JP2013084490A - 電極、非水電解質電池及び電動車両 - Google Patents

電極、非水電解質電池及び電動車両 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりもバインダの使用量を低減できる非水電解質電池用の電極とその製造方法を提供する。
【解決手段】正極、負極、及びこれら両電極1,2の間に介在される電解質層15Aを備える非水電解質電池に利用される電極であって、アルミニウム多孔体11と、充填部12と、固体電解質膜15とを備える。アルミニウム多孔体11は、多数の気孔を有する。充填部12は、非水電解質電池の活物質を含むと共に、多孔体11の気孔に充填される。固体電解質膜15は、充填部12が充填されたアルミニウム多孔体11の表面に成膜され、電解質層15Aの一部を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム多孔体を用いた非水電解質電池用の電極とその製造方法、その電極を備える非水電解質電池とその製造方法、及びその電池を備える電動車両に関する。
充放電を繰り返すことを前提とした電源として、正極と負極とこれら電極の間に配される電解質層とを備える非水電解質電池が利用されている。このような非水電解質電池の中でも、特に正・負極間のLiイオンの移動により充放電を行なう非水電解質電池は、小型でありながら高い放電容量を備える。
例えば、特許文献1には、集電体の表面に形成される活物質を含む合剤層を備える電池用電極と、その電池用電極を用いた非水電解質電池が開示されている。一般に、電池用電極の合剤層には、活物質の他にバインダが含有されており、そのバインダによって合剤層が保形されている。
特開2011-187343号公報
合剤中のバインダは、合剤層を保形するために必要であるが、電池反応には関与しないため、極力低減されることが好ましい。特に、バインダの削減分を活物質に置換すれば、電池の容量を向上することができる。また、バインダは、活物質表面を覆うことで、電極(合剤層)内におけるイオンの伝導を阻害する要因となり得る点でも削減が望まれる。
一方、電池を薄く構成することが求められており、そのための対策の一つとして電池の構成部材である電解質層を薄くすることが挙げられる。バインダを用いることなく電極を構成した場合、バインダに代わる保形材料が必要になるが、その代替保形材料を用いた電極に電解質層を薄く形成しても、正負極間で電解質層が突き破られることがなく、短絡しないことが求められる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、従来よりもバインダの使用量を低減できる電極とその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、このバインダの低減に加え、非水電解質電池を構成した場合に、正負極間の短絡が生じ難い電極とその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、本発明の電極を用いた非水電解質電池とその製造方法、並びに当該電池を備える電動車両を提供することにある。
本発明者らは、バインダを用いなくても電極の保形ができるよう、金属多孔体を電極に用いることを検討した。金属多孔体の一例には、セルメット(登録商標)として知られているニッケル多孔体がある。一方、電池を薄く構成するために、電極間に介在される電解質層を薄く形成する技術として、物理蒸着法が知られている。これらの技術を用いて、例えば次のように電池を構成できる。
まず、一対のニッケル多孔体と、正極活物質を含む充填部と、負極活物質を含む充填部とを用意する。次に、一方の多孔体の気孔に正極側の充填部を、他方の多孔体の気孔に負極側の充填部を充填する。この各充填部が充填された各ニッケル多孔体の表面に物理蒸着法で固体電解質膜を成膜する。そして、両電極の固体電解質膜を接合することで、非水電解質電池を形成する。
ところが、ニッケル多孔体と薄膜からなる固体電解質膜とを用いた非水電解質電池では、正負極のニッケル多孔体が固体電解質膜を突き破って接触し、電池として短絡する虞のあることが判明した。そこで、この短絡を解消すべく、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、アルミニウム多孔体と薄膜からなる固体電解質膜とを用いた非水電解質電池であれば、バインダを低減、或いは省略でき、さらには正負極の短絡も抑制できるとの知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたもので、以下の電極、電極の製造方法、非水電解質電池、非水電解質電池の製造方法、及びこの非水電解質電池を用いた電動車両を規定する。
(1)本発明の電極は、正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池に利用される電極であって、アルミニウム多孔体と、充填部と、固体電解質膜とを備える。アルミニウム多孔体は、多数の気孔を有する。充填部は、非水電解質電池の活物質を含むと共に、上記多孔体の気孔に充填される。固体電解質膜は、この充填部が充填されたアルミニウム多孔体の表面に成膜され、電解質層の一部を構成する。
この構成によれば、アルミニウム多孔体を用いることで、従来に比べて充填部に含まれるバインダの含有量が少なくても、或いはバインダを用いなくても電極として保形できる。また、この電極を一対用意し、各電極の活物質をそれぞれ正極活物質、負極活物質として、一方の電極を正極、他方の電極を負極とした場合、両電極の固体電解質膜同士を向き合うように接合することで、容易に非水電解質電池を構成することができる。この接合時、多孔体が固体電解質膜を突き破って正負極が短絡することを抑制できる。これは、多孔体がニッケルなどに比べて軟質のアルミニウムで構成されているためであると推測される。
