JP2013079158A - 白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法および製造装置 - Google Patents

白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】不純物の含有量の少ない白金含有金属酸化物微粒子含有水を製造できる白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】炭酸酸性水溶液中にニッケルを溶解させた炭酸ニッケル溶液に、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウムを水素型陽イオン交換樹脂塔に通水することでナトリウムを除去したヘキサヒドロキソ白金酸溶液を混合し、アルゴンガスを通気することにより混合溶液中から二酸化炭素を除去する。混合溶液から炭酸を除去して溶液のpHを中性に近づけることで酸化ニッケルを析出させることで白金含有金属酸化物微粒子含有水を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、白金含有金属酸化物微粒子の製造方法および製造装置に係り、特に、不純物含有量の少ない酸化物と貴金属の複合粒子である白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法および製造装置に関する。
沸騰水型原子炉では、原子炉内に設置されている炉内構造物、あるいは原子炉に接続された配管の応力腐食割れを抑制すること、及び定期検査時における作業員の放射線被ばくを低減することが、原子力プラントの稼働率を向上させる観点から重要な課題である。
これらの課題のうち、応力腐食割れに関して以下の事項が知られ、対策されている。まず、炉内構造物、及び原子炉に接続された配管に接する高温高圧の冷却水(以下、炉水という)は、原子炉内の炉心での炉水の放射線分解により生じた酸素及び過酸化水素を含んでいる。そして、炉水の酸素濃度及び過酸化水素濃度が高いほど応力腐食割れの発生が顕著であることが知られており、この対策としては炉水の酸素濃度及び過酸化水素濃度を低減することによって、炉水に接触する炉内構造物及び配管のそれぞれにおける応力腐食割れが抑制できることが知られている。
また、その応力腐食割れを抑制する好適な方法として、炉内構造物の表面または原子炉に接続される配管の内面に貴金属を添着し、炉水に水素を注入する技術が、特許文献1に記載されている。
また、酸化チタン、あるいは酸化チタンに貴金属を添着した酸化物粒子を原子炉内の炉水に注入して、光触媒作用により炉内構造物等の応力腐食割れを抑制する方法が、特許文献2に開示されている。
他方、定期検査時における作業員の放射線被ばくを低減に関して以下の事項が知られ、対策されている。
原子力プラントの定期検査時において作業員の放射線被ばくをもたらす主要な放射線源は、原子炉に接続される配管の接液面である内面に付着したコバルト60である。原子力プラントでは、プラント構造部材の腐食により炉水に溶出した非放射性のコバルトが、炉心で中性子の照射を受けて放射化し、コバルト60等の放射性コバルトになる。
コバルト60は、原子炉に接続される配管の炉水に接触する内面における酸化皮膜の生成に伴ってその内面に付着して蓄積される。コバルト60が、配管の内面に付着、蓄積することを抑制する方法として、亜鉛を含む化合物を注入する方法が特許文献3に開示されている。
以上の事例は、応力腐食割れと放射線被ばくのそれぞれの課題に対する対策を開示しているが、これらの課題を同時に達成しようとするものもある。
特許文献4では、原子力プラントにおいて、プラント構造部材の応力腐食割れを抑制し、且つ定期検査時での作業員の放射線被ばくを低減するために、表面に亜鉛酸化物及び白金を添着したアルミ酸化物ナノ粒子、表面に白金を添着した亜鉛酸化物ナノ粒子、あるいは表面に白金を添着した酸化ニッケルナノ粒子を炉水中に注入し、更に水素を炉水に注入する方法を提案している。
なお、以上の特許文献は原子力分野に使用することを前提とする技術である。これに対し、医療分野への適用を意図したものとして、貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子の製造方法が、特許文献5に記載されている。
この貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子の製造方法では、γFeナノ粒子またはFeナノ粒子を塩化白金酸カリウム溶液に分散させ、この溶液に電離放射線(または超音波)を照射してγ−Feナノ粒子またはFeナノ粒子に白金を担持させている。また白金を添着したγ−Feナノ粒子またはFeナノ粒子を、磁石を用いてその溶液から回収し、精製している。
特開平7−311296号公報 特開2001−4789号公報 特開昭58−79196号公報 特開2003−215289号公報 WO2004/083124号公報
以上説明した特許文献1から特許文献4では、種々の試薬などを原子炉炉心内に投入しているが、原子炉に注入する試薬は、注入する目的の試薬及び水以外の不純物の量を低減することが重要である。不純物が炉水に持ち込まれると、炉水の電気伝導率を増加させる可能性があり、原子力プラントのプラント構造部材の腐食抑制の観点から好ましいことではない。
