JP2013082771A - 変性共役ジエン系重合体組成物 - Google Patents

変性共役ジエン系重合体組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】加硫物とした際に低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、実用上十分な破壊強度を有し、かつ組成物の加工性にも優れている、変性共役ジエン系重合体組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合活性末端を持つ共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の該重合活性末端に、式(1)で表される変性剤を反応させて得られ、ガラス転移温度が−50〜−5℃である変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と、(B)式(1)で表される変性剤で変性する方法以外で極性官能基を導入され、ガラス転移温度が−120〜−60℃である変性共役ジエン系重合体と、を含むゴム成分、及び、(C)シリカを含有する変性共役ジエン系重合体組成物。[式中、R〜Rは各々独立して、C1〜20のアルキル基又はC6〜20のアリール基、RはC3〜10のアルキレン基、RはC1〜20のアルキレン基を表し、mは整数1又は2、nは整数2又は3である。]

【選択図】なし

Description

本発明は、変性共役ジエン系重合体組成物に関する。
近年の自動車に対する低燃費化の要求の高まりに伴い、タイヤの転がり抵抗の低減が求められている。そのため、より低発熱性のゴム材料の開発が求められている。一方、安全性の観点からは、湿潤路面でのブレーキ性能(ウェットスキッド抵抗性)に優れ、実用上十分な破壊強度を有するゴム材料が求められている。
このようなゴム材料に用いる補強性充填剤に関して、従来多く用いられてきたカーボンブラックに替えてシリカを用いた場合、低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れたゴム組成物が得られる。しかしながら、親水性表面を有するシリカは、疎水性の高いジエン系ゴムに配合して得られる組成物中では、粒子どうしが凝集し、分散性がよくない。そのため、ジエン系ゴムにシリカ表面と相互作用する官能基を導入することで、シリカ表面との親和性を高め、組成物中でのシリカの分散性を改良して、低発熱性をより優れたものにする試みが行われている。
例えば、特許文献1には、グリシジルアミノ基を有する変性剤を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴムが開示されており、特許文献2には、グリシドキシアルコキシシランを重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴムが開示されている。さらに、特許文献3及び4には、アミノ基を含有するアルコキシシラン類を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム、及びこれらとシリカとの組成物について開示されている。
また、様々な物性のバランスをとるため、通常、ゴム組成物中に複数のジエン系ゴムをブレンドして配合することが行われている。特許文献5には、さらに低発熱性を改良するため、組成物中に2種の変性ジエン系ゴムを配合した組成物が開示されている。
国際公開第01/23467号パンフレット 特開平07−233217号公報 特開2001−158834号公報 特開2003−171418号公報 特開2010−209256号公報
しかしながら、シリカとの反応性が高い官能基を重合体末端に導入した変性ゴムを、シリカと配合してゴム組成物とする場合、混練り工程中にシリカ粒子と変性ゴムの官能基との反応が進行して、ゴム組成物の粘度が上昇し、混練りが困難になったり、混練り後にシートにする際の肌荒れやシート切れが生じやすくなったりするなど、加工性が悪化する傾向がみられる。特に、ゴム組成物中に2種以上の変性ゴムを配合した場合に、この傾向がより顕著にみられる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、加硫物とした際に低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、実用上十分な破壊強度を有し、かつ組成物の加工性にも優れている、変性共役ジエン系重合体組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究検討した結果、重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体の該重合活性末端に、(A)特定構造の変性剤を反応させて得られ、ガラス転移温度が−50〜−5℃である変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と、(B)上記の特定構造の変性剤で変性する方法以外で極性官能基を導入され、ガラス転移温度が−120〜−60℃である(B)変性共役ジエン系重合体と、を含むゴム成分、及び、(C)シリカを含有する変性共役ジエン系重合体組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
詳しくは以下のとおりである。
〔1〕
(A)重合活性末端を持つ共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の該重合活性末端に、下記式(1)で表される変性剤を反応させて得られ、ガラス転移温度が−50〜−5℃である変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と、
(B)下記式(1)で表される変性剤で変性する方法以外で極性官能基を導入され、ガラス転移温度が−120〜−60℃である変性共役ジエン系重合体と、を含むゴム成分、
及び、
(C)シリカ、
を含有する変性共役ジエン系重合体組成物。
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
〔2〕
前記(B)成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を有する官能基を含有し、さらにアルコキシシリル基を含有する変性剤で重合体末端部を変性されている、〔1〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
〔3〕
前記ゴム成分100質量部中の前記(A)成分と前記(B)成分の合計含有量が、50〜100質量部であり、
前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比((A)/(B))が、30/70〜95/5であることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
〔4〕
前記ゴム成分100質量部に対する、前記(C)シリカの含有量が、20〜150質量部である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
本発明によれば、加硫物とした際に低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、実用上十分な破壊強度を有し、かつ組成物の加工性にも優れている、変性共役ジエン系重合体組成物が提供される。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、ゴム成分として、
(A)重合活性末端を持つ共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の該重合活性末端に、下記式(1)で表される変性剤を反応させて得られ、ガラス転移温度が−50〜−5℃である変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と、
(B)下記式(1)で表される変性剤で変性する方法以外で極性官能基を導入され、ガラス転移温度が−120〜−60℃である、変性共役ジエン系重合体と、を含み、さらに、
(C)シリカ、を含有する。
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
まず、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体について説明する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に用いられる、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、好適には、重合活性末端を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の該重合活性末端に、下記式(1)で表される変性剤を反応させて得られる。
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
重合活性末端を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造する方法に限定はなく、例えば、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いて共重合することで得られる。
共役ジエン化合物は、特に限定されず、重合可能な単量体であればよく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル化合物は、特に限定されず、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であればよく、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態では、上記した共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外に、極性基を含有する化合物を共重合させることもできる。極性基を含有する化合物としては、極性基を含有する芳香族ビニル化合物などが挙げられる。極性基を含有する化合物としては、共役ジエン化合物及び/又は芳香族化合物と共重合可能な単量体であればよく、例えば、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン等が挙げられる。
