、その差動作用によって、エンジンからの動力の主部を駆動輪に機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機(電気式無段変速機)としての機能が発揮されるようになっている。これにより、駆動輪に要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジンの運転状態を得ることが可能となる。
また、車両の発進時や低速走行時のようにエンジン効率が低くなる領域では、エンジンを停止させて上記第2電動機のみの動力で駆動輪を駆動するようにしている。
また、車両の後進走行時にも、エンジンを停止させ、上記第2電動機のみの動力(前進方向は逆回転方向の動力)で駆動輪を駆動するようにしている。
ところが、この後進走行時には、エンジンの直達トルクが使用できないため、前進走行時に比べて走行駆動力が低下してしまうことになる。
この課題に鑑み、特許文献1〜特許文献3では、後進走行時に第1電動機によるエンジンのモータリング(以下、単に「モータリング」と呼ぶ場合もある)を行い、その反力トルク(エンジンの慣性力によって第2電動機の出力軸において後進走行方向に発生するトルク)を用いて、第2電動機のみで得られる走行駆動力よりも大きな走行駆動力が得られるようにしている。
特開2010−208362号公報 特開2010−241385号公報 特開2006−57617号公報
しかしながら、上記モータリングによって得られる反力トルクの発生期間は短期間(例えば1〜2sec程度)である。この点に鑑み、本発明の発明者は、このモータリングによって反力トルクを発生させる期間の最適化について考察を行った。
例えば、後進走行時において路面の段差を乗り越える際に上記モータリングによる反力トルクを利用して走行駆動力を高めることが考えられるが、車両の駆動輪(例えば前輪)が段差に当接したことを検知したタイミングでモータリングを行った場合、この駆動輪が段差に当接していることで上記第2電動機がロック状態(段差を乗り越えるまで回転が停止する状態)となる。このような状況では、第2電動機がロック保護のために出力制限を受けてしまって(例えばロック状態であることに起因する第2電動機の過熱を防止するための出力制限を受けてしまって)、この第2電動機の駆動力が低下することになる。このため、仮に上記モータリングによる反力トルクを利用したとしても、十分な走行駆動力を得ることができない可能性がある。つまり、第2電動機が上記出力制限を受けなければ、この第2電動機が出力可能な最大トルクと上記モータリングによる反力トルクとの和として大きなトルクが得られるものの、上記出力制限を受けることで第2電動機は上記最大トルクを出力することができず、その結果、後進走行に十分なトルクが得られなくなる可能性があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両後進走行時の走行駆動力を内燃機関のモータリングによって上昇させる場合に、段差を乗り越える際の走行駆動力を高く得ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
−発明の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、後進走行時、後輪が段差を乗り越えてからの走行距離が車両のホイールベースに近づいて、前輪が段差に当接する直前となった時点で電動機による内燃機関のモータリングを行って走行駆動力を上昇させる。これにより、段差を乗り越えるために駆動力を上昇させるタイミングの最適化が図れるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、内燃機関及び複数の電動機を備え、少なくとも一つの電動機を走行駆動源として利用した後進走行時に他の電動機による内燃機関のモータリングを行い、その反力トルクによって前輪の走行駆動力を増大させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を前提とする。このハイブリッド車両の制御装置に対し、後進走行時に上記後輪が路面の段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離と、予め記憶された車両の前輪と後輪との間の距離とに基づいて、上記電動機による内燃機関のモータリングの開始タイミングを設定するモータリング制御手段を備えさせている。
より具体的には、後進走行時に上記後輪が段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離が、その後の後進走行に伴って前輪と後輪との間の距離に近づき、その差が所定値に達した時点で電動機による内燃機関のモータリングを開始するようにしている。
この特定事項により、車両の後進走行時に路面の段差を乗り越す場合、先ず、後輪が段差を乗り越し、その後の後進走行によって前輪が段差に近づくことになる。この場合に、後輪が段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離が、車両の前輪と後輪との間の距離(所謂ホイールベース)に近づき、前輪が段差に当接する直前となった時点で電動機による内燃機関のモータリングを開始して走行駆動力を高めるようにする。一般に内燃機関のモータリングによって得られる反力トルクの発生期間は短期間である。本解決手段では、この反力トルクの発生開始タイミングを、前輪が段差に当接する直前としているため、前輪が段差に当接した時点では前輪に高い走行駆動力が得られていることになり、段差を乗り越すための駆動力を高く得ることができる。また、高い走行駆動力で段差を乗り越すことが可能であるため、前輪が段差に当接してロック状態となることも回避できる。その結果、電動機がロック保護のために出力制限を受けてしまうといった可能性が低くなり、電動機の最大トルクと上記モータリングによる反力トルクとの和として大きなトルクを得ながら段差を乗り越すことが可能となる。
上記内燃機関のモータリングをより適切に実行するための好ましい構成として以下のものが挙げられる。つまり、上記モータリングの開始タイミングにおいて運転者に段差を乗り越す意思が有る場合に、上記電動機による内燃機関のモータリングを開始する構成としている。
運転者に段差を乗り越す意思が無い場合、上記内燃機関のモータリングを行ってしまうと、運転者の意思とは異なる車両の挙動を招いてしまう可能性がある。このため、上記モータリングの開始タイミングにおいて運転者に段差を乗り越す意思が有る場合(例えばアクセルペダルが踏み込まれている場合)に、電動機による内燃機関のモータリングを開始して高い走行駆動力が得られるようにする。逆に、上記モータリングの開始タイミングになっても、運転者に段差を乗り越す意思が無い場合(例えばアクセルペダルが踏み込まれていない場合)には、電動機による内燃機関のモータリングを行わず、運転者の意思に応じた車両の走行状態が得られるようにしている。