原子力プラントのプラント構造部材の腐食を抑制する観点からは、炉水の導電率を低減することが望ましい。更に、不純物は原子炉の炉心で中性子照射により放射化して被ばく源になる可能性がある。被ばく低減の観点からも不純物含有量が少ないことが望ましい。
このように、原子力分野では種々の目的で原子炉に試薬などを投入するが、不純物が投入されることによる弊害もある。この点に関し、不純物を除去、回収することが考えられ、例えば原子力以外の医療の分野でも不純物の混入は好ましくないことから、回収技術が提案されている。
先に説明した許文献5では、担体として磁性金属酸化物微粒子を用い、製造された貴金属・磁性金属酸化物複合微粒子を、磁石を用いて溶液から回収することによって、不純物(白金、γ−Fe、Fe及び水以外の金属及び化合物)を除去している。
しかしながら、担体として、亜鉛酸化物微粒子またはアルミ酸化物微粒子あるいはニッケル酸化物を用いた場合には、これらが磁性体ではない(非磁性体である)ため、磁石により回収することができない。
磁石による除去以外の方法として、遠心分離することも考えられる。具体的には、遠心分離により亜鉛酸化物微粒子(またはアルミ酸化物微粒子またはニッケル酸化物微粒子)を沈殿させること、及び上澄み水を捨てることを繰り返して洗浄することにより、不純物を除去することが考えられる。しかし、このような方法で不純物を除去する場合には、不純物の除去に非常に手間が掛かる。
製造された亜鉛酸化物微粒子(またはアルミ酸化物微粒子またはニッケル酸化物微粒子)を、フィルターを用いて回収することによって不純物を除去することが考えられるが、微粒子をフィルターで回収することは容易でない。
本発明の背景としては、原子炉での応力腐食割れと放射線被ばくの課題を同時に対策できる手法として特許文献4の白金含有金属酸化物微粒子含有水を使用して原子炉に注水することを考えている。ここでの金属は、非磁性体の亜鉛、アルミニウム、ニッケルであるが、不純物を低減しながら使用することが求められる。
以上のことから本発明の目的は、不純物の含有量の少ない白金含有金属酸化物微粒子含有水を製造できる白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法および製造装置を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液と、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を混合した混合溶液のPHを上昇させて混合溶液中の炭酸を除去することである。
また、炭酸金属溶液金属に溶解させた金属がニッケルイオン、アルミイオン、亜鉛イオンのいずれかである。
また、混合溶液のPHを上昇させて混合溶液中の炭酸を除去するために不活性ガス又は水素ガスを混合溶液に通気する。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液と、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を混合した混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するとともに、混合溶液に電離放射線を照射してから、あるいは電離放射線を照射しながら不活性ガス又は水素ガスを通気する。
また、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液は、アルコールを含有する。
また、アルコールとしてメタノール、エタノール、プロパノール及びアセトンのいずれかを用いる。
また、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液として、ヘキサヒドロキソ白金酸のアルカリ金属塩を、陽イオンを吸着して水素イオンを放出する陽イオン交換樹脂が充填された樹脂層を通過させることによって生成されたヘキサヒドロキソ白金酸溶液を用いる。
また、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液として、陽イオン交換膜を利用してヘキサヒドロキソ白金酸のアルカリ金属塩を含む溶液からアルカリ金属塩を除去して生成されたヘキサヒドロキソ白金酸溶液を用いる。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、攪拌子を備えた容器、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を前記容器に投入するための溶液供給口と、容器内の混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するためのガス通気口と、容器内混合溶液から発生した炭酸ガスを排気する為のガス通気管を備える。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、攪拌子を備えた容器、容器に面して配置されたガンマ線発生装置、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を前記容器に投入するための溶液供給口と、容器内の混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するためのガス通気口と、容器内混合溶液から発生した炭酸ガスを排気する為のガス通気管を備える。
