JP2013092498A - 放射線検査装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】反射・散乱部材で反射された放射線を入射するモニタ用センサを配置することで、モニタ用センサに入射する放射線源からの放射線強度を抑えて長寿命化を実現する。
【解決手段】放射状の照射角を持つ放射線源と測定用センサを有する放射線検査装置において、前記放射線源と前記測定用センサの間で且つ、前記測定用センサに向かう放射線を妨げない位置に反射・散乱部材を配置すると共に、該反射・散乱部材で反射された放射線を入射するモニタ用センサを配置した。
【選択図】図1

Description

本発明は、放射線(例えばX線,ベータ線、ガンマ線等)を用いた検査装置に関し、特にリファレンス用検出素子が設けられており、このリファレンス用検出素子により検出した放射線源からの放射線の強度を基に当該放射線の強度分布や強度変動を補正する放射線検査装置に関するものである。
放射線検査は、様々な研究分野、検査分野(食品、工業、医療、セキュリティーなど)に用いられてきている。検査の分野では、検査物の比較的明瞭な濃淡画像から、対象物や欠陥の有無を判定している。特定の分野(医療、工業など)では極濃淡の薄い画像から関心のある部位の判断をする場合もあるが、医者や検査員などが表示モニタで画像を見て判定しているため、表示モニタの輝度ムラ、撮影系の輝度ムラ、対象物特有の傾向や見え方など様々な要素を考慮して総合的且つ選択的に判断している。
一方、目視検査ではなく、自動検査により極濃淡の薄い画像から関心のある部位の判断をする場合は、撮影系の輝度ムラ補正、検出感度補正、対象物特有の傾向補正、濃淡の強調、関心のある部位の特徴を効果的に抽出する画像処理など様々な処理を行って、候補抽出、判定を行うことになるため、様々な補正が必要となる。
放射線(以下X線という)を用いた検査では、X線源と検出器の間に試料(製品、人体など)を置き、その透過率からX線源の強度を検出して濃淡の画像を得るのが一般的である。このため、X線源の安定性は大変重要で、X線源の強度が変わったり、ばらついたりすると検出画像(検出精度)に直接影響する。
このため、X線源を安定駆動するフィードバック制御や温度制御、X線量のモニタが行われている。また、X線管は比較的短寿命であり、使用中のX線量低下も無視できない。これらをモニタして測定系にフィードバックする方法として、特開2011−022030に開示されたものがある。
図7は特開2011−022030に開示された放射線検査装置の配置構造を示す図である。
図において、X線源30に対し測定用センサ(X線ラインセンサ)31が正対して設置してあり、試料32はX線源から離れた位置で且つ、測定用センサ31の上部近傍に置かれる。この試料をX線に対してほぼ直角方向(図では水平)に移動して測定用センサ31で検出すれば試料の測定(検査)が可能である。図7では線源30の直後にコリメータ34を設けている。このコリメータには一つの透過窓若しくは測定用放射線出射窓とモニタ用放射線出射窓の2つの透過部が形成されている。
モニタ用センサ(X線ラインセンサ)33は図7(b)に示すように試料32を透過する前にX線を検出する。即ち、測定用センサ31に入射するX線を遮らないように、且つ互いのセンサの入射窓31a,33aの中心間の距離d寸法が出来るだけ小さくなるようにX線源(P)から試料(P´)までの間に設置されている。
測定用センサ31とモニタ用センサ33に用いる検出素子は入射窓31a,33aに沿って配列されている。各位置における素子の出力の違いは予め校正してメモリ等の記憶媒体に記憶されている。そして、PやP’に示すように設置する場所により、設置位置によって所望する幅が異なっている。
例えばP´で示した最も試料32に近い位置に測定用センサと同じモニタ用センサを配置した場合では、測定用センサ31とモニタ用センサ33の比が1対1近くで対応することから、線源分布(ユニフォーミティ)を求めることが可能で、素子毎に補正することが可能になる。なお、補正のための装置や補正式は公知のものが用いられる。
上述の従来例によれば
1.X線源の放射分布に対して、放射分布変化の検出が可能で、素子毎に測定用センサとモニタ用センサの差異を試料のX線吸収量として計算することがリアルタイムに可能である。
2.測定感度が向上する。
3.温度、湿度、気圧変化に対してもその影響を排除することができ、安定した検出結
果が期待できる。
特開2011−022030