重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物は、特に限定されないが、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、低分子化合物や可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物が挙げられ、また、有機基とリチウムの結合様式においては、炭素−リチウム結合を有する化合物、窒素−リチウム結合を有する化合物、錫−リチウム結合を有する化合物等が挙げられる。
炭素−リチウム結合を有する有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等が挙げられる。
窒素−リチウム結合を有する有機リチウム化合物としては、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド等が挙げられる。
有機リチウム化合物としては、上記のモノ有機リチウム化合物だけでなく、多官能有機リチウム化合物を使用して、又は、モノ有機リチウム化合物と併用して、重合を行うこともできる。
多官能有機リチウム化合物としては、例えば、1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物、1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエン及びジビニルベンゼンの反応物、n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物の反応物等が挙げられる。
さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている公知の有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
有機リチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
有機リチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他のアルカリ金属化合物としては、例えば、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、有機セシウム化合物等が挙げられる。具体的には、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。
また、上述したアルカリ金属化合物は、アルカリ土類金属化合物やその他の有機金属化合物と併用してもよい。
重合開始剤として用いるアルカリ土類金属化合物としては、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機ストロンチウム化合物等が挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等の化合物を用いてもよい。これらのアルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属化合物や、その他の有機金属化合物と併用してもよい。
共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、上述したアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤とし、アニオン重合反応による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることが好ましい。特に、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する共重合体であることがより好ましい。これにより、高変性率の変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を得ることができる。重合様式としては、特に限定されないが、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器は、撹拌機付きの槽型、管型等のものを用いることができる。
共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物は、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させるために用いることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合反応の促進等にも効果がある。
極性化合物としては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。通常、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているような、スチレンの全量と1,3−ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3−ブタジエンの断続的に添加する方法を用いてもよい。
重合温度は、重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。また、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体のコールドフローを防止する観点から、分岐をコントロールするためのジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
以上のような方法で、重合活性末端を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を得た後、その重合活性末端に、下記式(1)で表される化合物(以下、「変性剤」という場合がある。)を反応させる変性工程を行うことで、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を得ることができる。
(式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
1〜R6は、置換されていてもよい。
なお、R1〜R4はアルキル基であることが好ましく、その炭素数は1〜10であることが好ましい。R5、R6のアルキレン基の炭素数は、好ましくは3〜5である。
上記式(1)で表される変性剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等の環状アザシラン化合物が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、mが2、nが3であるものが好ましい。好ましい具体例としては、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンが挙げられる。
上述した(1)で表される変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0〜120℃で、30秒以上反応させることが好ましい。
上述した(1)で表される変性剤の添加量は、特に限定されないが、重合活性末端を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を重合する際に使用した重合開始剤のモル数に対して、(1)で表される変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、0.6〜3倍となる範囲であることが好ましく、0.8〜2.5倍となる範囲であることがより好ましく、0.8〜2倍となる範囲であることが更に好ましい。得られる変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体において、十分な変性率を得る観点から0.6倍以上とすることが好ましく、また、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことや変性剤のコストの観点から3倍以下とすることが好ましい。
なお、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体としては、例えば、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
ブロック共重合体としては、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体(ジブロック)、3個からなる3型ブロック共重合体(トリブロック)、4個からなる4型ブロック共重合体(テトラブロック)等が挙げられる。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックを「S」で表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックを「B」で表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体である場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
低発熱性の組成物を得る観点からは、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が、少ないか又は無いことが好ましい。具体的には、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体の総量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
なお、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの割合は、例えば共重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法により決定することができる。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、不活性溶剤中で更に水素化することによって、二重結合の全部又は一部が飽和結合に変換されたものであってもよい。その場合、耐熱性、耐候性が向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができる。
