JP2013072108A - 成形後の表面品質に優れる冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車外板や内板用として有用な、成形後の表面品質に優れる冷延鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.30%以下、Mn:0.50%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ti:0.010〜0.100%、sol.Al:0.080%以下及びN:0.0070%以下を含有し、かつC、N、S、Tiが下記式(1)の関係を満足し、残部はFe及び不可避的不純物の組成とする。
記
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.30%以下、Mn:0.50%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ti:0.010〜0.100%、sol.Al:0.080%以下及びN:0.0070%以下を含有し、かつC、N、S、Tiが下記式(1)の関係を満足し、残部はFe及び不可避的不純物の組成とする。
記
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車の外板等に適用して好適な、成形後の表面品質に優れる冷延鋼板及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の外板に求められる表面品質がますます厳しくなっている。この表面品質を左右する表面欠陥は、大きく分けて、鋼板の製造段階で表面に認められるものと、自動車のプレスライン等において成形後、発現するものとに分類される。
前者の表面欠陥は、比較的容易に見つけられるため、自動車生産への影響は小さい。また、例えば特許文献1などに開示されているように、素材段階での対策も知られている。
一方、後者の表面欠陥は、部品に成形した後あるいはさらに車体に組み込んだ後の最終検査工程で、初めて発見される場合があるため、自動車生産に対する影響は極めて大きい。
しかも、後者の表面欠陥を抑制する手段については、これまで効果的な対策が明確になっていなかった。
一方、後者の表面欠陥は、部品に成形した後あるいはさらに車体に組み込んだ後の最終検査工程で、初めて発見される場合があるため、自動車生産に対する影響は極めて大きい。
しかも、後者の表面欠陥を抑制する手段については、これまで効果的な対策が明確になっていなかった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、特に成形後の表面品質に優れる冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、成形後に表面欠陥として現出する欠陥の発生メカニズムとその抑制対策について鋭意検討を重ねた。
その結果、このような表面欠陥が発生する鋼板では、鋼板の焼鈍過程において、降伏点伸びに起因した局所的な不均一変形が生じており、これが成形後の表面欠陥の原因であることが解明された。
その結果、このような表面欠陥が発生する鋼板では、鋼板の焼鈍過程において、降伏点伸びに起因した局所的な不均一変形が生じており、これが成形後の表面欠陥の原因であることが解明された。
すなわち、焼鈍過程で鋼板に不均一変形が生じていると、この不均一変形部では硬さが未変形部に比較して大きく、変形量が小さくなるため、部品への成形時において、不均一変形部が凸部として浮き上がってきて外観不良となる。なお、外観上はシャープな線状の欠陥となり、鋼板の長手方向に対して、斜め45°方向に伸びた形態を呈する。
当初、固溶C、Nが固定されたいわゆるIF鋼においては、一般的に明瞭な降伏点伸びが発現しないため、上述のような欠陥は発生しないものと考えられていた。しかしながら、本発明者らの基礎検討の結果、焼鈍後に調質圧延を施さない状態では、微小ではあるがはっきりとした降伏点伸びを観察でき、IF鋼で発生する同様な形態の表面欠陥についても降伏点伸びを起因とするものであることが明確となった。
当初、固溶C、Nが固定されたいわゆるIF鋼においては、一般的に明瞭な降伏点伸びが発現しないため、上述のような欠陥は発生しないものと考えられていた。しかしながら、本発明者らの基礎検討の結果、焼鈍後に調質圧延を施さない状態では、微小ではあるがはっきりとした降伏点伸びを観察でき、IF鋼で発生する同様な形態の表面欠陥についても降伏点伸びを起因とするものであることが明確となった。
