JP2013098099A - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解液中の化合物(LiPO22)の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極合材層を備える正極2を有する電極体5、及び、下記の式(1)で表される化合物を含有する非水電解液8を、電池ケース6内に収容した電池を作製する組み付け工程(ステップS1)と、上記電池を活性化させる活性化工程(ステップS2)とを備える。組み付け工程(ステップS1)では、非水電解液8として、上記化合物の添加量を、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とした非水電解液8を用いる。
Figure 2013098099

【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。リチウムイオン二次電池としては、正極合材層を備える正極を有する電極体と非水電解液とを、電池ケース内に収容したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−31079号公報
特許文献1には、下記の式(1)で表される化合物(ジフルオロリン酸リチウム、以下この化合物をLiPO22ともいう)を含有した非水電解液を用いて製造したリチウムイオン二次電池が開示されている。
Figure 2013098099
LiPO22を添加した非水電解液を含むリチウムイオン二次電池を組み付けた後、当該電池を活性化させる(初期充電などを行う)ことで、LiPO22由来の固体電解質被膜(以下「SEI被膜」という。)を、正極合材層の表面(正極合材層の内部の空孔を含めた表面)に形成することができる。LiPO22由来のSEI被膜を正極合材層の表面に形成することで、低温反応抵抗(ここで「低温」とは常温(25℃)に対する低温(例えば−30℃)をいう)を低下させ、出力を増加させることができる。LiPO22由来のSEI被膜は、非水電解液中の溶媒や電解質由来のSEI被膜に比べて、低抵抗で安定している。それ故、低温反応抵抗を低く抑えることができる。
ところで、LiPO22を添加する目的は、LiPO22由来のSEI被膜を正極合材層の表面に形成することにあり、これによって、電池の低温反応抵抗を低くして、出力を増加させることができる。しかし、添加剤LiPO22を非水電解液に添加した場合、ある一定量まで低温反応抵抗が低減し、一定量を超えると低温反応抵抗が増加する特性がある。そのため、LiPO22の添加量が過小である場合には、溶媒被膜が正極合材層の表面に形成され、低温反応抵抗が高くなる。一方、LiPO22の添加量が過剰である場合には、LiPO22由来のSEI被膜が厚くなりすぎて、低温反応抵抗が高くなる。つまり、LiPO22の添加量が多すぎても少なすぎても、低温反応抵抗が高くなってしまう。よって、LiPO22の添加量を、低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適
正値に管理する必要がある。また、リチウムイオン二次電池の仕様は多種多様であり、リチウムイオン二次電池によって、非水電解液の注液量や正極合材層の仕様は大きく異なる。故に、LiPO22の添加量は、正極合材層(例えば、電解液が入り得る正極合材層の空孔体積)に応じて決めるのが好ましいと考えられる。
ところが、特許文献1では、LiPO22の添加量を、非水電解液中の重量パーセント濃度やモル濃度で規定している。しかしながら、この規定によるLiPO22の添加量では、低温反応抵抗を極小値に近づけて抑えることができない虞があり、却って、低温反応抵抗を高くする虞もあった。正極合材層に対し、LiPO22の量が過小あるいは過剰となり得るからである。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、非水電解液中の化合物(LiPO22)の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができるリチウムイオン二次電池を製造することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、正極合材層を備える正極を有する電極体、及び、下記の式(1)で表される化合物を含有する非水電解液を、電池ケース内に収容した電池を作製する組み付け工程と、上記電池を活性化させる活性化工程と、を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記組み付け工程では、上記非水電解液として、上記化合物の添加量を、上記正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とした
非水電解液を用いるリチウムイオン二次電池の製造方法である。
Figure 2013098099
上述の製造方法では、組み付け工程において、式(1)で表される化合物(ジフルオロリン酸リチウム、以下この化合物をLiPO22ともいう)の添加量を、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とした非水電解液を用いる。すなわち、組み付け工程において、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合でLiPO22を添加した非水電解液を、電池ケース内に注液する。このように、上述の製造方法では、非水電解液が入り得る正極合材層の空孔体積に応じて、LiPO22の添加量を規定した。上記割合でLiPO22を添加した非水電解液を用いて電池を作製(組み付け)し、その後、活性化工程において当該電池を活性化させることで、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中の化合物(LiPO22)の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができる。
なお、活性化工程とは、電池の初期充電やエージングを行うことにより、電池を活性化させる工程をいう。
また、正極合材層の空孔体積は、例えば、次のようにして算出する。正極合材層の見かけ体積(空孔を含めた体積)をV(cm3)、正極合材層の構成要素の数をn、それぞれの構成要素の重量をWn(g)、真密度をρn(g/cm3)として、次の演算式(A)によって求めることができる。