本発明によれば、不純物の含有量の少ない白金含有金属酸化物微粒子含有水を製造することができる。
実施例1の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法の製造工程を示すフローチャート。 実施例1の白金含有金属酸化物微粒子の製造に用いる白金含有金属酸化物微粒子含有水製造装置の構成図。 ニッケルイオンの溶解度のpH依存性を表す図。 実施例1で用いられるヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造方法を示す説明図。 ヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造方法の他の例を示す図。 実施例2の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法の製造工程を示すフローチャート。 実施例2の白金添着酸化物ナノ粒子の製造方法に用いる白金含有金属酸化物微粒子含有水製造装置の構成図。 実施例2の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法の製造工程の変形例を示すフローチャート。
本発明の実施例について、図面を用いて以下詳細に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の白金含有金属酸化物微粒子の製造装置と製造方法について説明する。
まず、本実施例の白金含有金属酸化物微粒子の製造方法に用いられる白金含有金属酸化物微粒子製造装置を、図2を用いて説明する。この白金含有金属酸化物微粒子製造装置は、容器1、撹拌子2、スターラー3、ガス通気管7、排気管4及び溶液供給口5を備えている。
このうち、ガス通気口6を有するガス通気管7は、容器1を貫通して設けられ、容器1内で底部付近まで挿入されている。排気管4及び溶液供給口5が、容器1の上端部に設けられる。容器1はスターラー3の上に置かれ、撹拌子2が容器1内で底部に置かれている。
本実施例の白金含有金属酸化物微粒子の製造方法を、図1を参照して具体的に説明する。なお、この場合の金属としては、ニッケル、アルミニウム、亜鉛を用いることができるが、ここでは代表としてニッケルについて、白金含有ニッケル酸化物微粒子含有水を製造することについて説明する。実施例1の製造方法は、以下の4段階の処理により実行される。
第1段処理100:
炭酸酸性水溶液に金属(ニッケル)を溶解させた炭酸金属(ニッケル)溶液を溶液供給口5から容器1内に供給する。
ここで炭酸ニッケル溶液は、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルのいずれかを純水に分散させ、炭酸ガスを通気しながら撹拌することで生成することができる。具体的には、ニッケルの重量で0.5gの酸化ニッケル、水酸化ニッケル又は炭酸ニッケルを400mlの純水に入れて、炭酸ガスを通気しながら撹拌して溶液のpHを3以下にすることでニッケル濃度1.25g/lの炭酸ニッケル溶液を生成する。このニッケル濃度1.25g/lの炭酸ニッケル溶液を、溶液供給口5から容積が1Lである容器1内に400ml供給する。
なお、以上の実施例では、炭酸金属溶液として炭酸ニッケル溶液を使用した例を示したが、炭酸アルミ溶液(純水に炭酸を通気しながら水酸化アルミ又はオキシ水酸化アルミ又は炭酸アルミを溶解させる)や、炭酸亜鉛溶液(純水に炭酸を通気しながら水酸化亜鉛又は炭酸亜鉛又は酸化亜鉛を溶解させる)を使用してもよい。この場合の金属濃度並びに容量はニッケルに準じて定めればよい。
第2段処理200:
ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を、溶液供給口5から容器1内に供給する。
この場合に具体的には、白金0.5g/lのヘキサヒドロキソ白金酸溶液を溶液供給口5から容積が1lである容器1内に100ml供給する。
なお上記の例では、容器1が1L,炭酸金属溶液が400ml、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液が100mlとする例を示しているが、この混合比率を保ちながら、任意の容量の溶液とすることができる。
第3段処理300:
これらの溶液を容器1内に供給した後、スターラー3が駆動して容器1内の撹拌子2を動かし、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を撹拌して混合する。
第4段処理400:
ガス通気口6からアルゴンガスを通気して、ガス通気管7を通して炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液に通気する。
通気することで、混合溶液に含まれる炭酸ガスが放出され、アルゴンガスとともに排気口4から放出される。これにより混合ガスから炭酸ガスが放出されると、pHが中性側に増加する。
図3は、ニッケルイオンの溶解度のpH依存性を示している。図3の横軸はpH(タダシ、温度を25度にしている)、縦軸は溶解度(g/l)を示している。図1に示す一連の処理の結果として、容器1内の混合溶液に含まれるニッケルイオンを混合溶液中に析出させることができることについて図3を用いて説明する。