上記のような表面欠陥の発生を抑制するには、焼鈍時に降伏点を超えるような歪量を与えなければ良い。一般的に、連続焼鈍炉内では、鋼板の降伏点を超える歪が発生しない条件で設備設計や通板条件が設定されている。ところが、実際には、加熱・冷却による熱歪のため、局所的に不均一な歪が発生して、特定条件では、鋼板の降伏点を超える場合が発生することが明らかとなった。
そこで、本発明者らは、上述した焼鈍時の不均一変形に起因した表面欠陥の発生因子についてさらに検討を加えた結果、再結晶完了後の冷却過程において、特定温度域で一定の冷却速度を超えると、鋼板内に発生する熱歪が大きくなって鋼板の降伏点を超える歪が発生し、成形後に表面欠陥が発現するとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.30%以下、Mn:0.50%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ti:0.010〜0.100%、sol.Al:0.080%以下及びN:0.0070%以下を含有し、かつC、N、S、Tiが下記式(1)の関係を満足し、残部はFe及び不可避的不純物の組成からなり、圧延方向に採取した短冊状試験片に1〜5%の一方向の引張り歪を加えた後、表面を砥石がけした時に線状模様が発生しないことを特徴とする成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
記
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00 ・・・(1)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
1.質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.30%以下、Mn:0.50%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ti:0.010〜0.100%、sol.Al:0.080%以下及びN:0.0070%以下を含有し、かつC、N、S、Tiが下記式(1)の関係を満足し、残部はFe及び不可避的不純物の組成からなり、圧延方向に採取した短冊状試験片に1〜5%の一方向の引張り歪を加えた後、表面を砥石がけした時に線状模様が発生しないことを特徴とする成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
記
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00 ・・・(1)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
2.さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0030%及びNb:0.003〜0.100%のうちから選択される少なくとも1種を含有し、かつNbを含有する場合には、前記式(1)に代えて下記式(2)の関係を満足することを特徴とする前記1に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
記
{[%Nb]/93+([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)}/([%C]/12)≧1.00 ・・・(2)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
記
{[%Nb]/93+([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)}/([%C]/12)≧1.00 ・・・(2)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
3.鋼板の表面に、亜鉛系めっき皮膜をさらに有することを特徴とする前記1又は2に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
4.前記1又は2に記載の成分組成からなる鋼片を、熱間圧延後、酸洗し、ついで冷間圧延後、連続焼鈍を施し、該連続焼鈍の冷却過程において400〜200℃の温度域を30℃/sを超えない冷却速度で冷却することを特徴とする成形後の表面品質に優れる冷延鋼板の製造方法。
5.鋼板表面に、亜鉛系めっき皮膜を形成するめっき処理工程をさらに有することを特徴とする前記4に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、成形後の表面品質に優れる冷延鋼板を提供することが可能となる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.0005〜0.0050%