また、上記内燃機関のモータリングが開始された後に、このモータリングを終了させるためのタイミングを設定する手段としては以下のものが挙げられる。つまり、電動機による内燃機関のモータリングを開始した後、走行駆動源として利用されている電動機の回転量が、前輪が段差を乗り越すために必要な回転量に達した時点で、電動機による内燃機関のモータリングを終了させるようにしている。
これによれば、前輪が段差を乗り越した後に、上記内燃機関のモータリングによる反力トルクが継続して出力されるといった状況を回避することができる。つまり、前輪が段差を乗り越したことに伴う路面の走行抵抗の軽減に適した走行駆動力への調整が可能になる。
また、ハイブリッド車両の動力伝達経路の構成として具体的には、上記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の電動機が連結されるサンギヤと、第2の電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構を備えており、上記モータリングは、上記第2の電動機を走行駆動源として利用した後進走行時に、停止している内燃機関を上記第1の電動機によって回転させるものとなっている。
本発明では、後進走行時、後輪が段差を乗り越え、前輪が段差に近づいた最適なタイミングで電動機による内燃機関のモータリングを行うようにしている。このため、段差を乗り越えるために走行駆動力を上昇させるタイミングの最適化が図れる。
実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。 制御系の概略構成を示すブロック図である。 後進走行制御の手順の一部を示すフローチャート図である。 後進走行制御の手順の他の一部を示すフローチャート図である。 要求トルク設定マップの一例を示す図である。 第2モータジェネレータからの動力のみを用いて後進走行しているときの動力分割機構の各回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。 第1モータジェネレータによるエンジンのモータリングを伴って第2モータジェネレータからの動力を用いて後進走行しているときの動力分割機構の各回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。 車両の後輪が段差を乗り越した状態を示す図である。 車両の前輪が段差に当接する直前の状態を示す図である。 段差高さと現在の車速とをパラメータとしてモータリングが必要であるか否かを判定するために用いるモータリングマップを示す図である。 アクセルペダルの踏み込み量と現在の車速とをパラメータとして運転者の段差乗り越し意思の有無を判定するために用いる段差乗り越し意思判定マップを示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明する。
図1は本実施形態に係るハイブリッド車両1の概略構成を示す図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両1は、前輪(駆動輪)6a,6bに駆動力を与えるための駆動系として、エンジン2と、エンジン2の出力軸としてのクランクシャフト2aにダンパ2bを介して接続された3軸式の動力分割機構3と、この動力分割機構3に接続された発電可能な第1モータジェネレータMG1と、動力分割機構3に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸3eにリダクション機構7を介して接続された第2モータジェネレータMG2とを備えている。
また、上記リングギヤ軸3eは、ギヤ機構4及び前輪用のデファレンシャルギヤ5を介して前輪6a,6bに接続されている。
また、このハイブリッド車両1は、車両の駆動系全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)という)10を備えている。
(エンジン2及びエンジンECU11)
上記エンジン2は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン2の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)11により、燃料噴射制御、点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御が行われる。エンジンECU11は、上記ハイブリッドECU10と通信を行っており、このハイブリッドECU10からの制御信号に基づいてエンジン2を運転制御すると共に必要に応じてエンジン2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU10に出力する。尚、エンジンECU11は、クランクポジションセンサ56や水温センサ57等が接続されている。クランクポジションセンサ56は、クランクシャフト2aが一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力する。このクランクポジションセンサ56からの出力信号に基づいてエンジンECU11はエンジン回転数Neを演算する。また、水温センサ57はエンジン2の冷却水温度に応じた検出信号を出力する。
(動力分割機構3)
上記動力分割機構3は、外歯歯車のサンギヤ3aと、このサンギヤ3aと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ3bと、サンギヤ3aに噛合すると共にリングギヤ3bに噛合する複数のピニオンギヤ3cと、複数のピニオンギヤ3cを自転かつ公転自在に保持するキャリア3dとを備え、サンギヤ3aとリングギヤ3bとキャリア3dとを回転要素とし差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。この動力分割機構3では、キャリア3dにエンジン2のクランクシャフト2aが、サンギヤ3aに第1モータジェネレータMG1のロータ(回転子)が、リングギヤ3bに上記リングギヤ軸3eを介して上記リダクション機構7がそれぞれ連結されている。
第1モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、キャリア3dから入力されるエンジン2の駆動力が、サンギヤ3a側とリングギヤ3b側とにそのギヤ比に応じて分配される。一方、エンジン2の始動要求時にあっては、第1モータジェネレータMG1が電動機(スタータモータ)として機能し、この第1モータジェネレータMG1の駆動力がサンギヤ3a及びキャリア3dを介してクランクシャフト2aに与えられてエンジン2がクランキングされる。