この図で、一点鎖線は混合溶液中のニッケルイオンの溶解度を示しているが、Phが大きいほど溶解度が小さくなる傾向を示すことが見て取れる。ここで、先に図1の第1段処理で説明したように、炭酸ニッケル溶液のpHを3以下にしていた。例えば炭酸ニッケル溶液のpHが3である場合、溶解度は10程度である。
これに対し、図1の第4段処理の通気処理を実行することで、混合溶液に含まれる炭酸ガスが放出され、アルゴンガスとともに排気口4から放出される。これにより混合ガスから炭酸ガスが放出されると、pHが中性側に増加する。pHが中性側に向かって増加すると、ニッケルイオンの溶解度は減少するため、ニッケルイオンは混合溶液中に水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして析出する。例えば炭酸ニッケル溶液のpHが5である場合、溶解度は10程度である。
上記の混合溶液の事例で説明すると、ニッケル濃度が1g/l(1.25g/l×0.4l÷0.5l)であるが、pHを5にシフトさせることで、混合溶液のニッケル濃度を10g/lに低減することができる。即ち、混合溶液に含まれるニッケルイオンの99.999%を混合溶液中に析出させることができる。
ヘキサヒドロキソ白金酸は、不安定であり、更にpHを中性側にシフトさせると析出が促進される。以上の析出反応を利用することにより、白金あるいは白金酸化物含有の酸化ニッケル微粒子含有水を生成することができる。炭酸もpH3の場合140g/lであるがpH5では0.013g/lであり99.99%以上除去されることになる。
以下、本発明を実現する上での幾つかの変形、代案事例について説明する。
第1にニッケル以外の金属について説明する。図3には、ニッケル以外に、アルミニウム、亜鉛の場合の溶解度を記述しているが、いずれの場合にもPHが大きいほど溶解度が低下する部分が存在する。この溶解度低下部分を利用してPHをあげる操作を実行することにより、アルミニウム、亜鉛の場合にもイオンを混合溶液中に析出させることができることが理解できる。
第2に、炭酸除去に使用するガスについての変形、代案事例を紹介する。実施例1では、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液から炭酸を除去するために、アルゴンガスを使用したが、これは窒素ガスなど水への溶解度が小さい不活性ガスでも良い。具体的には、化学反応を起こしにくい気体としてヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスや、窒素ガスの利用が有効である。
また、アルゴンガスの代わりに、水素ガスを使用することもできる。この場合には、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液に含まれるヘキサヒドロキソ白金酸イオンを酸化白金あるいは水酸化白金あるいは白金に還元できるため、ヘキサヒドロキソ白金酸からの白金又は酸化白金又は水酸化白金の析出を促進することができる。この作用により、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液から炭酸を除去するために水素ガスを使用すると、白金酸化物含有の酸化ニッケル微粒子含有水の生成時間を短縮することができる。
第3に、実施例1では、容器1に投入し炭酸金属溶液と混合する溶液としてヘキサヒドロキソ白金酸を使用するが、この製造方法、製造装置について変形、代案事例を含めて紹介する。この製造には、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液を材料として使用する。最初に紹介する製造方法、製造装置では、陽イオンを捕捉して水素イオンを放出する水素型の陽イオン交換樹脂(以下、水素型陽イオン交換樹脂と呼ぶ)に通すことにより製造する。
図4を用いて、この場合の具体的なヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造方法を説明する。ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液(またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液)を、容器21から、水素型陽イオン交換樹脂を充填した樹脂層を内部に有するイオン交換樹脂塔22に注入する。
ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液のナトリウムイオン(またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液のカリウムイオン)が、イオン交換樹脂塔22内の樹脂層に存在する水素型陽イオン交換樹脂に捕捉され、水素型陽イオン交換樹脂から放出される水素イオンの作用によりヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液(またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液)がヘキサヒドロキソ白金酸溶液になる。
図4では、イオン交換樹脂塔22から排出されたヘキサヒドロキソ白金酸溶液が、容器23に捕集される。本生成方法は水素型陽イオン交換樹脂が廃棄物となるディメリットがあるが、短時間でヘキサヒドロキソ白金酸溶液を生成できるメリットがある。
