図1には、本発明の第1実施形態の燃料供給装置12の概略構成が示されている。また、図2〜図4には、燃料供給装置12が部分的に拡大して示されている。図2〜図4では、図示の便宜上、燃料を省略しているが、実際には、燃料タンク本体14内に燃料GSが適宜存在している。
この燃料供給装置12は、燃料GSが収容される燃料タンク本体14を有している。本実施形態の燃料タンク本体14は、幅方向の両側の2つの低位置部34A、34Bと、この低位置部34A、34Bの間において、低位置部34A、34Bよりも相対的に高い位置に形成された高位置部36と、を有している。すなわち燃料タンク本体14は、単一の高位置部36に対し、その両側に低位置部34A、34Bが形成されており、全体として第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sを有する鞍型燃料タンクとなっている。
なお、本実施形態では、第一燃料収容部38Mが第二燃料収容部38Sよりも大型に形成された例を挙げているが、これらの相対的な容積の大小関係は限定されず、第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sとが同程度の容積を有していてもよい。以下において、特に第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sとを区別する必要がない場合は、単に燃料収容部38として説明する。
第一燃料収容部38M側の上部には図示しないインレットパイプが備えられており、第一燃料収容部38Mへ給油できるようになっている。第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sの間(高位置部36の下方)には、自動車を構成する部材、たとえばトランスアクスルなどが配置されており、空間の効率的な利用が図られている。
第一燃料収容部38Mには第一サブカップ15Mが配置され、第二燃料収容部38Sには第二サブカップ15Sが配置されている。第一サブカップ15Mと第二サブカップ15Sとは、第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sの容量に対応させて大きさが異なっているが、本質的な構成は略同一とされている。以下、特に第一サブカップ15Mと第二サブカップ15Sとを区別する必要がない場合は、サブカップ15として説明する。
サブカップ15は、燃料フィルタ16を有している。以下において、第一サブカップ15Mの第一燃料フィルタ16Mと、第二サブカップ15Sの第二燃料フィルタ16Sとを必要に応じて区別するが、区別の必要がないときは、単に燃料フィルタ16として説明する。
燃料フィルタ16は、その外側から内側へと燃料GSを通過させるが、その際に燃料中の異物を除去し、燃料フィルタ16の内部には異物が流入しないようにする作用を有する材料(たとえば織布、不織布、多孔質性樹脂など)で略袋状に形成されている。そして、燃料フィルタ16を通過した燃料GSを、その内部に貯留させることができる。
さらに、燃料フィルタ16の少なくとも一部が燃料収容部38内の燃料に浸漬されている状態では、燃料フィルタ16の表面に、燃料GSによる油膜LMが形成されて維持されるようになっている。
本実施形態では特に、2枚の同形状(たとえば四角形状等の多角形状であっても良いし、円形や楕円形などでも良い)の不織布をこれらの周囲でのみ接合し、上面濾布16Uと下面濾布16Lがそれぞれ上下に凸となるように湾曲された形状としている。したがって、上面濾布16Uと下面濾布16Lとの間に、燃料GSを収容するための空間が構成されている。
上面濾布16U及び下面濾布16Lの材質は、上記した不織布に限定されず、織布やスポンジ状の部材、メッシュ状の部材等であっても問題ない。
燃料フィルタ16(特に下面濾布16L)は、燃料タンク本体14の底壁14Bに沿って略平行になるように配置されており、図1に矢印F1で示すように、底壁14Bとの隙間を通じて燃料GSを燃料フィルタ16内に流入させることができる。しかも、燃料フィルタ16を底壁14Bに沿って延在させており、燃料収容部38内の燃料GSが少なくなったときや、偏ったとき等であっても、より確実に燃料フィルタ16の一部が燃料GSに浸漬された状態を維持できるようにしている。
本実施形態では特に、上面濾布16Uと下面濾布16Lとは異なる材質とされており、上面濾布16Uの圧力損失が下面濾布16Lの圧力損失よりも大きくなるように、これら濾布の材質が選択されている。
ここでいう「圧力損失」は、上面濾布16Uあるいは下面濾布16Lを燃料GSが通過するとき(たとえば後述する燃料ポンプ本体42の駆動時)の、通過前後の圧力差である。したがって、下面濾布16Lは上面濾布16Uよりも相対的に燃料GSを通過させ易くなっている。
本実施形態では、このように圧力損失に差を設けるために、上面濾布16Uは、下面濾布16Lよりも不織布の空隙の総面積が小さい構造とされている。ただし、上面濾布16Uと下面濾布16Lとの圧力損失とは同程度であってもよい。