Cは、含有量が増えると、深絞り性や延性が劣化し自動車用外板としての成形性を付与することが困難となる。このためC量の上限は0.0050%、好ましくは0.0040%に規定する。一方、含有量が0.0005%未満では結晶粒が粗大化して、成形した際に鋼板表面に肌荒れが生じやすくなるため、C量の下限は0.0005%に規定する。
まず、本発明において、鋼板の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.0005〜0.0050%
Cは、含有量が増えると、深絞り性や延性が劣化し自動車用外板としての成形性を付与することが困難となる。このためC量の上限は0.0050%、好ましくは0.0040%に規定する。一方、含有量が0.0005%未満では結晶粒が粗大化して、成形した際に鋼板表面に肌荒れが生じやすくなるため、C量の下限は0.0005%に規定する。
Si:0.30%以下、
Siは、固溶強化能の高い元素であるが、一方で含有量が増大すると鋼板が硬質化するだけでなく、スケールに起因した表面欠陥が発生しやすくなる。このためSi量の上限は0.30%、好ましくは0.20%に規定する。
Siは、固溶強化能の高い元素であるが、一方で含有量が増大すると鋼板が硬質化するだけでなく、スケールに起因した表面欠陥が発生しやすくなる。このためSi量の上限は0.30%、好ましくは0.20%に規定する。
Mn:0.50%以下、
Mnも、過剰に添加すると鋼板を硬質化する元素である。このため、Mn量の上限は0.50%、好ましくは0.30%に規定する。
Mnも、過剰に添加すると鋼板を硬質化する元素である。このため、Mn量の上限は0.50%、好ましくは0.30%に規定する。
P:0.050%以下、
Pは、微量に含有する場合でも、鋼板を硬質化する。このため含有するP量の上限は0.050%、好ましくは0.035%に規定する。
Pは、微量に含有する場合でも、鋼板を硬質化する。このため含有するP量の上限は0.050%、好ましくは0.035%に規定する。
S:0.020%以下、
Sは、含有量が高いとPと同様に溶接部の靭性が劣化する。このためS量の上限は0.020%、好ましくは0.015%に抑制する。
Sは、含有量が高いとPと同様に溶接部の靭性が劣化する。このためS量の上限は0.020%、好ましくは0.015%に抑制する。
Ti:0.010〜0.100%
Tiは、本発明において特に重要な元素である。固溶Cを炭化物や炭窒化物として固着させることで、外板に適した深絞り性を得ることが可能となる。Tiが0.010%未満では所望の効果が得られなくなり、一方、0.100%を超えて添加しても効果が飽和するだけでなく、鋼板が硬質化して成形性が劣化するため、含有量を0.010〜0.100%と規定する。
Tiは、本発明において特に重要な元素である。固溶Cを炭化物や炭窒化物として固着させることで、外板に適した深絞り性を得ることが可能となる。Tiが0.010%未満では所望の効果が得られなくなり、一方、0.100%を超えて添加しても効果が飽和するだけでなく、鋼板が硬質化して成形性が劣化するため、含有量を0.010〜0.100%と規定する。
sol.Al:0.080%以下、N:0.0070%以下
sol.AlとNは、通常の鋼に含有される量であれば本発明の効果を損なわないので、それぞれsol.Al:0.080%以下、N:0.0070%以下に規定する。
sol.AlとNは、通常の鋼に含有される量であれば本発明の効果を損なわないので、それぞれsol.Al:0.080%以下、N:0.0070%以下に規定する。
また、固溶C量を制御するためには、C、N、S、Ti量については、以下の関係式(1)を満足させることが必要である。
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00 ・・・(1)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
上記の関係式を満足することで、固溶Cを完全にTiC(TiCN)あるいはこれらの複合炭化物、炭窒化物として固着させて、外板に適した深絞り性を得ることができる。当該関係式を満たさないと、深絞り性が劣化することとなる。また、上記式(1)の左辺を1.20以上として、固溶Cを完全に固着させることが望ましい。一方で、式(1)の左辺が15.0を超えても、固溶Cの固着効果が飽和するので、15.0以下とすることが好ましい。