正極合材層の空孔体積(cm3)=V−Σ(Wn/ρn)・・・・(A)
なお、各構成要素の真密度ρnは、それぞれ、材料メーカーから取得することができる。また、各構成要素の重量Wnは、それぞれ、正極合材層を作製するときに加えた各々の構成要素の重量から把握することができる。
また、正極合材層の見かけ体積V(cm3)は、次の演算式(B)によって求めることができる。
V=T(μm)×10-4 ×正極合材層の塗工面積(cm2)・・・(B)
なお、正極合材層の厚みTは、正極全体の厚みから正極集電部材の厚みを差し引いて求めることができる。
例えば、正極合材層の構成要素が、LiNi1/3Mn1/3Co1/32とアセチレンブラックからなる導電材とPVdF(結着剤)である場合、これらの真密度ρnを、順に、ρ1,ρ2,ρ3とし、これらの重量Wnを、順に、W1,W2,W3とすると、正極合材層の空孔体積(cm3)は、演算式(A)を用いて、次のようにして求めることができる。
正極合材層の空孔体積(cm3)=V−[(W1/ρ1)+(W2/ρ2)+(W3/ρ3)]
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記非水電解液の溶媒は、20〜40体積%のエチレンカーボネートと、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの少なくともいずれかと、からなるリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
換言すれば、前記のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記非水電解液の溶媒は、エチレンカーボネートを20〜40体積%含み、残量分として、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの少なくともいずれかを含むリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
前述の組み付け工程において、非水電解液として、上記のような溶媒を有する非水電解液を用いることで、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができる。
リチウムイオン二次電池の構成を示す図である。 同リチウムイオン二次電池の正極の構成を示す図である。 同リチウムイオン二次電池の負極の構成を示す図である。 リチウムイオン二次電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。 非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)と電池の反応抵抗(Ω)との関係を示すグラフである。 正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)と電池の反応抵抗(Ω)との関係を示すグラフである。
まず、本実施形態の製造方法により製造されるリチウムイオン二次電池1について説明する。
リチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、電極体5と、非水電解液8と、これらを収容する電池ケース6とを備えている。電池ケース6は、円筒状の電池ケースであり、キャップ63及び外装缶65を有する。電池ケース6のキャップ63の内側には、ガスケット59が配置されている。
電極体5は、シート状の正極2、負極3、及びセパレータ4を円筒状に捲回してなる捲回体である。このうち、正極2は図2に示すように、アルミニウム箔からなる正極集電部材22と、その両面に配置された正極合材層21とを有している。正極合材層21は、正極活物質25と、アセチレンブラックからなる導電材と、PVdF(結着剤)とを含んでいる。なお、本実施形態では、正極活物質25として、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物(以下「LiNi1/3Mn1/3Co1/32」ともいう)を用いている。
負極3は、図3に示すように、銅箔からなる負極集電部材32と、その両面に配置された負極合材層31とを有している。負極合材層31は、負極活物質35とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを、重量比98:1:1の割合で含んでいる。なお、本実施形態では、負極活物質35として、黒鉛を用いている。
非水電解液8は、EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを、体積比で30:40:30で混合した溶媒に、電解質としてLiPF6 を添加し、さらに、下記式(1)で表される化合物(LiPO22)を添加した非水電解液である。なお、非水電解液8中のLiPF6の濃度は、
1.1mol/Lとしている。
Figure 2013098099
また、本実施形態では、LiPO22の添加量を、正極合材層21の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合としている。このような割合でLiPO22を添加することで、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができるリチウムイオン二次電池となる。
なお、本実施形態では、正極合材層21の空孔体積は、次のようにして算出している。
具体的には、正極合材層21の見かけ体積(空孔を含めた体積)をV(cm3)、正極合材層21の構成要素の数をn、それぞれの構成要素の重量をWn(g)、真密度をρn(g/cm3)として、次の演算式(A)によって算出する。
正極合材層の空孔体積(cm3)=V−Σ(Wn/ρn)・・・・(A)
なお、本実施形態では、正極合材層21の構成要素は、正極活物質25とアセチレンブラックからなる導電材とPVdF(結着剤)との3つである。従って、構成要素の数n=3となる。また、各構成要素の真密度ρnは、それぞれ、材料メーカーから取得する。また、各構成要素の重量Wnは、それぞれ、正極合材層21を作製するときに加えた各々の構成要素の重量から把握する。
また、正極合材層21の見かけ体積V(cm3)は、次の演算式(B)によって求めている。