(2)本発明の電極の一形態として、充填部は、固体電解質粒子と、2体積%未満の含有量のバインダとを含む形態が挙げられる。
この構成によれば、充填部に固体電解質粒子を含むことで、電極内における電池反応に関与するイオンの伝導を十分に確保することができる。また、充填部のバインダの含有量を少なく規定することで、活物質がバインダに覆われて固体電解質粒子との界面抵抗が大きくなって十分な電池特性が得られなかったり、バインダの存在が活物質の含有量の増加に対する制約になったりする不具合を抑制できる。
(3)本発明の電極の一形態として、充填部は、固体電解質粒子を含み、バインダを含まない形態が挙げられる。
この構成によれば、充填部がバインダを含まないことで、活物質がバインダに覆われて固体電解質粒子との界面抵抗が大きくなって十分な電池特性が得られなかったり、バインダの存在が活物質の含有量の増加に対する制約になったりする不具合を解消できる。
(4)本発明の電極の一形態として、固体電解質膜の厚みが10μm以下である形態が挙げられる。
この構成によれば、固体電解質膜の厚みを薄くすることで、非水電解質電池を構成した場合に、電池の厚みも薄くすることができる。さらに、薄い固体電解質膜であっても、多孔体が固体電解質膜を突き破って正負極が短絡することを抑制できる。これは、多孔体がニッケルなどに比べて軟質のアルミニウムで構成されているからであると推測される。
(5)本発明の電極の一形態として、固体電解質膜の材質が硫化物系固体電解質である形態が挙げられる。
この構成によれば、硫化物系固体電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が得られる。そのため、この電極を用いれば、抵抗の低い非水電解質電池を構成し易い。
(6)本発明の電極の製造方法は、正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池に利用される電極を製造する電極の製造方法であって、以下の工程を備えることを特徴とする。
準備工程:多数の気孔を有するアルミニウム多孔体を準備する。
充填工程:非水電解質電池の活物質を含む充填部を多孔体の気孔に充填する。
成膜工程:充填部が充填されたアルミニウム多孔体の表面に、電解質層の一部を構成する固体電解質膜を成膜する。
この製造方法によれば、上述した本発明の電極を容易に得ることができる。
(7)上述した本発明に係る電極の製造方法の一形態として、充填部は、固体電解質粒子と、2体積%未満の含有量のバインダとを含む形態が挙げられる。
この製造方法によれば、充填部に固体電解質粒子を含み、バインダの含有量が少ない本発明の電極を容易に得ることができる。
(8)上述した本発明に係る電極の製造方法の一形態として、充填部は、固体電解質粒子を含み、バインダを含まない形態が挙げられる。
この製造方法によれば、充填部に固体電解質粒子を含み、バインダを含まない本発明の電極を容易に得ることができる。
(9)本発明の非水電解質電池は、一方の電極と、他方の電極と、電解質層とを備える。一方の電極は、上述した本発明の電極において、上記活物質を正極活物質とした電極である。他方の電極は、上述した本発明の電極において、上記活物質を負極活物質とした電極である。そして、電解質層は、両電極の固体電解質膜同士が接合されて構成される。
この構成の電池によれば、本発明の電極を正負極に用いており、各電極を構成する多孔体がアルミニウムで構成されているため、両電極の固体電解質膜同士を接合して電解質層を構成した際、多孔体が固体電解質膜を突き破って正負極が短絡することを抑制できる。
(10)本発明の非水電解質電池の製造方法は、正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池を製造する非水電解質電池の製造方法であって、次の各工程を備えることを特徴とする。
準備工程:多数の気孔を有するアルミニウム多孔体を一対準備する工程。
正極側充填工程:一方の前記多孔体の気孔に非水電解質電池の正極活物質を含む充填部を充填する工程。
負極側充填工程:他方の前記多孔体の気孔に非水電解質電池の負極活物質を含む充填部を充填する工程。
成膜工程:前記充填部が充填された各アルミニウム多孔体の表面に、前記電解質層の一部を構成する固体電解質膜を成膜する工程。
接合工程:これら両固体電解質膜同士を接合して前記電解質層を構成する工程。
この電池の製造方法によれば、正負極間で短絡の生じ難い本発明の非水電解質電池を容易に形成することができる。
(11)本発明の電動車両は、上述した本発明の非水電解質電池を駆動用の電源として備えることを特徴とする。
この電動車両によれば、短絡が生じ難い本発明の非水電解質電池を電源として備えるため、優れた電池特性の電源を備える電動車両とすることができる。
本発明の電極によれば、固体電解質膜を電解質層とする電池であっても、短絡を生じ難くでき、かつ従来の電池において充填部に含まれているバインダを低減又は省略することができる。
(A)は実施形態1に係る電極の概略構成図、(B)は(A)に記載の電極を用いた非水電解質電池の概略構成図である。 実施形態2に係る非水電解質電池の概略構成図である。
以下、図に基づいて、本発明の実施形態を説明する。各図において、共通の部材については同一の符号を付している。
〔実施形態1〕
図1に基づいて、実施形態1に係る電極1,2と、それらの電極1,2を用いた非水電解質電池100について、電極と電池の製造方法にも触れながら以下に詳しく説明する。
{電極}
本例の電極1,2は、図1(A)に示すように、多数の気孔を有するアルミニウム多孔体11と、その気孔に充填される充填部12と、充填部12が充填されたアルミニウム多孔体11の表面に成膜された固体電解質膜15とを備える。各構成についてより詳しく説明する。
(アルミニウム多孔体)