上面濾布16Uと下面濾布16Lとの間には、空間構成部材46が配置されている。空間構成部材46は、上下に間隔をあけて配置された上骨部材46Uと下骨部材46Lを有している。この空間構成部材46により、第一サブカップ15Mの第一燃料フィルタ16Mでは、上面濾布16Uが上に凸に湾曲し、下面濾布16Lが下に湾曲する形状を維持することで、これらの間に、燃料GSを貯留するための空間が確実に維持できるようになっている。また、特に第二サブカップ15Sの第二燃料フィルタ16S内では、上骨部材46Uから下方に延出された支柱46Pにより、上骨部材46Uと下骨部材46Lとの広くあいている。これにより、上面濾布16Uと下面濾布16Lの間には、第一サブカップ15Mの第一燃料フィルタ16Mよりも大きな間隔が構成されている。
燃料フィルタ16の上方には、貯留部材18が設けられている。以下において、第一サブカップ15Mの第一貯留部材18Mと第二サブカップ15Sの第二貯留部材18Sとを必要に応じて区別するが、区別の必要がないときは、単に貯留部材18として説明する。
図3及び図4(A)に示すように、本実施形態の貯留部材18は、燃料フィルタ16の外縁部分から垂直に立設された筒状の側壁筒20を有している。側壁筒20の下面は、燃料フィルタ16の外周部分に接合(たとえば溶着)されている。サブカップ15は、燃料フィルタ16と貯留部材18とで構成されている。そして、側壁筒20が貯留部材18の周縁部となっている。
本実施形態では、側壁筒20の下部に接合片26が形成されている。接合片26は、側壁筒20と燃料フィルタ16との接合面積を増大させて接合強度を向上させると共に、下面濾布16Lを通じて燃料フィルタ16内に燃料GSが流入するときの燃料フィルタ16の上方への移動を抑制する効果を有している。なお、この接合片26は省略することも可能である。
さらに、側壁筒20の上端からは、平面視にて中央に向かって、蓋板部22が延出されている。そして、側壁筒20と蓋板部22に加えて、燃料フィルタ16の上面濾布16Uによって、貯留部材18が構成されている。換言すれば、貯留部材18の底部が、上面濾布16Uによって構成されていることになる。
貯留部材18内には、燃料フィルタ16の上方において燃料GSを貯留することが可能とされる。蓋板部22の中央部には、蓋板部22を厚み方向に貫通する流入孔24が形成されている。図3に矢印F3で示すように、この流入孔24を通って、第一燃料収容部38M及び第二燃料収容部38Sの燃料GSが、それぞれ第一貯留部材18M及び第二貯留部材18Sの内部に流入する。
図1から分かるように、第一燃料収容部38Mの第一サブカップ15Mの上方には燃料ポンプモジュール32が備えられている。燃料ポンプモジュール32は、燃料ポンプ本体42を有している。燃料ポンプ本体42からは下方に向かって燃料吸引配管44Aが延出されている。燃料吸引配管44Aの下端は、第一貯留部材18Mの流入孔24に挿通され、さらに第一燃料フィルタ16Mの上面濾布16Uを貫通されて、燃料フィルタ16内に開口されている。
図3から分かるように、第一燃料収容部38Mの第一サブカップ15Mでは、流入孔24の内寸は、燃料吸引配管44Aの外径よりも大きくされている。このため、流入孔24の孔縁は燃料吸引配管44Aとは非接触となっており、これらの隙間28を通じて、矢印F2で示したように、第一貯留部材18Mの内部に燃料GSが流入可能となっている。
また、燃料ポンプ本体42から上方には燃料吐出配管44Bが延出されている。燃料吐出配管44Bは、燃料タンク本体14の上壁14Tを貫通して外部に延出されている。燃料ポンプ本体42の駆動により、燃料吸引配管44Aで燃料を吸引し、燃料吐出配管44Bから、図示しないエンジンに燃料GSを供給できるようになっている。本実施形態の燃料送出配管44は、燃料吸引配管44Aと燃料吐出配管44Bとを含んで構成されている。
燃料吐出配管44Bの途中には、プレッシャレギュレータ48が配置されている。プレッシャレギュレータ48は、燃料ポンプ本体42から送出される燃料GSの圧力が所定範囲となるように圧力調整して、燃料GSを外部(機関等)に送出する。
プレッシャレギュレータ48には、リターン配管50の上端が接続されている。上記した圧力調整時に余剰となった燃料GSを、リターン燃料として、リターン配管50を通じて燃料タンク本体14内に戻す。特に本実施形態では、第一燃料収容部38Mの第一貯留部材18M内にリターン配管50の下端が位置しており、リターン燃料をこの第一貯留部材18M内に戻すようになっている。
燃料吸引配管44Aの中間部分には合流部44Jが設定されている。合流部44Jと第二燃料収容部38Sの第二燃料フィルタ16S内とは、燃料移送配管52で接続されている。すなわち、燃料ポンプ本体42の燃料吸込口(図示省略)に、燃料吸引配管44Aの一部を介して、燃料移送配管52が接続されている。
このように、燃料ポンプ本体42の燃料吸込口に燃料移送配管52が接続されているので、燃料ポンプ本体42の駆動により、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSを燃料移送配管52を通じて吸引できる。そして、吸引した燃料GSを、合流部44Jから燃料吸引配管44Aに合流させる。したがって、第二燃料収容部38Sの第二燃料フィルタ16S内の燃料GSも、燃料吐出配管44Bから外部に送出することができる。