変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体中の共役ジエン化合物に由来する部分(共役ジエン部)に含まれる不飽和二重結合の水素化率(以下、「水添率」という場合がある。)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。加硫ゴムとして用いる場合には、共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。かかる観点から、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体が水素化されたものである場合、その重合体中の共役ジエン部の水添率は、3〜70%であることが好ましく、5〜65%であることがより好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中の芳香族ビニル化合物に由来する部分に含まれる芳香族二重結合の水添率については、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)により求めることができる。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体のガラス転移温度は、−50〜−5℃であり、好ましくは−40〜−10℃である
ガラス転移温度の測定は、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。ガラス転移温度が上記範囲であると、低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスが優れる加硫物を得ることができる。
ガラス転移温度は、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体中の結合共役ジエン量(重合体鎖中に結合した共役ジエン量)と結合芳香族ビニル量(重合体鎖中に結合した芳香族ビニル量)の比、及び、共役ジエン結合単位中のビニル結合単位の量で制御できる。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体中の結合共役ジエン量は、50〜95質量%であることが好ましく、55〜80質量%であることがより好ましい。また、結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、5〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましい。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
また、共役ジエン結合単位中のビニル結合単位の量は、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ここで、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中(重合体鎖中に結合したブタジエン単位)のビニル結合の量(1,2−結合量)を求めることができる。
破壊強度の高い組成物が得る観点から、結合芳香族ビニル量が25〜45質量%で、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は25〜60モル%であることが好ましい。
本実施形態の効果をより優れたものにする観点から、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のカラムへの吸着量によって求められる、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の変性率(以下、単に「変性率」という場合がある。)、すなわち官能基成分を有する重合体の割合が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上含有する共重合体となるように、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造することが好ましい。
官能基成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。このクロマトグラフィーを用いた方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が挙げられる。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000、更に好ましくは200,000〜600,000であり、より更に好ましくは300,000〜500,000である。上記下限値以上の分子量とすることで、加硫物としたときの強度を一層向上させることができ、上記上限値以下の分子量とすることで、加工性を一層向上させることができる。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00〜3.50、より好ましくは1.10〜3.00である。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の製造方法においては、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、特に限定されず、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9〜11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
また、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体に対しては、重合後のゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
また、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体に対しては、必要に応じて伸展油を添加することができる。伸展油を変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を共重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
伸展油としては、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体100質量部に対し、10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、共重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して共重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
次に、(B)変性共役ジエン系重合体について説明する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に用いられる、(B)変性共役ジエン系重合体は、ガラス転移温度が−120〜−60℃である。
(B)変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、重合、又は共重合することによって得られる共役ジエン系重合体に、極性官能基を導入することで得られる。
共役ジエン化合物としては、特に限定されず、重合可能な単量体であればよく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であればよく、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態では、上記した共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外に、極性基を含有する化合物を共重合させることにより(B)変性共役ジエン系重合体を得ることもできる。極性基を含有する化合物としては、極性基を含有する芳香族ビニル化合物などが挙げられる。極性基を含有する化合物としては、共役ジエン化合物及び/又は芳香族化合物と共重合可能な単量体であればよく、例えば、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン等が挙げられる。
(B)変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度は−120〜−60℃であり、好ましくは−110〜−70℃である。ガラス転移温度は、変性共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量と結合芳香族ビニル量の比、及び、共役ジエン結合単位中のビニル結合単位の量で制御できる。変性共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、75〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることがより好ましい。また、結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜25質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。さらに、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、0〜50モル%であることが好ましく、0〜25モル%であることがより好ましい。
(B)変性共役ジエン系重合体の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000、更に好ましくは200,000〜600,000である。上記下限値以上の分子量とすることで、加硫物としたときの強度を一層向上させることができ、上記上限値以下の分子量とすることで、加工性を一層向上させることができる。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00〜3.50、より好ましくは1.10〜3.00である。
共役ジエン系重合体に極性官能基を導入し、(B)変性共役ジエン系重合体を得る方法としては、例えば、共役ジエン系重合体の重合活性末端部に極性官能基を含む変性剤を反応させる方法、極性官能基を含む重合開始剤を用いて共役ジエン系重合体を重合することで、重合開始末端部に極性官能基を導入する方法、共役ジエン系重合体の重合時に極性基含有単量体を共重合することにより、重合体鎖中に極性官能基を導入する方法、重合体にラジカル反応などの後処理を施すことで、極性官能基を重合体鎖にグラフトさせる方法、またはこれらの2つあるいはそれ以上の方法の組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、共役ジエン系重合体の重合活性末端部に極性官能基を含む変性剤を反応させて得られる変性共役ジエン系重合体が、低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れた組成物を得る上で好ましい。