アルミニウム多孔体11は、アルミニウムを主たる構成材料とし、多数の気孔を有する三次元網目構造体である。この多孔体11により、活物質を含む充填部12を所定の形状に保持する。そのため、アルミニウム多孔体11を用いれば、従来、活物質と共に充填部に含まれていたバインダを低減又は省略することができる。その他、アルミニウム多孔体11は、優れた導電性を備えるため、集電体としての機能も兼ねる。
ここでの「アルミニウム」には、純アルミニウムの他、アルミニウム合金も含む。アルミニウム合金としては、Cr、Mn、及び遷移金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するアルミニウム合金が好適に利用できる。このような合金は、純アルミニウムのアルミニウム多孔体に比較して、剛性や弾性といった機械的特性に優れる。そのため、活物質の保持性に優れ、電池の放電容量および充放電効率の低下を抑制することができる。この合金の添加元素の総含有量は、例えば、2原子%以上10原子%以下、好ましくは5原子%以上7原子%以下とすることが挙げられる。この総含有量を2原子%以上とすることで、機械的特性の改善効果が高く、10原子%以下とすることで、高い導電率を確保し易い。これら純アルミニウム又はアルミニウム合金により多孔体を構成することで、後述するように、一対の電極1,2同士を接合した場合、各電極1,2の多孔体11同士が固体電解質膜15(電解質層15A)を突き破って接触することを抑制できる。これは、ニッケル多孔体などの他の金属多孔体に比べて、アルミニウム多孔体11が軟質であるためと考えられる。
気孔の形態は、実質的に全ての気孔が連続気孔(開気孔)からなることが好ましい。気孔が連続気孔であれば、アルミニウム多孔体11の内部の気孔にまで活物質を充填し易い。但し、若干の独立気孔(閉気孔)の存在は許容できる。
アルミニウム多孔体11の気孔率は、例えば80%〜98%の範囲で適宜設定することが挙げられる。多孔体11の気孔率を80%以上とすることで、活物質が充填される空間を確保し、98%以下とすることで、多孔体の骨格強度を維持して形状を保持し易い。特に、多孔体11の気孔率が90%以上であれば、活物質が充填される空間を十分に確保して、電極密度の向上を図り易い。ここでの気孔率は、アルミニウム多孔体11の質量と見かけの体積を求め、アルミニウム多孔体11を構成するアルミニウム金属の比重からアルキメデス法を用いて測定した値である。
アルミニウム多孔体11の気孔径は、例えば5μm〜500μmの範囲で適宜設定することが挙げられる。また、多孔体11の気孔径や厚さは、電解質層15Aの形態と活物質の利用率などを考慮して決定することが好ましい。例えば、電解質層15Aを固体電解質層とすれば、電極1,2と固体電解質層との界面が固体同士の接合界面となり、この接合界面において電極1,2と固体電解質層との間でリチウムイオンの授受が行われるため、アルミニウム多孔体11を厚くし過ぎると活物質の利用率が低下する虞がある。そこで、アルミニウム多孔体11の厚さを、例えば20μm以上200μm未満とし、多孔体11の気孔径を10μm以上50μm以下とすることで、多孔体11と活物質との密着性の向上と接触面積の増大をより確実に図ることができる。ここでの気孔径とは、5点以上の気孔径の平均気孔径であり、気孔径は、顕微鏡観察により測定した値である。
(アルミニウム多孔体の製造方法)
このようなアルミニウム多孔体11は、公知の手法により得ても良いが、以下に詳述するように、多孔質樹脂体の準備→樹脂体表面へのアルミニウム層の形成→溶融塩中での樹脂体の熱分解により得ることが好ましい。
≪多孔質樹脂体の準備≫
まず、連続気孔を有する多孔質樹脂体を準備する。この樹脂体としては、発泡樹脂の他、樹脂繊維からなる不織布を用いることができる。樹脂体を構成する樹脂としては、アルミニウム(アルミニウム合金)の融点以下の加熱温度で熱分解が可能なものであればよく、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。特に、発泡ウレタンは、気孔率が高く、気孔径が均一で、気孔の連通性や熱分解性に優れることから、発泡ウレタンを樹脂体に使用することが好ましい。また、樹脂体の気孔径は5μm〜500μm程度、気孔率は80%〜98%程度の範囲が好ましく、最終的に得られるアルミニウム多孔体11の気孔径と気孔率とは、樹脂体の気孔径と気孔率とに影響を受ける。そこで、作製するアルミニウム多孔体の気孔径と気孔率とに応じて、樹脂体の気孔径と気孔率とを決定する。
≪アルミニウム層の形成≫
次に、多孔質樹脂体の表面にアルミニウム層を形成する。アルミニウム層の形成方法としては、例えば、(i)真空蒸着法、スパッタリング法又はレーザアブレーション法などに代表される気相法(PVD)、(ii)めっき法、(iii)ペースト塗布法などが挙げられる。
(i)気相法
真空蒸着法では、例えば、原料のアルミニウム(アルミニウム合金も含む)に電子ビームを照射してアルミニウムを溶融・蒸発させ、連続気孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウムを付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。スパッタリング法では、例えば、アルミニウムのターゲットにプラズマ照射してアルミニウムを気化させ、連続気孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウムを付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。レーザアブレーション法では、例えば、レーザ照射によりアルミニウムを溶融・蒸発させ、連続気孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウムを付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。
(ii)めっき法