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00 ・・・(1)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
上記の関係式を満足することで、固溶Cを完全にTiC(TiCN)あるいはこれらの複合炭化物、炭窒化物として固着させて、外板に適した深絞り性を得ることができる。当該関係式を満たさないと、深絞り性が劣化することとなる。また、上記式(1)の左辺を1.20以上として、固溶Cを完全に固着させることが望ましい。一方で、式(1)の左辺が15.0を超えても、固溶Cの固着効果が飽和するので、15.0以下とすることが好ましい。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、その他にも、以下に述べる元素を必要に応じて適宜含有させることが好ましい。
B:0.0003〜0.0030%
Bは、深絞り成形した部品の耐二次加工脆性を向上させるために添加する。しかしながら、B量が0.0003%に満たないと所望の効果が得られず、一方0.0030%を超えると硬質化して成形性が劣化する。そのためB量は0.0003〜0.0030%の範囲に規定する。
Bは、深絞り成形した部品の耐二次加工脆性を向上させるために添加する。しかしながら、B量が0.0003%に満たないと所望の効果が得られず、一方0.0030%を超えると硬質化して成形性が劣化する。そのためB量は0.0003〜0.0030%の範囲に規定する。
Nb:0.003〜0.100%
Nbは、前記Tiと同様に、C量に対して添加量を適切に制御することにより、Cを炭窒化物として固着させることができる元素である。ここで、Nb量が0.003%未満では、固溶C量の制御が困難になり所望の効果を得ることができないおそれがあり、一方、0.100%を超えると析出物が増大して延性の劣化を招くため、Nb量は0.003〜0.100%の範囲に規定する。
Nbは、前記Tiと同様に、C量に対して添加量を適切に制御することにより、Cを炭窒化物として固着させることができる元素である。ここで、Nb量が0.003%未満では、固溶C量の制御が困難になり所望の効果を得ることができないおそれがあり、一方、0.100%を超えると析出物が増大して延性の劣化を招くため、Nb量は0.003〜0.100%の範囲に規定する。
そして、前記Nbを含有する場合には、前記式(1)に代えて、以下の関係式(2)を満足させることが好ましい。
{[%Nb]/93+([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)}/([%C]/12)≧1.00 ・・・(2)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
上記の関係式を満足することで、固溶Cを完全にTiC(TiCN)、NbC(NbCN)あるいはこれらの複合炭化物、炭窒化物として固着させて、外板に適した深絞り性を得ることができる。当該関係式を満たさないと、深絞り性が劣化するおそれがある。また、上記式(2)の左辺を1.20以上として、固溶Cを完全に固着させることが望ましい。一方で、式(2)の左辺が15.0を超えても、固溶Cの固着効果が飽和するので、15.0以下とすることが好ましい。
{[%Nb]/93+([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)}/([%C]/12)≧1.00 ・・・(2)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。
上記の関係式を満足することで、固溶Cを完全にTiC(TiCN)、NbC(NbCN)あるいはこれらの複合炭化物、炭窒化物として固着させて、外板に適した深絞り性を得ることができる。当該関係式を満たさないと、深絞り性が劣化するおそれがある。また、上記式(2)の左辺を1.20以上として、固溶Cを完全に固着させることが望ましい。一方で、式(2)の左辺が15.0を超えても、固溶Cの固着効果が飽和するので、15.0以下とすることが好ましい。
また、深絞り性等の成形性や製造工程での表面元素濃化抑制による表面品質の向上を目的として、V、W、Cu、Ni,Sn、Cr、Mo及びSb等を添加することができる。これらの添加量については0.5%を超えるような多量添加でなければ、本発明の効果は損なわれない。その他、介在物の形態制御を目的としてCaを添加する場合や、精錬時の効率向上のため脱酸素レベルの許容範囲を広げる目的でO含有量の上限を高める場合においても、それぞれ30ppm、50ppmを超える添加でなければ、本発明の効果は損なわない。