ところで、X線源からの放射線検出器はシンチレータ式や半導体式が用いられるが、遠く離れた検出器に放射状にX線を照射するためには強力な強度を持つ線束を発生させる必要があるが、強力な強度を持つ線束を発生させると蛍光体や素子が劣化するという問題があった。これらを回避するために検出器を線源から遠ざけると、空気層やダストの影響等を含んでの測定となり、線源の近くにモニタとして利用するには不都合を生じる場合があった。
従って本発明の目的は、放射線源と測定用センサの間の測定用センサに向かう放射線を妨げない位置に反射・散乱部材を配置し、この反射・散乱部材で反射されたX線を入射するモニタ用センサを配置することで、X線源付近への設置に際してもモニタ用センサに入射するX線源からの放射線強度を抑えて長寿命化をはかり、線源変動を精度良くモニタすることで精度の高い測定を実現することにある。更に、X線源の放射線量の変動に対してもリアルタイム補正を行うことにより精度の高い測定を実現することにある。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の放射線検査装置の発明は、
放射状の照射角を持つ放射線源と測定用センサを有する放射線検査装置において、前記放射線源と前記測定用センサの間で且つ、前記測定用センサに向かう放射線を妨げない位置に反射・散乱部材を配置すると共に、該反射・散乱部材で反射された放射線を入射するモニタ用センサを配置したことを特徴とする。
請求項2においては請求項1記載の放射線検査装置の発明において、
前記反射・散乱部材およびモニタ用センサは放射線源とコリメータの間に配置したことを特徴とする。
請求項3においては請求項1又は2記載の放射線検査装置の発明において、
前記反射・散乱部材は、金属板、樹脂又は金属と樹脂の積層板を含むことを特徴とする。
請求項4においては請求項1乃至3のいずれかに記載の放射線検査装置の発明において、
前記反射・散乱部材は試料透過後の信号強度と同程度の反射信号強度となる様な原子番号から選択した材質であることを特徴とする。
請求項5においては請求項1又は2記載の放射線検査装置の発明において、
前記測定用センサ及びモニタ用センサは、半導体式検出器、若しくはシンチレータを具備した検出器であることを特徴とする。
請求項6においては請求項1又は請求項3乃至5に記載の放射線検査装置の発明において、
前記モニタ用センサの時系列的な出力変動を計算し、その計算結果を用いて測定用センサ出力を補正したことを特徴とする。
請求項7においては、請求項1又は2又は5又は6記載の放射線検査装置において、
前記モニタ用センサの出力を用いて前記放射線源の出力を制御することを特徴とする。
請求項8においては、請求項1又は2又は5又は6記載の放射線検査装置において、
前記モニタ用センサの出力を用いて、前記放射線源から試料を透過した後の減衰量を検出して試料の厚さの測定を行なう際の測定精度を高めたことを特徴とする。
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1によれば、モニタ用センサに入射する放射線源からの放射線強度を抑えて長寿命化をはかることができる。
試料と線源の距離が離れている測定系に於いて、線源近くにモニタ用センサを置くことは、線源強度が大きいためにモニタ用センサへのダメージの心配があるが、反射・散乱部材を用いることで、モニタ用センサの寿命向上に効果がある。特に蛍光体にダメージを受けやすいシンチレータ式の検出器と組み合わせる場合においては、効果的である。
請求項2によれば、放射線が空気層を通ることによる減衰が少ないので放射線源の正確な補正が可能となる。また、反射・散乱部材およびモニタ用センサを放射線源とコリメータの間に配置することにより、漏洩線量を最小限に抑える事ができ、安全に寄与すると同時に、管理区域の省略・削減や、漏洩防止に関わる分の装置サイズを小さくすることができることから設置性が向上する。通常、測定用センサを線源から離して検出を行なう際には、ダストの影響も受けることになる。ゴミや油煙、プラスチック煙等がセンサ(検出器)に付着するためであるが、線源筐体内にコンパクトに設置できる構造が取り易いため、これらダストによる誤差要因を除外して線源変動をモニタすることができる。
請求項3によれば、反射・散乱部材は金属板、樹脂板又は金属と樹脂の積層板を所望のX線強度になるように原子番号から選択することで単純な空気層を測定するのに比べ、所望のX線強度に近づけたX線の測定が可能となる。
また、用いるエネルギー帯においては、反射面の反射方向から見て積層板の境界面手前側に原子番号の小さな材料を積層することで反射強度が大きくなる現象があるが、金属と樹脂の積層板を用いればこのような効果を得やすくなる。