上記の、共役ジエン系重合体の重合活性末端部に極性官能基を含む変性剤を反応させる方法において使用する活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る方法としては、例えば、以下の<1>、<2>が挙げられる。
<1>共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いて重合または共重合することで、重合活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る方法。
<2>共役ジエン化合物を、必要に応じて他の単量体とともに、希土類元素含有化合物を含む重合触媒系を用いて重合することによって、重合活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る方法。
<1>の変性共役ジエン系重合体を製造する方法において、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いて重合または共重合することで重合活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程については、上述の(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の製造方法の当該工程に準じて製造することができる。
<2>の希土類元素含有化合物を含む重合触媒系を用いる方法は、共役ジエン化合物を重合でき、得られる重合体の重合活性末端に変性剤を反応させられる方法であればよく、特に限定されないが、ランタン系列金属化合物を用い、シス−1,4−結合の含有量が90%以上の変性共役ジエン系重合体を得る方法であることが好ましい。重合触媒系としては、例えば、(a)ランタン系列元素の有機化合物、(b)有機アルミニウム化合物、及び(c)ハロゲン含有ルイス酸化合物からなる複合触媒が挙げられる。この複合触媒存在下に、共役ジエン化合物を塊状重合もしくは炭化水素溶媒中で溶液重合することができる。
(a)ランタン系列元素の有機化合物としては、式LnY3で表される化合物が挙げられる。ここでLnはランタン系列元素を表し、具体的には原子番号が57〜71の周期律表のランタン系列元素であって、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロジウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムが挙げられる。これらの中でも、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム及びガドリニウムが重合活性の観点から好ましく、ネオジムが、重合活性及び工業的入手のし易さのバランスの観点からより好ましい。また、Yは酸の残基を表し、アルコール、フェノール、チオアルコール、チオフェノール、アミン、カルボン酸、有機リン酸、有機亜リン酸の塩であることが有機溶剤への溶解性の観点から好ましい。これらのランタン系列元素の有機化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
(a)ランタン系列元素のアルコール化合物(アルコキサイド及びフェノキサイド)としては、例えば、式Ln(OR73で表される化合物が挙げられる。ここで、R7は、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。好ましいアルコール及びフェノールの具体例としては、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ノニルフェノール、ベンジンアルコール等が挙げられる。
(a)ランタン系列元素のチオアルコール化合物(チオアルコキサイド及びチオフェノキサイド)としては、例えば、式Ln(SR83で表される化合物が挙げられる。ここで、R8は、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。
(a)ランタン系列元素のアミン化合物としては、例えば、式Ln(NR9 23で表される化合物が挙げられる。ここで、R9は、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。
(a)ランタン系列元素のカルボン酸化合物としては、例えば、式Ln(OCOR103で表される化合物が挙げられる。ここで、R10は、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。カルボキシル基は、炭化水素に対して、第1級、第2級及び第3級のいずれの結合であってもよい。好ましいカルボン酸の具体例としてはオクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸(2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)、安息香酸、ナフテン酸、炭素数10を中心とするバーサチック酸(例えば、シェル化学の商品名バーサチック酸10)が挙げられる。溶解性の観点からα位に分岐のあるカルボン酸が好ましく、具体例としては2−エチル−ヘキサン酸、イソステアリン酸、2−イソプロピル−5−メチルヘキサン酸、バーサチック酸が挙げられる。
(a)ランタン系列元素の有機リン酸化合物としては、例えば、式Ln(OPOR11123で表される化合物が挙げられる。ここで、R11、R12は、炭化水素基を表し、同一又は異なっていてもよく、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。好ましい有機リン酸化合物の具体例として、トリス(リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
(a)ランタン系列元素の有機亜リン酸化合物としては、例えば、式Ln(OPR13143で表される化合物が挙げられる。ここで、R13、R14は、炭化水素基を表し、同一又は異なっていてもよく、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基、アルキルもしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状であってもよい。好ましい有機亜リン酸化合物の具体例として、トリス(亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(亜リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
上記した(a)ランタン系列元素の有機化合物の中では、有機溶剤への溶解性の観点から、カルボン酸化合物及び有機リン酸化合物が好ましく、カルボン酸化合物がより好ましい。また、ランタン系列元素の有機化合物としては、カルボン酸化合物と有機リン酸化合物との複合塩構造のものであってもよい。
(b)有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、重合活性の観点から好ましくは式 AlR15 (3-p)pで表される化合物である。ここで、R15は炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜8の範囲の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、又は炭素数6〜20を表し、より好ましくは6〜12の範囲のアルキルもしくはアルケニル置換芳香族炭化水素基である。pは0、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、Hは水素原子を表す。また、アルモキサン化合物(炭素とアルミニウムの直接結合を有し、酸素とアルミニウムの直接結合も持つ化合物)であってもよい。
好ましい有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムジハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサン等が挙げられ、特に好ましい例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサンが挙げられる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
(c)ハロゲン元素含有ルイス酸化合物としては、周期律表のIIIb、IVb又はVbに属する元素のハロゲン化合物が挙げられ、重合活性の観点から、好ましくはアルミニウム元素のハロゲン化物ないしは有機金属ハロゲン化物が挙げられる。ハロゲン元素としては、重合活性の観点から塩素又は臭素が好ましい。これらの化合物の例としては、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン及び四塩化錫が挙げられ、これらの中でも、入手の容易さの観点からジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド及びエチルアルミニウムジブロマイドが好ましい。
使用される複合触媒の各成分量や組成比は、特に限定されず、その目的によって適宜選択することができる。共役ジエン系単量体100gに対する成分(a)の使用量は、通常、0.01〜5ミリモルであり、好ましくは0.05〜1ミリモルの範囲である。共役ジエン系単量体100gに対する成分(b)の使用量は、通常、0.1〜50ミリモルであり、好ましくは0.5〜10ミリモルの範囲である。共役ジエン化合物100gに対する成分(c)の使用量は、その分子中に含まれるハロゲン原子数で異なるものとなり、ランタン系列元素(Ln)1モルに対するハロゲン原子数で表し、通常、ハロゲン原子/Ln=1〜6、好ましくは2〜4の範囲である。
上記の<1>または<2>の方法で得られた、重合活性末端を有する共役ジエン系重合体の該重合活性末端に前記式(1)で表される化合物以外の極性官能基を含む変性剤を反応させることで、(B)変性共役ジエン系重合体を得る。
共役ジエン系重合体の活性末端に反応させる変性剤としては、シリカとの反応性及び/又は親和性を有する官能基を含む変性剤であることが好ましく、例えば窒素原子及び/又は酸素原子を有する官能基を含有する変性剤であることが好ましく、さらにアルコキシシリル基を含有することがより好ましい。