V=T(μm)×10-4 ×正極合材層の塗工面積(cm2)・・・(B)
なお、正極合材層21の厚みTは、正極2全体の厚みから正極集電部材22の厚みを差し引いて求めている。
正極活物質25(LiNi1/3Mn1/3Co1/32)とアセチレンブラックからなる導電材とPVdF(結着剤)の真密度ρnを、順に、ρ1,ρ2,ρ3とし、これらの重量Wnを、順に、W1,W2,W3とすると、正極合材層21の空孔体積(cm3)は、演算式(A)を用いて、次のようにして求めることができる。
正極合材層21の空孔体積(cm3)=V−[(W1/ρ1)+(W2/ρ2)+(W3/ρ3)]
また、図1に示すように、正極2には正極集電リード23が溶接されており、負極3には負極集電リード33が溶接されている。正極集電リード23は、キャップ63側に配置された正極集電タブ235に溶接されている。また、負極集電リード33は、外装缶65の底に配置された負極集電タブ335に溶接されている。
次に、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。
まず、図4に示すように、ステップS1(組み付け工程)において、電極体5及び非水電解液8を電池ケース6内に収容した電池を作製する。
具体的には、まず、以下のようにして、正極2を作製した。正極活物質25として、LiNi1/3Mn1/3Co1/32を用意する。次いで、この正極活物質25と、アセチレンブラックからなる導電材と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤とを重量比率89:8:3で混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極合材ペーストを得た。
次いで、上記のようにして作製した正極合材ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電部材22の両面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形した。これにより、正極集電部材22の両面に正極合材層21が積層された、シート状の正極2を得た(図2参照)。
また、以下のようにして、負極3を作製した。まず、負極活物質35として、黒鉛を用意した。次いで、この負極活物質35とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを、98:1:1(重量比)の割合で水中で混合して、負極合材ペーストを作製した。
次いで、この負極合材ペーストを、厚さ10μmの銅箔からなる負極集電部材32の両面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形した。これにより、負極集電部材32の両面に負極合材層31が積層された、シート状の負極3を得た(図3参照)。
次に、正極2に正極集電リード23を溶接すると共に、負極3に負極集電リード33を溶接した(図1参照)。次いで、正極2と負極3との間に、ポリエチレン製のセパレータ4を挟んで捲回し、円筒状の電極体5を作製した。
また、以下のようにして、非水電解液8を作製した。EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを、30:40:30の体積比で混合した溶媒に、LiPF6とLiPO22とを添加して、非水電解液8を作製した。
なお、非水電解液8中のLiPF6の濃度は、1.1mol/Lとした。また、LiPO22の添加量は、正極合材層21の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合とした。なお、正極合材層21の空孔体積は、前述のようにして把握しておくことができる。
次に、前述のようにして作製した電極体5を、外装缶65内に挿入した。このとき、正極集電タブ235に正極集電リード23を溶接すると共に、外装缶65の底に配置した負極集電タブ335に負極集電リード33を溶接した。その後、電池ケース6内に非水電解液8を注入した。次いで、キャップ63の内側にガスケット59を配置すると共に、このキャップ63を外装缶65の開口部に配置した。続いて、キャップ63にかしめ加工を施すことにより、キャップ63により外装缶65を封止した。このとき、キャップ63と外装缶65とにより、電池ケース6が形成されると共に、リチウムイオン二次電池の組み付けが完了する。
次に、図4に示すように、ステップS2(活性化工程)に進み、上述のようにして組み付けたリチウムイオン二次電池に対し、活性化処理を行った。具体的には、まず、リチウムイオン二次電池について、初期充電を行った。例えば、1Cの定電流で、電池電圧値が4.1Vに至るまで充電し、その後、電池電圧値を4.1Vに保持しつつ充電を行い、充電電流値が0.1Aに低下した時点で充電を終了する。これにより、リチウムイオン二次電池をSOC100%にする。
なお、1Cは、定格容量値(公称容量値)の容量を有する電池を定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値である。例えば、リチウムイオン二次電池の定格容量(公称容量)が5.0Ahである場合は、1C=5.0Aとなる。
次いで、初期充電を終えたリチウムイオン二次電池を、所定の温度(例えば、60℃)で、一定時間(例えば、20時間)安置してエージングを行った。以上のようにして、リチウムイオン二次電池を活性化させることにより、リチウムイオン二次電池1を得た。
このように、本実施形態の製造方法では、非水電解液8が入り得る正極合材層21の空孔体積に応じて、LiPO22の添加量を規定した。上述のように、正極合材層21の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合でLiPO22を含有する非水電解液8を用いて電池を作製(組み付け)し、その後、活性化工程において当該電池を活性化させることで、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができる。この効果については、次に説明する低温反応抵抗試験の結果より明らかである。
(低温反応抵抗試験)
次に、低温反応抵抗試験について説明する。この試験により、LiPO22の適切な添加量を規定する指標の適正を明らかにした。