(リダクション機構7)
上記リダクション機構7は、外歯歯車のサンギヤ7aと、このサンギヤ7aと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ7bと、サンギヤ7aに噛合すると共にリングギヤ7bに噛合する複数のピニオンギヤ7cと、複数のピニオンギヤ7cを自転自在に保持するキャリア7dとを備えている。このリダクション機構7では、キャリア7dがトランスミッションケースに固定されている一方、サンギヤ7aが第2モータジェネレータMG2のロータ(回転子)に、リングギヤ7bが上記リングギヤ軸3eにそれぞれ連結されている。
(モータジェネレータMG1,MG2及びモータECU13)
モータジェネレータMG1,MG2は、何れも発電機として駆動できると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機により構成されており、インバータ21,22及び昇圧コンバータ23を介してバッテリ(蓄電装置)24との間で電力のやりとりを行う。各インバータ21,22、昇圧コンバータ23及びバッテリ24を互いに接続する電力ライン25は、各インバータ21,22が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、モータジェネレータMG1,MG2の何れかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。従って、バッテリ24は、モータジェネレータMG1,MG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。尚、モータジェネレータMG1,MG2により電力収支がバランスしている場合には、バッテリ24は充放電されない。
モータジェネレータMG1,MG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)13により駆動制御される。このモータECU13には、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータジェネレータMG1,MG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ26,27からの信号や電流センサにより検出されるモータジェネレータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU13からは、インバータ21,22へのスイッチング制御信号が出力されている。例えば、モータジェネレータMG1,MG2の何れかを発電機として駆動制御(例えば、第2モータジェネレータMG2を回生制御)したり、電動機として駆動制御(例えば、第2モータジェネレータMG2を力行制御)したりする。また、モータECU13は、ハイブリッドECU10と通信を行っており、このハイブリッドECU10からの制御信号に従って上述した如くモータジェネレータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータジェネレータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU10に出力する。
(バッテリ24及びバッテリECU14)
バッテリ24は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)14によって管理されている。このバッテリECU14には、バッテリ24を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ24の端子間に設置された電圧センサ24aからの端子間電圧、バッテリ24の出力端子に接続された電力ライン25に取り付けられた電流センサ24bからの充放電電流、バッテリ24に取り付けられたバッテリ温度センサ24cからのバッテリ温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ24の状態に関するデータが通信によりハイブリッドECU10に出力される。
また、バッテリECU14では、バッテリ24を管理するために、電流センサ24bにより検出された充放電電流の積算値に基づいて電力の残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)とバッテリ温度センサ24cにより検出されたバッテリ温度Tbとに基づいてバッテリ24を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。尚、バッテリ24の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ24の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、上記設定した入出力制限Win,Woutの基本値に上記補正係数を乗じることにより設定することができる。
(ブレーキ装置及びブレーキECU15)
前輪6a,6bには、ブレーキアクチュエータ31からの油圧により作動する油圧ブレーキ32a,32bが取り付けられている。ブレーキアクチュエータ31からの油圧の調節は、ブレーキECU15による駆動制御により行われている。これらブレーキECU15、ブレーキアクチュエータ31、油圧ブレーキ32a,32bによってブレーキ装置が構成されている。
上記ブレーキECU15には、前後加速度センサ(Gセンサ)58及び車輪速度センサ59等が接続されている。前後加速度センサ58は、車体前後方向の加速度を検出するものであり、車両1の加減速度や路面勾配などの検出が可能である。また、車輪速度センサ59は、各車輪6a,6bに設けられ、それぞれの車輪6a,6bの回転速度が検出可能である。また、ブレーキECU15からはブレーキアクチュエータ31へ駆動信号が出力される。尚、ブレーキECU15は、ハイブリッドECU10と通信を行っており、ハイブリッドECU10からの制御信号に基づいてブレーキアクチュエータ31を駆動制御すると共に必要に応じてブレーキアクチュエータ31の状態や前輪6a,6bの状態に関するデータをハイブリッドECU10に出力する。
(ハイブリッドECU10及び制御系)
上記ハイブリッドECU10は、図2に示すように、CPU40、ROM41、RAM42及びバックアップRAM43などを備えている。ROM41は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU40は、ROM41に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。RAM42は、CPU40での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM43は、例えばイグニッションOFF時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU40、ROM41、RAM42及びバックアップRAM43は、バス46を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース44及び出力インターフェース45と接続されている。