なお、上記した成分以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
冷延鋼板の表面品質の評価
成形後の表面品質の評価法について述べる。前述したとおり、製造段階で現出する表面欠陥に比べて、成形後に現出する表面欠陥は、部品に成形した後あるいはさらに車体に組み込んだ後の最終検査工程で、初めて発見される場合があるため、自動車生産に対する影響は極めて大きい。本発明者らは、製造過程での局所的な塑性変形発生による筋状欠陥の検出方法について鋭意検討した結果、適切な歪量を鋼板に付与して、表面を砥石がけすることで、簡易かつ効果的に検出できることを明らかとした。
歪量については、少なすぎても多すぎても、塑性変形の発生した部分とそうでない部分の硬さの差による変形挙動の差が小さくなるため、1〜5%程度が最適である。試験片は圧延方向を長手方向として短冊状の試験片とすれば良い。製品の全幅で確認する必要があるので、引張り試験片の仕様範囲内で、できるだけ、面積を広くとることが効率的である。また、試験片長手方向を圧延方向とした試験片を用いることにより、線状模様(筋状欠陥)を適切に評価することができる。
なお、本発明で対象とする引張変形後に現出する筋状欠陥は、いわゆる降伏点伸びによるストレッチャー・ストレインではなく、あくまで、製造工程で鋼板に導入された局所的な塑性変形により、鋼板内部に微小ではあるが周囲に比べて硬度が高い部分が存在することに起因するものである。ストレッチャー・ストレインは、短冊状試験片で引張ると10mmあるいはそれ以上の幅を有する帯状の形態を呈するが、本発明で対象とする欠陥の幅は5mm以内で、シャープな直線状の形態を呈することが特徴である。
成形後の表面品質の評価法について述べる。前述したとおり、製造段階で現出する表面欠陥に比べて、成形後に現出する表面欠陥は、部品に成形した後あるいはさらに車体に組み込んだ後の最終検査工程で、初めて発見される場合があるため、自動車生産に対する影響は極めて大きい。本発明者らは、製造過程での局所的な塑性変形発生による筋状欠陥の検出方法について鋭意検討した結果、適切な歪量を鋼板に付与して、表面を砥石がけすることで、簡易かつ効果的に検出できることを明らかとした。
歪量については、少なすぎても多すぎても、塑性変形の発生した部分とそうでない部分の硬さの差による変形挙動の差が小さくなるため、1〜5%程度が最適である。試験片は圧延方向を長手方向として短冊状の試験片とすれば良い。製品の全幅で確認する必要があるので、引張り試験片の仕様範囲内で、できるだけ、面積を広くとることが効率的である。また、試験片長手方向を圧延方向とした試験片を用いることにより、線状模様(筋状欠陥)を適切に評価することができる。
なお、本発明で対象とする引張変形後に現出する筋状欠陥は、いわゆる降伏点伸びによるストレッチャー・ストレインではなく、あくまで、製造工程で鋼板に導入された局所的な塑性変形により、鋼板内部に微小ではあるが周囲に比べて硬度が高い部分が存在することに起因するものである。ストレッチャー・ストレインは、短冊状試験片で引張ると10mmあるいはそれ以上の幅を有する帯状の形態を呈するが、本発明で対象とする欠陥の幅は5mm以内で、シャープな直線状の形態を呈することが特徴である。
次に、本発明の製造工程について述べる。
本発明では、上記したような成分組成に調整された鋼片を、鋳造後、熱間圧延した後、酸洗し、ついで冷間圧延後、連続焼鈍を施すことによって冷延鋼板とする。そして、本発明では、上記の連続焼鈍に際し、その冷却過程において特に400〜200℃の温度域を30℃/sを超えない冷却速度で冷却することが重要である。
本発明では、上記したような成分組成に調整された鋼片を、鋳造後、熱間圧延した後、酸洗し、ついで冷間圧延後、連続焼鈍を施すことによって冷延鋼板とする。そして、本発明では、上記の連続焼鈍に際し、その冷却過程において特に400〜200℃の温度域を30℃/sを超えない冷却速度で冷却することが重要である。
発明者らの検討によれば、400〜200℃の温度域は、降伏強度が比較的低く、かつ降伏点伸びが明瞭に発現するため、製造条件の変動や熱歪などにより、鋼板内に不均一変形が発生しやすい温度域である。この点、400℃を超える温度域では、降伏強度が十分に低く、かつ転位の増殖も容易であるため、不均一変形は生じにくい。一方、200℃を下回る温度域では、降伏強度が十分高くなり、歪が発生しても降伏強度を超えなくなる。
また、冷却速度を30℃/s以下とするのは、これを超えた冷却速度になると、収縮により発生する熱歪が大きくなり、局所的に鋼板の降伏強度を超えて不均一変形が生じるためである。一方、冷却速度は小さいほど冷却時の歪が小さくなるが、極端に小さく制限すると、ライン長が長くなりすぎるので、5℃/s以上とすることが好ましい。