図4(A)に示すように、第二燃料収容部38Sの第二貯留部材18Sにも、流入孔24が形成されている。流入孔24の内寸は、燃料移送配管52の外径よりも大きくされている。このため、流入孔24の孔縁は燃料移送配管52は非接触となっており、これらの隙間28を通じて第二貯留部材18Sの内部に燃料GSが流入可能となっている。
燃料吸引配管44A(特に、燃料吸引配管44Aの下端から合流部44Jまでの部分)の圧力損失は、燃料移送配管52の圧力損失よりも大きく設定されている。換言すれば、燃料吸引配管44Aにおける燃料GSの流動抵抗が、燃料移送配管52における燃料の流動抵抗よりも大きくなっている。したがって、燃料ポンプ本体42の駆動により、第一燃料フィルタ16Mと第二燃料フィルタ16Sの双方から燃料GSを吸引可能な場合に、まず、第二燃料フィルタ16S内から優先的に燃料GSが吸引される。
燃料移送配管52には、第二燃料フィルタ16S内の部分に、フロートバルブ54が配置されている。フロートバルブ54は、図2(A)にも詳細に示すように、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSに浮く比重とされたフロート部54Fと、このフロート部54Fの上部に配置された円板状のバルブ部54Bとを有している。バルブ部54Bとフロート部54Fとは連結部54Cで連結されている。
燃料移送配管52には弁座58が形成され、弁座58の中央に貫通孔56が形成されている。連結部54Cが挿通されており、弁座58の上方にバルブ部54Bが位置している。図2(A)及び図6(A)に示すように、第二燃料フィルタ16S内に所定量を超える燃料GSが存在している状態では、フロート部54Fが燃料GSに浮くため、バルブ部54Bは弁座58から離れる。フロートバルブ54は開弁されるので、第二燃料フィルタ16S内から燃料移送配管52に燃料が移動可能となる。
なお、図4(A)及び(B)に詳細に示すように、フロート部54Fの上面には複数のリブ60が形成されている。リブ60は、フロート部54Fが浮遊しても弁座58の下面に密着することがないようにしている。これにより、フロート部54Fと弁座58との間に、燃料GSが通過可能な隙間が生じる。複数のリブ60は互いに離間しており、フロート部54Fが上昇した状態では、リブ60の隙間を燃料GSが移動する。
これに対し、図8(A)に示すように、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSが所定量以下の場合(燃料GSが存在していない場合も含む)には、フロート部54Fが降下するため、バルブ部54Bが弁座58の上面に密着する。フロートバルブ54が閉弁されるので、第二燃料フィルタ16S内の気体成分は、燃料移送配管52に移動しなくなる。
なお、この「所定量」とは、第二燃料フィルタ16S内に気体成分が存在してしまっている場合において、この気体成分が燃料移送配管52に移動する可能性がある閾値をいう。
第二燃料収容部38Sの空間構成部材46には、筒状の案内部材62が形成されている。案内部材62は、フロート部54Fを周囲から取り囲んでおり、フロート部54Fが上下動するときに、不用意に横方向へ移動しないように上下に案内している。案内部材62は連通孔62Hが形成されており、案内部材62の外側から内側への燃料GSの移動が可能とされている。
図1に示すように、燃料ポンプ本体42には、燃料ポンプ本体42内の燃料GSの減圧沸騰等で生じたベーパ(気体成分)を、燃料(液体成分)と共に排出するベーパ排出口(図示省略)が設けられている。このベーパ排出口には、ベーパ排出管64の一端が接続されている。本実施形態では、ベーパ排出管64は、本発明の戻し配管の一例である。
ベーパ排出管64の他端は、図4(A)にも詳細に示すように、第二貯留部材18S内を通り、上面濾布16Uを貫通して、第二燃料フィルタ16Sの内部で開口している。したがって、燃料ポンプ本体42からの燃料(気体成分を含む)は、第二燃料フィルタ16S内に排出される。換言すれば、ベーパ排出管64の他端は、その周囲を第二燃料フィルタ16Sの濾布(上面濾布16U又は下面濾布16L)によって囲まれていることになる。
図4に詳細に示すように、第二燃料フィルタ16S内の空間構成部材46の上骨部材46Uには、部分的に下方へ突出させた下凸部46Tが形成されている。下凸部46T内に、ベーパ排出管64の他端が収容されている。換言すれば、ベーパ排出管64の下端は、下凸部46Tと上面濾布16Uの一部とで構成される閉空間CSに差し込まれている。
燃料移送配管52の下端近傍からは、挟持片52Nが径方向外側へ延出されている。挟持片52Nは、燃料移送配管52の周囲及びベーパ排出管64の周囲において、上骨部材46Uとの間で、部分的に上面濾布16Uを挟持している。
図1に示すように、本実施形態では、高位置部36の上方において、ベーパ排出管64は燃料移送配管52よりも上方に位置している。また、燃料移送配管52の中間部分とベーパ排出管64の中間部分とは接近して配置されており、この接近部分66(燃料移送配管52の最も高い位)において、燃料移送配管52とベーパ排出管64とが連通部74で連通されている。
連通部74には、ジェットポンプ68が設けられている。図2(B)に詳細に示すように、ジェットポンプ68は、ベーパ排出管64を接近部分66において局所的に拡径した拡径部70を備えている。拡径部70内では、この拡径部70よりも燃料ポンプ本体42側のベーパ排出管64が延出され、延出端には絞り部72が形成されている。