請求項4によれば、反射・散乱部材を試料透過後の信号強度と同程度の反射信号強度になるように選択することで適切な配置と組み合わせて信号強度を落とすことが出来るため、測定用センサと同種の検出素子を用いながら、同種の回路構成で測定を行う事が可能となる。
その結果、コストダウンのみならず、検出器の素子特性や電気回路特性を含めた補正を行なう際に有利である。
請求項5,6によれば、モニタ用センサは、半導体式検出器、若しくはシンチレータを具備した検出器を用い、時系列的な出力変動を計算し、その計算結果を用いて測定用センサ出力を補正するのですばやい対応が可能である。
請求項7によれば、モニタ用センサの出力を用いて前記放射線源の出力を制御するので、
放射線源の安定化を図ることができる。
本発明の実施形態の一例を示す正面図(a)、側面図(b)図である。 反射・散乱部材とモニタ用センサを放射線源とコリメータの間に配置した状態を示すもので、(a)は要部斜視図、(b)は断面図である。 放射線源筐体内に配置された反射・散乱部材とモニタ用センサの斜視図(a,b)及び正面図(b,c)である。 視射角と反射率の関係を示すグラフ(a)、原子番号と散乱線による信号強度の検出の関係を示す図(b)、後方散乱における坪量に対する信号変化の割合比較を示す図である。 本発明の他の実施例を示す側面図である。 本発明による信号処理の流れを示すフローチャートである。 従来例を示す図である。
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態の一例を示す構成図で(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
これらの図において、放射線源(X線源)30に対し測定用センサ31が正対して設置してあり、試料32はX線源から離れた位置で且つ、測定用センサ31の近傍に置かれる。この試料をX線に対してほぼ直角方向(図では水平)に移動して測定用センサ31で検出すれば試料の測定(検査)が可能である。図1では線源30の直後にコリメータ34を設けている。このコリメータには一つの透過窓若しくは測定用放射線照射窓とモニタ用放射線照射窓の2つの透過部が形成されているが、なくても良い。
従来例と異なる点は、反射・散乱部材40が測定用センサ31に入射するX線を遮らないように、X線源から試料までの間、例えば(P)〜(P´)のいずれかに設置されている。そして、図1(b、c)に示すように試料32を透過する前に反射・散乱部材35により反射・散乱したX線をモニタ用センサ33により検出する。
なお、検出素子サイズを変えたり、素子数を変えるなどしたものであっても良い。また、各位置におけるモニタ用センサの素子の出力の違いは予め校正してメモリ等の記憶媒体に記憶しておくものとする。
反射・散乱部材40とモニタ用センサ33は測定用センサの検出幅より短くてもよいし、同じ幅以上であってもよい。点線イ,ロ,ハで示す部分は反射・散乱部材とモニタ用センサの長さを長くしてX線の全幅を受光する場合を示している。この場合には、PやP’に示すように設置する場所により所望する幅が異なってくる。
例えばP´で示した最も試料32に近い位置に反射・散乱部材40と測定用センサ31と同じモニタ用センサを複数配置した場合や試料32に沿って移動できる構造とした場合では、測定用センサ31とモニタ用センサ33の比が1対1近くで対応することから、線源分布を求めることが可能で、素子毎に補正することが可能になる。
ここで、反射・散乱部材40について説明する。
反射・散乱部材が充分な厚さを持つとき、実際の反射強度は反射・散乱部材の原子番号に比例する。また、放射線源の管電圧によっては大きな原子番号と小さな原子番号の反射・散乱部材を重ねると小さな原子番号側の境界面での反射が大きくなる場合がある。こうした現象を用いれば、例えば、線源直近に反射・散乱部材を置く場合には、コリメータを原子番号の大きな材料として、手前側にコリメータに比べて原子番号の小さな反射・散乱部材を用いることにより反射・散乱部材の厚さと原子番号の二つの要素を用いて、反射信号強度の調整を行ないやすくできる。
図2(a,b)は反射・散乱部材40とモニタ用センサ33を放射線源30とコリメータ34の間に配置した状態を示すもので、(a)は要部斜視図、(b)は断面図である。放射線源30から出射した放射線34aがコリメータの出射窓34aから出射している。
この実施例では反射・散乱部材40がコリメータ34上に載置され、この反射・散乱部材で反射した放射線がモニタ用センサ33に入射するように配置されている。30aは放射線源30とコリメータ34を収納して構成された放射線源筐体である。