入力インターフェース44には、後述するシフト操作装置60のシフトレバー61の操作位置等を検出するシフトポジションセンサ50、運転者のON操作によりイグニッション信号を発信するイグニッションスイッチ51、アクセルペダルの踏み込み量に応じた信号を出力するアクセル開度センサ52、ブレーキペダルの踏み込み量に応じた信号を出力するブレーキペダルセンサ53、車体速度に応じた信号を出力する車速センサ54等が接続されている。
これにより、ハイブリッドECU10には、シフトポジションセンサ50からのシフトポジション信号、イグニッションスイッチ51からのイグニッション信号、アクセル開度センサ52からのアクセル開度信号、ブレーキペダルセンサ53からのブレーキペダルポジション信号、車速センサ54からの車速信号等が入力されるようになっている。
また、入力インターフェース44及び出力インターフェース45には、上記エンジンECU11、モータECU13、バッテリECU14、ブレーキECU15等が接続されており、ハイブリッドECU10は、これらECU11〜15との間で各種制御信号やデータの送受信を行っている。
(シフト操作装置60)
ここで上記シフト操作装置60について簡単に説明する。図2に示すように、シフト操作装置60は、運転席の近傍に配置され、変位操作可能なシフトレバー(シフトノブと呼ぶ場合もある)61と、押し込み操作可能なPスイッチ62とを備えている。シフトレバー61は、前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)、アクセルオフ時の制動力(エンジンブレーキ)が大きくなる前進走行用のブレーキレンジ(Bレンジ)、後進走行用のリバースレンジ(Rレンジ)、中立のニュートラルレンジ(Nレンジ)が設定されており、運転者が所望のレンジへシフトレバー61を変位させることが可能となっている。これらDレンジ、Bレンジ、Rレンジ、Nレンジの各位置はシフトポジションセンサ50によって検出される。シフトポジションセンサ50の出力信号はハイブリッドECU10に入力される。また、Pスイッチ62は、運転者の押し込み操作によって駐車ポジション(Pポジション)を設定するものであり、このPスイッチ62の押し込み信号もシフトポジションセンサ50によって検出される。そして、このPスイッチ62の押し込み操作に伴って、ハイブリッドECU10からの指令信号を図示しないパーキングECUが受けパーキングロック機構が作動して間接的に前輪6a,6bをロックする。
(ハイブリッドシステムにおける駆動力の流れ)
このように構成されたハイブリッド車両1は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて前輪(駆動輪)6a,6bに出力すべきトルク(要求トルク)を計算し、この要求トルクに対応する要求駆動力により走行するように、エンジン2とモータジェネレータMG1,MG2とが運転制御される。
具体的には、燃料消費量の削減を図るために、要求駆動力が比較的低い運転領域にあっては、第2モータジェネレータMG2を利用して上記要求駆動力が得られるようにする。一方、要求駆動力が比較的高い運転領域にあっては、第2モータジェネレータMG2を利用すると共に、エンジン2を駆動し、これら駆動源(走行駆動力源)からの駆動力により、上記要求駆動力が得られるようにする。
より具体的には、車両1の発進時や低速走行時等であって仮にエンジン2を駆動した際にその運転効率が低い場合には、第2モータジェネレータMG2のみにより走行(以下、「EV走行」ともいう)を行う。また、車室内に配置された走行モード選択スイッチによって運転者がEV走行モードを選択した場合にもEV走行を行う。
一方、通常走行時には、例えば上記動力分割機構3によりエンジン2の駆動力を2経路に分け、一方で駆動輪6a,6bの直接駆動(直達トルクによる駆動)を行い、他方で第1モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。この時、発生する電力で第2モータジェネレータMG2を駆動して駆動輪6a,6bの駆動補助を行う(電気パスによる駆動)。このように、上記動力分割機構3が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジン2からの動力の主部を駆動輪6a,6bに機械的に伝達し、そのエンジン2からの動力の残部を第1モータジェネレータMG1から第2モータジェネレータMG2への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される電気式無段変速機としての機能が発揮される。これにより、駆動輪6a,6b(リングギヤ軸3e)の回転数及びトルクに依存することなく、エンジン回転数及びエンジントルクを自由に操作することが可能となり、駆動輪6a,6bに要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジン2の運転状態を得ることが可能となる。
また、高速走行時には、更にバッテリ24からの電力を第2モータジェネレータMG2に供給し、この第2モータジェネレータMG2の出力を増大させて駆動輪6a,6bに対して駆動力の追加(駆動力アシスト;力行)を行う。
更に、減速時には、第2モータジェネレータMG2が発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリ24に蓄える。尚、バッテリ24の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン2の出力を増加して第1モータジェネレータMG1による発電量を増やしてバッテリ24に対する充電量を増加する。勿論、低速走行時においても必要に応じてエンジン2の出力を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリ24の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン2の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合や、車両1が急加速する場合等である。
更に、上記ハイブリッド車両1においては、車両1の運転状態やバッテリ24の状態によって、燃費を向上させるために、エンジン2を停止させる。そして、その後も、車両1の運転状態やバッテリ24の状態を検知して、エンジン2を再始動させる。このように、ハイブリッド車両1においては、イグニッションスイッチがON状態であってもエンジン2は間欠運転される。