ヘキサヒドロキソ白金酸溶液製造方法、製造装置の代案では、陽イオン交換樹脂の代わりに陽イオン交換膜を使用する。つまり、ヘキサヒドロキソ白金酸は、陽イオン交換膜を用いてヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液からナトリウムイオン(またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液からカリウムイオン)を除去することによっても製造することができる。
陽イオン交換膜を用いたヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造装置を、図5を用いて説明する。ヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造装置は、イオン交換槽41、陽イオン交換膜36及び38、及び電極34及び40を有する。陽イオン交換膜36及び38がイオン交換槽41内に設置され、陽イオン交換膜34及び40によって仕切られた3つのセル35,37及び39がイオン交換槽41内に形成される。
セル37は、イオン交換槽41内において陽イオン交換膜36と陽イオン交換膜38の間に形成される。セル35は、陽イオン交換膜36とこの陽イオン交換膜36に対向する、イオン交換槽41の1つの側面の間に形成される。セル39は、陽イオン交換膜38とこの陽イオン交換膜38に対向する、イオン交換槽41の他の側面の間に形成される。
図5の装置構成において、陰極の電極40は、セル39内に配置され、配線33によって電源31に接続される。陽極の電極34は、セル35内に配置され、配線32によって電源31に接続される。なお、希硫酸がセル35及び39にそれぞれ充填されている。またヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム溶液(またはヘキサヒドロキソ白金酸カリウム溶液)がセル37に充填されている。
図5のヘキサヒドロキソ白金酸溶液の製造装置では、以上のように構成し、各溶液を各セルに充填した上で、電源31から電極34と電極40の間に電場をかける。これにより、陽極である電極34の表面で(1)式の反応により酸素が生成し、陰極である電極40の表面で(2)式の反応により水素が生成する。
[数1]
4OH = 2HO + O + 4e (1)
[数2]
2H + 2e = H (2)
この反応に伴い、水素イオンが陽イオン膜36を通ってセル35からセル37に供給される。さらにナトリウムイオン(またはカリウムイオン)が陽イオン膜38を通ってセル37からセル39に供給される。以上の反応によりヘキサヒドロキソ白金酸溶液がセル37内で生成される。
本生成方法は動力として電気を必要とするディメリットがあるが、廃棄物発生量が少ないメリットがある。
以上の実施例により、酸化物が磁性体を含まないものであっても、不純物の含有量の少ない白金含有酸化物粒子含有水を製造することができる。
本実施例によれば、白金を含有させる金属イオン、炭酸、ヘキサヒドロキソ白金酸(白金イオンと水酸化物イオンと水素イオンから構成される)を出発物質として白金含有金属酸化物微粒子を生成し、窒素ガス又はアルゴンガス又は水素ガスを通気して含有する炭酸を除去することができるので、不純物(白金を含有させる金属、白金、水の構成物質である酸素、水素以外の物質)の濃度が少ない白金含有金属酸化物微粒子含有水を生成することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例2の白金含有金属酸化物微粒子の製造方法を、図6及び7を用いて説明する。
この実施例で使用する白金含有金属酸化物微粒子製造装置を図7に示す。図7の装置は図2の装置に、ガンマ線発生装置8を容器1に面して配置した点において相違する。
本実施例の白金含有金属酸化物微粒子として白金含有ニッケル酸化物微粒子含有水の製造方法を、図6を用いて具体的に説明する。この処理方法では次の5つの処理段階が順次実行される。
第1処理段階100:
ガンマ線発生装置8からガンマ線を照射しない状態で、炭酸酸性水溶液にニッケルを溶解させた炭酸ニッケル溶液を溶液供給口5から容器1内に供給する。
炭酸ニッケル溶液は、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルのいずれかを純水に添加し、炭酸ガスを通気しながら撹拌することで生成することができる。
ニッケルの重量で0.5gの酸化ニッケル、酸化ニッケル又は炭酸ニッケルを400mlの純水に入れて、炭酸ガスを通気しながら撹拌して溶液のpHを3以下にすることでニッケル濃度1.25g/lの炭酸ニッケル溶液を生成することができる。このニッケル濃度1.25g/lの炭酸ニッケル溶液を溶液供給口5から容積が1Lである容器1内に400ml供給する。
第2処理段階200:
ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を、溶液供給口5から容器1内に供給する。
白金0.5g/lのヘキサヒドロキソ白金酸溶液を溶液供給口5から容積が1Lである容器1内に100ml供給する。
第3処理段階300:
これらの溶液を容器1内に供給した後、スターラー3が駆動して容器1内の撹拌子2を動かし、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を撹拌して均一に混合する。