水溶液中でアルミニウムをめっきすることは、実用上ほとんど不可能であるため、溶融塩中でアルミニウムをめっきする溶融塩電解めっき法により、連続気孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム層を形成することができる。この場合、予め樹脂表面を導電化処理した後、溶融塩中でアルミニウムをめっきすることが好ましい。
溶融塩電解めっきに用いる溶融塩としては、例えば、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アルミニウム(AlCl3)などの塩を使用することができる。また、2成分以上の塩を混合し、共晶溶融塩としてもよい。共晶溶融塩とした場合、溶融温度を低下させることができる点で有利である。この溶融塩には、アルミニウムイオンが含まれている必要がある。
溶融塩電解めっきでは、例えば、AlCl3‐XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩を使用し、この塩を溶融してめっき液とし、この中に樹脂体を浸漬して電解めっきを行うことにより、樹脂表面にアルミニウムめっきを施す。また、電解めっきの前処理として、予め樹脂表面に導電化処理を施すことが好ましい。導電化処理としては、ニッケルなどの導電性金属を無電解めっきにより樹脂表面にめっきしたり、アルミニウムなどの導電性金属を真空蒸着法又はスパッタリング法により樹脂表面に被膜したり、カーボンなどの導電性粒子を含有する導電性塗料を塗布したりすることが挙げられる。
(iii)ペースト塗布法
ペースト塗布法では、例えば、アルミニウム粉末、結着剤(バインダ)、及び有機溶剤を混合したアルミニウムペーストを用いる。そして、アルミニウムペーストを樹脂表面に塗布した後、加熱することにより、バインダと有機溶剤とを消失させると共に、アルミニウムペーストを焼結させる。この焼結は、1回で行っても、複数回に分けて行ってもよい。例えば、アルミニウムペーストの塗布後、低温で加熱して有機溶剤を消失させた後、溶融塩に浸漬した状態で加熱することにより、樹脂体の熱分解と同時にアルミニウムペーストの焼結を行うことも可能である。また、この焼結は、非酸化性雰囲気化で行うことが好ましい。
≪多孔質樹脂体の熱分解≫
さらに、アルミニウム層を被覆した樹脂体の樹脂を熱分解して、アルミニウム層を残して樹脂を焼失させた三次元網目構造体とする。
樹脂体(樹脂)の熱分解は、溶融塩に浸漬した状態で、アルミニウム層に卑な電位を印加しながらアルミニウムの融点以下の温度に加熱することにより行うことが好ましい。例えば、樹脂表面にアルミニウム層を形成した樹脂体及び対極を溶融塩に浸漬し、アルミニウムの標準電極電位より卑な電位をアルミニウム層に印加する。溶融塩中でアルミニウム層に卑な電位を印加することで、アルミニウム層の酸化を確実に防止することができる。ここで、アルミニウム層に印加する電位は、アルミニウムの標準電極電位より卑で、かつ溶融塩のカチオンの還元電位より貴とする。また、対極には、溶融塩に対し不溶性を示すものであればよく、例えば、白金、チタンなどを用いることができる。
この状態を保ちながら、アルミニウムの融点(660℃)以下で、かつ樹脂体の熱分解温度以上に溶融塩を加熱することで、アルミニウム層の被覆された樹脂体のうち樹脂のみを消失させる。これにより、アルミニウム層を酸化させることなく、樹脂を熱分解することができるので、その結果、表面の酸素量が少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。また、樹脂体を熱分解するときの加熱温度は、樹脂体を構成する樹脂の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば500℃以上600℃以下とすることが好ましい。
樹脂体の熱分解工程に用いる溶融塩としては、上記した溶融塩電解めっきに用いる溶融塩と同じであってもよく、例えば、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アルミニウム(AlCl3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。溶融塩としては、アルミニウム層の電位が卑となるように、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩を使用することができる。また、溶融塩の溶融温度をアルミニウムの融点以下の温度にするために、2種類以上の塩を混合し、共晶溶融塩としてもよい。特に、アルミニウムは酸化し易く還元処理が難しいことから、樹脂体の熱分解工程においては、共晶溶融塩を使用することが有効である。
以上の方法により得られるアルミニウム多孔体は、その表面の酸素量が3.1質量%以下とできる。このようなアルミニウム多孔体は、表面の酸素量が多い従来のアルミニウム多孔体に比較して、多孔体に活物質を充填した後、加圧成形した際に、多孔体に割れが生じ難く、変形が生じ易い。特に、変形し易い多孔体は、活物質を充填した多孔体の表面に固体電解質膜を作製して電池を構成する際、多孔体が固体電解質膜を突き破ることを抑制し易い。そのため、多孔体の集電性を維持しながら、加圧成形することによって、電極密度の向上および多孔体と活物質との密着性の向上を図ることができる。ここでの酸素量とは、アルミニウム多孔体の表面を加速電圧15kVの条件でEDX(エネルギー分散型X線分析)により定量分析した値である。なお、酸素量3.1質量%以下とは、EDXによる検出限界以下である。
(充填部)
充填部12は、アルミニウム多孔体11の気孔に充填される部材であり、活物質が含まれる。通常、活物質は粉末の形態で充填部12に含まれ、その他に、固体電解質粒子も充填部12に含まれる。
≪活物質≫
アルミニウム多孔体11に充填する活物質としては、リチウムを脱挿入できる材料を使用することができ、このような材料をアルミニウム多孔体に充填することで、リチウムイオン二次電池に適した電極1,2を得ることができる。