また、冷却速度を30℃/s以下とするのは、これを超えた冷却速度になると、収縮により発生する熱歪が大きくなり、局所的に鋼板の降伏強度を超えて不均一変形が生じるためである。一方、冷却速度は小さいほど冷却時の歪が小さくなるが、極端に小さく制限すると、ライン長が長くなりすぎるので、5℃/s以上とすることが好ましい。
なお、上記した連続焼鈍の冷却過程における400〜200℃の温度域での冷却を上述した制御冷却とすること以外の製造工程は、常法に従って行えば良く、特に制限されることはない。例えば、造塊あるいは連続鋳造によるスラブ製造法や、熱延での粗熱延バー接続による連続熱延を適用することができる。また、熱延過程でのインダクションヒーターを利用した200℃以内の昇温などは、本発明の効果に対して悪影響を及ぼさない。
その他の好適製造条件について述べると、熱間圧延における鋼片加熱温度は1150〜1300℃、仕上げ圧延終了温度は850〜950℃、巻取り温度は500〜700℃、冷間圧延の圧下率は60〜90%、連続焼鈍(または連続溶融亜鉛めっき)における均熱温度は800〜900℃とすることが好ましい。
本発明では、鋼板表面に亜鉛系めっき皮膜を形成させるめっき処理工程を有する製造方法とすることもできる。電気めっき処理や溶融めっき処理にて、純亜鉛や亜鉛合金(亜鉛−鉄、亜鉛−Ni、亜鉛−アルミニウム等)の亜鉛系めっき皮膜を、鋼板表面に形成させることができる。亜鉛めっき処理の場合には、焼鈍、めっき処理を別個の工程とすることもできるし、また、焼鈍とめっき処理を連続した一連の工程(例えば、連続溶融亜鉛めっき)とすることも可能である。
その他の好適製造条件について述べると、熱間圧延における鋼片加熱温度は1150〜1300℃、仕上げ圧延終了温度は850〜950℃、巻取り温度は500〜700℃、冷間圧延の圧下率は60〜90%、連続焼鈍(または連続溶融亜鉛めっき)における均熱温度は800〜900℃とすることが好ましい。
本発明では、鋼板表面に亜鉛系めっき皮膜を形成させるめっき処理工程を有する製造方法とすることもできる。電気めっき処理や溶融めっき処理にて、純亜鉛や亜鉛合金(亜鉛−鉄、亜鉛−Ni、亜鉛−アルミニウム等)の亜鉛系めっき皮膜を、鋼板表面に形成させることができる。亜鉛めっき処理の場合には、焼鈍、めっき処理を別個の工程とすることもできるし、また、焼鈍とめっき処理を連続した一連の工程(例えば、連続溶融亜鉛めっき)とすることも可能である。
さらに、本発明は、冷延鋼板の表面に電気めっきが施されためっき鋼板や塗装されたプレコート鋼板であっても、さらに溶融亜鉛めっき鋼板の場合、表面に潤滑性を付与する処理や皮膜の塗布処理を施しても、本発明の効果が損なわれることはない。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
表1に示す成分組成に調整した鋼を、溶製後、連続鋳造によりスラブとし、加熱温度:1200℃、仕上げ圧延終了温度:900℃、巻取り温度:600℃の条件で熱延板とした。ついで、酸洗後、圧下率:75%の冷間圧延により板厚:0.75mmの冷延板とした。引き続き、表2に示す条件で、連続焼鈍又は連続溶融亜鉛めっきを施して、冷延鋼板又は溶融亜鉛めっき鋼板とした。ついで、圧下率:0.3%の調質圧延を施した。溶融亜鉛めっきの条件は、めっき浴温度:460℃、めっき浴のAl濃度:(合金化処理を行う場合:0.13%、合金化処理を行わない場合:0.2%)、めっき付着量:片面あたり45g/m2(両面めっき)、合金化処理温度:480〜500℃、合金化度(Fe質量%):10%、とした。
表1に示す成分組成に調整した鋼を、溶製後、連続鋳造によりスラブとし、加熱温度:1200℃、仕上げ圧延終了温度:900℃、巻取り温度:600℃の条件で熱延板とした。ついで、酸洗後、圧下率:75%の冷間圧延により板厚:0.75mmの冷延板とした。引き続き、表2に示す条件で、連続焼鈍又は連続溶融亜鉛めっきを施して、冷延鋼板又は溶融亜鉛めっき鋼板とした。ついで、圧下率:0.3%の調質圧延を施した。溶融亜鉛めっきの条件は、めっき浴温度:460℃、めっき浴のAl濃度:(合金化処理を行う場合:0.13%、合金化処理を行わない場合:0.2%)、めっき付着量:片面あたり45g/m2(両面めっき)、合金化処理温度:480〜500℃、合金化度(Fe質量%):10%、とした。