このように、放射線源筐体30a内に反射・散乱部材40とモニタ用センサ33を配置することで、漏洩線量を減じることができる。また、空気層の変動やダストの影響を少なくすることができるので放射線源30の効果的な制御が可能となる。
図3(a〜d)は放射線源筐体30a内に配置された反射・散乱部材40とモニタ用センサ33の斜視図(a,b)及び正面図(b,c)である。モニタ用センサ33は、それを支持する支持構造体41により保持され、モニタ用センサ33の検出面が、反射・散乱部材40で反射して入射する反射・散乱放射線を取り込める位置に配置されている。42はモニタ用センサに余分な放射線が入らないように配置された遮蔽材、43はモニタ用センサに取付けられ信号を取り出すためのリードである。
支持構造体41は、モニタ用センサ33と線源との間について、直接入射される線束を取り込まないよう遮蔽材42を含む構造とされている。遮蔽材42には、鉛、タングステン等が適している。
側面部分からの回り込み等の不安定成分を軽減するために支持構造体41には、底面部以外の側面部にも遮蔽材42として適した材料を用いている。
コリメータ34には、通常遮蔽能力の高い材料(SUS、真鍮、鉄、タングステン、鉛等)が用いられ、多くは高原子番号の材料であり、放射線が漏洩しない様、充分な材料厚みを持たせる設計となっている。
このことは、反射・散乱部材40として用いても十分な厚さを持っていることを意味する。このため、新たな反射・散乱部材を用意せずにコリメータを反射・散乱部材料として用いても良い。
厚さ測定に用いる場合に典型的なエネルギーバンド(5〜50keV程度)で、逆に信号強度が高すぎる場合には、原子番号の小さな金属を反射・散乱部材として用いる。材料加工やコストの点からはアルミ材料が用い易く、その他マグネシウム合金、シリカを含む硝子系材料等も候補となる。
構成要素の配置やエネルギー帯域にもよるが、厚さ測定に適した用途では、アルミニウム材を使用する。アルミニウム材の場合には反射・散乱により1/3〜1/2程度の信号強度に減じることができる。
このほか、強度を高める目的で、小さな原子番号の材料を積層して用いる際には、手前(反射)側の材料厚は極薄い物が好適である。積層した反射・散乱部材を用いる場合、軽金属系の材料を重ね合せて積層したり、スパッタによる積層構造を用いるほか、樹脂材料を用いる事も可能である。
樹脂材料を用いる場合には、放射線耐性の高い材料を選ぶことが安定な測定を行なう上で重要である。具体的には、高分子の主鎖に芳香環構造をもつエポキシ樹脂、芳香族系のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、などのような耐放射線性の高い材料が好都合である。(これらの材料では吸収線量の上限範囲は107〜109Gyと言われている。)
こうした材料も使用する放射線のエネルギーと材料の厚さにより、反射・散乱強度が増減するため、使用するエネルギーに応じて材料厚さを加減して所望の反射・散乱強度に近づけてゆくことが必要である。
また、材料特性とは別に、検出素子の検出面と反射・散乱部材との距離も信号強度に影響する。即ち、遠ければ信号強度は減り、近ければ信号強度は増加する。理論的には距離の自乗則に従って信号強度は低下するが、実際には散乱の影響によりこれよりも緩やかな変化となる。
そして、反射・散乱した放射線の入射部分の窓面積と信号強度がほぼ比例関係にあることと合わせ、モニタ用センサ表面−反射・散乱部材間の距離を操作することで、より最適なディメンジョンを得ることができる。
ここで、X線の反射・散乱について説明する。
図4(a)は視射角と反射率の関係を示すグラフである。グラフに示すように、非常に小さな視射角(図では4mrad以下)においてX線は急激に反射成分が大きくなる。通常、この臨界角以下の状態を反射と呼んでいる。
これに対して、この臨界角以上では、X線の鏡面反射は無くなり、物質への進入、透過、散乱が生じる。図中の進入深さに応じて散乱断面積が大きくなるため、簡単には進入深さと散乱強度は同じ傾向を示すと考えて良い。(正確には、視射角により試料内での散乱長(散乱行路)が変化するためこれほど単純ではない。)
このように臨界角を境に、反射と散乱が入れ替わると考えるのが、単純で分かり易いが、視射角により、それぞれの成分が混在するのが通例である。このため、本発明では、敢えて反射・散乱部材という表現を用いて、夫々の成分を含んだ線束を表す用語として使用している。
出展:
X線反射率ってなに?