正極活物質の材料としては、例えば、LiαXβ(1-X)O2(αはCo,Ni,Mnから選択される1種、βはFe,Al,Ti,Cr,Zn,Mo,Bi,Co,Ni,Mnから選択される1種、α≠β、Xは0.5以上)で表わされる物質を用いることが好ましい。より具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、コバルトアルミ添加ニッケル酸リチウム(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCo0.3Ni0.7O2)が挙げられる。その他、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、リチウムマンガン酸化合物(LiMyMn2-yO4;M=Cr、Co、Ni)、リチウムリン酸鉄及びその化合物(LiFePO4、LiFe0.5Mn0.5PO4)であるオリビン化合物などの遷移金属酸化物が挙げられる。また、これら材料の中に含まれる遷移金属元素を、別の遷移金属元素に一部置換してもよい。さらに、他の正極活物質の材料としては、例えば、TiS2、V2S3、FeS、FeS2、LiMSx(MはMo、Ti、Cu、Ni、Feなどの遷移金属元素、又はSb、Sn、Pb)などの硫化物系カルコゲン化物、TiO2、Cr3O8、V2O5、MnO2などの金属酸化物を骨格としたリチウム金属酸化物などが挙げられる。ここで、上記したチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)は、負極活物質として使用することも可能である。
一方、負極活物質としては、Li、Si,LiAl,Sn,Si,C,In,Li4Ti5O12,FeS2,TiS2、La3Ni2Sn7などを用いることができる。これら活物質粉末は、ビスマス(Bi)や亜鉛(Zn)などの添加元素を含んでいても良い。
≪固体電解質粒子≫
活物質の他に、さらに、固体電解質粒子を加えて充填してもよい。アルミニウム多孔体に活物質と固体電解質とを充填することで、全固体型非水電解質電池の電極に適したものとすることができる。但し、アルミニウム多孔体11に充填する充填部12のうち活物質の割合は、放電容量を確保する観点から、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上とすることが好ましい。
固体電解質粒子には、種々の公知の固体電解質が利用できるが、リチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましく、このような硫化物系固体電解質としては、リチウム、リン、及び硫黄を含む硫化物系固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、さらに、0、Al、B、Si、Geなどの元素を含有してもよい。より具体的には、Li7P3S11、Li3PS11、Li8P2S9、Li13GeP3S16、Li10GeP2S12等が挙げられる。
固体電解質粒子の粒径は、アルミニウム多孔体11の気孔よりも小さければよい。例えば、0.5〜10μmとすることが挙げられる。
≪充填部のその他の構成材料≫
本例の場合、アルミニウム多孔体11自体が高い導電性を有するため、通常、充填部12に導電助剤は不要であるが、必要に応じて充填部12に導電助剤を含んでも良い。導電助剤の具体例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。その他、若干の含有量であれば、充填部12にバインダを含んでも良い。例えば充填部12の全体積に対して2体積%以下程度であれば、バインダを含んでも、バインダの存在による不具合は比較的軽微である。バインダの具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等が挙げられる。
≪充填部の充填方法≫
活物質を含む充填部12の充填は、例えば、浸漬充填法や塗工法などの公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケーター塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、スプレーコーター塗工法、バーコーター塗工法、ロールコーター塗工法、ディップコーター塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコーター塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
充填部12を充填するときは、例えば、正極又は負極の活物質粉末と固体電解質粒子に有機溶剤を混合して合剤スラリーを作製し、これを上記方法によりアルミニウム多孔体に充填する。この充填部12の充填は、アルミニウム多孔体11の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、アルミ多孔体11内部の気孔にまで十分に充填部が充填できるよう、真空にて充填部12の充填を行うことが好ましい。
合剤スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、アルミニウム多孔体11に充填する充填部12に対して悪影響を及ぼさないものであれば、適宜選択することができる。このような有機溶剤としては、例えば、n‐ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボンート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、1,3‐ジオキソラン、エチレングリコール、N‐メチル‐2‐ピロリドンなどが挙げられる。
≪充填後の乾燥≫