まず、LiPO22を添加しない非水電解液を用いて、3種類の試験電池を作製した。これらの試験電池は、LiPO22を添加していない点を除いて、上述の実施形態にかかるリチウムイオン二次電池と同様にして作製している。但し、非水電解液の注液量は、5g、8g、11gと異ならせている。
また、LiPO22を添加した非水電解液を用いて、15種類の試験電池を用意した。これらの試験電池は、LiPO22の添加量を非水電解液中の重量%で規定して作製した点を除いて、上述の実施形態にかかるリチウムイオン二次電池と同様にして作製している。具体的には、非水電解液中のLiPO22の量(濃度)を、0.27wt%、0.54wt%、0.81wt%、1.08wt%、1.35wt%の5種類に異ならせている。さらに、これらの非水電解液の注液量を、5g、8g、11gと異ならせている。これにより、非水電解液の注液量またはLiPO22の濃度が異なる15種類の試験電池を作製した。
次いで、これらの試験電池について、低温反応抵抗試験を行った。具体的には、まず、それぞれの試験電池を、SOC40%の状態に調整した。その後、これらの試験電池を、−30℃に設定された恒温槽内に配置し、公知の交流インピーダンス測定を実施して反応抵抗値を求めた。尚、一般的に、低温になると抵抗値が増えるため、低温条件(常温(25℃)に対する低温(−30℃))で反応抵抗値を求めている。
具体的には、FRA(周波数応答アナライザ)としてソーラトロン社製の1255B型を用い、ポテンショ/ガルバノスタットとしてソーラトロン社製の1287A型を用いて、以下の条件で測定した。
<測定条件>
環境温度=−30℃、電池SOC=60%、周波数=0.001Hz〜100kHz
上記の交流インピーダンス測定により得られたナイキストプロットにおける半円の直径を、それぞれの試験電池の反応抵抗値とした。
このようにして測定した反応抵抗値を、非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)との関係として、図5に示す。なお、図5では、非水電解液の注液量を5gとした試験電池のデータを■(黒で塗りつぶした四角)で、8gとした試験電池のデータを◆(黒で塗りつぶした菱形)で、11gとした試験電池のデータを△(白抜きの三角)で示している。
ここで、に示した結果について考察する。
非水電解液の注液量が5gの場合、反応抵抗値は、非水電解液中のLiPO22濃度が0.27wt%であるときには5.75Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.54wt%であるときには5.5Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.81wt%のときには5.48Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.08wt%のときには5.65Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.35wt%のときには5.85Ωである。
非水電解液の注液量が8gの場合、反応抵抗値は、非水電解液中のLiPO22濃度が0.27wt%であるときには5.75Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.54wt%であるときには5.45Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.81wt%のときには5.4Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.08wt%のときには5.6Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.35wt%のときには5.7Ωである。
非水電解液の注液量が11gの場合、反応抵抗値は、非水電解液中のLiPO22濃度が0.27wt%であるときには5.4Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.54wt%であるときには5.5Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が0.81wt%のときには5.75Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.08wt%のときには5.8Ω、非水電解液中のLiPO22濃度が1.35wt%のときには6.15Ωである。
上記試験結果より、非水電解液の注液量によって、最も反応抵抗値が下がる非水電解液中のLiPO22濃度が異なっている。具体的には、反応抵抗値を最低にする非水電解液中のLiPO22濃度は、非水電解液の注液量が5g及び8gの場合には0.81wt%であるのに対して、非水電解液の注液量が11gの場合には0.27wt%であり、非水電解液の注液量によって、反応抵抗値を最低にする非水電解液中のLiPO22濃度が0.27wt%以上0.81wt%の範囲でばらつく。
リチウムイオン二次電池によって、非水電解液の注液量が異なる。また、リチウムイオン二次電池によって、正極合材層の仕様が異なり、電解液が入り得る正極合材層の空孔体積が異なる。この場合、注液量が同じでも、正極合材層に対するLiPO22の添加量が安定しない。つまり、電池特性は電池内に存在する添加剤(LiPO22)の絶対量で必ずしも規定できるものではなく、重量パーセント濃度で最適量を示すことができない。換言すれば、LiPO22の添加量を非水電解液中のLiPO22濃度で管理しようとすると、リチウムイオン二次電池によって、反応抵抗の最低値がばらつき、却って、LiPO22の添加量が適正値に対して過小又は過大になって反応抵抗を高くする虞があるといえる。そこで、正極合材層の仕様が変わる都度、添加剤(LiPO22)の添加量を調整することも考えられるが、調整に手間と時間がかかる。しかも、その調整方法はその極板仕様に限った場合でしか用いることができず、汎用性に乏しい。