窒素原子及び/又は酸素原子を有する官能基を含有し、さらにアルコキシシリル基を含有する変性剤としては、2つ以上の窒素原子を含む環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランや、その他の環状アミン、非環状アミン、イミン、イソシアネート、カルボン酸エステル、エポキシ等の官能基を含有するヒドロカルビルオキシシラン、環状アザシラン、が挙げられる。
2つ以上の窒素原子を含む環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−(ビストリメチルシリル)イミダゾリジン、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]等が挙げられる。
その他の環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシエチルシラン等が挙げられる。
非環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン,[3−ジブチルアミノプロピル]トリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
イミノ基を含有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール,N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール等が挙げられる。
イソシアネート基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
カルボン酸エステル基を含有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、N-(2-メトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノメチルトリメトキシシラン、N-(2-メトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノエチルトリメトキシシラン、N-(2-メトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-エトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノメチルトリエトキシシラン、N-(2-エトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノエチルトリエキシシラン、N-(2-エトキシカルボニル)メチル-N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-エトキシカルボニル)エチル-N-トリメチルシリル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を含有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
環状アザシラン化合物の具体例を下記に示す。
例えば、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N−エチル−アザ−2,2−ジエトキシ−4−メチルシラシクロペンタン、N−アリル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
<1>アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いた場合には、これらの変性剤の中でも、2つ以上の窒素原子を含む環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランを使用することが好ましく、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジンが好ましく用いられる。
上述した変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0〜120℃で、30秒以上反応させることが好ましい。
上述した変性剤の添加量は、特に限定されないが、重合開始剤のモル数に対して、変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、0.6〜3倍となる範囲であることが好ましく、0.8〜2.5倍となる範囲であることがより好ましく、0.8〜2倍となる範囲であることが更に好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率を得る観点から0.6倍以上とすることが好ましく、変性剤のコストの観点から3倍以下とすることが好ましい。
また、<2>希土類元素含有化合物を含む重合触媒系を用いた場合には、活性末端部と変性剤との反応性の高い、カルボン酸エステルを含有するヒドロカルビルオキシシランを用いることが好ましい。カルボン酸エステルを含有するヒドロカルビルオキシシランの使用量は、特に限定されないが、共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、カルボン酸エステル基が0.5〜1モルとなるような量が、好ましい
一般には有機アルミニウムの炭素−金属結合あたり0.01〜1.5モル、好ましくは0.1〜1.0モルのカルボン酸エステル量で使用する。アミノ基含有化合物は単独もしくは不活性炭化水素溶液として添加することができる。またアミノ基含有化合物は一度に、分割してあるいは連続的に添加できる。分岐変性反応は通常重合温度に近い温度で、数分間〜数時間行う。好ましくは5分間〜2時間の範囲である。
また、<1>アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いた場合には、コールドフローを抑制するとともに、加工性を改良するため、上記変性剤を反応させる前又は後に、共重合体の活性末端と上記変性剤以外の多官能性変性剤を反応させることもできる。
多官能性変性剤としては、好適には、エポキシ基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、酸無水物基、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基、エピチオ基、チオカルボニル基、チオカルボン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基、チオカルボン酸アミド基、イミノ基、エチレンイミノ基、ハロゲン基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、共役ジエン基、アリールビニル基から選択される1種以上の官能基を有する化合物が用いられる。
なお、官能基のモル数の計算において、エポキシ基、カルボニル基、エピチオ基、チオカルボニル基、イミノ基、エチレンイミノ基、ハロゲン基、共役ジエン基、アリールビニル基、アルコキシシリル基の1個当たりのアルコキシ基は1官能として、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、酸無水物基、チオカルボン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基、チオカルボン酸アミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基は2官能として、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基は3官能として計算される。本実施形態において好ましく用いることのできる多官能性変性剤は、1分子中の上記の官能基の官能数の和が2以上のものである。より好ましくは官能数の和が3以上の多官能性変性剤である。
多官能性変性剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェニル基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4―ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミノ化合物;エポキシ変性シリコーン、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ基と他の官能基を有する化合物が挙げられる。
また、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、アルキルトリフェノキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。
また、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3,5−ベンゼントリイソシアネート等のイソシアネート化合物が挙げられる。
また、例えば、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、モノメチルトリクロロケイ素、モノエチルトリクロロケイ素、モノブチルトリクロロケイ素、モノヘキシルトリクロロケイ素、モノメチルトリブロモケイ素、ビストリクロロシリルエタン等のハロゲン化シラン化合物;モノクロロトリメトキシシラン、モノブロモトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジブロモジメトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリブロモメトキシシラン等のアルコキシハロゲン化シラン化合物等が挙げられる。
また、例えば、四塩化錫、四臭化錫、モノメチルトリクロロ錫、モノエチルトリクロロ錫、モノブチルトリクロロ錫、モノフェニルトリクロロ錫、ビストリクロロスタニルエタン等のハロゲン化錫化合物;トリクロルフォスフィン、トリブロモフォスフィン等のポリハロゲン化リン化合物;トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の亜リン酸エステル化合物;トリメチルフォスフェイト、トリエチルフォスフェイト等のリン酸エステル化合物が挙げられる。