次に、これらのコイル(鋼帯)から、圧延方向を長手方向として長さ:150mm、幅:30mmの短冊状試験片を全幅で採取し、引張試験機(クロスヘッド速度:10mm/min)にて1%、3%、5%の歪を加えた(引張方向は長手方向)。その後、平坦な机の上に予歪を加えた試験片を載置して、表面を砥石がけし、線状模様(筋状欠陥)の有無について調査した(表2中、○:欠陥なし、×:欠陥有り)。欠陥の有無は目視にて行い、一箇所でも筋状欠陥が認められたら×とした。
また、機械的性質は、JIS5号試験片を用い引張試験(クロスヘッド速度:10mm/min)を行ない、引張強度TS、全伸びELを測定した。引張試験は圧延方向に沿って採取した試験片で評価した。
さらに、深絞り性は、JIS5号試験片を用いて、圧延方向に対して0°、45°、90°方向のr値(クロスヘッド速度:10mm/min、予歪15%を付与)r0、r45、r90を測定して、平均値(r0+2×r45+r90)/4を算出し、評価を行った。
得られた結果を表2に併せて示す。
また、機械的性質は、JIS5号試験片を用い引張試験(クロスヘッド速度:10mm/min)を行ない、引張強度TS、全伸びELを測定した。引張試験は圧延方向に沿って採取した試験片で評価した。
さらに、深絞り性は、JIS5号試験片を用いて、圧延方向に対して0°、45°、90°方向のr値(クロスヘッド速度:10mm/min、予歪15%を付与)r0、r45、r90を測定して、平均値(r0+2×r45+r90)/4を算出し、評価を行った。
得られた結果を表2に併せて示す。
表2から、本発明に従って、連続焼鈍後の400〜200℃の温度域における冷却速度を30℃/s以下に制御することで、優れた深絞り性と共に、成形後でも筋状欠陥の発生しない冷延鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板を得られることがわかった。
なお、鋼板温度が200℃を下回った場合には、鋼板の降伏強度が十分に大きくなるため、30℃/sを超える速度で冷却しても、筋状欠陥は発生しないことがわかる。
なお、鋼板温度が200℃を下回った場合には、鋼板の降伏強度が十分に大きくなるため、30℃/sを超える速度で冷却しても、筋状欠陥は発生しないことがわかる。
本発明によれば、自動車外板や内板用として極めて有用な、成形後の表面品質に優れる冷延鋼板を安定して製造・供給することができ、工業的価値は極めて高い。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.30%以下、Mn:0.50%以下、P:0.050%以下、S:0.020%以下、Ti:0.010〜0.100%、sol.Al:0.080%以下及びN:0.0070%以下を含有し、かつC、N、S、Tiが下記式(1)の関係を満足し、残部はFe及び不可避的不純物の組成からなり、圧延方向に採取した短冊状試験片に1〜5%の一方向の引張り歪を加えた後、表面を砥石がけした時に線状模様が発生しないことを特徴とする成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
記
([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)/([%C]/12)≧1.00 ・・・(1)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0030%及びNb:0.003〜0.100%のうちから選択される少なくとも1種を含有し、かつNbを含有する場合には、前記式(1)に代えて下記式(2)の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
記
{[%Nb]/93+([%Ti]/48−[%N]/14−[%S]/32)}/([%C]/12)≧1.00 ・・・(2)
ここで、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す。 - 鋼板の表面に、亜鉛系めっき皮膜をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板。
- 請求項1又は2に記載の成分組成からなる鋼片を、熱間圧延後、酸洗し、ついで冷間圧延後、連続焼鈍を施し、該連続焼鈍の冷却過程において400〜200℃の温度域を30℃/sを超えない冷却速度で冷却することを特徴とする成形後の表面品質に優れる冷延鋼板の製造方法。
- 鋼板表面に、亜鉛系めっき皮膜を形成するめっき処理工程をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の成形後の表面品質に優れる冷延鋼板の製造方法。
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