また、このハイブリッド車両1の後進走行時の駆動力は第2モータジェネレータMG2により得られる。つまり、上記シフトレバー61がリバースレンジ(Rレンジ)に操作されると、第2モータジェネレータMG2が、前進方向は逆回転方向(後進方向)に回転し、その駆動力をリダクション機構7、リングギヤ軸3e、ギヤ機構4、デファレンシャルギヤ5を介して前輪6a,6bに伝達して車両1を後進方向に走行させる。
(車両後進走行制御)
次に、車両1の後進走行時における制御について説明する。本実施形態におけるハイブリッド車両1は、後進走行時、必要に応じて、第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを行い、その反力トルク(エンジン2の慣性力によって第2モータジェネレータMG2の出力軸(リングギヤ軸3e)において後進走行方向に発生するトルク)を用いて、第2モータジェネレータMG2のみで得られる走行駆動力よりも大きな走行駆動力を得ることが可能となっている。
そして、本実施形態の特徴としては、上記モータリングを実行するタイミングを制御している点にある。この制御の概略について説明すると、車両1の後進走行時に後輪が段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離が、後輪と前輪との間の距離であるホイールベースに近づき、その走行距離がホイールベースに達する直前となったタイミング、言い換えると、前輪が段差に当接する直前となったタイミングで上記モータリングを行って高い走行駆動力を得るようにしている(モータリング制御手段によるモータリング開始タイミング設定動作)。
以下、この後進走行時における制御の手順を図3及び図4のフローチャートに沿って説明する。この図3及び図4に示すフローチャートは、車両1の後進走行が開始された後、具体的にはシフトレバー61がリバースレンジ(Rレンジ)に操作された後、数msec毎に繰り返して実行される。
シフトレバー61がリバースレンジ(Rレンジ)に操作されると、ハイブリッドECU10は、先ず、ステップST1において、アクセル開度センサ52からのアクセル開度Acc情報、車速センサ54からの車速V情報、前後加速度センサ58からの加速度情報、第2モータジェネレータMG2の回転数Nm2情報などといった、後進走行制御に必要なデータを入力する処理を実行する。ここで、前後加速度センサ58からの加速度情報は、上記前後加速度センサ58により検出された車体前後方向の加速度に基づいて演算されたものがブレーキECU15から通信によりハイブリッドECU10に入力される。この加速度情報は路面勾配の判断や後述する路面段差の乗り越えの判断に利用される。また、第2モータジェネレータMG2の回転数Nm2情報は、上記回転位置検出センサ27により検出された第2モータジェネレータMG2のロータの回転位置に基づいて演算されたものがモータECU13から通信によりハイブリッドECU10に入力される。この加速度情報は、路面勾配の判断や、後述する段差の乗り越しの判断に利用される。
データ入力処理の実行後、ステップST2に移り、後輪(非駆動輪)が段差を乗り越したか否かを判定する。具体的には、図8に示すように、車両1の後輪8が段差Sを乗り越したことを上記前後加速度センサ58が検知する車両1の加速度の変化によって認識する。これにより、例えば、図8に示すように車両1の後輪8の回転軸心から垂下される鉛直線が段差Sの最上端位置に重なった時点が認識されることになる。尚、後輪8が段差Sを乗り越したか否かの判定は、これに限られるものではなく、例えば後輪8のショックアブソーバの変位量等によって判定するようにしてもよい。
後輪8が段差Sを乗り越していない、例えば、車両1が比較的平坦な路面を走行している場合には、ステップST2でNO判定され、ステップST3に移って、入力されたアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両1に要求されるトルクとして駆動輪6a,6bに連結されたリングギヤ軸3eに出力すべき要求トルクTrを設定する。
この要求トルクTrは、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTrとの関係を予め定めた要求トルク設定マップに従って設定される。この要求トルク設定マップは、上記ROM41に記憶されており、アクセル開度Accと車速Vとが与えられることで要求トルクTrを抽出するものとなっている。図5に要求トルク設定マップの一例を示す。
また、この要求トルクTrを求めるに際し、車両1が登坂路を後進走行していることを考慮し、上記路面勾配θが「0」でない場合には、以下の式(1)によって要求トルクTr(登坂路を後進走行するのに必要なトルク)を算出するようにしてもよい。
Tr=M・g・sinθ・ka …(1)
この式(1)では、車両1の質量(例えば定員乗車時のものなど)Mと重力加速度gと路面勾配θの正弦値との積に対して車両1に作用する力を駆動軸としてのリングギヤ軸3eに作用するトルクに換算する換算係数kaを乗じることにより要求トルクTrを算出している。尚、上記路面勾配θは上記前後加速度センサ58からの出力信号に基づいて算出される。
このようにして要求トルクTrを求めた後、ステップST4に移り、要求トルクTrと第2モータジェネレータMG2の定格最大トルクにリダクション機構7のギヤ比Grを乗算した値(以下、「MG2変速後トルク」と呼ぶ)とを比較し、この要求トルクTrがMG2変速後トルクよりも大きいか否かを判定する。つまり、最大となるMG2変速後トルクを発生しても要求トルクTrを得ることができない状況にあるか否かを判定する。尚、ここで用いられている第2モータジェネレータMG2の定格最大トルクは、バッテリ24の出力制限Woutによって定格最大トルクが出力できない場合には、この制限されたトルクを利用してステップST4の判定が行われる。
要求トルクがMG2変速後トルク以下であって、ステップST4でNO判定された場合には、ステップST5に移り、第2モータジェネレータMG2のトルク制御を実行する。つまり、第1モータジェネレータMG1のトルク指令Tm1の値を「0」に設定すると共に、要求トルクTrをリダクション機構7のギヤ比Grで除したものを第2モータジェネレータMG2のトルク指令Tm2として設定し、この設定したトルク指令Tm1(=0),Tm2をモータECU13に送信してリターンされる。