また、例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル等のカルボン酸エステル化合物;無水ピロメリット酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の酸無水物基含有化合物;アジピン酸ビスジメチルアミド、ポリメタクリル酸ジメチルアミド等のアミド基含有化合物;4,4’−ジアセチルベンゾフェノン等のカルボニル基含有化合物;ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼンオリゴマー等のアリールビニル基含有化合物;トリクロロプロパン、トリブロモプロパン、テトラクロロブタン、3−クロロプロポキシトリメトキシシラン等のハロゲン化炭化水素基含有化合物が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
さらに好ましい多官能性変性剤としては、シリカとの親和性の大きい官能基を有するものが挙げられ、またカップリングによる分子量の向上効果の大きい4〜6官能のポリエポキシ化合物が挙げられる。特に好ましくは、分子中にアミノ基を含むグリシジル化合物、更には1分子中にジグリシジルアミノ基を2個又は3個有する化合物である。そのような化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの多官能性変性剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体及び(B)変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を併用することができる。このようなゴム状重合体としては、特に限定されず、例えば共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した(A)、(B)成分以外のゴム状重合体の重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。また、低分子量のいわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物中に含まれるゴム成分100質量部中に対して、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と(B)変性共役ジエン系重合体の合計含有量は、50〜100質量部であることが好ましく、70〜100質量部であることがより好ましい。低発熱性に優れた加硫物を得るため、50質量部以上であることが好ましい。また、変性共役ジエン系重合体組成物に含まれる(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(B))は30/70〜95/5であることが好ましく、50/50〜90/10であることがより好ましい。なお、これらのゴム成分に伸展油が添加されている場合には、伸展油分の質量を除いた質量をゴム成分の質量として計算する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に用いられる(C)シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できる。中でも破壊特性の改良効果並びにウェットスキッド抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
変性共役ジエン系重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカのBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m2/gであることが好ましく、170〜250m2/gであることがより好ましい。また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m2/g以下のシリカ)と、比較的比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上のシリカ)と、を組み合わせて用いることができる。これにより、良好な耐摩耗性や破壊特性と低発熱性を高度にバランスさせることができる。
上記のように、変性共役ジエン系重合体組成物における(C)シリカの配合量は、(A)成分と(B)成分を含むゴム成分100質量部に対し、20〜150質量部であることが好ましく、30〜120質量部がより好ましい。シリカの配合量は、補強効果の発現の観点から、20質量部以上とすることが好ましく、低発熱性の観点から、150質量部以下とすることが好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、カーボンブラックを含有させてもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えばSRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上のカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、3〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から、3質量部以上とすることが好ましく、低発熱性の観点から、100質量部以下とすることが好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカやカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を含有させてもよい。金属酸化物とは、化学式Mxy(Mは金属原子を表し、x及びyは各々1〜6の整数を表す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も用いることができる。
金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカとの相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、(C)シリカ100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が更に好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施形態においては、ゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが、(A)成分や(B)成分との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、20〜60質量部が更に好ましい。ゴム用軟化剤の配合量がゴム成分100質量部に対して100質量部を超えると、ブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがある。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、(B)変性共役ジエン系重合体、その他任意で添加されるゴム状重合体、(C)シリカ、及び、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の任意で添加される添加剤を混合することにより製造することができる。このときの混合方法については特に限定されるものではない。例えばオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、例えば有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。加硫剤の使用量は、通常は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、通常120〜200℃であり、好ましくは140〜180℃である。
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。加硫促進剤の使用量は、通常、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、試料の分析は下記に示す方法により行った。
(1)結合スチレン量
試料100mgをクロロホルムで100mLにメスアップ、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製、分光光度計「UV−2450」)。
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量、シス−1,4−結合量)
試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた(日本分光社製、フーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR230」)。
(3)ムーニー粘度
ムーニー粘度計(上島製作所社製、「VR1132」)を用い、JIS K6300に準拠しL形ローターを用いて、ムーニー粘度を測定した。測定温度は110または100℃で、まず、試料を1分間予熱した後、2rpmでローターを回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML1+4)とした。
(4)ガラス転移温度(Tg)
ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製、示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、−100℃、あるいはガラス転移温度よりも30℃以上低い温度のいずれかの、より低い温度から、20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
(5)分子量
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー社製 TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製、「HLC8020」)を用いた。測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLをGPC測定装置に注入して測定した。
(6)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
・試料溶液の調製:
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
・ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:
THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
・シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
・変性率の計算方法:
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。

変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、(B)変性共役ジエン系共重合体を、以下のようにして製造した。
(製造例1)
内容積10Lで、内部の高さと直径の比(L/D)が4であり、底部に入り口、頂部に出口を有し、撹拌機及び温度調整用のジャケットを有するオートクレーブを2基直列に連結し、1基目を重合反応器として、2基目を変性反応器とした。
予め、水分等の不純物を除去した、1,3−ブタジエンを16.0g/分、スチレンを8.0g/分、n−ヘキサンを125.6g/分の条件で混合した。この混合溶液が1基目の反応器に入る直前で、不純物不活性化処理用のn−ブチルリチウムを0.075mmol/分でスタティックミキサーで混合した後、1基目反応器の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.020g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.150mmol/分の速度で、1基目反応器の底部へ供給し、反応器頂部での反応器内の重合体溶液の温度が90℃となるように重合反応を継続させた。
1基目の反応器頂部より連続的に流出する重合体溶液を2基目の反応器底部に供給し、更に、式(1)で表される変性剤として2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを0.045mmol/分の速度で2基目反応器の底部から添加し、2基目の反応器内部の重合体溶液の温度を85℃に保ちながら変性反応を実施した。
2基目反応器の頂部から流出した変性重合体溶液に酸化防止剤(BHT)のn−ヘキサン溶液を、変性重合体100gあたり酸化防止剤0.2gとなるように0.048g/分で連続的に添加し、変性反応を終了させ、その後溶媒を除去し、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(試料a)を得た。
試料aを分析した結果、110℃のムーニー粘度は152であった。また、結合スチレン量は33質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は38モル%、DSCで測定したガラス転移温度は−25℃、変性率は66%であった。試料aの分析結果を表1に示す。
(製造例2)
1,3−ブタジエンの添加速度を16.5g/分、スチレンの添加速度を7.5g/分、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンの添加速度を0.012g/分とし、式(1)で表される変性剤を2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサンに替えた以外は製造例1と同様にして、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(試料b)を得た。
試料bを分析した結果、110℃のムーニー粘度は155であった。また、結合スチレン量は31質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は33モル%、DSCで測定したガラス転移温度は−36℃、変性率は68%であった。試料bの分析結果を表1に示す。
(製造例3)
1,3−ブタジエンの添加速度を15.8g/分、スチレンの添加速度を8.2g/分、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンの添加速度を0.040g/分とし、1基目反応器頂部での重合体溶液の温度が83℃となるようした以外は製造例1と同様にして、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(試料c)を得た。
試料cを分析した結果、110℃のムーニー粘度は148であった。また、結合スチレン量は34質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は58モル%、DSCで測定したガラス転移温度は−12℃、変性率は65%であった。試料cの分析結果を表1に示す。
(製造例4)
変性剤を1,2−ビス(3−トリエトキシシリル)エタンに替え、添加量を0.0375mmol/分とした以外は製造例1と同様にして、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(試料d)を得た。
試料dを分析した結果、110℃のムーニー粘度は152であった。また、結合スチレン量は33質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は38モル%、DSCで測定したガラス転移温度は−25℃であった。なお、試料dはシリカ系カラムに吸着されないため、変性率は測定できなかった。試料dの分析結果を表2に示す。
(製造例5)
重合開始用のn−ブチルリチウムの添加速度を0.120mmol/分に、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンの添加速度を0.018g/分とし、変性剤を(3−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランに替え、添加量を0.13mmol/分とした以外は製造例1と同様にして、変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(試料e)を得た。
試料eを分析した結果、110℃のムーニー粘度は114であった。また、結合スチレン量は33質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は38モル%、DSCで測定したガラス転移温度は−25℃、変性率は51%であった。試料eの分析結果を表2に示す。
(製造例6)
内容積10Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン920g、シクロヘキサン4830g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.02gを反応器へ入れ、反応器内温を50℃に保持した。重合開始剤として、n−ブチルリチウム8.62mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は82℃に達した。反応温度のピーク到達2分後、反応器に多官能変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.65mmol添加することで重合体の一部をカップリングした後、さらに1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを5.75mmol添加し、80℃で5分間変性反応を実施した。
この重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)1.8gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性共役ジエン系重合体(試料f)を得た。
試料fを分析した結果、100℃でのムーニー粘度は57であった。ミクロ構造はビニル結合量が15%であった。また、変性率は88%であった。試料fの分析結果を表3に示した。
(製造例7)
内容積10Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン855g、スチレン95g、シクロヘキサン4640g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.03gを反応器へ入れ、反応器内温を50℃に保持した。重合開始剤として、n−ブチルリチウム8.25mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は80℃に達した。反応温度のピーク到達2分後、反応器に多官能変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.61mmol添加することで重合体の一部をカップリングした後、さらに(3−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを5.50mmol添加し、77℃で5分間変性反応を実施した。
この重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)1.9gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性共役ジエン系重合体(試料g)を得た。
試料fを分析した結果、100℃でのムーニー粘度は59であった。結合スチレン量は10質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量が17%であった。また、変性率は86%であった。試料gの分析結果を表3に示した。
(製造例8)
十分に乾燥した300ミリリットル耐圧ミニボンベの内部を乾燥窒素で十分に置換した。そこに、1,3−ブタジエン20gを含む20質量%のシクロヘキサン溶液、及び、予めイソステアリン酸(和光純薬工業社製、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)のナトリウム塩と塩化ネオジムを反応させて得られたイソステアリン酸ネオジム2.7ミリモルを含む30質量%のシクロヘキサン溶液を挿入して、室温で5分間振とうした。続いて、ジイソブチルアルミニウムハイドライド22.5ミリモルを含む1モル濃度のヘキサン溶液を更に加えて振とうした後、5分間静置した。そして、エチルアルミニウムセスキクロライドの1モル濃度のヘキサン溶液をCl/Nd=3の元素比になるように加えて振とうした後、20分間静置することで重合開始剤を調製した。