図6(B)にも示すように、ベーパ排出管64を矢印F5方向に流れる流体(ベーパ及び燃料)が、絞り部72から拡径部70に達すると、拡径部70内に負圧が生じる。この負圧が、連通部74を通じて燃料移送配管52に作用するため、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSを吸引するにあたって、燃料ポンプ本体42の吸引力だけでなく、この負圧による吸引力も第二燃料フィルタ16S内の燃料GSに作用し、第二燃料フィルタ16S内から第一貯留部材18Mへの燃料GSの流れを生じさせる。
また、燃料移送配管52内を矢印F6方向に移送される燃料GSに気泡等の気体成分が存在していても、ベーパ排出管64が燃料移送配管52よりも上方に位置しているので、気泡等を連通部74を通じてベーパ排出管64に移動させることができる。ベーパ排出管64に移動した気泡は、ベーパ排出管64を通じて、閉空間CS内(第二燃料フィルタ16S内)に排出される。ただし、第二燃料フィルタ16S内の気体の量は、燃料の量と比較すれば僅かであり、また、経時的に気体は第二燃料フィルタ16Sを透過して第二燃料フィルタ16Sの外部に出る。このため、第二燃料フィルタ16S内に気体が排出されても、燃料移送配管52による燃料GSの移送には影響しない。
特に、本実施形態では、燃料移送配管52とベーパ排出管64との接近部分を、燃料移送配管52の最も高い位置に設け、この部分に連通部74を配置している。すなわち、ジェットポンプ68が、燃料移送配管52の最も高い位置に設けられていることになる。このため、燃料移送配管52内の気泡を、効果的にベーパ排出管64に移動させることができる。
次に、本実施形態の燃料供給装置12の作用を説明する。
図1に示すように、燃料タンク本体14内に十分な量の燃料GSが存在している状態(たとえば、燃料液面LSが高位置部36よりも高い状態)では、第一燃料収容部38M及び第二燃料収容部38Sのいずれにおいても、隙間28を通じて燃料GSが貯留部材18内に流入するため、貯留部材18内には燃料GSが貯留されている。また、この状態では、図2(A)から分かるように、第二サブカップ15Sの第二燃料フィルタ16S内にも所定量を超える燃料GSが存在しているため、フロートバルブ54が上昇している。これにより、矢印F7で示すように、燃料フィルタ16内から燃料移送配管52への燃料GSの移動が可能になっている。
ここで、燃料ポンプ本体42が駆動されると、第一燃料フィルタ16M内の燃料GSが、矢印F0で示すように、燃料吸引配管44Aを通じて吸い上げられる。これと共に、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSが、矢印F6で示すように、燃料移送配管52から吸い上げられ、合流部44J及び燃料吸引配管44Aを経て移送される。そして、燃料吐出配管44Bから、図示しない機関等に燃料GSが供給される。第一サブカップ15M及び第二サブカップ15Sのいずれにおいても、燃料フィルタ16により、燃料中の異物が除去される。
本実施形態では、特に、下面濾布16Lの圧力損失が上面濾布16Uの圧力損失よりも低く(小さく)なっているので、実質的に下面濾布16Lをより多くの燃料GSが通過して、矢印F2で示すように、燃料フィルタ16内に流入する。また、貯留部材18内には、矢印F3で示すように、隙間28を通じて燃料タンク本体14内の燃料GSが流入する。
このとき、燃料フィルタ16の少なくとも一部が燃料中に浸漬されていれば、表面の油膜LMが維持されている。そして、燃料の送出に必要なエネルギーは、油膜の表面張力により、(気相からの気体吸引)>(液相からの燃料吸引)の関係となるため、燃料フィルタ16内には液体成分の燃料GSのみが吸引されて流入する。そして、これらの状態では、燃料ポンプモジュール32の駆動により、燃料フィルタ16内の燃料GSを外部に送出できる。
また、本実施形態では、燃料吸引配管44Aの圧力損失が、燃料移送配管52の圧力損失よりも大きく設定されている。このため、燃料ポンプ本体42の駆動により、第一燃料フィルタ16M内よりも、第二燃料フィルタ16S内から優先的に燃料GSが吸引される。このように、第二サブカップ15S内の燃料GSを第一サブカップ15M内の燃料GSよりも優先的に外部に送出することで、第二燃料収容部38S内よりも、第一燃料収容部38M内により確実に燃料GSを保持できる。
ここで、車両の坂道走行により燃料タンク本体14が傾斜した場合や、加減速時、旋回時等で燃料タンク本体14にGが作用した場合を考える。この場合には、燃料タンク本体14の燃料GSが一方に偏ると共に燃料液面LSが傾斜するような液面変動が生じることがある(燃料液面傾斜時)。本実施形態の燃料供給装置12では、第一燃料収容部38Mに、相対的に多くの燃料GSが残っているので、燃料液面傾斜時において燃料切れの発生を防止するより効果が高くなる。
上記したように、第二燃料収容部38Sから燃料GSが優先的に送出されると、図5に示すように、第二燃料収容部38Sの燃料量が第一燃料収容部38Mの燃料量よりも少なくなることが想定される。しかしながら、第二燃料フィルタ16Sの少なくとも一部(本実施形態では下面濾布16L)が燃料GSに浸漬されていれば、第二燃料フィルタ16Sの表面に、燃料による油膜LMが形成され維持されている。