このトルク指令Tm1,Tm2を受信したモータECU13は、トルク指令Tm1(=0)で第1モータジェネレータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2で第2モータジェネレータMG2が駆動されるようインバータ21,22のスイッチング素子のスイッチング制御を行う。尚、エンジンECU11によるエンジン2の燃料噴射制御、点火制御、吸入空気量調整制御などの運転制御は、上記バッテリ24の蓄電残容量(SOC)が所定量以下に低下しない限り停止されている。こうした制御により、第2モータジェネレータMG2からリングギヤ軸3eに要求トルクTrを出力して後進走行が行われる。
一方、要求トルクTrがMG2変速後トルクを超えており、ステップST4でYES判定された場合には、ステップST6に移り、上述した第2モータジェネレータMG2のトルク制御に加えて第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを行い、その反力トルクを発生させて後進走行の駆動力を付加する。ここで行われるモータリングは、車両1が比較的平坦な路面を走行している場合に実行されるモータリングである。尚、車両1が路面の段差を乗り越す場合のモータリングについては後述する。
ここで、第2モータジェネレータMG2の駆動力のみによって後進走行を行っている場合(ステップST5での制御)と、上記第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングによる反力トルクも利用して後進走行を行っている場合(ステップST6での制御)とのそれぞれにおける共線図を説明する。
図6は、第2モータジェネレータMG2からの動力のみを用いて後進走行しているときの動力分割機構3の各回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例である。また、図7は、第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを伴って第2モータジェネレータMG2からの動力を用いて後進走行しているときの動力分割機構3の各回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例である。
これら共線図における左側のS軸は第1モータジェネレータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ3aの回転数を表し、C軸はエンジン2の回転数Neであるキャリア3dの回転数を表し、R軸は第2モータジェネレータMG2の回転数Nm2をリダクション機構7のギヤ比Grで除したリングギヤ7bの回転数Nrを表している。尚、これら共線図では、回転数「0」のラインよりも上側が正回転(リングギヤ7bの回転数Nrが正回転である場合には車両1は前進走行している)となっており、回転数「0」のラインよりも下側が逆回転(リングギヤ7bの回転数Nrが逆回転である場合には車両1は後進走行している)となっている。
図7におけるR軸上の2つの太線矢印は、燃料噴射を停止したエンジン2をモータリングする第1モータジェネレータMG1からのトルクTm1によりリングギヤ軸3eに作用するトルク(上記反力トルク)と、第2モータジェネレータMG2から出力されるトルクTm2がリダクション機構7を介してリングギヤ軸3eに作用するトルク(第2モータジェネレータMG2から出力されるトルクTm2とリダクション機構7のギヤ比Grとの積で表されるトルク;上記MG2変速後トルク)とを示す。
図6に示すように、第2モータジェネレータMG2からの動力のみにより後進走行しているときに、アクセルペダルが大きく踏み込まれて要求トルクTrが第2モータジェネレータMG2の定格トルクTm2とギヤ比Grとの積を超えて大きくなると、リングギヤ軸3eには要求トルクTrに対して不足したトルクしか出力できなくなる。このため、アクセル開度Accに基づく要求トルクTrが定格トルクTm2とギヤ比Grとの積を超える場合には、第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを開始することによって、図7に示すように、第2モータジェネレータMG2からの定格トルクTm2とギヤ比Grとの積よりも絶対値として大きなトルクをリングギヤ軸3eに作用させるようにしている。
一方、後輪8が段差Sを乗り越した場合(図8に示す状態を参照)には、ステップST2でYES判定され、ステップST7(図4)に移り、その段差高さの判定を行う。この判定は、上記前後加速度センサ58が検知する車両1の加速度に基づいて行われる。つまり、この段差Sを乗り越す際に車両1に生じるショックに伴う加速度が高いほど段差高さも高いと判定されることになる。
この段差高さの判定を行った後、ステップST8に移り、この判定された段差高さは、上記第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを必要とする高さであるか否かを判定する。つまり、段差高さが比較的高く、上記MG2変速後トルクのみでは乗り越すことが難しい段差高さであるか否かを判定する。この判定としては、単に段差高さが所定値(例えば100mm)以上である場合にはモータリングが必要であると判定するようにしてもよいし、段差高さと現在の車速とに応じてモータリングが必要であるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、図10に示すような段差高さと現在の車速とをパラメータとしてモータリングが必要であるか否かを判定するためのモータリングマップをROM41に記憶させておき、このモータリングマップに段差高さと現在の車速とを当て嵌めることによってモータリングの必要の有無を判定する。このモータリングマップは、実験やシミュレーションによって予め作成されている。このモータリングマップでは、段差高さが比較的高くても車速が比較的高い場合にはモータリングを行わなくても段差を乗り越すことが可能であるとしてモータリングを非実行とするようにしている。また、段差高さが比較的低くても車速が比較的低い場合にはMG2変速後トルクのみでは段差を乗り越すことが不可能であるとしてモータリングを実行させるようにしている。
段差高さが比較的低い場合などであってステップST8でNO判定された場合にはステップST3(図3)に戻り、上述したステップST3〜ステップST6の制御(比較的平坦な路面を走行している場合の制御)を行う。
一方、段差高さが比較的高い場合などであってステップST8でYES判定された場合にはステップST9に移り、後輪8が段差を乗り越した時点(ステップST2でYES判定された時点)からの車両1の走行距離を算出する。この算出は、上記回転位置検出センサ27により検出される第2モータジェネレータMG2のロータの回転量に基づいて求められる。また、上記車輪速度センサ59によって前輪6a,6bの回転量を検出し、これによって走行距離を算出するようにしてもよい。