物質・材料研究機構 材料研究所
高輝度光解析グループ ディレクター
(筑波大学大学院 数理物質科学研究科 物質・材料工学専攻 教授)
桜井健次
http://www.nims.go.jp/xray/xr/whats0.htm
次に、反射・散乱材の原子番号との関係および検量線について説明する。
厚い物質からの光子の後方散乱は、およそ50−80keV付近のエネルギー領域で最大値を持ち、これより低エネルギーの光子では前方散乱と後方散乱がほぼ同程度起きる。
これに対して、危険物確認等に用いる非破壊検査用途では、100−300keV(大日方さんここの単位はokですか?原本ではkeとなっています)程度といった高い管電圧を用いた硬X線が用いられる。このエネルギー領域では、表面から深い部分での散乱が多くなり、後方散乱を起す確立が非常に小さくなる。
このため、散乱線の通過しやすい低原子番号の物質で後方散乱が多くなるという逆転現象が発生する。
本発明では、比較的薄い材料の厚さ測定について説明する。先に述べた通り、ここでの使用エネルギー帯は、5−30kVの管電圧に対応する低エネルギー成分が主であり、レイリー散乱(入射エネルギーと電子の振動周波数が同じになり、見かけ上は入射エネルギーと同じエネルギーの散乱を生じる。)が多い領域である。
レイリー散乱は、物質の原子番号が大きいほど、また光子(X線)のエネルギーが低いほど顕著であることが知られている。
図4(b)は原子番号と散乱線による信号強度の検出の関係を示すもので、エネルギー帯と対象試料や配置等により、図に示すような曲線や直線となる。
出展:分かり易い放射線物理学 多田順一郎著 P126参照
図4(c)は後方散乱における坪量に対する信号変化の割合比較を示し、試料の厚さと散乱線の強度の関係を示す図である。この図において坪量(g/m3〕は試料の厚さに相当する。
図に示すように、十分な厚さの試料では散乱成分はある一定の値に近付く。図3(b)に示すような原子番号による信号強度はこの飽和域における変化に基づいている。
図5は他の実施例を示す側面図である。
放射線として軟X線を含むX線やベータ線を用いる場合、空気による吸収が大きく遠距
離からのX線、ベータ線照射は十分な線量が得られず放射線による検査が困難である。そ
こで、放射線の遮蔽構造を兼ねたヘリウム充填チャンバを線源と試料の間に介在させるこ
とで、放射線の空気吸収を抑え遠方からの照射が可能である。
図5は、図1に示す放射線検査装置にヘリウム(He)を充填するためのチャンバ35を併用した構成を示している。この例では、X線源30の出射口に近接してコリメータ34及びチャンバ35を設け、そのチャンバの入射窓35aからX線を導入し、測定用として使用するためのX線の出射窓35bを設けている。なお、図では省略するがチャンバ35のX線の入出射窓はX線を透過するベリリウム膜などにより気密に閉塞されている。
コリメータ34を通ったX線はチャンバ35内に配置された反射・散乱部材40で反射してモニタ用センサ33に入射する。この場合チャンバ35の底部と試料32の間隙Bは空気層の影響を少なくするために極力近づけた方が望ましい。
このように設置することで、空気吸収量の影響を除去することが出来、温度、湿度、気圧、空気清浄度の影響をキャンセルすることが可能になる。
図6(a〜c)は本発明の放射線検査装置を用いた信号処理の流れを示すフローチャートである。図において(a)は試料測定用センサで測定した信号処理の流れ、(b)はモニタ用センサで測定した信号の流れ、(c)は試料測定用センサで空気層を測定した信号の流れを示す図である。
図6(a)において、
Step1:試料測定用センサで試料を透過した際の線源からの信号を測定する。この信号は後述する試料測定用センサで空気層を測定する際に使用するために記憶される。
Step2:試料用検量線を用い、
Step3:厚さ(坪量)を求める。
図6(b)において、
Step1’:反射・散乱部材を用いて線源モニタ用センサで測定した信号を測定する。
Step2’:線源モニタ用の検量線を用い、
Step3’:線源変動による坪量変動相当値を校正用データとして算出する。
Step4’:図4(a)のStep3で得られた校正用データから校正用厚さ(坪量)補正値を求める。