燃料ポンプ本体42の駆動時には、燃料ポンプ本体42内での燃料GSの減圧沸騰等によりベーパ(燃料の気体成分)が発生することがある。このベーパを含む燃料は、図5及び図6(B)に矢印F5で示すように、ベーパ排出口(図示省略)からベーパ排出管64を経て、第二燃料フィルタ16S内に排出される。特に、本実施形態では、閉空間CSにベーパ排出管64の他端が差し込まれているため、第二燃料フィルタ16S内、特に閉空間CS内には、燃料GSが貯留されている可能性が高い。なお、閉空間CS内の燃料GSの一部は上面濾布16Uを通じて、第二貯留部材16S内に流出する。また、閉空間CS内の気体は、経時的に第二燃料フィルタ16Sを透過して第二燃料フィルタ16Sの外部に出る。
第二貯留部材18Sの底部は、燃料フィルタ16の上面濾布16Uによって構成されている。すなわち、本実施形態では、第二貯留部材18S内に燃料が存在していれば、第二燃料フィルタ16Sの一部が燃料GSに浸漬された状態が維持されていることになる。これにより、第二燃料フィルタ16Sの表面に形成された油膜LMが、引き続き維持されている。したがって、第二サブカップ15Sにおいて、第二燃料フィルタ16S内の油膜LMが切れることが抑制され、貯留部材18内の燃料GSが流入する。
また、たとえば燃料液面傾斜時に燃料GSが第一燃料収容部38Mから第二燃料収容部38Sへ移動したような場合であっても、第二燃料収容部38Sの第二燃料フィルタ16Sから燃料ポンプ本体42までの経路を液密状態(気体成分が存在していない状態)に維持することができる。気体成分が存在していると、燃料ポンプ本体42の駆動時に気体成分を排出する必要が生じるため、燃料の送出に長い時間を要する(応答性が低下する)おそれがあるが、本実施形態では、燃料ポンプ本体42の駆動から短時間で燃料GSを外部に送出できる(燃料送出の応答性が高い)。
また、たとえば、この燃料供給装置12が搭載された自動車の初期状態(工場出荷時等)では、図7に示すように、第一燃料収容部38Mにのみ燃料GSが存在し、第二燃料収容部38S(第二サブカップ15Sの内部(燃料フィルタ16を含む))には燃料GSが存在していない状態となる可能性もある。
この状態で燃料ポンプ本体42が駆動されると、第一燃料フィルタ16M内には燃料GSが存在しているので、この燃料GSを外部に送出できる。しかも、燃料ポンプ本体42内のベーパを含む燃料GSが、ベーパ排出口(図示省略)からベーパ排出管64を矢印F5で示すように流れ、閉空間CS内に貯留される。そして、閉空間CS内の燃料の一部が第二貯留部材16S内に流出する。これにより、第二燃料フィルタ16S内にも短時間で燃料GSが貯留され、第二燃料フィルタ16Sの表面に短時間で油膜LMが形成される。このため、第二燃料フィルタ16Sから燃料移送配管52を通じての気体成分の吸込を抑制できる。
特に、本実施形態では、燃料移送配管52には、第二燃料フィルタ16S内の部分に、フロートバルブ54が配置されている。第二燃料フィルタ16S内に所定量を超える燃料GSが存在している状態では、フロートバルブ54は開弁されているが(図2(A)及び図6(A)参照)、第二燃料フィルタ16S内の燃料GSが所定量以下の状態では、図8(A)に示すように、フロートバルブ54は降下しており、燃料移送配管52の下端部分は閉じられる。このため、上記した初期状態等において、第二燃料フィルタ16Sから燃料移送配管52を通じて気体成分を吸引してしまうことを、より確実に抑制できる。
また、フロートバルブ54は、燃料移送配管52において、第二燃料フィルタ16S内の最下端部に設けられている。フロートバルブ54が最下端部以外の位置に設けられていると、最下端部とフロートバルブ54の間の部分(燃料移送配管52の一部)に気体成分が存在し、これがいわゆる死ガスとなって燃料ポンプ本体42に送られてしまうおそれがあるが、本実施形態では、このような死ガスの発生も抑制できる。
なお、このように燃料移送配管52内に気体成分が流入することを抑制していても、上記した初期状態(工場出荷時)や、第二燃料収容部38Sの燃料が極めて少なくなった場合には、わずかな気泡等の気体成分が燃料移送配管52に流入することも想定される。
本実施形態では、燃料移送配管52にジェットポンプ68を設けており、燃料移送配管52内の気泡等を、連通部74を通じてベーパ排出管64に移動させることができる(ベーパ排出管64に移動した気泡は第二燃料フィルタ16S内に排出される)。これにより、第二燃料収容部38Sから気体成分が燃料ポンプ本体42に送られることを抑制できるため、燃料を外部に送出するときの応答性が高くなる。
特に、連通部74は、燃料移送配管52の最も高い位置に配置されている。このため、燃料移送配管52内の気泡を、効果的にベーパ排出管64に移動させることができる。
ここで、燃料ポンプ本体42の停止時(たとえば車両の駐車中や、ハイブリッド車におけるエンジン停止時等)を考えると、ベーパ排出管64の他端が、たとえば第二燃料フィルタ16Sの上方に位置している構成では、ベーパ排出管64の他端が燃料GSに浸漬されない状態となるため、気体が浸入すると共に、ベーパ排出管64内の燃料が流下してしまうおそれがある。浸入した気体がさらに、連通部74から燃料移送配管52に流入すると、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、燃料移送配管52内に燃料GSを吸い上げるのに時間を要する。燃料移送配管52内気体によって燃料圧力が低下するため、エンジンの始動に長い時間を要するおそれがある。