次に、十分に乾燥した内容積11リットルの攪拌機付き耐圧オートクレーブの内部を乾燥窒素で十分置換した。そこに、900gの1,3−ブタジエンを含む6kgのシクロヘキサン混液をオートクレーブ内に仕込み、あらかじめ調製した重合開始剤溶液を加えて,50℃で2時間重合を行った。重合反応後、変性剤としてN−(2-エトキシカルボニル)エチル−N-トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランを2.8ミリモル添加し、50℃で1時間反応させた。その後、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール5gを含むメタノール/シロクヘキサン混合溶液100mLを加えて反応を停止させた。そして、ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、シス結合量の高い変性共役ジエン系重合体hを得た。
試料hを分析した結果、100℃でのムーニー粘度は56であった。結合スチレン量は0質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量が1%、シス結合量が96%、ガラス転移尾温度が−103℃であった。また、変性率は46%であった。試料gの分析結果を表3に示した。
*1
MSPASP:2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン(式(1)で表される変性剤)
MSBASH:2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン(式(1)で表される変性剤)
BTESE:1,2−ビス(3−トリエトキシシリル)エタン
DMATMS:(3−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
TESMP:1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン
ECATMS:N−(2-エトキシカルボニル)エチル−N-トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン
TGAMH:テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
*2 宇部興産社製の非変性高シスポリブタジエンゴム UBEPOL BR150
[実施例1〜6、比較例1,2]
表1〜3に示す試料(試料a〜i)を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
(A)変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、(B)変性共役ジエン系重合体の合計:100.0質量部
シリカ(エボニック デグサ社製、Ultrasil VN3):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストKH(N339)):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製、Si75):6.0質量部
S−RAEオイル(ジャパンエナジー社製、JOMOプロセスNC140):42.0質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:1.5質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:2.2質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
合計:239.9質量部
上記した材料を下記の方法により混練してゴム組成物(変性共役ジエン系重合体組成物)を得た。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(試料a〜i)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155〜160℃で配合物を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155〜160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫し、ゴム組成物を得た。加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。物性測定結果を表4に示した。
ゴム組成物の物性は、下記の方法により測定した。
(1)ゴム組成物ムーニー粘度
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に準拠してL形ロータを用い、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。値が小さいほど加工性に優れることを示す。
(2)300%モジュラス、引張強さ、伸び
JIS K6251の引張試験法に準拠して測定した。
表4、5に、比較例1の測定値を100としたときの相対値を示す。
(3)粘弾性パラメータ
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδを、ウェットスキッド抵抗性の指標とした。値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを、低発熱性の指標とした。値が小さいほど低発熱で、省燃費性能が良好であることを示す。
表4、5に、比較例1の測定値を100としたときの相対値を示す。
まず、(A)成分として式(1)以外の変性剤で変性した共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体dを用い、(B)成分として市販の非変性高シスポリブタジエンゴムiを用いた、比較例1のゴム組成物と、実施例のゴム組成物とを比較する。
表4〜5に示す通り、(A)成分として、比較例1で使用したものと同等のガラス転移温度を有する式(1)の変性剤で変性した変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体aを用い、(B)成分として、変性共役ジエン系重合体f〜hを用いた実施例1、3及び4の変性共役ジエン系重合体組成物は、50℃のtanδが低く低発熱性が実現されているとともに、0℃のtanδが高くウェットスキッド抵抗性に優れており、しかも、引張強さ・伸び共に比較例1と同等以上であることが確認された。
また、(A)成分の配合量を減らした実施例2及び、(A)成分として比較例1で使用したものよりもガラス転移温度の低い式(1)の変性剤で変性した変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体bを用いた実施例5においても、比較例1と同等程度のウェットスキッド抵抗性を示しつつ、優れた低発熱性と引張強度特性を実現している。
また、(A)成分として比較例1で使用したものよりもガラス転移温度の高い式(1)の変性剤で変性した変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体cを用いた実施例6においては、特に優れたウェットスキッド抵抗性と、優れた低発熱性を実現している。
次に、(A)成分として式(1)以外の変性剤(ただし、窒素原子とアルコキシシリル基を有する)で変性した変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体eを用い、(B)成分として、変性共役ジエン系重合体fを用いた、比較例2のゴム組成物と、実施例のゴム組成物とを比較する。
共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の変性剤が式(1)で表されるものではないことだけが実施例1と異なる比較例2は、低発熱性、ウェットスキッド抵抗性、引張強度特性については実施例1と同等であった。しかしながら、比較例2では(A)成分の粘度は実施例1のそれよりも低いにもかかわらず、配合物の粘度は著しく高く、加工性に劣っていた。このことから、共役ジエン系重合体として、変性共役ジエン系重合体を使用する場合に生じるゴム組成物の加工性の低下は、式(1)の変性剤で変性した変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体によって抑制できることが分かる。
本発明の変性共役ジエン系重合体組成物は、低発熱性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、実用上十分な破壊強度を有し、かつ組成物の加工性にも優れており、タイヤトレッド、履物、工業用品等の各種部材の材料として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. (A)重合活性末端を持つ共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体の該重合活性末端に、下記式(1)で表される変性剤を反応させて得られ、ガラス転移温度が−50〜−5℃である変性共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体と、
    (B)下記式(1)で表される変性剤で変性する方法以外で極性官能基を導入され、ガラス転移温度が−120〜−60℃である変性共役ジエン系重合体と、を含むゴム成分、及び、
    (C)シリカ、
    を含有する、変性共役ジエン系重合体組成物。
    (式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
  2. 前記(B)成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を有する官能基を含有し、さらにアルコキシシリル基を含有する変性剤で重合体末端部を変性されている、請求項1記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
  3. 前記ゴム成分100質量部中の前記(A)成分と前記(B)成分の合計含有量が、50〜100質量部であり、
    前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比((A)/(B))が、30/70〜95/5であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
  4. 前記ゴム成分100質量部に対する、前記(C)シリカの含有量が、20〜150質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
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