その後、ステップST10に移り、上記算出された車両1の走行距離(後輪8が段差Sを乗り越した時点からの走行距離;以下、「後進走行距離」と呼ぶ)と、後輪8と前輪6a,6bとの間の距離であるホイールベースとを比較し、ステップST11において、後進走行距離に所定長さ(例えば10mm)を加算した値がホイールベースに一致したか否かを判定する。尚、このホイールベースは、予め上記ROM41に記憶されている。
後進走行距離が未だ比較的短く、段差Sと前輪6a,6bとの間の距離が比較的長い場合には、ステップST11でNO判定されるのに対し、後進走行距離が比較的長くなり、段差Sと前輪6a,6bとの間の距離が比較的短くなって、その差が10mmになるとステップST11ではYES判定される。つまり、前輪6a,6bが段差Sに当接する直前において、ステップST11でYES判定される。
ステップST11でNO判定されている間は、上記段差Sと前輪6a,6bとの間の距離が比較的短くなって、その差が10mmになるのを待つ。
一方、ステップST11でYES判定されてステップST12に移ると、運転者の段差乗り越し意思の有無を判定する。この判定は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に応じて行われる。上記アクセル開度センサ52によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量が所定量未満(例えばアクセル開度5%未満)ある場合には運転者に段差乗り越し意思が無いとしてステップST12でNO判定される。これに対し、アクセルペダルの踏み込み量が所定量以上(例えばアクセル開度5%以上)である場合には運転者に段差乗り越し意思が有るとしてステップST12でYES判定される。
また、アクセルペダルの踏み込み量と現在の車速とに応じて運転者の段差乗り越し意思の有無を判定するようにしてもよい。例えば、図11に示すようなアクセルペダルの踏み込み量と現在の車速とをパラメータとして段差乗り越し意思の有無を判定するための段差乗り越し意思判定マップをROM41に記憶させておき、この段差乗り越し意思判定マップにアクセルペダルの踏み込み量と現在の車速とを当て嵌めることによって運転者の段差乗り越し意思の有無を判定する。この段差乗り越し意思判定マップは、実験やシミュレーションによって予め作成されている。この段差乗り越し意思判定マップでは、アクセルペダルの踏み込み量が比較的少なくても車速が比較的高い場合には運転者に段差乗り越し意思が有ると判定するようになっている。これは、運転者に段差乗り越し意思が有る状態において、車速が高い場合、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作を行わなくても段差を乗り越すことができると判断してアクセルペダルの踏み込み量が比較的少なくなっている状況を想定したものである。
運転者に段差乗り越し意思が無く、ステップST12でNO判定された場合にはそのままリターンされる。一方、運転者に段差乗り越し意思が有り、ステップST12でYES判定された場合には、ステップST13において、第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを開始する。この場合、前輪6a,6bが段差Sに当接する直前(例えば図9に示す状態)においてモータリングが開始されることになる。一般に、このモータリングによって得られる反力トルクの発生期間は短期間(例えば1〜2sec程度)である。このため、前輪6a,6bが段差Sに当接する直前においてモータリングを開始することにより、前輪6a,6bが段差Sに当接した時点では、駆動輪6a,6bに既に高い走行駆動力が得られていることになり、段差の乗り越しが確実に行える状況となる。尚、このモータリングを実行した場合における動力分割機構3の各回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係は、図7を用いて既に説明したため、ここでの説明は省略する。
このモータリングの開始後、ステップST14に移り、上記ハイブリッドECU10に予め備えられたタイマのカウントを開始する。このタイマは、上記モータリングによる走行駆動力の上昇が期待できる期間(例えば2sec)の経過後にカウントアップするものとなっている。
その後、ステップST15に移り、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了したか否かを判定する。この判定は、上記回転位置検出センサ27により検出された第2モータジェネレータMG2のロータの回転量に基づいて求められる。つまり、第2モータジェネレータMG2のロータの回転量によって前輪6a,6bの回転量を認識し、この回転量が段差を乗り越した際の回転量に相当する値になったことを検出することによって、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了したと判定するようになっている。
第2モータジェネレータMG2のロータの回転量が所定量(前輪6a,6bが段差Sを乗り越すために必要な回転量)に達したことで前輪6a,6bの段差乗り越しが完了したと判断され、ステップST15でYES判定された場合には、ステップST17に移り、上記モータリングを終了させる。つまり、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了したため、走行駆動力を上昇させるためのモータリングは必要なくなったと判断してモータリングを終了させる。
一方、未だ前輪6a,6bの段差乗り越しが完了しておらず、ステップST15でNO判定された場合には、ステップST16に移り、上記タイマがカウントアップしたか否かを判定する。つまり、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了することなく、モータリングによって得られる反力トルクの発生期間が経過したか否かを判定する。
未だ、タイマがカウントアップしておらず、ステップST16でNO判定された場合には、ステップST15に移り、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了したか否かを判定する。一方、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了することなしにタイマがカウントアップした場合には、ステップST17に移り、上記モータリングを終了させる。つまり、前輪6a,6bの段差乗り越しが完了することなしに反力トルクの発生期間が経過したことで、段差乗り越しが不能であるとしてモータリングを終了させる。