本実施形態では、ベーパ排出管64の他端が、第二燃料フィルタ16S内(特に閉空間CS内)に位置している。このため、燃料ポンプ本体42の停止時においても、ベーパ排出管64の他端が燃料GSに浸漬された状態を維持でき、ベーパ排出管64からの燃料GSの流下及び気体の浸入を抑制できる。燃料移送配管52内にも気体が流入しないので、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、燃料圧力の低下を抑制し、短時間でエンジンを始動させることができる。
しかも、本実施形態では、ベーパ排出管64の他端からの気体の浸入を抑制するために、ベーパ排出管64の他端を閉空間CS内(第二燃料フィルタ16S内)に開口すれば十分であり、あらたな部材を必要としない。
なお、本発明では、上記説明から分かるように、燃料GSを外部に送出するための燃料送出配管44の一部から、燃料GSの一部を第二燃料フィルタ16S内に排出するものである。したがって、この本質的構成に対し、上記した各種構成(たとえば、燃料移送配管52に開閉弁(フロートバルブ54)を設ける構成、燃料吸引配管44Aの圧力損失を、燃料移送配管52の圧力損失よりも大きく設定する構成、燃料移送配管52に、ベーパ排出管64からの負圧が作用するジェットポンプ68を設ける構成等)を適切に(全てである必要はない)組み合わせることが可能である。
また、上記説明では、燃料ポンプ本体42からのベーパを含む燃料GSを排出するベーパ排出管64を、第二燃料フィルタ16S内に排出する構成、すなわち、ベーパ排出管64が、本発明の戻し配管を構成している例を挙げているが、この構成に限定されるものではない。
たとえば、図9に示す第2実施形態の燃料供給装置92のように、プレッシャレギュレータ48からのリターン燃料を排出するためのリターン配管50の先端を第二燃料フィルタ16S内に位置させてもよい。この変形例の構成では、リターン燃料が第二燃料フィルタ16S内に貯留され、ベーパ排出管64からのベーパを含んだ燃料GSが、ベーパ排出管64により、第1貯留部材18M内に排出される。すなわち、リターン配管50が、本発明の戻し配管を構成している。
なお、第2実施形態の燃料供給装置92は、上記した以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一構成とされているので、詳細な説明を省略する。
図10には、本発明の第3実施形態の燃料供給装置112の概略構成が示されている。また、図11には、燃料供給装置112が部分的に拡大して示されている。第3実施形態の燃料供給装置112において、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第3実施形態の燃料供給装置112では、ベーパ排出管64の他端は上面濾布16Uを貫通しておらず、第二燃料フィルタ16Sの上方に位置している。
ベーパ排出管64の他端は、油膜フィルタ114で覆われている。油膜フィルタ114は、燃料フィルタ16を構成する上面濾布16Uや下面濾布16Lと同様の材料(たとえば織布、不織布、多孔質性樹脂、メッシュ状の部材等など)で構成されている。油膜フィルタ114の表面に燃料が付着していない状態では油膜が形成されず、油膜フィルタ114を気体が通過可能である。これに対し、油膜フィルタ114の表面に燃料による油膜が形成されていると、気体の通過は阻止される。
第3実施形態の燃料供給装置112は、上記以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成とされている。
したがって、第3実施形態の燃料供給装置112においても、第1実施形態の燃料供給装置12と略同一の作用効果を奏するが、ベーパ排出管64によって、燃料ポンプ本体42内の燃料GSの減圧沸騰等で生じたベーパが燃料と共に排出されると、油膜フィルタ114に、この燃料によって油膜が形成される。
このように、第3実施形態の燃料供給装置112では、ベーパ排出管64の他端に油膜が形成されるので、ベーパ排出管64への気体の流入を抑制することができる。そして、燃料移送配管52内への気体の流入をより効果的に抑制でき、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、短時間でエンジンを始動させることができる。
しかも、第3実施形態の燃料供給装置112では、ベーパ排出管64の他端に油膜フィルタ114を設けるだけの簡単な構造で、気体流入抑制手段を構成し、ベーパ配管64への気体の流入を抑制できる。
図12には、本発明の第4実施形態の燃料供給装置122の概略構成が示されている。また、図13には、燃料供給装置122が部分的に拡大して示されている。第4実施形態の燃料供給装置122において、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第4実施形態の燃料供給装置122においても、第3実施形態の燃料供給装置112と同様に、ベーパ排出管64の他端は上面濾布16Uを貫通しておらず、第二燃料フィルタ16Sの上方に位置している。