図6(a)に戻り、
ステップ4:Step3で得た坪量から図4(b)のステップ4により求めた校正用データを減算する。
ステップ5:線源変動による坪量変動を補正する。
ステップ6:補正された坪量を測定値として出力する。
以上のステップにより厚さ測定の補償を行なうことができる。
次に劣化・故障診断について図6(c)を用いて説明する。
ステップ1’’:試料用センサを用いて、空気層における測定信号を得る。同じく線源モニタ用センサからの測定信号を得る。
ステップ2’’:夫々のセンサから得た信号を検量線に当てる。
ステップ3’’:空気層を坪量化する計算を行う。
ステップ4’’:図6(b)のステップ4’の校正用坪量補正値から校正用坪量を減算する。
ステップ5’’:過去の履歴と比較して、センサ窓面や線源の窓面等に付着したダストに代表される汚れ成分の坪量値を得る。
ステップ6’’:劣化・故障診断信号を出力する。
通常は遮蔽され、校正時のみに測定できる構造の線源モニタを用いれば線源モニタの劣化が防げるため、過去の履歴と比較して線源の劣化診断が可能となる。例えばダストを綺麗に拭い去った後に夫々から得た信号強度若しくは坪量変換値を過去の履歴と比較すれば、測定用センサの劣化診断に用いることができる。また、必ずしも過去の履歴との照らし合わせを行なわない場合でも、適切な閾値を設けて、これと信号値を比較すれば、センサの劣化算出が可能となり、これをもとに故障あるいはプロセス上の不都合等に対して警報出力を行うようにしても良い。
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例では放射線源としてX線を使用したが例えばβ線やマイクロ波、ミリ波、紫外線、可視光線、赤外線、ガンマ線、電子線、中性子線、陽子線、アルファ線、ガンマ線であっても良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
30 放射線(X線)源
30a 放射線源筐体
31 測定用センサ(X線ラインセンサ)
32 試料
33 モニタ用センサ(X線ラインセンサ)
34 コリメータ
35 Heチャンバ
35a チャンバ窓材
40 反射・散乱部材

Claims (8)

  1. 放射状の照射角を持つ放射線源と測定用センサを有する放射線検査装置において、前記放射線源と前記測定用センサの間で且つ、前記測定用センサに向かう放射線を妨げない位置に反射・散乱部材を配置すると共に、該反射・散乱部材で反射された放射線を入射するモニタ用センサを配置したことを特徴とする放射線検査装置。
  2. 前記反射・散乱部材およびモニタ用センサは放射線源とコリメータの間に配置したことを特徴とする請求項1記載の放射線検査装置。
  3. 前記反射・散乱部材は、金属板、樹脂又は金属と樹脂の積層板を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線検査装置。
  4. 前記反射・散乱部材は試料透過後の信号強度と同程度の反射信号強度となる様な原子番号から選択した材質であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放射線検査装置。
  5. 前記測定用センサ及びモニタ用センサは、半導体式センサ、若しくはシンチレータを具備したセンサであることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線検査装置。
  6. 前記モニタ用センサの時系列的な出力変動を計算し、その計算結果を用いて測定用センサ出力を補正したことを特徴とする請求項1又は請求項3乃至5に記載の放射線検査装置。
  7. 前記モニタ用センサの出力を用いて前記放射線源の出力を制御することを特徴とする請求項1又は2又は5又は6記載の放射線検査装置。
  8. 前記モニタ用センサの出力を用いて、前記放射線源から試料を透過した後の減衰量を検出して試料の厚さの測定を行なう際の測定精度を高めたことを特徴とする請求項1又は2又は5又は6又は7記載の放射線検査装置。
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