また、上記試験結果より、非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)が同じであっても、注液量によって反応抵抗値が異なるが、その反応抵抗値のバラツキの範囲が非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)によって異なっている。例えば、非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)が0.81wt%の場合、非水電解液の注液量が5gであるときの反応抵抗値は5.48Ω、非水電解液の注液量が8gであるときの反応抵抗値は5.4Ω、非水電解液の注液量が11gであるときの反応抵抗値は5.75Ωであり、反応抵抗値が5.4Ω以上5.75Ω以下の範囲でばらついている。一方、非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)が0.54wt%の場合、非水電解液の注液量が5g及び8gであるときの反応抵抗値は5.5Ω、非水電解液の注液量が11gであるときの反応抵抗値は5.45Ωであり、反応抵抗値が5.4非水電解液中のLiPO22濃度(wt%)が同じであっても、反応抵抗値は、5.4Ω以上5.5Ωの範囲でばらついている。
全ての注液量に対して、この試験結果の中で最低となる反応抵抗値(5.4Ω)を基準として反応抵抗値のバラツキを2%以内に抑えて極小値に近づけることができる非水電解液中のLiPO22濃度、すなわち、反応抵抗値を5.4Ω以上5.5Ω以下の範囲に限定できる非水電解液中のLiPO22濃度は、0.54wt%に限られている。リチウムイオン二次電池を製造するに当たり、非水電解液中のLiPO22濃度を0.54wt%にピンポイントで管理しようとすると、製造コストを高くする虞がある。
次に、LiPO22の添加量を、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)で規定した場合について検討する。具体的には、上述の各試験電池について、LiPO22の添加量を、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)で規定した。そして、各試験電池について、前述の低温反応抵抗試験の結果を、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)との関係として表した。これを図6に示す。
なお、正極合材層の空孔体積(cm3)は、前述の演算式(A)を用いて求めることができる。また、図6では、非水電解液の注液量を5gとした試験電池のデータを■(黒で塗りつぶした四角)で、8gとした試験電池のデータを◆(黒で塗りつぶした菱形)で、11gとした試験電池のデータを△(白抜きの三角)で示している。
ここで、図6に示した結果について考察する。
非水電解液の注液量を5gとする試験電池では、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.02g/cm3であるときの反応抵抗値が5.75Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.039g/cm3であるときの反応抵抗値が5.5Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.058g/cm3であるときの反応抵抗値が5.45Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.078g/cm3であるときの反応抵抗値が5.6Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.098g/cm3であるときの反応抵抗値が5.85Ωである。
非水電解液の注液量を8gとする試験電池では、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.012g/cm3であるときの反応抵抗値が5.75Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.024g/cm3であるときの反応抵抗値が5.43Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.038g/cm3であるときの反応抵抗値が5.4Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.047g/cm3であるときの反応抵抗値が5.6Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.06g/cm3であるときの反応抵抗値が5.75Ωである。
非水電解液の注液量を11gとする試験電池では、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.026g/cm3であるときの反応抵抗値が5.4Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.054g/cm3であるときの反応抵抗値が5.5Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.08g/cm3であるときの反応抵抗値が5.75Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.105g/cm3であるときの反応抵抗値が5.85Ω、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.13g/cm3であるときの反応抵抗値が6.1Ωである。
上記試験結果より、非水電解液の注液量によって、最も反応抵抗値が低くなる正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が異なっている。具体的には、非水電解液の注液量が5gの場合には、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.058(g/cm3)であるときに、反応抵抗値が5.45Ωで最低となる。また、非水電解液の注液量が8gの場合には、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.038(g/cm3)であるときに、反応抵抗値が5.4Ωで最低となる。また、非水電解液の注液量が11gである場合には、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量が0.026(g/cm3)のときに、反応抵抗値が5.4Ωで最低となる。よって、反応抵抗値が最低となる正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量は、0.026(g/cm3)以上0.058(g/cm3)の範囲でばらついている。