ベーパ排出管64の他端側には、その内部に一方向弁124が設けられている。一方向弁124は、ベーパ排出管64に他端側から挿入される円筒状の筒体126を有している、筒体126の外周面はベーパ排出管64の内周面に密着している。
筒体126の上底128の中央には、貫通孔128Hが形成されている。同様に、筒体126の下底130の中央にも貫通孔130Hが形成されている。筒体126の内部には球状の弁本体132が上下に移動可能に収容されている。弁本体132が上昇して上底128に密着すると、貫通孔128Hが閉塞される(一方向弁124は閉弁状態となる)。弁本体132が下降して上底128から離れると、貫通孔128Hが開放される。
筒体126の下底130と弁本体132との間には、弁本体132を上底128に向かって付勢するコイルバネ134が収容されている。コイルバネ134の付勢力は、燃料ポンプ本体42が停止されてペーパ排出管64内を燃料が流れていない状態では、弁本体132を上底128に押し付ける(閉弁状態を維持する)。そして、燃料ポンプ本体42の駆動によりベーパ排出管64内を燃料が流れると、この燃料に押されて弁本体132が上底128から離れる(開弁される)ように、所定の付勢力に設定されている。
第4実施形態の燃料供給装置122は、上記以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成とされている。
したがって、第4実施形態の燃料供給装置122においても、第1実施形態の燃料供給装置12と略同一の作用効果を奏するが、ベーパ排出管64の他端の周囲に気体が存在していても、燃料ポンプ本体42が駆動されていない状態では、一方向弁124が閉弁状態を維持するので、この気体がベーパ排出管64の他端からベーパ排出管64内に流入することが抑制される。そして、燃料移送配管52内への気体の流入をより効果的に抑制でき、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、短時間でエンジンを始動させることができる。
しかも、第4実施形態の燃料供給装置122においても、第3実施形態の燃料供給装置122と同様に、ベーパ排出管64の他端に一方向弁124を設けるだけの簡単な構造で、気体流入抑制手段を構成し、ベーパ配管64への気体の流入を抑制できる。
さらに、第3実施形態の燃料供給装置112及び第4実施形態の燃料供給装置122では、ベーパ排出管64の他端を第二燃料フィルタ16S内に開口する必要がないので、ベーパ排出管64の他端を配設する位置の自由度が高い。たとえば、図10及び図12に示した例では、ベーパ排出管64は第二貯留容器18S内で開口しており、第二貯留容器18S内に燃料ポンプ本体42からの燃料を戻すことが可能である。そしてこれにより、第二貯留容器18S内に燃料GSが存在している可能性を高くして、第二燃料フィルタ16Sに燃料GSが接触する可能性を高くしている。
これに代えて、たとえば、ベーパ排出管64の他端を、第二貯留容器18Sの外部、すなわち、第二燃料収容部38S内に配置し、燃料ポンプ本体42からの燃料GSを第二燃料収容部38Sに戻すようにすることも可能である。この構成であっても、第二燃料収容部38Sに燃料GSが戻されるので、このように燃料GSが戻されない構成と比較すると、第二燃料フィルタ16Sが燃料GSに浸漬された状態を維持しやすくなる。
ベーパ排出管64の他端を、第一燃料収容部38M内に配置してもよい。この構成では、燃料ポンプ本体42からの燃料GSが第一燃料収容部38Mに戻されるので、このように燃料GSが戻されない構成と比較すると、第一燃料フィルタ16Mが燃料GSに浸漬された状態を維持しやすくなる。
図14には、本発明の第5実施形態の燃料供給装置142が、第二燃料フィルタ16S及びその近傍で拡大して示されている。第5実施形態の燃料供給装置142では、ベーパ排出管64の他端が、第1実施形態の燃料供給装置12と同様に、第二燃料フィルタ16S内に開口されている。
また、ベーパ排出管64の他端は、油膜フィルタ114で覆われている。油膜フィルタ114は、第3実施形態と同様に、燃料フィルタ16を構成する上面濾布16Uや下面濾布16Lと同様の材料(たとえば織布、不織布、多孔質性樹脂、メッシュ状の部材等など)で構成されている。油膜フィルタ114の表面に燃料が付着していない状態では油膜が形成されず、油膜フィルタ114を気体が通過可能である。これに対し、油膜フィルタ114の表面に燃料による油膜が形成されていると、気体の通過は阻止される。
第5実施形態の燃料供給装置142は、上記した以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成とされている。
したがって、第5実施形態の燃料供給装置142においても、第1実施形態の燃料供給装置12と同様の作用効果を奏するが、特に、第5実施形態の燃料供給装置142では、閉空間CS内にわずかに気体が存在していても、油膜フィルタ114に油膜が形成されていれば、この気体がベーパ排出管64の他端からベーパ排出管64内に流入することが抑制される。燃料移送配管52内への気体の流入をより効果的に抑制でき、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、短時間でエンジンを始動させることができる。