アルミニウム多孔体の気孔に充填部を充填した後、乾燥工程を経ることで、有機溶剤を除去することが好ましい。この乾燥条件は、50〜150℃で0.5〜2時間程度とすることが好ましい。
≪充填後の加圧≫
充填部12が充填されたアルミニウム多孔体11は、通常、所定の圧力により加圧して圧縮される。この圧縮によりアルミニウム多孔体11が変形され、気孔内部に充填部が確実に保持されると共に、高い密度の電極を構成することができる。この加圧は100〜600MPa程度で行うことが好ましい。
(固体電解質膜)
固体電解質膜15は、電池を構成した際に電解質層15Aの一部を構成する膜である。この固体電解質膜15の材質としては、公知の各種固体電解質が利用できるが、上述した硫化物系固体電解質が好適に利用できる。特に、充填部12に含まれる固体電解質粒子と同じ材質で固体電解質膜15を構成することが好適である。固体電解質膜15の厚みは、電池の小型化の観点から、10μm以下とすることが好ましい。このような薄膜の固体電解質膜15であってもアルミニウム多孔体を用いているため、後述するように一対の電極における固体電解質膜15同士を圧接して電池を構成する場合でも、多孔体が固体電解質膜15(電解質層15A)を突き破って短絡することを抑制できる。固体電解質膜15の厚みの下限は、正負極の短絡を抑制する必要上、0.5μm以上程度が好適である。このような薄膜の固体電解質膜の形成には、気相法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又はレーザアブレーション法などに代表される物理的気相蒸着法が好適に利用できる。
後述するように、両電極1,2を加圧しながら熱処理して固体電解質膜15同士を接合することで、正極側の固体電解質膜15と負極側の固体電解質膜15とを接合できる。この接合によれば、両層の間に高抵抗の接合界面が実質的に形成されない。また、両固体電解質膜15の接合時に正極と負極とを高圧で圧縮する必要がないので、両電極1,2の構成要素に割れなどの不具合が生じない。
{非水電解質電池}
上述した電極1,2を用いて、図1(B)に示す非水電解質電池100を構成できる。この電池100は、正極、負極及び両電極の間に介在される電解質層15Aを備える。
この電池100を製造するには、上述した電極1,2を一対用意する。一方の電極1は、正極活物質を含む充填部12がアルミニウム多孔体の気孔に充填された正極であり、他方の電極2は、負極活物質を含む充填部12がアルミニウム多孔体の気孔に充填された負極である。
このような正極と負極の各々が備える固体電解質膜15同士を対向し、両者が圧接されるように両電極1,2を加熱しながら加圧する。
この加圧時の熱処理は、150〜300℃×1〜60分で行うことが好ましい。この熱処理条件であれば、両電解質膜15を確実に接合させることができる。この熱処理温度が低すぎたり、熱処理時間が短すぎると、両固体電解質膜15の間に接合界面が形成される虞がある。一方、熱処理温度が高すぎたり、熱処理時間が長すぎると、電解質層15Aのイオン伝導度が低下する虞がある。
この熱処理を行いながら両電極1,2を接合する際の加圧は、160MPa以下で行うことが好ましい。加圧の圧力を160MPa以下とすることで、正極と負極の接合の際、これら電極1,2に備わる各層に割れなどの不具合が生じることを抑制することができる。より好ましい加圧圧力は、10〜20MPaである。このような加圧力であれば、多孔体11が固体電解質膜15を突き破って短絡しないようにし易い。
正極の固体電解質膜15と負極の固体電解質膜15との合計厚、つまり電池100を構成した場合の電解質層15Aの厚みは、1〜100μm程度とすることが挙げられる。特に、10μm以下であることが好ましい。
その他、正極側の電極1,2の固体電解質膜15に硫化物固体電解質を用いた場合、充填部12が充填されたアルミニウム多孔体11と固体電解質膜15との間に中間層(図示略)を設けることが好ましい。正極側の固体電解質膜15が硫化物固体電解質を含むと、この硫化物固体電解質が正極側の固体電解質膜15に隣接する正極の活物質と反応して、正極の活物質と正極側の固体電解質膜との界面近傍が高抵抗化し、Liイオン電池の放電容量を低下させる。そこで、上記の中間層を設けることで、上記高抵抗化を抑制し、充放電に伴う電池の放電容量の低下を抑制できる。中間層に用いる材料としては、非晶質のLiイオン伝導性酸化物、例えば、LiNbO3やLiTaO3、Li4Ti5O12などが利用できる。特にLiNbO3は、正極の活物質と固体電解質膜15との界面近傍の高抵抗化を効果的に抑制できる。
{電動車両}
さらに、上述した非水電解質電池100は、電動車両の駆動用電源として利用できる。ここでの電動車両には、電気自動車は勿論、ハイブリッド自動車も含まれる。また、自動車以外の車両であっても、電動バイク、電動アシスト自転車など、電動により走行又は走行補助が可能な車両の電源としても利用できる。勿論、次の実施形態2の電池も電動車両の駆動用電源として利用できる。
〔実施形態2〕
次に、図2に基づいて、実施形態2に係る非水電解質電池101を説明する。この電池101と実施形態1に係る電池100のとの相違点は、さらに正負極に金属箔10の集電体を備えている点である。以下の説明は、主として相違点について行い、他の構成は実施形態1に係る電池と共通であるため、説明を省略する。
実施形態1に係る電池100では、アルミニウム多孔体11自体が集電体としての機能を兼ねている。但し、この集電体は多孔体であるため、リード線を接続する場合などに広い接触面積を確保することが難しい。そこで、正負極の各アルミニウム多孔体11における固体電解質膜15とは反対側の表面に金属箔10を接合すれば、アルミニウム多孔体11に加えて金属箔10も集電体として機能させることができる。
金属箔10の材質は、Liと合金化する金属でなければ特に限定されない。正極集電体の金属箔としては、AlやNi、これらの合金、ステンレスから選択される1種が好適に利用できる。負極集電体の金属箔としては、例えば、Cu、Ni、Fe、Cr、及びこれらの合金から選択される1種が好適に利用できる。