一方、全ての試験結果の中で最低となる反応抵抗の極小値(5.4Ω)を基準として反応抵抗値のバラツキを非水電解液の注液量にかかわらず2%以内に抑え、反応抵抗を極小値に近づけるならば、すなわち、非水電解液の注液量が5g、8g、11gの何れであっても反応抵抗値を極小値に近い範囲(5.4Ω以上5.5Ω以下の範囲)に限定するならば、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量は、0.024g以上0.039g以下の範囲に限定される。換言すれば、低温反応抵抗は、LiPO22の添加量を正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とすると、5.4Ω以上5.5Ω以下の極小値に近い範囲に低く抑えられ、最低値のバラツキが2%以内に抑えられる。つまり、LiPO22の添加量を正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とすると、低温反応抵抗の極小値が描く変化が小さい範囲でLiPO22の添加量を決めることができる。
リチウムイオン二次電池によって、非水電解液の注液量が異なる。これに対して、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)を規定することで、各注液量の反応抵抗を5.4Ω以上5.5Ω以下の範囲に限定することが可能になる。つまり、非水電解液の注液量がリチウムイオン二次電池によって異なっていても、LiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に管理して、正極合板層の表面にLiPO22由来のSEI被膜を適切な厚さで形成し、低温反応抵抗を極小値に近づけることが可能になる。
また、リチウムイオン二次電池によって、正極合材層の仕様が異なる。これに対して、正極合材層の空孔面積は、上述の演算式(A)で簡単に求められる。そして、LiPO22の添加量は、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下となるように決定される。そのため、正極合材層の仕様が変わっても、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)を規定することで、LiPO22の適正な添加量を簡単に求めることができる。しかも、このLiPO22の添加量を決定する方法は、極板の仕様にかかわらず適用でき、汎用性に優れている。
従って、正極合材層の空孔体積に対するLiPO22量(g/cm3)を規定することで、非水電解液の注液量が異なる様々なリチウムイオン二次電池について、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができる。
具体的には、図6に示す結果より、LiPO22の添加量を、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合とすることで、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができるリチウムイオン二次電池を製造することができるといえる。詳細には、上記演算式(A)により正極合材層の空孔体積を求め、その正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合でLiPO22を含有する非水電
解液を用いて電池を作製(組み付け)し、その後、活性化工程において当該電池を活性化させることで、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することができるといえる。
このように、非水電解液が入り得る正極合材層の空孔体積に応じて、LiPO22の添加量を規定する(具体的には、LiPO22の添加量を、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合とする)ことで、仕様が異なる様々なリチウムイオン二次電池について、低温反応抵抗を極小値に近づけることができるLiPO22量範囲が一定範囲に限定され、非水電解液中のLiPO22の添加量を低温反応抵抗を極小値に近づけることができる適正値に簡単に管理することが可能となる。
また、LiPO22の添加量が、正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下の割合とされることで、LiPO22の添加量を規定する指標に幅がある。そのため、LiPO22の添加量の管理が簡単になり、製造コストを抑えることができる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
1 リチウムイオン二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電極体
6 電池ケース
8 非水電解液
21 正極合材層
25 正極活物質
31 負極合材層
35 負極活物質

Claims (2)

  1. 正極合材層を備える正極を有する電極体、及び、下記の式(1)で表される化合物を含有する非水電解液を、電池ケース内に収容した電池を作製する組み付け工程と、
    上記電池を活性化させる活性化工程と、を備える
    リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    上記組み付け工程では、上記非水電解液として、上記化合物の添加量を、上記正極合材層の空孔体積1cm3当たり0.024g以上0.039g以下とした非水電解液を用いるリチウムイオン二次電池の製造方法。
    Figure 2013098099
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記非水電解液の溶媒は、
    20〜40体積%のエチレンカーボネートと、
    ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの少なくともいずれかと、からなる
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
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