図15には、本発明の第6実施形態の燃料供給装置152が、第二燃料フィルタ16S及びその近傍で拡大して示されている。第6実施形態の燃料供給装置152では、第1実施形態や第5実施形態と同様に、ベーパ排出管64の他端が、第1実施形態の燃料供給装置12と同様に、第二燃料フィルタ16S内に開口されている。
また、第6実施形態では、ベーパ排出管64の他端側において、ベーパ排出管64の内部に一方向弁124が設けられている。
一方向弁124は、第4実施形態と同様に、ベーパ排出管64に他端側から挿入される円筒状の筒体126を有している、筒体126の外周面はベーパ排出管64の内周面に密着している。
筒体126の上底128の中央には、貫通孔128Hが形成されている。同様に、筒体126の下底130の中央にも貫通孔130Hが形成されている。筒体126の内部には球状の弁本体132が上下に移動可能に収容されている。弁本体132が上昇して上底128に密着すると、貫通孔128Hが閉塞される(一方向弁124は閉弁状態となる)。弁本体132が下降して上底128から離れると、貫通孔128Hが開放される。
筒体126の下底130と弁本体132との間には、弁本体132を上底128に向かって付勢するコイルバネ134が収容されている。コイルバネ134の付勢力は、燃料ポンプ本体42が停止されてペーパ排出管64内を燃料が流れていない状態では、弁本体132を上底128に押し付ける(閉弁状態を維持する)。そして、燃料ポンプ本体42の駆動によりベーパ排出管64内を燃料が流れると、この燃料に押されて弁本体132が上底128から離れる(開弁される)ように、所定の付勢力に設定されている。
第6実施形態の燃料供給装置152は、上記した以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成とされている。
したがって、第6実施形態の燃料供給装置152においても、第1実施形態の燃料供給装置12と同様の作用効果を奏するが、特に、第6実施形態の燃料供給装置152では、閉空間CS内にわずかに気体が存在していても、燃料ポンプ本体42が駆動されていない状態では、一方向弁124が閉弁状態を維持するので、この気体がベーパ排出管64の他端からベーパ排出管64内に流入することが抑制される。燃料移送配管52内への気体の流入をより効果的に抑制でき、次に燃料ポンプ本体42を駆動したときに、短時間でエンジンを始動させることができる。
上記した第3実施形態の構造(ベーパ排出管64の他端が第二燃料フィルタ16Sの外部に位置すると共に油膜フィルタ114が設けられている)や、第4実施形態の構造(ベーパ排出管64の他端が第二燃料フィルタ16Sの外部に位置すると共に一方向弁124が設けられている)を、第2実施形態と同様の燃料供給装置の構成(プレッシャレギュレータからの戻し配管の他端が第二燃料フィルタ内で開口している)に適用してもよい。
さらに、上記した第5実施形態の油膜フィルタ114や、第6実施形態の一方向弁124を、第2実施形態と同様の燃料供給装置の構成(プレッシャレギュレータからの戻し配管の他端が第二燃料フィルタ内で開口している)に適用してもよい。加えて、ベーパ排出管64の他端に油膜フィルタ114と一方向弁124の双方を備えることで、ベーパ排出管64への気体の流入をさらに効果的に抑制可能な構造としてもよい。
油膜フィルタ114や一方向弁124は、ベーパ排出管64の他端に設けられている必要はなく、連通部74からベーパ排出管64の他端までの部位であればよい。
なお、本発明における燃料タンク本体としては、上記したように、第一燃料収容部38Mと第二燃料収容部38Sとを有する鞍型燃料タンクに限定されない。要するに、燃料ポンプ本体42が備えられた収容部が第一燃料収容部(上記実施形態における第一燃料収容部38M)であり、燃料ポンプ本体42が備えられていない収容部が第二燃料収容部(上記実施形態における第二燃料収容部38S)である。これらの第一燃料収容部及び第二燃料収容部はそれぞれ複数備えられていてもよい。
さらに、本発明における燃料タンク本体の構造も鞍型燃料タンクに限定されない。たとえば、本発明の第一燃料収容部と第二燃料収容部とがそれぞれ独立した別体の箱状に形成され、これらの間に燃料移送配管52や戻し配管(上記実施形態におけるベーパ排出管64又はリターン配管50)が設けられた構成でもよい。
さらに、貯留部材18と燃料吸引配管44Aや燃料移送配管52との関係も、上記したものに限定されない。たとえば、第一燃料収容部38Mにおいて、燃料吸引配管44Aが、蓋板部22の流入孔24と異なる位置で蓋板部22を貫通する構造でもよい。同様に、第二燃料収容部38Sにおいて、燃料移送配管52が、蓋板部22の流入孔24と異なる位置で蓋板部22を貫通する構造でもよい。
また、貯留部材18が、燃料フィルタ16の一部を覆わない(上方から見て、燃料フィルタ16の一部が貯留部材18から外側にはみ出している)構成としてもよい。この場合には、燃料吸引配管44Aや燃料移送配管52を、燃料フィルタ16のはみ出し部分(貯留部材18の外部)に接続すれば、蓋板部22を貫通しない構造とすることが可能である。