第4処理段階400:
ガンマ線発生装置8から容器1に向かってガンマ線を照射する。
例えば、2kGy(キログレイ)/hの吸収線量率の電離放射線であるガンマ線が、容器1内の水溶液(混合液)に、約80時間の間、照射される。
ガンマ線を容器1内の水溶液に照射することによって、その水溶液に含まれる水の放射線分解により、還元性の水和電子(e)と水素原子(H)が発生する。水和電子や水素原子とヘキサヒドロキソ白金酸が反応することにより白金や水酸化白金や酸化白金が生成し、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液中に析出する。
容器1内の水溶液に含まれるヘキサヒドロキソ白金酸と上記の水素原子の(3)式に示す正味の反応により、白金イオンが白金金属(Pt)に還元される。
[数3]
Pt(OH)+4H = Pt+6HO (3)
また、ヘキサヒドロキソ白金酸と上記の水素原子の(4)式に示す正味の反応により、白金イオンが水酸化白金(Pt(OH))に還元される。
[数4]
Pt(OH)+2H = Pt(OH)+4HO (4)
さらには、ヘキサヒドロキソ白金酸と上記の水素原子の(5)式に示す正味の反応により、白金イオンが酸化白金(PtO)に還元される。
[数5]
Pt(OH)+2H = PtO+5HO (5)
第5処理段階500:
次に、又はガンマ線照射と同時にガス通気口からアルゴンガスを通気して、ガス通気管7を通して炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液に通気する。
通気することで、混合溶液に含まれる炭酸ガスが放出され、アルゴンガスとともに排気口4から放出される。混合ガスから炭酸ガスが放出されるとpHが中性側に増加する。この結果として、図3で説明したように、ニッケルイオンが混合溶液中に水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして析出する。混合溶液に含まれるニッケルイオンの99.999%を混合溶液中に析出させることができる。
本実施例では、このときにガンマ線照射により生成した白金や水酸化白金や酸化白金を核として、酸化ニッケル又は水酸化ニッケルが析出される。つまり、ガンマ線照射により生成した白金や水酸化白金や酸化白金は活性であり、その周囲に酸化ニッケル又は水酸化ニッケルを析出させることにより、白金や水酸化白金や酸化白金が凝集することを抑制できる。
容器1に対してガンマ線を一様に照射すると、炭酸ニッケル溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液の混合溶液中で、白金や水酸化白金や酸化白金を一様に析出させることが出来るため、均質な白金含有金属酸化物微粒子を生成できるメリットがある。
以下、第2の実施例を実現する上での幾つかの変形、代案事例について説明する。
第1にガンマ線照射とアルゴンガス通気のタイミングについて説明する。このタイミングには、ガンマ線照射をしてからアルゴンガスを通気する場合と、ガンマ線照射をしながらアルゴンガスを通気する場合とがある。
例えば、ガンマ線照射をしてからアルゴンガスを通気する場合は、白金や水酸化白金や酸化白金を内部に含有した白金含有金属酸化物微粒子になりやすい。このように生成した白金含有金属酸化物微粒子は、微粒子表面に出ている白金や水酸化白金や酸化白金が少ないため、白金を覆う金属酸化物が溶解するまでの期間、水素が共存する環境では不活性である。従って、白金を覆う金属酸化物が溶解するまでの期間、水素と酸素が共存する環境でも水素と酸素の反応を促進させない。
一方、ガンマ線照射をしながらアルゴンガスを通気する場合は、白金や水酸化白金や酸化白金が分散した白金含有金属酸化物微粒子になりやすい。この場合、水素と酸素が共存する環境でも水素と酸素の反応を促進する。従って、使用する環境に応じて白金含有金属酸化物微粒子の生成方法を変えることが望ましい。
第2にヘキサヒドロキソ白金酸生成方法の代案、変形例について説明する。実施例2で使用するヘキサヒドロキソ白金酸は、実施例1で説明したヘキサヒドロキソ白金酸生成方法で製造することが望ましい。
但し、実施例2ではガンマ線照射を使用するため、ヘキサヒドロキソ白金酸の粉末をアルコールに溶解させた、アルコール含有ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を使用しても良い。図8には、この場合の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法の製造工程を示しており、第2処理段階200で投入する白金含有金属酸化物微粒子含有水としてアルコールを含有したものを使用している。
アルコールは、ガンマ線照射により水の放射線分解で生じたOHラジカルと反応して、炭酸ガスになる。アルコールとしてメタノールを使用した場合、メタノールは正味(6)式の反応で水と二酸化炭素になる。
[数6]
CHOH + 3OH = CO + 2HO (6)
具体的には、200mgのメタノールに0.05gの白金を含むヘキサヒドロキソ白金酸を混合溶解し、純水で0.1lに希釈する。これにより白金0.5g/lを含むアルコール含有ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を生成できる。