〔試験例1〕
アルミニウム多孔体を用いた全固体リチウムイオン電池(実施例1)を作製し、その電池の評価を行った。この電池は、図1(B)の構造を有し、アルミニウム多孔体の作製→充填部の充填→乾燥→プレス→固体電解質膜の成膜→電極同士の接合により得られる。
(アルミニウム多孔体の作製)
樹脂体として、気孔率:約95%、気孔径:約15μm、厚さ:約100μmのポリウレタンフォーム(発泡ウレタン)を用意した。
次に、真空蒸着法により、純アルミニウムを溶融・蒸発させ、上記樹脂体の樹脂表面にアルミニウム層を形成した。真空蒸着の条件は、真空度を1.0×10-5Pa、被膜対象である樹脂体の温度を室温にて行い、蒸発源と樹脂体との距離を300mmとした。樹脂体の樹脂表面にアルミニウム層を形成した後、樹脂表面にアルミニウム層が形成された樹脂体(アルミニウム層被覆樹脂体)をSEMにより観察したところ、アルミニウム層の厚さは3μmであった。
上記アルミニウム層被覆樹脂体を、500℃のLiCl‐KClの共晶溶融塩に浸漬すると共に、その状態で、アルミニウム層がアルミニウムの標準電極電位に対して-1Vの卑な電位となるように、アルミニウム層に負電圧を30分間印加した。このとき、溶融塩中に気泡が発生するのが確認された。これは、ポリウレタンの熱分解によるものと推定される。
次いで、上記工程により得られた樹脂体が熱分解された後のアルミニウムでできた骨格(アルミニウム多孔体)を、大気中で室温まで冷却した後、水洗して、表面に付着した溶融塩を除去した。以上により、アルミニウム多孔体を完成させた。
作製したアルミニウム多孔体の気孔率は95%、気孔径は15μm、厚さは100μmであった。また、このアルミニウム多孔体をSEMにより観察したところ、気孔が連通しており、閉気孔が確認されなかった。さらに、このアルミニウム多孔体の表面を15kVの加速電圧でEDXにより定量分析したところ、酸素のピークが観測されなかった。つまり、酸素が検出されなかった。従って、アルミニウム多孔体の表面の酸素量は、EDXによる検出限界以下、即ち、3.1質量%以下であった。この分析に用いた装置は、EDAX社製「EDAX Phonenix 型式:HIT22 136‐2.5」である。
最後に、このアルミニウム多孔体から直径10mmの試料を切り取り、これを多孔体試料1とした。
(充填部の充填〜プレス)
正負極の各活物質及び固体電解質粉末を用意して充填部を作製した。
正極活物質として、平均粒径が6μmのLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末を用意し、負極活物質として、平均粒径が6μmのLi4Ti5O12粉末を用意した。
固体電解質として、組成がLi2S‐P2S5の硫化物系固体電解質の粉末を用意した。この固体電解質粉末は、Li2SとP2S5の各粉末をモル比で80:20の割合で混合し、これをメカニカルミリングすることで作製した。メカニカルミリングの条件は、遊星型ボールミルの回転数を500rpm、反応時間を10時間にて行い、反応容器には、内容積が45mlで、直径10mmのアルミナ製ボールを10個入れたアルミナ製ポットを使用した。また、メカニカルミリング法により得られた固体電解質粉末を190℃で30分間アニール処理した。作製した固体電解質粉末(二次粒子)の平均粒径は5μmであった。
正極用充填部は、上記したLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末と硫化物系固体電解質粉末とを質量%で70:30の割合で混合した。この混合粉末に有機溶剤であるイソブチルニトリルを滴下して混合し、正極合剤スラリーを作製した。このスラリーにはバインダは含まれていない。次に、この正極合剤スラリーを湿式塗工法にてアルミニウム多孔体(多孔体試料1)に塗工して、アルミニウム多孔体の気孔に正極合剤スラリーを充填した。その後、正極合剤スラリーを充填したアルミニウム多孔体を120℃で1時間乾燥させて有機溶剤を除去した。次いで、正極合剤を充填したアルミニウム多孔体試料1を、超硬合金製の治具を用いて油圧プレスにより、540MPaの圧力を加えて加圧成形して、正極用活物質充填材を製造した。加圧成形後の正極の厚さは、80μmであった。
負極用充填部は、上記したLi4Ti5O12粉末と硫化物系固体電解質粉末とを質量%で60:40の割合で混合した。この混合粉末に有機溶剤であるイソブチルニトリルを滴下して混合し、負極合剤スラリーを作製した。このスラリーにはバインダは含まれていない。次に、この負極合剤スラリーを湿式塗工法にてアルミニウム多孔体(多孔体試料1)に塗工して、アルミニウム多孔体の気孔に負極合剤スラリーを充填した。その後、負極合剤スラリーを充填したアルミニウム多孔体を120℃で1時間乾燥させて有機溶剤を除去した。次いで、負極合剤を充填したアルミニウム多孔体を、超硬合金製の治具を用いて油圧プレスにより、540MPaの圧力を加えて加圧成形して、負極用活物質充填材を製造した。加圧成形後の負極用活物質充填材の厚さは、120μmであった。
(固体電解質膜の成膜)
得られた各極用の活物質充填材の片面に、固体電解質膜を成膜する。具体的には、各活物質充填材の表面に、真空蒸着法にてLi2S‐P2S5の固体電解質膜を成膜して正極と負極の各電極を形成した。この膜厚は正負極のいずれの電極においても5μmである。また、いずれの固体電解質膜も非晶質であった。得られた正負極の各電極は、ハンドリング時に形状が崩れるなどの問題は生じなかった。
(リチウムイオン電池の製造)
上述のように得られた各電極を接合してリチウムイオン電池を製造する。具体的には、正極と負極の各電極における固体電解質膜同士を対面させ、その状態で両電極を加熱しながら圧接する。その際の加熱温度は190℃であり、加圧力は16MPaである。この圧接により、各電極における固体電解質膜同士が実質的に境界を有することなく接合されていた。得られた電池の充放電動作を確認したところ、正負極間の短絡は生じておらず、良好な充放電動作が確認できた。