以上説明したように、本実施形態では、後輪8が段差Sを乗り越したことを検知した時点からの走行距離が、車両1のホイールベースに近づき、前輪6a,6bが段差Sに当接する直前となった時点で第1モータジェネレータMG1によるエンジン2のモータリングを開始して走行駆動力を高めるようにしている。一般に、このモータリングによって得られる反力トルクの発生期間は短期間(例えば1〜2sec程度)である。そして、上述した如くモータリングによる反力トルクの発生開始タイミングを、前輪6a,6bが段差Sに当接する直前としているため、前輪6a,6bが段差Sに当接した時点では前輪6a,6bに高い走行駆動力が得られていることになり、段差Sを乗り越すための駆動力を高く得ることができる。また、高い走行駆動力で段差Sを乗り越すことが可能であるため、前輪6a,6bが段差Sに当接してロック状態となることも回避できる。このため、第2モータジェネレータMG2がロック保護のために出力制限を受けてしまう可能性が低くなり、第2モータジェネレータMG2の定格最大トルクと上記モータリングによる反力トルクとの和として大きなトルクを得ながら段差Sを乗り越すことが可能となる。
特に、本実施形態のようなFF方式の車両1にあっては、車両重心が車体の前側に位置している所謂フロント荷重となっており、前輪6a,6bが段差Sを乗り越すために必要なトルクは、後輪8が段差を乗り越すために必要なトルクよりも大きくなっている。また、前輪6a,6bが段差Sに近づいている状況では、後輪8よりも前輪6a,6bの方が下方にあり、これによっても車両1はフロント荷重となっており、これによっても、前輪6a,6bが段差Sを乗り越すために必要なトルクは、後輪8が段差を乗り越すために必要なトルクよりも大きくなっている。このような場合であっても本実施形態によれば前輪6a,6bが段差Sを乗り越すための駆動力を高く得ることが可能である。
また、本実施形態では、運転者の段差乗り越し意思がある場合に限りモータリングを行うようにしている。つまり、運転者に段差乗り越し意思が無い場合に上記モータリングを行ってしまうと、運転者の意思とは異なる車両1の挙動を招いてしまう可能性があるため、これを回避できるようにしている。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態では、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の2つの電動機が搭載されたハイブリッド車両1の制御に本発明を適用した例を示したが、3つ以上の電動機が搭載されたハイブリッド車両の制御(少なくとも1つの電動機によって内燃機関のモータリングが可能な構成のもの)にも適用可能である。
また、本発明は、上記実施形態で示したハイブリッドシステムを備えた車両1に限らず、複数の電動機を備え、そのうちの少なくとも一つを走行駆動源として利用した後進走行が可能であって、他の電動機によって内燃機関のモータリングが可能となっているハイブリッドシステムを搭載した車両であれば適用可能である。
本発明は、内燃機関と電動機とが搭載されたハイブリッド車両において、後進走行時、電動機によって内燃機関のモータリングを行って段差を乗り越す場合の制御に適用可能である。
1 ハイブリッド車両
2 エンジン(内燃機関)
2a クランクシャフト(内燃機関の出力軸)
3 動力分割機構
3a サンギヤ
3b リングギヤ
3d キャリア
6a,6b 前輪
8 後輪
10 ハイブリッドECU
13 モータECU
27 回転位置検出センサ
52 アクセル開度センサ
58 前後加速度センサ
59 車輪速度センサ
MG1 第1モータジェネレータ(第1の電動機)
MG2 第2モータジェネレータ(第2の電動機)

Claims (5)

  1. 内燃機関及び複数の電動機を備え、少なくとも一つの電動機を走行駆動源として利用した後進走行時に他の電動機による内燃機関のモータリングを行い、その反力トルクによって前輪の走行駆動力を増大させることが可能なハイブリッド車両の制御装置において、
    上記後進走行時に上記後輪が路面の段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離と、予め記憶された車両の前輪と後輪との間の距離とに基づいて、上記電動機による内燃機関のモータリングの開始タイミングを設定するモータリング制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記モータリング制御手段は、後進走行時に上記後輪が段差を乗り越したことを検知した時点からの走行距離が、その後の後進走行に伴って前輪と後輪との間の距離に近づき、その差が所定値に達した時点で電動機による内燃機関のモータリングを開始する構成となっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  3. 請求項1または2記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記モータリング制御手段は、上記モータリングの開始タイミングにおいて運転者に段差を乗り越す意思が有る場合に、上記電動機による内燃機関のモータリングを開始する構成となっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  4. 請求項1、2または3記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記モータリング制御手段は、上記電動機による内燃機関のモータリングを開始した後、走行駆動源として利用されている電動機の回転量が、前輪が段差を乗り越すために必要な回転量に達した時点で、電動機による内燃機関のモータリングを終了させる構成となっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  5. 請求項1〜4のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    上記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の電動機が連結されるサンギヤと、第2の電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構を備えており、上記モータリングは、上記第2の電動機を走行駆動源として利用した後進走行時に、停止している内燃機関を上記第1の電動機によって回転させるものであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019127142A (ja) * 2018-01-24 2019-08-01 本田技研工業株式会社 車両制御装置
JP2019206206A (ja) * 2018-05-28 2019-12-05 トヨタ自動車株式会社 駆動力制御装置

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