以上の実施例で、ヘキサヒドロキソ白金酸の粉を溶解するためのアルコールとして、メタノールを使用した例を説明したが、これはエタノール、プロパノール及びアセトンでも良い。
以上の方法によっても不純物の含有量の少ない白金含有酸化物粒子含有水を製造することができる。
尚、本実施例によれば、本実施例で製造された不純物の含有量の少ない白金含有金属酸化物微粒子は、不純物の混入が好ましくない環境、例えば、沸騰水型原子炉及び加圧水型原子炉等の原子炉で使用される炉水に添加しても、試薬に起因する電気伝導率の増加がなく、炉水と接触する構造部材の腐食を抑制することができる。
1、21、23、41…容器、2…撹拌子、3…スターラー、4…排気口、5…溶液供給口、6…ガス通気口、7…ガス通気管、8…ガンマ線発生装置、22…水素型陽イオン交換樹脂塔、31…電源、32,33…リード線、34,35…電極、35,37,39…セル、34、35…陽イオン交換膜

Claims (10)

  1. 炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液と、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を混合した混合溶液のPHを上昇させて混合溶液中の炭酸を除去することを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  2. 請求項1記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    前記炭酸金属溶液金属に溶解させた金属がニッケルイオン、アルミイオン、亜鉛イオンのいずれであることを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    前記混合溶液のPHを上昇させて混合溶液中の炭酸を除去するために不活性ガス又は水素ガスを前記混合溶液に通気することを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  4. 炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液と、ヘキサヒドロキソ白金酸溶液を混合した混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するとともに、前記混合溶液に電離放射線を照射してから、あるいは電離放射線を照射しながら不活性ガス又は水素ガスを通気することを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  5. 請求項4に記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    ヘキサヒドロキソ白金酸溶液は、アルコールを含有することを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  6. 請求項5に記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    前記アルコールとしてメタノール、エタノール、プロパノール及びアセトンのいずれかを用いることを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    前記ヘキサヒドロキソ白金酸溶液として、ヘキサヒドロキソ白金酸のアルカリ金属塩を、陽イオンを吸着して水素イオンを放出する陽イオン交換樹脂が充填された樹脂層を通過させることによって生成されたヘキサヒドロキソ白金酸溶液を用いることを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  8. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法において、
    前記ヘキサヒドロキソ白金酸溶液として、陽イオン交換膜を利用してヘキサヒドロキソ白金酸のアルカリ金属塩を含む溶液からアルカリ金属塩を除去して生成されたヘキサヒドロキソ白金酸溶液を用いることを特徴とする白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造方法。
  9. 攪拌子を備えた容器、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を前記容器に投入するための溶液供給口と、前記容器内の混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するためのガス通気口と、容器内混合溶液から発生した炭酸ガスを排気する為のガス通気管を備える白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造装置。
  10. 攪拌子を備えた容器、該容器に面して配置されたガンマ線発生装置、炭酸酸性水溶液に金属を溶解させた炭酸金属溶液とヘキサヒドロキソ白金酸溶液を前記容器に投入するための溶液供給口と、前記容器内の混合溶液に不活性ガス又は水素ガスを通気するためのガス通気口と、容器内混合溶液から発生した炭酸ガスを排気する為のガス通気管を備える白金含有金属酸化物微粒子含有水の製造装置。
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