(比較例1)
一方、比較例1として、アルミニウム多孔体の代わりにニッケル多孔体を用いて電極を作製し、さらにリチウムイオン電池を作製した。正負極の電極に用いるアルミニウム多孔体がニッケル多孔体に置換された点を除いて、他の構成は実施例1と同様である。また、ニッケル多孔体の気孔率や気孔径もアルミニウム多孔体のそれらと同様である。
得られた比較例1のリチウムイオン電池は、正負極間に電圧が生じず、電池として機能しなかった。これは、ニッケル多孔体がアルミニウム多孔体に比べて機械的強度が高いため、正負極のニッケル多孔体が電解質層を突き破って短絡を生じたためと考えられる。
〔試験例2〕
次に、正負極の電極にバインダを添加した電極を用いてリチウムイオン電池を作製し、その電池特性を評価した。リチウムイオン電池は、正負極の各合剤(活物質+固体電解質粉末+バインダ)に占めるバインダの割合が1体積%の実施例2と、その割合が4体積%の比較例2を作製した。実施例2及び比較例2は、実施例1とはバインダの含有量が異なる点を除いて、他の構成は共通である。
得られた各電池の電池抵抗を交流インピーダンス法により測定したところ、試験例1で作製した実施例1が200Ωcm2であったのに対し、実施例2は400Ωcm2、比較例2は2,000Ωcm2であった。これらの結果から、正負極の各合剤にバインダを含むと、バインダを含まない実施例1に比べて高抵抗になるが、実施例2のように含有量が少なければ、電池特性の低下はさほど大きくないことがわかる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、Al95原子%‐Cr5原子%のアルミニウム合金を用意し、これをターゲットとして、DCスパッタ法により、実施形態で説明した樹脂体の樹脂表面にアルミニウム合金層を形成すれば、アルミニウム合金の多孔体を得ることができる。その後、アルミニウム合金の多孔体を用いて実施形態1と同様の工程を経ることで、非水電解質電池を構成できる。
本発明の非水電解質電池は、充放電を繰り返すことを前提とした電気機器の電源、例えば各種電子機器の電源に好適に利用できる他、ハイブリッド自動車、電気自動車などの電動車両の電源としての利用も期待できる。
100,101 非水電解質電池
1,2 電極
10 金属箔 11 アルミニウム多孔体 12 充填部
15A 電解質層 15 固体電解質膜

Claims (11)

  1. 正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池に利用される電極であって、
    多数の気孔を有するアルミニウム多孔体と、
    非水電解質電池の活物質を含むと共に、前記多孔体の気孔に充填される充填部と、
    この充填部が充填されたアルミニウム多孔体の表面に成膜され、前記電解質層の一部を構成する固体電解質膜とを備えることを特徴とする電極。
  2. 前記充填部は、
    固体電解質粒子と、
    2体積%未満の含有量のバインダとを含むことを特徴とする請求項1に記載の電極。
  3. 前記充填部は、固体電解質粒子を含み、バインダを含まないことを特徴とする請求項1に記載の電極。
  4. 前記固体電解質膜の厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 前記固体電解質膜の材質が硫化物系固体電解質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極。
  6. 正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池に利用される電極を製造する電極の製造方法であって、
    多数の気孔を有するアルミニウム多孔体を準備する工程と、
    非水電解質電池の活物質を含む充填部を前記多孔体の気孔に充填する工程と、
    前記充填部が充填されたアルミニウム多孔体の表面に、前記電解質層の一部を構成する固体電解質膜を成膜する工程とを含むことを特徴とする電極の製造方法。
  7. 前記充填部は、
    固体電解質粒子と、
    2体積%未満の含有量のバインダとを含むことを特徴とする請求項6に記載の電極の製造方法。
  8. 前記充填部は、固体電解質粒子を含み、バインダを含まないことを特徴とする請求項6に記載の電極の製造方法。
  9. 前記活物質が正極活物質である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極と、
    前記活物質が負極活物質である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極とを備え、
    これら両電極の固体電解質膜同士が接合されて電解質層を構成してなることを特徴とする非水電解質電池。
  10. 正極、負極、及びこれら両電極の間に介在される電解質層を備える非水電解質電池を製造する非水電解質電池の製造方法であって、
    多数の気孔を有するアルミニウム多孔体を一対準備する工程と、
    一方の前記多孔体の気孔に非水電解質電池の正極活物質を含む充填部を充填する工程と、
    他方の前記多孔体の気孔に非水電解質電池の負極活物質を含む充填部を充填する工程と、
    前記充填部が充填された各アルミニウム多孔体の表面に、前記電解質層の一部を構成する固体電解質膜を成膜する工程と、
    これら両固体電解質膜同士を接合して前記電解質層を構成する工程とを含むことを特徴とする非水電解質電池の製造方法。
  11. 請求項9に記載の非水電解質電池を駆動用の電源として備えることを特徴とする電動車両。
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